(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827990
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】ジペプチド含有造粒物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 2/16 20060101AFI20210128BHJP
C05C 13/00 20060101ALI20210128BHJP
C05C 3/00 20060101ALI20210128BHJP
C05D 1/00 20060101ALI20210128BHJP
C05G 1/00 20060101ALI20210128BHJP
C05G 5/00 20200101ALI20210128BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
B01J2/16
C05C13/00
C05C3/00
C05D1/00
C05G1/00 A
C05G5/00
B01J2/00 C
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-187686(P2018-187686)
(22)【出願日】2018年10月2日
(65)【公開番号】特開2019-63794(P2019-63794A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2018年11月14日
(31)【優先権主張番号】17194295.6
(32)【優先日】2017年10月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ヤーコプ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヨアヒム ハッセルバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク エグリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデマー ヘスベアガー
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−501140(JP,A)
【文献】
特開2000−044371(JP,A)
【文献】
特開昭58−145685(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/059864(WO,A1)
【文献】
特開昭56−015834(JP,A)
【文献】
米国特許第05560896(US,A)
【文献】
特開2002−249390(JP,A)
【文献】
特開2001−276598(JP,A)
【文献】
特開2005−225882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J2/00−2/30
C05B1/00−21/00
C05C1/00−13/00
C05D1/00−11/00
C05F1/00−17/993
C05G1/00−5/40
C07B31/00−61/00,63/00−63/04
C07C1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧造粒による、メチオニン、メチオニルメチオニン、カリウム塩および硫酸アンモニウムを含有する粒状組成物の製造方法において、
(a) 硫酸アンモニウム30〜40重量%を含有する第一の水溶液または水性懸濁液(i)と、
メチオニン2〜6重量%、メチオニルメチオニン4〜8重量%およびカリウム塩におけるカリウム6〜14重量%を含有する第二の水溶液または水性懸濁液(ii)と、
ガスと
を、3流体ノズルにより流動層に噴霧すると同時に前記流動層内で水を蒸発させて粗粒子を生成させる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
さらに、(b) 前記工程(a)で得られた粗粒子を乾燥させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチオニン3〜5重量%および/またはメチオニルメチオニン5〜7重量%および/またはカリウム塩におけるカリウム8〜12重量%を含有する第二の水溶液または水性懸濁液(ii)を使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二の水溶液または水性懸濁液(ii)を、前記第二の水溶液または水性懸濁液(ii):前記第一の水溶液または水性懸濁液(i)=1.0:0.5〜1.0:3.0の重量比で使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
空気、窒素またはCO2をガスとして使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)において、前記方法を、流動層内で60〜130℃の流動層内温度で実施することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記硫酸アンモニウムを含有する第一の水溶液または水性懸濁液(i)を準備する工程をさらに含み、これを、メタンおよびアンモニアによるシアン化水素の製造で得られたシアン化水素およびアンモニアを含有するガス混合物を硫酸水溶液で処理し、次いで得られた水溶液をアンモニアで中和することによって行う、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記第二の水溶液または水性懸濁液(ii)を準備する工程をさらに含み、これを、
5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントインを炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウムで加水分解してメチオニンカリウム水溶液を生成させる工程と、
