特許第6827897号(P6827897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827897
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
   F02B39/00 C
   F02B39/00 U
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-174636(P2017-174636)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2018-48632(P2018-48632A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2020年3月26日
(31)【優先権主張番号】10 2016 117 960.4
(32)【優先日】2016年9月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ヴァイスブロート
(72)【発明者】
【氏名】イジー・クリーマ
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・イエジャーベク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン−クリストフ・ハーグ
(72)【発明者】
【氏名】サンティアゴ・ウーレンブロック
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ロスト
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・バルトロメー
【審査官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−303964(JP,A)
【文献】 特開2004−353660(JP,A)
【文献】 特開2011−089628(JP,A)
【文献】 実開昭51−154662(JP,U)
【文献】 実開平03−118270(JP,U)
【文献】 米国特許第5451116(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0154194(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の媒体を膨張させるためのタービンと、
前記タービン内での前記第1の媒体の膨張の際に得られるエネルギーを用いて、第2の媒体を圧縮するための圧縮機と、を有するターボチャージャであって、
前記タービンは、タービンハウジング(1)とタービンロータとを有しており、
前記圧縮機は、圧縮機ハウジングと、前記タービンロータにシャフトを介して連結された圧縮機ロータと、を有しており、
前記タービンハウジング(1)及び前記圧縮機ハウジングはそれぞれ、これらの間に配置され、その内部に前記シャフトが取り付けられている軸受ハウジング(2)に接続されており、
前記タービンハウジング(1)と前記軸受ハウジング(2)とは、固定装置(5)を介して接続されており、その結果、前記固定装置は、前記タービンハウジング(1)のフランジ(6)に、第1の部分(7)が取り付けられており、第2の部分(9)が、前記軸受ハウジング(2)のフランジ(10;15)を少なくとも部分的に覆っているターボチャージャにおいて、
前記固定装置(5)は、前記第2の部分(9)の、前記軸受ハウジング(2)の前記フランジ(10;15)に対向する面において、湾曲した輪郭を有していることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記軸受ハウジング(2)の前記フランジ(10;15)に対向する、前記固定装置(5)の前記第2の部分(9)の湾曲面の曲率半径が、前記第2の部分(9)及び/又は前記第1の部分(7)の領域における前記固定装置(5)の軸方向厚さの5倍から20倍の間に相当することを特徴とする、請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記固定装置(5)が、少なくとも40HRCの硬度を有する材料から、又は、前記湾曲面の領域において、少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬化材料から構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記固定装置(5)の前記第2の部分(9)と前記軸受ハウジング(2)の前記フランジ(10)との間には、少なくとも1つのリング(11;23、13)が配置されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記固定装置(5)の前記第2の部分(9)と前記軸受ハウジング(2)の前記フランジ(10)との間には、唯一のリング(11)が配置されており、前記リングは、第1の面が、前記軸受ハウジング(2)の前記フランジ(10)に、第2の面が、前記固定装置(5)の前記第2の部分(9)に当接していることを特徴とする、請求項4に記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記リング(11)が、前記軸受ハウジング(2)の熱膨張係数に相当する熱膨張係数を有していることを特徴とする、請求項4又は5に記載のターボチャージャ。
