特許第6828017号(P6828017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許6828017適応型サンプル窓サイズを用いるスペクトルドプラ処理
<>
  • 特許6828017-適応型サンプル窓サイズを用いるスペクトルドプラ処理 図000004
  • 特許6828017-適応型サンプル窓サイズを用いるスペクトルドプラ処理 図000005
  • 特許6828017-適応型サンプル窓サイズを用いるスペクトルドプラ処理 図000006
  • 特許6828017-適応型サンプル窓サイズを用いるスペクトルドプラ処理 図000007
  • 特許6828017-適応型サンプル窓サイズを用いるスペクトルドプラ処理 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828017
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】適応型サンプル窓サイズを用いるスペクトルドプラ処理
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
   A61B8/06
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-510360(P2018-510360)
(86)(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公表番号】特表2018-525128(P2018-525128A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】IB2016054942
(87)【国際公開番号】WO2017033098
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年8月16日
(31)【優先権主張番号】62/210,518
(32)【優先日】2015年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】クラーク デイビッド ウェスレー
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−043495(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2180339(EP,A1)
【文献】 特開平6−319735(JP,A)
【文献】 米国特許第5379770(US,A)
【文献】 米国特許第6030345(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流の位置から戻った複素エコーデータサンプルのソースと、
第1の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して第1の速度推定値を含む第1のスペクトログラムを生成する第1のスペクトログラムプロセッサと、
第2の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して第2の速度推定値を含む第2のスペクトログラムを生成する第2のスペクトログラムプロセッサと、
前記第1の速度推定値及び第2の速度推定値に反応して、適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成する選択/補間プロセッサと、
前記第1のスペクトログラムプロセッサ及び前記第2のスペクトログラムプロセッサに結合された入力と前記選択/補間プロセッサに結合された出力とを有するエッジ検出器と
を含み、
前記選択/補間プロセッサは、前記エッジ検出器の出力に反応して前記適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成する、スペクトルドプラ表示モードを有する超音波診断撮像システム。
【請求項2】
前記選択/補間プロセッサは、さらに、前記第1のスペクトログラムプロセッサ及び第2のスペクトログラムプロセッサによって生成されたスペクトログラムを補間することによって前記適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成する、
請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項3】
前記エッジ検出器は、
前記第1のスペクトログラムプロセッサに結合された入力を有する水平エッジ検出器と、
前記第2のスペクトログラムプロセッサに結合された入力を有する垂直エッジ検出器と
をさらに含み、
前記第1の数の複素エコーデータサンプルは、前記第2の数の複素エコーデータサンプルよりも大きい、
