【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明はまさしく、上述の要件を満たす新規な化合物を提供することを目的とする。
【0027】
それ故に、その観点の1つに従うと、本発明は、抹消性NMDA受容体アンタゴニストとして使用する為の、下記の式(I)の化合物に向けられている。
【0028】
【化1】
【0029】
ここで、
R
1は、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-CN、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
2〜C
6)アルケニル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基、-C(=NH)(-OH)基、(C
1〜C
4)アルキル-C(=NH)(-OH)基、-NH-CO-(C
1〜C
4)アルキル基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基で任意的に置換されていてもよい(C
3〜C
7)シクロアルキル基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基;上記のアリール基又はヘテロアリール基は任意的に、1以上のハロゲン原子、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基又はトリフルオロメチル基で置換されていてもよい;
R
2は、(C
1〜C
10)アルキル基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、(C
2〜C
6)アルケニル基又は(C
2〜C
6)アルキニル基を表し;
nは、1、2、3、4又は5であり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-N
3、-SCF
3、トリフルオロメチル基、(C
1-C
6)アルキル基、(C
1〜C
6)アルコキシ基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;
R
11、R
12、R
13、R
14及びR
15は互いに独立に、水素原子又は(C
1〜C
6)アルキル基を表し;
X
-はアニオン性対イオンであり、特にはI
-、Cl
-、Br
-及びOH
-から選択される。
【0030】
好ましくは、その観点の1つに従うと、本発明は、抹消性NMDA受容体アンタゴニストとして使用する為の、下記の式(I)の化合物に向けられている。
【0031】
【化2】
【0032】
ここで、
R
1は、水素原子、-OH、-CN、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基、-C(=NH)(-OH)基、(C
1〜C
4)アルキル-C(=NH)(-OH)基、-NH-CO-(C
1〜C
4)アルキル基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基で任意的に置換されていてもよい(C
3〜C
7)シクロアルキル基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;上記のアリール基又はヘテロアリール基は任意的に、1以上のハロゲン原子、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基又はトリフルオロメチル基で置換されていてもよい;
R
2は、(C
1〜C
10)アルキル基を表し;
nは、1、2、3、4又は5であり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-N
3、-SCF
3、トリフルオロメチル基、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
6)アルコキシ基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;
R
11、R
12、R
13、R
14及びR
15は互いに独立に、水素原子又は(C
1〜C
6)アルキル基を表し;
X
-はアニオン性対イオンであり、特にはI
-、Cl
-、Br
-及びOH
-から選択される。
【0033】
本明細書の下記において詳述される通り、本発明者等は、親分子ジゾシルピン内に導入される場合に、有利には血液脳関門を通過することができないが、選択的且つ効率的な抹消性NMDAR遮断活性をなお示す化合物(それらのうちの幾つかは新規である)を達成することを許す幾つかの化学修飾を識別した。
【0034】
下記の実施例において示される通り、式(I)に従う化合物は有利には、はるかに大きいKp脳値を有するジゾシルピンに比べると、ラットにおいて測定された、非常に低いKp脳値を有しうる。
【0035】
げっ歯類における血液と脳との間のイン・ビボ平衡分布は、脳透過性を評価する為の最も一般的に使用されるパラメータで有ることが留意される。このパラメータは、脳及び血液における濃度の比、Kp
“脳” (C
脳/C
血漿)又はlog(BB)、として定義される。
【0036】
Log(BB)は、脳中の化合物の定常状態の総濃度の、血液/血漿におけるそれに対する比の対数、log(BB)=log(C
脳/C
血漿)、である。
【0037】
