特許第6827809号(P6827809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6827809プーリおよび駆動ベルトを備える無段変速機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827809
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】プーリおよび駆動ベルトを備える無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/12 20060101AFI20210128BHJP
   F16G 5/16 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   F16H9/12 B
   F16G5/16 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-542914(P2016-542914)
(86)(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公表番号】特表2017-501355(P2017-501355A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2014079326
(87)【国際公開番号】WO2015097293
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月21日
【審判番号】不服2020-75(P2020-75/J1)
【審判請求日】2020年1月6日
(31)【優先権主張番号】1040573
(32)【優先日】2013年12月24日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス ヨハネス マリア ファン デル メーア
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 平田 信勝
【審判官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−213609(JP,A)
【文献】 特表2012−507677(JP,A)
【文献】 特表2003−535289(JP,A)
【文献】 特開2002−130408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/16
F16H 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速機であって、入力プーリ(1)と、出力プーリ(2)と、駆動ベルト(3)とを備え、前記入力プーリ(1)および前記出力プーリ(2)にはそれぞれ、大部分が円錐形の2つのプーリディスク(4,5)が設けられており、該プーリディスク(4,5)は、互いにプーリ角(Φp;Φp-i;Φp-o)を成して配置されており、かつ前記駆動ベルト(3)のそれぞれの側における接触面(37)と接触しており、前記駆動ベルト(3)の前記それぞれの側における前記接触面(37)は互いにベルト角(Φb)を成して配置されており、前記無段変速機において、一方における前記駆動ベルト(3)と、他方における前記入力プーリ(1)または前記出力プーリ(2)との接触は、それぞれのプーリ(1,2)の前記プーリディスク(4,5)に対する最小半径位置と最大半径位置との間で変化することができる、無段変速機において、少なくとも前記接触の最小可能半径位置において、前記入力プーリ(1)の前記プーリ角(Φp-i)は前記出力プーリ(2)の前記プーリ角(Φp-o)よりも小さく、
前記ベルト角(Φb)は、前記入力プーリ(1)の前記プーリ角(Φp-i)よりも大きい、無段変速機において、
前記接触の最小可能半径位置において、前記ベルト角(Φb)は、前記出力プーリ(2)の前記プーリ角(Φp-o)と等しいことを特徴とする、無段変速機。
【請求項2】
無段変速機であって、入力プーリ(1)と、出力プーリ(2)と、駆動ベルト(3)とを備え、前記入力プーリ(1)および前記出力プーリ(2)にはそれぞれ、大部分が円錐形の2つのプーリディスク(4,5)が設けられており、該プーリディスク(4,5)は、互いにプーリ角(Φp;Φp-i;Φp-o)を成して配置されており、かつ前記駆動ベルト(3)のそれぞれの側における接触面(37)と接触しており、前記駆動ベルト(3)の前記それぞれの側における前記接触面(37)は互いにベルト角(Φb)を成して配置されており、前記無段変速機において、一方における前記駆動ベルト(3)と、他方における前記入力プーリ(1)または前記出力プーリ(2)との接触は、それぞれのプーリ(1,2)の前記プーリディスク(4,5)に対する最小半径位置と最大半径位置との間で変化することができる、無段変速機において、少なくとも前記接触の最小可能半径位置において、前記入力プーリ(1)の前記プーリ角(Φp-i)は前記出力プーリ(2)の前記プーリ角(Φp-o)よりも小さく、少なくとも前記接触の最大可能半径位置においては、前記入力プーリ(1)の前記プーリ角(Φp-i)は、前記出力プーリ(2)の前記プーリ角(Φp-o)に等しいことを特徴とする、無段変速機。