請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項4】
前記適応型ドプラ度スペクトログラムとして前記第1のスペクトログラムプロセッサによって生成されたスペクトログラムを選択するために、前記選択/補間プロセッサは、前記水平エッジ検出器による水平スペクトルセグメントエッジの検出に反応する、請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項5】
前記適応型ドプラ度スペクトログラムとして前記第2のスペクトログラムプロセッサによって生成されたスペクトログラムを選択するために、前記選択/補間プロセッサは、前記垂直エッジ検出器による垂直スペクトルセグメントエッジの検出に反応する、請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項6】
前記複素エコーデータサンプルは、CWドプラモードにおいて取得された複素エコーデータサンプルをさらに含む、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項7】
前記複素エコーデータサンプルは、PWドプラモードにおいて取得された複素エコーデータサンプルをさらに含む、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項8】
前記複素エコーデータサンプルは、一連の時系列複素エコーデータサンプルをさらに含む、請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項9】
血流の位置から戻った複素エコーデータサンプルのソースと、
第1の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して第1の速度推定値を含む第1のスペクトログラムを生成する第1のスペクトログラムプロセッサと、
第2の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して第2の速度推定値を含む第2のスペクトログラムを生成する第2のスペクトログラムプロセッサと、
前記第1の速度推定値及び第2の速度推定値に反応して、適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成する選択/補間プロセッサと、
第3の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して第3の速度推定値を生成する、第3のスペクトログラムプロセッサ
を含み、
前記第1の数は前記第2の数よりも大きく、前記第2の数は前記第3の数よりも大きい、
スペクトルドプラ表示モードを有する超音波診断撮像システム。
【請求項10】
前記選択/補間プロセッサは、血流速度がゆっくりと変化する時に前記適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成するために、前記第1の速度推定値を使用する、請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項11】
前記選択/補間プロセッサは、血流速度が急激に変化する時に前記適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成するために、前記第3の速度推定値を使用する、請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項12】
前記選択/補間プロセッサは、血流速度が中位の速さで変化する時に前記適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成するために、前記第2の速度推定値を使用する、請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項13】
前記選択/補間プロセッサは、垂直スペクトルセグメントエッジの検出に反応して、第3の速度推定値を使用する、請求項11に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項14】
