特許第6827762号(P6827762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6827762再生電極活物質の製造方法、及び、リチウムイオン電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827762
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】再生電極活物質の製造方法、及び、リチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
   H01M10/54
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-204596(P2016-204596)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2017-79211(P2017-79211A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2019年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-205547(P2015-205547)
(32)【優先日】2015年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】川北 健一
(72)【発明者】
【氏名】大澤 康彦
(72)【発明者】
【氏名】草地 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一
(72)【発明者】
【氏名】赤間 弘
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−062105(JP,A)
【文献】 特開2013−232366(JP,A)
【文献】 特開2006−331707(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/137041(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆用樹脂を含む被覆剤で電極活物質の表面の少なくとも一部を被覆した被覆活物質と、非水溶媒を含有する電解液とを含む電極組成物を有する電池から再生電極活物質を製造する方法であって、
電池から前記電極組成物を取り出す取り出し工程と、
電池から取り出した電極組成物に含まれる被覆活物質から前記被覆用樹脂を除去する除去工程とを含み、
前記電極組成物は、前記被覆活物質が相互に結着しない状態の非結着体であることを特徴とする再生電極活物質の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の再生電極活物質の製造方法であって、
前記除去工程においては、前記被覆活物質が有する前記被覆用樹脂を溶剤に溶解又は分散する再生電極活物質の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の再生電極活物質の製造方法であって、
前記電極組成物から、前記非水溶媒を含有する電解液を除去する工程をさらに含む再生電極活物質の製造方法。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の再生電極活物質の製造方法によって得られた再生電極活物質を得る工程と、
前記得られた再生電極活物質を用いてリチウムイオン電池を製造する工程と、
を含むリチウムイオン電池の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生電極活物質の製造方法、及び、リチウムイオン電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、資源リサイクルの観点から、電池材料のリサイクルについても広く検討が行われている。例えば特許文献1には、二次電池のリサイクル方法として、電極を分解せずに水洗して不活性物質を除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−45760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の電池のリサイクル技術では、従来一般的な電池において活物質同士、又は活物質と電極(集電体)とがバインダによって結着されているため、電極活物質までリサイクルすることが困難であった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、電池から電極活物質を回収する再生電極活物質の製造方法、及び、再生電極活物質を用いたリチウムイオン電池の製造方法を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来例の問題点を解決する本発明は、被覆用樹脂を含む被覆剤で電極活物質の表面の少なくとも一部を被覆した被覆活物質と電解液とを含む電極組成物を有する電池から再生電極活物質を製造する方法であって、電池から前記電極組成物を取り出す取り出し工程と、電池から取り出した電極組成物に含まれる被覆活物質から前記被覆用樹脂を除去する除去工程とを含む。
【0007】
またここで前記除去工程においては、前記被覆活物質が有する前記被覆用樹脂を溶剤に溶解又は分散することとしてもよい。さらに前記電極組成物から電解質を除去する工程をさらに含んでもよい。
【0008】
また、本発明の一態様は、これら再生電極活物質の製造方法によって得られた再生電極活物質を得る工程と、前記得られた再生電極活物質を用いてリチウムイオン電池を製造する工程と、を含むリチウムイオン電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、電池から電極活物質を回収することで再生電極活物質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る再生電極活物質の製造方法において、処理の対象となる電池の例を表す概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る再生電極活物質の製造方法での回収過程の概略を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態において処理の対象とされる電池1は図1に例示されるように、第1の集電体11と、第2の集電体12との間に、正極組成物13とセパレータ15と負極組成物14とを積層した電池構造体10を含み、この電池構造体10をケーシング20にて封止したものである。図1の例では、直方体状に形成した電池構造体10をケーシング20で封止した電池1をセパレータ15に直交する面で破断した断面を示しているが、電池構造体10の形状や大きさ、比率等はこれに限られない。