【請求項3】
前記接触の前記最小可能半径位置において、前記入力プーリ(1)の前記プーリ角(Φp-i)は、前記出力プーリ(2)の前記プーリ角(Φp-o)より少なくとも0.2度、最大で1.2度だけ小さい、請求項1または2記載の無段変速機。
【請求項4】
前記出力プーリ(2)の前記プーリ角(Φp-o)の公称値は、約22.0度であり、前記接触の前記最小可能半径位置においては、前記入力プーリ(1)の前記プーリ角(Φp-i)の公称値は、約21.4度である、請求項1または2記載の無段変速機。
【請求項5】
前記駆動ベルト(3)には、無端キャリヤ(31)と、該無端キャリヤの周囲に沿って該無端キャリヤに連続的にかつ摺動可能に取り付けられた複数の横断部材(32)とが設けられており、各横断部材(32)には、前側本体面(39)と、後側本体面(38)とが設けられており、前記前側本体面(39)と前記後側本体面(38)との間において前記横断部材(32)は厚さ方向に延びており、前記前側本体面(39)と前記後側本体面(38)との間において前記横断部材(32)にはそれぞれの側において、前記無変速機の前記入力プーリ(1)および前記出力プーリ(2)と摩擦接触するための接触面(37)が設けられており、各横断部材(32)の前記接触面(37)は、互いに所定の角度を成して向けられており、前記ベルト角(Φb)または少なくとも該ベルト角(Φb)の公称値は、前記駆動ベルト(3)の全ての横断部材(32)の前記接触面(37)の間の角度の平均値に相当する、請求項1から4のいずれか1項記載の無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2つのプーリと、駆動ベルトとが設けられた無段変速機であって、各プーリは、テーパした周方向溝を形成した一対の円錐形ディスクを含み、駆動ベルトは、プーリのプーリディスクによってプーリディスクの間に締め付けられながら、このような変速機プーリの周囲に配置され、それぞれのプーリのプーリ溝に部分的に配置されている、無段変速機に関する。駆動ベルトは、プーリと接触する複数の別個の横断部材と、変速機において横断部材を支持および案内する1つまたは複数の無端の、すなわち環状のキャリヤとを含む。このタイプの駆動ベルトは、プッシュベルトとしても知られている。
【0002】
駆動ベルトの無端キャリヤは、通常、互いに重ね合わされた、連続的でフレキシブルな複数の金属リングから成り、リングセットとしても知られている。無端キャリヤは、横断部材に設けられた凹所に少なくとも部分的に挿入されている。駆動ベルトが1つの無端キャリヤしか有さない場合、このようなキャリヤは、通常、横断部材の中央の凹所に取り付けられている。しかしながら、通常、駆動ベルトには2つの無端キャリヤが設けられている。各無端キャリヤは、駆動ベルトのそれぞれの軸方向側もしくは側方側に向かって開放した横断部材の2つの凹所のうちのそれぞれ1つに取り付けられている。
【0003】
駆動ベルトの横断部材は、1つまたは複数の無端キャリヤの周囲に沿って実質的に連続的な列において摺動可能に配置されており、これにより、これらの部材は、駆動ベルトの移動に関連した力を伝達することができる。横断部材は、2つの本体面を有する。本体面は、少なくとも部分的に互いに実質的に平行に延びており、横断部材の周方向側面によって横断部材の(局所的な)厚さにわたって互いから分離されている。キャリヤの周囲に沿って見ると、横断部材は比較的小さな寸法、すなわち厚さを有しており、これにより、駆動ベルトには数百の横断部材が存在する。プーリ溝における湾曲した軌道(部分)をベルトがたどるために、隣接する横断部材は互いに対して傾斜することができなければならない。このような相対的な傾斜を提供しかつ制御するために、互いに接触した、駆動ベルトにおける2つの隣接する横断部材の2つの本体面のうちの少なくとも一方には、それぞれの本体面の、軸方向に延びた、凸状に丸みづけられたセクションの形式のいわゆる揺動エッジが設けられている。
【0004】
横断部材の側面の部分であって、当該部分は大部分が軸方向、すなわち幅方向に向けられている側面の部分は、プーリディスクの間に締め付けられることによってプーリディスクに摩擦を生じながら係合するようになっている。横断部材の側面のこれらのプーリディスク係合部分は、接触面と称され、鋭角の、いわゆるベルト角を成して互いに向けられており、このベルト角は、プーリのプーリディスクによってプーリディスクの間に規定されたいわゆるプーリ角にほぼ合致している。
