(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被包装物投入口が閉じられた包装袋に空気が残っていたとしても、減圧中のチャンバー内では包装袋が膨張し得るため、包装袋内の脱気が不十分であるにも拘らず真空包装装置がチャンバー内の減圧を停止し、さらには包装袋を封止してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被包装物に液体が含まれていたとしても、包装袋内を支障なく十分に脱気することができる真空包装装置、および、真空包装方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、液体が含まれた被包装物を収納した包装袋を収容するチャンバーと、該チャンバー内を減圧して包装袋内の脱気を行う脱気装置と、
チャンバー内の気圧を検出する気圧検出手段と、チャンバー内に設けられ、包装袋の被包装物投入口を閉じる投入口閉成装置と、閉状態の被包装物投入口を封止する封止装置と、
チャンバー内の包装袋の膨張を検出可能な膨張検出手段と、脱気装置、投入口閉成装置および封止装置を制御する
と共に、膨張検出手段により検出した包装袋の膨張を監視する制御装置と、を備えた真空包装装置であって、
前記制御装置は、
液体が含まれた被包装物が収納され、且つ被包装物投入口が投入口閉成装置により閉じられた包装袋をチャンバー内に収容した状態で、脱気装置により当該チャンバー内を減圧して包装袋を膨張させる減圧工程と、
前記脱気装置によるチャンバー内の減圧の停止と、投入口閉成装置による閉状態の解除による被包装物投入口の開放と、を行う減圧停止工程と、
前記チャンバー内が減圧された状態で、投入口閉成装置により被包装物投入口を閉じ、封止装置により閉状態の被包装物投入口を封止する封止工程と、
前記封止工程の後、減圧されたチャンバー内を大気開放して大気圧に戻す大気開放工程と、
を実行する制御を行い、
且つ前記減圧工程の開始から膨張検出手段による包装袋の膨張の検出までの間に生じたチャンバー内の気圧変動値を、気圧検出手段が検出した気圧から算出可能であり、
前記減圧工程においては、膨張検出手段による包装袋の膨張の検出結果に基づいて、当該減圧工程を終了して減圧停止工程、封止工程、大気開放工程を実行するか、もしくは、当該減圧工程を終了して減圧停止工程を実行した後に、減圧工程を再実行することの要否を判定する減圧再実行判定処理を実行し、
前記減圧再実行判定処理においては、気圧変動値が減圧再実行判定変動基準値よりも小さい場合に、前記減圧工程の再実行が不要であると判定し、
前記減圧工程の再実行が不要であると判定した場合には、当該減圧工程を終了して減圧停止工程、封止工程、大気開放工程を実行し、
前記減圧工程の再実行が必要であると判定した場合には、当該減圧工程を終了して減圧停止工程を実行した後に、減圧工程および減圧再実行判定処理を再実行することを特徴とする真空包装装置である。
【0013】
請求項2に記載のものは、前記膨張検出手段は、包装袋に当接する袋当接部と、該袋当接部の姿勢変化を検出することにより包装袋の膨張を検出可能な膨張検出センサとを備えることを特徴とする
請求項1に記載の真空包装装置である。
【0015】
請求項3に記載のものは、液体が含まれた被包装物を収納する包装袋を収容した状態でチャンバー内を減圧して包装袋内の脱気を行い、この状態で包装袋の被包装物投入口を閉じ、閉状態の被包装物投入口を封止して、被包装物を真空包装する真空包装方法において、
前記液体が含まれた被包装物が収納され、且つ被包装物投入口が閉じられた包装袋をチャンバー内に収容した状態で、当該チャンバー内を減圧して包装袋を膨張させる減圧工程と、
前記チャンバー内の減圧の停止と、閉状態の被包装物投入口の開放と、を行う減圧停止工程と、
前記チャンバー内が減圧された状態で被包装物投入口を閉じ、閉状態の被包装物投入口を封止する封止工程と、
前記封止工程の後、減圧されたチャンバー内を大気開放して大気圧に戻す大気開放工程と、
を実行し、
前記減圧工程においては、包装袋の膨張の検出結果に基づいて、
減圧工程の再実行の要否を判定する減圧再実行判定処理を実行し、
前記減圧工程の再実行が不要であると判定した場合には、当該減圧工程を終了して減圧停止工程、封止工程、大気開放工程を実行し、
