特許第6827894号(P6827894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827894
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】粉砕機及びその運用方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 15/04 20060101AFI20210128BHJP
   B02C 23/04 20060101ALI20210128BHJP
   F23K 3/02 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B02C15/04
   B02C23/04
   F23K3/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-162572(P2017-162572)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-37940(P2019-37940A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 光輝
(72)【発明者】
【氏名】金本 浩明
(72)【発明者】
【氏名】竹野 豊
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓樹
(72)【発明者】
【氏名】澤 昇吾
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特表平2−501282(JP,A)
【文献】 特開2010−242999(JP,A)
【文献】 特開2013−141584(JP,A)
【文献】 特開2007−117903(JP,A)
【文献】 特開2009−189909(JP,A)
【文献】 特開2001−134016(JP,A)
【文献】 米国特許第9421551(US,B2)
【文献】 韓国登録特許第10−1355691(KR,B1)
【文献】 特開2016−203076(JP,A)
【文献】 特開昭51−9104(JP,A)
【文献】 特開昭63−309277(JP,A)
【文献】 米国特許第4321096(US,A)
【文献】 特開2002−13714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00−25/00
F23K 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの天井部に接続され、前記ハウジングの内部に燃料を供給する燃料供給管と、
前記燃料供給管から供給された前記燃料が上面に導かれるとともに中心軸線周りに回転する回転テーブル、及び、前記回転テーブルに対向して配置されて転動し、前記回転テーブルの前記上面との間で前記燃料を粉砕し微粉砕物を生成する粉砕ローラとを有する粉砕部と、
前記ハウジングの下部に接続され、前記ハウジングの内部に空気を供給する空気供給管と、
前記ハウジングの上部に設置され、前記空気供給管から導かれた空気によって巻き上げられた前記微粉砕物を分級する分級部と、
前記ハウジングの前記天井部に接続され、前記分級部にて分級された前記微粉砕物を外部へと導く微粉砕物送出管と、
前記粉砕部の近傍に設置され、前記ハウジングの内部の圧力を検知する第1圧力検知部と、
前記分級部の近傍に設置され、前記ハウジングの内部の圧力を検知する第2圧力検知部と、
前記ハウジングの側面において前記粉砕部の近傍に設置され、前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記粉砕部に対して消火剤を噴射する第1消火剤噴射部と、
前記分級部の近傍に設置され、前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記分級部に対して消火剤を噴射する第2消火剤噴射部と、
前記ハウジングの内部において、前記粉砕ローラと前記分級部の間に延設された筒状部材である壁材と、
を備え
前記壁材と前記ハウジングの間において、前記微粉砕物が前記空気と共に巻き上げられる環状流路が形成され、
前記壁材よりも内部の空間に対して、前記第1消火剤噴射部が前記消火剤を噴射する粉砕機。
【請求項2】
前記燃料供給管の上流側に設けられ、前記燃料供給管に前記燃料を供給する供給機と、
前記供給機に設置され、前記供給機の内部の圧力を検知する第3圧力検知部と、
前記供給機に設置され、前記第3圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記供給機に対して消火剤を噴射する第3消火剤噴射部と、
を更に備える請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
前記燃料供給管に設置され、前記燃料を所定量毎に供給するロータリーフィーダと、
前記燃料供給管に設置された前記ロータリーフィーダの前流側及び/又は後流側に設置され、前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記燃料供給管内に消火剤を噴射する第4消火剤噴射部と、
を更に備える請求項1又は2に記載の粉砕機。
【請求項4】
前記微粉砕物送出管に設置され、前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記微粉砕物送出管に対して消火剤を噴射する第5消火剤噴射部を更に備える請求項1から3のいずれか1項に記載の粉砕機。
【請求項5】
複数の前記第1圧力検知部と複数の前記第2圧力検知部とが前記ハウジングの内部の上下に千鳥状に配置され、
複数の前記第1消火剤噴射部と複数の前記第2消火剤噴射部とが前記ハウジングの内部の上下に千鳥状に配置されている請求項1からのいずれか1項に記載の粉砕機。
【請求項6】
ハウジングと、
前記ハウジングの天井部に接続され、前記ハウジングの内部に燃料を供給する燃料供給管と、