前記選択/補間プロセッサは、水平スペクトルセグメントエッジの検出に反応して、第3の速度推定値を使用する、請求項10に記載の超音波診断撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用診断システムに関し、特に、スペクトルドプラ分析を用いて血流を評価するための診断用超音波システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの標準的な血管超音波検査における重要な手順は、動脈の狭窄又は狭小の評価を得ることである。これは、典型的に、狭窄を検索するための超音波システムのカラードプラモード及びピーク流速を測定するための狭窄が疑われる位置でのスペクトルドプラモードを使用して評価され、これは狭窄の程度と相関する。医療用超音波撮像システムは、小さな関心領域に対する血液速度対時間のスペクトログラムを表示するスペクトルドプラモードを有し、サンプルボリュームと呼ばれる。モードは、スペクトログラムを生成するために処理されたサンプルボリュームからエコーサンプルのストリームを取得するために、連続波(CW)又はパルス波(PW)送信のどちらかを使用し得る。スペクトログラム表示において、横軸が時間、縦軸が速度(ドプラ周波数)、明るさが信号電力を表す。処理は、典型的に、周波数のサイドローブを低減するためのHann又はHamming等の滑らかな先細の窓形状を有する、サンプルの復調データストリームのオーバーラップする時間窓の高速フーリエ変換(FFTs)を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
処理されたサンプルが取得される割合は、得られるスペクトログラムの精度に影響する。この取得率は、身体内のサンプルボリュームの深さ、及び、解剖学的又はカラードプラデータのBモード表示用のサンプル等の他のモードに対するエコーの取得を用いるスペクトルドプラサンプル取得の多重化等、さまざまな要因によって変動し得る。特に、サンプルレートが多くの場合比較的遅いPWドプラの場合、FFT速度推定アルゴリズムによって処理される連続サンプルの数である、FFT窓長は、速度及び時間分解能に非常に重要な影響を及ぼす。サンプル数の多い長型窓は、速度分解能は良好であるが時間が不鮮明であるスペクトログラムを生成する一方で、サンプル数のより少ない短型窓は、時間分解能は良好であるが速度が不鮮明であるスペクトログラムを生成する。比較的短型の窓が、典型的に審美的に好まれる。信号スペクトルの最大速度の輪郭は、多くの場合血液の動きを表すとして解釈され、定量的なピーク速度測定は、多くの場合スペクトルドプラモードの主な用途である。短型FFT窓は、重要な速度の過大推定バイアスを引き起こし得る。したがって、良好な時間分解能と良好な速度分解能との両方の生成に、より適するFFT窓長の使用が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの態様において、本発明は、スペクトルドプラ表示モードを有する超音波診断撮像システムを含む。システムは、血流の位置から戻った複素エコーデータサンプルのソースと、第1の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して速度推定値を生成する第1のスペクトログラムプロセッサと、第2の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して速度推定値を生成する第2のスペクトログラムプロセッサと、第1及び第2のスペクトログラムプロセッサからの速度推定値に反応して、適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成する選択/補間プロセッサとを含み得る。
【0005】
特定の態様において、システムは、スペクトログラムプロセッサに結合された入力と、エッジ検出器の出力に反応して適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成し得る選択/補間プロセッサに結合された出力とを有する、エッジ検出器を含み得る。選択/補間プロセッサは、第1及び第2のスペクトログラムプロセッサによって生成されたスペクトログラムを補間することによって適応型ドプラ速度スペクトログラムをさらに生成し得る。エッジ検出器は、第1のスペクトログラムプロセッサに結合された入力を有する水平エッジ検出器と、第2のスペクトログラムプロセッサに結合された入力を有する垂直エッジ検出器とを含み得、第1の数の複素エコーデータサンプルは、第2の数の複素エコーデータサンプルよりも大きい。いくつかの態様において、選択/補間プロセッサは、水平エッジ検出器による水平スペクトルセグメントエッジの検出に反応して、適応型速度ドプラスペクトログラムとして第1のスペクトログラムプロセッサによって生成されたスペクトログラムを選択する。選択/補間プロセッサは、垂直エッジ検出器による垂直スペクトルセグメントエッジの検出にも応答し得、適応型速度ドプラスペクトログラムとして第2のスペクトログラムプロセッサによって生成されたスペクトログラムを選択する。
【0006】