前記減圧工程の再実行が必要であると判定した場合には、当該減圧工程を終了して減圧停止工程を実行した後に、減圧工程および減圧再実行判定処理を再実行し、
前記減圧再実行判定処理においては、前記減圧工程の開始から包装袋の膨張の検出までの間に生じたチャンバー内の気圧変動値を算出して気圧変動値が減圧再実行判定変動基準値よりも小さい場合に、前記減圧工程の再実行が不要であると判定することを特徴とする真空包装方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1および請求項3に記載の発明によれば、被包装物に液体が含まれていたとしても、包装袋内を支障なく十分に脱気することができる。
【0021】
さらに、包装袋内の空気が外方へ追い出されたか否かを簡単に把握することができる。また、チャンバー内を液体が沸騰する圧力まで減圧して包装袋内を十分に脱気したとしても、沸騰している液体が包装袋から吹き零れる不都合を被包装物投入口の閉成により阻止することができ、被包装物投入口が液体で汚れてしまうことを避けることができる。したがって、被包装物に液体が含まれていたとしても、包装袋内を支障なく十分に脱気することができ、これにより、真空包装後の包装袋内に気泡が残り難く、良好な真空包装を行うことができる。
なお、本発明における「沸騰」は、液体の温度が沸点に到達して液体が内部から気化する現象であり、カレーのルーやポタージュスープ等の高い粘度を有する液体において、液体内に含まれる空気や水蒸気が温度変化や圧力変化により膨張し、この膨張に伴って液面が変動する現象も含むものとする。
【0022】
そして、包装袋内の液体の温度を検出せずに包装袋内の十分な脱気を把握することができる。したがって、被包装物の温度変化や真空包装作業を行う環境の温度変化に拘らず、真空包装を良好に行うことができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、簡単な構成で包装袋の膨張の検出を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
真空包装装置1は、
図1および
図2に示すように、被包装物を収容した包装袋Bを収納するチャンバー2と、該チャンバー2内を減圧して包装袋B内の脱気を行う脱気装置3と、チャンバー2の内部に設けられ、包装袋Bの被包装物投入口Baを閉じる投入口閉成装置5と、包装袋Bの被包装物投入口Baを封止するシール用ヒーター6(本発明における封止装置に相当)と、チャンバー2内の包装袋Bの膨張を検出可能な袋膨張検出装置7(本発明における膨張検出手段に相当)と、脱気装置3と投入口閉成装置5とシール用ヒーター6とを制御する制御装置8とを備えて構成されている。
【0026】
チャンバー2は、上面に包装袋Bを載置可能な本体部2aと、該本体部2aを上方から閉塞する蓋部2bとから構成された耐圧容器であり、蓋部2bを上下方向に回動して開閉可能とし、蓋部2bと本体部2aとの当接部分にシール材(図示せず)を設けてチャンバー2内の気密性を維持できるように構成されている。また、本体部2aには吸引口9を穿設して脱気装置3へ接続し、脱気装置3を駆動するとチャンバー2内の空気が吸引口9から吸引されてチャンバー2内が減圧されるように構成されている。
【0027】
投入口閉成装置5は、本体部2a側に昇降可能な状態で設けられた下側閉成ブロック10と、蓋部2bの下面側に固定された上側閉成ブロック11とを対向する状態で備え、下側閉成ブロック10を閉成用シリンダ12の駆動により昇降可能とし、上側閉成ブロック11と上昇状態の下側閉成ブロック10との間に包装袋Bを挟持して被包装物投入口Baを閉成するように構成されている。また、閉成用シリンダ12と脱気装置3とを投入口閉成駆動流路13により接続し、投入口閉成駆動流路13には、三方弁で構成された投入口閉成用電磁弁14の接続口の1つを接続し、残りの接続口の一方を脱気装置3の一部に接続し、他方を大気中に開放している。そして、投入口閉成用電磁弁14を操作することにより、閉成用シリンダ12と脱気装置3とを連通して閉成用シリンダ12内を脱気装置3により吸気すると、閉成用シリンダ12が下側閉成ブロック10を上昇させて上側閉成ブロック11へ圧接し(