このパラメータは、受動拡散特性、BBBレベルでの膜輸送の意味、及び血漿タンパク質と脳組織との間の相対的な薬物結合親和性の違いに依存する。
【0038】
一般的に、0.5よりも大きい脳/血漿比を有する化合物は、中枢神経系(CNS:central nervous system)への十分なアクセスを有すると考えられている。従って、1よりも大きい値を有する化合物は自由にBBBを通過する。下記の実施例3において示されている通り、特許請求の範囲に記載された化合物は、ラットにおける中枢神経系(CNS)に浸透しない。
【0039】
従って、BBBを通過しないというこの特性は有利には、期待される選択的な抹消性NMDAR遮断活性によって有害でない。
【0040】
従って、本発明に従う化合物は、中枢性副作用なしに、抹消性NMDA受容体が関与する状態及び疾病を処置する為の選択的抹消性NMDA受容体アンタゴニストとして使用されうる。有利には、それらは、中枢性の副作用なしに、3つの系(心臓、肺、免疫)、とりわけPHに、特にPAHに、関与する末梢NMDARを標的とする。
【0041】
本発明に従うと、語「中枢性副作用」は、特に健康な脳組織に対する悪影響、例えば運動失調、記憶障害、幻覚、認知障害、精神病スペクトル反応及び他の神経学的問題を包含する。
【0042】
本発明の他の観点に従うと、本発明はまた、下記の一般式(I)の化合物に関する。
【0043】
【化3】
【0044】
ここで、
R
1は、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-CN、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
2〜C
6)アルケニル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基、-C(=NH)(-OH)基、(C
1〜C
4)アルキル-C(=NH)(-OH)基、-NH-CO-(C
1〜C
4)アルキル基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基で任意的に置換されていてもよい(C
3〜C
7)シクロアルキル基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;上記のアリール基又はヘテロアリール基は任意的に、1以上のハロゲン原子、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基又はトリフルオロメチル基で置換されていてもよい;
R
2は、(C
1〜C
10)アルキル基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、(C
2〜C
6)アルケニル基又は(C
2〜C
6)アルキニル基を表し;
nは、1、2、3、4又は5であり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-N
3、-SCF
3、トリフルオロメチル基、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
6)アルコキシ基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;
R
11、R
12、R
13、R
14及びR
15は互いに独立に、水素原子又は(C
1〜C
6)アルキル基を表し;
X
-はアニオン性対イオンであり、特にはI
-、Cl
-、Br
-及びOH
-から選択され、
但し、R
2がメチル基である場合、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は水素原子であり、及びnは1であり、R
1は水素原子でない。
【0045】
好ましくは、本発明はまた、下記の一般式(I)に化合物に関する。
【0046】
【化4】
【0047】
ここで、:
R
1は、水素原子、-OH、-CN、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基、-C(=NH)(-OH)基、(C
1〜C
4)アルキル-C(=NH)(-OH)基、-NH-CO-(C
1〜C
4)アルキル基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基で任意的に置換されていてもよい(C
3〜C
7)シクロアルキル基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;上記のアリール基又はヘテロアリール基は任意的に、1以上のハロゲン原子、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基又はトリフルオロメチル基で置換されていてもよい;
R
2は、(C
1〜C
10)アルキル基を表し;
nは、1、2、3、4又は5であり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-N
3、-SCF
3、トリフルオロメチル基、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
6)アルコキシ基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;
R
11、R
12、R
13、R
14及びR
15は互いに独立に、水素原子又は(C
1〜C
6)アルキル基を表し;