いくつかの態様において、複素エコーデータサンプルのソースは、CWドプラモード及び/又はPWドプラモードにおいて取得された複素エコーデータサンプルのソースをさらに含む。特定の態様において、複素エコーデータサンプルは、一連の時系列複素エコーデータサンプルをさらに含む。
【0007】
特定の態様において、システムは、第3の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して速度推定値を生成する、第3のスペクトログラムプロセッサを含み得る。場合によっては、第1の数は第2の数よりも大きく、第2の数は第3の数よりも大きい。
【0008】
いくつかの態様において、選択/補間プロセッサは、良好な速度精度を有する適応型速度スペクトログラムを生成するために、第1のスペクトログラムプロセッサによって生成された速度推定値を使用する。選択/補間プロセッサはまた、良好な時間精度を有する適応型速度スペクトログラムを生成するために、第3のスペクトログラムプロセッサによって生成された速度推定値を使用し得る。選択/補間プロセッサは、平均速度及び時間精度を有する適応型速度スペクトログラムを生成するために、第2のスペクトログラムプロセッサによって生成された速度推定値を使用し得る。選択/補間プロセッサは、垂直スペクトルセグメントエッジの検出及び/又は水平スペクトルセグメントエッジの検出に反応して、第3のスペクトログラムプロセッサによって生成された速度推定値を使用し得る。
【0009】
特定の態様において、本発明は、その上に命令を有する超音波システムを含み、実行された時に、システムに以下のステップ、血流の位置から戻った複素エコーデータサンプルを受信するステップと、第1の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して第1の速度推定値を生成するステップと、第2の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行して第2の速度推定値を生成するステップと、第1及び第2の速度推定値に基づき、適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成するステップとを、実行させる。いくつかの態様において、命令はさらに、システムに、エッジ検出器の出力に基づき適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成させ得、及び/又は、第1及び第2のスペクトログラムプロセッサからのスペクトログラムを補間することによって適応型ドプラ速度スペクトログラムを生成させ得る。
【0010】
いくつかの態様において、命令は、システムに、第3の数の複素エコーデータサンプルの窓を使用しFFTアルゴリズムを実行させ得、第3の速度推定値を生成させ得、第1の数は第2の数よりも大きく、第2の数は第3の数よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図は以下を示す。
【0012】
図1】本発明に従って構成された超音波診断撮像システムをブロック図形式で示す。
図2】従来の超音波狭窄評価検査用の超音波表示画面を示す。
図3】本発明の原理に従って異なるFFT窓長を使用する適応型スペクトルドプラプロセッサをブロック図形式で示す。
図4】速度がゆっくりと変化し、水平エッジを有する表示セグメントによって表示が支配される時のスペクトルドプラ表示の詳細を示す。
図5】速度が急激に変化し、より垂直なエッジを有する表示セグメントによって表示が支配される時のスペクトルドプラ表示の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原理に従って、FFT窓サイズがスペクトログラムの現在の特徴に適合される診断用超音波システム及び方法が記載される。図示の実施形態において、復調されたサンプルデータストリームは、分析用の複数のスペクトログラムを構成するために、複数のFFT窓サイズを用いて並列に処理される。一方向において微分演算子を近似するが、さもなければ平滑にする二次元空間フィルタが、スペクトログラムに適用される。フィルタは、受信信号用の1つ以上のフィルタを実施するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のセクション内のプログラミング相互接続(例えば信号接続)を介して実行され得る。より長い窓スペクトログラムは、水平信号エッジを検出するためにフィルタリングされ、より短い窓スペクトログラムは、垂直信号エッジを検出するためにフィルタリングされる。検出された水平及び垂直エッジの特徴は、適応的に組み合わされたスペクトログラムを構築するために、各水平及び垂直表示位置(ピクセル)で複数のスペクトログラムからの選択又は補間を導く。代替的に、データは、可変窓長を使用して処理され得る。適応型スペクトログラムは、信号速度がゆっくりと変化する時間、例えば拡張期における良好な速度分解能のために長型時間窓を使用し、及び、信号速度が急激に変化する時間、例えば収縮期における良好な時間分解能のために短型時間窓を使用する。その結果、血流速度が急激に変化する時には良好な時間精度の、及び、血流速度がゆっくりと変化する時には良好な速度精度のスペクトログラムが得られる。