【請求項7】
前記固定装置(5)の前記第2の部分(9)と前記軸受ハウジング(2)の前記フランジ(10)のとの間には、2つのリング(12、13)が配置されており、第1のリング(12)は、第1の面が、前記軸受ハウジング(2)の前記フランジ(10)に当接しており、第2のリング(13)は、第1の面が、前記固定装置(5)の前記第2の部分(9)に当接しており、前記2つのリング(12、13)は、第2の面が、互いに当接していることを特徴とする、請求項4に記載のターボチャージャ。
【請求項8】
前記第1のリング(12)が、前記軸受ハウジング(2)の熱膨張係数に相当する熱膨張係数を有しており、前記第2のリング(13)が、それとは異なる熱膨張係数を有していることを特徴とする、請求項7に記載のターボチャージャ。
【請求項9】
前記リング(11)、又は、複数のリング(12、13)から成る配置が、軸方向幅B及び径方向高さHを有しており、B:Hの比率は0.25以下であることを特徴とする、請求項4から8のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項10】
前記リング(11、12、13)が、少なくとも40HRCの硬度を有する材料から、又は、少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬化材料から構成されていることを特徴とする、請求項4から9のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項11】
前記リング(11、12、13)が、それぞれ少なくとも1つの周方向位置においてスリットを有していることを特徴とする、請求項4から10のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項12】
前記第1のリング(12)が、唯一の周方向位置においてスリットを有し、開放環を形成しており、前記第2のリング(13)が、複数の周方向位置においてスリットを有し、複数のリングセグメントを形成していること、を特徴とする、請求項7または11に記載のターボチャージャ。
【請求項13】
前記リング(11)が、唯一の周方向位置においてスリットを有しており、開放環を形成していることを特徴とする、請求項4または11に記載のターボチャージャ。
【請求項14】
前記軸受ハウジング(2)の一体的なアセンブリとして構成されたフランジ(10)が、前記固定装置(5)の前記第2の部分(9)に対向する面において硬化されており、当該面において、少なくとも40HRCの表面硬度を有していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項15】
前記軸受ハウジング(2)の前記フランジ(15)が、前記軸受ハウジングの別個のアセンブリとして構成されており、少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬質材料又は硬化材料によって製造されており、ネジを用いて、前記軸受ハウジング(2)の本体(14)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項16】
前記固定装置(5)が、周方向においてセグメント化されており、前記固定装置(5)の各セグメント(5a)は、そのそれぞれの第1の部分(7)で、最大で2つの固定手段(8)を介して、前記タービンハウジング(1)のフランジ(6)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【請求項17】
前記固定装置(5)のセグメント(5a)の周方向セグメント幅が、前記第2のリング(13)のリングセグメントの周方向セグメント幅に相当しており、これにより前記第1のリング(12)と、前記固定装置(5)の各セグメント(5a)との間には、前記第2のリング(13)の対応するリングセグメントがそれぞれ配置されていることを特徴とする、請求項12又は16に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、ターボチャージャの基本的な構造が知られている。ターボチャージャは、タービンを有しており、タービン内では、第1の媒体が膨張する。さらに、ターボチャージャは、圧縮機を有しており、圧縮機内では、第2の媒体が圧縮され、その際には、タービン内での第1の媒体の膨張の際に得られたエネルギーが利用される。ターボチャージャのタービンは、タービンハウジング及びタービンロータを有している。ターボチャージャの圧縮機は、圧縮機ハウジング及び圧縮機ロータを有している。タービンのタービンハウジングと圧縮機の圧縮機ハウジングとの間には、軸受ハウジングが配置されており、軸受ハウジングは、一方ではタービンハウジングと、他方では圧縮機ハウジングと接続されている。軸受ハウジング内にはシャフトが取り付けられており、シャフトを介して、タービンロータは、圧縮機ロータに連結されている。