該メチオニンカリウム水溶液を二酸化炭素で中和してメチオニンを形成させる工程と、 次いで該メチオニンを晶析させる工程と
を少なくとも含むメチオニンの製造方法で形成された母液を単離することによって行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の水溶液または水性懸濁液(i)を、噴霧造粒の後に、3〜6のpHを有する粒状組成物が得られるような量の硫酸とさらに混合させ、ここで、前記pHは、該粒状組成物を水に溶解させた後に該粒状組成物の10重量%水溶液について、3MのKCl溶液の形態の液体電解質を充填したガラスpH電極を用いて室温で測定したものである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、工程(a)で使用する前記第二の水溶液または水性懸濁液(ii)を工程(a)の前に水の蒸発により濃縮させて、固形分が最高で70重量%である水性懸濁液を生成させる、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(b)で得られた粒子に、硫酸アンモニウム30〜40重量%を含有する水溶液を噴霧すると同時に水を蒸発させることによって硫酸アンモニウムシェル層を施与し、前記粒子上に形成された前記硫酸アンモニウムシェル層の割合は、前記形成された粒子の全重量に対して5〜30重量%である、請求項2から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記カリウム塩は、無機酸または有機酸の少なくとも1つの塩として存在する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記カリウム塩は、ギ酸のカリウム塩、酢酸のカリウム塩、プロパン酸のカリウム塩、2−ヒドロキシプロパン酸のカリウム塩、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸のカリウム塩、メチオニンのカリウム塩、メチオニルメチオニンのカリウム塩、KHCO3、K2CO3、KHSO4およびK2SO4を含む群から選択される少なくとも1つのカリウム塩であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
肥料または肥料添加剤としての、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法により製造される組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、メチオニン、メチオニルメチオニン、カリウム塩および硫酸アンモニウムを含有する粒状組成物の製造方法ならびにその使用に関する。
【0002】
アミノ酸であるメチオニンは、現在、世界規模で工業的に大量生産されており、商業的に非常に重要である。メチオニンは、医薬品や健康およびフィットネス用品のような多くの分野で使用されているが、特に飼料用添加剤として様々な家畜向けに多くの飼料で用いられている。工業規模では、メチオニンは、Strecker合成法の一変法であるBucherer−Bergs反応により化学的に製造されている。この場合、出発物質である3−メチルメルカプトプロパナール(2−プロペナールおよびメチルメルカプタンより製造)、シアン化水素酸(シアン化水素)、アンモニアおよび二酸化炭素が反応して5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン(メチオニンヒダントイン)が生成され、次いで、これがアルカリで炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウムを用いて加水分解されてメチオニンカリウムが生成される。最終的に、二酸化炭素での処理によりメチオニンのカリウム塩からメチオニンが遊離し、これを、炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウムを含有する母液から析出物としてろ別することができる(米国特許第5770769号明細書(US 5770769))。これらのアンモニア試薬、炭酸カリウム試薬および炭酸水素カリウム試薬ならびに二酸化炭素は、一般的にはメチオニンの工業的製造においてリサイクルされる。しかし、随時、このヒダントインの加水分解循環部において水性の母液の一部を新たな水酸化カリウムに置き換えることで、不活性化した中性ギ酸カリウムの形態のカリウム塩を循環部からほぼ完全に取り除く必要がある(「パージ」)。メチオニンヒダントイン溶液中に存在するシアン化水素の残留物およびヒダントイン加水分解により生じるカリウム塩から、ギ酸カリウムが形成される(国際公開第2013030068号(WO 2013030068 A2))。メチオニン合成のもう1つの副生成物は、ジペプチドメチオニルメチオニンである(欧州特許出願公開第1564208号明細書(EP 1564208 A1))。一般的に、ヒダントインの加水分解循環部における副生成物の過剰な富化を回避しなくてはならない。それというのも、さもなければ下流で結晶形成の妨害が生じてしまうためである。
【0003】
いわゆるパージ溶液は、メチオニン約2〜6重量%、メチオニルメチオニン約4〜8重量%およびカリウム塩の形態のカリウム約6〜14重量%を含有する。こうしたカリウム、窒素および硫黄の含分ゆえに、この溶液は液体肥料として適している(C.C. Mitchel and A.E. Hiltbold, Journal of Plant Nutrition, 17(12), 2119〜2134, 1994)。しかし、このような肥料を固体の形態で提供することが望まれていた。それにもかかわらず、この溶液を脱水して固体の易流動性固形混合物を形成して、この有価材料の貯蔵や輸送をより容易にしようとする試みは、これまで失敗に終わっている(上記文献の例6参照)。
【0004】
