特許第6827807号(P6827807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6827807(メタ)アクリル系モノマーの処理容器に液体を散布するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827807
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系モノマーの処理容器に液体を散布するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C07C 57/07 20060101AFI20210128BHJP
   C07C 51/42 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C07C57/07
   C07C51/42
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-528462(P2016-528462)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公表番号】特表2016-527240(P2016-527240A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014065507
(87)【国際公開番号】WO2015011048
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年7月6日
【審判番号】不服2019-9832(P2019-9832/J1)
【審判請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】1357332
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デコーシー,マイケル・エス
(72)【発明者】
【氏名】ラクロワ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】バスチアン,エティエンヌ
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 安孫子 由美
【審判官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−239228(JP,A)
【文献】 特開昭49−132173(JP,A)
【文献】 特開平10−153878(JP,A)
【文献】 特開平4−29701(JP,A)
【文献】 実開昭51−023709(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0079503(US,A1)
【文献】 特開2006−169220(JP,A)
【文献】 特開2000−355570(JP,A)
【文献】 特開2008−143814(JP,A)
【文献】 特開平11−90277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01B1/02-1/08
B01D1/00-8/00
B01J4/00-8/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合ポリマーの形成を抑制しつつ、(メタ)アクリル系モノマー処理容器の内側断面の上に処理液を均一に散布するための方法であって、
a. 断面積を有する処理容器内に設置され、液体散布ヘッドを含む、少なくとも2つの汚染防止液散布器に、1つ以上の重合防止剤を含む処理液を提供する段階;
b. 汚染防止液散布器の回転運動を引き起こす段階;および
c. 処理容器内の断面積にわたって処理液を均一に散布する段階;
を含み、さらに
段階(c)の間に、処理液の一部で、少なくとも2つの汚染防止液散布器が、同時に自己すすぎされる段階、および
段階(c)の間に、処理液の一部で、少なくとも2つの汚染防止液散布器のそれぞれが、同時に相互にすすがれる段階
を含む、方法。
【請求項2】
少なくとも2つの汚染防止液散布器が
a.固定導管、および
b.前記導管に取り付けた、動力流体を動力源とする液体散布ヘッド
を含み、
固定導管および液体散布ヘッドの少なくとも1つが、少なくとも1つの処理液体吐出口を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(b)における回転運動が、動力流体および処理液の少なくとも1つを液体散布ヘッドに供給することによって達成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
処理液の一部で、処理容器内の処理対向面を付随的に濡らすことをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
処理容器内部の処理対向面の面積当たりの処理液適用速度が、0.5m/m時間未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アクロレイン、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−オクチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、メタクロレイン、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上の化合物を製造する方法に、前記処理容器が使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
処理容器が、急冷容器、吸収塔、接触型凝縮器、分留凝縮器、脱水塔、仕上げ塔、スクラバー、蒸留塔、および貯蔵タンクからなる群から選択される気−液接触容器である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
処理容器が、急冷部、吸収部、部分凝縮部、洗浄部、充填部、接触凝縮部、トレー部、ストリッピング部、および精留部からなる群から選択される2つ以上の連続した処理部を含む、統合された処理容器である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
処理容器が、トレー、トレー支持体、構造化パッキング、不規則パッキング、供給物散布器、デミスタパッド、固定スプレーノズル、バッフル、液体散布トラフ、およびサイドドロー回収トレーからなる群から選択される1つ以上の内部構成要素を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