【0003】
実践からは、タービンのタービンハウジング、すなわちいわゆるタービン流入ハウジング、及び、軸受ハウジングが、好ましくはクランプジョーとして構成された固定装置を介して互いに接続されていることが知られている。このようなクランプジョーとして構成された固定装置は、その第1の部分で、タービンハウジングのフランジに、固定手段によって取り付けられ、第2の部分で、軸受ハウジングのフランジを、少なくとも部分的に覆っている。このような固定装置によって、軸受ハウジングとタービンハウジングとの結合又は組み合わせは、特にタービンハウジングと軸受ハウジングとの間のシールカバー及びノズルリングをクランプすることによって補強される。
【0004】
タービンハウジングには、膨張すべき第1の媒体、特に膨張すべき排ガスが充填されている。タービンハウジングのタービン流入ハウジングは、当該排ガスをタービンロータの方向に誘導する。タービン流入ハウジング内には、周囲に対して超過圧力が生じており、当該超過圧力は、タービンにおいて、第1の媒体の膨張の際にエネルギーを獲得することによって解消される。タービンハウジング又はタービン流入ハウジングと軸受ハウジングとの接続部の領域では、漏れが生じ得るので、第1の、タービン内で膨張すべき媒体は、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間の接続領域を超えて、周囲に到達し得る。これは欠点である。
【0005】
このような、タービン内で膨張すべき第1の媒体の漏れに対処するために、実践によると、タービンハウジング又はタービン流入ハウジングと軸受ハウジングとの間の張力が、特に、好ましくはクランプジョーとして構成された固定装置をタービンハウジングに取り付けている固定手段に関する締め付けトルクの増大を通じて高められる。これによって、固定装置と軸受ハウジングとの間のクランプ力が増大する。軸受ハウジングと固定装置との接触部は、軸受ハウジングの熱膨張と、タービンハウジング又はタービン流入ハウジングの熱膨張とが異なる結果、高い相対運動に晒されている。軸受ハウジングと固定装置との間における高い接触圧力又は高いプレテンション又は高いクランプ力と結びついて、いわゆるトレンチ効果の結果、固定装置及び/又は軸受ハウジングで摩耗が生じ得る。それによって、タービン内で膨張すべき第1の媒体の周囲への漏れが引き起こされ、さらに、極端な場合には、タービンハウジング又はタービン流入ハウジングと軸受ハウジングとの間の接続が解除され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013002605号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした状況に鑑みて、本発明の課題は、新式のターボチャージャを創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、請求項1に記載のターボチャージャによって解決される。
【0009】
固定装置は、第2の部分の、軸受ハウジングのフランジに対向する面に、湾曲した輪郭を有している。固定装置が、軸受ハウジングのフランジに対向する面において湾曲した輪郭を有していることによって、固定装置では、特定のトライボロジー表面形状が供給され、当該表面形状によって、固定装置と軸受ハウジングとの間の相対運動の際の、固定装置及び軸受ハウジングにおける摩擦が最小化される。
【0010】
それによって、タービン内で膨張すべき第1の媒体が周囲に漏れる危険が減少する。さらに、軸受ハウジングとタービンハウジングとの間の接続が解除される危険が減少する。
【0011】
好ましくは、軸受ハウジングのフランジに対向する、固定装置の第2の部分の湾曲面の曲率半径は、第2の部分及び/又は第1の部分の領域における固定装置の軸方向厚さの5倍から20倍に相当する。このような固定装置の湾曲面の曲率半径は、摩耗の最小化のために、特に有利なトライボロジー表面形状を供給する。
【0012】
好ましくは、固定装置は、少なくとも40HRCの硬度を有する材料から、又は、湾曲面の領域において少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬化材料から構成される。固定装置がこのように構成されている場合、固定装置及び軸受ハウジングにおける摩耗の危険はさらに減少し得る。
