【実施例】
【0039】
本発明をより十分に理解できるようにするために、以下の実施例は例示のみのために提供される。
【0040】
[実施例1]
図1を参照すると、4.3メートル(14フィート)の直径の脱水塔(110)を、気−液接触容器として使用することができる。脱水塔(110)の全体の高さは45メートル(146フィート)を超えてもよい。脱水塔は、米国特許第8242308号に開示されている方法等のアクリル酸を回収するための方法の一部であってもよい。
【0041】
脱水塔(110)を、統合された処理容器として構成することができ、それは容器が複数の処理部:即ち、上部充填床部(140)、中間トレー部(145)、および下部急冷部(150)を含むことを意味する。同様の処理工程は、この例で使用したような単一の容器ではなく、2つ以上の連続した処理容器内で実施することができる。
【0042】
均一分布のために意図される流量は、塔の上部(140)において断面全体を占める(米国テキサス州パサデナのSulzer Chemtechから市販されている)Mellapak(商標) 250.Yの構造化パッキングの床全体にわたる約14,545kg/時(32,000ポンド/時)の処理液となる。処理液は、縮合軽質物を含む還流液流(107)および、マンガンイオン、ヒドロキノン(HQ)、4−ヒドロキシTEMPO(4−HT)およびフェノチアジン(PTZ)の1つ以上を含む防止剤パッケージ流(108)の混合物であってもよい。還流液流(107)は、80重量%を超える水、ならびに酢酸およびアクリル酸を含むことができる。処理液は、パッキングを通って下方に流れ、10個のMVG(商標)固定バルブトレー(T1からT10)(Sulzer Chemtechから市販されている)を備えるトレー部(145)からのすすぎ蒸気流の流れと密接に接触する。
【0043】
窒素、水、および酢酸を含む脱水塔オーバーヘッド流(106)は、凝縮器(113)を通過して、還流液流(107)および蒸気流(102)を形成することができる。再循環ガス流(114)へ分割される蒸気流(102)は、プロピレン酸化反応器に再循環されてもよく、通気流(115)は、1つ以上の排ガス処理システム、例えば、焼成焼却炉または触媒燃焼ユニット(CCU)に送ることができる。
【0044】
2つの同一の汚染防止液散布器(131および132)は、脱水塔(110)内に設置することができる。散布器は、3.8cm(1.5インチ)の直径の固定導管に取り付けられた316ステンレス鋼散布ヘッドから構成できる。具体的には、散布ヘッドは、(米国イリノイ州ウィートン Spraying Systems社から市販されている)TankJet(R)モデル#18250A−316SS45流体駆動式タンク洗浄ノズルであってもよい。処理液は、固定導管の長手方向軸の周りの散布ヘッドの連続的な回転を駆動するための動力流体として機能することができる。
【0045】
2つの5cm(2インチ)の直径のフランジノズル(図示せず)を脱水塔のトップヘッドに取り付けることができ、オーバーヘッド蒸気ライン(106)の両側に、垂直な処理容器壁から約1メートル(3.3フィート)である位置に1つずつ取り付けることができる。液体散布器(131および132)はこれらのフランジノズルを介して設置されて、散布ヘッドが導管の下端部に位置するようにそれらが垂直に配向されてもよい。これは、2つの散布ヘッドの間に約2.3メートル(7.5フィート)の間隔をもたらす。散布ヘッドは、上部充填床(140)における充填の上面上約1メートル(3.3フィート)で、容器トップヘッド上の最高内側点下約1メートル(3.3フィート)の同じ高さに配置することができる。
【0046】
散布ヘッドの各々は、スプレーノズルに一致し、360°の液体適用範囲角度を提供するように構成された3つの液体吐出口を含むことができる。処理液が約20psi(138kPa)の圧力および約138°F(60℃)の温度で供給されると、汚染防止液散布器(131、132)のそれぞれは、毎分約120リットル(32gpm)の処理液流を吐出することができ、約2.4m(8ft)の球状のスプレー直径にわたって均一に360°の液体散布および自己すすぎ操作をもたらす。パッキング上の液滴の均一な散布に起因する最適な気−液接触のために、オーバーヘッド蒸気流(106)のアクリル酸含有量を有益に最小化でき、そのため処理コストを削減する機会を提供する。さらに、均一な液体散布により、充填床内の乾燥区域の発生を制限することができ、それによってパッキング上のポリマーの蓄積を防止する。
【0047】