【0014】
最初に図1を参照すると、本発明の原理に従って構成された超音波システムがブロック図形式で示される。超音波プローブ10は、超音波を身体内に送信し戻りエコー信号を受信する、トランスデューサ素子のアレイ12を含む。送信波は、身体内の関心領域を調べるためにビーム又は走査線に方向づけられる。一次元アレイは、二次元撮像用に、単一平面にわたってビームを送信するために使用され得る。代替的に、プローブ10は、プローブマイクロビーム形成器502に結合されたトランスデューサ素子500の二次元アレイを有するマトリクスアレイプローブである。マトリクスアレイプローブは、三次元撮像用に、単一走査面にわたって又は身体の体積領域にわたってビームを送信するために使用され得る。ビームは、特定の位置の組織又は特定の方向の血流を調べるために、プローブによって異なる方向に操縦され、集束され得る。送受信時のビームの制御及び処理は、ビーム形成器コントローラ16によって提供され、適切に形成されたビームを送信し、遅延及び加算を介して受信信号をコヒーレントエコー信号にビーム形成するために、マイクロビーム形成器502及びシステムビーム形成器14を制御する。図1に示されるような二段ビーム形成システムにおいて、受信信号の部分ビーム形成は、マイクロビーム形成器502によって実行され、ビーム形成プロセスの完了は、システムビーム形成器14によって実行される。ビーム形成器は、例えば、所望の画像平面にわたってビームを走査するために、及び、身体のその領域に存在する血流の速度に適するパルス繰返し周波数(PRF、サンプリングレート)で血流が評価される画像平面の領域にわたってビームを繰返し走査するために、トランスデューサアレイを制御し得る。
【0015】
ミキサ(又はQBPフィルタ)18は、エコー信号をベースバンド直交I及びQ成分に復調する。代替的に、直交帯域通過フィルタが使用される。Bモード検出器22は、I成分とQ成分との二乗の和の平方根をとることによって組織画像に対するBモード検出を実行するために、I成分とQ成分とを使用する。検出されたエコー強度は、身体内の組織の二次元又は三次元画像を形成するために、空間ベースでBモード画像プロセッサ24によって処理され、これは表示プロセッサ36によって表示用に処理され、表示画面52上に表示される。スペクトログラムプロセッサ及び選択/補間プロセッサ等の、本明細書に記載のプロセッサは、例えば、集積回路(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)等の、適切なマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、画像プロセッサ等を含み得る、1つ以上の適切なデータプロセッサを含み得る。
【0016】
直交ドプラデータは、二次元又は三次元画像フォーマットにデータを空間的に処理する、カラーフロープロセッサ30に結合され、速度値が色分けされる。このドプラカラーマップは、フローが生じている解剖学的構造内の位置を示すために、表示プロセッサ36によって空間的に対応するBモード画像にわたってオーバーレイされ、色分けによってそのフローの速度及び方向を定性的に示す。画像内のその位置にわたるサンプルボリュームSVの配置によって選択された、画像内の特定の点からのドプラデータは、その時点での流速の変動及び分布のスペクトル表示を生成する、スペクトルドプラプロセッサ32に結合される。スペクトルドプラ表示は、表示画面52上のスペクトルドプラ表示の処理及び表示のために、表示プロセッサ36に転送される。
【0017】
本発明の狭窄検査ワークフローでは、カラーフロープロセッサ30からのカラーフローデータ、及び、好ましくは、Bモードプロセッサ24からの空間的に対応するBモードデータは、カラーボックス位置及び操舵角プロセッサ40に入力結合される。カラーボックス位置及び操舵角プロセッサは、カラーボックスの適切な位置決め、ドプラビームのドプラ角度の設定、画像内のサンプルボリュームSVの配置、及びドプラ角度補正のためのフロー角度カーソルの適切な位置決めを含む、カラーフロー画像の設定及び機能の自動化を制御する。ドプラ角の制御及び選択されたサンプルボリュームからのデータサンプルの取得に対し、カラーボックス位置及び操舵角プロセッサは、ドプラビームの方向及びタイミングを制御するためにビーム形成器コントローラ16に結合される。