(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1領域を含む基板主面が第1基板の主面であり、前記第2領域を含む基板主面が前記第1基板とは別の第2基板の主面である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の異物除去処理評価方法。
前記第2領域を含む基板主面が第2基板の主面であり、前記第3領域を含む基板主面が前記第2基板とは別の第3基板の主面である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の異物除去処理評価方法。
前記第1画像、前記第2画像および前記第3画像が、それぞれ前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域を同倍率で撮影して得られる画像である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の異物除去処理評価方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から行われてきた異物除去処理の評価は、表面に凹凸パターンが形成されていない状態のベア基板(ベアウエハ)に対して実行されている。しかし、半導体装置の製造工程等で行われる洗浄処理は、ベア基板のみならず、表面に凹凸パターンが形成された状態の基板に対しても実行される。ベア基板を用いて異物除去処理を評価した結果が、凹凸パターンが形成された基板においても同等に該当するかどうかは、必ずしも明らかではない。
【0005】
一方、パーティクルカウンタでパーティクルを計数することを前提とした異物除去処理の評価では、たとえば、直径30cmのベアウエハの主面に10000〜50000個のパーティクルが付着するように、ベアウエハの主面に汚染物質が塗布される。この場合の単位面積当たりのパーティクル個数(パーティクル密度)は、14〜70個/cm
2である。ところが、このようなパーティクル密度では、基板主面に形成された微細パターンの間に入るパーティクル個数が不足しており、異物除去性能を適切に評価することができない。基板表面に上記以上の密度でパーティクルを付着させると、パーティクルカウンタの分解能の限界から、パーティクルを正確に計数することができない。
【0006】
一方、基板表面に形成されたパターンの欠陥を検査する表面欠陥検査装置を用いてパーティクルを計数することが考えられる。しかし、この装置は、パターン欠陥を測定するための装置であるので、基板上の多数のパーティクルの計数には不向きである。具体的には、直径30cmのウエハ上で計測できる欠陥個数の上限は15万個程度であるため、ウエハ上に高密度で付着させたパーティクルを計数しようとすると、容易に計測限界に達してオーバーフローしてしまう。
【0007】
そこで、この発明の一つの目的は、凹凸パターンが形成された基板主面に対する異物除去処理を適切に評価できる実用的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一実施形態は、凹凸パターンが形成された基板主面に対する異物除去処理を評価するための異物除去処理評価方法を提供する。この方法は、基板主面の第1凹凸パターンが形成された第1領域を電子顕微鏡で撮影して、第1画像を取得する第1画像取得工程と、前記第1凹凸パターンと同等の第2凹凸パターンが形成された第2領域を含む基板主面、および前記第1凹凸パターンと同等の第3凹凸パターンが形成された第3領域を含む基板主面に異物を付着させる基板汚染工程と、前記基板汚染工程の後に、前記第2領域を電子顕微鏡で撮影して、第2画像を取得する第2画像取得工程と、前記基板汚染工程の後に、前記第3領域を含む基板主面に対して、前記異物を除去するための異物除去処理を実行する異物除去処理工程と、前記異物除去処理工程の後に、前記第3領域を電子顕微鏡で撮影して、第3画像を取得する第3画像取得工程と、前記第1画像中の前記第1凹凸パターンに相当する画像部分の面積の割合を第1面積率として取得する第1面積率取得工程と、前記第2画像中の前記第2凹凸パターンおよび異物に相当する画像部分の面積の割合を第2面積率として取得する第2面積率取得工程と、前記第3画像中の前記第3凹凸パターンおよび異物に相当する画像部分の面積の割合を第3面積率として取得する第3面積率取得工程と、前記第1面積率、前記第2面積率および前記第3面積率を用いて、前記異物除去処理による異物除去率を算出する異物除去率算出工程と、を含む。
【0009】
この方法によれば、第1画像、第2画像および第3画像は、互いに同等な第1凹凸パターン、第2凹凸パターンおよび第3凹凸パターンがそれぞれ形成された第1、第2および第3領域を電子顕微鏡で撮影して取得される。第1画像は、基板汚染工程が施されていない基板主面を撮影して得られる画像である。第2画像は、基板汚染工程が施された基板主面を撮影して得られる画像である。そして、第3画像は、基板汚染工程を施し、かつその後に異物除去処理を施した基板主面を撮影して得られる画像である。したがって、第1画像および第2画像の差は、基板汚染工程によって異物が付着させられた結果に相当する。第2画像および第3画像の差は、異物除去処理によって異物が除去された処理結果に相当する。第1画像と第3画像との差は、基板汚染工程および異物除去処理工程の両方を経た全体の処理結果に相当する。
【0010】
これらの画像間の相違を評価するために、第1画像(第1領域)中の第1凹凸パターンに相当する画像部分の面積の割合が第1面積率として取得される。また、第2画像(第2領域)中の第2凹凸パターンに相当する画像部分および異物の画像部分の面積率の総和に相当する第2面積率が取得される。そして、第3画像(第3領域)中の第3凹凸パターンに相当する画像部分および異物の画像部分の面積率総和に相当する第3面積率が取得される。第1面積率と第2面積率との差は、基板汚染工程で付着させられた異物の総量(総数)に相当する。また、第2面積率と第3面積率との差は、異物除去処理工程で除去された異物の総量(総数)に相当する。第1面積率と第3面積率との差は、基板汚染工程および異物除去処理工程の前後における異物総量(総数)の差に相当する。したがって、第1面積率、第2面積率および第3面積率を用いることにより、基板主面上の凹凸パターンの影響を排除しながら、異物除去率を算出することができる。
【0011】