前記燃料供給管から供給された前記燃料が上面に導かれるとともに中心軸線周りに回転する回転テーブル、及び、前記回転テーブルに対向して配置されて転動し、前記回転テーブルの前記上面との間で前記燃料を粉砕し微粉砕物を生成する粉砕ローラとを有する粉砕部と、
前記ハウジングの下部に接続され、前記ハウジングの内部に空気を供給する空気供給管と、
前記ハウジングの上部に設置され、前記空気供給管から導かれた空気によって巻き上げられた前記微粉砕物を分級する分級部と、
前記ハウジングの前記天井部に接続され、前記分級部にて分級された前記微粉砕物を外部へと導く微粉砕物送出管と、
前記ハウジングの内部において、前記粉砕ローラと前記分級部の間に延設された筒状部材である壁材と、
を備え
前記壁材と前記ハウジングの間において、前記微粉砕物が前記空気と共に巻き上げられる環状流路が形成された粉砕機の運用方法であって、
前記粉砕部の近傍に設置された第1圧力検知部が、前記ハウジングの内部の圧力を検知し、
前記分級部の近傍に設置された第2圧力検知部が、前記ハウジングの内部の圧力を検知し、
前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記ハウジングの側面において前記粉砕部の近傍に設置された第1消火剤噴射部が、前記粉砕部に対して消火剤を噴射し、
前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記分級部の近傍に設置された第2消火剤噴射部が、前記分級部に対して消火剤を噴射し、
前記壁材よりも内部の空間に対して、前記第1消火剤噴射部が前記消火剤を噴射する粉砕機の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備を備えた粉砕機及びその運用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備などで使用される石炭やバイオマス等の固体燃料は、ミル(粉砕機)で微粉状に粉砕されてボイラ等の燃焼装置へ供給される。ミルは、給炭管(又はバイオマス供給管)から粉砕回転テーブルへ投入された石炭やバイオマス等の固体燃料を、粉砕回転テーブルと粉砕ローラの間で噛み砕くことで粉砕する。そして、粉砕回転テーブルの外周から供給される搬送ガスによって、粉砕されて微粉状となった燃料が、吹き上げられて、分級器で粒径サイズに応じてふるい分けられる。粒径サイズが小さい燃料は、燃焼装置へ搬送される。
【0003】
バイオマス燃料は、化石燃料を使用するボイラなどの二酸化炭素排出量の削減対策の1つとして注目されている。バイオマス燃料は、ペレット状でミルに供給されて粉砕されるが、例えば静電気により着火し易いため急速燃焼を引き起こす可能性が高い。そのため、バイオマスが燃料とされる場合、石炭(微粉炭)よりも急速燃焼が発生しやすいため、安全管理の強化が必要となる。
【0004】
特許文献1には、竪型ローラミルに圧力センサを配置し、圧力センサが急速燃焼の発生を検知すると、直ちに消火剤を噴出して急速燃焼が大事に至らないようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−242999号公報
【特許文献2】米国特許第9421551号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1には、急速燃焼の発生を圧力センサによって検知して消火剤を噴出するという開示はあるものの、急速燃焼の抑制を考慮した消火剤噴射器の設置位置や圧力センサの設置位置に関する記載がない。また、特許文献2についても、複数の消火剤噴射器の設置に関する開示があるものの、消火系設備相互の動作の関連性や、操作手順、制御の要領といったミルの運用条件に係わる点について、具体的に開示されていない。
【0007】
急速燃焼は、火炎が急速に伝播するため、消火剤噴射器を多数設置することで、急速燃焼の抑制効果が高まることが推測されるが、コストアップとなる。このため、消火剤噴射器の設置数と消火剤の量を適正化して、極力低減しておくことが望まれる。
【0008】
ただし、消火剤噴射器が消火剤を噴射する時間は、例えば数十ミリ秒と短時間であり、消火剤の噴射可能範囲も限られているため、急速燃焼の発生場所のみに消火剤を噴射するだけでは、伝播していく火炎を抑制することが困難である。消火剤噴射器から火炎までの距離が遠すぎる場合、火炎が大きく発達してしまい、多量の消火剤が必要となる。したがって、急速燃焼の発生場所だけでなく、火炎が伝播しやすい場所に急速燃焼の防止対策を予め施しておく必要がある。
【0009】
このように、急速燃焼が発生したこと又は急速燃焼の発生直前であることを検知して適正な位置とタイミングで消火剤を噴射しなければ、急速燃焼を抑制できず、ミルの各機器に損傷が発生するおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、急速燃焼が発生したこと又は急速燃焼の発生直前であることを検知して適正な位置とタイミングで消火剤を噴射することが可能な粉砕機及びその運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の粉砕機及びその運用方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1態様に係る粉砕機は、ハウジングと、前記ハウジングの天井部に接続され、前記ハウジングの内部に燃料を供給する燃料供給管と、前記燃料供給管から供給された前記燃料が上面に導かれるとともに中心軸線周りに回転する回転テーブル、及び、前記回転テーブルに対向して配置されて転動し、前記回転テーブルの前記上面との間で前記燃料を粉砕し微粉砕物を生成する粉砕ローラとを有する粉砕部と、前記ハウジングの下部に接続され、前記ハウジングの内部に空気を供給する空気供給管と、前記ハウジングの上部に設置され、前記空気供給管から導かれた空気によって巻き上げられた前記微粉砕物を分級する分級部と、前記ハウジングの前記天井部に接続され、前記分級部にて分級された前記微粉砕物を外部へと導く微粉砕物送出管と、前記粉砕部の近傍に設置され、前記ハウジングの内部の圧力を検知する第1圧力検知部と、前記分級部の近傍に設置され、前記ハウジングの内部の圧力を検知する第2圧力検知部と、前記粉砕部の近傍に設置され、前記第1圧力検知部又は第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記粉砕部に対して消火剤を噴射する第1消火剤噴射部と、前記分級部の近傍に設置され、第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記分級部に対して消火剤を噴射する第2消火剤噴射部とを備える。