したがって、本発明の根底を成す課題は、メチオニンおよびカリウム塩をベースとする固形肥料、ならびに該固形肥料の簡便かつコスト効率の良い製造方法であって、特に上記のヒダントインの加水分解循環部の水性の母液を有価材料として使用することも可能である方法を提供することであった。
【0005】
この根底を成す課題は、メチオニン、メチオニルメチオニン、カリウム塩の形態のカリウムおよび硫酸アンモニウムを含有する水性出発混合物とガスとを一緒にノズルにより液体成分として噴霧する方法が見出されたことにより達成された。この水性出発混合物は、最初に、前記パージ溶液から、硫酸アンモニウム溶液を制御しながら加えることにより生成したものである。これに次いで行われる、この水性出発混合物の噴霧造粒による易流動性でかつ貯蔵安定性を示す固形組成物の生成には、2流体ノズルを有利に使用した。この方法は、未公開の出願番号16176371.9のEP文献にすでに記載されている。しかし、噴霧造粒に2流体ノズルを使用するには、出発溶液、すなわちパージ溶液と硫酸アンモニウム水溶液とを予め混合しておく必要がある。さらに、H
2SO
4の添加によりpHを酸性範囲に調整すると、発熱し、またCO
2が放出され、それによって混合物の発泡が始まる。さらに、大半がMet−Metおよびメチオニンジケトピペラジンからなる粘着性固形物が析出する。この粘着相によって、ノズル、管路および撹拌容器が経時的に閉塞する。ノズルや管路の粘着を防ぐべく、噴霧前にこうした粘着相を高性能分散装置により破砕して微細な液滴とすることができるが、これはまたも付加的なコストや煩雑さを意味する。
【0006】
出願番号16176371.9のEP出願に記載の各実験でも、噴霧造粒技法ゆえに最終生成物に粘着相の微細な液滴が含まれることが示されている。しかし、長期にわたって壁部析出物が堆積し得ることから、こうした粘着相の生成によって供給容器の定期的な清浄化が必要となる。
【0007】
したがって、達成すべき特定の課題は、上記の欠点を有しないかまたは低減された程度でしか有しない噴霧造粒法を見出すことであった。より具体的には、極めて簡便かつ直接的な方法で、パージ溶液および硫酸アンモニウム水溶液から、上記で特定したタイプの易流動性でかつ貯蔵安定性を示す固形組成物を製造できることが望まれていた。
【0008】
上記課題は、メチオニン、メチオニルメチオニン、カリウム塩および硫酸アンモニウムを含有する粒状組成物を製造するための噴霧造粒法において、
(a) 硫酸アンモニウム30〜40重量%を含有する第一の水溶液または水性懸濁液(i)と、
メチオニン2〜6重量%、有利には3〜5重量%、メチオニルメチオニン4〜8重量%、有利には5〜7重量%およびカリウム塩の形態のカリウム6〜14重量%、有利には8〜12重量%を含有する第二の水溶液または水性懸濁液(ii)と、
ガスと
を、3流体ノズルにより流動層に噴霧すると同時に水を蒸発させて粗粒子を生成させ、必要に応じて
(b) 前記工程(a)で得られた粗粒子を乾燥させる
ことを特徴とする方法により達成される。
【0009】
これら2つの水溶液または水性懸濁液(i)および(ii)は、使用される濃度に応じて不溶成分を多少なりとも含んでいてよい。
【0010】
第二の水溶液または水性懸濁液(ii)は、十分な量のナトリウムをナトリウム塩の形態で含んでいてもよく、総じて、ナトリウムを4重量%まで、有利には3重量%まで含んでいてもよい。これは特に、例えばEP出願番号17171060.1のEP特許出願に記載されているように、予め、メチオニンヒダントインのアルカリ加水分解反応によるメチオニンのアルカリ金属塩の生成における鹸化剤として、水酸化カリウムと水酸化ナトリウム、炭酸カリウムと炭酸ナトリウムおよび/または炭酸水素カリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物を使用した場合に該当する。
【0011】
本方法は、いずれにせよ、通常の装置で簡便かつコスト効率よく実施される。
【0012】
3流体ノズルを用いた場合、有利なことに、噴霧前に、出発媒体、すなわちパージ溶液(第二の水溶液または水性懸濁液ii)と、硫酸アンモニウム溶液(第一の水溶液または水性懸濁液i)とをそれぞれ混合容器内で予め混合しておく必要がなく、混合はノズルの直後に行われる。
図2に、3流体ノズルの原理を示す。このノズルは、液状出発媒体の入口(ポート)を2つ備え、ガス(例えばノズルエアー)の入口を1つ備える。このノズル装置に、例えば適切なポンプによって噴霧溶液が供給される。ノズルへ溶液を流すための2本の流路が、一方は場合により延長された中央の管として位置しており、他方は中央の管とこの中央の管を覆う内側ジャケット管との間の内側環状間隙として位置している。ガスの流路は、例えば欧州特許第716640号明細書(EP 716640 B1)の
図1に示されているように、内側ジャケット管とこの内側ジャケット管を覆う外側ジャケット管との間の外側環状間隙により形成されている。これら3本の流路の出口はいずれも、ノズルヘッドに向かって開口している。原則として、本明細書で示す必須の機能に相当する3流体ノズルの、これ以外の実施形態も同様に使用可能である。3流体ノズルのように運転される4流体ノズルを使用することも可能である。4流体ノズルを使用する場合、考えられるもう1つの手法は、第4の入口を用いて、硫酸アンモニウムの溶液または懸濁液(i)を酸性にするための硫酸を供給することである。この手法には、予め硫酸アンモニウム溶液を酸性にする工程を行っておく必要がなく、この工程が噴霧造粒の際にイン・サイチュで直接行われるという利点がある。
【0013】
中央の管のポートを通じて第一の水溶液または水性懸濁液(i)(硫酸アンモニウム溶液、場合によりさらなるH
2SO
4と混合されたもの)が供給され、第二の水溶液または水性懸濁液(ii)(例えば、パージ溶液)は、第二のポートを通じて内側環状間隙へと加えられる。これら2つの水溶液または水性懸濁液(iおよびii)を供給するための2本の流路は、互いに切り替えることも可能である。それに対して、ガスは第三のポートを通じて外側環状間隙に導入される。この流路は、この目的に適しているとともに、液状媒体を微細な液滴に細分化する役割を果たす。それによって、これらの液滴がプロセス空間内に分配されて、例えばプロセス空間内に存在する流動層(流動化固体)へと噴霧される。それと同時に、ガス、有利には熱風または窒素によって装置内の底部から頂部への流れが生じ、それによって、まずは存在する材料が流動化され、次に噴霧液体が蒸発される(
