特許第6827797号(P6827797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827797
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20210128BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20210128BHJP
【FI】
   H05K3/34 501D
   H01L33/62
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-247975(P2016-247975)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-101731(P2018-101731A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】及川 俊広
(72)【発明者】
【氏名】白井 幸夫
【審査官】 三森 雄介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−216615(JP,A)
【文献】 特開平02−246189(JP,A)
【文献】 特開平09−097969(JP,A)
【文献】 特開平10−022617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H01L 33/48−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田膜が形成された複数の所定数のランドを上面に一列に有し、各ランドに、前記所定数の複数のパッドを下面に有する電気部品の対応するパッドが前記半田膜の半田により半田付けされる基板であって、
前記複数のランドの並び方向に対して直交方向の幅が最大であるランドのみにおいて、前記並び方向に延在して、該ランドを前記直交方向に並んだ複数のランド部分に分割する半田離隔部を備えることを特徴とする基板。
【請求項2】
請求項に記載の基板において、
前記半田離隔部は、直線状に延在していることを特徴とする基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板において、
前記電気部品は、上面側に光出射面を有する発光素子であることを特徴とする基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品が半田付けにより実装される基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気部品が半田付けにより実装される基板は、半田膜が形成されたランドを上面に有し、電気部品の実装時は、半田膜の半田を溶融して、電気部品の下面のパッドがランドに半田付けされる(例:特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された発光装置は、基板と、該基板の上面に実装されるLED素子とを備え、LED素子の下面の陽極及び陰極の2つのパッドと、基板の上面の陽極及び陰極の2つのランドとが半田付けにより相互に固着する。ランド間で、半田の厚みに不均一があると、LED素子が基板に対して傾く原因になるので、該発光装置では、各ランドの寸法及び面積をランド間で所定の関係となるように、設定して、各ランドの溶融される前の半田膜の半田量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−227446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気部品を基板に半田付けするために、ランドの半田膜の半田を溶融させたとき、基板が全体的又は局所的に傾斜していると、各ランドにおいて、溶融状態の半田が高い方から低い方へ流れ、固化後、各ランドにおいて、半田の厚みに不均一が生じ、電気部品が基板に対して傾く事態が起きる。
【0006】
