特許第6827641号(P6827641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827641
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】木質パネル工法、木質パネルおよび建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/61 20060101AFI20210128BHJP
   E04B 1/10 20060101ALI20210128BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20210128BHJP
   E04C 2/12 20060101ALI20210128BHJP
   F16B 5/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   E04B1/61 502N
   E04B1/10 C
   E04B2/56 601B
   E04B2/56 604F
   E04B2/56 605B
   E04B2/56 605C
   E04B2/56 605E
   E04B2/56 621L
   E04B2/56 642F
   E04C2/12 Z
   F16B5/00 E
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-109143(P2019-109143)
(22)【出願日】2019年6月12日
(62)【分割の表示】特願2017-184545(P2017-184545)の分割
【原出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-183634(P2019-183634A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-118473(P2017-118473)
(32)【優先日】2017年6月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】白岩 史年
(72)【発明者】
【氏名】北川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 龍司
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−199942(JP,A)
【文献】 特開2012−237104(JP,A)
【文献】 実開昭63−048832(JP,U)
【文献】 特開2009−068293(JP,A)
【文献】 特開2004−204526(JP,A)
【文献】 特開平08−326208(JP,A)
【文献】 特開2003−301530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/61
E04B 1/02,1/10
E04B 2/56
E04B 2/74
E04C 2/12
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一階の木質パネルの側面同士を突き合わせて連結していく木質パネル工法であって、
木質パネルの側面に固定される背板と、連結すべき他方の木質パネルに形成されたスリットに挿入される側板とを有し、当該側板には、ピンが挿入されるピン挿通孔と、当該他方の木質パネルに予め設けられたピンを受けるピン受け溝が設けられた梁受け金物を使用し、
後から設置する木質パネルの側面上端部には前記梁受け金物の前記ピン受け溝が下方を向くよう取り付ける一方、先に設置する木質パネルの側面上部には、後から設置する前記木質パネルに設けた前記梁受け金物の前記側板が挿入されるようにスリットを形成すると共に、当該側板の前記ピン挿通孔およびピン受け溝に対応したピン挿通孔を形成し、かつ、前記ピン受け溝に対応したピン挿通孔には、前記梁受け金物の前記ピン受け溝を受けるピンを取り付けておき、
先に設置する前記木質パネルの側面上部のスリットに対し上方より後から設置する前記木質パネルに設けた前記梁受け金物の前記側板を挿入して、当該側板の前記ピン受け溝を先に設置した前記木質パネルのピン挿通孔に予め取り付けられたピンに当接させ、後から設置する前記木質パネルに設けた前記梁受け金物の前記側板のピン挿通孔と、先に設置した前記木質パネルに形成したピン挿通孔とを一致させ、それらのピン挿通孔を貫通するようにピンを通して先に設置した前記木質パネルと後から設置した前記木質パネルとを連結することを特徴とする木質パネル工法。
【請求項2】
請求項1記載の木質パネル工法において、
複数の先に前記設置した木質パネルのスリットに対して後から設置する前記木質パネルの前記梁受け金物の前記側板を挿入することを特徴とする木質パネル工法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の木質パネル工法において、
先に設置した前記木質パネルに形成される前記スリットは、当該先に設置した木質パネルの面内方向に向かって形成される一方、
後から設置する前記木質パネルに設けられる前記梁受け金物は、その前記側板が当該後から設置する木質パネルの面内方向に対し直交する面外方向と平行になるように設けられ、
先に設置した前記木質パネルと、後から設置する前記木質パネルとが略直交して連結されることを特徴とする木質パネル工法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の木質パネル工法で使用される木質パネルであって、
前記木質パネルの左右両側の側面の内、一方の側面上端部には前記ピン受け溝が下方を向くように取り付けた前記梁受け金物が設けられている一方、他方の側面上端部には前記スリットが形成されていることを特徴とする木質パネル。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の木質パネル工法で使用される木質パネルであって、
前記木質パネルの左右両側の側面の内、一方の側面上端部には前記ピン受け溝が下方を向くように取り付けた前記梁受け金物が設けられていることを特徴とする木質パネル。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の木質パネル工法で使用される木質パネルであって、
前記木質パネルの左右両側の側面の内、一方の側面上端部には前記スリットが形成されていることを特徴とする木質パネル。
【請求項7】
左右両側の内、少なくとも一方側には柱材が設けられる一方、上下両側の内、少なくとも上側には梁材が設けられた木質パネルであって、
前記柱材と前記梁材とは、前記梁材の端面が前記柱材に接するように接合され、
前記柱材の上端部には、
当該柱材の上端部側面に固定される背板と、連結すべき他方の木質パネルに形成されたスリットに挿入される側板とを有し、当該側板には、ピンが挿入されるピン挿通孔と、当該他方の木質パネルに予め設けられたピンを受けるピン受け溝を有する梁受け金物の前記ピン受け溝が下方を向くように前記梁受け金物が取り付けられていることを特徴とする木質パネル。
