(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されているカテーテル組立体は、カテーテルハブ内に血液を導くため、弁体の外周面にエア抜溝を設けることで、弁体よりも先端側の中空部内の空気を抜くように構成される。しかしながら、このように弁体の外周面にエア抜溝を設けると、エア抜溝を介して中空部に流入した血液が弁体の基端方向に漏れる可能性がある。
【0006】
血液漏れを防止する手段としては、空気を透過させる一方で、血液を透過させないシール部材を弁体よりも基端側に設けることが考えられる。しかしながら、この種のシール部材は、小型且つ柔軟に構成されることで、カテーテルハブ内に挿入して固定する際に姿勢が崩れ易く(組付性が悪く)、カテーテルハブの製造効率を低下させる原因となる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、簡単な構成により、シール部材をハブに確実且つ効率的に組付保持させることで、血液の漏出を良好に防ぎ得るカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明に係るカテーテル組立体は、カテーテルと、前記カテーテルを先端側に保持し、前記カテーテルの内腔に連通する中空部を有するハブと、前記中空部に設けられる弁体と、前記弁体よりも基端側の前記中空部に配置され、基端方向への気体の流出を可能とする一方で、基端方向への液体の流出を遮断する多孔質性のシール部材と、前記シール部材とは別体に形成されて、前記ハブに対して相対移動不能に前記中空部内に配置される支持部材と、を備え、前記支持部材は、前記弁体に嵌合して前記弁体を固定支持する第1保持部と、前記シール部材に嵌合して前記シール部材を固定支持する第2保持部と、を有
し、前記シール部材は、軸方向に貫通する貫通孔を有し、前記第2保持部が前記シール部材の前記貫通孔に挿入及び嵌合されることで前記シール部材の内周面が前記第2保持部の外周面により支持されており、前記第2保持部の前記外周面と前記ハブの内周面との間に前記シール部材が挟み込まれることで、前記ハブに前記シール部材が固定されていることを特徴とする。
【0009】
上記によれば、カテーテル組立体の支持部材は、弁体及びシール部材をまとめて保持して、ハブ内に収容固定することができる。すなわち、カテーテル組立体は、支持部材という簡単な構成により、弁体及びシール部材をハブ内に確実且つ効率的に組付保持させることができ、その生産性が高められる。また、支持部材により固定されたシール部材は、ハブ内での血液の流動を遮断して、血液の漏れを良好に防ぐことができる。
【0010】
この場合、前記支持部材は、前記第1及び第2保持部と軸方向に並び、前記中空部を構成する前記ハブの内面に取り付けられるハブ取付部を有するとよい。
【0011】
このように、支持部材がハブ取付部を有することで、カテーテル組立体は、支持部材をハブ内に強固に固定することができ、弁体及びシール部材の位置ずれを良好に抑止することができる。
【0012】
上記構成に加えて、前記第1保持部は、前記ハブ取付部から先端方向に突出しており、前記第2保持部は、前記ハブ取付部から基端方向に突出していることが好ましい。
【0013】
このように、支持部材は、第1保持部が先端方向に突出し、第2保持部が基端方向に突出していることで、弁体及びシール部材を支持部材の先端と基端からそれぞれ簡単に挿入して嵌合させることができる。よって、組立時の作業効率をさらに向上させることができる。
【0014】
また、前記ハブ取付部には、該ハブ取付部よりも先端側の空間と、該ハブ取付部よりも基端側の空間を連通する1以上の連通部が設けられているとよい。
【0015】
このように、カテーテル組立体は、ハブ取付部に1以上の連通部を備えることで、ハブ取付部よりも先端側の気体をハブ取付部よりも基端側に円滑に流動させることができる。そのため、気体は、シール部材を介して基端方向に良好に流出する。
【0016】
さらに、前記ハブ取付部の外周面には、周方向に周回して、前記ハブ取付部よりも先端側の空間と、前記連通部とを連通させる切り欠き部が設けられていることが好ましい。
【0017】
このように、カテーテル組立体は、ハブ取付部の外周面に周方向に周回する切り欠き部を備えることで、弁体の外側を通ってハブ取付部に流動した気体をハブの周方向に一旦流動させることができる。従って、気体が流出する周方向の位置が連通部の形成位置と異なっても、気体を連通部に確実に導くことができる。
【0018】
ここで、前記支持部材は、前記第1保持部に対する前記弁体の軸方向の位置ずれを規制する弁体ずれ規制手段を有していてもよい。