この方法は、電子顕微鏡による基板主面の撮影と、その撮影によって得られた画像の処理および解析によって、基板主面上における異物の付着状況を算出する。したがって、パーティクルカウンタを用いる場合のようなパーティクル付着数の制限がなく、かつ表面欠陥検査装置を用いる場合のような計測限界の問題もない。そのため、基板主面に異物を高密度に付着させて異物除去処理を評価できるので、主面に凹凸パターンを有する基板に対する異物除去処理の評価に適用可能な実用的な方法を提供することができる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記第1画像を二値化して第1二値化画像を取得する第1画像二値化工程をさらに含み、前記第1面積率取得工程が、前記第1二値化画像に基づいて、前記第1画像中の前記第1凹凸パターンに相当する画像部分の面積の割合を前記第1面積率として取得する工程である。
この方法では、第1画像が二値化され、第1二値化画像が取得される。さらに、第1二値化画像に基づき、第1画像(第1領域)中の第1凹凸パターンに相当する画像部分(第1凹凸パターンの電子顕微鏡画像のうち、二値化したときに異物と同じ値に二値化される画像部分)の面積の割合が第1面積率として取得される。
【0013】
この発明は、また、凹凸パターンが形成された基板主面に対する異物除去処理を評価するための異物除去処理評価方法であって、基板主面の第1凹凸パターンが形成された第1領域を表す第1画像中の前記第1凹凸パターンに相当する画像部分の面積の割合を表す第1面積率を取得する第1面積率取得工程と、前記第1凹凸パターンと同等の第2凹凸パターンが形成された第2領域を含む基板主面、および前記第1凹凸パターンと同等の第3凹凸パターンが形成された第3領域を含む基板主面に異物を付着させる基板汚染工程と、前記基板汚染工程の後に、前記第2領域を電子顕微鏡で撮影して、第2画像を取得する第2画像取得工程と、前記基板汚染工程の後に、前記第3領域を含む基板主面に対して、前記異物を除去するための異物除去処理を実行する異物除去処理工程と、前記異物除去処理工程の後に、前記第3領域を電子顕微鏡で撮影して、第3画像を取得する第3画像取得工程と、前記第2画像を二値化して第2二値化画像を取得する第2画像二値化工程と、前記第3画像を二値化して第3二値化画像を取得する第3画像二値化工程と、前記第2二値化画像に基づいて、前記第2画像中の前記第2凹凸パターンおよび異物に相当する画像部分の面積の割合を第2面積率として取得する第2面積率取得工程と、前記第3二値化画像に基づいて、前記第3画像中の前記第3凹凸パターンおよび異物に相当する画像部分の面積の割合を第3面積率として取得する第3面積率取得工程と、前記第1面積率、前記第2面積率および前記第3面積率を用いて、前記異物除去処理による異物除去率を算出する異物除去率算出工程と、を含む、異物除去処理評価方法を提供する。
【0014】
第1領域に対応した第1画像から取得すべき情報、すなわち第1面積率が既知であれば、この方法を適用することができる。
この発明の一実施形態では、前記第2画像を二値化して第2二値化画像を取得する第2画像二値化工程と、前記第3画像を二値化して第3二値化画像を取得する第3画像二値化工程と、をさらに含み、前記第2面積率を取得する工程が、前記第2二値化画像に基づいて、前記第2画像中の前記第2凹凸パターン
および異物に相当する画像部分の面積の割合を前記第2面積率として取得する工程であり、前記第3面積率を取得する工程が、前記第3二値化画像に基づいて、前記第3画像中の前記第3凹凸パターン
および異物に相当する画像部分の面積の割合を前記第
3面積率として取得する工程である。
【0015】
この方法では、第2画像および第3画像がそれぞれ二値化され、第2および第3二値化画像が取得される。さらに、第2二値化画像に基づき、第2画像(第2領域)中の第2凹凸パターンに相当する画像部分(第2凹凸パターンの電子顕微鏡画像のうち、二値化したときに異物と同じ値に二値化される画像部分)および異物の画像部分の面積率の総和に相当する第2面積率が取得される。そして、第3二値化画像に基づき、第3画像(第3領域)中の第3凹凸パターンに相当する画像部分(第3凹凸パターンの電子顕微鏡画像のうち、二値化したときに異物と同じ値に二値化される画像部分)および異物の画像部分の面積率総和に相当する第3面積率が取得される。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記異物除去率算出工程が、前記第2面積率から前記第1面積率を差し引いた値を求める工程を含む。第2面積率から第1面積率を差し引いた値は、第2面積率から凹凸パターンに対応する部分を差し引いた面積率に相当するから、基板汚染工程の後の異物量、すなわち、初期異物量に相当する。
この発明の一実施形態では、前記異物除去率算出工程が、前記第3面積率から前記第1面積率を差し引いた値を求める工程を含む。第3面積率から第1面積率を差し引いた値は、第3面積率から凹凸パターンに対応する部分を差し引いた面積率に相当するから、基板汚染工程および異物除去処理工程を経た基板主面上の異物量、すなわち、処理後異物量に相当する。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記異物除去率算出工程が、前記第2面積率から前記第3面積率を差し引いた値を求める工程を含む。第2面積率は、凹凸パターンに対応する面積率と初期異物量に対応する面積率との和である。一方、第3面積率は、凹凸パターンに対応する面積率と処理後異物量に対応する面積率との和である。したがって、第2面積率から第3面積率を差し引いた値は、初期異物量と処理後異物量との差に相当する。これは、異物除去処理によって除去された異物量、すなわち、除去異物量である。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記異物除去率算出工程が、次式AまたはBにより、前記異物除去率を算出する工程を含む。
異物除去率=1−{(第3面積率−第1面積率)/(第2面積率−第1面積率)}…A
異物除去率=(第2面積率−第3面積率)/(第2面積率−第1面積率)…B
式Aおよび式Bは、等価である。いずれの式を適用するときも、第2面積率から第1面積率を差し引いた値(初期異物量相当)が求められる。そして、式Aを適用するときには、さらに、第3面積率から第1面積率を差し引いた値(処理後異物量相当)が求められる。一方、式Bを適用するときには、さらに、第2面積率から第3面積率を差し引いた値(除去異物量相当)が求められる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記第1領域を含む基板主面が第1基板の主面であり、前記第2領域を含む基板主面が前記第1基板とは別の第2基板の主面である。
電子顕微鏡を用いた撮影では、基板主面が電子線に曝されるから、基板表面のパターンが電子線によるダメージを受ける。したがって、第1領域および第2領域を同一基板の主面に設定するよりも、同じパターンが形成された別の基板主面上の領域とすることにより、電子線によるダメージに起因する誤差を排除できるので、より適正に異物除去処理の品質を評価できる。
