特許第6828008号(P6828008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828008
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】微生物を使用して布を染色する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20210128BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20210128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20210128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20210128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20210128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20210128BHJP
【FI】
   C12N1/00 P
   C12P1/00 Z
   !C12N1/15
   !C12N1/19
   !C12N1/21
   !C12N5/10
【請求項の数】35
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-503829(P2018-503829)
(86)(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公表番号】特表2018-513694(P2018-513694A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】GB2016000098
(87)【国際公開番号】WO2016162657
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】517351835
【氏名又は名称】カラーリフィックス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】COLORIFIX LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ニュージェント,デイビッド・グレン・ハスティー
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコニー,オール
(72)【発明者】
【氏名】アジオカ,ジェームズ
【審査官】 中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−284893(JP,A)
【文献】 特開2016−036285(JP,A)
【文献】 特開平06−341069(JP,A)
【文献】 特開平07−034387(JP,A)
【文献】 特開平06−257074(JP,A)
【文献】 日本大学農獣医学部学術研究報告, 1985.03.31, no. 42, pp.81-91
【文献】 FEMS Microbiol. Ecol., 2006, vol. 55, pp. 287-298
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/08
C12P 1/00−41/00
C09B 1/00−69/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を染色するための方法であって、
a.染料産生微生物を、染色される基材の存在下において、かつ、10%(v/v)〜90%(v/v)である所定の閾値濃度炭素源を含む増殖培地の存在下において、微生物が基材と接触して培養されるように培養する工程と、
b.培養された微生物を溶解して、染料を放出させ、基材と接触させる工程と、
c.放出された染料を、基材上に固定する工程とを含む、
方法。
【請求項2】
炭素源の所定の閾値濃度が、染料含有微生物の基材への移行率、及び、その後の基材への染料固定の品質を最適化するために選択される炭素源に応じる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶解工程及び固定工程が、1つのプロセスにおいて行われる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
溶解工程及び固定工程が、101℃を上回る熱に、基材及び微生物を曝すことにより行
われる、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
温度、二酸化炭素濃度、pH、及び攪拌頻度から選択される1つ以上の培養パラメータが、染料の産生、基材への移行率、及び基材への固定品質を最適化するために選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
工程1aの前に、染料産生微生物を、染色される基材の不存在下において、最初に培養する工程を、更に含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
工程1cの前後において、染色された基材を洗浄して、廃棄夾雑物を除去する工程を、更に含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
2種類以上の染料産生微生物種が、同時に使用される、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
2種類以上の染料が、1種類以上の微生物により産生される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
外因的に加えられた染料を含む更なる染料が、溶解工程及び固定工程中に存在する、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
基材が、天然、合成、半合成、及び混合基材から選択される、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