図4参照)、閉成用シリンダ12内が大気開放されると、閉成用シリンダ12が下側閉成ブロック10を上側閉成ブロック11から下方へ離間させるように構成されている(
図6参照)。さらに、下側閉成ブロック10の上側閉成ブロック11側(上部)および上側閉成ブロック11の下側閉成ブロック10側(下部)にはシール用ヒーター6をそれぞれ備え、上側閉成ブロック11と下側閉成ブロック10との間に包装袋Bを挟持した状態でシール用ヒーター6に通電すると、被包装物投入口Baが閉成した状態で加熱圧着されて封止されるように構成されている。
【0028】
また、下側閉成ブロック10の袋挟持面(上面)および上側閉成ブロック11の袋挟持面(下面)には、耐熱性および粘着性を有するゲル状シート(例えばシリコンゴム製のシート)で構成された袋貼着部15を備え、該袋貼着部15を包装袋Bの表面へ貼着して、挟持状態の包装袋Bの被包装物投入口Baがずれる不都合、ひいては挟持状態の包装袋Bが上側閉成ブロック11と下側閉成ブロック10との間から抜ける不都合を阻止できるように構成されている。なお、袋貼着部15は、シール用ヒーター6からずれた位置(具体的には、シール用ヒーター6よりも蓋部2bの回動中心側(
図1中、右側)にずれた位置)に配置されている。
【0029】
脱気装置3は、真空ポンプ16と、該真空ポンプ16とチャンバー2とを連通可能な状態で接続する吸気流路18とを備えて構成されており、吸気流路18の途中には、真空ポンプ16とチャンバー2との連通を許容したり閉止したりする真空電磁弁(真空弁)19を設けている。また、吸気流路18のうち真空電磁弁19と真空ポンプ16との間に位置する箇所には閉成分岐ポート25を設け、該閉成分岐ポート25に投入口閉成用電磁弁14の接続口の1つを接続している。さらに、吸気流路18のうち真空電磁弁19とチャンバー2との間に位置する箇所には真空開放分岐ポート26を設けて真空開放弁(外気導入弁)27を接続し、該真空開放弁27を開放してチャンバー2内を減圧状態から大気圧に戻せる(大気開放できる)ように構成されている。
【0030】
袋膨張検出装置7は、本体部2a上に載置された包装袋Bよりも上方に位置する平板状の袋当接部31と、該袋当接部31の姿勢の変化により包装袋Bの膨張状態を検出可能な膨張検出センサ32とを備えて構成されている。そして、袋当接部31の投入口閉成装置5側の端部(
図1中、左端部)を上側閉成ブロック11の側部に回動自在な状態で軸着し、蓋部2bの軸着側に位置する自由端部(
図1中、右端部)が昇降(上下方向に移動)して、自由端部が蓋部2b側に位置する上昇姿勢(
図5中に示される傾斜姿勢)と、本体部2a側に位置する下降姿勢(
図1中に示される常態姿勢)とに変換できるように構成されている。
【0031】
また、袋当接部31の自由端部には、当該自由端部が本体部2aに当接することを阻止するストッパー31aを下方の本体部2a側へ向けて延設して、袋当接部31が下降姿勢の状態においては、ストッパー31aが本体部2aの上面に当接して袋当接部31の下方への回動を阻止するように構成されている。さらに、ストッパー31aの下端部には検出片31bを備え、本体部2aのうち当該本体部2aを挟んでストッパー31aとは反対側(
図1中、本体部2aの下面側)には、下降姿勢における袋当接部31の検出片31bを検出可能な膨張検出センサ32を備え、該膨張検出センサ32の検出信号を制御装置8へ送信できるように構成されている(
図2参照)。なお、本実施形態では、膨張検出センサ32を磁気センサによって構成するとともに検出片31bを磁性体で構成し、検出片31bの接近により変化する磁界の強さを膨張検出センサ32で感知することで、袋当接部31の姿勢変化を検出可能としている。
【0032】
制御装置8は、
図2に示すように、真空包装装置1の制御を行うワンチップマイクロコンピュータ40と、各信号の入出力処理を行うインターフェイス回路41等から構成されている。そして、インターフェイス回路41には、真空包装装置1の操作パネル(図示せず)に設けられた電源スイッチ42、圧力や時間の設定スイッチ43等の各種操作スイッチ、チャンバー2内の気圧を検出する気圧検出センサ44(本発明における気圧検出手段に相当)、蓋部2bの開閉状態を検出する蓋開閉検出センサ45、袋膨張検出装置7の膨張検出センサ32からの信号が入力されている。また、インターフェイス回路41からは、真空ポンプ16、真空電磁弁19、投入口閉成用電磁弁14、真空開放弁27、シール用ヒーター6、各種報知音を発するブザー46、各種状態を表示する表示器47に制御信号を出力する。