【0012】
なお、本発明において、正極組成物は正極に用いる電極組成物を意味し、負極組成物は負極に用いる電極組成物を意味する。
【0013】
またケーシング20は第1の集電体11と正極組成物13とセパレータ15とを封止する第1のケーシング体20aと、第2の集電体12と、負極組成物14とセパレータ15とを封止する第2のケーシング体20bとを含んで構成される。第1、第2の集電体11,12の端部はそれぞれケーシング20の外部まで導出されている。なお、このケーシング20の形状は、正極組成物13と負極組成物14とが混合されない状態で電池構造体10を封止できればどのような形状であってもよい。
【0014】
ここで第1の集電体シート11及び第2の集電体12は、金属集電体や樹脂集電体を用いて形成される。具体的にこの金属集電体としては、公知の金属集電体材料を用いることができる。例えば金属集電体材料は、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、及びこれらの一種以上を含む合金、ならびにステンレス合金からなる群から選択される一種以上の材料を含んでなる。金属集電体は薄板又は金属箔から形成されてもよいし、基材の表面にスパッタリング、電着、塗布等の手法により金属層が形成されたものであってもよい。
【0015】
また樹脂集電体を用いる場合は例えば、樹脂集電体材料を用いて形成する。この樹脂集電体材料は、導電性を有する高分子材料であってもよいし、導電性を有さない高分子材料であってもよい。具体的にこの高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0016】
高分子材料は、上記のうち電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0017】
また、樹脂集電体は、導電性の高分子材料を含む樹脂集電体の導電性を向上させる目的、あるいは、導電性を有さない高分子材料を含む樹脂集電体に導電性を付与する目的から、導電性フィラーを含んでいることが好ましい。導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択され、好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、イオン伝導性を有さない材料を用いる。このような材料として具体的には、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーは一種類の素材を単独で用いてもよいし、二種以上の素材を併用してもよい。また、上記素材の合金材、例えばステンレス(SUS)等が用いられてもよい。導電性フィラーは、耐食性の観点からは、アルミニウム、ステンレス、カーボン材料、又はニッケルであることが好ましく、より好ましくはカーボン材料である。また、これらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
【0018】
樹脂集電体の具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5〜20部分散させた後、熱プレス機で圧延したものが挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0019】
また正極組成物13は、被覆用樹脂を含む被覆剤で電極活物質の表面の少なくとも一部を被覆した正極活物質(以下、正極被覆活物質という)と電解液とを含んで成る組成物であり、前記正極組成物13は前記被覆活物質が相互に結着しない状態の非結着体であることが好ましい。「非結着体」とは、活物質同士が相互に結着されていないこと、ここでは正極活物質が相互に結着されていない状態であることを意味し、図1において正極組成物13に含まれている正極被覆活物質はたがいに結着されておらず、自由にその形状を変えることができ、湿砂状、粘土状、ペースト状、スラリー状又はゲル状の性状をとることができる。正極組成物13は正極被覆活物質と電解液とを含む混合物を圧縮成形する方法、及び正極集電体又はセパレータ上に塗布して積層する方法等で得ることができる。なお、本発明において、正極活物質は正極に用いる電極活物質を意味する。また、正極組成物13が正極活物質の非結着体であることは正極組成物13を電解液中に浸漬して活物質が電解液中に分散することを目視観察することで確認できる。
【0020】
ここで正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2及びLiMn24)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV25)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリカルバゾール)等がある。
【0021】
また、負極組成物14は、被覆用樹脂を含む被覆剤で電極活物質の表面の少なくとも一部を被覆した負極活物質(以下、負極被覆活物質という)と電解液とを含んで成る組成物であり、前記負極組成物14は前記被覆活物質が相互に結着しない状態の非結着体であることが好ましい。ここでも、「非結着体」とは、負極活物質同士が相互に結着されていないことを意味する。すなわち負極組成物14に含まれている負極活物質はたがいに結着されておらず、自由にその形状を変えることができ、湿砂状、粘土状、ペースト状、スラリー状又はゲル状の性状をとることができる。負極組成物は負極被覆活物質と電解液とを含む混合物を圧縮成形する方法、及び負極集電体又はセパレータ上に塗布して積層等で得ることができる。なお、本発明において、負極活物質は負極に用いる電極活物質を意味する。また負極組成物14が負極活物質の非結着体であることは負極組成物14を電解液中に浸漬して活物質が電解液中に分散することを目視観察することで確認できる。