重合防止剤が、フェノール系防止剤、フェノチアジン、4−OHまたは4−オキソ型TEMPOのTEMPOニトロキシル化合物、または可溶性マンガンまたは銅塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10いずれか一項に記載の方法を実施するためのシステムであって、
a.処理液の供給部
b.固定導管、および
c.前記導管に取り付けられた液体散布ヘッド、ここで、前記液体散布ヘッドは、可動式であり、流体を動力源とし、および、少なくとも1つの処理液吐出口
を含み、
前記少なくとも1つの処理液吐出口は、液体散布ヘッドの稼働時に、+10°以上の、処理液の液体適用範囲角度を提供するように構成される、前記システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムを含む、処理容器。
【請求項13】
(メタ)アクリルモノマーを製造するための、請求項12の処理容器の使用。
【請求項14】
(メタ)アクリルモノマーが、アクロレイン、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−オクチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、メタクロレイン、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートからなる群から選択される、請求項13の処理容器の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学方法および関連処理設備、特に(メタ)アクリレートモノマーの調製のための方法および方法設備に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系モノマーの調製においては、処理容器内の大きな断面積の上に液体流を均一に散布することが必要である多くの気−液接触操作がある。これらの処理操作の大部分は、例えば、急冷、凝縮、吸収、および蒸留操作のような、(メタ)アクリル系モノマー流の回収または精製を含む。これらの操作は、典型的には、塔およびカラム等の直立シリンダーに似た処理容器内で行われる。このような処理容器は一般的には約0.3メートル(1フィート)から約9.2メートル(30フィート)の範囲の直径を有する。
【0003】
液体散布設備は、一般的に、存在し得る任意の接触向上内部部品上の処理容器の上部に位置している。操作において、処理液は、散布設備を通過し、分割されて崩されて一連のシート、流れ、液滴にされ、その後、重力の影響下で容器を通って下方に流れ、一方蒸気が同時に容器を通って上方に通過する。液体と蒸気との間の質量およびエネルギー移動が液体の表面の全域で発生する。大量の液滴が容器の断面全体に均一に分布されている場合のように、蒸気との接触を促進するために大きい液体表面積がある場合、処理効率が向上する。
【0004】
様々な種類の液体散布装置は、パイプ、トレー、トラフ、回転電機子、および回転盤を含む。このような装置は、大面積にわたって液体の流れを散布することを意図しており、適用範囲を最大化し、大量の液体表面積を生成する目的で液体の流れをさらに散布するのに役立つ充填床、構造化パッキング、または蒸留トレーのような他の内部部品としばしば組み合わされる。これらの装置は、底部に取り付けられたスプレーノズルを備えた典型的な配管系散布器を記載する米国特許第3969447号、および典型的なトラフ型の散布器を記述する米国特許第3392967号に記載されているような、固定散布器を含む。また、回転軸に装着されることにより中心軸の周りを回転する散布器も記載されている(米国特許第3079092号、同第1464816号、同第470375号、英国特許出願公開第1161560号)。このような散布器の例は、底部排水管を備えた回転トラフを記載する英国特許出願公開第726151号、回転散布電機子および矩形断面の容器で使用するためのバッフルの組み合わせを記載する米国特許第3353802号にも記載されている。最後に、様々な構成の回転盤はまた、濃縮液供給流を散布するための手段として提案されている。このような装置は、例えば、連続撹拌タンク反応器(CSTR)供給流が、撹拌軸に取り付けられた回転盤によって激しく偏向される米国特許出願公開第2011/144384号に記載されている。
【0005】
しかし、現在の液体散布装置は、それらが、モノマー蒸気が凝縮し、ポリマーの蓄積を形成し得る、(メタ)アクリル系モノマー処理容器の蒸気スペース内の、大きな処理対向面を提供するという点で欠点を有する。汚染物質は、容器の適切な操作を妨害し、容器内で発生する意図された化学処理を妨げる可能性があるため、ポリマー固体の蓄積は、(メタ)アクリル系モノマーの調製にとって共通の問題である。汚染物質を排除するには、コストのかかる洗浄操作と処理のダウンタイムを必要とする場合がある。特に、急冷容器、吸収装置、接触型凝縮器、スクラバー、熱交換器、蒸留塔、反応器および貯蔵タンク等の(メタ)アクリル系モノマー処理容器の蒸気スペース内の縮合ポリマーの形成は、周知の継続的な問題である。急冷容器は、また、急冷塔、スプレークーラー、急冷クーラー、接触クーラー、および急冷システムとして知られている場合がある。
【0006】
(メタ)アクリルモノマー蒸気は、重合防止剤の不存在下で、処理対向面上で凝縮する場合、処理容器内で縮合ポリマーが生じる。縮合ポリマーの蓄積が起こることが知られている処理対向面は、処理容器の頂部ヘッドおよび壁;容器ノズルおよび人道の内面;計装および緊急圧力解放装置;蒸留トレー、パッキング、バッフル、および支持構造のような内部構造;さらには直接そのような容器に接続された処理配管の内面を含む。例えば、米国特許第3717553号は、蒸留トレーの下の乾燥した壁領域はポリマー蓄積する傾向があることを教示し、それらを濡らすことを提案している。米国特許第7892403号は、固定スプレーノズルのための支持体は、縮合ポリマーを蓄積するおそれがあることを教示し、容器の外側に、このような支持部材を配置することを提案している。および米国特許第6983758号は、固定スプレーノズルおよび関連する供給ラインの存在が、縮合ポリマーの蓄積のための表面を提供すること、およびノズルおよび人道等の低流量領域はまた、縮合ポリマーを蓄積する傾向があることを教示している。
【0007】
