特許第6827563号(P6827563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィの特許一覧

特許6827563接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ
<>
  • 特許6827563-接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ 図000002
  • 特許6827563-接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ 図000003
  • 特許6827563-接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ 図000004
  • 特許6827563-接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ 図000005
  • 特許6827563-接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ 図000006
  • 特許6827563-接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ 図000007
  • 特許6827563-接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827563
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】接続アセンブリ、パワーモジュール及び板状電源コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/26 20060101AFI20210128BHJP
   H01R 4/58 20060101ALI20210128BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20210128BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   H01R4/26
   H01R4/58 B
   H01L25/04 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-557984(P2019-557984)
(86)(22)【出願日】2018年5月1日
(65)【公表番号】特表2020-504435(P2020-504435A)
(43)【公表日】2020年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2018018022
(87)【国際公開番号】WO2018216473
(87)【国際公開日】20181129
【審査請求日】2019年7月10日
(31)【優先権主張番号】17305616.9
(32)【優先日】2017年5月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】ランボー、リュック
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−318693(JP,A)
【文献】 特開2005−033882(JP,A)
【文献】 特開2016−021311(JP,A)
【文献】 実開平05−055456(JP,U)
【文献】 特表2013−513213(JP,A)
【文献】 実開平03−037757(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/26
4/58
13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体モジュールとパワー素子とを電気的に接続する接続アセンブリであって、
貫通穴を有する板状雌コネクタと、
ピンを有する板状雄コネクタと、
を備え、
前記板状雌コネクタ及び前記板状雄コネクタは、導電性材料で形成され、
前記ピンの断面は、主方向に沿って延び、前記貫通穴は、前記ピンを受けるような形状であり、それにより、前記主方向に沿って延びる前記ピンの少なくとも1つの壁と前記板状雌コネクタの1つの壁との間に電気的接触を確立し、