【0019】
このように、支持部材は、弁体ずれ規制手段を有することで、弁体と支持部材をより強固に固定することができ、弁体の位置ずれをより確実に抑止することが可能となる。
【0020】
また、前記支持部材は、前記第2保持部に対する前記シール部材の軸方向の位置ずれを規制するシール部材ずれ規制手段を有していてもよい。
【0021】
このように、支持部材は、シール部材ずれ規制手段を有することで、シール部材と支持部材をより強固に固定することができ、シール部材の位置ずれをより確実に抑止することが可能となる。
【0022】
そして、前記第2保持部は、前記第1保持部よりも細く形成されていることが好ましい。
【0023】
このように、第2保持部が第1保持部よりも細く形成されていることで、径方向に比較的厚いシール部材を採用することが可能となり、シール部材の機能を充分に発揮することができる。
【0024】
さらに、前記第2保持部の軸方向長さは、前記シール部材の軸方向長さよりも長いことが好ましい。
【0025】
このように、第2保持部の軸方向長さがシール部材の軸方向長さよりも長いことで、第2保持部は、シール部材の軸方向に沿って均等的に摩擦力をかけることができ、シール部材の破損や機能低下等を抑制することができる。
【0026】
またさらに、前記シール部材は、焼結体であるとよい。
【0027】
焼結体であるシール部材は、小型且つ特殊な形状であれば製造に手間がかかってコストが増加するが、本カテーテル組立体は、支持部材によりシール部材を固定する構成であるため、シール部材をリング状等の単純な形状としその体積も少なくすることができる。これにより、シール部材を簡単に作ることが可能となり、カテーテル組立体全体の製造効率が向上すると共に、製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、カテーテル組立体は、簡単な構成により、シール部材をハブに確実且つ効率的に組付保持させることができ、これにより血液の漏出を良好に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施形態をあげ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、
図1に示すように、カテーテル12(外針)と、カテーテル12の基端を接続保持するカテーテルハブ14と、カテーテル12内に貫通配置される内針16と、内針16の基端を保持する内針ハブ18とを備える。
【0032】
医師や看護師等のユーザは、輸液ラインの構築時に、カテーテル組立体10の内針ハブ18を把持操作して、その先端部を患者の血管に穿刺する。カテーテル組立体10の先端部は、穿刺時に、カテーテル12と内針16が2重に重なっており(以下、穿刺可能状態ともいう)、患者の血管内に一体的に挿入される。また、穿刺可能状態では、カテーテルハブ14の基端側と内針ハブ18の先端側が接続されて、内針ハブ18がカテーテルハブ14を支持している。
【0033】
患者への穿刺後、ユーザは、カテーテルハブ14と相対的に内針ハブ18を基端方向に引き抜く(後退する)ことで、カテーテルハブ14から内針ハブ18を離脱させる。この後退に伴い、内針ハブ18に保持されている内針16も一体的に後退し、カテーテル12及びカテーテルハブ14から引き抜かれる。これにより内針16が患者の血管から抜去され、患者側は、カテーテル12の先端側が血管内にあり、カテーテル12の基端側及びカテーテルハブ14が皮膚上に露出した状態となる。その後、留置状態のカテーテルハブ14の基端側に輸液チューブのコネクタ20(
図7参照)を接続することで、輸液チューブから患者に輸液剤(薬液)が投与される。以下、このカテーテル組立体10の構成について具体的に説明していく。
【0034】
カテーテル12は、可撓性を有し患者の血管内に持続的に挿入可能な管状部材に構成されている。カテーテル12の内部には、軸方向に延在して内針16を挿通可能な内腔12aが形成されている。このカテーテル12の基端部は、カテーテルハブ14内に挿入固定される。
【0035】
カテーテル12の構成材料は、特に限定されるものではないが、樹脂材料、特に軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエテレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエテレン共重合体(ETFE)、ベルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、前記オレフィン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。