【請求項8】
請求項7記載の木質パネルであって、
前記柱材における前記梁受け金物が設けられた側と反対側の端部には、後から設置する前記木質パネル側面の上端部に取り付けられた前記梁受け金物の前記側板が挿入されるようにスリットが形成されていることを特徴とする木質パネル。
【請求項9】
請求項4〜請求項8のいずれか一の請求項に記載の木質パネルで壁を構築した建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質パネル工法、木質パネルおよび建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、柱と土台または横架材等の木材同士の接合に使用する木材接合用棒状金物として、パイプ状の木材接合用棒状金物を予め柱と土台または横架材等の木材に形成しておいた穴部(溝部)に嵌入し、次いで柱と土台または横架材の挿通孔と、木材接合用棒状金物の貫通孔とにピンを挿通して、木材同士を固定する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−350597号公報
【特許文献2】特開2009−228259号公報
【特許文献3】特開2010−65493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1,2の木材接合用棒状金物は、予め工場において建物の壁の基になる所定の大きさを有する木質パネルを複数製造しておき、木質パネルを建築現場まで運んで組み立てる木質パネル工法における上下階の木質パネルの連結に使用する場合、棒状の金物で長いため、予め下階の木質パネルに埋め込んでおくと、トラック等の搬送車両の荷台に積載して搬送する際、道路交通法等の高さ制限を越えるおそれがある、という問題があった。
また、木質パネルは高さがあると共に重量が重いため、工場で予め製造した木質パネルをトラック等の搬送車両の荷台に積載することが困難であると共に、バランス良く荷台に積載しないと、木質パネル自体が変形したり、木質パネルの断熱材等を損傷するおそれがある、という問題もあった。
【0005】
また、このような木質パネル同士を左右方向に連結して同一階の壁を構築する場合、例えば、木造在来工法等で使用されているドリフトピン挿入用のピン挿通孔やピン受け溝が形成された側板と背板とを有する梁受け金物やドリフトピン等を使用して連結することも考えられる。
【0006】
しかしながら、梁受け金物が固定された一方の木質パネルを下側にして上方から他の木質パネルを落とし込んでドリフトピンを挿入して連結する場合、後述する図13図15に示すように、上方から落とし込む他方の木質パネル側の端側縦材に、一方の梁受け金物に固定した梁受け金物を他方の梁受け金物の側方から挿入するための切欠部を形成する必要があると共に、また内装工事の際に木質パネルの内側に石膏ボードの下地となる端側縦材に切欠部があるためその切欠部に埋め木を入れる等、切欠部の加工作業やその切欠部に埋め木をする作業の負担が大きいと共に、切欠部によって木質パネル自体の強度を劣化させるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に着目してなされたもので、同一階の木質パネルの側面同士を突き合わせて連結する際、後から設置する木質パネルに固定した梁受け金物を先に設置する木質パネルの側方から挿入するための切欠部の加工作業やその切欠部に埋め木をする作業を不要にして、作業の負担を軽減できると共に、木質パネル自体の強度の劣化を防止することができる木質パネル工法、木質パネルおよび建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る木質パネル工法は、同一階の木質パネルの側面同士を突き合わせて連結していく木質パネル工法であって、木質パネルの側面に固定される背板と、連結すべき他方の木質パネルに形成されたスリットに挿入される側板とを有し、当該側板には、ピンが挿入されるピン挿通孔と、当該他方の木質パネルに予め設けられたピンを受けるピン受け溝が設けられた梁受け金物を使用し、後から設置する木質パネルの側面上端部には前記梁受け金物の前記ピン受け溝が下方を向くよう取り付ける一方、先に設置する木質パネルの側面上部には、後から設置する前記木質パネルに設けた前記梁受け金物の前記側板が挿入されるようにスリットを形成すると共に、当該側板の前記ピン挿通孔およびピン受け溝に対応したピン挿通孔を形成し、かつ、前記ピン受け溝に対応したピン挿通孔には、前記梁受け金物の前記ピン受け溝を受けるピンを取り付けておき、先に設置する前記木質パネルの側面上部のスリットに対し上方より後から設置する前記木質パネルに設けた前記梁受け金物の前記側板を挿入して、当該側板の前記ピン受け溝を先に設置した前記木質パネルのピン挿通孔に予め取り付けられたピンに当接させ、後から設置する前記木質パネルに設けた前記梁受け金物の前記側板のピン挿通孔と、先に設置した前記木質パネルに形成したピン挿通孔とを一致させ、それらのピン挿通孔を貫通するようにピンを通して先に設置した前記木質パネルと後から設置した前記木質パネルとを連結することを第1の特徴とする。
また、本発明に係る木質パネル工法は、複数の先に前記設置した木質パネルのスリットに対して後から設置する前記木質パネルの前記梁受け金物の前記側板を挿入することを第2の特徴とする。
また、本発明に係る木質パネル工法は、先に設置した前記木質パネルに形成される前記スリットは、当該先に設置した木質パネルの面内方向に向かって形成される一方、後から設置する前記木質パネルに設けられる前記梁受け金物は、その前記側板が当該後から設置する木質パネルの面内方向に対し直交する面外方向と平行になるように設けられ、先に設置した前記木質パネルと、後から設置する前記木質パネルとが略直交して連結されることを第3の特徴とする。
また、本発明に係る木質パネルは、上述のいずれかの木質パネル工法で使用される木質パネルであって、前記木質パネルの左右両側の側面の内、一方の側面上端部には前記ピン受け溝が下方を向くように取り付けた前記梁受け金物が設けられている一方、他方の側面上端部には前記スリットが形成されていることを第1の特徴とする。
また、本発明に係る木質パネルは、上述のいずれかの木質パネル工法で使用される木質パネルであって、前記木質パネルの左右両側の側面の内、一方の側面上端部には前記ピン受け溝が下方を向くように取り付けた前記梁受け金物が設けられていることを第2の特徴とする。
また、本発明に係る木質パネルは、上述のいずれかの木質パネル工法で使用される木質パネルであって、前記木質パネルの左右両側の側面の内、一方の側面上端部には前記スリットが形成されていることを第3の特徴とする。
また、本発明に係る木質パネルは、左右両側の内、少なくとも一方側には柱材が設けられる一方、上下両側の内、少なくとも上側には梁材が設けられた木質パネルであって、前記柱材と前記梁材とは、前記梁材の端面が前記柱材に接するように接合され、前記柱材の上端部には、当該柱材の上端部側面に固定される背板と、連結すべき他方の木質パネルに形成されたスリットに挿入される側板とを有し、当該側板には、ピンが挿入されるピン挿通孔と、当該他方の木質パネルに予め設けられたピンを受けるピン受け溝を有する梁受け金物の前記ピン受け溝が下方を向くように前記梁受け金物が取り付けられていることを第4の特徴とする。