前記板状雌コネクタ及び前記板状雄コネクタのうちの少なくとも一方は、前記ピンが前記貫通穴に受けられた場合、前記板状雌コネクタと前記板状雄コネクタとを互いに押し付けるように適合された加圧要素を備え
前記加圧要素は、前記板状雌コネクタと一体の可撓性タブであって、前記ピンが前記貫通穴に受けられた場合、前記ピンに当接するように適合された可撓性タブを含み、
前記貫通穴に対する前記ピンの停止要素を更に備え、
前記停止要素は、前記板状雌コネクタと一体の少なくとも1つのフィンガであって、前記貫通穴から距離を置いて、前記貫通穴を覆うように延びる、少なくとも1つのフィンガを備える、接続アセンブリ。
【請求項2】
前記板状雄コネクタは、前記ピンが前記貫通穴に挿入された場合、前記可撓性タブを受けるように適合された溝を有する、請求項に記載の接続アセンブリ。
【請求項3】
前記可撓性タブは、前記板状雌コネクタの平面に沿って延び、前記板状雌コネクタの厚さに収まる、請求項1又は2に記載の接続アセンブリ。
【請求項4】
前記加圧要素は、前記貫通穴の2つの対向側面から互いに向き合って延びる、前記板状雌コネクタと一体の少なくとも2つのタブであって、前記ピンが前記貫通穴に受けられた場合、前記ピンの2つの対向壁に当接するような形状である、少なくとも2つのタブを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の接続アセンブリ。
【請求項5】
各フィンガは、前記貫通穴の同じ側面にあり、前記接続アセンブリは、前記貫通穴の反対側の側面から延びる少なくとも1つのガイドタブを更に備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接続アセンブリ。
【請求項6】
前記ピンは、前記貫通穴に挿入された場合、前記板状雌コネクタの方向に対して垂直に延び、前記板状雌コネクタ及び前記板状雄コネクタのうちの一方は、板状コネクタ間のインライン接続を可能にするように直角をなしている、請求項1〜のいずれか1項に記載の接続アセンブリ。
【請求項7】
少なくとも1つの半導体スイッチと、前記半導体スイッチに電気的に接続される少なくとも1つの板状コネクタとを備えるパワーモジュールであって、前記板状コネクタは、請求項1〜のいずれか1項に記載の接続アセンブリの前記板状雄コネクタ又は前記板状雌コネクタであるように適合された板状コネクタであることを特徴とする、パワーモジュール。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の接続アセンブリの前記板状雌コネクタ又は前記板状雄コネクタであるように適合されていることを特徴とする、板状電源コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体モジュールとパワー素子とを接続する接続アセンブリ、及び、この接続アセンブリの一部として適したコネクタを備えるパワー半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド又はプラグイン電気自動車(plug electric vehicles)は、少なくとも自動車のバッテリーと電気エンジンとの間での電流の変換を確実にするために、パワートレインにおいて多数のパワー素子を備える。
【0003】
パワー素子の通常の用途には、三相電気エンジンを駆動し、高電圧バッテリーから電力を供給される、パワーコントロールユニットが含まれる。パワーコントロールユニットは、通例、三相インバータと組み合わされた双方向コンバータと、コンデンサ及びインダクタ等のエネルギー蓄積素子とを備えることができる。
【0004】
パワーコントロールユニットの三相インバータは、限られた容量で高電力範囲(数十kW〜数百kWに及ぶ)を維持するために、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)又は金属−酸化物−半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)から作製することができる半導体スイッチを組み込んだ、ハーフブリッジパワーモジュールのトランスファーモールドパワーモジュール(TPM)等のパワー半導体モジュールから作製することができる。
【0005】
上述した用途では、パワー半導体モジュールは、コンデンサ及びインダクタ等の複数のパワー素子に接続される。
【0006】
ハイブリッド又は電気自動車におけるパワー素子間の接続部は、過酷な自動車環境から生じる複数の制約に耐えるように慎重に設計する必要がある。
【0007】