【0036】
また、カテーテル12は、全部又は一部の内部を視認できるように透明性を有するとよい。これにより、カテーテル12を血管内に挿入した状態で、血液がカテーテル12の内腔12aを通ってカテーテルハブ14に流入するフラッシュバックを目視で確認することができる。
【0037】
カテーテル12を保持するカテーテルハブ14は、カテーテル12と輸液チューブの間に介在して、両部材を簡単且つ確実に接続(連通)させる機能を有している。カテーテルハブ14は、先端方向に先細りとなる円筒状に形成されており、テープ等により患者の皮膚上に貼り付けられて留置される。また、カテーテルハブ14の上部には、穿刺時にカテーテル12を血管内に押し込むための操作用突起14aが突出形成されている。
【0038】
カテーテルハブ14は、カテーテル12よりも硬い材料によって構成されることが好ましい。カテーテルハブ14の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0039】
カテーテルハブ14の内部には、軸方向に貫通形成され、カテーテルハブ14の基端開口部22aに連通して輸液剤を流通可能な中空部22が設けられている。また、中空部22には、
図2に示すように、止血弁24(弁体)、遮断機構部26、プラグ30(挿通部材)が収容される。これら各部材については後に詳述する。
【0040】
一方、カテーテル組立体10の内針16は、患者の皮膚を穿刺可能な剛性を有する管状部材に構成されている。内針16の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料があげられる。内針16は、カテーテル12に比べて充分に長く形成され、穿刺可能状態においてカテーテル12の先端開口から鋭利な針先16aを突出させている。さらに、内針16は、カテーテル12の内腔12a及びカテーテルハブ14の中空部22を直線状に延び、その基端部が内針ハブ18内の内針保持部材(図示せず)に固定保持されている。
【0041】
図1に戻り、内針16を保持する内針ハブ18は、ユーザが把持して、カテーテル12及び内針16の2重管体を安定的に操作し得る長尺な筐体に形成されている。内針ハブ18の内部には、カテーテルハブ14からの内針ハブ18の離脱に伴い内針16を収容する図示しない収容機構が設けられているとよい。
【0042】
次に、カテーテルハブ14の内部構造について、
図2及び
図3を参照して具体的に説明する。カテーテルハブ14の中空部22は、先端側から基端側に向かって保持空間32、案内空間34、機構配置空間36及び接続空間38を順に有する。そして、隣り合う空間同士は相互に連通し合っている。
【0043】
保持空間32は、カテーテルハブ14の先端側においてカテーテル12の基端部を保持するための空間部である。カテーテル12は、その基端部を保持空間32に挿入した状態で、図示しないかしめピンが内側に挿入されてかしめられることで、保持空間32を構成するカテーテルハブ14の内周面とかしめピンとの間で強固に固定される。なお、カテーテル12とカテーテルハブ14の固定手段は、特に限定されるものではなく、例えば、融着(熱融着、高周波融着等)、接着剤による接着、他のかしめ等、適宜の接合方法を採り得る。
【0044】
案内空間34は、コネクタ20から流出される輸液剤をカテーテル12の内腔12aに導く空間部である。そのため、案内空間34を構成するカテーテルハブ14の内周面は、その先端側が保持空間32に向かって徐々に小径となる漏斗状に形成される一方で、中間側及び基端側が同径の筒状に形成されて所定の容積を確保している。
【0045】
機構配置空間36は、止血弁24及び遮断機構部26を配置する空間部であり、案内空間34よりも若干大径に形成されることで、案内空間34に対し段差35を形成している。また、機構配置空間36を構成するカテーテルハブ14の内周面には、断面視(
図5A参照)で、止血弁24を支持する支持面40と、この支持面40を径方向外側に浅く切り欠いた複数(
図5A中では8本)の凹溝42とが設けられている。複数の凹溝42は、内周面の周方向に沿って等間隔に形成され、中空部22の軸方向に沿って止血弁24に対応する長さで延在している。また凹溝42の先端は段差35を通って案内空間34に連通している。
【0046】
図3A及び
図3Bに示すように、止血弁24は、円筒状の側壁24aと、側壁24aの先端側を閉塞する底壁24bを有する筒状に形成された弾性部材である。止血弁24の底壁24bの中央部には、内針16及びプラグ30が貫通可能なスリット24cが形成されている。