処理容器を洗浄するために使用されるタンク洗浄ノズルの多くのバリエーションが存在する。タンク洗浄ノズルの共通の特徴は、液体への影響を通じて蓄積された汚染物質を除去するための、高圧のスプレーまたは液体ジェットへの依存である。これらの装置は、処理設備が動作していない洗浄期間中に、断続的に使用されることが意図される。さらに、除去された汚染物質がまだ処理容器から除去されなければならず、またはそれは単に汚染に関する問題を処理の別の部分に移すだけであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3969447号明細書
【特許文献2】米国特許第3392967号明細書
【特許文献3】米国特許第3079092号明細書
【特許文献4】米国特許第1464816号明細書
【特許文献5】米国特許第470375号明細書
【特許文献6】英国特許出願公開第1161560号明細書
【特許文献7】英国特許出願公開第726151号明細書
【特許文献8】米国特許第3353802号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2011/144384号明細書
【特許文献10】米国特許第3717553号明細書
【特許文献11】米国特許第7892403号明細書
【特許文献12】米国特許第6983758号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、縮合ポリマーの形成を抑制しつつ、(メタ)アクリル系モノマー処理容器の内側断面にわたって液体を均一に散布することができる液体散布設備および/または方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、以下を含む、処理容器内に処理液を均一に散布するための方法を提供する。
a) 断面積を有する処理容器内に設置された液体散布ヘッドを含む汚染防止液散布器に処理液を提供し、
b) 汚染防止液散布器の回転運動を引き起こし、および
c) 処理容器内の断面積にわたって処理液を均一に散布する。
【0011】
さらに、本発明の方法は、工程(c)の間、処理液の一部で少なくとも一つの汚染防止液散布器の同時自己すすぎおよび/または複数の汚染防止液散布器に工程(c)の間の処理液を提供することを含み、汚染防止液散布器のそれぞれが同時に、工程(c)の間に処理液の一部で互いをすすぐ。
【0012】
均一散布の間の処理液の一部による汚染防止液散布器の同時自己すすぎは、従来技術では開示も示唆もされていない。
【0013】
本発明の別の態様では、工程(b)における回転運動は、動力流体および処理液の少なくとも1つを液体散布ヘッドに供給することによって達成される。
【0014】
さらに別の態様では、処理容器は、(メタ)アクリル系モノマーの処理容器であり、処理液は1つ以上の重合防止剤を含む。
【0015】
本発明の別の態様は、処理流体の供給、固定導管、導管、好ましくは固定導管の端に取り付けた液体散布ヘッドを含む、処理容器内の処理液を均一に散布するためのシステムを提供する。液体散布ヘッドは可動式であり、流体、好ましくは処理流体によって動力を供給され、少なくとも1つの処理液吐出口、好ましくは複数の液体吐出口を含む。少なくとも1つの処理液吐出口は液体散布ヘッドが移動しているとき、+10°以上の液体適用範囲角度を提供するように構成される。
【0016】
本発明のさらに別の態様は前記システムを備えた処理容器を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、散布設備上に縮合ポリマーを蓄積することなく、(メタ)アクリル系モノマー気−液接触容器の内側断面の上に液体を均一に散布するための簡単かつコスト効果的な方法を提供する。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、急冷容器、吸収装置、接触型凝縮器、スクラバー、熱交換器、蒸留塔、反応器および貯蔵タンクのような、(メタ)アクリル系モノマー処理容器の蒸気スペース内の処理対向面の付随的湿潤のための方法を提供し、処理容器内のポリマーの蓄積の可能性をさらに減少させる。
【0019】
本発明がより完全に理解されるために、以下の図面が例示のために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態を組み込んだ気−液接触容器を示す。
図2A図2Aは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の種類を示す。
図2B図2Bは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の種類を示す。
図2C図2Cは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の種類を示す。
図2D図2Dは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の種類を示す。
図2E図2Eは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の種類を示す。
図2F図2Fは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の種類を示す。
図2G図2Gは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の種類を示す。
図3】本発明の別の実施形態を組み込んだ気−液接触容器を示す。
図4A図4Aは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の追加の種類を例示する。
図4B図4Bは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の追加の種類を例示する。