電気部品の下面が基板の上面に対して傾く方向を、基板の上面における複数のランドの並び方向と該並び方向の直交方向に分けて考える。並び方向には、電気部品の下面は、複数のランドにより基板に半田付けされることになるが、半田の厚みの不均一量(最大厚みと最小厚みとの差)は、ランド間の距離に対して無視できるほど小さい。したがって、各ランドにおいて半田の厚みに不均一が生じても、並び方向の電気部品の傾きは問題にならない。これに対し、直交方向には、電気部品は基板に一点支持の状態であるので、各ランドにおいて半田の厚みに不均一があると、電気部品は、基板に対して大きく傾いてしまう。
【0007】
特許文献1の傾き対策は、ランド間の半田の厚みの不均一を防止するものであり、また、ランドの並び方向の直交方向の傾きを抑制することはできない。
【0008】
さらに、下面にパッドが1つしかない電気部品も存在する。この場合、該電気部品を実装する基板は、ランドを1つしか有しないので、基板の上面における全方向に対する電気部品の傾き防止対策が必要になる。
【0009】
本発明の目的は、電気部品が傾いて半田付けされることを抑制することができる基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基板は、
半田膜が形成された複数の所定数のランドを上面に一列に有し、各ランドに、前記所定数の複数のパッドを下面に有する電気部品の対応するパッドが前記半田膜の半田により半田付けされる基板であって、
前記複数のランドの並び方向に対して直交方向の幅が最大であるランドのみにおいて、前記並び方向に延在して、該ランドを前記直交方向に並んだ複数のランド部分に分割する半田離隔部を備えることを特徴とする基板。
【0011】
電気部品を基板に半田付けする際、基板が全体的又は局所的に傾いていると、半田膜の半田を溶解させたとき、溶融状態の半田が高い方から低い方に流れる。本発明によれば、半田離隔部が並び方向に延在することにより、溶融状態の半田は、直交方向への流れを半田離隔部により阻まれる。この結果、半田の移動は、各ランドにおいて、全体にわたる移動ではなく、各ランド部分の内だけに制限される。これにより、各ランドにおいて直交方向の厚みの不均一(最大厚みと最小厚みとの差)は低減し、電気部品が基板に対して傾いて実装されることが抑制される。
【0013】
もし、どのランドも半田離隔部により直交方向に複数のランド部分に分割されていなければ、半田の厚みの不均一が直交方向に最大になるランドは、直交方向の幅が最大であるランドである。また、半田離隔部の存在は、電気部品のパッドとの半田付け面積を減少させるので、基板への電気部品の半田付け力の低下につながる。当該構成によれば、複数のランドのうち、直交方向の幅が最大であるランドのみが半田離隔部により複数のランド部分に分割されているので、電気部品の各パッドの半田付け力を確保しつつ、電気部品の傾きを有効に抑制することができる。
【0014】
本発明の基板において、前記半田離隔部は、直線状に延在していることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、半田離隔部を直線状にすることにより、半田離隔部の構造を簡単化することができる。
【0020】
本発明の基板において、前記電気部品は、上面側に光出射面を有する発光素子であることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、光出射面からの光の出射方向が正規の方向から傾くのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】LED素子を示し、図1Aは該LED素子の上面を示す図、図1B図1AのX1Bの矢視図、図1C図1AのX1Cの矢視図。
図2】基板の上面を示し、図2Aはランドを含む所定範囲を示す図、図2B図2AにLED素子の実装位置を重ねた図。
図3】基板の断面を示し、図3A図2Aにおいて陰極用ランドの位置で対称軸線に平行に切った断面図、図3B図2Aにおいて陰極用ランドの一側部分の位置で対称軸線の直交方向に切った断面図。
図4】第1実施形態の基板を備えるLED装置を示し、図4AはLED装置を上方から見た図、図4B図4AのX4Bの矢視図、図4C図4AのX4Cの矢視図。
図5】第1比較例の基板を備えるLED装置を示し、図5Aは該LED装置を上方から見た図、図5B図5AのX5Bの矢視図、図5C図5AのX5Cの矢視図。
図6】第2実施形態の基板を備える電子装置示し、図6Aは該電子装置の斜視図、図6Bは電子部品の下面を示す図、図6Cはランドを含む所定範囲を示す図。
図7】第2実施形態の基板を備える電子装置を示し、図7Aは電子装置を上方から見た図、図7B図7AのX7Bの矢視図、図7C図7AのX7Cの矢視図。