また、本発明に係る木質パネルは、前記柱材における前記梁受け金物が設けられた側と反対側の端部には、後から設置する前記木質パネル側面の上端部に取り付けられた前記梁受け金物の前記側板が挿入されるようにスリットが形成されていることを第5の特徴とする。
また、本発明に係る建物は、上述のいずれかの木質パネルで壁を構築したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る木質パネル工法、木質パネルおよび建物によれば、同一階の木質パネルの側面同士を突き合わせて連結する際、後から設置する木質パネルに固定した梁受け金物を先に設置する木質パネルの側方から挿入するための切欠部の加工作業やその切欠部に埋め木をする作業を不要にして、作業の負担を軽減できると共に、木質パネル自体の強度の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a),(b)それぞれ、本発明に係る実施形態1の木材接合用棒状金物(分離状態)の正面図、右側面図である。
図2】(a),(b)それぞれ、実施形態1の木材接合用棒状金物(連結状態)の正面図、右側面図である。
図3図2(a),(b)それぞれにおけるA−A線断面図、B−B線断面図である。
図4】本発明に係る実施形態1の木材接合用棒状金物における下側金物と上側金物との外径の違いを示す部分拡大図である。
図5】実施形態1の木材接合用棒状金物の下側金物を予め組み込んだ木質パネルをトラックに積載した状態を示す説明図である。
図6】実施形態1の木材接合用棒状金物の下側金物を予め組み込んだ木質パネルを建築現場まで運び、上側金物を連結する際の状態を示す部分拡大説明図である。
図7】実施形態1の木材接合用棒状金物の下側金物を予め組み込んだ木質パネルの築現場まで運び、上側金物を連結した後の状態を示す部分拡大断面図である。
図8】実施形態1の木材接合用棒状金物の下側金物を予め組み込んだ木質パネルの築現場まで運び、上側金物を連結した後の状態を示す部分拡大平面図である。
図9】(a),(b)それぞれ下側金物の上端部を下側の木材より突出させた状態で埋め込み木質パネル同士の継ぎ目ラインと下側金物と上側金物の継ぎ目ラインが同一線上に位置しないようにした実施形態1の木質パネル工法と、木質パネル同士の継ぎ目ラインと下側金物と上側金物の継ぎ目ラインが同一線上に位置した場合とを示す部分拡大正面図である。
図10】本発明に係る実施形態1の木材接合用棒状金物等を使用して木質パネルの側面同士を突き合わせて左右の水平方向に連結していく実施形態2の木質パネル工法を示す説明図である。
図11】実施形態2の木質パネル工法の特徴である先に設置する木質パネルの側面上部のスリットに対し後から設置する木質パネルに上下逆さに設けた梁受け金物の側板を上方より落し込む作業を拡大して示す部分拡大正面図である。
図12】実施形態2の木質パネル工法の特徴である先に設置する木質パネルの側面上部のスリットに対し後から設置する木質パネルに上下逆さに設けた梁受け金物の側板を上方より落し込み、連結した状態を拡大して示す部分拡大正面図である。
図13】梁受け金物のピン受け溝を上向きで使う従来の木質パネルを水平方向に連結する手順を示す斜視図である。
図14】梁受け金物のピン受け溝を上向きで使う従来の木質パネルを水平方向に連結する手順を示す斜視図である。
図15】梁受け金物のピン受け溝を上向きで使う従来の木質パネルを水平方向に連結する手順を示す斜視図である。
図16】梁受け金物を逆使い、すなわち梁受け金物のピン受け溝を下向きで使って木質パネルを水平方向に連結する実施形態2の木質パネル工法の手順を示す斜視図である。
図17】梁受け金物を逆使い、すなわち梁受け金物のピン受け溝を下向きで使って木質パネルを水平方向に連結する実施形態2の木質パネル工法の手順を示す斜視図である。
図18】梁受け金物を逆使い、すなわち梁受け金物のピン受け溝を下向きで使って木質パネルを水平方向に連結する実施形態2の木質パネル工法の手順を示す斜視図である。
図19】(a),(b)それぞれ、本発明に係る実施形態1の木材接合用棒状金物よりも長さの短い他の木材接合用棒状金物(分離状態)の例を示す正面図、右側面図である。
図20】(a),(b)、それぞれ、実施形態3の木質パネル搬送器具を構成するパネルラックの正面図、平面図である。
図21】実施形態3の木質パネル搬送器具を構成するパネルラックの側面図である。
図22】(a)〜(c)、それぞれ、実施形態3の木質パネル搬送器具を構成するパネルラック吊下げ天秤の正面図、平面図、側面図である。
図23】実施形態3の木質パネル搬送器具を構成するパネルラックとパネルラック吊下げ天秤とを連結し、パネルラック吊下げ天秤をクレーンで吊った状態を示す斜視図である。
図24】実施形態3の木質パネル搬送器具を構成するパネルラック2基、トラック等の搬送車両の荷台に積載した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る木質パネル工法、木質パネルおよび建物や、木材接合用棒状金物および木質パネル搬送器具の一形態を、それぞれ、実施の形態1〜3として、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態1〜3は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態1〜3に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
実施形態1.
まず、本発明に係る木材接合用棒状金物の一形態を実施形態1として説明する。
【0013】
<木材接合用棒状金物1>
実施形態1の木材接合用棒状金物1は、柱と柱や柱と梁、木質パネル同士等の木材同士を接合するもので、図1図3に示すように、上下に分割される下側金物11と、上側金物12とから構成される。
【0014】
(下側金物11)
下側金物11は、図3(a),(b)に示すように中空の鋼管(パイプ)から構成されており、図1(a),(b)に示すようにその上端部には、雌ネジ部11aが形成されている一方、図上、雌ネジ部11aより下方には、それらの長手方向とは直交する径方向に下側の木材に対し後述するようにドリフトピン15やボルト13等(図6図8参照。)で固定するための2つの貫通孔11b,11cが形成されている。
【0015】
2つの貫通孔11b,11cは、図1図3に示すように、貫通方向が直交、すなわち90度の角度で交差して設けられている。
【0016】
(上側金物12)
上側金物12は、図3(a),(b)に示すように中実の鋼材から構成されており、図1(a),(b)に示すように下端部には、下側金物11の雌ネジ部11aに螺合する雄ネジ部12aが形成されている一方、雄ネジ部12aよりも上方には、それらの長手方向とは直交する径方向に上側の木材に対しドリフトピン15やボルト13等で固定するための2つの貫通孔12b,12cが形成されている。
【0017】