まず、部品間の接続部は、ねじ及びワッシャの使用を避けるために、小容量で高電流及び高電圧に耐える必要がある。部品のコネクタは、軽量であり、かつ、自動車市場が非常に競合的であることを考慮して安価でなければならない。
【0008】
さらに、パワー素子間の接続部は、振動及び熱に関して厳しい制約に耐える必要がある。特に、接続部は、接続された部品が振動した場合又は熱膨張した場合であっても維持されなければならない。最後に、上述の高電力範囲で動作するということは、浮遊インダクタンス及びジュール効果による損失の原因である接続長を低減するために、部品を互いに直接接続することを意味する。
【0009】
半導体素子を含むパワーモジュールを、はんだ付けによってコンデンサ又はインダクタ等のパワー素子に接続することが知られているが、この形式の接続部は、はんだの疲労によって劣化し得る。
【0010】
別の接続アセンブリが、特許文献1から既知である。特許文献1は、二叉先端部を有する第1のコネクタと、第1のコネクタを挿入することができる四角形の貫通穴を有する第2のコネクタと、第1のコネクタと第2のコネクタとを互いに押し付けるために、第1のコネクタの中又は第1のコネクタと第2のコネクタとの間のいずれかに挿入することができる、先細クリップ部材とを備える、プレスフィット接続アセンブリを開示している。
【0011】
この接続アセンブリは、振動が生じた場合であっても電気的接触を維持することに関して良好な結果をもたらし得る。しかしながら、各コネクタは、接触面が小さいので、高電流の伝送に十分なものではない。換言すれば、接続アセンブリは、ρL/S(ここで、Sは接触面であり、Lは長さであり、ρは接続アセンブリの材料の抵抗率である)によって定義される高い抵抗を有する。したがって、接続アセンブリは、パワーモジュールとパワー素子とを接続するために多数のコネクタを必要とし、さらにコネクタに加えてクリップ部材が必要とされるため、結果として得られるパワーモジュールは高価となり得る。
【0012】
当業者は、図1に概略的に示されている、より単純な接続アセンブリを想定することができる。この接続アセンブリ1は、四角形断面を有する2つのピン3を備える板状雄コネクタと、それぞれピンを受けるように適合された、四角形断面を有する2つの貫通穴2を備える板状雌コネクタとを含む。
【0013】
さらに、接続アセンブリは、1つの金属クリップ4を含み、この金属クリップ4は、雌コネクタの貫通穴に入ったピンを摩擦によって保持し、それにより、ピンと雌コネクタとの接触を維持するように適合されている。追加の部品5は、組み付けられたコネクタ及びクリップを受けて一緒に保持する。
【0014】
この接続アセンブリは、先細クリップ部材に代わる金属クリップによって、機械的振動にも関わらず電気的接触を維持することに関して良好な性能を達成する、より単純な方法を提供する。
【0015】
しかしながら、この接続アセンブリは、多数の構成部品を含むので、製造に必要なステップの数が増大しており、ひいては製造コストが増大している。また、コネクタ間の電気的接触面は非常に小さいままであり、したがって、ジュール効果による損失は重大である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0164865号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記に鑑みて、本発明の目的は、従来技術の不都合点を有しない、パワーモジュール及びパワー素子の接続アセンブリを提供することである。
【0018】
特に、本発明の1つの目的は、コネクタの電気的接触がより大きく、コネクタが振動又は熱によって熱変形した場合でもこの接触が維持されることを確実にする接続アセンブリを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、より安価な接続アセンブリを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、従来技術の接続アセンブリよりも容易にすることができる接続アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、パワー半導体モジュールとパワー素子とを電気的に接続する接続アセンブリであって、
貫通穴を有する板状雌コネクタと、
ピンを有する板状雄コネクタと、
を備え、
コネクタは、導電性材料で形成され、