【0033】
次に、上記した構成からなる真空包装装置1において、液体が含まれた被包装物を真空包装する手順について説明する。なお、真空包装開始前の状態(常態)では、真空ポンプ16を駆動せず、真空電磁弁19、投入口閉成用電磁弁14の全接続口を閉状態とし、真空開放弁27を開状態とする。また、投入口閉成駆動流路13内および閉成用シリンダ12内が減圧されておらず、下側閉成ブロック10が下降した状態とする。さらに、制御装置8には、後述する減圧工程DP1〜DP3(
図3参照)において包装袋B内の液体の沸騰の判定(沸騰判定処理(本発明における減圧再実行判定処理に相当))に用いる基準値(沸騰判定基準時間bt,沸騰判定変動基準値bp)を記憶しておく。沸騰判定基準時間bt(本発明における減圧再実行判定基準時間に相当)は、チャンバー2内を減圧して包装袋B内の液体が沸騰したことにより閉状態の包装袋Bが膨張した場合に、減圧の開始から袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出までに要すると推測される仮定の所要時間である。また、沸騰判定変動基準値bp(本発明における減圧再実行判定変動基準値に相当)は、チャンバー2内を減圧して包装袋B内の液体が沸騰したことにより閉状態の包装袋Bが膨張した場合に、減圧の開始から袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出までの間に生じると推測されるチャンバー2内の仮定の気圧変動値である。なお、本発明における「沸騰」は、液体の温度が沸点に到達して液体が内部から気化する現象であり、カレーのルーやポタージュスープ等の高い粘度を有する液体において、液体内に含まれる空気や水蒸気が温度変化や圧力変化により膨張し、この膨張に伴って液面が変動する現象も含むものとする。
【0034】
まず、被包装物を入れた包装袋Bをチャンバー2内にセットするセット工程(準備工程)を行う。セット工程では、蓋部2bを開けた状態で、作業員が包装袋Bを本体部2a上に載せるとともに被包装物投入口Baを下側閉成ブロック10上に載せる。包装袋Bをセットした後、手で蓋部2bを閉じると、蓋開閉検出センサ45が蓋部2bの閉成状態を検出して制御装置8に信号を送る。
【0035】
制御装置8が蓋部2bの閉成状態の検出信号を受信したならば、減圧工程DP1に移行する。減圧工程DP1では、制御装置8が被包装物投入口Baの閉成操作とチャンバー2内の減圧操作とを制御する。具体的には、投入口閉成用電磁弁14のうち大気開放側の接続口を閉じるとともに投入口閉成駆動流路13側の接続口および閉成分岐ポート25側の接続口を開く。投入口閉成用電磁弁14の操作が終了したならば、真空ポンプ16を駆動して閉成用シリンダ12内を吸気することにより下側閉成ブロック10を上昇させ、上側閉成ブロック11と下側閉成ブロック10との間に包装袋Bを挟持して被包装物投入口Baを閉成する。さらに、真空電磁弁19を開くとともに真空開放弁27を閉じて駆動状態の真空ポンプ16とチャンバー2とを連通し、脱気装置3によるチャンバー2内の減圧を開始する。チャンバー2内を減圧すると、チャンバー2内の気圧と包装袋B内に閉じ込められた空気の気圧との差に基づいて包装袋Bが膨張する。なお、減圧工程DP1における制御装置8は、当該減圧工程DP1の開始からの経過時間の計時を開始するとともに、当該減圧工程DP1の開始時点でのチャンバー2内の気圧を気圧検出センサ44からの検出信号に基づいて取得して記憶する。
【0036】
そして、
図5に示すように、包装袋Bが十分に膨張すると、袋当接部31が包装袋Bに押し上げられて下降姿勢から上昇姿勢に変換し、膨張検出センサ32が袋当接部31の検出片31bの移動(詳しくは、膨張検出センサ32から遠ざかったこと)を検出して制御装置8に検出信号を送信する。この検出信号(言い換えると、包装袋Bの膨張を検出した旨の検出信号)を受信した制御装置8は、包装袋Bの膨張の検出結果に基づいて液体(包装袋B内の液体)が沸騰したか否かを判定する沸騰判定処理(言い換えると、減圧工程の再実行の要否を判定する減圧再実行判定処理)を実行する。