天然基材が、絹、綿、麻、ウール、及び革から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
半合成基材が、レーヨン及びアセテートから選択される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
合成基材が、ポリエステル、ナイロン、アクリル、エラスチン、ポリビニル、及び類似する石油化学派生品から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
染料産生微生物が、生物由来色素、色素タンパク質、蛍光タンパク質、及び生物発光タンパク質から選択される染料を産生する、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
微生物が、真核生物である、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
真核生物が、植物、藻類、真菌類、虫、及び節足動物から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
微生物が、原核生物である、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
原核生物が、古細菌及び真正細菌から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
原核生物が、バチルス菌種(Bacillus spp.)及びクロストリジウム菌種(Clostridium spp.)から選択されるグラム陽性細菌である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
原核生物が、エシェリキア菌種(Escherichia spp.)、シュードモナス菌種(Pseudomonas spp.)、クロモバクテリウム菌種(Chromobacterium spp.)、ヤンシノバクター菌種(Janthinobacter spp.)から選択されるグラム陰性細菌である、請求項18記載の方法。
【請求項22】
微生物が、遺伝子改変されている、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
培養工程が、インキュベーター、振とうインキュベーター、発酵槽、及びバイオ発酵槽から選択される増殖環境において行われる、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
培養工程が、1℃〜150℃の温度で行われる、請求項1〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
培養工程が、二酸化炭素濃度0%〜10%で行われる、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
培養工程が、pH1.5〜9.5で行われる、請求項1〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
増殖培地が、ルリア−ベルターニ培地(LB)、テリフィック培地(TB)、スーパーオプティマル培地(SOB培地)、カタボライト抑制スーパーオプティマル培地(SOC)、イーストエキストラクトペプトンデキストロース(YPD)から選択される、請求項1〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
炭素源が、デキストロース、グルコース、スクロース、ジャガイモデンプン、クエン酸塩、ラクトース、マルトース、グリセロール、キサントース、及びアラビノースから選択される、請求項1〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
炭素源が、グリセロールである、請求項1〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
炭素源が、15%(v/v)〜60%(v/v)の濃度範囲で存在する、請求項1〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
炭素源が、20%(v/v)〜40%(v/v)の濃度範囲で存在する、請求項1〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
培養された染料産生微生物を溶解して、染料を放出させ、基材と接触させることと、放出された染料を基材上に固定することとを含む、
染料産生微生物内に含有される染料を使用する、請求項1〜3のいずれか一項記載の基材を染色するための方法。
【請求項33】
熱が、直接的な熱又は間接的な熱から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項34】
直接的な熱が、適切な容器中の基材及び微生物を、炎、ホットプレート、又は電気ヒーターに曝すことを含み、又は、間接的な熱が、基材及び微生物を、オートクレーブもしくはマイクロ波で加熱することを含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
炭素源の閾値濃度が、増殖中の微生物の形状の歪みを促進するように選択される、請求項1〜31のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料含有微生物の紡繊繊維上への吸着が閾値濃度を上回る炭素源を使用して改善される、微生物を使用して、布、糸、及び繊維を染色するための方法に関する。微生物中に含有される染料分子は、熱処理工程を使用して、微生物から放出され、紡繊繊維に直接かつ局所的に固定される。前記熱処理は、キャリア微生物の不活化もする。単独又は複数の微生物種、及び、前記単独又は複数の微生物種により産生された単独又は複数の染料により、各種の織物色を生じさせることができる。微生物が染料を産生する前、同産生中、又は同産生後で、染料放出熱処理工程前に、適切な合成染料を加えることもできる。
【0002】
染料製造
大部分の現在の布用染料は、化学的に合成されており、毒性の前駆体及び溶媒を必要する。10,000種類を超える染料及び色素が、工業的に使用されており、世界中で年間700,000トンを超える合成染料が製造されていると推測される(Chequer et al., 2013, Eco-friendly textile dyeing and finishing, pp. 151-176)。