【0020】
同様の理由により、この発明の一実施形態では、前記第2領域を含む基板主面が第2基板の主面であり、前記第3領域を含む基板主面が前記第2基板とは別の第3基板の主面である。
この発明の一実施形態では、前記第1画像、前記第2画像および前記第3画像が、それぞれ前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域を同倍率で撮影して得られる画像である。これにより、第1画像、第2画像および第3画像を用いた処理が一層妥当になる。しかも、この場合、第1画像、第2画像および第3画像の面積は等しい。そのため、第1画像中の第1凹凸パターンに相当する画像部分の面積によって前記第1面積率を代替でき、第2画像中の第2凹凸パターンおよび異物に相当する画像部分の面積によって前記第2面積率を代替でき、第3画像中の第3凹凸パターンおよび異物に相当する画像部分の面積によって前記第3面積率を代替できる。すなわち、面積自体を面積率として取り扱って、異物除去率を演算できる。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記第2画像取得工程が、前記第1領域と同等の凹凸パターンが形成され、前記第1領域と同形同大の領域を前記第2領域と認識する第2領域認識工程を含み、前記第3画像取得工程が、前記第1領域と同等の凹凸パターンが形成され、前記第1領域と同形同大の領域を前記第3領域と認識する第3領域認識工程を含む。これにより、第1画像、第2画像および第3画像を用いた処理が一層妥当になる。
【0022】
この発明の一実施形態では、前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域が、それぞれ複数個設定され、複数の前記第1領域にそれぞれ対応する複数の前記第1画像が取得され、複数の第2領域にそれぞれ対応する複数の前記第2画像が取得され、複数の第3領域にそれぞれ対応する複数の第3画像が取得され、複数の前記第1画像のそれぞれにおける前記第1凹凸パターンに相当する画像部分の面積の割合の平均値が前記第1面積率とされ、複数の前記第2画像のそれぞれにおける前記第2凹凸パターンおよび異物に相当する画像部分の面積の割合の平均値が前記第2面積率とされ、複数の前記第3画像のそれぞれにおける前記第3凹凸パターンおよび異物に相当する画像部分の面積の割合の平均値が前記第3面積率とされる。
【0023】
これにより、第1領域、第2領域および第3領域がそれぞれ複数個設定され、各複数の第1画像、第2画像および第3画像に基づく平均値演算によって、第1面積率、第2面積率および第3面積率が求められる。それにより、異物除去処理の評価の精度を高めることができる。
この発明の一つの実施形態では、複数の前記第1画像にそれぞれ対応する複数の前記第1二値化画像が取得され、複数の第2画像にそれぞれ対応する複数の前記第2二値化画像が取得され、複数の第3画像にそれぞれ対応する複数の第3二値化画像が取得される。そして、これらに基づいて、第1面積率、第2面積率および第3面積率が求められる。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記基板汚染工程が、酸を加えた液中に異物を分散させた汚染液を基板主面に塗布する工程を含む。酸を加えた液中に異物を分散させて汚染液を作成することにより、ゼータ電位が制御された異物を基板主面に塗布できる。それにより、基板主面上に異物を均一に付着させることができる。とくに、凹凸パターンが形成された基板主面上では汚染液の流動が凹凸パターンに大きく影響され、その結果、汚染液とともに異物が流動すると、異物が凹凸パターンに依存して偏在しやすくなる。そこで、酸を加えた液を用いて異物のゼータ電位を制御し、基板主面に異物が付着しやすくすることで、凹凸パターンに対する依存度の少ない分散傾向を実現できる。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記酸が塩酸である。塩酸を用いることで、異物のゼータ電位を制御しやすくなる。
この発明の一実施形態では、前記汚染液のpHが4以下である。これにより、異物のゼータ電位を、異物が基板主面に付着しやすくなる値に制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る異物除去処理評価方法を説明するための図である。この異物除去処理評価方法は、3枚の基板、すなわち第1基板W1、第2基板W2および第3基板W3を用いる。第1基板W1、第2基板W2および第3基板W3の主面には、共通のパターンが形成されている。すなわち、第1基板W1の主面の第1領域R1には第1凹凸パターンP1が形成されており、第2基板W2の主面の第2領域R2には第2凹凸パターンP2が形成されており、第3基板W3の主面の第3領域R3には第3凹凸パターンP3が形成されている。第1、第2および第3凹凸パターンP1〜P3は、実質的に同一のパターンである。
【0028】
このような第1〜第3凹凸パターンP1〜P3が形成された第1〜第3基板W1〜W3は、前洗浄工程(ステップS11,S12,S13)によって、それぞれの表面状態が初期化される。前洗浄工程の後、第1基板W1の主面が電子顕微鏡で撮影される。より詳細には、第1基板W1の主面の第1領域R1が認識され(ステップS41)、その第1領域R1が電子顕微鏡で撮影(ステップS51)されることにより、第1画像が取得される(ステップS61)。すなわち、電子顕微鏡が生成する第1画像の画像データが保存される。
【0029】
一方、第2基板W1および第3基板W3に対しては、前洗浄(ステップS12,S13)の後、それらの主面に異物を付着させる基板汚染工程(ステップS22,S23)が行われる。これにより、第2および第3基板W2,W3の主面に、ほぼ同等の状態で異物が付着する。
次いで、第2基板W2の主面が電子顕微鏡で撮影される。より詳細には、第2基板W2の主面の第2領域R2が認識され(ステップS42)、その第2領域R2が電子顕微鏡で撮影(ステップS52)されることにより、第2画像が取得される(ステップS62)。すなわち、電子顕微鏡が生成する第2画像の画像データが保存される。
【0030】
第3基板W3に対しては、基板汚染工程(ステップS23)後に、その主面の異物を除去するための異物除去処理、すなわち洗浄処理が実行される(ステップS33)。この洗浄処理が、この方法による評価対象の異物除去処理である。この洗浄処理の後に、第3基板W3の主面が電子顕微鏡で撮影される。より詳細には、第3基板W3の主面の第3領域R3が認識され(ステップS43)、その第3領域R3が電子顕微鏡で撮影(ステップS53)されることにより、第3画像が取得される(ステップS63)。すなわち、電子顕微鏡が生成する第3画像の画像データが保存される。