【0022】
ここで負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、スズ、シリコーン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコーン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi4Ti5O12等)等がある。
【0023】
被覆剤は被覆用樹脂を含んでいる。活物質の周囲が被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。また、リチウムイオン電池が変形した場合でも導電経路を維持する効果を有する。被覆用樹脂の例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂が好ましい。
【0024】
また上記被覆剤は、さらに導電助剤を含んでいても良く、正極活物質を被覆する被覆剤は導電助剤を含むことが好ましい。導電助剤としては、導電性を有する材料から選択される。具体的には、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等の金属材料、グラファイト、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)などのカーボン材料、及びこれらの混合物等があるが、これらに限定されない。
【0025】
また、導電助剤として金属材料を用いる場合、その合金又は酸化物(金属酸化物)が用いられてもよい。電気的安定性の観点から導電助剤として用いる材料は、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤とは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたものでもよい。またここでは一種類の導電助剤を単独で用いてもよいし、二種以上の導電助剤を併用してもよい。
【0026】
さらに導電助剤として導電性繊維を用いることも可能である。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼等の金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等がある。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
【0027】
正極被覆活物質や負極被覆活物質(以下、まとめて被覆活物質と呼ぶ)は、例えば、正極活物質や負極活物質(電極活物質)を万能混合機に入れて30〜500rpmで撹拌した状態で、被覆剤である被覆用樹脂及び必要により用いる導電助剤を含む溶液を1〜90分かけて滴下混合し、さらに必要に応じて導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
【0028】
正極被覆活物質及び負極被覆活物質を、それぞれ電解液と混合、又は電解液に分散して、湿砂状、粘土状、ペースト状、スラリー状又はゲル状の正極組成物13及び負極組成物14とする場合、電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
【0029】
具体的に電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22及びLiC(CF3SO23等の有機酸のリチウム塩等がある。これらのうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点からはLiPF6が好ましい。
【0030】
また非水溶媒としては、電解液に用いられている公知の溶媒等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。この非水溶媒は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上の非水溶媒を併用してもよい。
【0031】
上記の非水溶媒の例のうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、さらに好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、又はエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液である。
【0032】
電極組成物における被覆活物質の重量は電解液の重量に基づいて10〜60重量%であることが好ましい。
【0033】
本発明の実施の形態においては、正極組成物及び/又は負極組成物は、被覆活物質と導電性繊維とを含むことが好ましい。なお、ここで用いる導電性繊維は前記の活物質を被覆する被覆剤中に含まれる導電助剤とは別に用いられる。
【0034】
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。正極組成物及び負極組成物が導電性繊維を含むと正極活物質組成物及び負極活物質組成物中に導電通路が形成されやすくなり、さらに電気特性が良好となる。
【0035】
さらに本実施の形態のセパレータ15は、ポリエチレン、ポリプロピレン等、ポリオレフィン製の微多孔膜フィルム、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等で構成される。
【0036】
またこの電池構造体10を封止するケーシング20を形成するシール材料としては、第1、第2の集電体11、12に対する接着性を有し、正極活物質13又は負極活物質14に含まれ得る電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料、特に熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフッ化ビニデン樹脂等でよい。耐久性が高く取り扱いが容易であることを考慮すると、これらのうちエポキシ系樹脂が好ましい。
【0037】
本実施の形態の再生電極活物質の製造方法は、以上の構成を有する電池1から電極活物質を回収する工程を含むものであり、電池から前記電極組成物を取り出す取り出し工程と、電池から取り出した電極組成物に含まれる被覆活物質から被覆用樹脂を除去する除去工程とを含むことを特徴とする再生電極活物質の製造方法である。