実施例1から、本発明の分散方法により提供される均一な液体適用範囲は、散布器、パッキング、ならびに脱水塔のヘッドおよび壁の処理対向面上のポリマーの蓄積を同時に回避しながら、脱水塔の充填部内の効率的な質量およびエネルギー移動の可能性を提供できることは明らかである。
【0048】
当業者によって認識されるように、実施例1は、液体散布器を、吸収剤が代わりに処理液として使用される(メタ)アクリル酸吸収塔内で有益に使用することができることを示す。水、またはジフェニルエーテルもしくはトルエン等の高沸点溶剤のような有機物を含む処理流体が吸着剤として効果的に利用され、本発明の実施形態に従って均一に散布できることが十分に期待される。
【0049】
[実施例2]
実施例1で用いたのと同様の気−液接触容器を実施例2で使用してもよい。アクリル酸を回収するための方法に対する本発明の適用性は、一般に、急冷部(150)を規定する円筒状の空間において適用することができる。急冷部(150)は、4.3メートル(14フィート)の内部容器直径「D
v」をおよび約20メートル(65フィート)の丈の高い高さを有することができる。急冷部(150)は、内部トレーまたは気−液接触を促進するためのパッキングを全く含まないであろう。代わりに、複数の汚染防止液散布器を、(最適な質量および熱移動のために)密接な気−液接触をもたらす急冷部(150)内の均一な液体散布、ならびにポリマー蓄積を回避するための散布器の自己すすぎおよび容器壁の付随的湿潤を提供するために使用することができる。汚染防止液散布器は、各散布配列が容器壁に沿った特定の高さに配置される、一連の5つの散布配列(A1、A2、A3、A4、A5)内に設置してもよい。
【0050】
各散布配列は、容器壁に着脱可能に取り付けた5つの水平に配向された散布器を含むことができ、全部で25個の設置された散布器となる。各散布配列内で、5つの散布器は均等に容器壁の外周に沿って72°間隔で離間され、壁の内側表面に幾何学的に垂直に配置されてもよい。連続した配列内の散布器は、壁の下に千鳥配列を作成するために垂直にオフセットされていてもよい。例えば、配列A1中の散布器は、配列A2の散布器と垂直方向に整列していないだろう。それぞれ連続した配列は、前の配列に対し36°でオフセットされるであろう。
【0051】
必須ではないが、各配列内の各散布器は、設計が同一であり、15.3cm(6インチ)の長い導管部を含むことができ、これには3.8cm(1.5”)モデルHWS−50 Hydrowhirl S(R)有穴スプレーノズル(米国マサチューセッツ州グリーンフィールドのBETE Fog Nozzle, Incから市販されている)が取り付けられている。テフロン(登録商標)の部品を有する散布器は避けるべきである。
【0052】
各散布器への処理液流は、278リットル/分(74gpm)が25個の散布器のそれぞれに供給されるように制御することができる。40psi(276kPa)の供給圧力で、散布ヘッドから排出する処理液のこの流れによって、散布器が、それらが取り付けられた水平導管の長手方向軸の周りで回転することを引き起こすことができ、それによって約5.5m(18ft)の球状のスプレー径(D
s)上に360°の液体適用範囲角度を達成する。
【0053】
与えられた処理液の流量におけるD
sは、直接観察することによって経験的に決定してもよく、または商業的に入手可能なノズルの場合には、そのようなデータを製造業者から入手することができる。なお、本発明の方法に従った水平に配向された散布器を選択して以下の関係に従った方法で操作することが好ましい。
D
v≦D
s
【0054】
実施例2では、5つの散布配列(A1、A2、A3、A4、A5)は、各連続するレベルの間で2.75m(9ft)の垂直距離(”H”)で急冷部(150)内に配置されてもよい。連続した配列間の垂直距離が一定である必要はない。一般的には、連続した散布配列間の間隔は以下の関係に適合していることが好ましい。
H≦D
s/2
【0055】
さらに、散布配列内の散布器が、容器壁の外周に沿って等間隔で配置することができる実施例2のような実施の形態においては、散布配列内の散布器の数(N)は、以下の関係に適合していることが好ましい。
6.28×(D
v/D
s)≦N、ここでNは正の整数である。
【0056】
最上位の配列(A1)がトレー部(145)の一番下のトレー(T10)より約2.75メートル下に位置してもよいし、一番下の配列(A5)は、反応ガスライン(101)の中心線よりも少なくとも3メートル上でもよい。
【0057】