【0012】
この構成によれば、急速燃焼の発火起因源となる可能性のある粉砕部の近傍と分級部の近傍に、圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部が設けられ、発火起因源及び急速燃焼の伝播するおそれがある粉砕部の近傍と分級部の近傍に消火剤噴射部が設けられる。燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、粉砕部と分級部に対して消火剤が噴射されるため、ミルにおける急速燃焼の発生や火炎伝播を抑制又は防止できる。
【0013】
上記第1態様において、前記燃料供給管の上流側に設けられ、前記燃料供給管に前記燃料を供給する供給機と、前記供給機に設置され、前記供給機の内部の圧力を検知する第3圧力検知部と、前記供給機に設置され、前記第3圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記供給機に対して消火剤を噴射する第3消火剤噴射部とを更に備えてもよい。
【0014】
この構成によれば、急速燃焼の発火起因源となり、急速燃焼の伝播するおそれがある供給機に、圧力を検知する第3圧力検知部が設けられ、発火起因源及び粉砕部の近傍と分級部の近傍に消火剤噴射部が設けられる。燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、供給機に対して消火剤が噴射されるため、ミルにおける急速燃焼の発生や火炎伝播を抑制又は防止できる。
【0015】
上記第1態様において、前記燃料供給管に設置され、前記燃料を所定量毎に供給するロータリーフィーダと、前記燃料供給管に設置された前記ロータリーフィーダの前流側及び/又は後流側に設置され、前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記燃料供給管内に消火剤を噴射する第4消火剤噴射部とを更に備えてもよい。
【0016】
この構成によれば、急速燃焼の伝播するおそれがある燃料供給管に設置されたロータリーフィーダの前流側及び/又は後流側に消火剤噴射部が設けられる。燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、燃料供給管内に消火剤が噴射されるため、ミルにおける急速燃焼による火炎伝播を抑制又は防止できる。
【0017】
上記第1態様において、前記微粉砕物送出管に設置され、前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記微粉砕物送出管に対して消火剤を噴射する第5消火剤噴射部を更に備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、急速燃焼の伝播するおそれがある微粉砕物送出管に消火剤噴射部が設けられる。燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、微粉砕物送出管に対して消火剤が噴射されるため、ミルにおける急速燃焼による火炎伝播を抑制又は防止できる。
【0019】
上記第1態様において、前記ハウジングの内部において、前記粉砕ローラと前記分級部の間に延設された筒状部材である壁材を更に備えて、前記壁材と前記ハウジングの間において、前記微粉砕物が前記空気と共に巻き上げられる環状流路が形成され、前記壁材よりも内部の空間に対して、前記第1消火剤噴射部が前記消火剤を噴射してもよい。
【0020】
この構成によれば、ハウジングの内部において粉砕ローラと回転分級機の間に延設された壁材と、ハウジングの間において、微粉砕物が空気と共に巻き上げられる環状流路が形成された場合において、壁材よりも内部の空間に対して消火剤が噴射されるため、ミルにおける急速燃焼の発生や火炎伝播を抑制又は防止できる。
【0021】
上記第1態様において、複数の前記第1圧力検知部と複数の前記第2圧力検知部とが前記ハウジングの内部の上下に千鳥状に配置され、複数の前記第1消火剤噴射部と複数の前記第2消火剤噴射部とが前記ハウジングの内部の上下に千鳥状に配置されてもよい。
【0022】
本発明の第2態様に係る粉砕機の運用方法は、ハウジングと、前記ハウジングの天井部に接続され、前記ハウジングの内部に燃料を供給する燃料供給管と、前記燃料供給管から供給された前記燃料が上面に導かれるとともに中心軸線周りに回転する回転テーブル、及び、前記回転テーブルに対向して配置されて転動し、前記回転テーブルの前記上面との間で前記燃料を粉砕し微粉砕物を生成する粉砕ローラとを有する粉砕部と、前記ハウジングの下部に接続され、前記ハウジングの内部に空気を供給する空気供給管と、前記ハウジングの上部に設置され、前記空気供給管から導かれた空気によって巻き上げられた前記微粉砕物を分級する分級部と、前記ハウジングの前記天井部に接続され、前記分級部にて分級された前記微粉砕物を外部へと導く微粉砕物送出管とを備えた粉砕機の運用方法であって、前記粉砕部の近傍に設置された第1圧力検知部が、前記ハウジングの内部の圧力を検知し、前記分級部の近傍に設置された第2圧力検知部が、前記ハウジングの内部の圧力を検知し、前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記粉砕部の近傍に設置された第1消火剤噴射部が、前記粉砕部に対して消火剤を噴射し、前記第1圧力検知部又は前記第2圧力検知部で検出された圧力に基づいて、前記燃料の急速燃焼が発生した又は急速燃焼の発生直前であると判断されたとき、前記分級部の近傍に設置された第2消火剤噴射部が、前記分級部に対して消火剤を噴射する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