【0031】
こうして、第1画像、第2画像および第3画像が取得されると、これらの画像のデータを用いた演算処理によって、洗浄処理による異物除去率が算出される。第1画像、第2画像および第3画像を表す画像データは、各画素の輝度を多数の階調で表した多値データ(多階調データ)である。第1画像、第2画像および第3画像を表す多値画像データが、適切な二値化しきい値を適用することによって、それぞれ二値化され、それによって第1二値化画像、第2二値化画像および第3二値化画像が取得される(ステップS71,S72,S73)。すなわち、各画素の輝度を0または1に二値化した二値化データが生成される。
【0032】
第1、第2および第3二値化画像では、たとえば、基板主面上のパターン部分、具体的には凸パターン部分が白色に表れ(たとえば、二値データ「1」によって表される。)、凸パターンの存在しない部分、すなわち凹パターン部分は黒色に表れる(たとえば、二値データ「0」によって表される。)。むろん、これは一例であり、凸パターンが黒色に表れ、凹パターンが白色に表れる二値化画像が取得されてもよい。
【0033】
次に、第1二値化画像に基づき、第1領域R1中の第1凹凸パターンP1の凸部分に相当する画像部分、具体的には第1二値化画像中の白色領域の面積が第1面積A1として求められる(ステップS81)。同様に、第2二値化画像の白色部分の面積が第2面積A2として求められる(ステップS82)。さらに同様に、第3二値化画像中の白色部分の面積が第3面積A3として求められる(ステップS83)。第2二値化画像においては、第2領域R2中の第2凹凸パターンP2の凸パターン部分を構成する白色部分に加えて、第2基板W1の主面に付着した異物が画像中の白色部分を構成している。よって、第2面積A2は、第2領域R2中の凸パターン部分および異物の画像部分の総和の面積である。第3面積A3についても同様であり、第3面積A3中の第3凹凸パターンP3の凸パターン部分および異物が白色の画像部分を構成している。
【0034】
次いで、こうして求められた第1面積A1、第2面積A2および第3面積A3を用いて、異物除去率が算出される(ステップS9)。
具体的な異物除去率の算出式は、次式(1)の通りである。
異物除去率=1−{(A3/R−A1/R)/(A2/R−A1/R)}…(1)
式(1)において、Rは、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3の共通の面積、すなわち、第1、第2および第3画像に共通の面積である。第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3が同形同大の領域であり、それらの領域を電子顕微鏡により同倍率で撮影することにより、第1、第2および第3画像中における第1、第2および第3領域R1,R2,R3の面積が等しくなる。
【0035】
式(1)の右辺第2項において、A1/Rは、第1画像中における第1凹凸パターンP1の面積(より正確には凸パターン部分の面積)の割合を表す第1面積率である。同様に、A2/Rは、第2画像中における第2凹凸パターンP2の面積(より正確には凸パターン部分の面積)の割合を表す第2面積率であり、A3/Rは、第3画像中における第3凹凸パターンの面積(より正確には凸パターン部分の面積)の割合を表す第3面積率である。
【0036】
式(1)の右辺第2項の分母および分子の共通因子である1/Rをはらうことにより、次式(2)が得られる。
異物除去率=1−{(A3−A1)/(A2−A1)}…(2)
すなわち、等しい面積の第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3を電子顕微鏡により同倍率で撮影することにより、第1面積率A1/R、第2面積率A2/Rおよび第3面積率A3/Rを、それぞれ、第1面積A1、第2面積A2および第3面積A3で代替できる。
【0037】
式(2)において、第2項の分母は、第2面積A2から第1面積A1を差し引いた面積である。この面積の差分(A2−A1)は、第2面積A2から第2領域R2中の凸パターン部分の面積を差し引いた値であるから、基板汚染工程後の異物量、すなわち、初期異物量に相当している。一方、式(2)において、第2項の分子は、第3面積A3から第1面積A1を差し引いた面積であり、第3面積A3から第3領域R3中の凸パターン部分の面積を差し引いた値である。この値は、基板汚染工程および異物除去処理工程(洗浄工程)を経た基板主面上の異物量、すなわち、処理後異物量に相当している。
【0038】
式(1)は、次式(3)のように変形でき、さらに式(4)のように変形できる。
異物除去率=(A2/R−A3/R)/(A2/R−A1/R)}…(3)
異物除去率=(A2−A3)/(A2−A1)…(4)
式(4)の右辺の分子は、第2面積A2から第3面積A3を差し引いた面積である。第2面積A2は、第2凹凸パターンP2の凸パターン部分に対応する面積と初期異物量に対応する面積との和である。一方、第3面積A3は、第3凹凸パターンP3の凸パターン部分に対応する面積と処理後異物量に対応する面積との和である。したがって、第2面積A2から第3面積A3を差し引いた値は、初期異物量と処理後異物量との差に相当する。これは、異物除去処理によって除去された異物量、すなわち、除去異物量である。
【0039】
図2は、この実施形態に係る異物除去処理評価方法を実施するためのシステムの全体構成例を表わす概念図である。このシステムは、評価対象の洗浄処理を実行する基板洗浄装置1と、評価用サンプルとしての基板Wを作成するために基板汚染処理を実行する評価用サンプル製造装置2と、走査型電子顕微鏡3と、異物除去率演算装置4とを含む。異物除去率演算装置4は、たとえばコンピュータで構成することができる。基板洗浄装置1は、1枚ずつの基板Wに対して洗浄処理を実行する枚葉式の装置であってもよいし、複数枚の基板Wに対して一括して洗浄処理を実行するバッチ式の装置であってもよい。走査型電子顕微鏡3は、基板Wの主面を電子線で走査することにより、基板Wの主面を撮影し、それによって得られる電子顕微鏡写真を表わす画像データを出力する。この出力された画像データが異物除去率演算装置4に入力される。
【0040】
評価用サンプル製造装置2は、基板Wの表面に汚染物質を含む汚染溶液を塗布することによって、基板洗浄装置1の洗浄能力を評価するための評価用基板Wを1枚ずつ製造する枚葉式の装置である。評価用サンプル製造装置2は、この例では、処理空間を区画する箱型のチャンバ10と、チャンバ10内に配置されたスピンチャック11と、汚染溶液供給ユニット12と、リンス液供給ユニット13とを含む。
【0041】
スピンチャック11は、チャンバ10内で1枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線(鉛直軸線)15周りに基板Wを回転させる基板保持ユニットである。