図4C図4Cは、本発明の種々の実施形態に組み込むことができる散布器の追加の種類を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して使用される用語「(メタ)アクリルモノマー」は、重合防止剤の不存在下で処理するとき、ポリマーを形成することが知られている化合物の群である、α,β−不飽和カルボン酸およびエステルを含む。このような(メタ)アクリルモノマーは、一般に、アクロレインおよびメタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸のエステルを含むことが理解される。具体的には、本発明は、アクロレイン、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−オクチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、メタクロレイン、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上の化合物の調製に関する。また、本発明は、本明細書で具体的に命名されていない他の(メタ)アクリル系モノマーの調製に有益に用いられるが、そのようなモノマーとして、アクリル酸およびメタクリル酸のいわゆる「特殊」エステル、例えば、Norsocryl(R) SPECIALITY ACRYLIC AND METHACRYLIC MONOMERS. Arkema,2005年4月の製品パンフレットに含まれるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明は、処理容器全体に液体を均一に散布するために、処理が動作しているときはいつでも、継続的に動作することができる液体散布器を使用する。好ましくは高液滴表面積で、均等に適切な液量を供給することによって、質量およびエネルギー移動が、(メタ)アクリル系モノマーの回収および精製設備のような気−液接触容器内で強化される。本発明の様々な実施形態によれば、液体散布器の自己すすぎ、ならびに処理対向面の付随的湿潤がポリマー固体の蓄積の前に発生し、それによりそれらの形成を防止する。
【0023】
本発明の実施形態は、任意の方向(例えば、水平、傾斜、垂直)であってもよいが、好ましくは容器内に垂直に配向される、固定導管(パイプ)を含む汚染防止液散布器を使用することができる。汚染防止液散布器は、導管に取り付けられた動力流体駆動の液体散布ヘッドをさらに備え、液体散布ヘッドは少なくとも1つの処理液吐出口を含む。散布ヘッドは、回転運動することができ、垂直導管の一端に取り付けられている。散布ヘッドは保守点検のために散布器を簡単に取り付け/取り外すために、好ましくはコンパクトである。コンパクトな設計により、散布器を最少の支持体または内部ブレーシングと一緒に設置することができ、それはあまり複雑でなくかつ安価に設置された散布器を提供する。所望の場合には、コンパクトな設計は、単一の容器内で複数の散布器を設置する選択肢を可能にする。
【0024】
好ましい実施形態では、垂直配向の導管の上端部は処理容器ヘッド上の配管ノズルを通過し、汚染防止液散布器の散布ヘッドは垂直配向導管の下端部に取り付けられている。処理適合性液体の供給が汚染防止液散布器に提供される場合、処理液は導管を取って散布ヘッドに流れ、1つ以上の液体吐出口を通って処理容器内に放出される。図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態による液体散布器(301)は、下端部に取り付けられたコンパクトな移動散布ヘッド(304)を有する固定垂直導管(303)を有するよう図示されている。散布ヘッドは、直径が30cm以下の円形の開口部(12”)を通過するのに十分小さいことが好ましい。導管(303)の上端部は、処理容器のトップヘッドにおける容器ノズル(302)を通過し処理液の供給源、および必要に応じて動力流体の供給源が設けられている。前述したように、液体散布器は水平に配向されてもよいし(即ち、導管が水平である)、または垂直面にいくらかの他の中間角度で配向されてもよいが、垂直配向が使用されることが好ましい。
【0025】
散布ヘッドは、液体が流れ、ジェット、または霧状のスプレーとして排出される1つ以上の液体吐出口を備える。液体吐出口の大きさ、形状、および配向、ならびに液体供給流量、圧力および粘度のような変数は、液体排出の角度、排出された液体が走行する距離、および排出された液体がある表面、例えば容器の壁と接触するときに排出された液体が作り得る任意の幾何学的な適用範囲パターン(例えば、円形、流れ、フラットファン、矩形)を制御する。液体吐出口の構成の例としては、円筒形の穴、制限オリフィスを備えたポート、くさび状のスロット、スプレーノズルヘッドが挙げられるが、これらに限定されない。1を超える吐出口を備えた散布ヘッドにおいて、各口の構成は同じであってもなくてもよい。
【0026】
液体散布器(導管および散布ヘッド)のための構成材料は、金属、プラスチック、セラミック、複合材料、またはこれらの組み合わせのような任意の処理適合性材料を含むことができる。1つの実施形態では、散布器は、300シリーズのステンレス鋼、例えば、304、316または317ステンレス鋼を含む。本発明の別の実施形態では、散布器は300シリーズおよび400シリーズのステンレス鋼部品の両方を含む。さらに別の実施形態では、散布器は、米国特許第7906679号に記載のもの等のポリマー−阻害銅合金、を含む。別の実施形態では、散布器は、タンタルまたはエポキシ樹脂等の耐食性材料を含む。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、動力流体は、垂直導管および散布ヘッドを流れ、液体散布器の動作中に排出される。動力流体は処理液であってもよく、またはそれは移動のための駆動力を提供するためにのみ使用される別個の流れ(例えば、圧縮空気、窒素、水、処理液)であってもよい。動力流体は散布ヘッドを通って流れ、導管の長手方向軸の周りの散布ヘッドの連続的な回転を駆動する。好ましい実施形態では、散布ヘッドは滑らかに連続的に時計回りまたは反時計回りの方向のいずれかで、導管の軸を中心に360°回転する。歯車、内部タービン、またはインパルスパドル等の当技術分野で公知の種々の駆動機構が散布器を作動させるために使用することができる。処理流体が動力流体として使用されない場合には、動力流体は、導管以外の手段を介して散布ヘッドまたは駆動機構に代替的に伝達されてもよい。
【0028】
本発明の別の実施形態では、散布ヘッドは、360°未満の円弧を通って回転し、次いで方向を反転させて初期の開始点に戻ることができる。このような動きは、いくつかの処理において有益であり得る操作の連続的に繰り返される「サイクリング」形態を表すであろう。さらに、いくつかの実施形態では、散布ヘッドの動きは、回転衝撃芝生スプリンクラーの段階的な動きに似た、不連続であってもよい。別の実施形態では、散布ヘッドから排出された液体流は、二次元あるいは三次元波状パターンで振動することができる。そのような液体の排出は、米国特許第4,151、955号に記載されているような散布ヘッド内の流体発振器を組み込むことによって作ることができる。
【0029】
