(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827750
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】スロープ装置
(51)【国際特許分類】
E04F 11/00 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
E04F11/00 100
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-186501(P2016-186501)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-53423(P2018-53423A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】二塚 滋
【審査官】
瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−027982(JP,A)
【文献】
特開2004−203282(JP,A)
【文献】
特開2005−207145(JP,A)
【文献】
特開2002−115709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00−11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロープ部材と、前記スロープ部材の後端部に折り畳み可能な脚部とを備え、
前記スロープ部材は後端部に取付部を有し、前記取付部に取付ブラケットを固定してあり、
前記取付ブラケットの左右端部を前記脚部に設けた支持ブラケットに軸着してあり、
使用時は前記脚部を前記スロープ部材の裏面側に起立状態にし、収納時は前記脚部を前記スロープ部材の後方に延在させるものであり、
前記取付ブラケットは、前記スロープ部材の取付部の表側に固定してあり、使用時は前記取付ブラケットと前記支持ブラケットの間に前記スロープ部材の取付部が位置するものであることを特徴とするスロープ装置。
【請求項2】
前記スロープ部材はパネル体と、前記パネル体の通路方向端部に沿って設けたレール部を有し、使用時には前記支持ブラケットの上面が前記レール部の下部に廻り込むものであることを特徴とする請求項1記載のスロープ装置。
【請求項3】
前記取付ブラケットと支持ブラケットの軸着部回転中心は前記脚部の前後方向の起立中心線に対して後方側にオフセットさせてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のスロープ装置。
【請求項4】
前記取付ブラケットと支持ブラケットは前記スロープ部材の取付部の強度よりも強く設定してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロープ面を形成するためのスロープ部材を傾斜状態に支持するための脚部を折り畳み可能に備えたスロープ装置に係る。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、スロープ面を傾斜状態で安定させるのに、使用時にスロープ面の裏面側から脚部を起立状態に回動させるスロープ装置を開示する。
しかし、同公報に開示する脚部構造は、大型になりやすく、複数のスロープ部材を積み重ねるように収納する際には、脚部がその障害になる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−123661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、脚部によるスロープ部材の支持強度が強く、複数のスロープ装置を積み重ねるように収納可能なスロープ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るスロープ装置は、スロープ部材と、前記スロープ部材の後端部に折り畳み可能な脚部とを備え、前記スロープ部材は後端部に取付部を有し、前記取付部に取付ブラケットを固定してあり、前記取付ブラケットの左右端部を前記脚部に設けた支持ブラケットに軸着してあり、使用時は前記脚部を前記スロープ部材の裏面側に起立状態にし、収納時は前記脚部を前記スロープ部材の後方に延在させるものであることを特徴とする。
本明細書では、傾斜したスロープ面を形成した場合に下段側、例えば路面,地面等に接地する側を前方と表現する。