、急速燃焼が発生したこと又は急速燃焼の発生直前であることを検知して適正な位置とタイミングで消火剤を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るミルを備えたボイラ設備を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るミルを示す縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るミルを示す横断面図であり、図2のIII−III線で切断した矢視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るミルを示す横断面図であり、図2のIV−IV線で切断した矢視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るミルのハウジング、消火剤噴射器及び感圧センサを示す部分拡大横断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るミルのハウジング及び感圧センサを示す部分拡大縦断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るミルの第1変形例を示す縦断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るミルの第1変形例を示す横断面図であり、図7のVIII−VIII線で切断した矢視図である。
図9】本発明の一実施形態に係るミルの第2変形例を示す横断面図であり、図2のIII−III線で切断した矢視図である。
図10】本発明の一実施形態に係るミルの第2変形例を示す横断面図であり、図2のIV−IV線で切断した矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係るボイラ設備10及びボイラ設備10に適用されるミル1について、図1を用いて説明する。図1には、本実施形態に係るミル1を備えたボイラ設備10が示されている。
【0026】
ボイラ設備10は、ボイラ本体3に供給するバイオマス燃料を粉砕するミル1を備えている。ミル1は、バイオマス燃料のみを粉砕する形式であってもよいし、石炭と共にバイオマス燃料を粉砕する形式であってもよい。ここで、バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類等の木質系バイオマス燃料、廃棄物、脱水汚泥、タイヤ等の非木質系バイオマス燃料などである。また、バイオマス燃料は、これらを原料としたペレット状やチップ状のリサイクル燃料などを含み、ここに提示したものに限定されない。
【0027】
ミル1には、サイロ5に貯蔵されたバイオマス燃料等が、バンカ7、供給機6及び給炭管4を介して導かれる。ミル1には、センターシュート33が接続されており、バイオマス燃料がセンターシュート33を介してミル1の内部に供給される。給炭管4及びセンターシュート33は、本発明に係る燃料供給管を構成する。なお、本実施形態では、給炭管4の内部は粉砕前のバイオマス燃料が流通し、粉砕前燃料供給管と呼ぶこともできるが、従来の石炭用ミルにならって給炭管4と呼ぶ。
【0028】
ミル1には、1次空気ダクト(空気供給管)13が接続されている。1次空気ダクト13は、1次空気ファン15に接続されており、空気予熱器21によって予熱された空気と、空気予熱器21をバイパスした空気とが混合された空気が導かれる。また、1次空気ダクト13には、排ガス再循環ファン17を介して電気集塵機23を通過した排ガスの一部が導かれる。したがって、ミル1には、1次空気ダクト13を介して空気予熱器21によって温度調整され、かつ、排ガスによって酸素濃度が調整された混合気が導かれる。
以下、本明細書では、この混合気を1次空気ダクト(空気供給管)13を通じて供給される空気として表現するが、実態は上述のような気体であり、用途は、ミル1で粉砕された燃料を搬送する搬送用気体である。
【0029】
1次空気ダクト13におけるミル1のハウジング31との接続開口部は、ミル1の内部に向けて下向きに傾斜している。これにより、ミル1内部の微粉砕物が1次空気ダクト13内に堆積しづらい。
【0030】
ミル1には、送炭管(微粉砕物送出管)9が接続されており、ミル1で粉砕された粒子状の微粉砕物が送炭管9を介してバーナ11へと導かれる。
【0031】
ボイラ本体3の火炉にて微粉砕物が燃焼されて、バーナ11によって火炎が形成され、図示しない熱交換器によって蒸気が生成される。生成された蒸気は、例えば蒸気タービン(図示せず。)に導かれて、蒸気タービンで発電が行われる。
【0032】
ボイラ本体3から排出された排ガスは、脱硝装置19によって脱硝された後、空気予熱器21にて1次空気ファン15から導かれた空気を加熱する。その後、排ガスは、電気集塵機23に導かれ、電気集塵機23で脱塵された後に誘引ファン25を介して脱硫装置27へ導かれる。誘引ファン25の上流側で、一部の排ガスが抽気され、抽気された排ガスは、排ガス再循環ファン17を介して1次空気ダクト13へと導かれる。
なお、排ガスを抽気する位置は必ずしも図1に示した例に限定されるものではなく、ボイラ本体3から煙突29に至る排ガス系統のいずれかから抽気すればよい。
【0033】
誘引ファン25から下流側へ導かれた排ガスは、脱硫装置27にて脱硫された後に煙突29へ導かれて大気へと放出される。
【0034】
図2には、図1に示したミル1の詳細が示されている。図2は、原料(燃料)であるバイオマス燃料を微粉砕するミル(粉砕装置)1、並びに、ミル1の原料供給系及び微粉砕物搬送系を含むミル設備を示している。ミル設備には、急速燃焼を抑制する消火系設備が設けられている。ミル1は、下方部の粉砕部1A、及び、上方部の分級部1Bに大きく分けられる。
【0035】
ミル1は、竪型ミルとされており、固形物であるバイオマス燃料、例えばペレット状の木質系バイオマス燃料を粉砕する。
【0036】