好ましい実施形態では、動力流体は処理液であり、液体吐出口を介して排出する処理液の慣性力が、散布ヘッドの回転運動を引き起こし、液体排出方向と反対方向にヘッドが動き、即ち、処理流体を排出すると、散布ヘッドの推進力を発生させる。動力流体として処理流体を用いることが好ましい。何故ならば、散布ヘッドの動きは、モータまたは回転軸および関連する軸シールの必要性なく達成され、これにより設備コスト、軸シールを介しての処理漏れの可能性、および保守に関する問題を低減し、ならびにモノマーが凝縮する可能性がある散布器の総処理対向面積を低下させるからである。
【0030】
処理液の選択は、液体散布器が使用される処理によって決定される。処理に適合する任意の液体を使用することができる。処理が(メタ)アクリル系モノマーの処理である例では、処理液は、水、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アルコール、溶媒、吸収剤、および重合防止剤の1つ以上を含むことができる。好ましい実施形態では、(メタ)アクリル系モノマーの処理容器が、アクロレイン、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−オクチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、メタクロレイン、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上の化合物を製造する方法に使用される。大気圧以外の圧力(例えば、準大気圧)で(メタ)アクリレートモノマーの処理容器を操作することが一般的であるので、処理容器内で当該操作圧力で沸点未満の温度で液体散布器に処理液を供給することが一般に望ましい。いくつかの実施形態では、処理液は、ほぼ周囲温度(約20℃)で液体散布器へ供給される。いくつかの他の実施形態では、処理液はその凝縮温度以下で液体散布器へ供給される。典型的には、処理液はその沸点未満の温度で液体散布器へ供給される。
【0031】
好ましい実施形態では、処理液は、1つ以上の重合防止剤を含む。防止剤は、(メタ)アクリル系モノマーのようなα,β−不飽和化合物の重合を阻害する化合物から選択され、重合を予防または減少させるのに十分な量で提供される。適切な重合防止剤としては、フェノール系防止剤(ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジ−tert−ブチルのパラクレゾール等)、フェノチアジン、4−OHまたは4−オキソ型TEMPOのTEMPOニトロキシル化合物、または可溶性マンガンまたは銅塩、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】

1つの実施形態によれば、本発明を組み込んだ処理容器は、急冷容器、吸収塔、接触型凝縮器、分留凝縮器、脱水塔、仕上げ塔、スクラバー、蒸留塔、および貯蔵タンクからなる群から選択される気−液接触容器であってもよい。あるいは、処理容器は、急冷部、吸収部、部分凝縮部、洗浄部、充填部、接触凝集部、トレー部、ストリッピング部、および精留部からなる群から選択される2つ以上の連続した処理部を含む、統合された処理容器であってもよい。処理容器は、トレー、トレー支持体、構造化パッキング、不規則パッキング、供給物散布器、デミスタパッド、固定スプレーノズル、バッフル、液体散布トラフ、およびサイドドロー(side draw)回収トレーからなる群から選択される1つ以上の内部部品を含むことができる。
【0033】
本発明の様々な実施形態によれば、散布ヘッドの回転は、固定スプレーノズルまたは液体散布トレーとは異なり、均一な液体の適用範囲を提供し、気−液接触操作について最適な熱および物質移動に寄与する。また、本発明の様々な実施形態は、1つ以上の液体吐出口を有する散布ヘッドおよび/または一つ以上の液体吐出口を有する導管を含むことができ、液体散布器は自己すすぎする。明細書および特許請求の範囲全体を通して使用される「自己すすぎ」は、液体散布器からの液体を散布器自体の外側表面上に排出し、それによって自己すすぎ作用を提供することを意味する。好ましくは、本発明の実施形態に含まれる自己すすぎ散布器は、散布器が動いているときに+10°以上の液体適用範囲角度を提供するように構成された少なくとも1つの吐出口を有する散布ヘッドを含む。「液体液用範囲角度」は導管の長手方向軸に対して測定され、ここで0°は導管に平行であり、180°は導管に垂直である。正の角度は、容器の壁への導管の取り付け点に向けられる液体の流れを意味する。負の角度は、容器の壁への導管の取り付け点から離れる方向の液体の流れを意味する。液体散布器が自己すすぎでない場合には、本発明の実施形態は、互いの上に液体を排出するよう構成された複数の液体散布器を含み、液体散布のそれぞれから排出された液体が別の近くの液体散布器の外側表面をすすぐことができることが好ましい。
【0034】
散布器の外側表面をすすぐこと(すなわち、導管および散布ヘッドの両方)によって、縮合ポリマーの蓄積が防止される。すすぎ動作は、例えば、連続的にそれ自体の上に液体を排出するように個々の散布ヘッド口を構成することによって達成することができ、または散布器の配列がより高い信頼性とより完全なすすぎ液の適用範囲のために互いをすすぐよう構成してもよい。散布ヘッドの動きはまた散布ヘッドの外部表面からの液滴の除去を引き起こし、汚染物質を蓄積する傾向をさらに減少させる。
【0035】
汚染防止液散布器の散布ヘッドの回転運動はまた付随的湿潤を提供し、即ち、散布器は処理容器内の処理液の一部で容器の蒸気スペース内の近接する処理対向面を濡らす。散布器の動きは、容器ヘッドまたは壁等の大きな処理対向面積の均一な液体適用範囲を保証する。一般に、処理容器内部の処理対向面の付随的湿潤に起因する湿潤液速度は0.5m/m−時間未満である。本発明の様々な実施形態によれば、従来のシステムと比較して、縮合ポリマーのない表面を維持するために少量すすぎ液を必要とする移動散布器を使用することにより、より高効率な湿潤を達成することができる。
【0036】
図2Aから2Gに、散布器の様々な実施形態が様々な液体適用範囲角度で示される。実施形態2Aから2Dは自己すすぎ性であり、実施形態2Eおよび2Gはそうではない。図4Aから4Cは追加の自己すすぎ実施形態を表す。4Aは、2つの排出口を組み合わせた構成であって、その一方は+60°、他方は−90°の液体適用範囲角度を有する構成を表す。4Bは、散布ヘッドが垂直導管の上端部にあり、液体適用範囲角度が+270°である自己すすぎの構成を示す。4Cは、導管が水平に配向され、液体適用範囲角度が+180°である自己すすぎの構成を示す。