ピンの断面は、主方向に沿って延び、貫通穴は、ピンを受けるような形状であり、それにより、上記主方向に沿って延びるピンの少なくとも1つの壁と板状雌コネクタの1つの壁との間に電気的接触を確立し、
板状雌コネクタ及び板状雄コネクタのうちの少なくとも一方は、ピンが貫通穴に受けられた場合、板状雌コネクタに対する圧力をピンに加えるように適合された加圧要素を備える、接続アセンブリが開示される。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明に係る接続アセンブリは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを更に含むことができる。
加圧要素は、板状雌コネクタと一体の可撓性タブであって、ピンが貫通穴に受けられた場合、ピンに当接するように適合された可撓性タブを含むことができる。
板状雄コネクタは、ピンが貫通穴に挿入された場合、可撓性タブを受けるように適合された溝を有することができる。
可撓性タブは、板状雌コネクタの平面に沿って延び、板状雌コネクタの厚さに収まることができる。
加圧要素は、貫通穴の2つの対向側面から互いに向き合って延びる、板状雌コネクタと一体の少なくとも2つのタブであって、ピンが貫通穴に受けられた場合、ピンの2つの対向壁に当接するような形状である、少なくとも2つのタブを含むことができる。
実施形態において、接続アセンブリは、貫通穴に対するピンの停止要素を更に備える。
実施形態において、接続アセンブリは、停止要素を形成する絶縁材料部品を更に備える。絶縁材料部品は、板状雌コネクタの端部を受けるように適合された第1のキャビティと、板状雄コネクタのピンを受けるように適合された第2のキャビティとを有し、キャビティは、板状雌コネクタが第1のキャビティに挿入された場合、ピンを第2のキャビティに通して板状雌コネクタの貫通穴に挿入することを可能にするように、互いに連通することができる。
停止要素は、板状雌コネクタと一体の少なくとも1つのフィンガであって、貫通穴から距離を置いて、貫通穴を覆うように延びる、少なくとも1つのフィンガを備えることができる。
実施形態において、各フィンガは、貫通穴の同じ側面にあり、接続アセンブリは、貫通穴の反対側の側面から延びる少なくとも1つのガイドタブを更に備える。
停止要素は、貫通穴に挿入されるピンの先端部から或る距離を置いた、ピンと一体の突出部を含むことができる。
ピンは、貫通穴に挿入された場合、板状雌コネクタの方向に対して垂直に延びることができ、板状雌コネクタ及び板状雄コネクタのうちの一方は、コネクタ間のインライン接続を可能にするように直角をなすことができる。
【0023】
本発明によれば、少なくとも1つの半導体スイッチと、スイッチに電気的に接続される少なくとも1つのコネクタとを備えるパワーモジュールであって、コネクタは、上述の記載に係る接続アセンブリの雄コネクタ又は雌コネクタであるように適合された板状コネクタであることを特徴とする、パワーモジュールも開示される。
【0024】
上述の記載に係る接続アセンブリの雌コネクタ又は雄コネクタであるように適合されていることを特徴とする、板状電源コネクタも開示される。
【0025】
本発明に係る接続アセンブリは、振動及び/又は熱膨張が生じた場合であってもコネクタ間の電気的接触を維持するために、コネクタが互いに圧力を加えることを可能にする加圧要素を組み込んだコネクタを提供する。
【0026】
加圧要素はコネクタの一部であるので、追加の部品は必要とされず、したがって、接続アセンブリは比較的安価となる。
【0027】
また、従来技術に鑑みて、面接触が増大する。なぜなら、コネクタが板状であり、コネクタ間の電気的接触がピンの主壁に沿って確立されるからである。この幾何学的構成により、面接触を最大2倍又は3倍に増大させることができ、したがって、コネクタの数を低減する又は電流の強度を増大させることができる。
【0028】
提案される接続アセンブリは、いかなるねじ又はワッシャも必要としない。これにより、接続アセンブリの体積が最小限となり、接続アセンブリのジュール効果による損失及び浮遊インダクタンスが抑制される。また、提案される接続アセンブリは、特定の締付けトルクに配慮した操作員による正確な操作の必要性も排除する。
【0029】
また、本発明の1つの実施形態によれば、接続アセンブリは、同じ金属(例えば、銅)の2つのコネクタのみからなることができる。これらのコネクタが同じ熱膨張係数を有するので、結果として得られる接続アセンブリでは、コネクタ間の接触損失が回避される。また、コネクタを組み付けるプロセスは、ステップが唯1つにまで減少され得るため、大幅に単純化される。