【0037】
具体的に説明すると、制御装置8は、減圧工程DP1の開始から袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出(言い換えると、膨張検出センサ32からの検出信号の受信)までの間に生じたチャンバー2内の気圧変動値Δp1を気圧検出センサ44からの検出信号(気圧検出センサ44が検出した気圧)から算出し、さらには減圧工程DP1の開始から袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出までの間に計時された経過時間を膨張所要時間Δt1として取得する(
図3参照)。そして、真空包装開始前に予め設定(当該制御装置8内に記憶)された沸騰判定変動基準値bpと気圧変動値Δp1とを比較するとともに、真空包装開始前に予め設定(当該制御装置8内に記憶)された沸騰判定基準時間btと膨張所要時間Δt1とを比較する。これらの比較を実行した結果、気圧変動値Δp1が沸騰判定変動基準値bpよりも小さいこと、または、膨張所要時間Δt1が沸騰判定基準時間btよりも短いことの少なくともいずれかが成立した場合には、包装袋B内で液体が沸騰したと判定し、いずれも成立していない場合には、包装袋B内で液体が沸騰せず、包装袋B内に閉じ込められた空気の膨張(言い換えると、包装袋B内の空気とチャンバー2内の空気との気圧差)により包装袋Bが膨張していると判定する。これらの判定は、包装袋B内での液体の発生の有無により包装袋Bの膨張速度が異なることに基づいて設定されている。すなわち、包装袋B内で液体が沸騰した場合には、包装袋B内の空気の膨張による体積の増加だけではなく、液体の気化による体積の増加にも起因して包装袋Bが膨張し、液体の気化が追加発生したことで包装袋Bの膨張速度が速くなることに基づいている。なお、上記沸騰判定の成立条件においては、気圧変動値Δp1と沸騰判定変動基準値bpとが等しいこと、または、膨張所要時間Δt1と沸騰判定基準時間btとが等しいことの少なくともいずれかを含めてもよい。
【0038】
沸騰判定処理を実行した結果、包装袋B内で液体が沸騰したと判定した場合には、制御装置8は、現在実行中の減圧工程DP1を終了し、チャンバー2内の減圧の停止と、被包装物投入口Baの開放とを行う減圧停止工程SP(
図3および
図6参照)と、開放した被包装物投入口Baを封止する封止工程(
図13参照)と、該封止工程後にチャンバー2内を大気開放する大気開放工程(
図14参照)とを実行する。一方、包装袋B内で液体が沸騰していないと判定した場合には、現在実行中の減圧工程DP1を終了し、減圧停止工程SP1を実行した後に減圧工程(2回目の減圧工程DP2)および沸騰判定処理を再実行する。なお、
図3から
図14に示す本実施形態においては、1回目の減圧工程DP1、および2回目の減圧工程DP2においては、包装袋B内で液体が沸騰していないと判定されており、3回目の減圧工程DP3において、包装袋B内で液体が沸騰したと判定されている。
【0039】
詳細に説明すると、
図5に示すように、包装袋Bの膨張が袋膨張検出装置7により検出されると、袋膨張検出装置7(膨張検出センサ32)から受信した検出信号に基づき、制御装置8が沸騰判定処理を実行する。この結果、気圧変動値Δp1が沸騰判定変動基準値bpよりも小さいこと、または、膨張所要時間Δt1が沸騰判定基準時間btよりも短いことのいずれも成立していないことが確認された。このため、制御装置8は、現在実行中の減圧工程DP1を終了し、減圧停止工程SP1に移行する。減圧停止工程SP1では、
図6に示すように、真空電磁弁19を閉じるとともに、真空開放弁27の閉状態を維持し、脱気装置3によるチャンバー2内の減圧の進行を停止して現在の減圧状態を維持する。また、投入口閉成用電磁弁14のうち閉成分岐ポート25側の接続口を閉じるとともに大気開放側の接続口を開いて、閉成用シリンダ12内を大気開放することにより下側閉成ブロック10を下降させて上側閉成ブロック11から離間させ、チャンバー2内において膨張状態の包装袋Bの被包装物投入口Baを開放、言い換えると被包装物投入口Baの閉状態を解除する。すると、包装袋B内に残留して包装袋Bを膨張させた空気の一部が、当該空気の気圧とチャンバー2内の気圧との差や袋当接部31の自重による包装袋Bが押し潰しに基づいて、被包装物投入口Baから外方へ追い出される。この結果、減圧停止工程SP1において包装袋B内の脱気が行われる。なお、減圧停止工程SP1や、後述する2回目の減圧停止工程SP2および3回目の減圧停止工程SP3においては、チャンバー2内の減圧の進行を停止が完了する前に、被包装物投入口Baを開放してしてもよい。要は、減圧停止工程SPにおいて、チャンバー2内の減圧の停止と、被包装物投入口Baの開放とが実行されればよい。