【0047】
この止血弁24は、カテーテルハブ14の中空部22を先端側中空部44と基端側中空部46に分断するように配置され、先端側中空部44に流入した血液を底壁24bにより遮断する。止血弁24の側壁24aは、機構配置空間36の配置状態で、支持面40に支持される。この状態では、側壁24aの側方を延びる凹溝42により、先端側中空部44に内在する空気を、凹溝42を通って基端方向に移動させることができる。
【0048】
止血弁24を構成する弾性材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、或いはそれらの混合物等の各種弾性材料があげられる。
【0049】
止血弁24の基端側に挿入配置される遮断機構部26は、止血弁24を固定すると共に、凹溝42を流動する空気を基端側中空部46に流通可能とする一方で、基端側中空部46への血液の流通を遮断する機能を有している。具体的には、遮断機構部26は、シール部材48及び支持部材50によって構成される。
【0050】
遮断機構部26のシール部材48は、多孔質性を有することで、気体を通過させる一方で、液体を通過させないように構成された構造物であり、その内側に比較的大径な貫通孔48aを有する。このシール部材48は、軸方向に直交する先端面と基端面が平行で、且つ内周面と外周面が軸方向に平行な円環状に形成されている。シール部材48の外径は、機構配置空間36の直径に一致又は若干大きく形成されている。これによりシール部材48は、カテーテルハブ14への組付状態で、機構配置空間36を構成する内周面に密着する。また、シール部材48は、止血弁24の側壁24aよりも厚肉に形成されている。
【0051】
シール部材48を構成する材料は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料の粉末を加熱して焼結体に形成したものを好適に用いることができる。また、シール部材48は、上述した形状を採ることで、焼結体として構成された基材から打ち抜きを行って、簡単に成形することができる。
【0052】
遮断機構部26の支持部材50は、止血弁24とシール部材48の間に配置されて、これらの部材を固定支持する機能を有している。
図4Aに示すように、この支持部材50は、全体的に略円筒状を呈し、その内側には軸方向に沿って孔部52が設けられている。孔部52を構成する内周面は、軸方向に沿って平行に形成されている。そして、支持部材50は、先端側から順に、第1保持部54(以下、第1部54と略称する)、ハブ取付部56、第2保持部58(以下、第2部58と略称する)を備える。
【0053】
第1部54は、ハブ取付部56から先端方向に所定長さ突出した部位であり、
図4Bに示すように、その外径φ
1は、止血弁24の側壁24aの内径φ
Bと同程度ないしは若干大径に設定されている。第1部54の軸方向長さは、側壁24aの軸方向長さよりも短く形成されており、止血弁24の側壁24aの基端側に密着する。これにより止血弁24は、底壁24b寄りの空間が広くなり、後述するプラグ30の頭部60を自由状態で配置する。この第1部54は、カテーテルハブ14との組付状態で、止血弁24内に挿入及び嵌合されて、側壁24aを径方向外側に押し広げることで、側壁24aに摩擦力を付与する。また、第1部54は、カテーテルハブ14の支持面40との間で止血弁24を挟み込むことで、カテーテルハブ14に止血弁24を強固に固定する。
【0054】
ハブ取付部56は、第1部54及び第2部58よりも径方向外側に突出して、周方向に周回した鍔状の部位である。ハブ取付部56は、その外径が機構配置空間36の直径以上となるように設定され、カテーテルハブ14との組付状態で、カテーテルハブ14の内周面に密着する。また、ハブ取付部56の軸方向長さは、特に限定されるものではないが、第1部54及び第2部58の軸方向長さよりも短く設定されているのがよい。
【0055】
図4A及び
図5Bに示すように、ハブ取付部56の外周面には、複数(
図5B中では8個)の溝部56a(流通部57)が設けられている。複数の溝部56aは、支持部材50の軸方向と平行で直線状に延びており、ハブ取付部56の周方向に沿って等間隔に配置されている。溝部56aは、ハブ取付部56の外周面から径方向内側に浅く(例えば、ハブ取付部56の肉厚の1/5以下で)刻まれており、主に気体を流通可能としている。
【0056】
また、ハブ取付部56の外周面の先端には、周方向に沿って環状の切り欠き部56bが設けられている。切り欠き部56bは、外周面の先端側角部を斜めに切り欠いて形成され、各溝部56aの先端側に連なっている。つまり、各溝部56a同士は、切り欠き部56bを介して相互に連通している。