【0003】
色素の微生物による製造は、数百年間研究されてきた。色素、例えば、プロジギオシン及びビオラセインについて、天然の微生物が、色素製造の目的ために培養されてきた(特開平10−113169号公報、特開昭55−19070号公報、特開昭55−148091号公報、特開昭63−245666号公報)。
【0004】
米国特許第4,520,103号(Ensley)には、インドールを含まない培地中において、リコンビナント細菌により、インジゴを製造するための方法が記載されている。インドールからインジゴ又はインジゴチンを産生するリコンビナントE.coliの特定株を使用することについて、別の細菌由来の芳香族ジオキシゲナーゼをコードする遺伝子を使用して、インドールを変換することが、特に記載されている。
【0005】
インドール調製は、米国特許第5,112,747号(Van Grinsven et al)に記載されている。Hart et al(Microbiology 138 211-216 (1992))には、インジゴ及びインジルビンを産生するためにクローニングされたRhodococcus遺伝子を含有する、リコンビナントE.coliが記載されている。酸化されてインジゴになるインドールが産生される。
【0006】
米国特許第5,077,201号(Eyal et al)には、炭素及び窒素基質を含有する栄養培養培地中における深部発酵により、青色色素であるインジゴを産生することが見出された、Morel mushroomの新規な変異株が記載されている。
【0007】
数多くの炭素源が、微生物の色素形成に評価されてきた。同炭素源は、グリセロール、マルトース、スクロース、クエン酸塩、ラクトース、及びグルコースを含む(World Journal of Microbiology & Biotechnology (2005) 21: 969-972)。本明細書中の別の箇所でも検討されているように、炭素源、例えば、グリセロールは、10%(v/v)を超える濃度において、抗菌剤として作用する。これに対応して、これらの化合物は、中程度の濃度、典型的には、5%(v/v)未満、より一般的には、1%(v/v)において、微生物の色素産生中に、炭素源として使用される。
【0008】
染料抽出
染料として機能する色素が微生物により産生された後に、抽出手法には、有機溶媒、例えば、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、硫酸水溶液、アセトン、ヘキサン、ベンゼン、エタノール、又はメタノールの使用(米国特許第5,077,201号;同第5,691,171号;Rettori and Duran, 1998, World J. Microbiol. Biotech 14: 685-688;特開平10−113169号、特開昭63−245666号)又は、水溶液中での微生物の煮沸(特許第2810287号;特開平10−113169号)が含まれる。溶媒抽出により、廃棄化学物質が生じる。このような廃棄化学物質は、リサイクルもしくは廃棄が困難であり、コストがかかり、水路に放出された場合、水生生物に非常に有害である。
【0009】
第2の色素抽出工程には、体積減少、溶媒変更、又は超音波処理もしくは凍結が含まれる場合がある(米国特許第5,834,297号;同第5,691,171号)。
【0010】
布の前処理
米国特許第6,436,696号には、界面活性剤の不存在下における、酵素による紡繊繊維の処理が開示されている。この処理の効果により、繊維の濡れ性及び吸収性が向上する。酵素は、ペクチナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、又はそれらの組み合わせである。綿繊維の濡れ性は、セルラーゼとペクチナーゼとの混合物による処理により、最も実質的に改善されることが見出されている。米国特許第6,436,696号に開示されたように、前記酵素は、真菌及び細菌を含む微生物により産生することができる。適切なリパーゼを産生する微生物は、Candida ancudensis、Candida Antarctica、Candida atmaspherica、Candida bombi、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus megaterium、Bacillus subtilisの他多数を含む。
【0011】
公知の布の前処理が、微生物的に産生された染料のための染色プロセスに使用されてきた。前処理には、1)布の膨潤及び不純物の除去のための、標準的な石鹸、無水炭酸ナトリウム、L−ヒスチジン一塩酸一水和物、NaCl、及びNaHPO4、ならびに、2)媒染剤、例えば、ミョウバン、硫酸銅、硫酸第1鉄、ケイ酸ナトリウム、消石灰、及びタマリンド調製物を含む(Chequer et al., 2013, Eco-friendly textile dyeing and finishing, pp. 151-176)。
【0012】
染料沈着
1940年代から、グリセロール及びグリセロール誘導アルキッドの両方について、織物についての多くの染色及び印刷手法において、幅広い用途が見出されてきた(Uses of Glycerol, compiled by The Glycerol Producers’ Association)。グリセロール自体は、優れた作業性の染料ペーストを生じ、印刷ペースト中の染料の固定を促進し、印刷時の色価を向上させ、アガー中の水分の保持に役立つ。
【0013】
グリセロールは、染料が乾燥し、ドラムの側面に付着するのを防止するため、ペースト状で輸送される多くの染料の成分である。その非腐食性及び低い凝固点は、この用途に望ましい。染色中、染料ペースト中に存在するグリセロールの水混和性及び多くの種類の染料におけるその溶媒作用は、後者を染料浴に分散させるのに役立つ。これは、高沸点のグリセロールのもう一つの利点である。グリセロールは、染料浴に直接加えられる場合がある。これは、Quartermaster Corpsの洗濯堅牢度及び他の要求に合致するように、第2次世界大戦中にNylon Task Committeeにより開発されたナイロン染色方式であった。ナフトール染色において、グリセロールは、ナフトール溶液の安定性を改善するために、カップリング前に使用される場合がある。