【0013】
本発明の有利な第1のさらなる発展形態によると、固定装置の第2の部分と軸受ハウジングのフランジとの間には、少なくとも1つのリングが配置されている。固定装置の第2の部分と軸受ハウジングのフランジとの間に、少なくとも1つのリングを配置することによって、固定装置及び軸受ハウジングにおける摩耗の危険はさらに減少し得る。その際、特に、1つ又は各リングは、少なくとも40HRCの表面硬度を有しており、そのために、各リングは、当該硬度を有する材料から製造されているか、又は、当該硬度を有するように表面が硬化されている。
【0014】
好ましくは、固定装置の第2の部分と軸受ハウジングのフランジとの間には、2つのリングが配置されており、第1のリングは、第1の面で、軸受ハウジングのフランジに当接しており、第2のリングは、第1の面で、固定装置の第2の部分に当接しており、これら両方のリングは、第2の面で、互いに当接している。特に、第1のリングは、軸受ハウジングの熱膨張係数に相当する熱膨張係数を有しており、第2のリングは、それとは異なる熱膨張係数を有している。このように、固定装置の第2の部分と軸受ハウジングのフランジの部分との間で2つのリングを軸方向に連続して配置することによって、軸受ハウジング及び固定装置における摩耗の危険を特に有利に減少させることができる。その際、その第1の面で軸受ハウジングのフランジに当接している第1のリングが、軸受ハウジングの熱膨張係数に相当する熱膨張係数を有していると、特に有利である。それによって、第1のリングと軸受ハウジングとの間の相対運動が最小化される。その第1の面で固定装置の第2の部分に当接している第2のリングは、異なる熱膨張係数を有しており、それによって、動作中に生じる相対運動を、両方のリングの接触面の間に移動させる。
【0015】
本発明の第2の代替的なさらなる発展形態によると、軸受ハウジングのフランジは、軸受ハウジングの別個のアセンブリとして構成されており、少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬質材料又は硬化材料から製造されており、ネジを用いて、軸受ハウジングの本体に取り付けられている。それによって、やはり、軸受ハウジングとタービンハウジングとの間の接続が摩耗する危険が減少し得る。
【0016】
本発明の第3の、同じく代替的なさらなる発展形態によると、軸受ハウジングの一体的なアセンブリとして構成されたフランジは、固定装置の第2の部分に対向する面において硬化されており、当該面において、少なくとも40HRCの表面硬度を有している。本発明の当該態様によっても、軸受ハウジングとタービンハウジングとの間の接続が摩耗する危険を減少させることができる。
【0017】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、従属請求項及び以下の説明から明らかになる。本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明するが、それに限定されるものではない。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る第1のターボチャージャの、タービンハウジングと軸受ハウジングとの接続領域における部分的な横断面図である。
図2図1に関する斜視図である。
図3】本発明に係る第2のターボチャージャの、タービンハウジングと軸受ハウジングとの接続領域における部分的な横断面図である。
図4図3の詳細を示す図である。
図5】本発明に係る第3のターボチャージャの、タービンハウジングと軸受ハウジングとの接続領域における部分的な横断面図である。
図6】本発明に係る第4のターボチャージャの、タービンハウジングと軸受ハウジングとの接続領域における部分的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ターボチャージャに関する。ターボチャージャは、第1の媒体を膨張させるため、特に内燃機関の排ガスを膨張させるためのタービンを有している。さらに、ターボチャージャは、タービン内で第1の媒体が膨張する際に得られるエネルギーを用いて、第2の媒体、特に過給空気を圧縮するための圧縮機を有している。その際、タービンは、タービンハウジングとタービンロータとを有している。圧縮機は、圧縮機ハウジングと圧縮機ロータとを有している。圧縮機ロータは、軸受ハウジング内に取り付けられたシャフトを介して、タービンロータと連結されており、軸受ハウジングは、タービンハウジングと圧縮機ハウジングとの間に配置され、タービンハウジングとも圧縮機ハウジングとも接続されている。このターボチャージャの基本的な構造は、当業者にはよく知られている。
【0020】