カラーボックス位置及び操舵角プロセッサの設定及び制御は、ユーザ制御パネル50上の制御の設定によって提供される。カラーボックスの輪郭、サンプルボリュームグラフィック、及びフロー角度カーソル等の、カラーボックス位置及び操舵角プロセッサによって制御される機能のグラフィック表示は、超音波画像にわたってグラフィックをオーバーレイするために表示プロセッサ36に結合されたグラフィックプロセッサ34を介して提供される。カラーボックス位置及び操舵角プロセッサ40の操作は、自動ドプラフロー設定を用いる超音波システムと題される、米国特許第2014/0221838号にさらに詳しく記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
図2は、狭窄評価検査の実施用の典型的なカラーフロー/スペクトルドプラ二重画像の超音波システム表示を示す。二次元(2D)解剖学的超音波画像60は画面の上部に表示され、スペクトルドプラ表示62は画面の下部にあり、速度がcm/秒で較正された縦軸と、時間が50mm/秒で較正された横軸とを有することが分かる。スペクトル表示の各垂直線は、その瞬間の血流の推定速度の分布を示す。ドプラ調査は、カラーボックス70の内側で行われ、このボックスの内側にカラーフロー画像が表示される。カラーボックス70の外側の画像の周囲部分は、カラードプラオーバーレイなしのBモードグレースケールで示される。カラーボックスの使用は、ドプラが実行される領域を描写し、ドプラアンサンブル取得のための繰返しドプラ送信は、カラーボックスの外側では実行されない。ドプラ送信をカラーボックスのみに制限することは、ボックスの外側で繰返される線調査の必要性を排除し、ひいては、画像の生成に必要とされる送信‐受信サイクルの総数を制限し、したがって、表示のリアルタイムフレームレートを改善する、画像の取得に必要とされる時間を短縮する。スペクトルドプラデータ用のドプラビームは、ビーム方向線68に沿って送受信され、スペクトルドプラ表示用に使用されるデータサンプルは、ビーム方向線上のサンプルボリュームSVから戻るエコーから取得される。角度補正用に使用されるドプラフロー方向カーソル66は、血管64の長手方向と整列され、ひいては、血管内のフロー方向と実質的に平行であり、ドプラ操舵角は、カラーボックス70及びビーム方向線68の垂直角であり、これらは一般的に互いに平行である。この例において、ドプラ操舵角は、血管64の長手方向に対して約60°の角度に設定される。
【0019】
図3は、本発明の原理に従って構成された図2のドプラ角度推定器及びスペクトルドプラプロセッサの1つの実施形態をブロック図形式で示す。身体内のサンプルボリュームSVから取得され、QBPフィルタ18によって生成された直交(I、Q)データサンプルは、クラッタ又は壁フィルタ80に結合される。血流速度を評価する時、身体内の動く組織又は静止した解剖学的構造の速度は望ましくなく、血流評価の目的のために、乱雑である。カラーボックス70の内側のものすべてがドプラ処理されるので、血流以外のすべての速度は、クラッタフィルタ又は壁フィルタによるさらなる処理から排除される。これらの速度が静止した又は遅く動いている組織から戻ったエコーから生成されると仮定して、このフィルタは、さらなる処理からの、一般的にはゼロcm/秒の速度に近づく閾値レベル未満のすべての速度推定値をブロック又は放棄する。これらの速度は、血流の予想される速度範囲よりも低いので、それらはクラッタ又は壁フィルタ80によるさらなるドプラ処理及び表示から除外される。
【0020】
図示された実施形態において、サンプルボリュームからの複素データサンプルは、3つのスペクトログラムプロセッサ、長型窓FFTプロセッサ82a、中型窓FFTプロセッサ82b、及び短型窓FFTプロセッサ82cに適用される。これらのプロセッサの各々は、それらが取得された時間領域からサンプルを周波数領域に変換するために、一連のデータサンプルの離散フーリエ変換を計算する、FFT(高速フーリエ変換)アルゴリズムを実行する。周波数ドメイン値は、信号を戻した血流の速度に比例するので、したがって、FFTプロセッサは、処理されたサンプルシーケンスによって表された血流の瞬時速度を推定する。典型的なFFTアルゴリズムの形式は次の通りである。
【数1】
ここで、xはQBPフィルタによって生成された複素サンプルである。複素データサンプルは、PWドプラモードにおける送信パルスに反応して、又はCWドプラモードにおいて受信されたエコーを周期的にサンプリングすることによって、一度に1つずつ取得され得る。サンプルシーケンスの典型的なデータレート(送信パルス繰返し周波数、PRF)は、PWドプラモードにおいて200Hz乃至2kHzである一方で、典型的なCWドプラサンプルレートは100乃至200kHzである。Xkは、−PRF/2乃至+PRF/2の範囲のドプラ周波数領域推定値である。変数nは時間インデクスであり、kは周波数インデクスである。