上側金物12の2つの貫通孔12b,12cは、下側金物11の2つの貫通孔11b,11cと同様に、貫通方向が直交して設けられている。
【0018】
そして、下側金物11と上側金物12は、図2(a),(b)や図3(a),(b)に示すように、それらの雌ネジ部11aと雄ネジ部12aとを螺合させて結合させた場合、貫通孔11bと貫通孔12b、貫通孔11cと貫通孔12cがそれぞれ平行になり易いように雌ネジ部11aおよび雄ネジ部12aに呼び径が16mmでピッチが1.5mmの細目ネジが形成されている。
【0019】
また、本実施形態の木材接合用棒状金物1では、図4に示すように、下側金物11の外径R1は、上側金物12の外径R2よりも大きく形成している。
【0020】
<木材接合用棒状金物1を使用した実施形態1の木質パネル工法>
【0021】
次に、実施形態1の木材接合用棒状金物1を使用した実施形態1の木質パネル工法について説明する。尚、木質パネル工法とは、建物の壁となる木質パネルを予め工場などで製作しておき、建築現場でその木質パネル同士を連結して、建物の壁を構築する工法である。
【0022】
実施形態1の木質パネル工法では、図5に示すように、上階がある下階、例えば1階の木質パネル2をトラック3等で建物の建築現場まで運ぶ場合、1階の木質パネル2の上部に、それぞれ、木材接合用棒状金物1の下側金物11のみ予め埋め込んだ状態で運ぶ一方、上側金物12は下側金物11に結合せずに運び、建築現場において上側金物12を下側金物11に螺合して木材接合用棒状金物1を完成させる。
【0023】
そのため、木質パネル2の上部に下側金物11に上側金物12を螺合して木材接合用棒状金物1が完成した状態でトラック3等の搬送車両で搬送する場合、図5に示すように、木質パネル2の高さやトラック3の荷台の高さを考慮すると、道路交通法上の高さ制限(例えば、3.8m。)を越える可能性があるが、上側金物12を取外した状態で搬送するので、道路交通法上の高さ制限を確実にクリアすることができる。
【0024】
建築現場では、図6に示すように木質パネル2の上部に予め下側金物11の雌ネジ部11aが突出するように固定された当該雌ネジ部11aに上側金物12の雄ネジ部12aを螺合して、図7に示すように木材接合用棒状金物1を完成させる。
【0025】
その際、下側金物11の雌ネジ部11aおよび上側金物12の雄ネジ部12aには、上述したように呼び径が16mmでピッチが1.5mmの細目ネジが形成されている。そのため、雌ネジ部11aおよび雄ネジ部12aに呼び径が16mmでピッチが2.0mmの並目ネジを形成した場合よりも、貫通孔11bと貫通孔12b、貫通孔11cと貫通孔12cが平行になり易くなるので、現場での作業効率が向上する。ただし、呼び径が16mmでピッチが1.5mmの細目ネジのピッチは、あくまで一例であり、呼び径が16mmの場合、ピッチは例えば並目ネジの2.0mmより小さい1.0mm〜1.8mm程度の値でも良く、本発明では、これ以外の呼び径やピッチでも勿論良い。
【0026】
尚、この実施形態1では、木質パネル2に対する下側金物11の固定は、図6図8に示すように、木質パネル2の柱2aの上端部に下側金物11が挿入可能な穴部を形成すると共に、下側金物11の貫通孔11b,11cにそれぞれボルト13を通して柱2aに固定できるように柱2aにも貫通孔を形成する。
【0027】
また、この実施形態1では、図6図8に示すように、柱2aと梁2bとの接合に、平面視コ字形状で一対の側板4a,4aと、その側板4a,4aを連結する背板4bとからなる梁受け金物4を使用する。
【0028】
そのため、柱2aには、梁受け金物4を固定するため、背板4bのボルト挿通孔の位置に対応した貫通孔を形成する。尚、この実施形態1では、柱2aに対し2個の梁受け金物4を使用して2本の梁2b,2bが直交するように取り付けるため、ボルト13を通す柱2aの貫通孔も直交するように形成する。
【0029】
一方、梁2bには、柱2aに固定した梁受け金物4の側板4a,4aが挿入されるスリット2b1,2b1や、ボルト13先端に螺合するナット14等が収容される凹部2b2と、梁受け金物4を梁2bにドリフトピン15で固定するためのピン挿通孔2b3〜2b5(図11参照。)が形成されている。
【0030】
そして、図6図8に示すように、柱2aには2個の梁受け金物4,4それぞれ3本のボルト13および3個のナット14で背板4b,4bを固定する際、2個の梁受け金物4,4それぞれで最上位のボルト13,13は、柱2aの穴部に埋め込んだ木材接合用棒状金物1の下側金物11の直交する貫通孔11b,11cにも通して柱2aに固定する。
【0031】
そのため、実施形態1の木質パネル工法では、柱2aにおける木材接合用棒状金物1の下側金物11の固定に2個の梁受け金物4,4固定用のボルト13,13を共用することができるので、ボルト13およびナット14の使用数を削減することができる。
【0032】
また、実施形態1の木質パネル工法では、予め工場等で木材接合用棒状金物1の下側金物11のみ木質パネル2の柱2aの取り付けておくが、その際、図5図7に示すように下側金物11の雌ネジ部11aが形成された上端部が木質パネル2の柱2aの上端部から突出するような状態で下側金物11に取り付けておく。
【0033】
そのため、下階の木質パネル2の柱2aに固定された下側金物11に上側金物12を連結した後、図9(a)に示すように上階の木質パネルの柱2a’を接合する場合、柱2aと柱2a’の継ぎ目ラインL1と、下側金物11と上側金物12の継ぎ目ラインL2とが同一線上に位置しなくなるので、柱2aと柱2a’のズレ、すなわち上下の木質パネルのズレに対して木材接合用棒状金物1が強く抵抗することが可能となり、建物全体の強度と精度を向上させることができる。

【0034】
また、実施形態1の木材接合用棒状金物1では、図4に示したように下側金物11の外径R1を上側金物12の外径R2よりも大きくしているため、図9(a)に示すように上階の木質パネルの柱2a’には、上側金物12および下側金物11の上端部を挿入させる場合には、外径が大である下側金物11の外径R1に合わせ、その外径R1以上の内径を有する穴部を予め形成しておく。
【0035】
そのため、上階の木質パネルの柱2a’の穴部の内径は、上側金物12の外径R2よりも大きくなるので、上階の木質パネルと下階の木質パネルとを接合するため、上階の木質パネルをクレーン等で吊上げて上方から下階の木質パネル上に降ろして、上階の木質パネルの柱2a’の穴部に下階の木質パネル2から突出する木材接合用棒状金物1を挿入する際、挿入し易くなり、上下階の木質パネルの接合作業の作業性を向上させることができる。
【0036】
また、上階の木質パネルの柱2a’の根元の部分には下側金物11の外径R1に合わせた内径の穴部が形成されており、図9(a)に示すように下側金物11が柱2aと柱2a’の継ぎ目ラインL1より上側に突出して柱2a’の穴部に入り込むため、がたつきも抑えることができる。
【0037】
尚、上記実施形態1では、木材接合用棒状金物1を木質パネル2の柱2a,2a’の接合に使用して説明したが、本発明では、これに限らず、木質パネル2以外の柱と柱や柱と梁等の木材同士の接合に使用するようにしても良い。
【0038】
実施形態2.