ミル1のハウジング31は、竪型の円筒中空形状をなし、天井部32の中央部にセンターシュート33が取り付けられている。供給機6とセンターシュート33の間には、給炭管4が接続される。センターシュート33は、給炭管4と接続され、バンカ7から導かれたバイオマス燃料及び/又は石炭をハウジング31内に供給する。センターシュート33は、ハウジング31の中心位置に上下方向(鉛直方向)に沿って配置され、下端部がハウジング31内まで延設されている。
【0037】
ハウジング31の下部には架台34が設置され、この架台34上に粉砕回転テーブル35が回転自在に配置されている。粉砕回転テーブル35の中央に対してセンターシュート33の下端部が対向するように配置されている。センターシュート33は、バイオマス燃料及び/又は石炭を上方から下方に向けて供給する。
【0038】
給炭管4には、ロータリーフィーダ43が装着されていて、ロータリーフィーダ43は、定量のバイオマス燃料を切り出す、すなわち、バイオマス燃料を所定量ごとに供給する。
【0039】
粉砕回転テーブル35は、上下方向(鉛直方向)の中心軸線周りに回転自在であると共に、駆動装置(図示せず。)によって駆動される。粉砕回転テーブル35の上面は、中心部が高く、中心部から外側に向けて低くなるような傾斜形状をなし、外周部が内側から外側へ上方に湾曲した形状をなしている。
【0040】
粉砕回転テーブル35の上方には、粉砕回転テーブル35に対向して複数、例えば3台の粉砕ローラ36が配置されている。各粉砕ローラ36は、粉砕回転テーブル35の外周部の上方に、周方向に均等間隔(3台の粉砕ローラ36の場合、120°間隔)で配置されている。なお、図2では、説明上、2台の粉砕ローラ36を対称に図示しているが、3台の粉砕ローラ36が120°間隔で配置される場合、粉砕ローラ36の配置は、図2の図示とは異なる。
【0041】
粉砕ローラ36は、ブラケット38を介して加圧アーム37に対して揺動可能に接続されている。ブラケット38は、加圧アーム37にヒンジによって結合されている。加圧アーム37は、平面視形状がほぼ六角形形状を有し、隣り合う粉砕ローラ36の間の3点でそれぞれテンションロッド39と接続されている。なお、図3では、加圧アーム37及びテンションロッド39を一部省略して示している。
【0042】
上記構成により、ブラケット38が加圧アーム37によって支持され、粉砕ローラ36がブラケット38によって加圧アーム37に対して揺動可能とされている。加圧アーム37は、テンションロッドボックス40に収容されたテンションロッド39と接続されており、加圧アーム37は、テンションロッド39によって上下方向(鉛直方向)の位置が調整される。これにより、粉砕ローラ36によって、粉砕回転テーブル35上の固形物に対して作用する負荷が変更可能である。
【0043】
粉砕回転テーブル35が回転すると、粉砕ローラ36は、粉砕回転テーブル35や固形物から受ける力によって従動し、粉砕ローラ36の回転軸周りに転動する。バイオマス燃料は、粉砕ローラ36と粉砕回転テーブル35の噛み合わせによって、両者間で押圧されて粉砕される。バイオマス燃料が粉砕されることによって、微粉砕物が生成される。
【0044】
ハウジング31の下部には、1次空気ダクト13が接続されている。1次空気ダクト13によって供給された1次空気60は、ハウジング31内へ導かれ、粉砕回転テーブル35の下方に位置する空間に供給される。
【0045】
粉砕ローラ36を支持するブラケット38の外周側の空間、すなわち、ハウジング31の内面に沿った空間は、内部ウォール45とハウジング31によって形成される環状流路46となっている。環状流路46を通過する微粉砕物は、内部ウォール45が設置されないミルと比べて高い流速で吹き上げられる。内部ウォール45は、筒状部材であり、ハウジング31の内部において、粉砕ローラ36の外周側の側部から上方に向けて回転分級機41の下部近傍まで延設される。
【0046】
ハウジング31の上部には、回転分級機41が設けられている。回転分級機41は、センターシュート33を取り囲むように配置され、センターシュート33の周りを回転する。回転分級機41の回転に伴い、その外周側に取り付けられた複数のフィン42が周方向に走行する。粉砕回転テーブル35と粉砕ローラ36によって粉砕された微粉砕物は、粉砕回転テーブル35の下方から粉砕回転テーブル35の外周側を通り上昇する空気の流れによって上方へと巻き上げられる。巻き上げられた微粉砕物のうち比較的大きな径の微粉砕物は、フィン42によって叩き落とされ、粉砕回転テーブル35へと戻されて再び粉砕される。これにより、回転分級機41によって微粉砕物が分級される。
【0047】
天井部32には複数本の送炭管9が接続されており、送炭管9は、回転分級機41によって分級された後の微粉砕物を排出し、排出された微粉砕物をボイラ本体3へと導く。複数本の送炭管9は、天井部32に対応して設けられた複数の開口部にそれぞれ接続される。なお、本実施形態では、送炭管9の内部は粉砕されたバイオマス燃料が流通し、微粉燃料供給管と呼ぶこともできるが、従来の石炭用ミルにならって送炭管9と呼ぶ。送炭管9は、ミル1のサイズや粉砕容量に応じて変化するが、2本〜8本の範囲にあり、4本〜6本の場合が多い。
【0048】
バイオマス燃料を微粉砕する本実施形態に係るミル1及びミル設備の動作を以下に説明する。
【0049】
バンカ7内に貯蔵されているバイオマス燃料は、供給機6内に内蔵されたベルトフィーダ8のベルトによって運ばれ(a)、給炭管4及びセンターシュート33に送給される(b)。
給炭管4に装着されたロータリーフィーダ43は、定量のバイオマス燃料を切り出し、バイオマス燃料がミル1内に向けて落下する(c)。
【0050】
ミル1内に供給されたバイオマス燃料は、粉砕回転テーブル35上に落下し(d)、遠心力で外周側へ移動し、複数の粉砕ローラ36と粉砕回転テーブル35との間で粉砕される。粉砕されたバイオマス燃料の微粉砕物は、1次空気ダクト13及びスロートベーン44を通じてミル1内に吹き込まれる1次空気60によって、ミル1内、特に環状流路46を上昇する(e)。環状流路46を通過する微粉砕物は、内部ウォール45が設置されないミルと比べて高い流速で吹き上げられる。その後、微粉砕物は、内部ウォール45の上方端から飛び出す。
【0051】