【0040】
包装袋Bの収縮(膨張の解除)により袋当接部31が下降姿勢に戻って検出片が膨張検出センサ32により検出されると、この検出信号を受信した制御装置8は、減圧停止工程SP1を終了して2回目の減圧工程DP2を実行する(
図7参照)。そして、包装袋Bの膨張が袋膨張検出装置7により検出されると(
図8参照)、当該減圧工程(2回目の減圧工程)DP2における沸騰判定処理を実行する。沸騰判定処理の結果、当該減圧工程DP2においても気圧変動値(詳しくは、減圧工程DP2の開始から袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出までの間に生じたチャンバー2内の気圧変動値)Δp2が沸騰判定変動基準値bpよりも小さいこと、または、膨張所要時間(詳しくは、減圧工程DP2の開始から袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出までの間に計時された経過時間)Δt2が沸騰判定基準時間btよりも短いことのいずれも成立していないことが確認されたため、制御装置8が現在実行中の減圧工程DP2を終了し、減圧停止工程(2回目の減圧停止工程SP2)に再移行する(
図9参照)。この2回目の減圧停止工程SP2においても、包装袋B内に残留して包装袋Bを膨張させた空気の一部が、当該空気の気圧とチャンバー2内の気圧との差や袋当接部31の自重による包装袋Bの押し潰しに基づいて、被包装物投入口Baから外方へ追い出される。この結果、2回目の減圧停止工程SP2においても包装袋B内の脱気が行われる。
【0041】
包装袋Bの再収縮(再膨張の解除)により袋当接部31が再び下降姿勢に戻って検出片が膨張検出センサ32により検出されると、この検出信号を受信した制御装置8は、2回目の減圧停止工程SP2を終了して3回目の減圧工程DP3を実行する(
図10参照)。そして、包装袋Bの膨張が袋膨張検出装置7により検出されると(
図11参照)、当該減圧工程(3回目の減圧工程)DP3における沸騰判定処理を実行する。沸騰判定処理の結果、当該減圧工程DPにおいては気圧変動値(詳しくは、減圧工程DP3の開始から袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出までの間に生じたチャンバー2内の気圧変動値)Δp3が沸騰判定変動基準値bpよりも小さいこと、または、膨張所要時間(詳しくは、減圧工程DP3の開始から袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出までの間に計時された経過時間)Δt3が沸騰判定基準時間btよりも短いことのいずれかが成立したことが確認されたため、制御装置8が現在実行中の減圧工程(3回目の減圧工程)DP3を終了し、減圧停止工程(3回目の減圧停止工程SP3)に再移行する(
図12参照)。
【0042】
この3回目の減圧停止工程SP3では、直前の減圧工程DP3にて包装袋B内の液体が沸騰したため、包装袋B内に残留して包装袋Bを膨張させた空気だけではなく、減圧工程DP3において沸騰により液体から気化した気体も、包装袋B内の気圧とチャンバー2内の気圧との差や袋当接部31の自重による包装袋Bの押し潰しに基づいて、被包装物投入口Baから外方へ追い出される。さらに、減圧が停止していても液体の沸騰が僅かながらも継続するため、減圧停止工程SP3中に気化した気体が包装袋B内の残留空気を被包装物投入口Baから外方へ追い出し易くなる。この結果、液体が沸騰した後の減圧停止工程SP3においては、包装袋B内を十分に脱気することができる。
【0043】
液体が沸騰したと判定された後の減圧停止工程(本実施形態では、3回目の減圧停止工程SP3)において、包装袋Bの収縮(膨張の解除)により袋当接部31が下降姿勢に戻って検出片が膨張検出センサ32により検出されると、この検出信号を受信した制御装置8は、減圧停止工程SP3を終了して封止工程を実行する。封止工程では、