次に、本発明に係る木質パネル工法の一形態を実施形態2として説明する。
【0039】
上記実施形態1では、木材接合用棒状金物1、および木材接合用棒状金物1を利用した下階の木質パネル2と上階の木質パネルとの接合について説明したが、同一階で木質パネル2同士を横方向、すなわち地面と平行に接合して建物の壁を構築する方法については説明していない。
【0040】
そこで、実施形態2では、実施形態1の木材接合用棒状金物1や梁受け金物4を利用した同一階の木質パネル2同士を横方向に接合して建物の壁を構築する方法について説明する。尚、木材接合用棒状金物1や梁受け金物4としては、上記実施形態1と同じ金物を使用するが、実施形態2では、木質パネル2への梁受け金物4の取付け方法が異なっている。
【0041】
<木質パネル2の構造>
木質パネル2の構造については、上記実施形態1では詳述しなかったが、図10および図11に示すように、柱2aおよび梁2b以外に、下側枠材2cと、上下それぞれの横材2d,2dと、左右両側の幅の狭い端側縦材2e,2eと、端側縦材2e,2eよりも太い中央の中央縦材2fとを設け、横材2d,2dと、端側縦材2e,2eと、中央縦材2fとで囲まれた空間に図示しない断熱材等を収容すると共に、横材2d,2d、端側縦材2e,2e、中央縦材2fおよび断熱材の上から合板2gを貼り合わせる等して工場で製造する。ここで、梁2bの上下方向の長さである高さは、少なくとも梁受け金物4を高さ以上する。尚、図10において、符号の5は、土台である。
【0042】
このように構成された木質パネル2であって、上階がある例えば1階の木質パネル2には、実施形態1と同様に木材接合用棒状金物1の下側金物11を予め設けておく。ここで、下側金物11は、図10に示すように、木質パネル2毎に2箇所、具体的には柱2aの上端部と、梁2bにおける中央縦材2f上方に設けている。尚、図10および図11は、建築現場で下側金物11に上側金物12を螺合して木材接合用棒状金物1を完成させた後の状態を示している。
【0043】
また、実施形態2の木質パネル工法では、木質パネル2同士を水平方向に連結して建物の壁を構築するため、実施形態1で説明した平面視コ字形状の梁受け金物4を使用する。ただし、上記実施形態1の木質パネル工法における梁受け金物4の使用方法とは異なり、梁受け金物4を逆使い、すなわち上下逆さに取り付けて使用する。
【0044】
つまり、実施形態2の木質パネル工法では、図10図12に示すように、先に立設する木質パネル2、すなわち図上、左側で土台5上に立設した木質パネル2の梁2bには、当該木質パネル2に後から連結する図上、右側の木質パネル2の梁受け金物4の一対の側板4a,4aが挿入できるようにスリット2b1,2b1および凹部2b2を形成しておく。また、スリット2b1,2b1に挿入された図上、右側の木質パネル2の梁受け金物4の一対の側板4a,4aを固定するため、ドリフトピン15を通すピン挿通孔2b3〜2b5を形成すると共に、最下位のピン挿通孔2b3には、梁受け金物4を受けるため、予めドリフトピン15を挿入して取り付けておく。
【0045】
一方、後から連結する図上、右側の木質パネル2には、上述したように柱2aの2箇所に木材接合用棒状金物1を取り付けておくと共に、梁受け金物4を梁2bにボルト13やナット14を使用して取り付けておく。
【0046】
ただし、実施形態2の木質パネル工法では、図10および図11に示すように、梁受け金物4を逆使い、すなわち上下逆さにして、梁受け金物4のピン受け溝4a1が2つのピン挿通孔4a2,4a3の下方にくるような状態で柱2aに固定しておく。
【0047】
そして、先に土台5に固定した図上、左側の木質パネル2に対し、図11に示すように、図上、右側の木質パネル2を降下させ、左側の木質パネル2の梁2bに予め形成しておいたスリット2b1,2b1や凹部2b2に、右側の木質パネル2の梁受け金物4の一対の側板4a,4aを挿入させると、梁受け金物4下側のピン受け溝4a1が、図12に示すように左側の木質パネル2の最下位のピン挿通孔2b3に予め挿入し取り付けておいたドリフトピン15に当たって止まり、梁受け金物4の一対の側板4a,4aの2つのピン挿通孔4a2,4a3と、左側の木質パネル2のピン挿通孔2b4,2b5の位置を合わせることができる。
【0048】
そのため、左側の木質パネル2のピン挿通孔2b4,2b5にそれぞれドリフトピン15を通すと、図12に示すように右側の梁受け金物4の一対の側板4a,4aの2つのピン挿通孔4a2,4a3にもドリフトピン15が通って、左側の木質パネル2と右側の木質パネル2とを簡単に連結することができる。
【0049】
尚、各木質パネル2には、図10図12に示すように、上記実施形態1と同様に工場製造時に予め木材接合用棒状金物1の下側金物11を埋め込み固定し、建築現場において上側金物12を螺合して木材接合用棒状金物1を完成させているため、実施形態2の木質パネル工法において上階の木質パネル2を接合する場合、上記実施形態1と同様に木材接合用棒状金物1を使用して上階の木質パネル2を接合することができる。
【0050】
ここで、実施形態2の木質パネル工法における木質パネル2同士を水平方向に連結する際、梁受け金物4を逆使い、すなわち梁受け金物4を上下逆さにしてピン受け溝4a1が下向きになるように取り付けて使用する方法と、梁受け金物4のピン受け溝4a1を上向きで使う従来方法との違いを、図13図18を参照して詳細に説明する。ただし、図13図18では、説明の便宜上、木質パネル2同士の水平方向連結に直接関係しない木材接合用棒状金物1等は省略して説明する。
【0051】
図13図15は、梁受け金物4のピン受け溝4a1を上向きで使う従来の木質パネル2を水平方向に連結する手順を示す斜視図である。
【0052】
図13に示すように、一方の木質パネル2を構成する柱2aの側面に梁受け金物4のピン受け溝4a1を上向きで固定しておく一方、他方の木質パネル2の梁受け金物4の梁2bにはスリット2b1,2b1等を形成すると共に、最上位のピン挿通孔にのみドリフトピン15を取り付けておいた他方の木質パネル2の梁2bを落とし込み、図15に示すように残りのピン挿通孔にドリフトピン15を挿入して木質パネル2同士を水平方向に連結する従来方法の場合、他方の木質パネル2の端側縦材2eに切欠部2e1を設ける必要がある。
【0053】