【0014】
染料混合物及び染料ペーストに典型的に使用されるグリセロール濃度は、染色後の布を乾燥させるのに必要とされる時間を最少化し、色移りの問題を減少させるというそれぞれの目的のために、制限される(「Technicus」 Rayon Textile Mo. 24, 65, Aug. 1943)。一例では、青い色合いに染色するために、下記混合物:1.7kg Chlorindanthrene Blue;水酸化ナトリウム 39.0リットル;6.4kg ハイポサルファート;及び0.5kg グリセロールが使用された(Textile Research Journal March 1944 vol. 14 no. 3 69-73)。ここでは、グリセロール濃度は、1.1%(v/v)であった。
【0015】
Bennett, H., 「Chemical Formulary,」 Vol. VI, New York, Chem. Publishing Co., pp. 518-9, 1943によれば、典型的な捺染染料は、20グラム 直接染料;310グラム 熱水;50グラム グリセロール;20グラム リン酸ナトリウム;500グラム デンプン系増粘剤;100グラム 卵アルブミンを含有する。Robert Gordon Universityによりオンラインで規定された現代の酸性印刷ペーストは、0.1〜3グラム 酸性染料、5グラム グリセロール;温水 20ml;60グラム Manutex RS;2グラム シュウ酸アンモニウム;及び熱水 5mLを含有する。このため、布印刷染料に含有されるグリセロールの推奨濃度は、70年以上の間、5%(v/v)のままであったことが分かる。
【0016】
グリセロールが応用される他の染色手法は、アセテート織物のvat染色、綿の直接染料のよる染色、ならびに、ウール、絹、綿、合成繊維、特に、セルロールから製造されたレーヨン及びステープル繊維に使用するための染色化合物の調製を含む。スプレー染色プロセスは、多くの場合、グリセロールを、染料又は色素のための溶媒、分散剤、及び懸濁剤として利用する。得られた組成物が非発泡性であるため、染色も促進される。また、グリセロールを、「umbray」効果の混合染料を製造するのにも使用することができる。これ以外にも、グリセロールは、流動床染色、分散アセテート染料、及びアゾ染料における用途を有する。
【0017】
グリセロールは、糸又は布の潤滑化、サイジング、及び柔軟化において広く使用される、織物品質改良剤としても使用されてきた。これら及び類似する用途におけるその有効性の多くは、粘性及び吸湿性による。両特性は、可塑化作用に寄与する。吸湿性又は湿潤性は、特定の処理、例えば、布の着用性を向上させ、又は、繊維における静電気を防止するためのプロセスにおける、グリセロールの利用にも考慮される。有毒ガス、特に「マスタード」に対する不透過性のために、グリセロールは、ガス耐久仕上げにおける用途が見出されてきた。水溶性は、グリセロールを滑剤として機能させる際の利点でもある。これにより、強力な精錬剤が不要となる。同精錬剤は、布を傷付ける傾向があるが、多くの場合、他の潤滑油を除去するのに使用する必要がある。
【0018】
潤滑性組成物、糊剤、又は種々の仕上げ剤に対する添加剤として、グリセロールは、可塑剤、溶媒、及び浸透剤として作用する。グリセロールは、繊維上での乾燥及び固化を防止し、糊剤のちりを除去し、水浴から添加される非水溶性潤滑油を分散させるのに役立つことができる。
【0019】
また、グリセロールは、水性及び溶媒系印刷インク配合物にも含まれる。ここでは、この物質は、担体流体の蒸発を防止し、インク粘度を制御することにより、沈着プロセス中の流体力学を制御するための湿潤剤として作用する。インク沈着プロセスは、インクジェット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷等を含むことができる。典型的には、インク配合物中のグリセロールと他の湿潤剤との濃度は、20%(v/v)未満である(Digital Imaging: Water-based Inks and HSE, Photo Marketing Association International, 2004)。米国特許第3,846,141号(発明の名称:ジェット印刷用インク組成物)において説明されたように、より高濃度のグリセロール又は他の湿潤剤は、ジェット印刷に使用することができない。インク化合物が、粘性になり過ぎ、その結果として、それのノズルの通過が阻害されるためである。
【0020】
国際公開公報第2006/019672号には、消去可能なインク配合物へのグリセロールの包含が記載されている。ここでは、グリセロールは、比較的低い水含量より多い量で存在する。消去可能な染料は、グリセロール及び消去可能な染料がボールペンインクに必須の粘性を提供するのに実質的な量で提供される。ここでは、水は、約10〜約20%(v/v)の範囲の量で存在する。グリセロールは、約30〜約50%(v/v)の範囲の量で存在する。
【0021】
前述の環境の全てにおいて、グリセロールは、水性又は溶媒系担体流体の物理的特性、主に粘性及び吸湿性を変化させるのに使用されるが、着色剤自体、例えば、アゾ染料又は色素における物理的特性を変化させるのには使用されない。より具体的には、グリセロールは、担体流体の存在又は不存在にかかわらず、重要で、意味のある、意図して行われる着色剤との直接的な相互作用を有さない。
【0022】
米国特許第5,872,002号には、アゾ染料(非アゾ染料も含有することができる)により先に染色された布を脱色するために、微生物を使用して織物をパターン化する方法が記載されている。この技術は、各種のアイソマーを含むアゾ染料を代謝する細菌株、例えば、Xanthomonas NR25-2の能力に基づいている。パターン化された加熱素子又はパターン化された酸性ペーストもしくはパターン化されたアルカリ性ペースト、又はパターン化された殺菌剤のいずれかを使用して、布上に沈着された細菌株の領域を不活化することにより、アゾ着色を保存する。特に、これらの細菌株は、色素自体を産生又は沈着しないが、先に沈着されたアゾ染料を部分的又は完全に代謝することにより、アゾ染料を除去する。