【0030】
また、コネクタは、停止要素を備えることができる。実施形態では、停止要素も1つのコネクタと一体に形成されるので、部品は少数のまま、かつ接続アセンブリは低コストのままとなる。
【0031】
停止要素及び/又は加圧要素の形状は、コネクタ間の機械的接触及び電気的接触を最適化するように設計することができる。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照しながら非限定的な例を用いて与えられる以下の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】既に記載された従来技術に係る1つの接続アセンブリを概略的に示す図である。
図2】パワー半導体モジュールとパワー素子との接続部に適用される接続アセンブリの一例を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る接続アセンブリの一例を示す図である。
図4A】雄コネクタを雌コネクタに挿入する前の、本発明の別の実施形態に係る接続アセンブリの一例を概略的に示す図である。
図4B】雄コネクタを雌コネクタに挿入した後の、本発明の別の実施形態に係る接続アセンブリの一例を概略的に示す図である。
図4C図4A及び図4Bに示されている接続アセンブリの雌コネクタを概略的に示す図である。
図5】本発明の例示的な一実施形態の細部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
パワー半導体モジュールとパワー素子とを接続するのに適した接続アセンブリ1を、以下に開示する。
【0035】
図2を参照すると、パワー半導体モジュール2は、ハウジングの内部に配置される少なくとも1つのパワー半導体素子、通例はスイッチ、例えば、MOSFET、IGBT又はJ−FET(接合型電界効果トランジスタ)等のトランジスタ、ダイオード等を備えることができる。半導体素子は、接続アセンブリ1のコネクタ20の部分に電気的に接続される。
【0036】
パワー素子3は、エネルギー蓄積素子、例えば、コンデンサ又はインダクタであることが好ましい。エネルギー蓄積素子は、接続アセンブリ1のコネクタ30の部分に電気的に接続される。
【0037】
接続アセンブリ1の1つの好ましい用途は、トランスファーモールドパワーモジュール2として実現される三相インバータと、少なくとも1つのコンデンサ3との接続である。コンデンサは、2つの端子を有し、これらの端子のそれぞれは、1つの接続アセンブリ1を介してパワー半導体モジュールに接続される。
【0038】
コネクタの概要
ここで、図3及び図4A図4Cを参照しながら、接続アセンブリの実施形態の詳細な説明を行う。
【0039】
接続アセンブリは、1つの雄コネクタ及び1つの雌コネクタを備える。明確さ及び簡潔さのために、本発明の例示的な用途において、雌コネクタ20は、パワー半導体モジュールのコネクタであり、雄コネクタ30は、コンデンサ等のパワー素子のコネクタであるとみなされる。しかしながら、本発明の範囲はこの例に限定されず、パワー素子が雄コネクタを備え、パワー半導体モジュールが雌コネクタを備える逆の方式も包含する。
【0040】
コネクタは両方とも導電性材料で作製され、好ましくは銅で作製される。
【0041】
また、コネクタ20、30は両方とも全体として板状である。すなわち、各コネクタは、幅及び長さに比較して厚さは少なく、概ね(sensibly)平坦である。また、各コネクタは、幅よりも長い、長さ方向である主方向を有する。
【0042】
雄コネクタ30は、先端部において、同様に板状のピン31を有する。特に、ピン31の断面は、図4Aに示されている1つの主方向dに沿って延びる。好ましい一実施形態によれば、この主方向は、雄コネクタの幅の方向に対応する。
【0043】
ピンは、雄コネクタの幅の少なくとも50%にわたって延びることが有利である。この幅は、コネクタの基底部において測定される。
【0044】
好ましい一実施形態において、ピン31の断面は、矩形とすることができるが、図3の例示的な実施形態に示されているように、丸い端部を有する長円形とすることもできる。
【0045】
雌コネクタ20は、コネクタ20の厚さを貫通する穴21を有する。貫通穴21は、雄コネクタ30のピン31を受けるように適合されている。特に、貫通穴は、図3に示されている主方向Dに沿って延びる。この主方向は、好ましくは、雌コネクタの幅の方向に対応する。