従って、本発明は、タービンハウジングと軸受ハウジングとの接続に関するターボチャージャの詳細を対象とする。以下には、図1から図6を用いて、ターボチャージャの様々な実施例が記載されており、図1から図6は、タービンハウジングと軸受ハウジングとの接続領域におけるターボチャージャの、それぞれ対応する部分を示している。
【0021】
ターボチャージャの第1の実施例を示しているのは図1及び図2であり、図1及び図2には、タービンハウジング、すなわちタービンハウジングのタービン流入ハウジング1と、排ガスターボチャージャの軸受ハウジング2との接続部が示されている。さらに、図1は、ノズルリング3及びシールカバー4を示している。
【0022】
タービン流入ハウジング1は、固定装置5を介して、軸受ハウジング2と接続されており、それによって、固定装置5は、第1の部分7で、タービン流入ハウジング1のフランジ6に、複数の固定手段8を介して取り付けられており、固定装置5は、第2の部分9で、軸受ハウジング2のフランジ10を、少なくとも部分的に覆っている。固定装置5は、クランプジョーとも呼ばれている。図1及び図2の実施例では、固定装置5は、周方向に見てセグメント化されており、固定装置5の各セグメント5aは、固定手段8それぞれを介して、それぞれの第1の部分7を通じて、タービン流入ハウジング1のフランジ6に取り付けられている。好ましくは、固定装置5のセグメント5aごとに、最大で2つの当該固定手段8が設けられており、それによって、各セグメント5aが、タービン流入ハウジング1のフランジ6に取り付けられる。
【0023】
図1及び図2に示された実施例では、各固定手段8は、タービン流入ハウジング1のフランジ6に螺入されたボルト8aと、ボルト8aの他方の端部に係合するナット8bとを含んでおり、ナット8bを引き締めることによって、所定のプレテンション力を、固定装置5を介して、タービン流入ハウジング1と軸受ハウジング10とに与えることができる。その際、対応するフランジが、タービン流入ハウジング1と軸受ハウジング2との間におけるノズルリング3及びシールカバー4によってクランプされる。
【0024】
このタービン流入ハウジング1及び軸受ハウジング2の接続領域を通る漏れ流れを最小化するために、特に固定装置5が摩耗することを回避する必要があり、それによって、常に所定のクランプ力を、タービン流入ハウジング1と軸受ハウジング2とに加えることが可能であり、タービン流入ハウジング1と軸受ハウジング2とが分離する危険が生じない。
【0025】
本発明によると、固定装置5は、その第2の部分9の、軸受ハウジング2のフランジ10に対向する面において、湾曲した輪郭を有している。その際、この湾曲した輪郭の、軸受ハウジング2のフランジ10に対向する固定装置5の第2の部分9の面は、外側に向かって凸状に湾曲しており、固定装置5の第2の部分9及び/又は第1の部分7の領域における、固定装置5の軸方向厚さの5倍から20倍の間に相当する曲率半径Rで湾曲している。固定装置5が複数のセグメント5aから構成されている図1及び図2の実施例では、各セグメント5aが、各第2の部分9の、軸受ハウジング2のフランジ10に対向する面の領域において、このような湾曲を有している。
【0026】
固定装置5又は固定装置5のセグメント5aが、第2の部分9の軸受ハウジング2のフランジ10に対向する面において、上述の湾曲した輪郭を有することによって、当該面には、トライボロジー形状が供給され、当該トライボロジー形状は、動作中にタービン流入ハウジングと軸受ハウジングとの間、従って、固定装置5と軸受ハウジング2との間に相対運動が生じる場合に、軸受ハウジング2及び固定装置5における摩耗の危険を最小化する。
【0027】
固定装置5若しくはそのセグメント5aは、好ましくは、少なくとも40HRC(スケールCのロックウェル硬さ)の硬度を有する金属材料から構成されているか、又は、固定装置5若しくはセグメント5aは、湾曲表面の領域において、少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬化金属材料から構成されている。このような表面硬度を供給するための金属材料の硬化は、好ましくは窒化処理を通じて行われる。同様に、金属材料の硬化のために、硬化されるべき表面に、例えばレーザークラッディング等の溶融加工又はスプレー法を通じて、コーティングを塗布することも可能である。
【0028】
固定装置5の第2の部分9の軸受ハウジング2のフランジ10に対向する面の領域における固定装置5の湾曲した輪郭と、上述の固定装置5の硬度との組み合わせは、動作中に、固定装置5と軸受ハウジング2との間に相対運動が生じる場合に、摩耗の危険を減少させる。特に、いわゆるトレンチ効果が防止され得る。
【0029】