【0037】
回転軸を有する導管に取り付けられている散布ヘッドは容器内のより均一な液散布に関していくらかの利益を得ることができることが認識される。しかし、軸および散布ヘッドが同時に回転する場合には、散布ヘッドが導管の周囲に向かう液体吐出口を含まない場合は、自己すすぎが損なわれる可能性がある。導管の表面のある領域が上向きに向けた排出口から液体を受けることができないため、液体吐出口の不十分な数または構成を有する散布ヘッドと同時に軸を回転させることで、導管の表面に乾燥ゾーンを作ることがある。
【0038】
従って、本発明の様々な実施形態は処理液の均一な分布のために改善された質量および/または熱移動の利点を提供する。また、本発明の様々な実施形態は自己すすぎであってもよいため、液体散布器からの付随的湿潤を受ける処対容器表面と同様に、散布器上のポリマーの蓄積を防止することができる。
【実施例】
【0039】
本発明をより十分に理解できるようにするために、以下の実施例は例示のみのために提供される。
【0040】
[実施例1]
図1を参照すると、4.3メートル(14フィート)の直径の脱水塔(110)を、気−液接触容器として使用することができる。脱水塔(110)の全体の高さは45メートル(146フィート)を超えてもよい。脱水塔は、米国特許第8242308号に開示されている方法等のアクリル酸を回収するための方法の一部であってもよい。
【0041】
脱水塔(110)を、統合された処理容器として構成することができ、それは容器が複数の処理部:即ち、上部充填床部(140)、中間トレー部(145)、および下部急冷部(150)を含むことを意味する。同様の処理工程は、この例で使用したような単一の容器ではなく、2つ以上の連続した処理容器内で実施することができる。
【0042】
均一分布のために意図される流量は、塔の上部(140)において断面全体を占める(米国テキサス州パサデナのSulzer Chemtechから市販されている)Mellapak(商標) 250.Yの構造化パッキングの床全体にわたる約14,545kg/時(32,000ポンド/時)の処理液となる。処理液は、縮合軽質物を含む還流液流(107)および、マンガンイオン、ヒドロキノン(HQ)、4−ヒドロキシTEMPO(4−HT)およびフェノチアジン(PTZ)の1つ以上を含む防止剤パッケージ流(108)の混合物であってもよい。還流液流(107)は、80重量%を超える水、ならびに酢酸およびアクリル酸を含むことができる。処理液は、パッキングを通って下方に流れ、10個のMVG(商標)固定バルブトレー(T1からT10)(Sulzer Chemtechから市販されている)を備えるトレー部(145)からのすすぎ蒸気流の流れと密接に接触する。
【0043】
窒素、水、および酢酸を含む脱水塔オーバーヘッド流(106)は、凝縮器(113)を通過して、還流液流(107)および蒸気流(102)を形成することができる。再循環ガス流(114)へ分割される蒸気流(102)は、プロピレン酸化反応器に再循環されてもよく、通気流(115)は、1つ以上の排ガス処理システム、例えば、焼成焼却炉または触媒燃焼ユニット(CCU)に送ることができる。
【0044】
2つの同一の汚染防止液散布器(131および132)は、脱水塔(110)内に設置することができる。散布器は、3.8cm(1.5インチ)の直径の固定導管に取り付けられた316ステンレス鋼散布ヘッドから構成できる。具体的には、散布ヘッドは、(米国イリノイ州ウィートン Spraying Systems社から市販されている)TankJet(R)モデル#18250A−316SS45流体駆動式タンク洗浄ノズルであってもよい。処理液は、固定導管の長手方向軸の周りの散布ヘッドの連続的な回転を駆動するための動力流体として機能することができる。
【0045】
2つの5cm(2インチ)の直径のフランジノズル(図示せず)を脱水塔のトップヘッドに取り付けることができ、オーバーヘッド蒸気ライン(106)の両側に、垂直な処理容器壁から約1メートル(3.3フィート)である位置に1つずつ取り付けることができる。液体散布器(131および132)はこれらのフランジノズルを介して設置されて、散布ヘッドが導管の下端部に位置するようにそれらが垂直に配向されてもよい。これは、2つの散布ヘッドの間に約2.3メートル(7.5フィート)の間隔をもたらす。散布ヘッドは、上部充填床(140)における充填の上面上約1メートル(3.3フィート)で、容器トップヘッド上の最高内側点下約1メートル(3.3フィート)の同じ高さに配置することができる。
【0046】
散布ヘッドの各々は、スプレーノズルに一致し、360°の液体適用範囲角度を提供するように構成された3つの液体吐出口を含むことができる。処理液が約20psi(138kPa)の圧力および約138°F(60℃)の温度で供給されると、汚染防止液散布器(131、132)のそれぞれは、毎分約120リットル(32gpm)の処理液流を吐出することができ、約2.4m(8ft)の球状のスプレー直径にわたって均一に360°の液体散布および自己すすぎ操作をもたらす。パッキング上の液滴の均一な散布に起因する最適な気−液接触のために、オーバーヘッド蒸気流(106)のアクリル酸含有量を有益に最小化でき、そのため処理コストを削減する機会を提供する。さらに、均一な液体散布により、充填床内の乾燥区域の発生を制限することができ、それによってパッキング上のポリマーの蓄積を防止する。
【0047】
実施例1から、本発明の分散方法により提供される均一な液体適用範囲は、散布器、パッキング、ならびに脱水塔のヘッドおよび壁の処理対向面上のポリマーの蓄積を同時に回避しながら、脱水塔の充填部内の効率的な質量およびエネルギー移動の可能性を提供できることは明らかである。
【0048】
当業者によって認識されるように、実施例1は、液体散布器を、吸収剤が代わりに処理液として使用される(メタ)アクリル酸吸収塔内で有益に使用することができることを示す。水、またはジフェニルエーテルもしくはトルエン等の高沸点溶剤のような有機物を含む処理流体が吸着剤として効果的に利用され、本発明の実施形態に従って均一に散布できることが十分に期待される。
【0049】
[実施例2]