図13に示すように、真空開放弁27、真空電磁弁19の閉状態を維持してチャンバー2内の減圧状態を保つ。また、投入口閉成用電磁弁14においては、投入口閉成駆動流路13側の接続口の開状態を維持し、大気開放側の接続口を閉じるとともに閉成分岐ポート25側の接続口を開いて、閉成用シリンダ12内を吸気することにより下側閉成ブロック10を再び上昇させ、上側閉成ブロック11と下側閉成ブロック10との間に包装袋Bを挟持して被包装物投入口Baを再閉成する。被包装物投入口Baを再閉成したならば、この状態でシール用ヒーター6に通電して被包装物投入口Baを閉成状態で加熱してヒートシール(封止)する。被包装物投入口Baのヒートシールが終了したならば、シール用ヒーター6の通電を停止し、被包装物投入口Baの冷却時間が経過するまで投入口閉成装置5による挟持状態を維持する。
【0044】
そして、冷却時間の経過後、制御装置8は、封止工程を終了して大気開放工程を実行する。大気開放工程では、
図14に示すように、投入口閉成用電磁弁14のうち閉成分岐ポート25側の接続口を閉じるとともに大気開放側の接続口を開いて、閉成用シリンダ12内を大気開放することにより下側閉成ブロック10を下降させて上側閉成ブロック11から離間させ、封止状態の包装袋Bの挟持を解除する。さらに、真空開放弁27を開いてチャンバー2内を大気圧へ戻し、真空ポンプ16の駆動を停止した後、ブザー46から報知音を発生させて真空包装の終了を報知する。なお、真空包装終了直後の包装袋B内に気泡が発生していたとしても、この気泡のほとんどは、残留空気ではなく被包装物に含まれる液体が気化したものである。したがって、被包装物が常温まで冷めれば、気泡が包装袋B内で凝縮して液体に戻る。この結果、液体が含まれた被包装物であったとしても、気泡がほとんどなく良好な真空包装を得ることができる。
【0045】
このようにして行われる真空包装においては、チャンバー2内を減圧した結果、包装袋B内の液体が沸騰していない(言い換えると、減圧工程の再実行が必要である)と判定された場合にはチャンバー2内の減圧を再び実行し、液体が沸騰した(言い換えると、減圧工程の再実行が不要である)と判定された場合にはチャンバー2内の減圧の再実行を行わずに包装袋Bを封止して真空包装を終了するので、液体が沸騰により気化して発生した気体により包装袋B内の空気を外方へ追い出すことができ、包装袋B内を十分に脱気することができる。したがって、残留空気を含み難い(言い換えると、気泡がほとんどない)良好な真空包装を行うことができる。また、袋膨張検出装置7による包装袋Bの膨張の検出結果に基づいて液体が沸騰したか否か(減圧工程の再実行が必要であるか否か)を判定するので、包装袋B内の液体が沸騰したこと、さらには、液体の沸騰により包装袋B内の空気が外方へ追い出されたことを簡単に把握することができる。
【0046】
また、減圧工程DP1〜DP3の実行中に被包装物投入口Baを投入口閉成装置5により閉じているので、チャンバー2内を液体が沸騰する圧力まで減圧して包装袋B内を十分に脱気したとしても、沸騰している液体が包装袋Bから吹き零れる不都合を被包装物投入口Baの閉成により阻止することができ、被包装物投入口Baが液体で汚れてしまうことを避けることができる。したがって、被包装物に液体が含まれていたとしても、包装袋B内を支障なく十分に脱気することができ、これにより、真空包装後の包装袋B内に気泡が残り難く、良好な真空包装を行うことができる。
【0047】
さらに、減圧工程DP1〜DP3中に行われる沸騰判定処理では、チャンバー2内の気圧変動値Δp1〜Δp3と沸騰判定変動基準値bpとの比較、または、包装袋Bの膨張の検出までの膨張所要時間Δt1〜Δt3と沸騰判定基準時間btとの比較に基づき、液体の沸騰の有無を判定するので、包装袋B内の液体の温度を検出せずに液体の沸騰を把握することができる。したがって、被包装物の温度変化や真空包装作業を行う環境の温度変化に拘らず、真空包装を良好に行うことができる。そして、袋膨張検出装置7は、包装袋Bに当接する袋当接部31と、該袋当接部31の姿勢変化を検出することにより包装袋Bの膨張を検出可能な膨張検出センサ32とを備えて構成されるので、簡単な構成で包装袋Bの膨張の検出を実現することができる。