【0005】
横断部材の接触面と、プーリディスクとの間の摩擦接触により、これらの間で力が伝達され、これにより、駆動ベルトは、一方のプーリから他方のプーリへ駆動トルクおよび回転運動を伝達することができる。さらに、プーリディスクの円錐形状と、駆動ベルトの横断部材の接触面の間のベルト角とを組み合わせることにより、これらの横断部材は、各プーリにおいて/各プーリによって加えられる締付力の半径方向外方への力成分をも受ける。この後者の力成分は、駆動ベルト、特に駆動ベルトの無端キャリヤに張力を生ぜしめ、プーリ溝に配置された駆動ベルトのそれぞれの部分を、半径方向で互いに反対に駆動ベルトの最小半径位置と最大半径位置との間で移動させることもできる。これにより、2つのプーリにおける駆動ベルトの実際のそれぞれの半径方向位置は変速機の速度比を決定する。
【0006】
プーリ角に対してベルト角が増大させられると、任意の締付力において伝達することができる最大駆動トルクもまた少なくとも最初は好適には増大するということが特開2000−213609号公報において観察されている。特開2000−213609号公報の図5によれば、少なくとも、ベルト角とプーリ角とが全く同じである変速機によって伝達可能な駆動トルクと比べ、プーリ角よりも約0.2度だけ大きなベルト角を適用することによって、このような伝達可能な駆動トルクを最大で約18%だけ増大させることができる。
【0007】
伝達可能なトルクのこのような増大は有利であり、現在のタイプの変速機の設計において大いに追求されてきたが、変速機の全体効率の低下という犠牲を払ってのみ可能であることが分かっている。特に、少なくとも変速機の最大速度比において(この比は、負荷に関連した変速機の出力プーリの回転速度を、負荷を駆動するエンジンまたはモータに関連した変速機の入力プーリの回転速度で割ったものと定義される)、プーリ角に対してベルト角が増大されると、駆動ベルトと変速機プーリとの間の摩擦損失が増大することが観察されている。実際には、上述の形式において、すなわちプーリ角よりも0.2度だけ大きなベルト角を適用することによって、伝達可能な駆動トルクが最大化される場合、変速機の前記最大速度比における動力変速機の効率に関して約0.25%の低下が測定されている。特に自動車、例えば乗用車の変速機の適用において、この効率の低下は極めて望ましくない。
【0008】
本開示は、これにより、プーリ角よりも大きなベルト角を適用することによって提供される変速機の比較的高い伝達可能なトルクを維持しつつ、公知の変速機の最大伝達比における前記効率損失を低減することを目的とする。本開示によれば、このような目的は、以下の請求項1による無段変速機において実現される。前記新規の変速機において、入力プーリによって規定されたプーリ角、すなわち入力プーリ角は、出力プーリによって規定されたプーリ角、すなわち出力プーリ角よりも小さく設定されており、ベルト角は、入力プーリ角よりも大きく、好適には出力プーリ角とほぼ等しく設定されている。
【0009】
上記配列において、従来技術による伝達可能な駆動トルクの前記公知の増大を提供するために、ベルト角は入力プーリ角よりも大きい。さらに、公知の変速機の前記最大速度比における観察された効率損失に対抗するために、出力プーリ角とベルト角との差は公知の変速機よりも減じられている。プーリ角およびベルト角に関する変速機のこの新規の設計は、以下の観察から出発しかつ以下の観察に依存する。すなわち、一方では、変速機の最小速度比における駆動ベルトと入力プーリとの摩擦接触は前記伝達可能なトルクに関して優勢なファクタであり、他方では、変速機の最大速度比における駆動ベルトと出力プーリとの摩擦接触は変速機の前記全体効率に関する優勢なファクタである。
【0010】
さらに、このような優勢な摩擦接触の両方がそれぞれ、それぞれのプーリのプーリ溝における駆動ベルトの最小半径位置において生じることが観察された。したがって、上記の新規の変速機のより詳細な実施の形態において、入力プーリのプーリ角は、プーリ溝における駆動ベルトの半径方向位置に関して増大するように設定される。好適にはこの後者の実施の形態において、少なくともプーリ溝における最大半径位置において入力プーリ角がベルト角とほぼ等しく設定されている。この特徴により、変速機の効率がさらに改良され得る。
【0011】
実際には、製造時に生じる不正確および公差の結果として公知の駆動ベルトのベルト角は横断部材ごとに変化することに留意されたい。例えば、従来の変速機においてベルト角の典型的な値は22.0°であり、このベルト角は、変速機の横断部材ごとに0.3°だけ変化してもよく、例えば22.0°±0.3°であってもよい。本開示の文脈の範囲において、公称ベルト角は、駆動ベルトの個々の横断部材の接触面の間に規定された角度の平均値として定義される。プーリ角は、通常、プーリ角の公称値の±0.3°未満、典型的には±0.2°以下のより狭い公差範囲に設定することができる。