X
-はアニオン性対イオンであり、特にはI
-、Cl
-、Br
-及びOH
-から選択され、
但し、R
2がメチル基である場合、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は水素原子であり、及びnは1であり、R
1は水素原子でない。
【0048】
本発明の他の観点に従うと、本発明は、抹消性NMDA受容体が関与する疾病又は状態、例えば肺高血圧症疾病、特には肺動脈性肺高血圧症、を予防する及び/又は阻害する及び/又は処置する為に使用する為の式(I)の本発明に従う化合物に向けられている。
【0049】
本発明に従うと、肺高血圧症疾病は、その名称の下で、一般的に同定されているあらゆる病状の問題をカバーする。この観点に従うと、本発明はまた、特に後述される通り、肺動脈性肺高血圧症及び肺高血圧症の任意の新規なグループ又はサブグループをカバーする。
【0050】
本発明の他の観点に従うと、本発明は、抹消性NMDA受容体が関与する疾病又は状態、例えば肺高血圧症疾病、特には肺動脈性肺高血圧症、の処置及び/又は予防の方法であって、式(I)の本発明に従う化合物の投与を含む上記方法に向けられている。
【0051】
有利には、本発明は、抹消性NMDA受容体が関与する疾病又は状態、例えば肺高血圧症疾病、特には肺動脈性肺高血圧症、の予防の方法であって、式(I)の本発明に従う化合物の投与を含む上記方法に向けられている。
【0052】
事実、本発明の式(I)の化合物は、予防における、例えば術前における又は体外循環(ECC:extracorporeal circulation)における炎症現象の予防における、血管保護剤として非常に有用である。
【0053】
本発明の意味内において、事象に関する語「予防する」又は「予防」は、上記事象の発生の危険性の減少を意味することが意図されている。
【0054】
本発明の文脈において、下記の略語及び経験式が使用される:
ALI(Acute Lung Injury) 急性肺傷害
ARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome) 急性呼吸促迫症候群
BB(Brain and Blood) 脳及び血液
BBB(Blood-Brain Barrier) 血液脳関門
CDCl
3 重水素化クロロホルム
CNS(Central Nervous System) 中枢神経系
DMSO ジメチルスルホキシド
IR(InfraRed) 赤外線
hPASMC(Human Pulmonary Arterial 平滑筋細胞s) ヒト肺動脈平滑筋細胞
HRMS(High Resolution Mass Spectroscopy) 高分解能質量分析
LiAlH
4又はLAH(Lithium Aluminium Hydride) 水酸化アルミニウムリチウム
Na
2SO
4 硫酸ナトリウム
NMDA(N-Methyl-D-Aspartate) N-メチル-D-アスパルテート
NMDAR(N-Methyl-D-Aspartate Receptor) N-メチル-D-アスパルテート受容体
NMR(Nuclear Magnetic Resonance) 核磁気共鳴
PAH(Pulmonary Arterial Hypertension) 肺動脈性肺高血圧症
PH(Pulmonary Hypertension) 肺高血圧症
RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction) 逆転写PCR
RVSP(Right Ventricular Systolic Pressure) 右心室収縮期圧
THF テトロヒドロフラン
TLC(Thin Layer Chromatography) 薄層クロマトグラフィー
VWF(Von Willebrand Factor) フォン・ヴィルブランド因子
【0055】
本発明の他の特徴及び有利点が、下記の説明及び実施祭からさらに明らかになるであろう。
【0056】
本発明の化合物
【0057】
上記に述べられている通り、本発明に従い用いられる化合物は、下記の一般式(I)に対応する。
【0058】
【化5】
【0059】
ここで、
R
1は、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-CN、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
2〜C
6)アルケニル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基、-C(=NH)(-OH)基、(C
1〜C
4)アルキル-C(=NH)(-OH)基、-NH-CO-(C
1〜C
4)アルキル基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基で任意的に置換されていてもよい(C
3〜C
7)シクロアルキル基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;上記のアリール基又はヘテロアリール基は任意的に、1以上のハロゲン原子、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基又はトリフルオロメチル基で置換されていてもよい;
R
2は、(C
1〜C
10)アルキル基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、(C