【0048】
ところで、上記実施形態の減圧工程DP1〜DP3においては、チャンバー2内の気圧変動値Δp1〜Δp3と膨張所要時間Δt1〜Δt3との両方を取得し、これらの値を予め設定された基準値(沸騰判定変動基準値bp,沸騰判定基準時間bt)と比較して液体の沸騰の有無(減圧工程の再実行の要否)を判定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、チャンバー2内の気圧変動値または膨張所要時間のいずれか一方を取得し、取得した値と基準値とを比較して液体の沸騰の有無(減圧工程の再実行の要否)を判定してもよい。具体的には、減圧工程DPを実行する制御装置8は、沸騰判定の準備として膨張所要時間Δtを計時せずにチャンバー2内の気圧変動値Δpのみを算出し、沸騰判定処理においては、気圧変動値Δpが沸騰判定変動基準値bpよりも小さい場合(または沸騰判定変動基準値bp以下の場合)には液体が沸騰したと判定する一方、沸騰判定変動基準値bp以上である場合(または沸騰判定変動基準値bpよりも大きい場合)には液体が沸騰していないと判定するように設定してもよい。あるいは、沸騰判定の準備としてチャンバー2内の気圧変動値Δpを算出せずに膨張所要時間Δtのみを計時し、沸騰判定処理においては、膨張所要時間Δtが沸騰判定基準時間btよりも短い場合(または沸騰判定基準時間bt以下の場合)には液体が沸騰したと判定する一方、沸騰判定基準時間bt以上(または沸騰判定基準時間btよりも長い場合)には液体が沸騰していないと判定するように設定してもよい。
【0049】
ところで、上記実施形態では、袋膨張検出装置7を袋当接部31と膨張検出センサ32とにより構成された袋膨張検出装置7を本発明の膨張検出手段として採用し、包装袋Bが袋当接部31を押圧操作することにより包装袋Bの膨張を検出可能としたが、本発明はこれに限定されない。要は、包装袋Bの膨張を検出可能であれば、前記した磁気式の他に光学式等、どのような構成の膨張検出手段を採用してもよい。例えば、袋監視用カメラを膨張検出手段として採用してチャンバー2内の包装袋Bを撮影し、減圧工程DPにおける包装袋Bの態様(大きさ)が予め定められた膨張基準態様よりも大きい場合(または膨張基準態様と同等の場合)には、包装袋Bが膨張したことを検出し、この検出信号の受信に基づいて制御装置8が沸騰判定処理を実行するように構成してもよい。
【0050】
また、袋監視用カメラを膨張検出手段として採用する場合には、制御装置8は、チャンバー2内の気圧変動値Δpや膨張所要時間Δtの比較により液体の沸騰の有無を判定してもよいが、袋監視用カメラによる包装袋Bの膨張の検出結果(膨張状態の画像)に基づいて液体が沸騰したか否かを判定してもよい。例えば、制御装置8には、透明な包装袋B内で液体が沸騰した状態の判定基準(液体内での気泡発生や包装袋B内での曇りを撮影した画像の色調や明暗度等)を予め記憶しておき、袋監視用カメラによって膨張が検出された時点での透明な包装袋Bの画像と上記判定基準とを比較して、膨張状態の包装袋B内で液体が沸騰しているか否かを判定するように構成してもよい。
【0051】
ところで、上記実施形態では、真空包装開始直後の減圧工程(1回目の減圧工程)DP1において膨張判定処理を実行し、この判定の結果に基づいて次回の減圧工程DP2を実行するか否かを決定するように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、真空包装開始直後においては、膨張判定処理を行わずに所定回数の減圧工程DPと減圧停止工程SPとを交互に実行して包装袋B内をある程度脱気し、この脱気後に行う減圧工程DPにて最初の膨張判定処理を実行するようにしてもよい。このような設定で真空包装作業を行えば、液体が沸騰し難い被包装物を真空包装する場合に、真空包装作業の初期段階の減圧工程DPで膨張判定処理を無駄に実行することを省略することができ、真空包装作業の迅速化を図ることができる。
【0052】
そして、前記した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、上記した説明に限らず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれるものである。