(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血液循環回路は、使用前に、回路内を生理食塩水等の液体(プライミング液)で満たす作業(プライミング)を行うことが一般的である。プライミングでは、シリンジによりプライミング液を回路内に充填する必要がある。しかしながら、この充填作業に際し、圧力検出チャンバの血液室内から空気(気泡)を抜くことが容易ではなく、プライミングを効率的に実施することが難しかった。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、プライミング時に血液室から空気を効率的に抜くことが可能な圧力検出チャンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、中空状の検出容器と、前記検出容器の内部を血液室と空気室とに仕切るダイヤフラムとを備え、前記検出容器には、前記血液室に連通するとともに血液循環回路に接続される回路接続用ポートと、前記血液循環回路に接続されないポートであって、前記血液室に連通するとともに前記血液循環回路のプライミング時に前記血液室から空気を抜くための空気抜き用ポートとが設けられ
、前記検出容器は、内部に前記血液室が形成された血液容器部を有し、前記血液容器部は、前記血液容器部の他の部位に対して相対的に高い位置となるように前記血液容器部の姿勢が保持された際に前記空気を集中させる角部を有し、前記角部又はその近傍に、前記空気抜き用ポートが設けられ、前記血液容器部は、筒状の周壁部と、前記ダイヤフラムと反対側で前記周壁部から先細り状に突出する錐部とを有し、前記角部は、前記周壁部と前記錐部との接続箇所であることを特徴とする。
【0007】
上記の構成を備えた本発明の圧力検出チャンバによれば、血液循環回路のプライミング時に、血液循環回路にプライミング液を注入すると、プライミング液が、回路接続用ポートから血液室へと流入し、空気抜き用ポートから排出される。この際、血液室内の空気(気泡)は空気抜き用ポートから排出される。このため、プライミング時に血液室内の空気を簡単に除去することができる。よって、この圧力検出チャンバによれば、プライミングを効率的に行うことができる。
【0009】
また、プライミング時に角部を上方に向けると、空気抜き用ポートの流入開口に空気が集まるため、血液室からの空気抜きを一層効率的に行うことができる。
【0011】
さらに、特別な形状部を設けることなく、プライミング時に、空気抜き用ポートの流入開口が設けられる位置に空気を良好に集めることができる。
【0014】
前記回路接続用ポートと前記空気抜き用ポートとは互いに平行に設けられていてもよい。
【0015】
この構成により、例えば、射出成形により血液容器部を成形する場合に、複雑な構造の成形用金型を用いることなく、回路接続用ポートと前記空気抜き用ポートとを備えた血液容器部を成形することができる。
【0016】
前記回路接続用ポートと前記空気抜き用ポートとは互いに非平行に設けられていてもよい。
【0017】
このような構成によっても、プライミング時に、空気抜き用ポートを介して、血液室内の空気を効率的に抜くことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の圧力検出チャンバによれば、プライミングを効率的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る圧力検出チャンバについて好適な複数の実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1に示す体外循環装置10は、患者Pの血液の体外循環を行う装置である。体外循環装置10は、人工心肺装置として構成されており、患者Pの心臓に血液が循環しないため患者Pの体内でガス交換(血液への酸素付加及び/又は血液からの二酸化炭素の除去)ができない場合に、体外循環装置10により、血液の循環と、血液に対するガス交換を行うことができる。体外循環装置10は、患者Pの心臓に血液が循環し、患者Pの肺でガス交換を行うことができる場合に、血液の循環の補助を行うこともできる。
【0024】
図1に示すように、体外循環装置10は、患者Pの静脈(大静脈)から脱血して、血液中のガス交換を行って血液の酸素化を行った後、この血液を再び患者Pの動脈(大動脈)に戻す血液循環回路12を備える。血液循環回路12は、脱血チューブ14と、遠心ポンプ16(血液ポンプ)と、人工肺18と、送血チューブ20とを有する。
【0025】
脱血チューブ14は、静脈側カテーテル22(脱血側カテーテル)に接続される。静脈側カテーテル22は、患者Pの静脈(大腿静脈)に挿入される。遠心ポンプ16は、脱血チューブ14を介して静脈側カテーテル22に接続される。遠心ポンプ16は、脱血チューブ14を介して脱血した血液を人工肺18に送る。
【0026】
遠心ポンプ16は、駆動モータ24によって回転駆動される。駆動モータ24は、制御装置26によって動作(回転速度)が制御される。なお、血液ポンプとしては、遠心式以外のポンプが用いられてもよい。
【0027】
人工肺18は、遠心ポンプ16と送血チューブ20との間に配置されており、脱血チューブ14を介して脱血された血液に対するガス交換動作(血液の酸素化)を行う。人工肺18としては、例えば、中空糸膜型人工肺が用いられる。
【0028】
送血チューブ20は、人工肺18によりガス交換がなされた血液を、動脈側カテーテル28(送血側カテーテル)を介して患者Pに戻す。動脈側カテーテル28は、患者Pの動脈(大腿動脈)に挿入される。なお、送血チューブ20には、後述するプライミング時に血液循環回路12にプライミング液Lを注入するためのプライミング用分岐チューブ30が設けられている。
【0029】
血液循環回路12内を流れる血液の圧力に異常がないかどうかを検知するために、血液循環回路12には、本発明の第1実施形態に係る圧力検出チャンバ32Aが接続されている。
図1に示す例では、送血チューブ20に圧力検出用分岐チューブ38が設けられており、当該圧力検出用分岐チューブ38に圧力検出チャンバ32Aが接続されている。圧力検出チャンバ32Aは、血液室34と空気室36とを有するダイヤフラム式の検出チャンバである。
【0030】
圧力検出チャンバ32Aの血液室34は、圧力検出用分岐チューブ38を介して血液循環回路12と連通している。圧力検出チャンバ32Aには、連結チューブ40を介して圧力センサ42が接続されている。体外循環装置10は、圧力センサ42により空気室36の圧力を検出することで、血液循環回路12内(
図1に示す例では、送血チューブ20内)の圧力を測定することができる。
【0031】
なお、圧力検出用分岐チューブ38は、血液循環回路12の他の部位、例えば、脱血チューブ14に設けられてもよい。圧力検出用分岐チューブ38は、遠心ポンプ16の上流側(脱血チューブ14)及び下流側(遠心ポンプ16と人工肺18との間)にそれぞれ設けられてもよい。圧力検出用分岐チューブ38は、人工肺18の上流側(遠心ポンプ16と人工肺18との間)及び下流側(送血チューブ20)にそれぞれ設けられてもよい。
【0032】
図2に示すように、圧力検出チャンバ32Aは、中空状の検出容器44と、検出容器44の内部を血液室34と空気室36とに仕切るダイヤフラム46とを備える。
【0033】
検出容器44は、内部に血液室34が形成された血液容器部48と、内部に空気室36が形成された空気容器部50とを有する。血液容器部48と空気容器部50とは、環状結合部材52により相互に結合されている。血液容器部48及び空気容器部50は、例えば、ポリカーボネート等の硬質樹脂により構成される。血液容器部48及び空気容器部50は、内部を観察できるように透明性を有する材料により構成されることが好ましい。
【0034】
血液容器部48は、筒状(円筒状)の周壁部48aと、ダイヤフラム46と反対側で周壁部48aから連なる端壁部48bとを有する。空気容器部50は、筒状(円筒状)の周壁部50aと、ダイヤフラム46と反対側で周壁部50aから連なる端壁部50bとを有する。
【0035】
血液容器部48及び空気容器部50の端壁部48b、50bは、それぞれダイヤフラム46と対向する。
図2において、血液容器部48の端壁部48bは、空気容器部50が設けられた側とは反対方向に先細り状に突出した錐部49の形態を有する。
【0036】
図2及び
図3に示すように、血液容器部48には、回路接続用ポート56及び空気抜き用ポート58が設けられている。回路接続用ポート56は、血液室34に連通するとともに血液循環回路12(圧力検出用分岐チューブ38)に接続されるポートである。
【0037】
第1実施形態において、回路接続用ポート56は、錐部49の頂部(中央部)に設けられている。具体的に、回路接続用ポート56は、検出容器44の軸aに沿って、錐部49の頂部から空気室36が設けられた側とは反対方向に突出している。なお、回路接続用ポート56は、検出容器44の軸aに対して交差する方向に突出していてもよい。
【0038】
空気抜き用ポート58は、血液循環回路12に接続されないポートであって、血液室34に連通するとともに血液循環回路12のプライミング時に血液室34から空気を抜くためのポートである。第1実施形態において、空気抜き用ポート58は、周壁部48aと錐部49との接続箇所である角部60(隅部)に設けられている。
【0039】
具体的に、空気抜き用ポート58は、端壁部48bの外周部から回路接続用ポート56と平行に突出している。なお、空気抜き用ポート58は、
図2において仮想線で示すように、回路接続用ポート56に対して傾斜した方向(検出容器44の軸aに対して交差する方向)に突出していてもよい。
【0040】
図2において、空気容器部50の端壁部50bは、血液容器部48の端壁部48bと同様に、周壁部50aから先細り状に突出した錐部の形態を有する。空気容器部50の端壁部50bには、圧力検出用ポート51が設けられている。圧力検出用ポート51は、端壁部50bからダイヤフラム46とは反対側に突出するとともに、連結チューブ40に接続されている。
【0041】
ダイヤフラム46は、適度な弾力性を有するように構成された円形の膜状部材である。ダイヤフラム46の外周部は、血液容器部48に設けられたフランジ部48cと、空気容器部50に設けられたフランジ部50cとの間に挟持されている。
【0042】
体外循環装置10(
図1)の動作時(血液循環回路12内を血液が流通する際)、ダイヤフラム46は、血液の圧力によって空気室36側に変形する。その分だけ、空気室36の容積が減少して空気圧が上昇し平衡状態となる。従って、そのときの空気圧を圧力センサ42(
図1)で検出することにより、血液循環回路12内の圧力を測定することができる。
【0043】
上記のように構成された体外循環装置10を使用する前の準備作業として、血液循環回路12内に生理食塩水等の液体(プライミング液L)を充填し、回路内から空気を除去するプライミングが行われる。プライミング時には、
図4のように、脱血チューブ14と送血チューブ20とがコネクタ62、64を介して互いに接続された状態となっている。この状態において、プライミング用分岐チューブ30に、プライミング液Lが充填されたシリンジ等の注入デバイス66を接続するともに、圧力検出チャンバ32Aの空気抜き用ポート58に、中継チューブ68を介してシリンジ等の吸引デバイス70を接続する。
【0044】
そして、注入デバイス66を操作して、プライミング液Lを血液循環回路12内に注入する。その際、血液循環回路12内に十分にプライミング液Lを流通させるとともに、各機器を揺らす等して、空気抜きを行う。適切な圧力測定を行うために、圧力検出チャンバ32Aの血液室34からも空気を十分に除去することが重要である。
【0045】
この場合、第1実施形態に係る圧力検出チャンバ32Aによれば、
図2に示したように、検出容器44には、血液室34に連通するとともに血液循環回路12に接続される回路接続用ポート56と、血液循環回路12に接続されないポートであって、血液室34に連通するとともに血液循環回路12のプライミング時に血液室34から空気を抜くための空気抜き用ポート58とが設けられている。
【0046】
このため、
図4のように、血液循環回路12のプライミング時に、血液循環回路12にプライミング液Lを注入すると、プライミング液Lが、回路接続用ポート56から血液室34へと流入する。そして、吸引デバイス70を操作すると、プライミング液Lは、空気抜き用ポート58から排出されて、中継チューブ68を介して吸引デバイス70へと吸引される。この際、血液室34内の空気(気泡)は空気抜き用ポート58から排出される。このため、プライミング時に血液室内の空気を簡単に除去することができる。よって、この圧力検出チャンバ32Aによれば、プライミングを効率的に行うことができる。
【0047】
第1実施形態では、
図5に示すように、血液容器部48は、血液容器部48の他の部位に対して相対的に高い位置となるように血液容器部48の姿勢が保持された際に空気Arを集中させる角部60を有し、角部60又はその近傍に、空気抜き用ポート58が設けられている。この構成により、プライミング時に角部60を上方に向けると、空気抜き用ポート58の流入開口58aに空気Ar(気泡)が集まるため、血液室34からの空気抜きを一層効率的に行うことができる。
【0048】
第1実施形態では、血液容器部48は、筒状の周壁部48aと、ダイヤフラム46と反対側で周壁部48aから先細り状に突出する錐部49とを有する。そして、角部60は、周壁部48aと錐部49との接続箇所である。このため、特別な形状部を設けることなく、プライミング時に、空気抜き用ポート58の流入開口58aが設けられる位置に空気Arを良好に集めることができる。
【0049】