【0023】
微生物的に産生され、溶液中に抽出された染料は、従来の手法により、布上に直接沈着させることができる(特開平10−113169号;特許第2810287号)。ビオラセイン及びプロジギオシンについて、これは、様々な種類の布に作用することが示されている(Yusof et al., 2012, Application of bacterial pigments as colorant: the Malaysian perspective)。
【0024】
グリセロールは、微生物産生のための炭素源として広く報告されている(Biotechnology Advances 27 (2009) 30-39)。典型的には、M9培地中のグリセロール濃度は、2%(v/v)である。より高濃度のグリセロールは、微生物の増殖を阻害する傾向がある。実際に、グリセロールは、移植皮膚の長期保存のための抗菌剤として研究されてきた(Burns , Volume 34 , Issue 2 , 205-211)。
【0025】
染料固定
微生物的に産生され、抽出された染料について、媒染(布の前処理を参照のこと)は、染料移行を改善し、より濃く着色された布を生じさせることが示されている(Chequer et al., 2013, Ecofriendly textile dyeing and finishing, pp. 151-176;Yusof et al., 2012, Application of bacterial pigments as colorant: the Malaysian perspective)。一部の方法は、染色後媒染剤、例えば、金属塩の添加を含む。染料固定のための熱処理が一般的に使用され、この方法は、溶液を80℃超の温度で加熱することを含む(特開平10−113169号;Chequer et al., 2013, Eco-friendly textile dyeing and finishing, pp. 151-176)。
【0026】
米国特許第2,297,230号には、織物蒸気処理プロセス中の添加剤としての、グリセロールの使用が記載されている。ここでは、グリセロールは、蒸気処理中に、布への合成界面活性剤であるTurkey Redオイルの結合を強化するのに機能する。米国特許第2,297,230号では、白カビ及び胞子の形成を相当な程度防止するために、グリセリンが、ホルマリン(水中のホルムアルデヒド)と共に分散されるべきであることが、更に特定されている。したがって、米国特許第2,297,230号は、本発明とは無関係である。これは、(a)同特許は、織物染色に関連せず、(b)蒸気を利用し、液状の水を利用せず、(c)本発明において特定された微生物学的プロセスに非常に有害であろう物質を含むためである。
【0027】
廃棄物管理
上記工程は全て、それらを製造し、抽出するのに使用される多くの染料、その前駆体、及び溶媒が人の健康及び環境に有害であるために、廃棄物管理及び水分経済を必要とする。織物産業は、その製造プロセスにおいて、主に、染色プロセスのために、相当な量の水を消費している。織物工場からの排水は、全ての工業プロセスの最も汚染されたものとして分類される(Chequer et al., 2013, Eco-friendly textile dyeing and finishing, pp. 151-176)。
【0028】
染色プロセスにおいて、10〜50% 染料が、廃棄物として失われ、廃水になる(Chequer et al., 2013, Eco-friendly textile dyeing and finishing, pp. 151-176)。全世界的規模において、これにより、年間2×10トンの染料が、環境中に放出されている(Chequer et al., 2013, Eco-friendly textile dyeing and finishing, pp. 151-176)。平均して、必要とされる水対布の質量の比は、最大100:1である(Huntsman Textile Effects, Singapore)。
【0029】
まとめると、布用染料を製造し、前記染料を布、糸、及び織物に移行させ、固定するための既存の方法は、毒性の化学物質の製造及び利用、ならびに、毒性の廃棄物の発生を必要とする。さらに、染色プロセス、及びその後の廃水処理中における水の消費は、地域的な水要求の著しい負荷となる。一方、染料添加剤及び布処理剤としてのグリセロールの利点は、広く知られており、この物質の濃度は、低いレベル(典型的には、5%(v/v)未満)に制限されている。布用染料の微生物産生が検討されたことはあったが、このような方法は、前記染料を抽出し、布用糸に沈着させ、固定するための改善された方法は及んでいない
【発明の概要】
【0030】
本方法は、基材の前処理、ならびに、染料の産生、沈着、及び固定のための作用剤として作用する微生物を直接使用して、基材(例えば、布)を染色する際に、下記の条件に注意することにより達成することができる。
【0031】
染料産生のために、中間体及び最終的な色素の両方を産生可能な天然(非リコンビナント)微生物、ならびに、中間体又は最終的な色素のいずれかを産生可能であるように改変されたリコンビナント微生物を、本方法に使用することができる。
【0032】
前処理(任意の種類の基材修飾を含む)は、基材に浸透する微生物及びこれらのプロセスを容易にする培地組成により行われる代謝プロセスの作用により生じる。前処理により、より効果的な基材中への染料浸透/透過/固定が可能となる。染料沈着は、基材に浸透した微生物による染料の局所的な産生及び放出により達成される。向上した局所濃度により、より高い染料取込みがもたらされる。溶液中の大量の遊離染料の実質的な減少により、廃棄物量の実質的な減少がもたらされる。染料固定工程において、不活化された微生物中に存在する大部分の染料は、溶解により、基材に移行される。
【0033】
染料固定は、処理された基材を、121℃を超える温度に曝すことにより達成される。これは、基材に存在する全ての微生物の不活化と、染料の基材への固定との二重の目的を有する。Sparrow Tex Engineering Works及びBluemoon Machines Manufacturing Companyにより製造された工業的な自動オートクレーブ機器を、種々の能力範囲において、糸の熱固定及び予備処理に使用することができる。