【0038】
すなわち、本実施の形態での再生電極活物質の製造方法では、まず、ケーシング20に穿孔ないし、ケーシング20を破断して(穿孔又は破断箇所によっては第1又は第2の集電体11,12も、ともに穿孔又は破断することとする)、正極組成物13と負極組成物14とをそれぞれ別々に取り出す。ここでは正極活物質組成物と負極活物質組成物とを別々に取り出すため、正極組成物13と負極組成物14とのそれぞれを取り出し可能な箇所で、すなわち少なくとも2箇所でケーシング20に穿孔し、又はケーシング20を破断する。
【0039】
既に述べたように、本実施の形態において電極活物質を回収する対象となる電池1では、正極組成物13と負極組成物14とはそれぞれ、正極被覆活物質又は負極被覆活物質の非結着体であり、正極被覆活物質又は負極被覆活物質を電解液と混合又は電解液に分散して湿砂状、粘土状、ペースト状、スラリー状又はゲル状の性状にしたものである。このため正極組成物13と負極組成物14はいずれも自由にその形状を変えることが出来るので、電池から前記電極組成物を取り出す取り出し工程は、ケーシング20を破断した箇所から取り出し、正極組成物13と負極組成物14とをそれぞれ別々の回収容器(不図示)へ排出することで実施が可能である。
【0040】
ここで取り出した正極組成物13と負極組成物14とにそれぞれ含まれる被覆活物質はいずれも、図2(a)にその外観の概要を示すように、電極活物質表面の少なくとも一部に被覆用樹脂を含む被覆剤が付着して、少なくとも一部が被覆された状態にある。
【0041】
次に、このそれぞれの回収容器中で、電池1から取り出した電極組成物に含まれる被覆活物質から被覆用樹脂を除去し(除去工程)、各電極活物質を分離して回収する。
【0042】
ここでこの除去工程では、例えば、各被覆活物質が有する被覆用樹脂を溶剤に溶解又は分散させることで実施が可能である(図2(b))。
【0043】
ここで被覆用樹脂及び必要により用いる導電助剤を溶解又は分散させる溶剤は、活物質表面を被覆している被覆用樹脂及び/又は導電助剤を溶解又は分散できれば、特に限定はないが、例えばアミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)等)、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシド等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、炭化水素系溶媒(n-ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール等)、水及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0044】
具体的に被覆用樹脂がビニル樹脂であれば、溶剤としてはNMPやイソプロパノールが好適であり、ウレタン樹脂であればDMFが好適であり、ポリアミド樹脂であればNMPが好適である。
【0045】
被覆用樹脂を溶剤に溶解又は分散する具体的な方法としては、取り出し工程で取り出した正極組成物13及び負極組成物14を、それぞれ被覆用樹脂を溶解可能な溶剤と20〜40℃の温度で撹拌混合(好ましくは1〜10時間)して分散液を作成し、その後、分散液に含まれる不溶解分をろ過又は遠心分離により分離除去する方法があげられる。この際の溶剤の使用量は、通常、電極組成物の体積の10〜100倍である。
【0046】
なお、各被覆活物質が有する被覆用樹脂を溶剤に分散して得られる分散液が、不溶解分として電極活物質と必要により用いる導電助剤とを含む場合、ろ過に用いるろ紙等の開孔径を選択するなどの方法で電極活物質と導電助剤との分離が可能となる。
【0047】
除去工程において、電極組成物と溶剤との撹拌混合及び分散液に含まれる不溶解分の分離除去は、繰り返して行うこともできる。
【0048】
被覆活物質から被覆用樹脂及び必要により用いた導電助剤を除去できたことは、電子顕微鏡を用いて除去工程後の被覆活物質の表面を拡大観察することで確認できる。
【0049】
この除去工程を経ることにより、電極活物質の表面を被覆している被覆用樹脂導電助剤が除去され、電極活物質粒子(正極活物質、負極活物質)が再生電極活物質として再生(製造)される(図2(c))。
【0050】
さらに本実施の形態では、ここで樹脂及び必要により用いる導電助剤を除去した電極活物質から、又は樹脂及び必要により用いる導電助剤を除去する前に被覆活物質から電解液を除去してもよい。電解液の除去は、例えば、取り出し工程で得られた被覆活物質又は前記除去工程後の電極活物質を純水(好ましくは超純水)により洗浄する方法が採用でき、具体的には取り出し工程で得られた被覆活物質又は前記除去工程後の電極活物質を純水中に分散させ、さらに超音波洗浄を行い水に可溶な電解質と非水溶媒とを水に抽出し、その後ろ過又は遠心分離等で固液分離する方法など、広く知られた方法を採用できる。ここで電解液の除去に純水を用いる場合、純水の使用量は、通常、純水に分散する被覆活物質又は電極活物質の体積に基づいて10〜100倍である。なお電解液の除去は、取り出し工程で得られた被覆活物質について行うことが、前記の除去工程の実施が容易になる点で好ましい。
【0051】
また、本実施の形態において製造した再生電極活物質(正極活物質、負極活物質のそれぞれ)は、リチウムイオン電池の製造を行う際に活物質として再利用してもよい。これにより、電池のリサイクルが達成される。本実施の形態において製造した再生電極活物質を用いてリチウムイオン電池を製造するリチウムイオン電池の製造方法は、通常の電極活物質を用いてリチウムイオン電池を製造する公知の製造方法と同様に行うことができる。また、再生電極活物質を用いてリチウムイオン電池を製造する場合には、本実施の形態において製造した再生電極活物質だけを用いても、新しい電極活物質と混合して用いてもよい。
【0052】
このように本実施の形態によると、電極活物質をリチウムイオン電池から回収して再生活物質を製造することができ、また回収した再生電極活物質を再利用してリチウムイオン電池を製造することで電池のリサイクル方法が提供される。
【符号の説明】
【0053】
1 電池、10 電池構造体、11 第1の集電体、12 第2の集電体、13 正極組成物、14 負極組成物、15 セパレータ、20 ケーシング、20a 第1のケーシング体、20b 第2のケーシング体。
図1
図2