【0012】
ここで本開示による新規の変速機設計を本開示の1つまたは複数の典型的な実施の形態に沿って添付の図面を参照しながら以下の説明においてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】2つのプーリ上を走行する駆動ベルトを備えた無段変速機の概略的な透視図であり、この駆動ベルトは、無端キャリヤと、複数の横断部材とを有する。
図2】駆動ベルトの周方向に向けられた、公知の駆動ベルトの断面図である。
図3】公知の駆動ベルトの横断部材の幅方向に向けられた図である。
図4】公知技術によるプーリと摩擦接触した駆動ベルトの横断部材の概略図である。
図5】本開示に従って設計された新規の無段変速機の概略的な透視図である。
【0014】
図面において同一の符号は同一または類似の構造および/または部材を示している。
【0015】
図1における無段変速機の概略図は、駆動ベルト3を示している。駆動ベルト3は、2つのプーリ1,2上を走行し、フレキシブルな無端キャリヤ31と、無端キャリヤ31の周囲に取り付けられかつ無端キャリヤ31の周囲に沿って配置された横断部材32のほぼ隣接した列とを有する。各プーリ1,2は一対の円錐形のディスク4,5を有する。ディスク4,5は、鋭角、いわゆるプーリ角Φpを形成しながら半径方向外方に向かって開放したテーパした周方向溝を形成している。駆動ベルト3は、それぞれのプーリ1,2のプーリディスク4,5によってプーリディスク4,5の間に締め付けられながら、部分的にこれらのプーリ溝に配置されている。
【0016】
変速機の例示された構成において、上側プーリ1は下側プーリ2よりも高速で回転する。プーリ1,2の2つの円錐形ディスク4,5の間の距離を変化させることによって、プーリ1,2における駆動ベルト3の半径方向位置もしくは走行半径Ri,Roが半径方向で互いに反対に変化させられ、その結果、2つのプーリ1,2の回転速度の比が変化させられ、この速度比は、それぞれの走行半径Ri,Roの比にリンクしている。特に、速度比は、負荷に関連した変速機の出力プーリ2の回転速度を、負荷を駆動するエンジンまたはモータに関連した変速機の入力プーリ1の回転速度で割ったものと定義される。
【0017】
図2には、ベルト3の周方向もしくは長さ方向Lに面した、すなわち、ベルト3の軸方向もしくは幅方向Wと、半径方向もしくは高さ方向Hとに対して垂直な方向に面した断面図で駆動ベルト3が示されている。この図2は、2つの無端キャリヤ31の存在を示している。無端キャリヤ31は、この図2においては断面図で示されている。無端キャリヤ31は、駆動ベルト3の横断部材32を支持および案内する。この図2には横断部材32のうちの1つが正面図で示されている。
【0018】
駆動ベルト3の横断部材32および無端キャリヤ31は、通常、鋼から形成されている。横断部材32は、その接触面37を介して各プーリ1,2のディスク4,5の間に加えられる締付力を取り上げる。1つのこのような接触面37が横断部材32のそれぞれの軸方向側に設けられている。これらの接触面37は半径方向外方へ互いに拡開しており、これにより、接触面の間に鋭角が規定されており、この鋭角は駆動ベルト3のベルト角Φbと称される。
【0019】
横断部材32は、周方向Lで無端キャリヤ31に沿って移動、すなわち摺動することができ、これにより、横断部材32が互いに押し付けられ、かつ駆動ベルト3とプーリ1,2との回転方向で無端キャリヤ31に沿って互いに前方へ押し付けられることによって、変速機プーリ1,2の間でトルクを伝達することができる。この図2に示された典型的な実施の形態では、無端キャリヤ31は、それぞれ5つの個々の無端バンドから成る。無端バンドは、互いに同心状に重ね合わされて、無端キャリヤ31を形成している。実際には、無端キャリヤ31は、多くの場合、6つ以上、例えば9または12の無端バンドを含み、さらに多くの無端バンドも可能である。
【0020】
図3の側面図にも示された駆動ベルト3の横断部材32には、互いに反対側に配置された2つの切欠33が設けられている。これらの各切欠33は、横断部材32のそれぞれの軸方向側に向かって開放しており、それぞれの無端キャリヤ31(の小さなセクション)を収容する。これにより、横断部材32の第1の部分もしくはベース部分34は、無端キャリヤ31から半径方向内方へ延びており、横断部材32の第2の部分もしくは中間部分35は、無端キャリヤ31の間に配置されており、横断部材32の第3の部分もしくは上側部分36は、無端キャリヤ31から半径方向外方へ延びている。各切欠33の半径方向内側は、横断部材32のベース部分34のいわゆる支持面42によって画定されており、この支持面42は、半径方向外方、すなわち概して横断部材32の上側部分36の方向に面しており、無端キャリヤ31の内側と接触する。