図8】第2比較例の基板を備える電子装置を示し、図8Aは電子装置を上方から見た図、図8B図8AのX8Bの矢視図、図8C図8AのX8Cの矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1図5に係る第1実施形態である基板10を詳細に説明する前に、基板10の構成の主要部を述べる。基板10は、半田膜20が形成された陰極用ランド14及び陽極用ランド15(複数の所定数のランド)を上面に一列に有し、各ランドに、陰極パッド4及び陽極パッド5(所定数の複数のパッド)を下面に有するLED素子1(電気部品)の陰極パッド4及び陽極パッド5が半田膜20の半田により半田付けされる。基板10は、陰極パッド4(複数のランドのうちの少なくとも1つのランド)において、陰極パッド4及び陽極パッド5の並び方向に延在して、陰極パッド4を並び方向の直交方向に並んだ一側部分14a及び他側部分14b(複数のランド部分)に分割する縦断部19a(半田離隔部)を備える。
【0024】
以下、第1実施形態について詳細に説明する。図1はLED素子1を示す。図1Aは該LED素子1の上面を示す図である。図1B図1AのX1Bの矢視図である。図1C図1AのX1Cの矢視図である。
【0025】
図1A図1Cにおいて、LED素子1は直方体のパッケージ2を有する。パッケージ2は、LEDチップ(図示せず)を封入するとともに、LEDチップの出力光をパッケージ2の外に出射する正方形又は矩形の光出射面3を上面に有する。パッケージ2の下面には、陰極パッド4及び陽極パッド5が矩形の下面の長辺に沿って配置される。なお、後述の図2Bにおける陰極パッド4及び陽極パッド5についての二点鎖線から分かるように、陽極パッド5は、パッケージ2の矩形の下面の長辺及び短辺に沿ういずれの方向にも、陰極パッド4より小さい寸法に規定されている。
【0026】
図2は基板10の上面を示す。図2Aはランドを含む所定範囲を示す図である。図2Bは該所定範囲にLED素子1の載置位置(二点鎖線)を重ねて示す図である。
【0027】
図2Aにおいて、基板10の上面には陰極用ランド14及び陽極用ランド15が設けられている。典型的には、陰極用ランド14にはアース電圧が印加され、陽極用ランド15には正の所定電圧が印加される。陰極用ランド14及び陽極用ランド15は、共通の中心線を有し、対称軸線Rcは該共通の中心線上を延在している。陰極用ランド14及び陽極用ランド15の輪郭線は対称軸線Rcに対して左右対称となっており、陰極用ランド14及び陽極用ランド15は、対称軸線Rcに沿う並び方向に一列に配置されている。
【0028】
以下、基板10の上面において、対称軸線Rcに沿う方向を「縦方向」と呼び対称軸線Rcに対する直交方向を「横方向」と呼ぶ。該縦方向及び該横方向は、LED素子1のパッケージ2の矩形下面の長辺及び短辺にそれぞれ平行な方向になっている。
【0029】
基板10の上面には、レジスト膜19が、陰極用ランド14及び陽極用ランド15を囲うように、被膜されている。陰極用ランド14及び陽極用ランド15は、最上面に半田膜20を有する。半田膜20は、レジスト膜19の形成後、周知のマスク印刷により陰極用ランド14及び陽極用ランド15に形成され、レジスト膜19から露出している。
【0030】
レジスト膜19は、縦断部19a及び横断部19bを有する。縦断部19aは、対称軸線Rcに沿って陰極用ランド14を縦断し、陰極用ランド14を横方向に一側部分14aと他側部分14bとに分割している。横断部19bは、陰極用ランド14と陽極用ランド15との間を横方向に延在し、陰極用ランド14及び陽極用ランド15を縦方向に相互に隔離している。
【0031】
一側部分14a及び他側部分14bは、陽極用ランド15とは縦方向の反対側に主部分から突出する突出部22を有する。陽極用ランド15は、陰極用ランド14とは縦方向の反対側に主部分から突出する突出部23を有する。陽極用ランド15は、陰極用ランド14側の中心部において凹部17を有している。
【0032】