【0046】
したがって、雄コネクタ30のピン31が雌コネクタ20の穴21に挿入された場合、雄コネクタと雌コネクタとは、互いに対して垂直に延びることが理解される。しかしながら、パワー半導体モジュール2とパワー素子3との間にインライン接続が必要とされる場合、雄コネクタ及び雌コネクタのうちの一方は、図2に示されているように直角をなすことができる。
【0047】
貫通穴21は、略矩形の形状を有することができるが、矩形の角部は、ピンを穴の中に配置及び係止することを可能にするように、僅かにベベル加工することもできる。
【0048】
貫通穴21は、雌コネクタの幅の少なくとも50%にわたって延びることが有利である。
【0049】
雄コネクタ及び雌コネクタのこの形状により、コネクタ間の電気的接触面が増大する。実際、ピン31が貫通穴に挿入されると、ピンの主方向及び方向dに沿って延びるピンの少なくとも1つの壁32と、雌コネクタの少なくとも1つの対応する壁との間に、電気的接触が確立される。実施形態において、ピンの壁32と接触する雌コネクタの壁は、図3に示されている、穴21の境界を定める壁22とすることができる。したがって、接触面は、雌コネクタの主方向に沿った雌コネクタの穴の境界を定める壁22の表面を含むことができる。
【0050】
必要に応じて、ピン31の側部は、貫通穴21の内側に挿入しやすくするために、図5の例示的な実施形態に示されているように先端部をベベル加工することができる。
【0051】
雌コネクタ20及び雄コネクタ30のうちの少なくとも一方は、加圧要素40を更に備える。加圧要素40は、振動が生じた場合であっても電気的接触を維持し、電気的接触面が最大であることを確実にするために、ピン31が穴21に挿入された場合、雄コネクタと雌コネクタとを互いに押し付けるように適合されている。また、以下でより詳細に記載されるように、接続アセンブリ1は、穴に対するピン31の少なくとも1つの停止要素11を備えることが好ましい。
【0052】
加圧要素
図3及び図4A図4Cを参照しながら、加圧要素40の実施形態を詳述する。
【0053】
加圧要素は、雌コネクタ20と一体に形成される少なくとも1つの可撓性タブ40であって、ピンが穴に挿入された場合、雌コネクタに対する圧力をピン31に加えるために、ピンに当接するように適合された可撓性タブ40を含むことが好ましい。
【0054】
図3を参照すると、1つの例示的な実施形態によれば、加圧要素40は、雌コネクタ20の厚さに収まる少なくとも1つのタブを含む。各タブは、雌コネクタの主方向に対して平行に、穴21の境界を定める壁22の反対側の壁23から穴21に向かって延び、ピンと接触する。
【0055】
タブ40が雌コネクタと一体に形成されているので、タブとピンとの間の接触面もまた、雄コネクタと雌コネクタとの間の電気的接触を増大させることが理解され得る。図3におけるように、加圧要素40は、1つよりも多いタブ、例えば、2つのタブを含むことができる。
【0056】
タブの数及びサイズは、加圧要素の所望の特性を得るために調整することができる。例えば、タブがより細ければ、タブの可撓性を増大させることができ、一方で、タブがより大きければ又はタブの数がより多ければ、コネクタ20とピン31との電気的接触を増大させることができる。
【0057】
また、各タブは、ピンとの電気的接触を最大限にするために、角張った端部を有することが好ましいが、丸い端部も可能な実施形態である。
【0058】
雄コネクタのピン31は、ピンが穴に挿入された場合、タブの端部を受けるように適合された溝33を有することが好ましい。したがって、溝は、ピンの先端部から或る距離を置いて、ピンの断面の主方向に沿って、すなわちコネクタの幅に沿って延在する。溝33は、タブ40とピン31との間に達成された接触を固定する。
【0059】
図4A図4Cを参照すると、代替的な一実施形態によれば、加圧要素の各タブは、雌コネクタの厚さに収まらず、その代わりにコネクタから突出している。
【0060】
この実施形態においても、ピンは、タブ40a、40bのうちの一方を受けるように適合された少なくとも1つの溝33を同様に有することができる。
【0061】
タブ40a、40bは、ピンが壁に挿入された場合にピンの2つの対向壁に当接し、各タブがピンの各側面に圧力を加えることができるような形状であることが好ましい。換言すれば、タブ40a、40bは、各タブが他方のタブに向くように、互いに逆の方向に突出する。