【0021】
周方向Lで互いに反対に面した横断部材32の2つの本体面38,39の第1の面もしくは後面38は、ほぼ平坦である。横断部材32の他方のもしくは前側の本体面39にはいわゆる揺動エッジ18が設けられている。揺動エッジ18は、半径方向Hで、後面38に対してほぼ平行に延びた前面39の上側部分と、後面38に向かって延びるように傾斜させられた前面39の下側部分との間の移行部を形成している。図2には、揺動エッジ18は一本の線によって概略的にしか示されていないが、実際には、揺動エッジ18はほとんど凸状に湾曲した移行面の形状で提供されている。これにより、横断部材32の前記上側部分には、本体面38,39の間にほぼ一定の寸法が提供されており、すなわち、周方向Lで見て、この寸法は典型的には横断部材32の厚さと呼ばれる。
【0022】
再び図1を参照すると、変速機は最小速度比で示されており、この場合、駆動ベルト3は、入力プーリ1においては最小走行半径Riに、出力プーリ2においては最大走行半径Roに配置されており、これにより、入力プーリ1の回転速度が出力プーリ2の回転速度よりも高くなる。特に、変速機のこの最小速度比において、変速機によって最大限に伝達可能なトルクは、変速機の自動車用途における重要な特性である。特開2000−213609号公報によれば、このような伝達可能なトルクを最大化するために、駆動ベルト3の1つの接触面37とプーリ1,2の1つのプーリディスク4;5との接触に関して図4に概略的に示されているように、公知の変速機のベルト角Φbは、変速機のプーリ角Φpよりも僅かに大きく設定されている。
【0023】
特開2000−213609号公報によれば、通常適用される、22°の公称プーリ角に対して、ベルト角は、このような公称プーリ角と等しく設定されるべきではなく、約0.2°だけ大きく設定されるべきであり、すなわち、公称ベルト角は、変速可能なトルクを最大化するために約22.2°であるべきである。特に、特開2000−213609号公報によれば、これにより、伝達可能なトルクを約18%だけ増大させることができる。しかしながら、本開示によれば、ベルト角Φbの公称値とプーリ角Φpの公称値とのこのような差の正確な最適な値は、多くの要因に依存し、例えば、これらの公称値自体、ならびに横断部材32およびプーリディスク4,5の設計および形状の(相対的な)軸方向剛性などに依存する。例えば、現代の変速機設計では、最大伝達可能トルクは、22.0°のプーリ角Φpに対して22.6°のベルト角Φbで実現された。
【0024】
この公知の変速機の欠点は、ベルト角Φbとプーリ角Φpとの差が増大するにつれて、変速機の作動中の駆動ベルト3によるプーリ1,2間の動力伝達に関する(摩擦)損失が増大することが分かったということである。このような動力損失を好適には低減するためにおよび/または無段変速機の作動効率を好適には高めるために、入力プーリ1の公称プーリ角Φp、すなわち入力プーリ角Φp-iのみをベルト角Φbよりも小さく設定する一方、出力プーリ2の公称プーリ角Φp、すなわち出力プーリ角Φp-oは公称ベルト角Φbとほぼ等しく設定されることがここでは提案される。本開示によるこの特定の新規の変速機設計は、概して図5に示されている。この特定の変速機設計では、駆動ベルト3と出力プーリ2との間の摩擦損失が最小限に減じられる一方、駆動ベルト3と入力プーリ1との間の摩擦接触によって決定される変速機の最大速度比における最大伝達可能トルクの利点が維持される。
【0025】
入力プーリ角Φp-iと、出力プーリ角Φp-oおよび/またはベルト角Φbとの差の実際の範囲は、少なくとも−0.2°から−1.2°までである(マイナス符号の意味は、入力プーリ角Φp-iが出力プーリ角Φp-oおよび/またはベルト角Φbよりも小さいということである)。さらに、この数値の例では、入力プーリ角は、21.4°、または22.0°の出力プーリ角および/または駆動ベルト角よりも0.6°だけ小さい。
【0026】
本開示は、前記説明の全ておよび添付図面の全ての詳細に加えて、添付の特許請求の範囲の全ての特徴にも関しかつこれらの特徴を含む。請求項における括弧書きの符号は、請求項の範囲を限定するのではなく、単に、それぞれの特徴の拘束しない例として提供されている。請求項に記載された特徴は、場合によって、任意の製品または任意の方法において別々に適用することができるが、これらの特徴の2つ以上のあらゆる組合せを適用することも可能である。
【0027】
本開示によって表された発明は、明細書に明示的に言及された実施の形態および/または実施例に限定されるのではなく、その補正、変更および実用的な適用、特に当業者の到達範囲にあるものをも包含する。
図1
図2
図3
図4
図5