実施例1で用いたのと同様の気−液接触容器を実施例2で使用してもよい。アクリル酸を回収するための方法に対する本発明の適用性は、一般に、急冷部(150)を規定する円筒状の空間において適用することができる。急冷部(150)は、4.3メートル(14フィート)の内部容器直径「D」をおよび約20メートル(65フィート)の丈の高い高さを有することができる。急冷部(150)は、内部トレーまたは気−液接触を促進するためのパッキングを全く含まないであろう。代わりに、複数の汚染防止液散布器を、(最適な質量および熱移動のために)密接な気−液接触をもたらす急冷部(150)内の均一な液体散布、ならびにポリマー蓄積を回避するための散布器の自己すすぎおよび容器壁の付随的湿潤を提供するために使用することができる。汚染防止液散布器は、各散布配列が容器壁に沿った特定の高さに配置される、一連の5つの散布配列(A1、A2、A3、A4、A5)内に設置してもよい。
【0050】
各散布配列は、容器壁に着脱可能に取り付けた5つの水平に配向された散布器を含むことができ、全部で25個の設置された散布器となる。各散布配列内で、5つの散布器は均等に容器壁の外周に沿って72°間隔で離間され、壁の内側表面に幾何学的に垂直に配置されてもよい。連続した配列内の散布器は、壁の下に千鳥配列を作成するために垂直にオフセットされていてもよい。例えば、配列A1中の散布器は、配列A2の散布器と垂直方向に整列していないだろう。それぞれ連続した配列は、前の配列に対し36°でオフセットされるであろう。
【0051】
必須ではないが、各配列内の各散布器は、設計が同一であり、15.3cm(6インチ)の長い導管部を含むことができ、これには3.8cm(1.5”)モデルHWS−50 Hydrowhirl S(R)有穴スプレーノズル(米国マサチューセッツ州グリーンフィールドのBETE Fog Nozzle, Incから市販されている)が取り付けられている。テフロン(登録商標)の部品を有する散布器は避けるべきである。
【0052】
各散布器への処理液流は、278リットル/分(74gpm)が25個の散布器のそれぞれに供給されるように制御することができる。40psi(276kPa)の供給圧力で、散布ヘッドから排出する処理液のこの流れによって、散布器が、それらが取り付けられた水平導管の長手方向軸の周りで回転することを引き起こすことができ、それによって約5.5m(18ft)の球状のスプレー径(D)上に360°の液体適用範囲角度を達成する。
【0053】
与えられた処理液の流量におけるDは、直接観察することによって経験的に決定してもよく、または商業的に入手可能なノズルの場合には、そのようなデータを製造業者から入手することができる。なお、本発明の方法に従った水平に配向された散布器を選択して以下の関係に従った方法で操作することが好ましい。
≦D
【0054】
実施例2では、5つの散布配列(A1、A2、A3、A4、A5)は、各連続するレベルの間で2.75m(9ft)の垂直距離(”H”)で急冷部(150)内に配置されてもよい。連続した配列間の垂直距離が一定である必要はない。一般的には、連続した散布配列間の間隔は以下の関係に適合していることが好ましい。
H≦D/2
【0055】
さらに、散布配列内の散布器が、容器壁の外周に沿って等間隔で配置することができる実施例2のような実施の形態においては、散布配列内の散布器の数(N)は、以下の関係に適合していることが好ましい。
6.28×(D/D)≦N、ここでNは正の整数である。
【0056】
最上位の配列(A1)がトレー部(145)の一番下のトレー(T10)より約2.75メートル下に位置してもよいし、一番下の配列(A5)は、反応ガスライン(101)の中心線よりも少なくとも3メートル上でもよい。
【0057】
操作中に、プロピレン酸化反応器の出口からの9,5450kg/時(210,000lbs/時)を超えるガス状反応混合物は、約182℃(360°F)の温度で反応ガスライン(101)を介して脱水塔に入ることができる。底液(116)は、脱水塔(110)から引き出される。この流れの一部はライン(103)を介して仕上げ塔(図示せず)に移すことができ、残りは再循環ライン(120)を介して熱交換器(112)に行く。凝縮液体流(104)は、ライン(104)を介して仕上げ塔(図示せず)から戻ることもできる。
【0058】
急冷液体を含有するアクリル酸は、処理液と散布器用動力流体の両方として機能し得る。約376,460kg/時(828,210lbs/時)の総処理液流は約100℃(212°F)の温度で交換器112を出て、戻り配管網(111.1、111.2、111.3,111.4および111.5)のラインのそれぞれを通って流れ、散布配列の各々に供給することができる。この戻り配管網内のラインは、場合により、流れ測定装置、温度測定装置、圧力測定装置、流れ制御弁、制限オリフィスプレート、熱交換器、およびフィルタを含むが、これらに限定されない1つ以上の補助的な構成要素を含んでもよい。このような任意の補助的な構成要素の存在により、処理液の流量が1つの配列から次の配列へ変化することが可能になり、あるいは脱水塔におけるより高い散布配列に供給される処理液の温度が、塔におけるより低い配列に供給される処理液の温度より冷たいことが可能になる。
【0059】
この構成により、おびただしい量の液滴を、広くかつ均一に急冷部(150)全体に散布することができ、これらの液滴が密接に粗製アクリル酸蒸気に接触して、急冷部内で優れた質量およびエネルギー移動を達成する。散布器の各々は完全に自己すすぎであってもよく、トレーT10の底部を、また、配列A1内の散布器によって付随的に湿潤させてもよい。その結果、急冷工程を汚染ポリマー固体が蓄積することなく効率的に行うことができる。
【0060】
当業者によって理解されるように、急冷部における本発明の使用は、急冷部が、統合された処理容器の一部であることを必要としない。米国特許第8242308号の図2で説明した配置のように、別の脱水塔のすぐ上流の独立した処理容器内で行う場合は、急冷部および本発明の動作は実質的に変化しないであろう。
【0061】
[実施例3]
図3を参照すると、実施例3における気−液接触容器は、2.75メートルの直径の氷アクリル酸蒸留塔(300)であった。処理ガス(315)は、塔トップヘッドの側面に取り付けたオーバーヘッド蒸気ライン(310)を介して塔から排出される。塔は、密接な気−液接触が発生する(一般にT1、T2、T3、T4として表される)、二系統流れトレーを複数含んでいた。
【0062】