汚染溶液供給ユニット12は、液体中に汚染物質を分散させた汚染溶液16をスピンチャック11に保持された基板Wの表面(主面)に供給する。より具体的には、汚染溶液供給ユニット12は、汚染溶液ノズル21と、汚染溶液ノズル21が先端部に取り付けられたノズルアーム22と、汚染溶液ノズル21に一端が接続された汚染溶液配管23と、汚染溶液配管23に介装された汚染溶液バルブ24と、ノズルアーム22に結合されたノズル移動ユニット25とを含む。ノズル移動ユニット25は、スピンチャック11に保持された基板Wの上面に沿って汚染溶液ノズル21を水平移動させ、それにより、汚染溶液の着液点を基板Wの主面上で走査させる。汚染溶液供給ユニット12は、さらに、汚染溶液16を貯留するタンク26を備えている。このタンク26に、汚染溶液配管23の他端が接続されている。タンク26には、汚染物質を分散させるための媒体としての液体(この実施形態では脱イオン水(DIW)を供給する液体供給配管27が接続されている。液体供給配管27の途中には、バルブ28が介装されており、タンク26への液体の供給を制御している。液体供給配管27からタンク26内に液体を供給する一方で、タンク26内に汚染物質が投入され、液体中に汚染物質が分散されることによって、汚染溶液16が調合される。必要に応じて、タンク26内には撹拌装置29が備えられ、液体中に汚染物質が均一に分散させられる。
【0042】
タンク26に供給される汚染物質は、パーティクルの粉末であってもよいし、金属汚染物質(たとえば硫酸銅)であってもよいし、有機汚染物質であってもよい。パーティクルの粉末としては、SiO
2の粉末、窒化ケイ素(SiN,Si
3N
4)の粉末、ポリスチレンラテックスの粉末、アルミニウムの粉末等を例示することができる。汚染物質の種類は、基板洗浄装置1による除去対象の汚染物質と同種のものが選択される。
【0043】
リンス液供給ユニット13は、リンス液ノズル31を含む。リンス液ノズル31には、リンス液配管32が接続されており、リンス液配管32にはリンス液バルブ33が介装されている。リンス液配管32には、たとえばDIW(脱イオン水)等のリンス液が供給される。リンス液ノズル31は、スピンチャック11に保持された基板Wの回転中心に向けてリンス液を供給する固定ノズルであってもよい。
【0044】
前述のとおり、この実施形態に係る異物除去処理評価方法を実行するために、主面に共通の凹凸パターンが形成された3枚の基板W1,W2,W3が準備され、それらの3枚の基板W1,W2,W3に対して必要に応じて前洗浄処理が実行される。第1基板W1は、評価用サンプル製造装置2による基板汚染工程も基板洗浄装置1による洗浄工程も経ることなく、その主面の第1領域が走査型電子顕微鏡3によって撮影される。一方、第2および第3基板W2,W3は、評価用サンプル製造装置2による基板汚染工程を経て、評価用サンプルとなる。こうして基板汚染工程を経た第2および第3基板W2,W3のうち、第2基板W2は、基板洗浄装置1による洗浄工程を経ることなく、走査型電子顕微鏡3によってその主面の第2領域が撮影される。そして、第3基板W3は、走査型電子顕微鏡3による撮影の前に、基板洗浄装置1による洗浄処理を受ける。その洗浄処理の後に、第3基板W3は、その主面の第3領域が走査型電子顕微鏡3によって撮影される。
【0045】
評価用サンプル製造装置2の動作を概説すれば、次のとおりである。
図示しない搬送ロボットによって、チャンバ10内に基板W(第2基板W2または第3基板W3)が搬入され、スピンチャック11に渡される。スピンチャック11は、その基板Wを保持し、回転軸線15周りに回転させる。一方、汚染溶液ノズル21がノズル移動ユニット25によってスピンチャック11に保持された基板Wの上方で水平移動する。その一方で、汚染溶液バルブ24が開かれることによって、タンク26から汚染溶液が汚染溶液ノズル21へと供給される。この汚染溶液は、汚染溶液ノズル21から基板Wの主面へと供給される。その着液点は、ノズル移動ユニット25による汚染溶液ノズル21の水平移動によって、基板W上を走査することになる。基板Wが回転されているので、基板Wの全面に汚染溶液が供給される。
【0046】
基板Wの主面の全域に汚染溶液が供給されると、汚染溶液バルブ24が閉じられ、ノズル移動ユニット25は汚染溶液ノズル21を退避位置へと退避させる。次いで、スピンチャック11が基板Wを高速回転させることにより、基板Wの主面が乾燥させられる。このとき、必要に応じて、基板Wの主面に向けて窒素ガス等の不活性ガスが供給されて、基板Wの主面の乾燥を促進してもよい。このような乾燥工程により、基板Wの主面に供給された汚染溶液中の液体が蒸発して、汚染物質が基板Wの主面に付着した状態となる。こうして、汚染物質が基板Wの主面に付着した後に、リンス液バルブ33が開かれて、基板Wの主面にリンス液が供給され、基板Wに対するリンス処理が実行される。そのリンス処理の後には、リンス液バルブ33が閉じられて、リンス液の供給が停止され、スピンチャック11による基板Wの高速回転によって、スピン乾燥処理が実行される。このリンス処理およびスピン乾燥処理によっては、付着した汚染物質が基板Wの主面から失われることはない。
【0047】
こうして、評価用サンプルとしての基板W(W2,W3)が作成され、その基板Wは、搬送ロボットによってチャンバ10の外へと排出される。
図3は、異物除去率演算装置の機能的な構成を説明するためのブロック図である。異物除去率演算装置4は、この実施形態では、コンピュータによって構成されており、CPU(中央処理ユニット)41、記憶装置42、入力装置43およびディスプレイ44を含む。記憶装置42は、ROMおよびRAMを含む。記憶装置42は、固体メモリ、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)等のいずれの形態であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。入力装置43は、キーボード、ポインティングデバイス等の入力用マンマシンインタフェースである。ディスプレイ44は、情報出力装置の一例であり、使用者に対して情報を提示するマンマシンインタフェースである。情報出力装置としては、ディスプレイ44に代えて、またはディスプレイ44に加えて、印刷装置や、他のコンピュータ等にデータを通信出力する通信装置が含まれていてもよい。
【0048】
記憶装置42には、プログラム47およびデータ48が格納される。記憶装置42に格納されるデータの例としては、前述の第1画像、第2画像および第3画像に対応する第1画像データD1、第2画像データD2および第3画像データD3、ならびに前述の第1二値化画像、第2二値化画像および第3二値化画像に対応する第1二値画像データBD1、第2二値画像データBD2および第3二値画像データBD3が含まれる。