図1)。
【0014】
噴霧された固体が、既存の粒子に付着した状態で保たれることが理想的であり、それによって、ばらばらの粒子の成長を調節することができる。排出部において達成できる粒度は、流動層系における核のバランスに依存する。これは実質的に、摩耗または衝突しない噴霧液滴による核形成の平衡と、造粒物の構成とによって決まる。粒度は、乾燥や噴霧のパラメーターの選択によっても、流動層内での粉砕機の使用によっても、制御された様式で調節可能である。こうして製造された造粒物を、目的の粒度で分級設備(例えば、シフターおよびアンダーフローせき)を用いて乾燥チャンバから連続的に排出させることができる。
【0015】
ここで、有利な一手法として、水溶液または水性懸濁液(ii)を、水溶液または水性懸濁液(i)に対して1.0/0.5〜1.0/3.0の重量比で使用するという手法が挙げられる。なぜならば、一方ではこの手法により所望の粒状組成物が容易に得られ、また他方では噴霧造粒を有利に運転できるためである。
【0016】
さらに有利には、空気または窒素がガスとして使用される。なぜならば、これらはいずれも好ましい条件で入手可能であり、また生じるオフガスを燃焼設備に問題なく供給できるためである。
【0017】
噴霧造粒法a)は、有利には流動層で実施され、より具体的には60〜130℃の流動層温度で実施される。なぜならば、一方ではこの手法により所望の粒子特性が容易に得られ、また他方では噴霧造粒を有利に運転できるためである。
【0018】
3流体ノズルを用いて行われる噴霧造粒法のさらなる利点は、以下の通りである:
− 混合容器も、出発媒体の予備混合やpH調整のための容器の冷却も不要であること。
− 泡形成や粘着相の発生が回避されること。
− H
2SO
4でのpH調整により生じる熱を、本造粒法に利用できること。
− 吸湿性や貯蔵安定性といった生成物特性の向上が達成されること。
− (EP 16176371.9に記載の)2流体ノズルを用いた場合に得られる造粒物とは対照的に、本発明により製造される造粒物については、ケーク形成傾向が大幅に低減されており、また吸湿性がより低いこと。
【0019】
第二の水溶液または水性懸濁液(ii)として、有利には、前記のメチオニンの製造方法であって、5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントインを炭酸カリウム、炭酸水素カリウムで加水分解して水性メチオニンカリウムを生成させる工程(メチオニンの工業的製造におけるヒダントインの加水分解循環)と、該水性メチオニンカリウムを二酸化炭素で中和してメチオニンを形成させる工程と、次いで該メチオニンを晶析させる工程とを少なくとも含む方法からの単離により得られる水性の母液を直接使用することができる。
【0020】
有価材料を含有する母液は、環境に配慮した方法で適切な回収に移される。
【0021】
硫酸アンモニウムを含有する第一の水溶液または水性懸濁液(i)は、有利には、例えばAndrussow法(米国特許第8802020号明細書(US 8802020 B2))やBMA法(F.Endter, Chemie−Ing.−Techn.30,1958, No.5, 305−310)によるシアン化水素(シアン化水素は、メチオニンの工業的な大量生産に必要である)の製造などの、メタンおよびアンモニアによるシアン化水素の製造から直接的に得られたものであってよく、また、実質的に、これらの各方法で製造されたシアン化水素およびアンモニアを含有するガス混合物を硫酸水溶液で処理し(硫酸スクラブ)、次いで、得られた水溶液をアンモニアで中和することにより形成される。これと同時に、この溶液は、環境に配慮して有効な回収分として供給される。
【0022】
このように、メチオニンの工業的製造から得られる有価材料の2つの付加的な流れが、さらなる添加剤を必要とすることなく、直ちに、有利な新規生成物へと移行される。
【0023】
カリウム塩は、無機酸または有機酸の1つの塩の形態をとることも、無機酸または有機酸の2つ以上の塩の形態をとることもでき、例えば、ギ酸のカリウム塩、酢酸のカリウム塩、プロパン酸のカリウム塩、2−ヒドロキシプロパン酸のカリウム塩、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸のカリウム塩、ならびに適切なpHのメチオニンのカリウム塩およびメチオニルメチオニンのカリウム塩、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、硫酸水素カリウムおよび硫酸カリウムを含む群から選択される少なくとも1つのカリウム塩の形態をとることができる。本方法の結果としてナトリウム塩の形態のナトリウムの量が著しく多い場合には、当該ナトリウム塩は、より具体的には、本明細書に記載したカリウム塩に相応する。
【0024】
第一の水溶液または水性懸濁液(i)、例えば硫酸アンモニウム溶液は、有利には工程(a)でのそのさらなる処理の前に、ある量の硫酸と混合される。この量とは、噴霧造粒の後に、粒状組成物であって、水に溶解した状態の該粒状組成物が、該粒状組成物の10重量%水溶液について、液体電解質(3MのKCl溶液)を充填し、ガラスpH電極を用いて室温で測定した場合に3〜6、有利には3.5〜5.5のpHを有する粒状組成物がちょうど得られるような量である。添加すべき硫酸の正確な量は、特に使用される水溶液または水性懸濁液(i)および(ii)の既存のpHに依存し、また、こうした量は、いずれの場合にも予備的な実験で容易に決定することができる。
【0025】