【0057】
一方、第2部58は、ハブ取付部56から基端方向に所定長さ突出した部位であり、その外径φ
2は、シール部材48の内径φ
Sよりも若干大径に設定されている。この第2部58は、カテーテルハブ14との組付状態で、シール部材48の貫通孔48a内に挿入及び嵌合されて、シール部材48を径方向外側に押し広げることで、シール部材48に摩擦力を付与する。また、第2部58は、機構配置空間36を構成するカテーテルハブ14の内面との間でシール部材48を挟み込むことで、カテーテルハブ14にシール部材48を強固に固定する。第2部58の軸方向長さは、シール部材48の軸方向長さと一致又は長く設定されることが好ましい。これにより第2部58はシール部材48に均等的な力で密着する。
【0058】
図3Aに戻り、カテーテルハブ14の接続空間38は、機構配置空間36からカテーテルハブ14の基端開口部22aまで延在している。この接続空間38は、輸液チューブのコネクタ20を挿入及び嵌合可能な直径に設定されている。なお、接続空間38を構成するカテーテルハブ14の内周面は、コネクタ20との接続性を高めるため、先端方向に向かって徐々に小径となるテーパ状に形成されるとよい。
【0059】
プラグ30は、軸方向に細長い円筒状に形成され、中空部22に変位自在に配置される。このプラグ30は、コネクタ20の挿入に伴い止血弁24のスリット24cを貫通して先端方向に変位することで、コネクタ20から供給される輸液剤を先端側中空部44に導入可能とする。具体的に、プラグ30は、先端から基端側に向かって頭部60、胴部62及びフランジ部64を有し、各部位の内部には、輸液剤を流通可能な流通路66が貫通形成されている。
【0060】
頭部60は、プラグ30の先端部を構成し、胴部62に対し径方向外側に突出して環状に周回する爪部60aを備える。頭部60は、コネクタ20の未挿入状態で、止血弁24内で底壁24bと支持部材50(第1部54)の間に配置される。このプラグ30は、爪部60aが第1部54に引っ掛かり可能となっていることで、基端方向への抜けが抑制される。そして、頭部60は、コネクタ20の挿入時に先端方向に押し出されることで、先端側中空部44に容易に配置される。
【0061】
胴部62は、頭部60から基端方向に向かって所定長さ延在する筒状に形成され、コネクタ20の未挿入状態で、フランジ部64を接続空間38の基端側に配置させている。フランジ部64は、胴部62の基端から径方向外側に大きく突出した略円盤状に形成され、周縁側の基端部が基端方向に若干突出している。
【0062】
次に、カテーテル組立体10の製造手順について説明する。カテーテル組立体10の製造では、まずカテーテルハブ14とカテーテル12をかしめピンにより固着する。次に、カテーテルハブ14の中空部22に別の成形工程で成形された内部構成(止血弁24、遮断機構部26)を挿入していく。ここで、遮断機構部のシール部材は、小型の焼結体であり、仮に筒状の外径が変化する等の複雑な形状を採用していると、成形工程時に個別に成形を行う必要があり手間やコストがかかる。
【0063】
これに対し、本実施形態に係るカテーテル組立体10は、シール部材48を単純なリング状に成形して、支持部材50により支持することができる。このため、シール部材48は、成形工程時に、焼結体(基材)を板状に成形し、その後に型抜き機によりリング状に打ち抜くことで簡単に作ることできる。その結果、カテーテル組立体10全体の製造効率が向上すると共に、製造コストの低減を図ることができる。また、1個毎のシール部材48自体の量も少なくて済むので、低コストなカテーテル組立体10を生産することができる。
【0064】
カテーテルハブ14に対する内部構成の収容時には、支持部材50の第1部54に止血弁24を装着すると共に、支持部材50の第2部58にシール部材48を装着して、これらをまとめて中空部22に挿入する。これにより、中空部22内での止血弁24、支持部材50及びシール部材48の姿勢を傾かせずに良好に維持しつつ機構配置空間36まで挿入して、カテーテルハブ14の内面に対し支持部材50を嵌め込むことができる。
【0065】
ここで、カテーテル組立体10の組立においては、支持部材50に対し止血弁24又はシール部材48を融着することにより、止血弁24又はシール部材48を固定保持する構成も考えられる。しかしながら、このような融着の実施は、別の製造工程が要求されて、作業効率を大幅に低下させると共に製造コストが増加する要因となる。本実施形態に係るカテーテル組立体10は、支持部材50の第1部54が止血弁24を嵌合保持し、第2部58がシール部材48を嵌合保持する構成となっているので、融着工程を不要とすることができる。その結果、作業効率の向上が図られ、また製造コストを低減することが可能となる。