この従来方法の場合、図14に示すように、一方の木質パネル2の柱2aに固定した梁受け金物4を側方から他方の木質パネル2の端側縦材2eの切欠部2e1に挿入し、その挿入後、切欠部2e1が設けられた他方の木質パネル2側を落として、図15に示すように、他方の木質パネル2の梁受け金物4の梁2bにはスリット2b1,2b1に一方の木質パネル2の柱2aに固定した梁受け金物4の側板4a,4aを入れ込む必要がある。
【0054】
また内装工事の際に、石膏ボードの下地となる端側縦材2eに切欠部2e1があると、石膏ボードを貼り付けるためその切欠部2e1に埋め木をする必要がある。
【0055】
そのため、他方の木質パネル2の端側縦材2eに設ける切欠部2e1は、図13図14に示すように、一方の木質パネル2側の梁受け金物4を側方から入れ込むため、切欠部2e1の上下方向の長さを少なくとも梁受け金物4の上下方向の長さよりも大きくする必要があり、切欠部2e1によって木質パネル2の強度が劣化するだけでなく、切欠部2e1の加工作業やその切欠部2e1に埋め木をする作業が必要である。
【0056】
図16図18は、梁受け金物4を逆使い、すなわち梁受け金物4のピン受け溝4a1を下向きで使って木質パネル2同士を水平方向に連結する実施形態2の木質パネル工法の手順を示す斜視図である。
【0057】
図16図17に示すように、梁受け金物4を逆使いして木質パネル2同士を水平方向に連結する実施形態2の木質パネル工法は、一方の木質パネル2を構成する柱2aの側面に梁受け金物4をピン受け溝4a1が下向きになるように固定しておき、この一方の木質パネル2側を他方の木質パネル2に落とし込んで、図18に示すように最後にドリフトピン15を2本打ち込んで木質パネル2同士を連結するため、他方の木質パネル2の梁2bにスリット2b1,2b1等を形成しておけば、他方の木質パネル2側の端側縦材2eには、図13図15に示すような切欠部2e1を設ける必要がなくなる。
【0058】
そのため、実施形態2の木質パネル工法によれば、他方の木質パネル2側の端側縦材2eには、図13図15に示すような切欠部2e1を省略できるので、切欠部2e1を設けない分だけ他方の木質パネル2の強度が向上すると共に、切欠部2e1の加工作業やその切欠部2e1に埋め木をする作業の分だけ作業負担を軽減することができる。
【0059】
以上説明したように、実施形態2の木質パネル工法によれば、上記実施形態1の木質パネル工法と同様に工場製造時に予め木材接合用棒状金物1の下側金物11のみを埋め込み固定して建築現場まで搬送できるので、上記実施形態1と同様に道路交通法上の高さ制限を確実にクリアすることができる。
【0060】
また、実施形態2の木質パネル工法では、同一階で木質パネル2同士を横方向、すなわち地面と平行に接合して建物の壁を構築するため、平面視コ字形状の梁受け金物4を逆さ、すなわち梁受け金物4のピン受け溝4a1が2つのピン挿通孔4a2,4a3の下方にくるように木質パネル2の柱2aに固定する一方、逆さ状態の梁受け金物4の側板4a,4aが嵌り込む木質パネル2にはスリット2b1,2b1および凹部2b2を形成して、逆さ状態の梁受け金物4を取り付けた木質パネル2の方を落とし込んで木質パネル2同士を連結するので、スリット2b1,2b1を設ける側の木質パネル2を横(側方)から入れて落とし込む場合と比較して、作業が簡単になり、作業効率が向上する。
【0061】
また、梁受け金物4のピン受け溝4a1が2つのピン挿通孔4a2,4a3よりも上方に位置するように一方の木質パネルの柱2aに取り付け、その梁受け金物4のピン受け溝4a1に他方の木質パネル2に予め取り付けたドリフトピン15が嵌るように当該他方の木質パネル2を落とし込んで木質パネル2同士を連結する場合、当該他方の木質パネル2には、一方の木質パネル2の梁受け金物4を側方から差し込み、その後、落とし込むため、図13図15に示すように梁受け金物4の上下方向の長さ以上の切欠部2e1を設ける必要がある。また、内装工事の際に、石膏ボードの下地となる端側縦材2eに切欠部2e1があると、石膏ボードを貼り付けるためその切欠部2e1に埋め木をする必要がある。
【0062】
これに対し、実施形態2の木質パネル工法では、図10図12図16図18に示すように、上下逆さ状態の梁受け金物4を取り付けた木質パネル2の方を落とし込んで木質パネル2同士を連結するので、他方の木質パネル2の端側縦材2eには切欠部2e1を設ける必要がない。
【0063】
そのため、実施形態2の木質パネル工法では、他方の木質パネル2の端側縦材2eに切欠部2e1を設ける必要がなくなると共に、木質パネル2に石膏ボードを取り付ける際にその切欠部2e1に埋め木をする作業も不要になるので、木質パネル2の製造工場における加工作業の負担や現場での作業負担が少なくなり、作業効率が向上すると共に、木質パネル2の強度を向上させることができる。
【0064】
また、実施形態2の木質パネル工法では、他方の木質パネル2の端側縦材2eに切欠部2e1を設ける必要がなくなるので、他方の木質パネル2の端側縦材2eとして細い木材を使用することが可能となり、木質パネル2の製造コストを低減することができると共に、木質パネル2自体を軽量化することも可能となり、建築工事全体の作業効率を向上させることができる。
【0065】
また、実施形態2の木質パネル工法では、図13図15に示す従来方法と異なり、一方の木質パネル2の柱2aに固定した梁受け金物4を側方から他方の木質パネル2の端側縦材2eに切欠部2e1に挿入する必要がなくなると共に、木質パネル2に石膏ボードを取り付ける際にその切欠部2e1に埋め木をする作業も不要になるので、狭小地でも使い勝手の良い木質パネル2となり、木質パネル2による壁構築時の作業効率も向上させることができる。
【0066】
尚、上記実施形態1,2の説明では、図1図3等に示すように、下側金物11より長い上側金物12で説明したが、本発明では、これに限定されるものではなく、下側金物11と上側金物12の長さを同じ長さにしても良いし、さらには、図19(a),(b)に示すように下側金物11の方を上側金物12よりも長く構成して良く、要は、木材接合用棒状金物1を下側金物11と上側金物12との分割構造で構成して、かつ、下側金物11のみ設けた木質パネル2の搬送時、道交法等の高さ制限を受けないような長さに構成していれば良い。
【0067】
また、上記実施形態1,2の説明では、下側金物11に雌ネジ部11aを形成する一方、上側金物12に雄ネジ部12aを設けて説明したが、本発明では、これに限らず、下側金物11に雄ネジ部を形成する一方、上側金物12に雌ネジ部を設けるようにしても勿論良い。
【0068】
実施形態3.