【0049】
CPU41は、記憶装置42に格納されたプログラム47を実行する。それによって、異物除去率演算装置4を構成するコンピュータは、複数の機能処理部としての機能を実現する。複数の機能処理部は、画像データ入力部51、領域認識部52、二値化処理部53、白色部面積演算部54、および除去率算出部56を含む。
画像データ入力部51は、走査型電子顕微鏡3が出力する画像データを取り込む。領域認識部52は、走査型電子顕微鏡3が出力する画像データから、前記第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3を認識する。画像データ入力部51は、領域認識部52で認識された領域の画像データを走査型電子顕微鏡3から取り込んで、第1画像データD1、第2画像データD2または第3画像データD3として記憶装置42に格納する。
【0050】
領域認識部52は、第1基板W1の主面を撮像したときに走査型電子顕微鏡3が出力する画像中の予め定める領域を第1領域R1として設定し、かつ認識する。その認識された領域の画像データが画像データ入力部51によって第1画像データD1として抽出される。領域認識部52は、また、第2基板W2を撮影したときに走査型電子顕微鏡3が出力する画像データから、第1領域R1に相当する第2領域R2を画像認識する。その認識された領域の画像データが画像データ入力部51によって第2画像データD2として抽出される。領域認識部52は、さらに、第3基板W3が走査型電子顕微鏡3によって撮影されたときに走査型電子顕微鏡3が出力する画像データから、第1領域R1および第2領域R2に相当する第3領域R3の画像を認識する。その認識された領域の画像データが画像データ入力部51によって第3画像データD3として抽出される。
【0051】
二値化処理部53は、記憶装置42から、第1画像データD1、第2画像データD2および第3画像データD3を読み出し、それらを所定の二値化しきい値を用いて二値化処理して、第1二値画像データBD1、第2二値画像データBD2および第3二値画像データBD3を生成する。これらの二値画像データBD1,BD2,BD3は、記憶装置42に格納される。
【0052】
白色部面積演算部54は、記憶装置42から第1、第2および第3二値画像データBD1,BD2,BD3を読み出し、それらによって表される第1二値化画像、第2二値化画像および第3二値化画像のそれぞれの白色部の面積を求める。白色部の面積は、二値データ「1」の画素の総数で表されてもよい。第1二値化画像中の白色部の面積は第1面積A1を表す第1面積データとして記憶装置42に格納される。第2二値化画像中の白色部の面積は、第2面積A2を表わす第2面積データとして記憶装置42に格納される。第3二値化画像中の白色部の面積は、第3面積A3を表わす第3面積データとして記憶装置42に格納される。
【0053】
除去率算出部56は、記憶装置42から、第1面積データ、第2面積データおよび第3面積データを読み出し、それらを前述の式(1)〜(4)のいずれかに当てはめて、異物除去率を算出する。
図4Aおよび
図4Bは、基板の主面に対する異物付着処理(基板汚染工程)の特徴を説明するための図解的な断面図である。純水(脱イオン水)中にパーティクル粉末を分散させて汚染溶液16を作成し、この汚染溶液16を基板Wの主面に塗布したときの様子を
図4Aに示す。一方、薄い塩酸水溶液中にパーティクル粉末を分散させて汚染溶液16を作成し、この汚染溶液16を基板Wの主面に塗布したときの状態を
図4Bに示す。すなわち、
図4Bの場合には、
図4Aの場合の汚染溶液16に対して微量の塩酸が加えられている。
【0054】
基板Wの主面には凹凸パターンPが形成されているため、パーティクル60は、パターンPの間の溝内に入り込む。このとき、
図4Aに図解的に示すように、汚染溶液16を塗布した後の乾燥処理時に遠心力によってパーティクル60が偏在したり、乾燥しにくい部分に液が溜まって、パーティクル60が集中する場合がある。それによって、凹凸パターンP内で、パーティクル60が均一に分散しない。
【0055】
一方、塩酸を加えてpHを調整した汚染溶液16においては、パーティクル60のゼータ電位が制御されている。より具体的には、たとえば基板Wがシリコン基板である場合、そのゼータ電位は負極性であるのに対して、SiO
2からなるパーティクル60をpH4以下の純水中に分散させたときには、パーティクル60のゼータ電位は、基板Wのゼータ電位の極性とは反対の極性である正極性となる。それにより、パーティクル60は基板Wに電気的に吸引されるので、パーティクル60が基板Wの主面に付着し易くなる。それにより、乾燥処理の際にもパーティクル60が移動しにくくなるので、
図4Bに図解的に示すように、凹凸パターンP内におけるパーティクル60の偏在を回避することができる。
【0056】
図5Aは、pHを調整していない純水中にパーティクル粒子を分散させた汚染溶液を用いて作成した評価用サンプル基板の電子顕微鏡写真である。一方、
図5Bは、塩酸によってpHを4以下(より具体的には2以下)に調整した溶媒中にパーティクル粒子を分散させた汚染溶液を用いて作成した評価用サンプル基板の電子顕微鏡写真である。これらの比較から理解される通り、pHを調整、好ましくは4以下(より好ましくは2以下)に調整した溶媒を用いて汚染溶液を調整することにより、凹凸パターンPが形成された基板の主面にパーティクル60を均一に分散させて付着できることが理解される。
【0057】
凹凸パターンPの幅は40nm〜50nm程度、その間隔は100nm〜200nm程度である。この場合、パーティクル60の基板W上における付着密度(面積割合)が、10%〜40%程度であれば、凹凸パターンP内における異物除去性能の評価が可能である。
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、異物除去率の演算例について説明するための図である。
図6Aに示す第1画像は、基板汚染処理前の第1基板W1の主面の電子顕微鏡写真であり、
図6Bに示す第2画像は、基板汚染処理後の第2基板W2の主面の電子顕微鏡写真であり、
図6Cに示す第3画像は、基板洗浄処理後の第3基板W3の主面の電子顕微鏡写真である。
【0058】
図6Aの第1画像から理解されるとおり、基板W(W1,W2,W3)の主面に形成された凹凸パターンP(P1〜P3)の凸パターン部分は、第1画像を二値化した二値化画像中において白色部分として表われる。
図6Bおよび
図6Cの第2画像および第3画像から理解されるとおり、基板W(W1,W2,W3)の主面に付着したパーティクル60もまた、二値化画像中において白色部分として表われる。したがって、第2画像および第3画像からそれぞれ得られる二値化画像中には、凹凸パターンPの凸パターン部分およびパーティクル60に相当する部分が白色部分として表れる。