【0062】
ピンの両側面に圧力を加えることで、ピンが雌コネクタに対して傾斜し、それにより、コネクタ間の面接触が僅かに減少することが回避される。
【0063】
図4Cに示されているように、2つのタブ40a、40bは、ピンの2つの側面に圧力を加えるために、雌コネクタ20の同じ面において穴21に対して対称的な位置に配置されることが好ましい。
【0064】
しかしながら、2つのタブ40a、40bは、異なる形状及びサイズを有することができ、異なるレベルでピン31に当接することができる。図4A図4Cに示されている実施形態では、第1のタブ40aは、可撓性であるとともに、溝33に受けられた場合にピン31に対して圧力を加え、第2のタブ40bは、ピン31に対抗圧力を加える。
【0065】
図4A図4Cに示されている例において、タブ40a、40bは、穴21の各側面の中央から雌コネクタの下方に突出する。
【0066】
また、この実施形態の各タブは、接続アセンブリの振動及び/又は熱膨張に対応するように僅かに可撓性である。タブの可撓性は、タブが銅等の金属の薄い層に形成されることから自然と得られる。
【0067】
加圧要素の各タブ40は、雌コネクタ20の内側に切削加工又は機械加工されることが好ましい。コネクタから突出するタブは、切削加工後に曲げられる。
【0068】
ピン31と接触する各タブ40は、雌コネクタと雄コネクタとの間の電気的接触面の一部を追加し、それにより、コネクタ間に流れることができる電流密度を増大させることが理解される。
【0069】
したがって、ピン31が穴に挿入された場合にピン31と電気的に接触する板状雌コネクタの壁は、ピン31と接触する加圧要素の種々のタブ40の壁を含む。
【0070】
停止要素
図3図5を参照しながら、接続アセンブリの穴21に対するピン31の停止要素11を以下に記載する。
【0071】
図3に開示されている1つの実施形態によれば、停止要素11は、雄コネクタ及び雌コネクタとは別個の部品とすることができ、ピンが穴に受けられる位置において、雌コネクタ20の端部及び雄コネクタのピン31の両方を受けるような形状とすることができる。停止要素は、高電圧に耐久可能な絶縁材料部品であることが好ましい。材料は、例えば、Kaptonの名称で市販されているポリイミド材料とすることができる。
【0072】
このために、図3に示されているように、停止要素は、雌コネクタの端部を受けるように適合された第1のキャビティ12と、雄コネクタ30のピン31を受けるように適合された、第1のキャビティに対して垂直に延びる第2のキャビティ13とを有する。
【0073】
キャビティは、雌コネクタ20が第1のキャビティ12に挿入されてキャビティの底部に当接した場合、コネクタの穴21が第2のキャビティ13と位置合わせされるように、互いに対して寸法決め及び配置される。したがって、ピン31は、キャビティの底部に当接して該底部がピン31をキャビティ内で停止させるまで、雌コネクタの穴21に通して第2のキャビティ13に挿入することができる。
【0074】
また、停止要素11のこの実施形態は、2つのコネクタが互いに垂直になり、したがって、接触面が、穴21の境界を定める壁22全体にわたって延びることを確実にする。
【0075】
図3から認識できるように、停止部11のこの実施形態は、各タブが雌コネクタ20の厚さ内に延びる加圧要素40の実施形態と組み合わせることができる。
【0076】
図4A図4Cに示されている別の実施形態によれば、停止要素11は、穴21から或る距離を置いて穴21を覆うように延びる、雌コネクタ20と一体の少なくとも1つのフィンガを含むことができる。図の例示的な実施形態において、2つのフィンガが示されており、これらの2つのフィンガは、穴の同じ側面から延び、穴の反対側の側面から雄コネクタ30を挿入することができるようになっている。
【0077】
フィンガの数及び幅は、設計事項である。
【0078】
しかしながら、穴21の一方の側面に延びる停止要素11として少なくとも1つのフィンガが存在する場合、雌コネクタは、穴21の他方の側面から延びる、ピン31が穴に挿入された場合にピン31の対向側面に接触するような形状の別の停止要素11又はガイドタブ50のいずれかを備えることが好ましい。これにより、停止要素11に向けてのピン31の誘導が確実にされる。図4A図4Cに示されている実施形態において、雌コネクタ20は、2つのガイドタブ50を備え、これらの2つのガイドタブ50は、コネクタの停止要素11のフィンガと同じ面に延在する。ガイドタブ50とフィンガ11とは、穴21の2つの対向側面から延在する。これらの側面は、穴の主方向Dに沿った側面である。