2〜C
6)アルケニル基又は(C
2〜C
6)アルキニル基を表し;
nは、1、2、3、4又は5であり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-N
3、-SCF
3、トリフルオロメチル基、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
6)アルコキシ基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;
R
11、R
12、R
13、R
14及びR
15は互いに独立に、水素原子又は(C
1〜C
6)アルキル基を表し;
X
-はアニオン性対イオンであり、特にはI
-、Cl
-、Br
-及びOH
-から選択される。
【0060】
好ましくは、本発明に従い用いられる化合物は、下記の一般式(I)に対応する。
【0061】
【化6】
【0062】
ここで、
R
1は、水素原子、-OH、-CN、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基、-C(=NH)(-OH)基、(C
1〜C
4)アルキル-C(=NH)(-OH)基、-NH-CO-(C
1〜C
4)アルキル基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基で任意的に置換されていてもよい(C
3〜C
7)シクロアルキル基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;上記のアリール基又はヘテロアリール基は任意的に、以上のハロゲン原子、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
4)アルコキシ基又はトリフルオロメチル基で置換されていてもよい;
R
2は、(C
1〜C
10)アルキル基を表し;
nは、1、2、3、4又は5であり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、-OH、-N
3、-SCF
3、トリフルオロメチル基、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
1〜C
6)アルコキシ基、(C
1〜C
6)アルキル-OH基、-NR
11R
12基、-N
+R
13R
14R
15基、5-又は6-員環のアリール基又は5-〜12-員環のヘテロアリール基を表し;
R
11、R
12、R
13、R
14及びR
15は互いに独立に、水素原子又は(C
1〜C
6)アルキル基を表し;
X
-はアニオン性対イオンであり、特にはI
-、Cl
-、Br
-及びOH
-から選択される。
【0063】
式(I)の化合物は、1以上の不斉炭素原子を含みうる。従って、それらは、エナンチオマー又はジアステレオ異性体の形態で存在しうる。これらのエナンチオマー及びジアステレオ異性体、並びにまた、ラセミ混合物を包含するそれらの混合物は、本発明の一部を形成する。
【0064】
本発明の文脈において、下記の定義が適用される:
C
t〜C
z:t及びzが1〜10個の値を取りうるt〜z個の炭素原子をおそらく含む、炭素をベースとする鎖;例えば、C
1〜C
6は、1〜6個の炭素原子をおそらく含む、炭素をベースとする鎖。
アルキル:直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族基、特に1〜6個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族基。言及されうる例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチルなどを含む。
アルケニル:共役又は非共役の1以上の二重結合を包含する、直鎖又は分岐鎖の不飽和又は部分的に不飽和の脂肪族基。言及されうる例は、エチレニル、プロペニル、ブト-1-エニル、ブト-2-エニルなどを含む。
アルキニル:共役又は非共役の1以上の三重結合を包含する、直鎖又は分岐鎖の不飽和又は部分的に不飽和の脂肪族基。言及されうる例は、エチニル、プロピニル、ブト-1-イニル、ブト-2-イニルなどを含む。
アルコキシ:アルキル基が以前に定義された通りである、ラジカル-O-アルキル。
ハロゲン原子:フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選ばれる原子。
シクロアルキル基:3〜8個の炭素原子を含む、非芳香族の単環式又は二環式の飽和又は部分的に飽和又は不飽和の環。言及されうるシクロアルキル基の例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン又はシクロヘキセンを含む。
アリール:5又は6個の炭素原子を含む、単環式又は二環式の芳香族基。アリール基の例として、フェニル基又はナフチル基が挙げられうる。好ましくは、アリール基はフェニルである。