【0021】
各FFTは、異なる数のサンプルのシーケンスを処理し、窓長と呼ばれる。いくつかの実施形態において、超音波ドプラスペクトログラム表示は、位相角を破棄する一方で、電力の大きなダイナミックレンジを圧縮するために、次の式又は実質的に同等の結果を生じる複素FFTの対数振幅を使用し得る。
【数2】
異なる窓長を有する対数振幅スペクトログラムは、表示の所望のピクセル間隔に合致するために、及び複数のスペクトログラムの適応型の組み合わせを容易にするために、水平(時間)及び垂直(ドプラ周波数、速度)の次元で再サンプリングされ得る。再サンプリングは、例えば多相有限インパルス応答(FIR)フィルタ又はスプライン補間を使用する、既知の技術である。
【0022】
FFTアルゴリズムにおいて、Nは窓内のサンプル数であり、典型的に、PWドプラでは50乃至500、CWドプラでは1000乃至4000である。FFTアルゴリズムを連続して実行する窓は、典型的に、得られるドプラスペクトル表示が、ギザギザや不規則に見えるようにではなく、滑らかで時間的に適切にサンプリングされるように、時間的にオーバーラップする。典型的なオーバーラップは、例えば75%である。窓化されたデータは、一般的に、効率的なFFT処理のために、2の次の高い累乗までゼロ(ゼロパディング)で拡張される。本発明の原理に従って、3つのスペクトログラムプロセッサ82a、82b、及び82cはそれぞれ、異なる窓長、長型、中型、及び短型を有する。その結果、3つのスペクトログラムプロセッサの例示的な窓長は、ゼロパディングを含む、512サンプル、256サンプル、及び64サンプルである。PWドプラモードの別の例示的な窓長のセットは、512サンプル、128サンプル、及び64サンプルである。
【0023】
3つのスペクトログラムプロセッサは、データサンプルの異なる窓長を用いてFFTアルゴリズムを実行するので、それらは異なる結果を生成する。長型窓スペクトログラムプロセッサ82aは、速度はより正確であるが時間はあまり正確でない周波数(速度)推定値を生成する。短型窓スペクトログラムプロセッサ82cは、時間はより正確であるが速度はあまり正確でない周波数推定値を生成する。その結果、心臓が急速に収縮している時又は狭窄の近傍にある時は収縮期であるので、血流が急激に変化している時は、短型窓スペクトログラムプロセッサが好ましい。長型窓スペクトログラムプロセッサは、心臓が弛緩している時又は狭窄していない血管にある時の拡張期等、血流速度が急激に変化しない時に好ましい。異なる窓長を有する単一のスペクトログラムプロセッサを時間多重化することによって、複数の異なるスペクトログラムが生成され得ることが理解されよう。
【0024】
図3の例示的な実施形態は、表示用の最終スペクトログラム62を生成するために、選択された方法で3つのスペクトログラムプロセッサからの推定値を組み合わせる、選択/補間プロセッサ86を有する。スペクトログラムが組み合わされ得る1つの方法は、ポイントごとの単位で時間及び速度における3つのスペクトログラムからの3つの速度を補間することである。したがって、選択/補間プロセッサによって生成される最終的なスペクトログラムは、各々が長型、中型、及び短型の窓スペクトログラムの対応する速度から補間される速度の範囲を示す。選択/補間プロセッサは、水平エッジ検出器84a及び垂直エッジ検出器84bからの入力を受信することも分かる。エッジ検出器は、受信信号の水平及び/又は垂直エッジ検出を実施するFPGAのセクション内のプログラミング相互接続(例えば信号接続)を介してプロセッサに結合され得る。水平エッジ検出器84aは、長型窓スペクトログラムプロセッサ82aによって生成されたスペクトログラム内のスペクトルセグメントのエッジを検出し、垂直エッジ検出器84bは、短型窓スペクトログラムプロセッサ82cによって生成されたスペクトログラム内のスペクトルセグメントのエッジを検出する。これは、図4及び図5に示される拡大スペクトログラムセグメント画像によって示される。図4は、2つの水平スペクトルセグメント92及び93を示す。これらのセグメントのエッジは、画像全体の垂直線方向及び時間方向において画像内の連続する画素を比較する画像処理によって検出される。水平セグメントが存在する時、垂直検索がこれらのセグメントの1つを検出すると、白いピクセルが検出される。ピクセル検索が垂直方向に続くにつれて、連続するピクセルは、セグメントのエッジで白から黒への急な移行を示す。ピクセルの比較は、この重要な移行、ひいては水平セグメントのエッジを検出する。隣接する垂直線に沿った検索は、画像内の同じ垂直軌跡で又はその近くで、同様の急な移行を生じ、スペクトルセグメントの優位に水平方向を示す。水平エッジ検出器84aは、スペクトログラムが水平(時間)方向に優位に拡張していることを選択/補間プロセッサ86に知らせる。