【0034】
最終的な洗浄工程により、大部分の不活化された微生物及び微生物関連破片が、基材から除去される。ついで、最終的な基材は、医療装置要求に近い基準に滅菌され、洗浄される。
【0035】
有利には、記載された方法は、廃棄物発生、水消費、及びエネルギー消費に関して、従来の方法の染料産生、染料移行、及び染料固定を上回る。記載された方法を使用して発生した廃棄物は、下記のもの:有機溶媒、濃縮された酸性又はアルカリ性生成物、例えば、漂白剤の何れも含まない。本方法から生じた廃棄物の取扱い、不活化、及び廃棄は、従来の方法と比較して、安全で低コストになる。本方法から発生した全ての廃棄物は、生分解性化合物である。本方法から発生した廃棄物の一部は、例えば、植物の肥料として、商業的価値を有する場合がある。
【0036】
実施態様の詳細な説明
本発明の特徴及び利点は、下記詳細な説明を読解することにより、当業者により、より容易に理解されるであろう。明確性のために、別々の実施態様に関して、上記及び以下に記載された本発明の特定の特徴は、1つの実施態様において、組み合わせで提供することができることも、理解されたい。逆に、簡潔さのために、1つの実施態様に関して記載された本発明の種々の特徴は、別々に、又は、任意の部分的な組み合わせにおいて提供されることもできる。加えて、単数形への言及は、文脈に特にそうではないことが記載されてない限り、複数形も含むことができる(例えば、「a」及び「an」は、1つ、又は、1つ以上を意味することができる)。
【0037】
本願で特定された種々の範囲の数値の使用は、何らかの方法で明確に示されない限り、まるで最小値及び最大値は両方とも「約」の語が先行するかのように、記載された範囲内の最小値及び最大値にわたる近似値として記載される。このように、記載された範囲の上下のわずかな偏差は、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成するのに使用することができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間の全ての値を含む連続的な範囲であることを意図している。
【0038】
本明細書で言及された全ての特許、特許出願、及び刊行物は、その全体が参照により組み入れられる。
【0039】
本方法は、基材前処理と、基材(例えば、布)の局所的な産生、沈着、及びの固定とを組み合わせることを目的としている。布は、組成において、天然(綿、絹、ウール、及び類似する性質の他のもの)又は合成(ポリエステル、レーヨン、エラステイン(elastaine)、及び類似する性質の他のもの)であることができる。
【0040】
染料産生は、染料に望まれる特性を有する色素を産生することができる微生物を使用することにより達成される。中間体及び最終的な色素の両方を産生可能な天然(非リコンビナント)微生物と、中間体又は最終的な色素のいずれかを産生可能であるように改変されたリコンビナント微生物との両方を、本方法に使用することができる。例としては、Serratia種、Janthinobacter種、Chromobacterium種、Bacillus種、Escherichia種、Cyanobacterium種、Pseudomonas種を含むが、これらに限定されない。例として、E.coliのK12派生株が、リファクタリングされたビオラセインオペロンを有するプラスミドを導入することにより、大量のビオラセインを産生するのに改変されてきた。リファクタリングは、酵素コード配列の順序の再配列、各コード配列前方へのリボソーム結合部位の追加、及び、E.coli中での発現のためのコード配列のコドン最適化を含む。
【0041】
実質的に、遺伝子改変することができる任意の微生物を、本方法に包含させることができる。本方法に関する革新的な工程は、基材の局所的な染色を容易にするための、基材に対する微生物の直接的な適用にある。
【0042】
前処理(任意の種類の基材修飾を含む)は、基材に浸透する微生物及びこれらのプロセスを容易にする培地組成により行われる代謝プロセスの作用により生じる。前処理により、より効果的な基材中への染料浸透、透過、及び固定が可能となる。
【0043】
前処理工程は、種々のパラメータ、例えば、栄養含量、pH、及び塩分により微生物代謝を駆動させる広い範囲の条件下において、微生物により行われる。本方法に利用される微生物の性質により、培地の最適な組成が規定されるであろう。例として、Chromobacterium violaceumは、Escherichia coliとは大きく異なる最適環境を必要とする。
【0044】
本発明の実施態様の例として、大量のビオラセインを産生するように改変されたE.coliのK12派生株が、下記基材:絹、ウール、レーヨン、ポリエステル、エラステイン、綿、及び麻を前処理するのに使用された。E.coliの上記言及された株と共に基材を前処理するのに使用される培地組成は、下記基本成分:炭素源、窒素源、アミノ酸源、金属塩源、及び水を含む。
【0045】
説明
理論に拘束されることを望むものではないが、染料含有微生物の織物への改善された吸着は、この炭素源が閾値濃度を超える場合に、炭素源に曝された際の、これらの微生物の形態変化により生じると考えられる。より具体的には、炭素源が特定濃度を超えると、微生物は、顕著に長くなり、形状が歪む。より長い微生物は、おそらく、布用糸に、よりからまるようになる。同時に、その長さに沿った歪みは、微生物が繊維内に定着したらより離れくくなることを意味する。正確な濃度閾値は、数多くの要因、例えば、微生物種、使用される炭素源、操作条件、例えば、温度及びpHレベルにより決まるであろう。一般的には、閾値濃度は、10%(v/v)〜60%(v/v)、より一般的には、20%(v/v)〜40%(v/v)の範囲にあることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1に、特許第2810287号に記載された微生物の増殖及び同微生物により産生された色素の沈着のための方法を示す。図1Aは、1つの色素産生細菌種(1)が培地溶液(2)に植菌される、第1の工程を示す。図1Bは、この細菌が第2の培地溶液(3)中において、30℃で18時間植菌される、第2の工程を示す。図1Cは、ウール分解産物(4)がこの培地溶液に加えられ、30℃で5日間振とうされる、第3の工程を示す。図1Dは、糸(5)が培地溶液に加えられ、一方で、微生物内に含有される色素の一部が、培地溶液を100℃で20分間煮沸することにより、培地溶液(6)内に放出される、第4の工程を示す。図1Eは、糸が煮沸後に染料浴から除去され、残った培地溶液及び遊離色素を除去するために、流水で洗浄される、第6の工程を示す。不特定量の色素が、培地溶液(7)に残り、ウール分解産物(8)に付着するであろう。