【0059】
この例では、
図6Aの第1画像から得られる二値化画像中の白色部分の面積率(A1/R)は、たとえば、32%である。また、
図6Bの第2画像から得られる二値化画像中の白色部分の面積率(A2/R)は、たとえば、44%である。さらに、
図6Cの第3画像から得られる二値化画像中の白色部分の面積率(A3/R)は、たとえば36%である。これらの面積率を上記式(1)または式(3)に代入することにより、凹凸パターンPに起因する白色画像部分をキャンセルすることができ、洗浄処理の前後における異物除去性能、すなわち異物除去率を求めることができる。上記の例の場合の異物除去率は、67%である。
【0060】
このように、この実施形態では、第1画像(第1画像データD1)、第2画像(第2画像データD2)および第3画像(第3画像データD3)は、互いに同等な第1凹凸パターンP1、第2凹凸パターンP2および第3凹凸パターンP3がそれぞれ形成された第1、第2および第3基板W1,W2,W3上の第1、第2および第3領域R1,R2,R3を走査型電子顕微鏡3で撮影して取得される。第1画像(第1画像データD1)は、基板汚染工程が施されていない第1基板W1の主面を撮影して得られる画像である。第2画像(第2画像データD2)は、基板汚染工程が施された第2基板W2の主面を撮影して得られる画像である。そして、第3画像(第3画像データD3)は、基板汚染工程を施し、かつその後に異物除去処理を施した第3基板W3の主面を撮影して得られる画像である。したがって、第1画像および第2画像の差は、基板汚染工程によって異物が付着させられた結果に相当する。第2画像および第3画像の差は、異物除去処理によって異物が除去された処理結果に相当する。第1画像と第3画像との差は、基板汚染工程および異物除去処理工程の両方を経た全体の処理結果に相当する。
【0061】
これらの画像間の相違を評価するために、第1画像、第2画像および第3画像がそれぞれ二値化され、第1、第2および第3二値化画像(第1、第2および第3二値画像データBD1,BD2,BD3)が取得される。さらに、第1二値画像データBD1に基づき、第1領域R1中の第1凹凸パターンP1に相当する画像部分(走査型顕微鏡写真画像を二値化するときに異物(パーティクル)と同じ値に二値化される画像の部分)の面積が第1面積A1として取得される。また、第2二値画像データBD2に基づき、第2領域R2中の第2凹凸パターンP2および異物(パーティクル)の画像部分の面積の総和に相当する第2面積A2が取得される。そして、第3二値画像データBD3に基づき、第3領域R3中の第3凹凸パターンP3および異物(パーティクル)の画像部分の面積総和に相当する第3面積A3が取得される。
【0062】
この実施形態では、第1画像、第2画像および第3画像は、同倍率で基板W1,W2,W3の主面を撮影して得られた画像である。したがって、第1面積A1は、第1領域R1中の第1凹凸パターンP1に相当する画像部分の面積の割合、すなわち、第1面積率として取り扱うことができる。同様に、第2面積A2は、第2領域R2中の第2凹凸パターンP2および異物(パーティクル)に相当する画像部分の総面積の割合、すなわち、第2面積率として扱うことができる。さらに同様に、第3面積A3は、第3領域R3中の第3凹凸パターンP3および異物(パーティクル)に相当する画像部分の総面積の割合、すなわち、第3面積率として扱うことができる。
【0063】
第1面積A1(第1面積率)と第2面積A2(第2面積率)との差は、基板汚染工程で付着させられた異物の総量(総数)に相当する。また、第2面積A2(第2面積率)と第3面積A3(第3面積率)との差は、異物除去処理工程で除去された異物の総量(総数)に相当する。第1面積A1(第1面積率)と第3面積A3(第3面積率)との差は、基板汚染工程および異物除去処理工程の前後における異物の総量、すなわち総数の差に相当する。したがって、第1面積A1(第1面積率)、第2面積A2(第2面積率)および第3面積A3(第3面積率)を用いることにより、基板Wの主面上の凹凸パターンPの影響を排除しながら、異物除去率を算出することができる。
【0064】
この方法は、走査型電子顕微鏡3による基板Wの主面の撮影と、その撮影によって得られた画像データの処理および解析によって、基板Wの主面上における異物の付着状況を算出する。したがって、パーティクルカウンタを用いる場合のようなパーティクル付着数の制限がなく、かつ表面欠陥検査装置を用いる場合のような計測限界の問題もない。そのため、基板Wの主面に異物を高密度に付着させて異物除去処理を評価できるので、主面に凹凸パターンPを有する基板Wに対する異物除去処理の評価に適用可能な実用的な方法を提供することができる。
【0065】
また、この実施形態では、第1画像を取得するための第1領域R1、第2画像を取得するための第2領域R2、および第3画像を取得するための第3領域R3が、異なる基板W1,W2,W3の主面上に設定されている。走査型電子顕微鏡3を用いた撮影では、基板Wの主面が電子線に曝されるから、基板Wの主面のパターンが電子線によるダメージを受ける。したがって、第1、第2および第3領域R1,R2,R3を、同じパターンが形成された別の基板W1,W2,W3の主面上の領域とすることにより、電子線によるダメージに起因する誤差を排除できる。それにより、適正に異物除去処理の品質を評価できる。
【0066】
図7は、この発明の他の実施形態に係る異物除去処理評価方法を説明するための図である。
図7において、
図1に示された各ステップに対応するステップは同一参照符号で示す。
この実施形態では、第1基板W1上に複数の第1領域R11〜R14が設定され、それらの領域には、それぞれ、第1凹凸パターンP11〜P14が形成されている。第2基板W2上には、複数の第1領域R11〜R14にそれぞれ対応する複数の第2領域R21〜R24が存在し、それらの領域には、第1凹凸パターンP11〜P14とそれぞれ同等な第2凹凸パターンP21〜P24が形成されている。第3基板W3上にも、複数の第1領域R11〜R14にそれぞれ対応する複数の第3領域R31〜R34が存在し、それらの領域には、第1凹凸パターンP11〜P14とそれぞれ同等な第3凹凸パターンP31〜P34が形成されている。複数の第1領域R11〜R14は、複数の第2領域R21〜R24および複数の第3領域R31〜R34は、それぞれ対応するもの同士が同形同大の領域であることが好ましい。
【0067】