工程(a)で溶液または懸濁液(i)および(ii)を処理する場合には、硫酸アンモニウムおよび炭酸カリウムから炭酸アンモニウムが部分的に形成され、これが加熱の際に分解してアンモニアおよび二酸化炭素が形成され、これらのガスの形態で排出される。溶液または懸濁液(i)に硫酸を加えることによりアンモニアの放出の大部分が妨げられ、アンモニアは再び硫酸アンモニウムの形態で結合して、実質的には二酸化炭素のみが漏出する。pHを3〜6に調整することのもう1つの効果は、本発明による方法の工程(b)で得られる粒子の貯蔵安定性が向上するという点にある。この手段により、粘着相の析出物が、さらにかつ有利に妨げられる。
【0026】
本発明による方法の有利な一実施形態の場合には、工程(a)で使用される第一の溶液または懸濁液(i)が工程(a)の前に水の蒸発により濃縮されて、固形分が最高で70重量%である水性懸濁液が生成される。この濃縮物は、概して安定な懸濁液を形成する。この濃縮プロセスによって、本方法でのエネルギーコストが抑えられる。
【0027】
本発明による方法は、バッチ法としても連続法としても実施可能であり、例えば流動層造粒装置で実施することも、移動層造粒装置で実施することも、混合造粒装置で実施することも可能である。
【0028】
ここで、噴霧造粒は有利には流動層で実施され、ボトムスプレー方式またはトップスプレー方式により実施される。このような方法によって、粒度分布が比較的狭い本発明による粒状組成物の特に均一な粒子の形成が可能となる。排出部において達成できる粒度は、この場合、流動層系における核のバランスに依存する。これは実質的に、摩耗または衝突しない噴霧液滴による核形成の平衡と、造粒物の構造とによって決まる。粒度は、乾燥や噴霧のパラメーターの選択によっても、粉砕機の使用によっても、制御された様式で調節可能である。こうして製造された造粒物を、所望の粒度で分級ユニット(例えば、シフターおよびアンダーフローせき)を用いて乾燥チャンバから連続的に排出させることができる。生成物の粒度がより狭くなるように、下流のふるいによって調節することができる。ふるい分けにより生じたふるい上の粒子はミルにより粉砕され、これと、サイクロンで分離された微細粒子とが一緒になって(例えば、空気の作用でまたはコンベアスクリューにより)リサイクルされる。これは、造粒に十分な核をプロセスチャンバ内に存在させて、生成物の損失をなくすことを目的としている。
【0029】
噴霧造粒は、60〜130℃、有利には80〜110℃の流動層内温度で実施される。運転圧は、本方法にほとんど影響を与えない。系からの粉塵の放出を回避するため、本方法は、典型的には5〜50mbarほどわずかに低い圧力で運転され、有利には約10mbarほどわずかに低い圧力で運転される。
【0030】
また噴霧造粒は、有利には、ノズル圧力1.0〜5.0bar、理想的には2.0〜3.0barで、ノズル直径1.0〜8.0mmの1つまたは複数のノズルにより実施される。使用される混合物の噴霧速度は、系サイズに応じて選択されることが望ましい。
【0031】
使用されるノズルのタイプは、3流体ノズル(空気式アトマイザー)であり、アトマイザー形としての旋回式ソリッドコーンを備えたもの(例えば、Schlick社製)が好ましい。
【0032】
本発明
による方法の工程(a)または(b)で得られた粒子に、さらに、硫酸アンモニウム30〜40重量%を含有する水溶液を噴霧すると同時に水を蒸発させることによって硫酸アンモニウムのシェル層を設けること
ができ、粒子上にこのようにして形成された硫酸アンモニウムシェル層の割合は、形成された粒子の全重量に対して5〜30重量%である。この場合の特別な利点は、シェル層によって付加的に望ましくない臭気成分が封入され、このようにしてほとんど臭気のない生成物が生じることである。粒子の噴霧は、実用的には、既存の3流体ノズルを用いて、噴霧造粒に使用される装置内で直接行われてもよい。しかし、2流体ノズルにより噴霧を行うことも同様に可能である。噴霧に使用すべき硫酸アンモニウム水溶液は、前記の第一の水溶液または水性懸濁液(i)と同一であってもよく、すなわち、例えばシアン化水素の製造に由来するものであってもよい。
【0033】
比較的小規模の場合には、バッチ式が有利である。すなわち、造粒プロセスの後にコーティングが行われる。工業的製造の規模の場合には、連続式が有利である。この目的のためには、造粒装置が幾つかのゾーンに分かれていることが有利である。第一のゾーンは、造粒工程(a)に用いられる。最初に形成されたこれらの造粒物を適切に処理するために、その後にコーティングゾーンが続き、次いで乾燥ゾーンおよび冷却ゾーンが続く。後続の乾燥と冷却とを別々の系で実施することも可能である(例えば、流動層乾燥装置/流動層冷却装置であって、加熱要素および冷却要素が組み込まれたもの)。適切な造粒装置は、通常の流動層系または移動層系である。
【0034】
本発明による方法により製造された粒状組成物は、肥料または肥料添加剤としての使用に適しており、より具体的には窒素/カリウム/硫黄(NPS)肥料として、作物を栽培する場所への適用に適している。従来は液体肥料として使用されているパージ溶液と比べて、本組成物は、活性成分濃度が明らかに高いとともに、貯蔵特性や生成物安定性がより良好である。本生成物は、安全性の観点からも無害である。例えば、本生成物は、可燃性の粉塵生成物ではない。適切なタンクやタンカー車両での液体輸送や貯蔵も不要である。この生成物を、例えば袋や大型のバッグといった比較的小型の入れ物で顧客に配送することも可能である。
【0035】
本発明により製造された粒状組成物は、約1〜4mmの平均粒度を有する。このことには、特にこれよりも大きな粒子と比べて、本粒状組成物を栽培場所に比較的に均一に分配することができ、したがって固形肥料としての適用に付随して生じる供給量の超過や供給量の過少をより容易に回避することができるという利点がある。
【0036】
高温湿潤条件下で貯蔵した場合、3流体ノズルを用いた噴霧造粒により本発明により製造された粒状組成物は、2流体ノズルを用いて製造された粒状組成物よりも水分吸収性が低く(例2)、また同一のベースで、ケーク形成傾向が著しく低く(例3)、これによって、例えば流動特性の向上などといった、より有利な取扱特性や加工特性が得られる。