次に本発明に係る木質パネル搬送器具の一形態を実施形態3として説明する。
【0069】
実施形態3として説明する木質パネル搬送器具6は、上述した実施形態1の木材接合用棒状金物1を使用した木質パネル2等、工場で予め製造した木質パネルをトラック3等の搬送車両に積載する際に使用するもので、1枚または複数枚の木質パネル2を積載可能なパネルラック61と、そのパネルラック61を吊上げるパネルラック吊下げ天秤62とを備えている。
【0070】
<パネルラック61の構成>
図20(a),(b)および図21は、それぞれ、実施形態3の木質パネル搬送器具1を構成するパネルラック61の正面図、平面図、側面図である。
【0071】
パネルラック61は、図20(a),(b)および図21に示すように、積載される1または複数の木質パネル2の下面を支持するパネル下面支持部61Bと、そのパネル下面支持部61Bの左右両側に所定間隔W1だけ離して立設され、1または複数の木質パネル2の側面を支持する一対のパネル側面支持部61A,61Aとを有し、側面視、コ字形状に構成されている。ここで、一対のパネル側方支持部61A,61Aの間隔W1は、約1020mmであり、パネルラック61がトラック3等の搬送車両の荷台に2基(2ラック)積めるように、その荷台の横幅の1/2未満にしている。
【0072】
各パネル側面支持部61Aは、図20(a)に示すように、約2510mmの長さを有するアングル材を利用した1本の上部横材61aおよび下部横材61bと、約845mmの長さを有する角パイプを使用した2本の中間材61cと、約260mmの長さを有する角パイプを使用した8本の横桟材61dと、約2600mmの長さを有する角パイプを使用した5本の縦材61eとを格子状に溶接し、特に、左右両側では2本の縦材61e間の間隔を短くすると共に、上下方向の横桟材61d間の間隔も短くして左右両側に梯子部分を形成して構成されている。尚、上部横材61aと縦材61eとは、接合板61gにより溶接している。
【0073】
また、パネルラック61の一対のパネル側方支持部61A,61Aそれぞれの上部横材61aの前後には、それぞれ、図20(a),(b)および図21に示すように、後述するパネルラック吊下げ天秤62の4隅に設けられた係止部であるフック62dが係止するラック用被係止部61hが溶接して設けられている。
【0074】
ラック用被係止部61hは、図20(a)に示すように、丸鋼を折り曲げ、折り曲げた箇所が二等辺三角形の頂点になるように形成されており、図21に示すようにアングル材である上部横材61aのフランジ部分の内側面に溶接して設けている。また、前後のラック用被係止部61h,61hの間には、ラック用被係止部61h,61hがパネルラック61に積載した木質パネル2の側面に接触しないよう、上部横材61aのフランジ部分の内側面には、図21に示すようにラック用被係止部61hの外径よりも大きい厚さを有する補助板61iが溶接等されて設けられている。
【0075】
パネル下面支持部61Bは、図20(b)に示すように、一対のパネル側面支持部61A,61Aが対向するようにその両者の下部横材61b同士を約900mmの長さを有する角パイプを使用した7本の底板材61fが間隔を開けながら溶接されてスノコ状に構成されている。
【0076】
ここで、パネル下面支持部61Bを構成する底板材61fの両端部下面は、図21に示すように、アングル材である下部横材61bのフランジ部分に載せて溶接されている。
【0077】
<パネルラック吊下げ天秤62の構成>
図22(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態3の木質パネル搬送器具1を構成するパネルラック吊下げ天秤62の正面図、平面図、側面図である。
【0078】
パネルラック吊下げ天秤62は、図22(a)〜(c)に示すように、パネルラック61のラック用被係止部61h,61hの頂点間の前後間隔とほぼ同じ長さである約2120mmの長さを有する2本の長尺アングル材62aをクレーン7等のフック71が係止される天秤用被係止部62bを中央で挟み溶接等によって接合すると共に、その接合した2本の長尺アングル材62aの前後両端部それぞれに直交するように下向きで溶接して設けた約1080mmの長さを有する短尺アングル材62cによって平面視、H字形状に構成されている。
【0079】
そのため、2本の長尺アングル材62aの両側には、それぞれ、下向きの短尺アングル材62cの水平方向に延びるフランジ部が通るようにスリットが形成されて短尺アングル材62cが溶接等により接合されている一方、短尺アングル材62cの下方向に延びるフランジ部には、図22(a),(c)に示すように、各短尺アングル材62cの両端部より約30mm程、中心に向かった箇所にフック62dが設けられている。
【0080】
<木質パネル搬送器具6の使用方法および効果等>
次に、以上のように構成された木質パネル搬送器具6の使用方法および効果等について説明する。
【0081】
まず、パネルラック61の一対のパネル側方支持部61A,61Aの間に1枚〜4枚程度の木質パネル2を積載すると共に、図23に示すように、パネルラック61の上部4隅に設けられたラック用被係止部61hにパネルラック吊下げ天秤62の4隅に設けた4個のフック62dを係止してパネルラック吊下げ天秤62にパネルラック61を吊下げ、パネルラック吊下げ天秤62の天秤用被係止部62bにクレーン7等のフック71を係止する。尚、図23では、木質パネル2は図示を省略している。
【0082】
次に、1枚〜4枚程度の木質パネル2を積載したパネルラック61をクレーン7等によって吊上げ、図24に示すようにトラック3等の搬送車両の荷台に2基(2ラック)積み上げる。尚、図24に示すように木質パネル2には木材接合用棒状金物1の下側金物11のみ設けられており、上側金物12は建築現場で下側金物11に締結される。
【0083】