【0066】
カテーテルハブ14に支持部材50が嵌合すると、第1部54は、カテーテルハブ14の内周面との間で止血弁24の側壁24aを挟み込む。これにより、止血弁24は、カテーテルハブ14及び支持部材50から強い摩擦力が付与されて位置ずれが防止される。同様に、第2部58は、カテーテルハブ14の内周面との間でシール部材48を挟み込む。これにより、シール部材48は、カテーテルハブ14及び支持部材50から強い摩擦力が付与されて位置ずれが防止される。
【0067】
その後は、プラグ30を中空部22に挿入して、プラグ30の頭部60を止血弁24の底壁24bよりも基端側且つ支持部材50よりも先端側まで挿入する。そして、内針16を、カテーテル12及びカテーテルハブ14に挿入する。この挿入時には、カテーテル12の先端開口から内針16の基端を挿入していくとよい。これにより内針16は、その針先16aが止血弁24、遮断機構部26及びプラグ30等に突き刺さることが回避され、中空部22をスムーズに貫通する。最後に、組み付けられたカテーテルハブ14を内針ハブ18に保持させると共に、内針16の基端部を内針ハブ18に固着することで、
図1及び
図3Aに示すような穿刺可能状態のカテーテル組立体10が形成される。
【0068】
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その作用効果について説明する。
【0069】
患者に輸液を行う場合、ユーザ(医師又は看護師等)は、上記のカテーテル組立体10の内針ハブ18を操作して、カテーテル12及び内針16を患者の血管内に穿刺する。これにより、内針16の内部には患者の血液が流動していく。そして、カテーテル12の穿刺状態を維持したまま、
図6Aに示すように、カテーテル12及びカテーテルハブ14から内針16及び内針ハブ18を基端方向に後退させる。これにより患者の血液がカテーテル12の内腔12aを通って、カテーテルハブ14の中空部22に流入する。
【0070】
この際、中空部22(先端側中空部44)に存在していた空気は、血液の流入圧により基端方向に押し出される。この空気は、カテーテルハブ14の内周面に設けられた複数の凹溝42に流入して、各凹溝42内を基端方向に流動する。そして、空気は、凹溝42から支持部材50に達すると、切り欠き部56bを介して支持部材50(カテーテルハブ14の内周面)の周方向に回り込む。さらに、空気は、切り欠き部56bから複数の溝部56aに流入して、各溝部56a内を基端方向に流動しシール部材48に至る。
【0071】
シール部材48は、空気(気体)を通過可能に構成されていることから、空気をそのまま基端方向に通すことができる。これにより、空気は、カテーテルハブ14の基端側中空部46から基端開口部22aを通って外部に流出し、先端側中空部44には血液が徐々に流入していく。
【0072】
図6Bに示すように、止血弁24から内針16が抜けると、血液は、先端側中空部44に充満し、その一部がカテーテルハブ14の各凹溝42に流入して基端方向に向かう。ここで、支持部材50の溝部56aが凹溝42よりも小さく形成されていることから、血液は、溝部56aへの流入が抑えられる。従って、カテーテル組立体10は、基端側中空部46への血液の流出を防ぐことができる。
【0073】
カテーテル12及びカテーテルハブ14から内針16及び内針ハブ18を離脱した後、ユーザは、
図7に示すように、カテーテルハブ14の基端開口部22aから輸液チューブのコネクタ20を挿入する。コネクタ20の先端部は、挿入に伴いプラグ30の基端に接触し、プラグ30を先端方向に押し出すことで、止血弁24のスリット24cにプラグ30を貫通させて、案内空間34に頭部60を配置する。これによりカテーテル組立体10は、カテーテル12の内腔12a、カテーテルハブ14の先端側中空部44、プラグ30の流通路66、及びコネクタ20の供給路が連通して、患者の血管内に輸液剤を良好に送液することが可能となる。
【0074】