図2Bにおいて、LED素子1の下面の陰極パッド4及び陽極パッド5は、突出部22,23をパッケージ2の外に露出させるようにして、陰極用ランド14及び陽極用ランド15の上に載置され、半田膜20の半田により陰極用ランド14及び陽極用ランド15に半田付けされる。半田付け後は、LED素子1の陰極パッド4及び陽極パッド5は、それぞれ基板10の陰極用ランド14及び陽極用ランド15の金属層28(図3)に電気的に接続されることになる。突出部22,23は、作業者が、半田付け時に、陰極用ランド14及び陽極用ランド15における半田の溶融状態を観察するために、設けられている。
【0033】
図3は基板10の断面を示す。図3A図2Aにおいて陰極用ランド14の位置で対称軸線Rcの直交方向に切った断面図である。図3B図2Aにおいて陰極用ランド14の一側部分14aの位置で対称軸線Rcに平行に切った断面図である。
【0034】
基板10は積層構造を有し、該積層構造の下側の二層は、基材26とその上の絶縁層27になっている。絶縁層27の上面は、陰極用ランド14及び陽極用ランド15において金属層28により被膜されている。金属層28は、例えば、銅箔から成る。絶縁層27の上面は、金属層28以外の範囲では、レジスト膜19により被膜されている。レジスト膜19は、金属層28より厚く形成され、レジスト膜19の上面は、金属層28の上面より上に達している。
【0035】
レジスト膜19の一部としての縦断部19aは、陰極用ランド14において金属層28の上面に形成され、陰極用ランド14を横方向に一側部分14aと他側部分14bとに分割している(図3A)。これに対し、レジスト膜19の別の一部としての横断部19bは、レジスト膜19の本体部と同じく、絶縁層27の上面に形成され、横断部19bの上面は、金属層28の上面より上に位置している。金属層28の上面側の周縁は、レジスト膜19の上面側の縁部により被膜されている。
【0036】
図4はLED装置32を示す。図4AはLED装置32を上方から見た図である。図4B図4AのX4Bの矢視図である。図4C図4AのX4Cの矢視図である。
【0037】
図4、並びに後述の図5図7及び図8は、LED素子1等の電気部品の傾きの説明に関連する要素を模式的に示しており、細部は省略している。Rdは、LED素子1等の電気部品の上下方向に延在する中心線を示す。LED素子1の光出射面3(図1A)は、中心軸線Rdに直角の平面で形成されているので、光出射面3からの光の出射方向は、中心軸線Rdに平行になる。
【0038】
基板10の上面に対して、垂直な直線(以下、「垂直線」という)を設定する。LED装置32において、中心軸線Rdが垂直線と平行であるときは、LED素子1が傾いていないことを意味する。中心軸線Rdが垂直線に対していずれかの方向に傾いているときは、LED装置32において、LED素子1が、中心軸線Rdが垂直線に対して傾いている方向に傾いていることを意味する。中心軸線Rdが垂直線に対して傾いている方向と、LED素子1の下面が基板10の上面に対して傾いている方向とは一致する。
【0039】
LED装置32は、基板10と、基板10の上に載置されて、半田付けにより固定されるLED素子1とを備える。LED素子1を基板10に半田付けする際は、陰極用ランド14の一側部分14a及び他側部分14b、並びに陽極用ランド15の半田膜20が熱により溶融される。半田付けは、基板10を水平方向に保持して行われるが、種々の原因(例:基板10の製造ばらつきや、水平保持制御の不完全)により、基板10の上面は全体的又は局所的に水平面に対してわずかながら傾斜することがある。
【0040】
このため、半田膜20の半田が溶融すると、溶融状態の半田が、一側部分14a及び他側部分14bにおいて傾斜に沿って高い方から低い方へ移動しようとする。しかしながら、縦断部19aが一側部分14aと他側部分14bとの間に存在するので、溶融状態の半田は、傾斜にもかかわらず、縦断部19aを越えて、一側部分14aから他側部分14bに又はその逆に移動することを阻止される。
【0041】
この結果、溶融状態の半田の移動は、溶融前に存在していた一側部分14a又は他側部分14bの中だけの移動に制限され、固化後の半田の厚みの不均一も、一側部分14aと他側部分14bとの間の不均一ではなく、一側部分14a又は他側部分14bの中だけの不均一に留まる。こうして、LED素子1の下面側の高さの不揃いが抑制され、LED素子1の下面は基板10の上面に対してほぼ平行に維持され、LED素子1が、基板10の上面に対して傾いて基板10に半田付けされることが抑制される。これにより、基板10に半田付けされたLED素子1の中心軸線Rdは、基板10の上面に対して垂直に維持される。なお、中心軸線Rdは、LED素子1の光出射面3からの光の出射方向であるので、光出射面3からの光が傾いて出射することが抑制される。