第1実施形態では、回路接続用ポート56と空気抜き用ポート58とは互いに平行に設けられている。このため、例えば、射出成形により血液容器部48を成形する場合に、複雑な構造の成形用金型を用いることなく、回路接続用ポート56と空気抜き用ポート58とを備えた血液容器部48を成形することができる。
【0050】
なお、圧力検出チャンバ32Aにおいて、回路接続用ポート56と空気抜き用ポート58の配置を逆にしてもよい。この場合、空気抜き用ポート58は、血液容器部48の錐部49の頂部に設けられ、プライミング時には錐部49の頂部を上方に向けることで、空気抜き用ポート58の流入開口58aに空気を集めることができる。よって、この場合でも、血液室34からの空気抜きを効率的に行うことができる。
【0051】
なお、プライミング時に接続されていた脱血チューブ14及び送血チューブ20は、プライミング後に分離されて、
図1のように、血液の体外循環を行うために、それぞれ静脈側カテーテル22及び動脈側カテーテル28に接続される。脱血チューブ14及び送血チューブ20は、初期状態で連続した1本のチューブであってもよい。この場合、プライミング時にはその1本のチューブのまま使用し、プライミング後に適宜の切断具により切断されて脱血チューブ14及び送血チューブ20として使用される。
【0052】
プライミング終了後、空気抜き用ポート58から液体が排出されないように、中継チューブ68の流路はクランプ等により閉塞される。あるいは、中継チューブ68に流路を開閉する活栓が設けられていてもよい。あるいは、空気抜き用ポート58に栓体(キャップ)を装着してもよい。
【0053】
上述した第1実施形態では、空気抜き用ポート58は、端壁部48bから突出しているが、本発明はこのような構成に限らず、以下に例示するように、検出容器44の他の部位から突出していてもよい。
【0054】
図6に示す第2実施形態に係る圧力検出チャンバ32Bでは、空気抜き用ポート58は、周壁部48aから径方向外側(検出容器44の軸aに対して直交する方向)に向かって突出している。このような構成によっても、プライミング時に、空気抜き用ポート58を介して、血液室34内の空気を効率的に抜くことができる。この場合、空気抜き用ポート58への空気の移動を阻害しないように、空気抜き用ポート58は、流入開口がダイヤフラム46よりも回路接続用ポート56側に位置するように配置されるのがよい。
【0055】
なお、
図6において仮想線で示すように、空気抜き用ポート58は、周壁部48aから、検出容器44の軸aに対して傾斜した方向に突出していてもよい。
【0056】
図7に示す第3実施形態に係る圧力検出チャンバ32Cでは、回路接続用ポート56は、周壁部48aの接線方向に設けられている。具体的に、回路接続用ポート56は、血液容器部48の、空気容器部50側の端部近傍から、周壁部48aの接線方向に突出している。一方、空気抜き用ポート58は、端壁部48bに設けられている。具体的に、空気抜き用ポート58は、錐部49の頂部に設けられている。
【0057】
このように構成された圧力検出チャンバ32Cによれば、プライミング時に、プライミング液Lは、回路接続用ポート56を介して、周壁部48aの接線方向から血液室34内に流入する。このため、
図7のように、プライミング液Lは、血液室34内で旋回流Lsを形成しつつ、端壁部48b側へと移動し、空気抜き用ポート58を介して排出される。従って、血液室34内の空気(気泡)を旋回流Lsとともに流動させて効率的に空気抜き用ポート58から排出することができる。
【0058】
なお、圧力検出チャンバ32Cにおいて、回路接続用ポート56と空気抜き用ポート58の配置を逆にしてもよい。
【0059】
図8に示す第4実施形態に係る圧力検出チャンバ32Dでは、回路接続用ポート56と空気抜き用ポート58とは、互いに反対方向に突出している。具体的に、血液容器部48の端壁部48bには、検出容器44の軸aと垂直に延在する連結管部74が設けられている。連結管部74の両側から回路接続用ポート56と空気抜き用ポート58とがそれぞれ延出している。
【0060】
このように構成された圧力検出チャンバ32Dによっても、プライミング時に、プライミング液Lが、回路接続用ポート56から血液室34へと流入し、空気抜き用ポート58から排出される。この際、血液室34内の空気は空気抜き用ポート58から排出される。このため、血液室34内の空気を簡単に除去し、プライミングを効率的に行うことができる。
【0061】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。