ここで、血液は、プラグ30の進入に伴う圧力の上昇、又は毛細管現象等により溝部56aに入り込んで基端方向に流動することがある。しかしながら、この血液は、ハブ取付部56の基端側に配置されているシール部材48によりそれ以上の基端方向への流動が遮断される。つまり、カテーテル組立体10は、仮に血液が支持部材50の溝部56aを流動しても、液体を通過させないシール部材48が基端側に存在することで、血液の漏れをより確実に防止することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル組立体10は、支持部材50により、止血弁24及びシール部材48をまとめてカテーテルハブ14内に収容固定することができる。すなわち、カテーテル組立体10は、支持部材50という簡単な構成により、止血弁24及びシール部材48をカテーテルハブ14内に確実且つ効率的に組付保持させることができ、その生産性が高められる。また、支持部材50により固定されたシール部材48は、カテーテルハブ14内での血液の流動を遮断して、血液の漏れを良好に防ぐことができる。
【0076】
この場合、支持部材50は、第1部54、ハブ取付部56及び第2部58の順に構成されることで、第1部54から止血弁24に充分な摩擦力を付与し、第2部58からシール部材48に充分な摩擦力を付与することができる。また、カテーテル組立体10は、ハブ取付部56に複数の溝部56aを備えることで、カテーテルハブ14の凹溝42から流動してきた空気をハブ取付部56よりも基端側に円滑に流動させることができる。そのため、空気は、シール部材48を介して基端方向に良好に流出する。
【0077】
さらに、カテーテル組立体10は、ハブ取付部56の外周面に周方向に周回する切り欠き部56bを備えることで、複数の凹溝42を通って流動した空気をカテーテルハブ14の周方向に一旦流動させることができる。従って、カテーテル組立体10は、複数の凹溝42の形成位置と複数の溝部56aの形成位置が相互に異なって組み付けられも、空気を溝部56aに確実に導くことができる。換言すれば、カテーテルハブ14に対する支持部材50の周方向位置を位置決めすることなく、簡単に組み付けることができる。
【0078】
またさらに、カテーテル組立体10は、第2部58が第1部54よりも細く形成されていることで、径方向に比較的厚いシール部材48を採用することが可能となり、シール部材48の機能を充分に発揮することができる。さらにまた、第2部58の軸方向長さがシール部材48の軸方向長さよりも長いことで、第2部58は、シール部材48の軸方向に沿って均等的に摩擦力をかけることができ、シール部材48の破損や機能低下等を抑制することができる。
【0079】
なお、カテーテル組立体10は、上記の構成に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、支持部材50は、止血弁24及びシール部材48を保持した状態でカテーテルハブ14内に収容されればよく、ハブ取付部56を備えていなくてもよい。この場合でも、支持部材50がカテーテルハブ14の内周面に止血弁24及びシール部材48を押さえつけることで、止血弁24及びシール部材48を固定して位置ずれを防ぐことができる。
【0080】
また、カテーテル組立体10は、シール部材48の基端面と、プラグ30のフランジ部64の間に挟まれるように図示しないバネを配置してもよい。例えば、バネは、接続空間38の内径より若干小さいコイル状に形成され、軸方向に所定長さ(プラグ30の胴部62よりも短い寸法)を有する。このバネは、コネクタ20が接続空間38に挿入されてプラグ30が先端方向に押し込まれることで、軸方向に縮小してプラグ30を基端方向に付勢する。従って、バネは、コネクタ20が接続空間38から離脱すると、弾性復元し全長に応じてプラグ30を基端方向に押し戻す。これにより、輸液の終了時や輸液の切替時にコネクタ20を引き抜いた際に、バネが復元してプラグ30を自動的に基端方向に押し戻し、止血弁24からプラグ30が後退してスリット24cを閉塞し、血液の漏れを防ぐ。この際、プラグ30の頭部60は支持部材50に引っ掛かることで、カテーテルハブ14からの脱落が防止される。
【0081】
以下、
図8A〜
図9Dを参照して、本発明の幾つかの変形例について述べていく。なお、以下の説明において本実施形態に係るカテーテル組立体10と同一の構成又は同一の機能を有する構成については、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0082】
図8Aに示す第1変形例に係るカテーテル組立体10A(支持部材50A)は、シール部材48の位置ずれを規制する基端側位置ずれ規制手段70を有する点でカテーテル組立体10と異なる。詳細には、基端側位置ずれ規制手段70は、第2部58に設けた返し部71により構成されている。返し部71は、第2部58の基端外周面から径方向外側に突出して、ハブ取付部56との間でシール部材48を挟み込む。これにより、シール部材48が返し部71を越えて基端側に位置ずれすることが良好に規制される。