【0042】
基板10の傾斜に因る陰極用ランド14及び陽極用ランド15における固化後の半田の厚みの不均一を原因とする問題となるLED素子1の傾きの方向は、ランドの並び方向としての縦方向ではなく、該並び方向の直交方向としての横方向である。理由は、LED素子1は、縦方向には陰極用ランド14及び陽極用ランド15により基板10に支持されているので、各ランドにおいて縦方向の各位置での半田の厚みに不均一があっても、該不均一の量(最大厚みと最小厚みとの差)は、縦方向の複数のランド間の距離に比して微小となり、縦方向の傾きは無視できるからである。
【0043】
これに対し、横方向には、陰極用ランド14及び陽極用ランド15の位置は重なっており、LED素子1は、一点でしか支持されないことになる。したがって、陰極用ランド14及び陽極用ランド15の横方向両端位置における半田膜の厚みの不均一(厚みの差)は、LED素子1の横方向の傾きに大きな影響を与える。
【0044】
(第1比較例)
図5は第1比較例の基板10bを備えるLED装置32bを示す。図5AはLED装置32bを上方から見た図である。図5B図5AのX5Bの矢視図である。図5C図5AのX5Cの矢視図である。
【0045】
LED装置32,32bとの相違点は、LED装置32では、基板10の陰極用ランド14がレジスト膜19の縦断部19aにより横方向に分割されているのに対し、LED装置32bでは、基板10bのレジスト膜19が縦断部19aを有しておらず、この結果、基板10の陰極用ランド14が、横方向に分割されることなく、横方向に一体になっている点である。
【0046】
LED装置32bでは、基板10bへのLED素子1の半田付け時に、基板10bの上面が水平面に対して全体的又は局所的に傾斜していると、陰極用ランド14において溶融状態となった半田が横方向に途中で阻まれることなく陰極用ランド14の横方向一端から他端に全体にわたって流れてしまう。したがって、固化後は、両端の半田の厚みに大きな不均一が生じ、図5Cに示すように、LED素子1の中心軸線Rdは、基板10の上面に対する垂直線に対して横方向に大きく傾斜してしまう。
【0047】
この傾斜は、光出射面3からの光が該垂直線に対して傾斜した方向に出射することを意味し、LED装置32bが生成する配光パターンを悪化させる原因になる。これに対し、基板10の第1実施形態で説明したLED装置32(特に図4C)は、LED装置32bのこのような問題を解決している。
【0048】
(第2実施形態)
図6図8に係る第2実施形態である基板42を詳細に説明する前に、基板42の構成の主要部を述べる。基板40は、半田膜54が形成されたランド50を上面に1つだけ有し、ランド50には、パッドを1つだけ下面に有する電気部品としての電子部品41の陰極パッド47が半田膜54の半田により半田付けされる。基板40は、基板40の上面に対して平行でかつ相互に直交する縦方向及び横方向(第1及び第2方向)のうちの縦方向に延在してランド50を横方向に分割するレジスト膜51の縦断部51a(第1半田離隔部)と、横方向に延在してランド50を縦方向に分割するレジスト膜51の横断部51b(第2半田離隔部)とを備える。
【0049】
以下、第2実施形態について詳細に説明する。図6は電子装置40を示す。図6Aは電子装置40の斜視図である。図6Bは電子装置40の電子部品41の下面を示す図である。図6Cは基板42の上面を示す図である。
【0050】
図6Aにおいて、電子装置40は、電子部品41と、上面に電子部品41の下面が半田付けされる基板42とを備える。電子部品41は、正四角柱のパッケージ45を備え、電子装置40を上方から見た上面視で正方形の輪郭を有している。なお、図示の電子装置40では、図示の簡略化上、基板42に電子部品41しか実装されていないが、実際の製品としての電子装置40では、基板42は、図示のものより広い面積を有するとともに、電子部品41以外の部品も実装されるようになっている。
【0051】
図6Bにおいて、陽極パッド46は、パッケージ45の正方形の上面の周辺部に、配設されている。陽極パッド46は、ボンディンクワイヤ(図示せず)を介して基板42の上面の所定の端子(図示せず)に接続される。陰極パッド47は、パッケージ45の下面の正方形輪郭より少し小さい正方形輪郭を有し、中心をパッケージ45の下面の中心に揃えてパッケージ45の下面に形成されている。