本発明においてスロープ装置を使用する際には、脚部をスロープ部材の裏面側に起立させて、スロープ面の上段側を支持することになる。
収納する際には、スロープ装置の脚部をスロープ部材の後方側にスロープ面に沿って略水平に延在するように折り畳むことになる。
よって、収納時には、例えば
図1(c)に示すようにスロープ部材と脚部とが概ねフラット状態になる。
【0006】
本発明において、取付ブラケットは、前記スロープ部材の取付部の表側に固定してあり、使用時は前記取付ブラケットと前記支持ブラケットの間に前記スロープ部材の取付部が位置するものであってよい。
このようにすると、使用時にはスロープ部材の取付部が取付ブラケットと支持ブラケットとの間に挟まれたサンドイッチ構造になるので、スロープ部材と脚部との連結部の強度,剛性向上を図ることができる。
【0007】
本発明において、スロープ部材はパネル体と、前記パネル体の通路方向端部に沿って設けたレール部を有し、使用時には前記支持ブラケットの上面が前記レール部の下部に廻り込むものであってよい。
ここでパネル体は、スロープ面を形成したものであって、1つのパネル材に限定されるものではなく、複数の部材を連結してスロープ面を形成してもよい。
レール部は、パネル体の通路方向のサイドに沿ってこのパネル体に固定することで、スロープ面の剛性を向上させるための部材である。
このレール部は、脱輪防止等を目的としたスロープ面からの立上げ部を有してもよい。
このように、スロープ装置の使用時にスロープ部材の取付部の裏面を支持する支持ブラケットが同時にレール部の後方側端部を下側から支えることになり、スロープ部材の支持剛性が向上する。
この場合に、取付ブラケットと支持ブラケットの軸着部回転中心は前記脚部の前後方向の起立中心線に対して後方側にオフセットさせてあるのが好ましい。
このようにすると、スロープ面を形成するパネル体の下面と支持ブラケットとの間の隙を小さくすることができ、スロープ面に加わる負荷を直接的に脚部に伝達させることができる。
【0008】
本発明は、スロープ面に加わる負荷を支持ブラケットを介して脚部にて支えるので、取付ブラケットと支持ブラケットは前記スロープ部材の取付部の強度よりも強く設定することでスロープ部材を軽くでき、アルミ製,樹脂製にすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明におけるスロープ装置は、スロープ部材の取付部に取付ブラケットを固定するとともに、この取付ブラケットの両端部を支持ブラケットにて回転自在に軸着したことにより、
図1(a),(b)に示すようにスロープ装置の使用時には脚部をスロープ部材の裏面側に回動し、起立状態にすると取付ブラケットと支持ブラケットの間にスロープ部材の取付部が挟み込まれるようなサンドイッチ構造になるので、支持部の強度が高い。
また、収納時には
図1(c)に示すように、脚部をスロープ部材の後方に向けて略水平に折り畳むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るスロープ装置の外観図を示し、(a),(b)は使用状態、(c)は折り畳み収納状態を示す。
【
図2】脚部付近の拡大図を示し、(a)は使用状態、(b)は収納状態を示す。
【
図5】脚部のスロープ部材への連結手順を示し、(a)はスロープ部材の取付部に取付ブラケットをリベットで固定する状態、(b)は取付ブラケットを脚部の支持ブラケットに段付リベットを用いて回転自在に連結する状態を示し、(c)は組付完了状態を示す。
【
図6】スロープ部材と脚部との連結部の断面図を示す。
【
図7】脚部の折り畳み手順を示し、(a)に示すように脚部を水平方向に回動すると、保持アームの基部23bが連結ブラケット24のスライド部24aに沿ってスライドし、保持される。
【
図8】本発明に係るスロープ装置の使用例を示し、(a)はスロープ装置の後方に他のスロープ部材をつなぐ例を示し、(b)は複数のスロープ装置を並設する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るスロープ装置の構造例を以下図に基づいて説明する。
図1にスロープ装置の使用状態と、収納(折り畳み)状態を示し、脚部付近の拡大図を
図2に、分解図を
図3,
図4に示す。
【0012】
本発明に係るスロープ装置は、スロープ部材10の後端部に回動可能な脚部20を連結してある。
スロープ部材10は1つのスロープでもよく、
図1にはスロープ10A,10Bがスライド伸縮する例を示す。
例えば、