ヘテロアリール:O、S及びNから選択される1〜5個のヘテロ原子を含む、5-〜12-員環の単環式又は二環式の芳香族基。言及されうる単環式ヘテロアリールの例は、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、フリル、チエニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル及びトリアジニルを含む。言及されうる二環式ヘテロアリールの例は、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、イソベンゾチアゾリル、ピロロ[2,3-c]ピリジル、ピロロ[2,3-b]ピリジル、ピロロ[3,2-b]ピリジル、ピロロ[3,2-c]ピリジル、ピロロ[1,2-a]ピリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ピロロ[1,2-a]イミダゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、イミダゾ[1,2-a]ピリダジニル、イミダゾ[1,2-c]ピリミジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリミジニル、イミダゾ[1,2-a]ピラジニル、イミダゾ[4,5-b]ピラジニル、イミダゾ[4,5-b]ピリジル、イミダゾ[4,5-c]ピリジル、ピラゾロ[2,3-a]ピリジル、ピラゾロ[2,3-a]ピリミジニル、ピラゾロ[2,3-a]ピラジニル、チアゾロ[5,4-b]ピリジル、チアゾロ[5,4-c]ピリジル、チアゾロ[4,5-c]ピリジル、チアゾロ[4,5-b]ピリジル、オキサゾロ[5,4-b]ピリジル、オキサゾロ[5,4-c]ピリジル、オキサゾロ[4,5-c]ピリジル、オキサゾロ[4,5-b]ピリジル、イソチアゾロ[5,4-b]ピリジル、イソチアゾロ[5,4-c]ピリジル、イソチアゾロ[4,5-c]ピリジル、イソチアゾロ[4,5-b]ピリジル、イソオキサゾロ[5,4-b]ピリジル、イソオキサゾロ[5,4-c]ピリジル、イソオキサゾロ[4,5-c]ピリジル及びイソオキサゾロ[4,5-b]ピリジルを含む。ヘテロアリール基は、より好ましくはキノリル基又はピリジニル基の中から選択されうる。
【0065】
好ましい実施態様に従うと、R
1は、-OH、(C
1〜C
6)アルキル基、(C
2〜C
6)アルケニル基、又は(C
3〜C
7)シクロアルキル基を表す。
【0066】
好ましい実施態様に従うと、R
1は-OH、(C
1〜C
6)アルキル基、又は(C
3〜C
7)シクロアルキル基を表す。
【0067】
1つの実施態様に従うと、R
1は-OHを表す。有利には、R
1が-OHを表す場合には、nは2である。
【0068】
他の実施態様に従うと、R
1は(C
1〜C
6)アルキル基を表す。
【0069】
他の実施態様に従うと、R
1は(C
3〜C
7)シクロアルキル基を表す。
【0070】
好ましい実施態様に従うと、R
2は、メチル基又はエチル基を表す。
【0071】
1つの実施態様に従うと、R
2はメチル基を表す。
【0072】
他の実施態様に従うと、R
2はエチル基を表す。
【0073】
好ましい実施態様に従うと、nは1又は2である。
【0074】
1つの実施態様に従うと、nは1である。
【0075】
他の実施態様に従うと、nは2である。
【0076】
好ましくは、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、水素原子である。
【0077】
好ましい実施態様に従うと、アニオン性対イオンX
-は有機又は無機のアニオン性対イオンであり、特にはI
-、Cl
-、Br
-及びOH
-から選択される。
【0078】
好ましくは、アニオン性対イオンX
-はBr
-、I
-及びCl
-から選択され、及びより特にはI
-及びCl
-から選択される。
【0079】
より好ましくは、アニオン性対イオンはI
-である。
【0080】
より好ましくは、アニオン性対イオンはCl
-である。
【0081】
より好ましくは、アニオン性対イオンはBr
-である。
【0082】
特に明記されない限り、上述の実施形態の特徴が互いに組み合わせられうることことは明らかである。
【0083】
一般式の上記化合物のうち、下記の化合物が特に言及されうる。
【0084】
【化6】
【0085】
より好ましくは、一般式の上記化合物のうち、下記の化合物が特に言及されうる。
【0086】
【化7】
【0087】
より好ましくは、、一般式の上記化合物のうち、下記の化合物が特に言及されうる。
【0088】
【化8】
【0089】
本発明の化合物の調製
【0090】
本発明の化合物は、下記の実施例に示されている通り、当業者によって周知である方法に従って調製されうる。
【0091】
第1の実施態様に従うと、本発明の化合物の合成は、下記のスキーム1に従って達成されうる。
【0092】
【0093】
他の実施態様に従うと、本発明の化合物の合成は、下記のスキーム2に従って達成されうる。
【0094】
【0095】
適用
【0096】
上述の通り且つ下記の実施例によって明らかに示されている通り、本発明に従う化合物は、抹消性NMDA受容体アンタゴニストとして有用である。
【0097】
それ故に、本発明は、抹消性NMDA受容体が関与する疾病又は状態を予防する及び/又は阻害する及び/又は処置する為の方法であって、本発明に従う少なくとも1つの化合物の少なくとも有効量をそれを必要とする個体に投与する工程を少なくとも含む、上記方法を提供する。
【0098】