【0037】
本発明による組成物中に存在する硫酸アンモニウム自体によって、粒子のケーク形成が低減されるため、結合剤および/または流動補助剤の添加は、概して不要である。しかし、結合剤や流動補助剤を本発明による肥料組成物の製造に使用する意図がある場合には、流動層造粒装置がバッチ式で運転される際に、流動層内で結合剤または流動助剤と出発材料とを混合することにより、結合剤や流動補助剤が有利に導入される。適切な出発材料(担持材料)は、特に、第二の水溶液もしくは水性懸濁液(ii)および/または冒頭に記載したヒダントインの加水分解循環部から得た母液(パージ溶液)を蒸発させて乾燥させた残留物を、例えばスクリーンミルを用いて、例えばd50=150μmの適切な平均粒度となるように予め粉砕しておいたものである。あるいは、メチオニン粉末(例えば、粒度d50=180μmを有するもの)またはEkoperl
(登録商標)(多孔質のケイ酸塩火成岩(パーライト)であって例えば粒度0.125〜2mmであるものから構成される油性結合剤)を出発材料として使用することも可能である。
【0038】
適切な結合剤は、例えば、多孔質のケイ酸塩火成岩(例えばパーライト)、沈降シリカまたはフュームドシリカまたは多孔質の炭酸塩岩である。
【0039】
運転、例えば製造法が連続式である場合には、結合剤または流動補助剤は、有利には、インジェクター、吸引サイクルコンベア装置、空気式コンベア装置、ロータリーバルブ、撹拌供給容器またはコンベアスクリューにより添加される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、噴霧造粒を行う装置を示す図である。
【
図2】
図2は、使用した3流体ノズルを示す図である。
【
図3】
図3は、プロセスガスの流れ方向での分配プレート(ガラスフリット)を示す図である。溶液/懸濁液を導入するために、ボトムスプレー法で3流体ノズルが中央に挿入される。
【
図4】
図4は、貯蔵安定性および吸湿性を示す図である。
【0041】
例
例1
3流体ノズルを用いた噴霧造粒試験を、実験室用流動層造粒ユニット(Glatt ProCell AGT150;
図1に図示した構造参照)においてバッチ式で実施した。これらの実験により、流動層チャンバおよび3流体ノズル(
図2参照)においてケーク形成も堆積物も生じない、安定した造粒物の問題のない製造が裏付けられる。これらの試験によってさらに、アンモニアの結合および粘着相の発生の防止には、短い混合時間で十分であることも示される。
【0042】
適切な装置および本方法の実施についての包括的説明
使用したGlatt社製流動層造粒ユニット(ProCell)を、
図1に示す。円筒形のプロセスチャンバは、高さ300mm、直径150mmである。内部のテキスタイル製フィルター(バッグフィルター6つ)により、プロセスエアーから粉塵を収集した。これらのフィルターを、圧縮空気パルスによりプロセスエアーと向流で清浄化した。フィルターセパレーターの代わりに、例えばサイクロンを使用することも可能である。プロセスガスを中央の窒素ネットワークから供給し、吸引式で運転するファンによりこのユニットに運搬した。したがって、このプロセスチャンバ内で優勢であった圧力は、減圧(約−10mbar)であった。このプロセスチャンバに入る前に、空気を電気ヒーター(9kW、Helios社製)で直接加熱した。次いで、加熱したこの空気をガラスフリットに通す。このガラスフリットは、粒子に対する分配プレートとしての役割を果たす。細孔分布を狭くすると、流れが均一に分配される。上方向に向かうガス流において、粒子をプロセスチャンバ内で流動化状態にし、噴霧した液体を、乾燥空気による熱の導入により蒸発させた。ここで、噴霧した固体が、既存の粒子に付着した状態で保たれることが理想的であり、それによって、ばらばらの粒子の成長が確立される。排出部において達成できる粒度は、流動層系における核のバランスに依存する。これは実質的に、摩耗または衝突しない噴霧液滴による核形成の平衡と、造粒物の構成とによって決まる。粒度は、乾燥や噴霧のパラメーターの選択によっても、流動層内での粉砕機の使用によっても、制御された様式で調節可能である。こうして製造された造粒物を、目的の粒度で分級設備(例えば、シフター、アンダーフローせき)を通じて乾燥チャンバから連続的に排出させることができる。本例では、生成物を連続的に取り出すことなくバッチ法で造粒を実施した。
【0043】
ガラスフリットの中央に、3流体ノズルを設置する。この3流体ノズルを通じて、各水溶液/水性懸濁液(溶液または懸濁液(i)または(ii)のそれぞれ、場合により濃縮された形態のもの)を、造粒用流動層に導入することができる。簡潔に表すために、本説明では、「溶液または懸濁液(i)」および「溶液または懸濁液(ii)」という用語に対して、それぞれ「溶液i」または「溶液ii」という用語も用いる。
【0044】
噴霧導入を、ボトムスプレー法により行った。この系では、ノズルからのプロセスガスおよび噴霧ジェットを、並流で下方からプロセスチャンバに導入した。使用した3流体ノズルは、Evonik Industries AG社による自社生成物であり、これは、Schlick社製の元の部材(渦流式エレメント、スピンドルおよびエアーキャップ、946 S1型、Duesen−Schlick GmbH)からなる。3流体ノズルは、延長された中部の管を有し、この中央の管は、Duesen−Schlick社から供給された状態よりも約1mm短い。ノズルのエアーキャップは、
図2には示されていない。
図3に、分配プレートにおけるノズルの位置を示す。
【0045】
例1による上記の装置内での噴霧造粒について、以下に挙げた組成の水溶液を、溶液(ii):溶液(i)=1:2の混合比で使用した。
【0046】
水溶液(i):硫酸アンモニウム35重量%
水溶液(ii):メチオニン4.6重量%
メチオニルメチオニン6.3重量%
カリウム9.7重量%。
【0047】