粉砕部1Aの上部では、複数のフィン(羽根)42からなる回転分級機41が回転していて、粗く重い微粉砕物は、フィン42の遠心力によって、はじかれるように叩き落とされる(f)。微粉砕物は細かくなるまで粉砕部1Aで再粉砕が繰り返される。細かくなった微粉砕物(fineness)は、回転分級機41を貫通し、ミル1から出て、送炭管9を通じて外部へ空気搬送される(g)。空気搬送された微粉砕物は、ボイラ本体3のバーナ11に送られて燃焼する。
【0052】
ミル設備には、急速燃焼の発火起因源となる可能性のある場所に、異常圧を検知する感圧センサ61,62,63が設けられ、発火起因源及び急速燃焼の伝播するおそれがある場所に消火剤噴射器51,52,53,54,55が設けられる。
【0053】
消火剤噴射器51〜55は、瞬時(例えば数十ミリ秒)といった短期間の間に消火剤を高速でミル1などの内部に噴射する。消火剤噴射器51〜55によって噴射される消火剤は、例えば粉末状の炭酸水素ナトリウム(一般に重曹とも呼ばれる。)であり、加圧された不活性気体(例えば窒素(N))によって高圧噴射される。
【0054】
消火剤としての炭酸水素ナトリウムの噴射量は、一つの例を述べれば、1台のミル1に設置された消火剤噴射器51,52が有する量を合計して、およそ100kg〜300kgである。この条件は、ミル1のサイズや粉砕容量などによって適宜決定される。炭酸水素ナトリウムは、消火能力が高いだけでなく、鋼材からなるミル1の各部位を腐食させにくいという利点がある。噴射された消火剤の清掃後に、ミル1のハウジング31の内壁面等に炭酸水素ナトリウムが付着したままでも、腐食のおそれがない。また、付着した炭酸水素ナトリウムは、新たに供給されたバイオマス燃料によって擦り洗いされ、ボイラ本体3のバーナ11へ搬送される。バイオマス燃料に比べて搬送される炭酸水素ナトリウムの量は微量であるため、バーナ11における燃焼を阻害したりすることはない。
【0055】
消火剤噴射器51及び感圧センサ61は、図2及び図3に示すように、ミル1のハウジング31の側面下部において、ハウジング31内の粉砕部1A近傍、例えばミル1の高さ方向において粉砕ローラ36と加圧アーム37の間に設けられる。一つの消火剤噴射器51と一つの感圧センサ61は隣接して1組のセットとして設けられてもよい。消火剤噴射器51は、消火剤を粉砕部1Aに噴射する。感圧センサ61は、ハウジング31内の圧力を検出する。感圧センサ61は、特に粉砕部1A近傍の圧力の変化をより検知しやすい。発生起因源となる可能性が高い粉砕部1A近傍で圧力の変化を検知していることから、タイミングのずれを回避して、いわゆる手遅れに陥ることがない。感圧センサ61は、微粉砕物が感圧センサ61の本体側へ流入しないように、検出管がハウジング31の内部へ下方に向けて傾斜されている。
【0056】
粉砕部1A近傍では、センターシュート33から供給されたバイオマス燃料や、粉砕された微粉砕物が貯留され、かつ、一部舞い上げられた状態で高濃度に存在している。また、高温の1次空気60がバイオマス燃料や微粉砕物と接触している。そのため、粉砕部1A近傍は、急速燃焼が発生するポテンシャルが高い。消火剤が粉砕部1A近傍に噴射されることによって、粉砕部1A近傍を発生起因源とする急速燃焼や、伝播された急速燃焼による延焼を抑制できる。
【0057】
消火剤噴射器51は、図5及び図6に示すように、消火剤が流通する配管部材56が内部ウォール45を貫通して設けられ、配管部材56の先端部がハウジング31に設けられる。これにより、内部ウォール45で囲まれた空間の内部に消火剤を確実に噴射できる。なお、環状流路46を流通する微粉砕物によって、配管部材56の摩耗や損傷が発生する可能性がある。そのため、配管部材56の下面には、強度の高い保護材などが設置されるとよい。
【0058】
感圧センサ61の先端部は、ハウジング31の壁部に位置する。内部ウォール45において、感圧センサ61の先端部の位置に対向する部分には、貫通孔66が設けられる。環状流路46に感圧センサ61の部材を設けることなく、環状流路46から外れた位置に感圧センサ61の先端部が設けられることによって、環状流路46を流通する微粉砕物による感圧センサ61の摩耗や損傷を防止できる。
【0059】
消火剤噴射器52及び感圧センサ62は、図2及び図4に示すように、ミル1のハウジング31の側面上部において、ハウジング31内の分級部1B近傍、例えば、回転分級機41に対向した面、すなわち、回転分級機41の水平方向の横位置に設けられる。一つの消火剤噴射器52と一つの感圧センサ62は隣接して1組のセットとして設けられてもよい。消火剤噴射器51は、消火剤を分級部1Bに噴射する。感圧センサ62は、ハウジング31内の圧力を検知する。感圧センサ62は、特に分級部1B近傍の圧力の変化を検知しやすい。発生起因源となる可能性が高い分級部1B近傍で圧力の変化を検知していることから、タイミングのずれを回避して、いわゆる手遅れに陥ることがない。感圧センサ62は、微粉砕物が感圧センサ62の本体側へ流入しないように、検出管がハウジング31の内部へ下方に向けて傾斜されている。
【0060】
ハウジング31内の分級部1B近傍は、吹き上げられた微粉砕物の分級分岐点に相当し、回転分級機41に入り込もうとする微粉砕物と、フィン42によって弾き出された微粉砕物とが存在する。そのため、微粉砕物の流動軌跡が複雑相互に入り乱れる領域である。また、回転分級機41のフィン42と微粉砕物との衝突もあり、摩擦が激しく発生している。そのため、分級部1B近傍は、急速燃焼が発生するポテンシャルが高い。消火剤が分級部1B近傍に噴射されることによって、分級部1B近傍を発生起因源とする急速燃焼や、伝播された急速燃焼による延焼を抑制できる。
【0061】
消火剤噴射器52は、配管部材57の先端部がハウジング31に設けられる。これにより、ハウジング31で囲まれた空間の内部に消火剤を噴射できる。
【0062】
1組の消火剤噴射器51及び感圧センサ61や、1組の消火剤噴射器52及び感圧センサ62は、ハウジング31の円周方向に間隔を離して設置される。ハウジング31の下方にて円周方向に合計3組の消火剤噴射器51及び感圧センサ61、ハウジング31の上方にて円周方向に合計3組の消火剤噴射器52及び感圧センサ62が設置される場合、より望ましくは、等ピッチ角度(120°)離れた位置に設けられる。