【0079】
この実施形態によれば、ピン31が穴に挿入された場合にピン31と電気的に接触する板状雌コネクタの壁は、停止要素11のフィンガ(複数の場合もある)の壁、及びピンと接触するガイドタブ(複数の場合もある)の壁も含む。
【0080】
最後に、図5に示されている別の実施形態によれば、停止部11は、雄コネクタにおいて、ピンの先端部から或る距離を置いてピン31と一体に形成された突出部を含むことができる。したがって、ピン31が雌コネクタの穴21に挿入された場合、突出部11は、雌コネクタに当接して、ピンが更に奥に挿入されることを阻止する。
【0081】
停止要素11が雌コネクタにおけるフィンガ又は雄コネクタにおける突出部11のいずれかによって形成されている場合、その停止要素11が他方のコネクタに接触することで、雌コネクタと雄コネクタとの間の電気的接触面が増大し、それにより、コネクタ間に流れることができる電流密度が増大することが理解される。
【0082】
停止要素11及び加圧要素40の種々の例を上記に詳述した。一方で図3に示されている好ましい実施形態及び他方で図4A図4Cに示されている好ましい実施形態において、特定の組合せが実現される。
【0083】
図3の実施形態において、加圧要素40は、雌コネクタ20の平面内に延びる2つのタブで形成され、停止要素11は、雌コネクタ20及び雄コネクタ30を受ける追加の絶縁材料部品で形成される。ピン31とタブ40との間、及び、ピンと穴21の境界を定める雌コネクタの壁22との間の接触面において、電気的接触が実現される。
【0084】
図4A図4Cの実施形態において、加圧要素40は、貫通穴21の対向側面から雌コネクタ20の下方に突出する2つのタブ40a、40bで形成される。タブは、貫通穴21の各対向側面の中央から突出する。停止要素11は、雌コネクタの平面に関して雌コネクタの他方の面において穴の上方に突出する2つのフィンガで形成される。フィンガは、穴のタブ40aと同じ側面から延び、タブ40aは、これらのフィンガの中間にある。2つの追加のガイドタブ50は、フィンガと対向して、ピン31の誘導手段として機能する。2つの追加のガイドタブ50は、タブ40bと同じ側面から突出し、タブ40bの各側に配置される。
【0085】
ピン31と、タブ40a、40bの対応する接触面と、ガイドタブ50と、停止要素11のフィンガとの間に、電気的接触が実現される。したがって、ピン31が穴に挿入された場合にピン31と電気的に接触する板状雌コネクタの壁は、タブ40a、40bの壁と、ガイドタブ50の壁と、ピン31と接触するフィンガの壁とを含む。
【0086】
加圧要素40及び停止要素11の位置が逆転された別の実施形態を想定することができる。したがって、ここでは、1つのフィンガが、加圧要素である2つのタブの間に配置される。ガイドタブをフィンガに対向して配置することができる。ピンに対抗圧力を加えるために、加圧要素である第1のタブの反対側に他のタブを配置することができる。
【0087】
特許請求される本発明に係る接続アセンブリ1の組立てプロセスは、非常に容易であることが、容易に理解され得る。
【0088】
実際、いくつかの実施形態において、接続アセンブリ1は、唯2つの要素、すなわち、雄コネクタ30及び雌コネクタのみからなり、これらの2つを組み付けることは、雄コネクタ30を雌コネクタ20に挿入することからなる。
【0089】
例えば、図4Aにおいて、雄コネクタ30は、挿入前の雌コネクタ20から或る距離を置いた状態で示されている。図4Bにおいて、雄コネクタ30は、雄コネクタ30が更に奥に挿入されることを停止要素11が阻止するまで、雌コネクタ20に挿入されている。
【0090】
接続アセンブリが、停止要素11としての別個の材料部品も備える他の実施形態において、部品の組立てプロセスは、雌コネクタを停止要素11に挿入し、次に、雄コネクタを停止要素11に挿入することが含まれる。この際、雄コネクタは、同時に雌コネクタに挿入される。
【0091】
したがって、接続アセンブリの部品の組立てに必要とされるステップは、最大でも2つである。
【0092】
また、各コネクタを機械加工又は切削加工及び曲げ加工によって得ることができるので、雄コネクタ及び雌コネクタの製造も容易である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5