溶液iおよび溶液iiを、各々室温でプラスチックキャニスターから抜き出した。NH
3の放出を回避するために、濃度20%の硫酸を、第一の水溶液または水性懸濁液(i)に添加した。噴霧前に、この溶液i+H
2SO
4を、混合容器およびマグネチックスターラーで均質化させた。それぞれ溶液iおよび溶液i+H
2SO
4と溶液iiとが入った2つの供給容器を天秤(測定範囲上限6kg)に載置して、供給容器の重量の減少から重量測定法によってノズル導入量(噴霧量)を求めた。これらの溶液/懸濁液を供給容器から抜き出し、これを、以下のポンプを使用してプロセスチャンバに導入した。
【0048】
【表1】
【0049】
本方法向けに設定したプロセスパラメーターを、表1に列挙する。これらのパラメーターを、記載したプローブ/センサを用いて試験の間に連続的に検出した。
【0050】
【表2】
【0051】
材料の準備
第二の水溶液または水性懸濁液(ii)を、前処理せずに直接噴霧した。事前に蒸発させておくことによりiiを濃縮することは常に可能であり、大規模工業プロセスではエネルギーの理由で望ましい。
【0052】
第一の溶液または懸濁液(i)に硫酸を加えることによる、溶液i+H
2SO
4の準備
1. 初めに溶液iを導入した。
2. 濃度20%の硫酸を添加して、最終混合物におけるH
2SO
4濃度を4.4重量%とした(溶液i+H
2SO
4に相応する)。
【0053】
3流体ノズルを使用して、これら2つの溶液を、互いに別々にプロセスチャンバおよび既存の出発材料に噴霧した。出発材料として利用したのは、溶液iおよび溶液iiを乾燥させたものの混合物であった。使用前に、Erweka社(Heusenstamm)製スクリーン造粒装置FGSを用いて、乾燥させた出発材料を粉砕し、粒度を600μmとした。次に、500gを量り分け、これを出発装入物として使用した。これに代えて、メチオニン粉末(粒度d50=180μm)またはEkoperl
(登録商標)(多孔質のケイ酸塩火成岩(パーライト)であって例えば粒度0.125〜2mmであるものから構成される油性結合剤)を出発材料として使用することも可能である。
【0054】
装置の準備
生成物温度が80〜90℃となり、ガス入口温度が120℃となるように、流動層造粒装置内の出発材料を加熱した。次いで、溶液iiおよびi+H
2SO
4を蠕動運動ポンプによりノズルに搬送し、このノズルからこれらの溶液を流動層において出発材料に噴霧した。
【0055】
流動化を、40〜200m
3/hの空気体積流量で行った。これは、流れの衝突が生じる優勢的な領域(0.018m
2)における流量が0.6〜3.1m/sであることに相応する。ユニットへの入口で、動翼輪を使用してガス体積流量を測定した(
図1参照)。ここで、進入する空気を初めに冷却して乾燥させた。次いで、これを電気ヒーターに通した。ユニット内の分配プレートの下方に温度センサを設置し、この温度センサによって、分配プレートのすぐ下の、したがってガスがプロセスチャンバに入る前の、ガス温度を測定した(
図1、温度測定点1)。このガス温度を制御変数として用い、これを予め定めておいた。この測定値にあわせてガスヒーターによるエネルギーの投入量を制御し、プロセスエアーを、分配プレートで予め定めた温度にまで加熱した。
【0056】
導入した加熱エネルギーに応じて、分配プレートでの空気の温度が変化する。したがって、分配プレートでのガス密度を考慮して、ユニットを通過するガス体積流量が一定の体積流量となるように調節した。これは、流動層ユニットのプロセス制御系により自動的に行われた。この系によって、吸引側に設置したファンを制御した。
【0057】
例1を、
図1による上記の装置内で非連続的に実施した。この場合に設定した実験パラメーターは、以下の通りであった:
流動層噴霧造粒において設定したパラメーター:
T給気=100〜200℃
T流動層=60〜110℃
T排気=60〜130℃
噴霧速度=溶液ii 1kg/hおよび溶液i+H
2SO
4 2.6kg/h
ノズル圧(3流体ノズル)=1.2bar
乾燥空気体積流=40〜200m
3/h。これは、記載した流入領域(0.018m
2)での流量が0.6〜3.1m/sであることに相応する。
シーブトレイ上の系圧力=大気圧よりも10mbar低い
平均滞留時間:0.5〜3時間。
【0058】
評価および結果:生成物特性:
【表3】
【0059】
得られた噴霧造粒物の10%水溶液について、室温で、3MのKCl溶液の形態の液体電解質を充填し、ガラスpH電極を使用して、粒状組成物のpHを測定した。
【0060】
例2:噴霧造粒物についての吸湿性試験
試験物質の吸水量を測定するために、この試験物質を、所定の時間にわたって、40℃、相対湿度75%の所定の標準条件に曝した。次いで、重量測定により吸水量を測定した。
【0061】
これを、人工気候室(例えば、VOETSCH、VC0033)、ガラス蓋付きの浅い秤量皿(直径約5cm)および分析天秤(0.0001gまで読取り可)を用いて行った。この手法について、測定用の均質な物質5gをそれぞれ正確に量り分け、人工気候室内で所定の標準気候条件下に蓋の開いた秤量皿内で1〜4時間貯蔵した。これらの秤量皿を人工気候室から取り出した後に再び閉じてそれぞれ秤量して、重量増加(すなわち水分吸収量)を測定した。
【0062】
ここで、例1による3流体ノズルを用いて本発明により製造した噴霧造粒生成物を、EP 16176371.9(例5)に記載の方法により2流体ノズルを用いて予め製造しておいた噴霧造粒生成物と比較した。
【0063】
2流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物の水分吸収量は、1時間後に2重量%であり、4時間後に5.3重量%であった。
【0064】
3流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物の水分吸収量は、1時間後に2重量%であり、4時間後に4.9重量%であった。
【0065】