【0063】
下部に設置された複数組の消火剤噴射器51及び感圧センサ61や、上部に設置された複数組の消火剤噴射器52及び感圧センサ62は、ミル1のハウジング31の周方向に互い違いに、すなわち、上部列と下部列の両方を合わせて千鳥状に配設される。
【0064】
なお、上述した実施例では、消火剤噴射器51及び感圧センサ61の各組や、消火剤噴射器52及び感圧センサ62の各組が円周方向に等ピッチ角度で離れた位置に設けられ、千鳥状に配設される例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0065】
ミル1のハウジング31に取り付けられたり、ミル1の周囲に設置されたりしているクレーン、ホイスト、配管、歩行通路等の機械や機具の影響によって、等ピッチ角度や千鳥状に消火剤噴射器51及び感圧センサ61の各組や、消火剤噴射器52及び感圧センサ62の各組を配置できない場合がある。ミル1のハウジング31の内部において、消火剤を比較的効率良く分散させることができれば、例えば図9及び図10に示すように、消火剤噴射器51及び感圧センサ61の各組や、消火剤噴射器52及び感圧センサ62の各組は、等ピッチ角度や千鳥状の配置ではなく、互いに離隔されたり近接された位置でもよい。
【0066】
また、消火剤噴射器51,52の設置数は、ミル1のハウジング31内部の空間の容積によって増減させることがあり、感圧センサ61,62の設置数と一致しない場合もある。このため、必ずしも感圧センサ61と消火剤噴射器51とが1組になっていること、及び/又は、感圧センサ62と消火剤噴射器52とが1組になっていることを要しない。
それぞれが1組になっていない場合でも、望ましくは、感圧センサ61と感圧センサ62とがハウジング31内部の上下に互い違いに、すなわち、千鳥状に配置されるとともに、消火剤噴射器51と消火剤噴射器52とがハウジング31内部の上下に互い違いに、すなわち、千鳥状に配置されていればよい。
【0067】
原料供給系である供給機6には、消火剤噴射器53及び感圧センサ63が設けられる。消火剤噴射器53は、消火剤を供給機6内に噴射する。感圧センサ63は、供給機6内部の圧力の変化を検知する。これにより、供給機6内に存在するバイオマス燃料を発生起因源とする急速燃焼を抑制できる。バンカ7内に大量に貯蔵されたバイオマス燃料が昇温し、くすぶった状態(いわゆる火種)になって、そのまま供給機6のベルトフィーダ8上に落下し、空気と接触すると、急速燃焼発生の起因源となるおそれがあるため、供給機6に消火剤噴射器53と感圧センサ63が設置されることが好ましい。また、供給機6に設置された消火剤噴射器53は、ハウジング31内で発生し伝播された急速燃焼による延焼も抑制できる。
【0068】
消火剤噴射器54は、給炭管4に設置されたロータリーフィーダ43の前流側及び/又は後流側に設けられ、消火剤を給炭管4の内部又はロータリーフィーダ43の内部に噴射する。急速燃焼によってハウジング31内で発生した火炎は、センターシュート33を遡上し、ロータリーフィーダ43に貯留されたバイオマス燃料に延焼するおそれがある。また、急速燃焼によって供給機6内で発生した火炎は、供給機6を流下し、ロータリーフィーダ43に貯留されたバイオマス燃料に延焼するおそれがある。消火剤が給炭管4の内部又はロータリーフィーダ43の内部に噴射されることによって、ハウジング31の内部又は供給機6の内部で発生した急速燃焼による延焼を抑制できる。
【0069】
消火剤噴射器55は、微粉砕物搬送系である送炭管9に設けられ、消火剤を送炭管9内に噴射する。送炭管9にはボイラ設備10へ向けて空気が流れているため、急速燃焼によってハウジング31内で発生した火炎は、送炭管9内部を流下するおそれがある。消火剤が送炭管9内に噴射されることによって、ハウジング31内で発生し伝播された急速燃焼による延焼を抑制できる。
【0070】
感圧センサ61,62,63は、ミル1内、又は、供給機6内でバイオマス燃料が着火して急速燃焼が生じたときの圧力上昇を検出する。感圧センサ61,62,63で検知された圧力値に関する信号は、図示しない制御部へと送信される。制御部では、感圧センサ61,62,63で検知された圧力値に基づいて(検出された圧力値が所定の閾値以上を超えたか否かに応じて)、急速燃焼の発生の有無を判断し、その判断結果に基づいて消火剤噴射器51〜55の動作を制御する。
【0071】
制御部は、下方の粉砕部1A近傍に設置された3個の感圧センサ61、又は、上方の分級部1B近傍に設置された3個の感圧センサ62が所定の閾値を超えた場合、急速燃焼発生による異常圧力が生じていると判断し、急速燃焼が発生したと判断する。この場合、6個の消火剤噴射器51〜55のすべてにおいて、消火剤の噴射が同時にかつ一斉に実行される。すなわち、所定の閾値を超えた感圧センサ61,62に隣接する消火剤噴射器51,52だけでなく、すべての消火剤噴射器51〜55から消火剤が噴射される。これにより、発生起因源となる可能性が高いミル1のハウジング31で圧力の変化を検知していることから、タイミングのずれを回避して、いわゆる手遅れに陥ることがないため、急速燃焼の発生とほぼ同時に急速燃焼を抑制できる。また、急速燃焼の発生起因源だけでなく、急速燃焼が伝播しやすい場所にも消火剤が噴射されることから、ミル1の甚大な損傷を低減できる。なお、本実施形態では、必ずしも6個の消火剤噴射器51〜55のすべてにおいて消火剤を噴射しなくてもよく、少なくともミル1に設置された消火剤噴射器51,52において消火剤を噴射するとしてもよい。
【0072】
制御部は、供給機6に設置された感圧センサ63が所定の閾値を超えた場合、急速燃焼発生による異常圧力が生じていると判断し、急速燃焼が発生したと判断する。この場合、6個の消火剤噴射器51〜55のすべてにおいて、消火剤の噴射が同時にかつ一斉に実行される。これにより、発生起因源となる可能性が高い供給機6で圧力の変化を検知していることから、タイミングのずれを回避して、いわゆる手遅れに陥ることがないため、急速燃焼の発生とほぼ同時に急速燃焼を抑制できる。また、急速燃焼の発生起因源だけでなく、急速燃焼が伝播しやすい場所にも消火剤が噴射されることから、ミル1の甚大な損傷を低減できる。なお、本実施形態では、必ずしも6個の消火剤噴射器51〜55のすべてにおいて消火剤を噴射しなくてもよく、少なくとも供給機6に設置された消火剤噴射器53において消火剤を噴射するとしてもよい。