【0052】
図6Cにおいて、ランド50は基板42の上面に形成される。基板42の上面におけるランド50の周囲は、レジスト膜51により被覆されている。説明の便宜上、図6Cの図上、上下方向を基板42の「縦方向」と呼び、左右方向を基板42の「横方向」と呼ぶことにする。この縦方向及び横方向は、それぞれ基板42の上面に対して平行でかつ相互に直交する第1方向及び第2方向に相当する。レジスト膜51は、基板42の上面において縦方向に延在する縦断部51aと、横方向に延在する横断部51bとを有している。縦断部51a及び横断部51bは、ランド50の中心で交差するので、全体としては上方視で「十字」に形成される。
【0053】
ランド50は、縦断部51aにより横方向にランド部分50a,50cとランド部分50b,50dとに分割される。ランド50は、また、横断部51bにより縦方向にランド部分50a,50bとランド部分50c,50dとに分割される。ランド部分50a〜50dは、最上面に、レジスト膜51から露出させた半田膜54を有している。
【0054】
図6Cにおいて、二点鎖線は、電子部品41の実装位置を示している。電子部品41の陰極パッド47の実装位置は、基板42の4つのランド部分50a〜50dを内側に包絡する最小正方形を包絡正方形と呼ぶことにし、該包絡正方形の内側に設定される。正方形の陰極パッド47の各辺は、該包絡正方形の辺に平行に合わせられている。ランド部分50a〜50dにおいて、陰極パッド47から外にはみ出している部分は、基板10における陰極用ランド14の突出部22及び陽極用ランド15の突出部23(図2B)と同じ役目を果たす。
【0055】
なお、基板42は、図3A及び図3Bで示した基板10と同一の積層構造を有している。したがって、基板42において、半田膜54の下には、ランド部分50a〜50dに対して共通に1つの金属層28が形成されている。陰極パッド47は、ランド部分50a〜50dの各々における半田膜54の半田により共通の金属層28に半田付けされて、金属層28の電圧(例:アース電圧)が印加される。
【0056】
図7は第2実施形態の基板42を備える電子装置40を示す。図7Aは電子装置40を上方から見た図である。図7B図7AのX7Bの矢視図である。図7C図7AのX7Cの矢視図である。
【0057】
図7Aから順番に説明する。基板42に電子部品41を半田付けするとき、電子部品41は、図6Cに二点鎖線で示した実装位置で基板42の上面に載置された後、半田膜54の半田が溶融される。第2実施形態としての基板42では、ランド部分50a〜50dにおいてそれぞれ溶融状態になった半田が、水平面に対する基板42の全体的又は局所的な傾斜のために、所定方向に高い方から低い方に基板42上を流れようとする。しかしながら、この流れは、縦断部51a及び横断部51bにより阻まれて、個々のランド部分50a〜50dの中だけに留められる。すなわち、溶融した半田が、ランド部分50a〜50d間を流れることはない。この結果、半田の固化後は、電子部品41の下面全体での半田の厚みは横方向及び縦方向の両方向で均一化され、中心軸線Rdは、基板42の上面に対する垂直線に対して、平行になる。すなわち、電子部品41が基板42の上面に傾いて実装されることが抑制される。
【0058】
(第2比較例)
図8は第2比較例の基板42bを備える電子装置40bを示す。図8Aは電子装置40bを上方から見た図である。図8B図8AのX8Bの矢視図である。図8C図8AのX8Cの矢視図である。
【0059】
電子装置40,40bの相違点は、電子装置40では、基板42のランド50がレジスト膜51の縦断部51a及び横断部51bにより横方向及び縦方向に分割されているのに対し、電子装置40bでは、基板42bのレジスト膜51が縦断部51a及び横断部51bを有しておらず、この結果、基板42bのランド50が、横方向及び縦方向に分割されることなく、横方向及び縦方向に一体になっている点である。
【0060】
第2比較例としての電子部品41bでは、縦断部51a及び横断部51bが存在しないので、溶融状態の半田は、水平面に対する基板42bの全体的又は局所的な傾斜に従い、傾斜方向にランド50の一端側から他端側に全体わたって流れてしまう。この結果、半田の固化後、ランド50における該一端側と該他端側との半田の厚みの差異が増大し、中心軸線Rdは、図8B及び図8Cに示すように、基板42bの上面に対する垂直線に対して縦方向及び横方向に大きく傾斜してしまう。