図2図2に、本発明の織物を染色するための方法を示す。第1の染色工程前に、染料産生微生物(10)は、標準的な微生物学的方法に基づいて調製される。これらの方法は、生物合成及び遺伝子操作等の技術を含むことができる。微生物の1つのコロニーが、標準的な方法に基づいて、培地溶液に植菌される。第1の染色工程において、染料産生微生物(10)は、一定量の培地溶液(11)に植菌され、標準的な微生物学的技術に基づいて、一晩増殖される。ついで、高濃度の染料含有微生物(12)を含有する得られた培養培地に、一定量の培地溶液(13)及び第2の量の炭素源(14)が加えられる。炭素源の得られた濃度は、10%(v/v)〜90%(v/v)、好ましくは、15%(v/v)〜60%(v/v)、より好ましくは、20%(v/v)〜40%(v/v)の範囲であるものとする。基材(15)、すなわち、布又は糸が、培養物に加えられ、標準的な方法に基づいて、一晩インキュベーションされる。一晩のインキュベーション後、大部分の染料含有微生物は、隣接する繊維間の空間を含む、基材(16)中に吸着されるであろう。これに対応して、培養培地及び炭素源溶液(17)からは、微生物が実質的にいなくなるであろう。第2の染色工程において、染色された基材(18)が、培養培地から取り出され、残った炭素源及び微生物の破片を基材から除去するために、水浴(19)中で洗浄される。廃棄洗浄水は、残った量の遊離微生物を含有する可能性があるが、その後の染色バッチに再利用することができ、又は、穏和な漂白又は蒸気オートクレーブにおいて滅菌することができる。染色された基材は、熱処理工程、例えば、乾燥アイロン(図示せず)又は蒸気オートクレーブ(20)もしくはマイクロ波(図示せず)に供される。全ての場合において、適用される温度は、100℃超、好ましくは、121℃である必要がある。この第2の染色工程は、(a)微生物が吸着している基材上に、微生物から溶解により直接、染料を放出することと、(b)溶解物とともに放出された染料を基材上に固定することとの二重の役割を果たす。染料固定及び廃棄洗浄水の滅菌を、同じオートクレーブサイクルにおいて行うことができる。標準的な設定(例えば、生物界面活性剤を使用する40℃での洗浄)を使用して作動する洗浄機器(21)により、溶解された微生物(22)が、染料分子(24)がその繊維に固定されている基材(23)から除去される。洗浄された基材は、標準的な方法(図示せず)を使用して乾燥される。
図3図3に、50%(v/v) LB培地及び水における1%(v/v)濃度のグリセロール中での液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び1%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。微生物の増殖に成功した。測定された平均細菌長さは、約3.5ミクロンである。
図4図4及び図5に、50%(v/v) LB培地及び水における5%(v/v)濃度のグリセロールでの液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び5%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。1%(v/v)濃度ほどではなかったが、微生物の増殖に成功した。測定された平均細菌長さは、4ミクロン〜5ミクロンの範囲にある。
図5図4及び図5に、50%(v/v) LB培地及び水における5%(v/v)濃度のグリセロールでの液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び5%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。1%(v/v)濃度ほどではなかったが、微生物の増殖に成功した。測定された平均細菌長さは、4ミクロン〜5ミクロンの範囲にある。
図6図6に、50%(v/v) LB培地及び水における10%(v/v)濃度のグリセロール中での液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び10%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。微生物増殖は、1%(v/v)の場合より実質的に低かった。測定された平均細菌長さは、11ミクロンである。微生物は、その長さに沿って曲がっていた。
図7図7及び図8に、50%(v/v) LB培地及び水における20%(v/v)濃度のグリセロールでの液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び20%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。微生物増殖は、1%(v/v)の場合より非常に実質的に低かった。測定された平均細菌長さは、15ミクロン〜20ミクロンの範囲にある。微生物は、その長さに沿って実質的に曲がっていた。
図8図7及び図8に、50%(v/v) LB培地及び水における20%(v/v)濃度のグリセロールでの液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び20%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。微生物増殖は、1%(v/v)の場合より非常に実質的に低かった。測定された平均細菌長さは、15ミクロン〜20ミクロンの範囲にある。微生物は、その長さに沿って実質的に歪んでいた。