図1及び図2の実施例では、軸受ハウジング2のフランジ10と、固定装置5、又は、固定装置5のセグメント5aの第2の部分9との間に、リング11が配置されている。図1及び図2の実施例では、唯一のリング11が、軸受ハウジング2のフランジ10と、固定装置5の各セグメント5aの第2の部分9との間に配置されており、リング11は、軸方向幅Bと径方向高さHとを有している。リングに作用する摩擦力によってリング11が傾くことを防ぐために、比B:Hは、0.25以下である。好ましくは、リング11は、少なくとも40HRCの硬度を有する材料から、又は、少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬化材料から構成される。それによって、固定装置5と軸受ハウジング2との間に相対運動が生じた場合に、摩耗が最小化される。
【0030】
唯一のリング11が、軸受ハウジング2のフランジ10と、固定装置5、又は、固定装置5のセグメント5aの第2の部分9との間に配置されている図1及び図2の実施例では、リング11は、軸受ハウジング2の熱膨張係数に略相当する熱膨張係数を有している。それによって、リング11と軸受ハウジング2との間の相対運動が最小化され、相対運動は、リング11と固定装置5のセグメント5aとの間で行われる。
【0031】
リング11と、固定装置5のセグメント5aの第2の部分9との、互いに当接する面は、好ましくは40HRCより大きい表面硬度を有しており、固定装置5のセグメント5aの第2の部分9の、リング11に対向する面は、上述したように、曲率半径Rを有する湾曲した輪郭を有しており、それによって、軸受ハウジング2を、タービンハウジング1、すなわちタービン流入ハウジングに摩擦を抑えて取り付けることが総じて可能となる。
【0032】
図1及び図2の実施例のリング11は、好ましくは、周方向位置においてスリットを有しており、開放環を形成しているので、当該リングを容易に、軸受ハウジング2のフランジ10に巻き付ける、又は、取り付けることが可能である。これは特に、図示されていない、圧縮機ハウジングと協働する軸受ハウジング2のフランジが、図示されている、タービン流入ハウジング1と協働する軸受ハウジング2のフランジ10よりも大きな直径を有している場合に必要である。図1及び図2のリング10は、第1の面で、軸受ハウジング2のフランジ10に、及び、第2の面で、固定装置5のセグメント5aの第2の部分9に当接している。
【0033】
ターボチャージャの特に好ましい実施例を示しているのは図3及び図4であり、図3及び図4の実施例は、まず、軸受ハウジング2のフランジ10と、固定装置5の第2の部分9、又は、固定装置5のセグメント5aの第2の部分9との間に配置されているリング11が1つのみではなく、2つのリング12及び13が軸方向に連続して配置されている点において、図1及び図2の実施例とは異なっている。その際、第1のリング12は、第1の面で、軸受ハウジング2のフランジ10に当接しているが、それに対して、第2のリング13は、第1の面で、固定装置5又は固定装置5のセグメント5aの第2の部分9に当接している。さらに、両方のリング12及び13は、互いに対向する第2の面で互いに当接している。
【0034】
第1のリング12は、好ましくは、軸受ハウジング2の熱膨張係数に相当する熱膨張係数を有している。第2のリング13は、好ましくは、それとは異なる熱膨張係数を有している。それによって、動作中に生じ得る相対運動を、両方のリング12、13の間に移動させることが可能である。それによって、軸受ハウジング2とタービン流入ハウジング1とを、特に摩耗を抑えて接続することが可能になる。
【0035】
図3及び図4の実施例でも、固定装置5又は固定装置5のセグメント5aの第2の部分9は、第2のリング13と、従って軸受ハウジング2のフランジ10とに対向する面において、湾曲した輪郭を有しており、図1及び図2に関連して記載したように、所定の曲率半径Rを有している。この点に関しては、上述の実施態様が参照される。2つのリング12及び13から成る配置は、軸方向幅Bと径方向高さHとを有しており、比B:Hは0.25以下である。
【0036】
両方のリング12、13は、好ましくは、少なくとも40HRCの硬度を有する材料から、又は、少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬化材料から構成されている。
【0037】
その第1の面で、軸受ハウジング2のフランジ10に当接している第1のリング12は、好ましくは、唯一の周方向位置においてスリットを有しているので、当該リングもまた、ユニットとして容易に、軸受ハウジング2、すなわちそのフランジ10に巻き付けられ得る。それに対して、第2のリング13は、好ましくは、複数の周方向位置においてスリットを有し、複数のリングセグメントを形成しており、好ましくは、第2のリング13のリングセグメントの数及び周方向の延長は、固定装置5のセグメント5aの数及び周方向の延長に相当する。
【0038】