複数の第1領域R11〜R14は、同形同大の領域であることが好ましいが、形状および大きさのいずれかまたは両方が異なる領域であってもよい。複数の第2領域R21〜R24および複数の第3領域R31〜R34についても同様である。第1凹凸パターンP11〜P14は、同等のパターンであってもよいし、異なるパターンであってもよいが、プロセスルールが同等であることが好ましい。第2凹凸パターンP21〜P24および第3凹凸パターンP31〜P34についても同様である。
【0068】
この実施形態では、複数の第1領域R11〜R14にそれぞれ対応する複数の第1画像が取得され(ステップS61)、複数の第2領域R21〜R24にそれぞれ対応する複数の第2画像が取得され(ステップS62)、複数の第3領域R31〜R34にそれぞれ対応する複数の第3画像が取得される(ステップS63)。さらに、複数の第1画像にそれぞれ対応する複数の第1二値画像データが生成され(ステップS71)、複数の第2画像にそれぞれ対応する複数の第2二値画像データが生成され(ステップS72)、複数の第3画像にそれぞれ対応する複数の第3二値画像データが生成される(ステップS73)。
【0069】
そして、複数の第1二値画像データに基づいて、複数の第1二値化画像中の白色領域の面積がそれぞれ求められ(ステップS81)、それらの平均値が求められて、その平均値が第1面積A1とされる(ステップS101)。同様に、複数の第2二値画像データに基づいて、複数の第2二値化画像中の白色領域の面積がそれぞれ求められ(ステップS82)、それらの平均値が求められて、その平均値が第2面積A2とされる(ステップS102)。さらに、複数の第3二値画像データに基づいて、複数の第3二値化画像中の白色領域の面積がそれぞれ求められ(ステップS83)、それらの平均値が求められて、その平均値が第3面積A3とされる(ステップS103)。
【0070】
こうして求められた第1、第2および第3面積A1,A2,A3を用い、上記式(1)〜(4)のいずれかにより、異物除去率が求められる。
平均値演算のために、異物除去率演算装置4のCPU41(
図3参照)は、プログラム47を実行することによって、平均面積演算部55としての機能を実現する。平均値演算は、演算対象の複数の面積の総和を求める演算で代替してもよい。
【0071】
走査型電子顕微鏡3による第1基板W1、第2基板W2および第3基板W3の撮影が同じ倍率で行われるならば、第1面積A1は、複数の第1領域R11〜R14のそれぞれにおける第1凹凸パターンP11〜P14に相当する画像部分の面積の割合の平均値、すなわち、面積率の平均値(第1面積率)に対応(比例)する。同様に、第2面積A2は、複数の第2領域R21〜R24のそれぞれにおける第2凹凸パターンP21〜P24および異物に相当する画像部分の面積の割合の平均値、すなわち、面積率の平均値(第2面積率)に対応(比例)する。同様に、第3面積A3は、複数の第3領域R31〜R34のそれぞれにおける第3凹凸パターンP31〜P34および異物に相当する画像部分の面積の割合の平均値、すなわち、面積率の平均値(第3面積率)に対応(比例)する。
【0072】
この実施形態によれば、各複数の第1領域R11〜R14、第2領域R21〜R24および第3領域R31〜R34が設定され、対応する各複数の第1画像、第2画像および第3画像に基づく平均値演算に基づいて、異物除去率が求められる。それにより、異物除去処理の評価の精度を高めることができる。より具体的には、基板Wの主面に分散して配置された複数の領域について異物除去性能を総合評価することができるので、一層、妥当な評価が可能となる。
【0073】
以上、この発明の一実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、前述の実施形態では、同等のパターンが形成された3枚の基板W1,W2,W3の主面を走査型電子顕微鏡3で撮影している。しかし、基板洗浄装置1の異物除去性能を複数回に渡って評価する場合には、2回目以降の評価においては、第1基板Wの主面の撮影は省くことができる。1回目の評価において、第1基板W1に対応する第1画像、第1二値化画像、第1面積等の情報を取得済みであるので、その情報を再利用できるからである。同様のパターンが形成された基板を用いて同様の手法で評価を行う限りにおいて、別の装置による異物除去性能の評価に対しても、第1基板W1に対応して取得済みの情報を再利用することができる。
【0074】
また、前述の実施形態では、第1基板W1の主面を撮影して第1画像を取得し、第2基板W2の主面を撮影して第2画像を取得しているが、走査型電子顕微鏡3による撮影時の電子線の走査によるパターンダメージの影響を許容できるならば、同じ基板の主面を基板汚染工程の前後にそれぞれ撮影して第1画像および第2画像を取得してもよい。同様に、同じ基板の主面を洗浄処理工程の前後にそれぞれ撮影して第2画像および第3画像を取得してもよい。
【0075】
第1領域、第2領域および第3領域に形成される同等の凹凸パターンは、同一パターンであることが好ましいが、パターン部分の面積率が等しい異なるパターンであってもよい。また、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3は必ずしも面積が等しい領域でなくてもよい。この場合には、上記の式(1)および式(3)をそれぞれ変形した次式(1a)または(3a)を用いればよい。ただし、式(1a)および(3a)において、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3の面積をそれぞれの符号で表してある。
【0076】
異物除去率=1−{(A3/R3−A1/R1)/(A2/R2−A1/R1)}…(1a)
異物除去率=(A2/R2−A3/R3)/(A2/R2−A1/R1)}…(3a)
第1領域、第2領域および第3領域の設定または認識は、走査型電子顕微鏡3による撮影時に行われてもよいが、走査型電子顕微鏡3が出力する画像データを記憶装置42に蓄積し、その蓄積された画像データが表す画像中の一部の領域を第1領域、第2領域または第3領域として設定または認識して、第1画像、第2画像および第3画像を抽出してもよい。二値化後の画像データに基づいて、第1領域、第2領域および第3領域の設定または認識が行われてもよい。
【0077】
また、前述の実施形態では、第1画像、第2画像および第3画像を二値化した二値化画像が生成されているが、二値化画像を生成することなく、第1面積(第1面積率)、第2面積(第2面積率)および第3面積(第3面積率)を求めてもよい。たとえば、第1画像データD1において、所定のしきい値以上の輝度を有する画素の数を計数し、その計数結果を第1面積A1に対応させてもよい。同様にして、第2画像データD2および第3画像データに基づいて、第2面積A2および第3面積A3にそれぞれ対応する値を得ることができる。
【0078】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。