操作中に、プロピレン酸化反応器の出口からの9,5450kg/時(210,000lbs/時)を超えるガス状反応混合物は、約182℃(360°F)の温度で反応ガスライン(101)を介して脱水塔に入ることができる。底液(116)は、脱水塔(110)から引き出される。この流れの一部はライン(103)を介して仕上げ塔(図示せず)に移すことができ、残りは再循環ライン(120)を介して熱交換器(112)に行く。凝縮液体流(104)は、ライン(104)を介して仕上げ塔(図示せず)から戻ることもできる。
【0058】
急冷液体を含有するアクリル酸は、処理液と散布器用動力流体の両方として機能し得る。約376,460kg/時(828,210lbs/時)の総処理液流は約100℃(212°F)の温度で交換器112を出て、戻り配管網(111.1、111.2、111.3,111.4および111.5)のラインのそれぞれを通って流れ、散布配列の各々に供給することができる。この戻り配管網内のラインは、場合により、流れ測定装置、温度測定装置、圧力測定装置、流れ制御弁、制限オリフィスプレート、熱交換器、およびフィルタを含むが、これらに限定されない1つ以上の補助的な構成要素を含んでもよい。このような任意の補助的な構成要素の存在により、処理液の流量が1つの配列から次の配列へ変化することが可能になり、あるいは脱水塔におけるより高い散布配列に供給される処理液の温度が、塔におけるより低い配列に供給される処理液の温度より冷たいことが可能になる。
【0059】
この構成により、おびただしい量の液滴を、広くかつ均一に急冷部(150)全体に散布することができ、これらの液滴が密接に粗製アクリル酸蒸気に接触して、急冷部内で優れた質量およびエネルギー移動を達成する。散布器の各々は完全に自己すすぎであってもよく、トレーT10の底部を、また、配列A1内の散布器によって付随的に湿潤させてもよい。その結果、急冷工程を汚染ポリマー固体が蓄積することなく効率的に行うことができる。
【0060】
当業者によって理解されるように、急冷部における本発明の使用は、急冷部が、統合された処理容器の一部であることを必要としない。米国特許第8242308号の
図2で説明した配置のように、別の脱水塔のすぐ上流の独立した処理容器内で行う場合は、急冷部および本発明の動作は実質的に変化しないであろう。
【0061】
[実施例3]
図3を参照すると、実施例3における気−液接触容器は、2.75メートルの直径の氷アクリル酸蒸留塔(300)であった。処理ガス(315)は、塔トップヘッドの側面に取り付けたオーバーヘッド蒸気ライン(310)を介して塔から排出される。塔は、密接な気−液接触が発生する(一般にT1、T2、T3、T4として表される)、二系統流れトレーを複数含んでいた。
【0062】
蒸留塔の頂部トレー(T1)上に、アクリル酸および約200ppmのMeHQ重合防止剤を含有する処理液流(本明細書では「GAA防止剤溶液」ともいう)を均一に散布するだけでなく、蒸留塔の頂部ヘッドの処理対向面または頂部トレーの上方の蒸気スペースに配置された容器壁の部分(約30m
2(317平方フィート)の全表面積)上の縮合ポリマーの蓄積を防止するため、複数の液体吐出口を有する単一の球状散布ヘッド(304)を含む汚染防止液散布器を使用した。この特定の散布ヘッドはドイツのメッツィンゲンのLechler社から市販されている316ステンレス鋼モデル#566.968.17.BL ノズルであった。この散布ヘッドは、NPT接続を介して、固定の19mm(3/4インチ)の直径の導管(303)の下端部に取り付けられた。汚染防止液散布器(301)を、標準的な5cm(2インチ)フランジ付き容器ノズル(302)を通じて挿入し、蒸留塔ヘッドの頂部中央に配置し、標準的なボルト接続(図示せず)を使用して所定の位置に密封した。
【0063】
導管(303)は、塔ヘッドの頂部内側表面の約1メートル以内に、塔の一番上の接線下に散布ヘッドの位置決めを可能にするのに十分な長さであった。GAA防止剤溶液を、導管(303)の上端部に1,600kg/時(3,520lbs/時)の速度で供給し、球状散布ヘッド(304)の内部へ導管を通って下方向に流した。このように、流れる防止剤溶液は、散布器用の動力流体として機能し、散布ヘッドが(概ね、円形の矢印で図に示す)導管の中心軸線の周りを連続的に回転することを引き起こす。動作中、散布ヘッドは+300°の液体適用範囲角度にわたって均一な適用範囲を提供するために十分な液体GAA防止剤溶液を排出し、塔の頂部トレーの全周にわたって防止剤溶液を均一に散布し、0.05m
3/m
2−時間の湿潤液速度で塔の頂部トレー上の蒸気スペース内の内部表面の全てを連続的に濡らし、同時に導管および散布ヘッドの外部表面を自己すすぎした。このようにして、トレー(T1、T2、T3、....)および塔の処理対向内部表面を、(メタ)アクリル系モノマーの処理サービスの操作にもかかわらず、ポリマー蓄積に対して確実に保護した。
【0064】