特に、上記疾病又は上記状態が、肺高血圧症、例えば肺動脈性肺高血圧症又は血栓塞栓性肺高血圧症、炎症に関与する肺疾患、線維症及びリモデリング、例えばぜんそく、非神経癌、例えば結腸癌、乳癌、肺癌又は甲状腺癌、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、鎌状赤血球症、血栓症に関与する疾病、急性感染症、例えばARDS症候群又はALI、慢性感染症、例えばヘリコバクターピロリによって誘発される胃潰瘍、炎症性疾患/自己免疫疾患、例えば慢性関節リウマチ及び過敏性腸症候群及び骨関節炎、心臓まひ、不整脈、腎障害、疼痛、特に末梢神経障害性疼痛、乾癬、アトピー性皮膚炎及び骨粗鬆症から選択されうる。
【0099】
上記に述べられた通り、肺高血圧症は、疾病の下記の5つのグループをカバーする。
【0100】
第1のグループは、肺動脈性肺高血圧症である。PAHは、特発性の及び遺伝性のPAH(骨形成タンパク質受容体2型(BMPR2)、ALK-1、エンドグリン(ENG:Endoglin)、SMAD9、カベオリン-1(CAV1)、KCNK3)に、薬物及び毒に誘発されるPAHに、結合組織病に、ヒト免疫不全ウイルスに、門脈圧亢進症、先天性心疾患に、住血吸虫症、肺静脈閉塞症、肺毛細血管血管腫症、並びに新生児の持続性PHを伴う毒素誘発性PAHに関連付けられうる。
【0101】
第2のグループは、左心疾患によるPHである。それはPHの最も頻繁な形態、すなわち左心室収縮不全、左心室拡張障害、弁膜症及び先天性/後天性の左心流入/流出路閉塞、及び先天性心筋症、を包含する。
【0102】
第3のグループは、肺病及び/又は低酸素状態状態によるPHである。このグループは、実質性肺疾患又は低酸素状態の他の原因を有する患者を含み、ここで、PHの存在は、これらの基本的な疾病に直接関連すると考えられる。より特には、それは、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、制限的及び閉塞性パターンが混在する他の肺疾患、睡眠呼吸障害、肺胞低換気障害、高高度への慢性曝露及び発症性肺疾患を含む。
【0103】
第4のグループは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症である。
【0104】
第5のグループは、不明な又は多因子メカニズムを伴うPHである。このグループに含まれるものは、多数の病態生理学的メカニズムが肺血管圧の上昇に関連している可能性があるPHの多数の形態である。それは、血液疾患(慢性溶血性貧血、骨髄増殖性疾患、脾臓除去)、全身性疾患(サルコイドーシス、肺組織球増殖症)、代謝疾患(グリコーゲン貯蔵症、ゴーシェ病、甲状腺疾患)及び他の腫瘍性閉塞症(tumoral obstruction)、縦隔線維症(fibrosing mediastinitis)、慢性腎不全並びに分節性PHを包含する。
【0105】
勿論、この最近の分類は常に進化しており、及び本発明の文脈においてまたカバーされる新しいグループ及び/又はサブグループは、定期的に発見される。
【0106】
より特には、本発明に従うと、上記疾病又は上記状態が、肺高血圧症、例えば肺動脈性肺高血圧症又は血栓塞栓性肺高血圧症、好ましくは肺動脈性肺高血圧症、である。
【0107】
本発明に従う化合物は、医薬品の調製の為に使用されうる。
【0108】
従って、本発明の観点のされたに別の観点に従うと、本発明は、本発明に従う少なくとも1つの化合物を医薬的に活性な剤として含む医薬品に関する。
【0109】
言い換えれば、本発明は、医薬品として使用する為の、本発明に従う化合物に関する。
【0110】
本発明の他の観点に従うと、本発明は、本発明に従う少なくとも1つの化合物と少なくとも1つの医薬的に許容される添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0111】
1つの実施態様に従うと、本発明の医薬組成物は、疾病状態の予防及び/又は阻害及び/又は処置の為に有用な剤とは別に、順次に又は同時に投与されることが意図されうる。上記剤は、本発明の式(I)の化合物とは異なる。
【0112】
従って、本発明はまた、少なくとも1つの他の治療剤と組み合わせて本発明に従う少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの医薬的に許容される添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0113】
1つの実施態様に従うと、本発明の化合物は、単独で、又は1つ他の治療剤、例えば血管拡張薬、他のグルタミン酸受容体アンタゴニスト(イオノトロピック型及び/又は代謝調節型)、特には他のNMDARアンタゴニスト化学療法剤、他の肺高血圧症療法又は放射線療法及びそれらの組み合わせ、と組み合わせて使用されうる。
【0114】
好ましくは、本発明は、少なくとも1つの他の治療剤、好ましくは血管拡張薬及び/又は他のグルタミン酸受容体アンタゴニスト(イオノトロピック型及び/又は代謝調節型)、特に他のNMDARアンタゴニストと組み合わせて本発明に従う少なくとも1つの化合物本発明を含む医薬組成物に関する。
【0115】
本発明の意味において、「グルタミン酸受容体アンタゴニスト」は、下記の2つのファミリーを含む:イオノトロピック型(イオンチャンネル)及び代謝調節型(7個の膜貫通領域を有する受容体)。イオノトロピック型のうち、NMDAR、AMPA及びカイニン酸がある。イオノトロピック型及び代謝調節型のファミリーは、薬理学ガイド(IUPHAR/BPS)におおてより詳しく定義されている。
【0116】