【0083】
図8Bに示す第2変形例に係るカテーテル組立体10B(支持部材50B)は、基端側位置ずれ規制手段70を1以上の突部72により構成している点で、カテーテル組立体10、10Aと異なる。突部72は、第2部58の外周面から径方向外側に突出している。これにより、突部72はシール部材48に対し強い摩擦力を付与して、シール部材48を確実に押さえて位置ずれを防止することができる。なお、突部72の形状は、特に限定されず、第2部58の外周面に沿う環状に形成されてもよく、斑点状、円弧状、螺旋状等に形成されてもよい。また、シール部材48の内周面は、軸方向に直線状を呈して突部72により弾性変形する構成でもよく、突部72の突出形状に合う溝を有していてもよい。
【0084】
図8Cに示す第3変形例に係るカテーテル組立体10C(支持部材50C)は、基端側位置ずれ規制手段70を1以上の返し針73により構成している点で、カテーテル組立体10、10A、10Bと異なる。返し針73は、ハブ取付部56の基端面から基端方向に突出してその基端部に返し73aを有し、シール部材48を軸方向に突き刺すことが可能である。シール部材48は、返し針73が挿入されると返し針73からの抜けが規制され、位置ずれが規制される。
【0085】
要するに、基端側位置ずれ規制手段70の設置箇所や形状は、特に限定されるものではない。また例えば、基端側位置ずれ規制手段70は、上述した返し部71、突部72、返し針73等を適宜組み合わせて構成することもできる。
【0086】
図8Dに示す第4変形例に係るカテーテル組立体10D(支持部材50D)は、止血弁24の位置ずれを規制する先端側位置ずれ規制手段80を有する点で、カテーテル組立体10、10A〜10Cと異なる。先端側位置ずれ規制手段80は、例えば、第1変形例に係る基端側位置ずれ規制手段70と同様に、第1部54の先端外周面に返し部81を設けることで構成される。これにより、中空部22内での止血弁24の位置ずれを良好に規制することができる。なお、先端側位置ずれ規制手段80は、第2又は第3変形例と同様に、1以上の突部や返し針で構成し得ることは勿論である。また、支持部材50は、基端側位置ずれ規制手段70と先端側位置ずれ規制手段80とを共に備えることが可能である。
【0087】
図9Aに示す第5変形例に係るカテーテル組立体10E(支持部材50E)は、溝部56aに代えて、ハブ取付部56を軸方向及び径方向に連通するエア抜き孔90を有する点で、カテーテル組立体10、10A〜10Dと異なる。エア抜き孔90は、ハブ取付部56に設けた切り欠き部56bに連通し、凹溝42から流動してくる空気を通過させる。要するに、支持部材50の気体を基端方向に流動させる流通部57も、特に限定されるものではなく、種々の構成を採用し得る。
【0088】
図9Bに示す第6変形例に係るカテーテル組立体10Fは、支持部材50Fが溝部56aを有しておらず、カテーテルハブ14の凹溝42がハブ取付部56を越えて基端方向に延在した構成となっている。この場合、ハブ取付部56の外周面が支持面40に接触支持される。そして、凹溝42を流動する血液は、シール部材48により基端方向への漏れが遮断される。このようにカテーテル組立体10Fは、支持部材50が流通部57を備えていなくても、シール部材48によって気体を通過させる一方で、液体の通過を遮断することができる。
【0089】
図9Cに示す第7変形例に係るカテーテル組立体10G(支持部材50G)は、孔部52の軸心部に向かって突出する突出部92を有する点で、カテーテル組立体10、10A〜10Fと異なる。例えば、突出部92は、支持部材50の先端でプラグ30の外周面に近接する位置まで突出して、プラグ30の頭部60の抜けをより確実に規制すると共に、プラグ30の軸方向の姿勢を安定化させることができる。
【0090】
図9Dに示す第8変形例に係るカテーテル組立体10H(支持部材50H)は、先端から基端に向かって、第1部54、第2部58、ハブ取付部56の順に構成されている点で、カテーテル組立体10、10A〜10Gと異なる。すなわち、支持部材50は、ハブ取付部56よりも先端側で止血弁24とシール部材48を一体的に押さえることで、各構成を強固に固定することができる。また、遮断機構部26は、カテーテルハブ14の凹溝42から流動してきた空気をシール部材48及びエア抜き孔90により通過させる一方で、同じく凹溝42から流動してきた血液をシール部材48により遮断することができる。
【0091】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。