図9図9図11に、50%(v/v) LB培地及び水における50%(v/v)濃度のグリセロールでの液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び50%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。微生物増殖は、1%(v/v)の場合より非常に実質的に低かった。測定された平均細菌長さは、10ミクロン〜15ミクロンの範囲にある。微生物は、その長さに沿って実質的に歪んでいた。
図10図9図11に、50%(v/v) LB培地及び水における50%(v/v)濃度のグリセロールでの液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び50%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。微生物増殖は、1%(v/v)の場合より非常に実質的に低かった。測定された平均細菌長さは、10ミクロン〜15ミクロンの範囲にある。微生物は、その長さに沿って実質的に歪んでいた。
図11図9図11に、50%(v/v) LB培地及び水における50%(v/v)濃度のグリセロールでの液体培養における微生物、ここでは、E.coliの増殖を示す。E.coliを、50%(v/v) LB培地(10g NaCl、5g イーストエキストラクト、1g ペプトン、水 1L)及び50%(v/v) グリセロール中において、24時間増殖させた。微生物増殖は、1%(v/v)の場合より非常に実質的に低かった。測定された平均細菌長さは、10ミクロン〜15ミクロンの範囲にある。微生物は、その長さに沿って実質的に歪んでいた。
【0047】
採用可能な培地添加物
培地組成物は、塩の添加を含んだ。その例は、NaCl、KCl、CaCl、MgCl、MnCl、ZnClを、単独又は組み合わせで含むが、これらに限定されない。培地組成物は、アミノ酸源の添加を含んだ。その例は、トリプトン、ペプトン、Bacto-ペプトン、カゼイン−アミノ酸を、単独又は組み合わせで含むが、これらに限定されない。培地組成物は、炭素源の添加を含んだ。その例は、イーストエキストラクト、スクロース、グルコース、グリセロール、フルクトース、キシロース、ラクトース、アラビノースを、単独又は組み合わせで含むが、これらに限定されない。培地組成物は、窒素源の添加を含んだ。その例は、イーストエキストラクト、トリプトン、ペプトン、Bacto-ペプトン、カゼイン−アミノ酸を、単独又は組み合わせで含むが、これらに限定されない。上記培地添加物は全て、前処理プロセスに使用される生物に応じて、変動する結果で利用することができる。
【0048】
増殖条件
最適な増殖条件は、前処理プロセスに利用される微生物により変動する。最終結果に大きく影響を及ぼすパラメータは、pH、塩分、及び温度を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本特許請求の範囲の実施態様の例として、大量のビオラセインを産生するように改変されたE.coliのK12派生株が、下記基材:絹、ウール、レーヨン、ポリエステル、エラステイン、及び綿を前処理するのに使用された。pH範囲を5〜9とし、塩分の範囲を、0.1%〜3%とし、温度を20℃〜42℃とした、様々な増殖条件を試験した。これらのパラメータの最適範囲は、pH5.8〜8.2、塩分0.5%〜1.5%、及び温度:30℃〜40℃であることが見出された。
【0050】
前処理により、染料含有容器(微生物)と基材(布)との間の相互作用が容易になる。この効果を達成するために、利用された微生物を、植菌材料−植菌比、利用される培地組成、及び使用される増殖条件に応じて、適切な培地(上記培地組成物を参照のこと)中において、12〜48時間増殖させる。ついで、培養物全体に、更なる培地(上記培地組成物を参照のこと)を加える。この時点で、基材を加える。前処理を、増殖期間と同じような時間枠内で行う。
【0051】
染料沈着は、基材に浸透している微生物による染料の局所的な産生及び放出により達成される。局所濃度の増大により、より高い染料の取込みがもたらされる。大量の遊離染料が溶液中に存在しないことにより、廃棄物量の実質的な減少がもたらされる。染料沈着率は、産生される色素及び利用される微生物に応じて変動するであろう。
【0052】
これらのパラメータは、微生物により産生された色素の細胞傷害性、色素の水溶性、基材に対する色素の親和性、及び利用される増殖条件(上記増殖条件を参照のこと)により変動するであろう。本特許請求の範囲の実施態様の例として、大量のビオラセインを産生するように改変されたE.coliのK12派生株が、下記基材:絹、ウール、レーヨン、ポリエステル、エラステイン、綿、及び麻に染料を沈着させるのに使用された。ビオラセイン産生/含有E.coliと基材との完全に近い浸透及び会合が、加えられた培地への基材添加後2時間以内に観察され、基材インキュベーション期間全体を通して継続する。
【0053】
仕上げ工程
最終的な仕上げ工程は、処理された基材を、121℃を超える温度に曝すことにより達成される。これは、基材に存在する全ての微生物を不活化することと、染料を基材に固定することとの二重の目的を有する。
【0054】
不活化された微生物に存在する大部分の染料は、溶解により基材に移行する。ついで、仕上げ工程は、最終的な洗浄を含む。同洗浄により、大部分の不活化された微生物及び微生物関連化合物が、基材から除去される。ついで、最終的な基材は、医療装置要求に近い基準に滅菌され、洗浄される。
【0055】
廃棄物
取り込まれなかった染料(染料廃棄物)は、業界基準の3%を下回る。効率99.997%を超える包含レベルが、本発明の方法により達成された。染色プロセス後に残った消費された培地、例えば、溶解された塩、アミノ酸、及び炭素源を、同じか又は異なるかのいずれかの微生物染料を使用するその後の染色プロセスにリサイクルし、又は、再利用することができる。このため、少なくとも2つの経路により、第一に、最初の染色プロセス中で使用される水がより少ないこと、第二に、消費された培地溶液を処理することなく再利用できることにより、従来の方法と比較して、記載された方法において、水の使用が低減される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11