蒸留塔の頂部トレー(T1)上に、アクリル酸および約200ppmのMeHQ重合防止剤を含有する処理液流(本明細書では「GAA防止剤溶液」ともいう)を均一に散布するだけでなく、蒸留塔の頂部ヘッドの処理対向面または頂部トレーの上方の蒸気スペースに配置された容器壁の部分(約30m(317平方フィート)の全表面積)上の縮合ポリマーの蓄積を防止するため、複数の液体吐出口を有する単一の球状散布ヘッド(304)を含む汚染防止液散布器を使用した。この特定の散布ヘッドはドイツのメッツィンゲンのLechler社から市販されている316ステンレス鋼モデル#566.968.17.BL ノズルであった。この散布ヘッドは、NPT接続を介して、固定の19mm(3/4インチ)の直径の導管(303)の下端部に取り付けられた。汚染防止液散布器(301)を、標準的な5cm(2インチ)フランジ付き容器ノズル(302)を通じて挿入し、蒸留塔ヘッドの頂部中央に配置し、標準的なボルト接続(図示せず)を使用して所定の位置に密封した。
【0063】
導管(303)は、塔ヘッドの頂部内側表面の約1メートル以内に、塔の一番上の接線下に散布ヘッドの位置決めを可能にするのに十分な長さであった。GAA防止剤溶液を、導管(303)の上端部に1,600kg/時(3,520lbs/時)の速度で供給し、球状散布ヘッド(304)の内部へ導管を通って下方向に流した。このように、流れる防止剤溶液は、散布器用の動力流体として機能し、散布ヘッドが(概ね、円形の矢印で図に示す)導管の中心軸線の周りを連続的に回転することを引き起こす。動作中、散布ヘッドは+300°の液体適用範囲角度にわたって均一な適用範囲を提供するために十分な液体GAA防止剤溶液を排出し、塔の頂部トレーの全周にわたって防止剤溶液を均一に散布し、0.05m/m−時間の湿潤液速度で塔の頂部トレー上の蒸気スペース内の内部表面の全てを連続的に濡らし、同時に導管および散布ヘッドの外部表面を自己すすぎした。このようにして、トレー(T1、T2、T3、....)および塔の処理対向内部表面を、(メタ)アクリル系モノマーの処理サービスの操作にもかかわらず、ポリマー蓄積に対して確実に保護した。
【0064】
連続運転の1年後の蒸留塔のその後の検査により、塔の頂部にはポリマーが存在しないことが確認された。これは、この実施形態で用いられる本発明の散布方法は、蒸留塔の頂部においてポリマーの蓄積を防止するのに非常に効果的であることを示す。さらに、用いた低い湿潤液速度が満足な結果を提供したことを考えると(例えば、実施例3で用いた湿潤液速度は米国特許第6409886号に教示された最小湿潤液速度の1/10であった)、本発明の様々な実施形態は、固定スプレーノズルを用いた以前に使用された方法よりも改善された均一な液体散布を提供することができる。
【0065】
[実施例4]
実施例4では、実施例3の単一の汚染防止液散布器を、ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートを製造するために使用することができる既存の二重用途のアクリル酸エステルの蒸留塔へ組み込んだ。アクリル酸エステルの蒸留塔は、1.96メートル(6.37フィート)の直径を有しており、緊密な気−液接触が発生する複数のトレーを含んでいた。汚染防止液散布器を、蒸留塔の頂部トレーに重合防止剤(本明細書では「エステル法防止剤溶液」ともいう)を含有する処理液流を均一に分布し、蒸留塔ドーム(または頂部ヘッド)の処理対向面ならびに頂部トレー上の蒸気スペースに配置された容器壁の部分の、約14m(148平方フィート)の全表面積上の縮合ポリマーの蓄積を防止するために使用した。
【0066】
実施例4のシステムの構成は実施例3と同様であった。汚染防止液散布ヘッドを、NPT接続を介して、固定の19mm(3/4インチ)の直径の導管の下端部に取り付けた。導管の上端部を、標準DN100(4インチ)のフランジ上のネジ接続にねじ込んだ。
汚染防止液散布器(301)を、蒸留塔ヘッドの頂部中央に配置され標準的な100mm(4インチ)フランジ付き容器ノズル(302)を通じて挿入し、DN100フランジを標準的なボルト接続を使用して所定の位置に密封した。容器ノズルは、容器ノズルの内面と固定導管の外面との間に停滞環状ノズル空間を作成する0.565メートル(22インチ)の全長を有した。2つの任意の「導管口」を、DN100フランジの約50mm内の導管の上端部に加えた。これらの導管口を、導管の反対側に配置し、容器ノズルの内部表面上に半径方向外側にエステル法防止剤溶液の一部を向けるために、導管の中心軸に対して垂直に配向した。このような任意の導管口は、口の総数、固定導管の直径、および利用可能な処理流体の供給圧力のような変数に依存して、約1mmから約10mm(0.04から0.39インチ)の直径の範囲であり得、任意の導管口(複数可)の特定の数および直径(複数可)の選択は、当業者によって容易に決定される。任意の導管口の使用は、環状ノズル空間内の汚染物質の蓄積を防止するのに役立つ。
【0067】
実施例4においては、導管は、塔ヘッドの頂部内側表面の約0.6メートル(2フィート)以内に、汚染防止液散布ヘッドの位置決めを可能にするのに十分な長さであった。エステル法防止剤溶液を、導管の上端部に2,000kg/時(4,400lbs/時)の速度で供給し、球状散布ヘッドの内部へ導管を通って下方向に流した。このように、流れる防止剤溶液は、散布器用の動力流体として機能し、散布ヘッドが導管の中心線軸の周りを連続的に回転することを引き起こす。動作中、散布ヘッドは+300°の液体適用範囲角度にわたって均一な適用範囲を提供するために十分な液体防止剤溶液を排出し、塔の頂部トレーの全周にわたって防止剤溶液を均一に散布し、約0.08m/m−時間の湿潤液速度で塔の頂部トレー上の蒸気スペース内の内部表面の全てを連続的に濡らした。任意の導管口を備えた汚染防止液散布器の操作も環状ノズル空間のすすぎと、同時に導管および散布ヘッドの外部表面の自己すすぎをした。トレー、容器ノズル、および塔の処理対向内部表面を、(メタ)アクリル系モノマーの処理サービスの操作にもかかわらず、ポリマー蓄積に対して確実に保護した。ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートを製造する連続操作の長時間後にエステル処理蒸留塔のその後検査は汚染防止液散布器が、塔の頂部にポリマーの蓄積を防止するのに有効であることを確認した。
【0068】
本発明の好ましい実施形態を示し説明したが、そのような実施形態は例としてのみ提供されることが理解されるであろう。多数の変形、変更、および置換が、本発明の精神から逸脱することなく当業者に想起される。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内に入るようなすべての変形を包含することが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B
図4C