図3に示すようにパネル体11Aとその両側の通路方向に沿った端部に取り付けたレール部13,14からなり、パネル体11Aの後端部にプレート状の取付部12を形成してある。
また、パネル体11A,11Bは一枚の部材に限定されるものでなく、複数の部材を連結してパネル体としてもよい。
レール部13,14は、パネル体11Aの剛性アップを目的としたものであり、例えばレール部13にて説明すると、パネル体11Aの端部を上下一対のつば部で形成した溝部に嵌合させたレール本体部13aと、このレール本体部13aから立設した脱輪防止用の立上げ部13bを形成した例になっている。
後述するように、例えば複数のスロープ部材10をレール部を介して折り畳み可能に左右方向に連結する場合には、立上げ部13bの無いレール部を用いる。
また、本実施例では、パネル体11A及び取付部12,レール部13,14をアルミニウム合金にて製作した例となっている。
【0013】
取付ブラケット22は、スチール製で略コ字形状に形成した例になっている。
取付ブラケット22は、ベース部22aとその左右端部を上方に折り曲げて形成したヒンジ部22bからなり、このヒンジ部に軸孔22cを設けてある。
ベース部22aには、固定孔22d,22dを設け、スロープ部材10の取付部12の固定孔12a,12aに表面(上側)からリベット22e,22eを用いて固定する。
その状態を
図5(a),(b)に示す。
【0014】
脚部20は、取付ブラケット22の左右端部と軸着する支持ブラケット21を有し、この支持ブラケット21は左右一対の支柱脚21dの上端部に固定連結し、本実施例では支柱脚21dの下端側を接地部21eにて連結してある。
支持ブラケット21は、左右両側の端部から支持ヒンジ部21a,21aを立設し、この支持ヒンジ部21a,21aに軸孔21b,21bを形成してある。
図5(b),(c)に示すように、取付ブラケット22の軸孔22cと支持ブラケット21の軸孔21bとを合せ、段付きの取付リベット21cを用いて回転可能に軸着する。
この際に、
図6に示すように軸孔による脚部の回転中心Oが脚部の支柱脚21dの前後方向の中心線Cに対して、使用状態で後方に寸法d
1だけオフセットさせてある。
これにより、使用時には取付ブラケット22と支持ブラケット21との間にスロープ部材の取付部12が挟み込まれるようにスロープ部材を支持することになるとともに、スロープ部材10のレール部の後方先端部の下部13cの下側に廻り込むように、支持ブラケット21の上面が位置することになる。
また、スロープ面を形成するパネル体11Aの下面11bと、支持ブラケット21の上面とのスキd
2も僅かになる。
【0015】
本実施例では、この状態を保持するのにパネル体11Aの下面と支柱脚21dとの間に、略コ字形状の保持アーム23を配設してある。
保持アーム23のコ字形状の基部23b側を、パネル体11Aの下面に取り付けた連結ブラケット24のスライド部24aにスライド可能に取り付けてある。
一方、保持アームの両側のアーム端部23aを脚部20の左右の支柱脚21dの内側の保持孔に差し込み、回動連結してある。
連結ブラケット24のスライド部24aの両端部付近には、保持凹部24b,24cを形成し、この保持凹部に保持アーム23の基部23bが入り込むことで、
図7に示すように脚部の起立状態と水平状態を保持する。
保持アームは、脚部の起立状態と水平方向の収納状態をそれぞれ保持するためのものであり、保持構造はこれに限定されない。
【0016】
本発明に係るスロープ装置は、単独で用いることができることは言うまでもないが、
図8に示すように他のスロープ装置と組み合せ、あるいは一体化して使用することもできる。
図8(a)は、他のスロープ部材1の先端部をスロープ部材10の取付部12に載置し、後方側に連続的にスロープ面を形成することができる。
図8(b)は、スロープ部材10のレール本体部13aに沿って、他のスロープ装置2を1つ又は複数連結して使用する例である。
複数のパネル体をレール本体部13aを介して相互に折り畳み可能に連結した場合に、脚部を使用状態にしたままでは積み重ねたり、パネル体同士が重なるように折り畳むことができないが、本発明では脚部を水平方向に折り畳むことができるので、積み重ねたり、パネル体同士が重なるように折り畳むことができる。
【符号の説明】
【0017】
10 スロープ部材
11A パネル体
12 取付部
13 レール部
14 レール部
20 脚部
21 支持ブラケット
21d 支柱脚
21e 接地部
22 取付ブラケット
23 保持フレーム
C 起立中心線
O 回転中心