固定装置5の各セグメント5aと軸受ハウジング2のフランジ10との間には、好ましくは、それぞれ第2のリング13の個々のリングセグメントが配置されており、第2のリングセグメント13のリングセグメント全体は、周方向位置においてスリットを有する、開放環として構成された第1のリング12に当接している。第2のリング13のセグメント化によって、周方向における熱応力を減少させることが可能である。滑り運動は、リング13のリングセグメントの、直列に接続された複数の摺動面に分割され、それによって、固定装置5に作用する摩擦力が減少する。
【0039】
図5は、本発明に係るターボチャージャのさらなる実施例を示しており、図5は、図1から図4の実施例に対する代替的な例である。図5の実施例によると、軸受ハウジング2は、少なくとも2つの部分から構成されており、本体14を有しており、本体14には、別個のフランジ15が接続されている。本体14は、従来の金属材料から製造されているが、本体14に固定された別個のフランジ15は、少なくとも40HRCの硬度を有する材料から製造されているか、又は、少なくとも40HRCの表面硬度を有する硬化材料から製造されている。それによって、軸受ハウジング2のフランジ15と固定装置5、すなわちそのセグメント5aとの間で、その第2の部分9の領域において、軸受ハウジング2又はタービン流入ハウジング1の間の接続の摩耗を最小化するために、適応した摩擦係数が提供される。その際、図5においても、固定装置5の第2の部分9、又は、固定装置5のセグメント5aの第2の部分9が、軸受ハウジング2のフランジ15に対向する面において、外側に向かって凸状に、特定の曲率半径Rを有して湾曲していることが規定されている。この特徴に関しては、図1及び図2の実施例に関する上記の説明、又は、図3及び図4の実施例に関する上記の説明が参照される。
【0040】
図5の実施例と、図1から図4の実施例との主な違いは、図5の実施例では、軸受ハウジング2のフランジ10と固定装置5との間にリングは設けられておらず、むしろ、軸受ハウジング2のフランジ15は、硬質又は硬化された金属材料から成る別個のアセンブリとして製造されている点にある。
【0041】
図5からは、硬質又は硬化材料で製造された別個のフランジ15が、軸受ハウジング2の本体14にネジで取り付けられており、そのために、フランジ15の雌ネジ16が、軸受ハウジング2の本体14の雄ネジ17と協働していることが見て取れる。このようなネジ接続は好ましい。なぜなら、ネジ接続は形状接続であり、熱膨張及び製作公差に対して抵抗力があるからである。図5によると、軸受ハウジング2のフランジ15と軸受ハウジング2の本体14との間のネジ接続は、図示された実施例ではシリンダ形のピンとして構成されている、径方向に延在する少なくとも1つのロック要素18によって確実化される。
【0042】
図6は、本発明に係るターボチャージャのさらなる実施例を示している。図6の実施例によると、軸受ハウジング2は、フランジ10の領域において、すなわち、固定装置5、又は、固定装置5の各セグメント5aの凸状に湾曲した面と、固定装置5の第2の部分9において協働するフランジ10の面の領域において硬化している。図6は、軸受ハウジング2のフランジ10の当該面に塗布された、軸受ハウジング2をフランジ10の当該面において硬化するためのコーティング19を示しており、当該コーティングは、例えばレーザークラッディング等の溶融加工又はスプレー法を通じて塗布され得る。コーティングの代わりに、軸受ハウジング2の材料を、例えばレーザー焼き入れ又は窒化処理等の硬化法を通じて硬化しても良い。
【0043】
本発明に係る排ガスターボチャージャの全ての実施変型例において、タービン流入ハウジング1と軸受ハウジング2との間に、特に有利な、摩耗の少ない接続を供給することが可能である。特に好ましいのは、図3及び図4の実施形態であり、当該実施形態では、軸受ハウジング2のフランジ10と、軸受ハウジング2のフランジ10を覆っている固定装置5のセグメント5aの部分9との間に、2つのリング12及び13が軸方向に連続して配置されている。この実施形態は、構造的に容易であるばかりではなく、動作に起因する相対運動の両方のリング12及び13間への移動を可能にするので、固定装置5だけではなく、軸受ハウジング2も摩耗に晒されることがなく、その結果、タービン内で膨張すべき第1の媒体の漏れ流れが周囲に到達するという危険、又は、タービン流入ハウジング1と軸受ハウジング2との間の接続が解除されるという危険が生じない。
【符号の説明】
【0044】
1 タービン流入ハウジング
2 軸受ハウジング
3 ノズルリング
4 シールカバー
5 固定装置
5a セグメント
6 フランジ
7 部分
8 固定手段
8a ボルト
8b ナット
9 部分
10 フランジ
11 リング
12 リング
13 リング
14 本体
15 フランジ
16 ネジ
17 ネジ
18 ロック装置
19 コーティング
図1
図2
図3
図4
図5
図6