【0073】
なお、上述した実施形態では、感圧センサ61,62,63が所定の閾値を超えた場合に急速燃焼が発生したと判断する例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、所定の閾値は、急速燃焼が発生する直前の圧力値とし、感圧センサ61,62,63が所定の閾値を超えた場合、急速燃焼が発生する直前であると判断し、消火剤を噴射してもよい。この場合、運転継続によって急速燃焼が発生しないかもしれないが、異常圧力が検出されたことによって、急速燃焼の発生を未然に防止することができる。
【0074】
制御部は、消火剤噴射器51〜55による消火剤の噴射が実施された場合、ミル1の運転を瞬時に停止させる。ミル1の運転停止には、1次エアの供給停止、バイオマス燃料の供給停止、粉砕回転テーブル35の運転停止、回転分級機41の運転停止、微粉砕物の搬送停止その他すべてのミル1及びミル設備に係る機械がすべて停止される場合と、その一部のみが停止される場合の両者が考えられる。
【0075】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0076】
<作用効果>
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上述したとおり、急速燃焼の発火起因源となる可能性のある場所に、異常圧を検知する感圧センサ61,62,63が設けられ、発火起因源及び急速燃焼の伝播するおそれがある場所に消火剤噴射器51,52,53,54,55が設けられる。本実施形態によれば、ミル1だけでなく、ミル設備の原料供給系及び微粉砕物排出系まで含めて、急速燃焼の発生から火炎伝播までをトータルに抑制又は防止できる。
【0077】
近年、火力発電所では、木質系バイオマス燃料が原料(燃料)として用いられるようになり、大規模な火力発電所でもバイオマス燃料が単体で使用されたり使用の検討がされたりするようになっている。そのため、大型のミル1でも木質系バイオマス燃料を粉砕する必要性が高まり、急速燃焼の発生から火炎伝播までの抑制について高度な技術が求められている。本実施形態によれば、これらの要求にも応えることが可能になる。
【0078】
また、上記の効果によって、ミル1自体やミル1に付属する機械及び機具を安全に維持できるようになり、ミル1が設置された発電所等の作業員の安全が確保される。さらに、上記の効果によって、ミル1や火力発電所において使用可能な燃料の種類が拡大する。したがって、火力発電所の運用幅が大きく広がり経済的効果も見込める。
【0079】
またさらに、ミル1やミル設備に設置される本実施形態に係る消火系設備の構成が簡素であるため、新設プラントだけでなく、既設のミル1やミル設備へも適用可能である。
【0080】
<変形例>
以下、本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、急速燃焼が生じやすいペレット状の木質系バイオマス燃料が供給、粉砕及び排出されるミル1について説明したが、本発明は上述した例に限定されない。本発明は、例えば、脱水汚泥などの非木質系バイオマス燃料、揮発分の多い亜瀝青炭や褐炭、又は、これらが混合された燃料を粉砕するミルにも適用可能である。
【0081】
また、本実施形態が適用可能なミル1は、上述した実施形態の形式に限定されず、他の形式のミルでもよい。例えば、内部ウォール45が設置されず、内部ウォール45とハウジング31の内面との間における環状流路46が形成されないミルにも適用可能である。この場合、図7及び図8に示すように、消火剤噴射器51及び感圧センサ61が、ミル1のハウジング31の側面下部において、ハウジング31内の粉砕部1A近傍、例えばミル1の高さ方向において粉砕ローラ36と加圧アーム37の間に設けられる点は同様である。ただし、消火剤噴射器51の先端部がハウジング31に設けられる。
【0082】
この形式の場合においても、粉砕部1A近傍は、急速燃焼が発生するポテンシャルが高い。そして、消火剤が粉砕部1A近傍に噴射されることによって、粉砕部1A近傍を発生起因源とする急速燃焼や、伝播された急速燃焼による延焼を抑制できる。
【0083】
また、上述した実施形態では、ブラケット38が加圧アーム37によって支持され、粉砕ローラ36がブラケット38によって加圧アーム37に対して揺動可能とされる構成について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、加圧アーム37やブラケット38が設置されず、ハウジング31に対して片持ち式に直接設置された支持材によって、粉砕ローラが揺動可能に支持された構成を有するものでもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 :ミル
1A :粉砕部
1B :分級部
3 :ボイラ本体
4 :給炭管
5 :サイロ
6 :供給機
7 :バンカ
8 :ベルトフィーダ
9 :送炭管
10 :ボイラ設備
11 :バーナ
13 :1次空気ダクト
15 :1次空気ファン
17 :排ガス再循環ファン
19 :脱硝装置
21 :空気予熱器
23 :電気集塵機
25 :誘引ファン
27 :脱硫装置
29 :煙突
31 :ハウジング
32 :天井部
33 :センターシュート
34 :架台
35 :粉砕回転テーブル
36 :粉砕ローラ
37 :加圧アーム
38 :ブラケット
39 :テンションロッド
40 :テンションロッドボックス
41 :回転分級機
42 :フィン
43 :ロータリーフィーダ
44 :スロートベーン
45 :内部ウォール
46 :環状流路
51,52,53,54,55 :消火剤噴射器
56,57 :配管部材
60 :1次空気
61,62,63 :感圧センサ
66 :貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10