ここで、実施形態3の木質パネル搬送器具6では、パネルラック61の4隅にそれぞれラック用被係止部61hが設けられていると共に、そのラック用被係止部61hに対応するパネルラック吊下げ天秤62の箇所にはそれぞれフック62dが設けられ、しかもパネルラック61のラック用被係止部61hおよびパネルラック吊下げ天秤62の天秤用被係止部62bは折り曲げた箇所が二等辺三角形の頂点になるように形成されている。
【0084】
そのため、実施形態3の木質パネル搬送器具6では、ラック用被係止部61hおよび天秤用被係止部62bの直上点でパネルラック61の4個のフック62dやクレーン7等のフック71が係止するので、パネルラック61に重量が重い木質パネル2を積載しても、吊り下げ荷重による過大ないしは偏在した応力が発生し難くなり、パネルラック61内の木質パネル2に対し過大ないしは偏在した外力が作用することを防止できる。
【0085】
これに対し、例えばパネルラック吊下げ天秤62を使用せずに、パネルラック61の4隅のラック用被係止部61hを、逆Y字形状に4本のフックを連結した4本のワイヤーを1点で連結したフック付ワイヤーで吊り下げる場合、パネルラック61には内側(中心側)に向かう応力が作用して、パネルラック61内の木質パネル2を圧縮する方向に力が働き、木質パネル2の重量が大きい場合、木質パネル2自体が変形したり、木質パネル2の断熱材等を損傷するおそれがある。
【0086】
特に、天井高が4〜5m程度の低い工場内で、パネルラック吊下げ天秤62を使用せずに逆Y字形状に4本のフックを連結したフック付ワイヤーでパネルラック61を吊上げる場合、4本のフックそれぞれに連続する4本のワイヤーが水平方向となす角度が鋭角となり、パネルラック61を変形させようとする応力や、パネルラック61内の木質パネル2を圧縮しようとする力がより過大となる。
【0087】
その一方、4本のフックそれぞれに連結された4本のワイヤーが水平方向と成す角度をパネルラック61やパネルラック61内の木質パネル2に対し影響を与えないレベルにすると、今度は天井の高さが不足して、パネルラック61に積載した木質パネル2をトラック3等の搬送車両に載せることができなくなるおそれがある。
【0088】
しかし、実施形態3の木質パネル搬送器具6では、パネルラック61上部の4隅に設けられたラック用被係止部61hを、それらの直上に設けたパネルラック吊下げ天秤62の4個のフック62dそれぞれで吊上げるため、クレーン7のフック71下端からパネルラック吊下げ天秤62の4隅のラック吊フック62d下端までの垂直距離が上述したフック付ワイヤーでパネルラック61を吊る場合よりもかなり小さくなり、パネルラック61そのものをトラック3等の搬送車両の荷台より高く吊り上げることが可能となる。特に、荷台高さが1m程度の最近の低床型の4tトラック等の場合であれば、問題なく荷積み可能である。
【0089】
また、実施形態3の木質パネル搬送器具6では、パネルラック61は、図24に示すように、4tのトラック3でも2基(2ラック)分積載できるように最大幅W1を約1020mmに設定し、パネルラック61が1基(1ラック)で木質パネル2を3〜4パネル分を積載できるように構成したため、4t車1台で6〜8パネル搬送することができる。
【0090】
また、実施形態3の木質パネル搬送器具6では、パネルラック61のパネル側方支持部61A,61Aの前後は、図20(a)に示すように梯子状に横桟材61dを渡して構成したため、木質パネル2等の荷積み時の足掛かりにすることができると共に、荷積ロープ等のかかり代とすることもできる。
【0091】
また、実施形態3の木質パネル搬送器具6では、パネル側方支持部61A,61Aの縦材61e下部や、パネル下面支持部61Bを構成する底板材61f両側を、図21に示すように、アングル材である下部横材61b下端から水平方向に延びるフランジ部分の上側面に設置して溶接しているため、パネルラック61としての構造強度を保つことができるだけでなく、パネル下面支持部61Bの高さが低く抑えられ、パネルラック61を利用して木質パネル2を搬送する際の搬送車両の最高高さを抑えることができる。
【0092】
尚、上記実施形態3の説明では、図20(a)に示すようにパネル側方支持部61A,61Aの双方で縦材61eの間隔を狭くすると共に短尺の4本の横桟材61dを梯子状に渡して構成して説明したが、本発明ではこれに限らず、パネル側方支持部61A,61Aの一方だけに短尺の横桟材61dを梯子状に渡して構成しても良いし、梯子状の部分は省略しても勿論良い。
【0093】
また、上記実施形態3の説明では、上述した実施形態1の木材接合用棒状金物1を構成する下側金具11が予め設けられた木質パネル2をトラック3等の搬送車両に積載する際に使用するものとして説明したが、本発明ではこれに限らず、実施形態1の木材接合用棒状金物1を使用しない木質パネルをトラック3等の搬送車両に積載する際に使用することもできる。
【符号の説明】
【0094】
1 木材接合用棒状金物
11 下側金物
11a 雌ネジ部
11b,11c 貫通孔
12 上側金物
12a 雄ネジ部
12b,12c 貫通孔
13 ボルト
14 ナット
15 ドリフトピン
2 木質パネル
2a 柱
2b 梁
2b1 スリット
2b2 凹部
2b3〜2b5 ピン挿通孔
2c 下側枠材
2d,2d 横材
2e,2e 端側縦材
2f 中央縦材
2g 合板
3 トラック
4 梁受け金物
4a,4a 側板
4a1 ピン受け溝
4a2,4a3 ピン挿通孔
4b 背板
5 土台
6 木質パネル搬送器具
61 パネルラック
61A パネル側方支持部
61B パネル下面支持部
61a 上部横材
61b 下部横材
61c 中間材
61d 横桟材
61e 縦材
61f 底板材
61g 接合板
61h ラック用被係止部
62 パネルラック吊下げ天秤
62a 長尺アングル材
62b 天秤用被係止部
62c 短尺アングル材
62d フック(係止部)
7 クレーン
71 フック
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