【0025】
同様に、垂直エッジ検出器84bは、画像全体の水平線方向及び速度におけるスペクトル画像内の連続する画素を比較し、垂直スペクトルセグメントのエッジを検索する。図5を参照すると、垂直スペクトルセグメントを有するスペクトログラム画像が示される。94等の垂直セグメントが存在する時、画像全体の水平検索がこれらのセグメントの1つを検出すると、白いピクセルが検出される。ピクセル検索が水平方向に続くにつれて、連続するピクセルの比較は、セグメントのエッジで白から黒への急な移行を示す。ピクセルの比較は、この重要な移行、ひいては垂直セグメントのエッジを検出する。隣接する水平線に沿った検索は、画像内の同じ水平軌跡又はその近くで、同様の急な移行を生じ、スペクトルセグメント94の優位に垂直方向を示す。垂直エッジ検出器84bは、スペクトログラムが垂直(速度)方向に優位に拡張していることを選択/補間プロセッサに知らせる。画像全体のこれらのピクセル検索は、米国特許第6491636号(Chenalら)に記載されるように、画像内の心臓室境界検出に使用されるものと同様であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。構成された実施形態において、水平及び垂直エッジ検出器は、ピクセルデータの二次元アレイ内のエッジを検出する二次元空間フィルタを含む。
【0026】
選択/補間プロセッサ86は、最終的な適応型スペクトログラムとしての表示用に、そのピクセルで対応する窓長スペクトログラムを選択することによって、各水平(時間)及び垂直(速度)ピクセルでのスペクトルセグメントの優位な方向の指示に反応する。水平エッジ検出器84aがそのスペクトログラム内の水平エッジの優位性を知らせる場合、血流の速度の変化や急激な速度の変化はほとんどなく、選択/補間プロセッサは、表示用の最終スペクトログラムとして長型窓FFTを用いて処理されたスペクトログラムを使用することによって応答し、したがって速度精度を強調する。垂直エッジ検出器84bがそのスペクトログラムにおける垂直エッジの優位性を知らせる時、血流中に現在進行中の急速な速度変化が生じ、選択/補間プロセッサは、表示用の最終スペクトログラムとして短型窓FFTを用いて処理されたスペクトログラムを使用することによって応答し、したがって急速な速度変化を強調する。いずれの検出器も優位でない場合、選択/補間プロセッサ86は、中型窓スペクトログラムプロセッサ82bによって生成されたスペクトログラムを使用し得る。代替的に、選択/補間プロセッサ86は、優位なエッジ検出器がない場合、すべての3つのプロセッサから補間された最終スペクトログラムを生成する。
【0027】
ブロック図の各ブロック、及びブロック図のブロックの組み合わせ、ならびに本明細書に開示されたシステム及び方法の任意の部分は、コンピュータプログラム命令によって実施され得ることが理解されよう。これらのプログラム命令は機械を製造するためにプロセッサに提供され、その結果、プロセッサ上で実行する命令が、ブロック図ブロック若しくは複数のブロックで指定された又は本明細書で開示されたシステム及び方法について説明された動作を実施するための手段を生成する。コンピュータプログラム命令は、コンピュータによって実行されるプロセスを生成するためにプロセッサによって実行される一連の動作ステップを引き起こすために、プロセッサによって実行される。また、コンピュータプログラム命令は、動作ステップの少なくともいくつかを並行して実行させる。さらに、いくつかのステップはまた、マルチプロセッサコンピュータシステムにおいて生じるような、複数のプロセッサにわたって実行される。追加的に、1つ以上のプロセスはまた、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のプロセスと並行して、又は示されたシーケンスとは異なるシーケンスで実行される。
【0028】
コンピュータプログラム命令は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、CD‐ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又は他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、又は所望の情報を格納するために使用され得、コンピューティング装置によってアクセスされ得る、任意の他の媒体を含むが、これらに限定されない、任意の適切なコンピュータ可読ハードウェア媒体に格納され得る。
図1
図2
図3
図4
図5