【0061】
この傾斜は、電子装置40bが例えば発光素子である場合には、該発光素子からの光の出射方向が規定の方向から傾いてしまうことを意味する。また、電子装置40bが組み込まれる製品内で他のモジュールや部品等と干渉して、組み込みに支障が生じる事態につながることも予想される。これに対し、基板42の第2実施形態で説明した電子装置40(特に図7B及び図7C)は、LED装置32bのこのような問題を解決している。
【0062】
(変形例)
第1実施形態の基板10に実装されるLED素子1は、下面にパッドを一列に複数有する電気部品の一例であるが、本発明の基板に実装される電気部品はLED素子1に限定されない。該電気部品は、下面にパッドを一列に複数有する電気部品であれば、発光素子でなくてもよい。
【0063】
基板10における縦断部19a及び基板42における縦断部51a及び横断部51bは、本発明の半田離隔部の例である。これら実施形態の半田離隔部は、直線状に形成されているが、ランドを、ランドの並び方向の直交方向に分割したり、基板の上面に対して平行でかつ相互に直交する第1方向と第2方向とに分割したりする半田離隔部であれば、半田離隔部は曲線やジクザクで延在するものであってもよい。
【0064】
実施形態では、縦断部19a,51a及び横断部51bは、レジスト膜19,51により形成されている。本発明の半田離隔部は、溶融状態の半田が、ランド部分間を流れることを防止する構造になっていれば、レジスト膜以外で構成してもよい。なお、溶融状態の半田が、ランド部分間を流れることを防止する構造の実施例としては、溶融状態の半田の流れをせき止めるせき止め構造として、任意のせき止め構造を選択することができる。せき止め構造として、例えば隆起構造や、落とし込む溝構造がある。半田離隔部の延在方向に、一部分は、隆起構造とし、残りの部分は溝構造とする併用構造もある。縦断部19a,51a及び横断部51bは隆起構造の例である。
【0065】
基板10は、半田膜が形成された複数のランドを上面に一列に有し、各ランドには、電気部品の下面の各パッドが半田膜の半田により半田付けされる基板の例である。基板42は、半田膜が形成されたランドを上面に1つだけ有し、該ランドには、下面にパッドを1つだけ有する電気部品の該パッドが半田膜の半田により半田付けされる基板の例である。実装される電気部品は、LED素子1等の発光素子に限定されない。
【0066】
陰極用ランド14は、上面に複数のランドを備える基板において、並び方向に対する直交方向の長さが最大であるランドの例である。基板の上面におけるランドの個数は、3以上であってもよい。
【0067】
陰極用ランド14は、また、基板10の複数のランドのうち少なくとも1つのランドが、並び方向に対する直交方向に少なくとも2以上のランド部分に分割されているときの該少なくとも1つのランドの例である。陰極用ランド14は、並び方向に対する直交方向に2つに分割されているが、該直交方向に3つ以上に分割されてもよい。
【0068】
第1実施形態の基板10では、基板10の上面に存在する2つのランドのうち、陰極用ランド14のみが直交方向に2以上に分割されている。しかしながら、本発明の基板では、直交方向に2以上に分割されるランドは、基板上に複数のランドが形成されている場合には、全部のランド、又は全部ではないが複数のランドとすることができる。
【0069】
電子部品41は、本発明の電気部品の一例である。本発明の電気部品は、抵抗器や端子箱等、半導体を実装していない電気部品であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1・・・LED素子(電気部品)、4,47・・・陰極パッド、5・・・陽極パッド、10,42・・・基板、14,47・・・陰極用ランド、14a・・・一側部分(ランド部分)、14b・・・他側部分(ランド部分)、15・・・陽極用ランド、19a・・・縦断部(半田離隔部)、20,54・・・半田膜、41・・・電子部品(電気部品)、50・・・ランド、50a〜50d・・・ランド部分、51a・・・縦断部(第1半田離隔部)、51b・・・横断部(第2半田離隔部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8