従って、1つの実施態様に従うと、本発明の方法は、本発明に従う式(I)の化合物を、他の治療剤、好ましくは血管拡張薬及び/又は他のグルタミン酸受容体アンタゴニスト(イオノトロピック型及び/又は代謝調節型)、特にはNMDARアンタゴニスト、と別々に、順次に又は同時に投与する工程を含みうる。
【0117】
特に肺高血圧症を処置する為の特許請求の範囲に記載の化合物の使用に関して、それらを、そのような疾病の処置において既に考慮されている他の又は幾つかの他の従来の1以上の治療活性物質と組み合わせることが特に有利でありうる。特許請求の範囲に記載の化合物は特定の新しい経路に従って作用する故に、異なる治療経路を通じて同辞意作用することによってより良い結果を達成することが期待されうる。
【0118】
特に、この実施態様は、患者に投与する為に、本発明の個々の化合物の治療用量を減らすことを許し得、従ってより少ない悪影響を許す。加えて、この実施態様は、本発明の個々の組み合わされた化合物の相加的効果又は相乗的効果を達成することを許す。
【0119】
従って、本発明はまた、肺高血圧症、特には肺動脈性肺高血圧症、の処置の方法であって、、有利には血管拡張薬、他のグルタミン酸受容体アンタゴニスト(イオノトロピック型及び/又は代謝調節型)から成る群から選択される少なくとも1つの活性剤の投与と組み合わされて、特には、他のNMDARアンタゴニスト、化学療法剤、他の肺高血圧症療法又は放射線療法及びそれらの組み合わせと組み合わされて、特許請求の範囲に記載の化合物を投与することを含む、上記方法に向けられている。
【0120】
例えば、本発明の化合物は、エンドセリン受容体アンタゴニスト(ERAs:endothelin receptor antagonists)、例えばボセンタン(Tracleer(商標)、Actelion)及びアンブリセンタン(Letairis(商標)、Gilead)、プロスタサイクリン誘導体、例えばエポプロステノール(Flolan(商標)、Gsk、Actelion)、トレプロスチニル(Remodulin(商標)、United Therapeutics)及びイロプロスト(商標)(Actelion)、又はPDE5阻害剤、例えばシルデナフィル(Revatio(商標)、Pfizer)及びタダラフィル(Adcirca(商標)、Lilly)と組み合わされて使用されうる。
【0121】
本発明の為に適切でありうる化学療法剤の例として、アルキル化剤、挿入剤、微小管阻害薬、有糸分裂阻害薬、代謝拮抗薬、抗増殖薬、抗生物質、免疫調節薬、抗炎症薬、キナーゼ阻害剤、抗血管新生薬、抗血管剤、エストロゲンホルモン及び男性ホルモンから選択される化学療法剤が言及されうる。
【0122】
放射線療法は、それを必要としている個体を、電離放射線、例えばX線、ガンマ線又はベータ線、の供給源に曝露することによって投与されうる。
【0123】
医薬組成物はより特には、本発明に従う少なくとも1つの化合物の有効投与量を含みうる。
【0124】
「有効投与量」は、調節される又は処置される状態に積極的に変化を誘発するのに十分であるが、重篤な副作用を回避するのに十分に低い量を意味する。有効量は、得る為の薬学的効果又は治療される特定の状態、エンドユーザの年齢及び体調、処置される/予防される状態の重症度、処置の期間、他の処置の性質、使用される具体的な化合物又は組成物、投与の経路及び同様の要因で変わりうる。
【0125】
式(I)の本発明に従う化合物は、当該技術分野において許容されている投与方法のいずれかによって有効投与量で投与されうる。
【0126】
1つの実施態様において、本発明の化合物は、経口、経鼻、舌下、聴覚、眼内、局所、直腸、膣内、尿道又は非経口の注入経路によって投与することが意図した組成物において使用されうる。
【0127】
投与の経路及びガレヌス製剤(galenic formulation)は、所望の薬学的効果に従って、当業者によって適合されるだろう。
【0128】
治療製剤の当業者は、過度の実験をすること無しに且つ個人的な知識に依存して、所与の徴候に対して本発明の化合物の治療上の有効投与量を確かめることができるだろう。
【0129】
本発明の医薬組成物は、投与量、ガレヌス形態、投与の経路などに従って、任意の基地の適切な医薬的に許容される添加剤と共に製剤化されうる。
【0130】
本明細書において使用される場合、「医薬的に許容される添加剤」は、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。任意の従来の添加剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬品又は医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0131】
本発明の医薬品又は医薬組成物は、錠剤、丸薬、散剤、ロゼンジ剤(lozenges)、サシェ剤(sachets)、カシェ剤(cachets)、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、スティック剤、ローション剤、ペースト剤、軟ゼラチンカプセル剤及び硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌注射用溶液、滅菌包装粉末などの形態でありうる。
【0132】
本発明は、説明の目的の為にのみ提供され且つ本発明如何なる様式においても限定するものとして解釈されるべきでない下記の実施例及び図面を参照することによってより良く理解されるであろう。