3流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物は、2流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物の場合よりも吸湿性(吸水量)が低く、したがってより有利である。
【0066】
全体的に同様にして、25℃、相対湿度60%の所定の標準条件下で166時間にわたり、例1で得られた生成物とEP 16176371.9の例5で得られた生成物とで比較貯蔵試験を行って、重量測定により吸水量を随時測定した。結果を、
図4に示す。ここでも、2流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物よりも、3流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物の方が、吸水量が少ないことが示されている。
【0067】
例3:引掻き試験によるケーク形成傾向
テクスチャ解析装置を用いた「引掻き試験」法で、ステンレス鋼ローターを回転させながら試験体に侵入させ、この試験体を摩滅させる/「掻きとる」。付随する力は、ベースプレート内の高感度秤量系に影響を及ぼす。団結力が高いほど測定される力も強くなり、したがって生成物のケーク形成傾向も大きくなる。
【0068】
このために、乾燥棚(例えば、MEMMERT、UM600型)、人工気候室(例えば、VOTSCH、VC 0033型)、適合する金属スリーブを備えた金属シリンダー(シリンダー:0=50mm、h=80mm、m=1.3kg、ステンレス鋼)、ダイ下敷きとしてのテフロンディスク(80×80mm、厚さ5mm)、重さを加えるものとしてのダイ重り(金属シリンダー、m=4kg)、TA.XTPlus Texture Analyser(STABLE MICRO SYSTEMS製、Winopal GmbH、Ahnsbeckより販売)(ソフトウェアおよびアクセサリ付属)、ステンレス鋼ローター(直径=40mm)、金属スリーブおよびテフロン
(登録商標)ディスク用の搭載設備、データ収集用PCを用いた。
【0069】
測定を、以下のプロトコールにしたがって実施した:
乾燥棚中で40℃での、スリーブ、シリンダー、重りおよびテフロン
(登録商標)ディスクのコンディショニング
・スリーブを、テフロン
(登録商標)ディスク上に置く。
【0070】
・均質化した材料30gを導入(並行して5回測定を行う)し、その都度スパチュラで表面を平らにする。
【0071】
・シリンダーをスリーブに挿入し、組み立てた部材全体を人工気候室に置く。
【0072】
・4kgのダイ重りを、シリンダー上に置く。
【0073】
・次に、秤量したシリンダーを、人工気候室内で40℃/相対湿度75%で24時間貯蔵することにより耐候試験を行う。
【0074】
・次に、ダイ重りを取り除く。
【0075】
・スリーブおよびシリンダーをテフロン
(登録商標)ディスクと一緒に取り出し、約2時間にわたり室温に冷却する。
【0076】
・シリンダーを、スリーブから引き抜く。
【0077】
・スリーブを、テフロン
(登録商標)プレート上に残したままでテクスチャ解析装置の搭載設備に移し、面ファスナーで固定する。
【0078】
・ソフトウェアを用いて、以下のように測定手順を自動的に開始する(パラメーター:侵入速度2mm/s;ローター速度10rpm):ローターが下がるとトレイの高さが自動的に測定され、侵入深さがトレイの高さの75%となるようにセットされる。「引掻き」により生じる力が記録され、これを用いて(移動の)20%〜60%の範囲の力が評価される。
【0079】
評価:ケーク形成傾向を測定するために、各測定に関する力の範囲の平均値を用い、簡潔にするために[N/100]で報告した。ここでも、複数の測定の結果について平均をとった。これらの値が低いほど、ケーク形成傾向は低くなる。
【0080】
ここで、例1による3流体ノズルを用いて本発明により製造した噴霧造粒生成物を、ここでも、予めEP 16176371.9(例5)に記載の方法により2流体ノズルを用いて製造しておいた噴霧造粒生成物と比較した。
【0081】
2流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物は、228N/100のケーク形成傾向を示した。
【0082】
3流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物は、155N/100のケーク形成傾向を示した。
【0083】
3流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物についてのケーク形成傾向は、2流体ノズルを用いて製造した噴霧造粒物についてのケーク形成傾向よりもはるかに低く、したがってより有利である。したがってこの生成物は、従来の噴霧造粒物に比べ、高温湿潤条件に対してより優れた耐久性を示し、したがって、より取扱いが容易である。
【0084】
図面の説明
図1の説明
1.集塵装置(例えば、サイクロン、フィルター、湿式スクラバー)
2.ポンプ(例えば、容積式ポンプ)
3.ノズルエアー(例えば、空気、窒素)
4.加熱(例えば、電気的、スチーム、ガスを燃料とする)
5.給気ファン
6.シーブトレイ、コニデューア(Conidur)プレート
7.流動層、移動層
8.排気ファン
9.第一の水溶液または水性懸濁液(i)
10.第二の水溶液または水性懸濁液(ii)
11.ガス体積流量の測定点、アネモメーターインペラ
12.温度測定点1(ガス入口温度)
13.温度測定点2(流動層温度)
14.温度測定点3(排気温度)
図2の説明
1.ノズルエアー(例えば、空気、窒素)
2.第一の水溶液または水性懸濁液(i)
3.第二の水溶液または水性懸濁液(ii)
4.エアーキャップ
5.スプレーミスト
図4の説明
1:出願番号16176371.9のEP出願の例5の比較生成物(第一の測定)
2:出願番号16176371.9のEP出願の例5の比較生成物(第二の測定)
3:3流体ノズルを使用して製造した生成物(第一の測定)例1
4:3流体ノズルを使用して製造した生成物(第二の測定)例1