連続運転の1年後の蒸留塔のその後の検査により、塔の頂部にはポリマーが存在しないことが確認された。これは、この実施形態で用いられる本発明の散布方法は、蒸留塔の頂部においてポリマーの蓄積を防止するのに非常に効果的であることを示す。さらに、用いた低い湿潤液速度が満足な結果を提供したことを考えると(例えば、実施例3で用いた湿潤液速度は米国特許第6409886号に教示された最小湿潤液速度の1/10であった)、本発明の様々な実施形態は、固定スプレーノズルを用いた以前に使用された方法よりも改善された均一な液体散布を提供することができる。
【0065】
[実施例4]
実施例4では、実施例3の単一の汚染防止液散布器を、ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートを製造するために使用することができる既存の二重用途のアクリル酸エステルの蒸留塔へ組み込んだ。アクリル酸エステルの蒸留塔は、1.96メートル(6.37フィート)の直径を有しており、緊密な気−液接触が発生する複数のトレーを含んでいた。汚染防止液散布器を、蒸留塔の頂部トレーに重合防止剤(本明細書では「エステル法防止剤溶液」ともいう)を含有する処理液流を均一に分布し、蒸留塔ドーム(または頂部ヘッド)の処理対向面ならびに頂部トレー上の蒸気スペースに配置された容器壁の部分の、約14m
2(148平方フィート)の全表面積上の縮合ポリマーの蓄積を防止するために使用した。
【0066】
実施例4のシステムの構成は実施例3と同様であった。汚染防止液散布ヘッドを、NPT接続を介して、固定の19mm(3/4インチ)の直径の導管の下端部に取り付けた。導管の上端部を、標準DN100(4インチ)のフランジ上のネジ接続にねじ込んだ。
汚染防止液散布器(301)を、蒸留塔ヘッドの頂部中央に配置され標準的な100mm(4インチ)フランジ付き容器ノズル(302)を通じて挿入し、DN100フランジを標準的なボルト接続を使用して所定の位置に密封した。容器ノズルは、容器ノズルの内面と固定導管の外面との間に停滞環状ノズル空間を作成する0.565メートル(22インチ)の全長を有した。2つの任意の「導管口」を、DN100フランジの約50mm内の導管の上端部に加えた。これらの導管口を、導管の反対側に配置し、容器ノズルの内部表面上に半径方向外側にエステル法防止剤溶液の一部を向けるために、導管の中心軸に対して垂直に配向した。このような任意の導管口は、口の総数、固定導管の直径、および利用可能な処理流体の供給圧力のような変数に依存して、約1mmから約10mm(0.04から0.39インチ)の直径の範囲であり得、任意の導管口(複数可)の特定の数および直径(複数可)の選択は、当業者によって容易に決定される。任意の導管口の使用は、環状ノズル空間内の汚染物質の蓄積を防止するのに役立つ。
【0067】
実施例4においては、導管は、塔ヘッドの頂部内側表面の約0.6メートル(2フィート)以内に、汚染防止液散布ヘッドの位置決めを可能にするのに十分な長さであった。エステル法防止剤溶液を、導管の上端部に2,000kg/時(4,400lbs/時)の速度で供給し、球状散布ヘッドの内部へ導管を通って下方向に流した。このように、流れる防止剤溶液は、散布器用の動力流体として機能し、散布ヘッドが導管の中心線軸の周りを連続的に回転することを引き起こす。動作中、散布ヘッドは+300°の液体適用範囲角度にわたって均一な適用範囲を提供するために十分な液体防止剤溶液を排出し、塔の頂部トレーの全周にわたって防止剤溶液を均一に散布し、約0.08m
3/m
2−時間の湿潤液速度で塔の頂部トレー上の蒸気スペース内の内部表面の全てを連続的に濡らした。任意の導管口を備えた汚染防止液散布器の操作も環状ノズル空間のすすぎと、同時に導管および散布ヘッドの外部表面の自己すすぎをした。トレー、容器ノズル、および塔の処理対向内部表面を、(メタ)アクリル系モノマーの処理サービスの操作にもかかわらず、ポリマー蓄積に対して確実に保護した。ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートを製造する連続操作の長時間後にエステル処理蒸留塔のその後検査は汚染防止液散布器が、塔の頂部にポリマーの蓄積を防止するのに有効であることを確認した。
【0068】
本発明の好ましい実施形態を示し説明したが、そのような実施形態は例としてのみ提供されることが理解されるであろう。多数の変形、変更、および置換が、本発明の精神から逸脱することなく当業者に想起される。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内に入るようなすべての変形を包含することが意図される。