特許第6828025号(P6828025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828025
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】電気エネルギ供給のための駆動ライン
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/21 20060101AFI20210128BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20210128BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20210128BHJP
   F16D 9/00 20060101ALI20210128BHJP
   F16D 13/72 20060101ALI20210128BHJP
   H02K 7/108 20060101ALI20210128BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20210128BHJP
   H02P 9/06 20060101ALI20210128BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   F16D43/21
   F16D7/02 D
   F16D7/02 Z
   F16D7/02 C
   F16D13/52
   F16D9/00 200
   F16D13/72 A
   F16D13/72 B
   H02K7/108
   H02K7/18 Z
   H02P9/06
   H02P9/04 F
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-515079(P2018-515079)
(86)(22)【出願日】2016年9月19日
(65)【公表番号】特表2018-529902(P2018-529902A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】EP2016072102
(87)【国際公開番号】WO2017050670
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年6月18日
(31)【優先権主張番号】15186024.4
(32)【優先日】2015年9月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】15198326.9
(32)【優先日】2015年12月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス メーリヒ
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−169508(JP,A)
【文献】 特開平11−218154(JP,A)
【文献】 特開平3−129124(JP,A)
【文献】 特開2000−186576(JP,A)
【文献】 特開2002−332871(JP,A)
【文献】 特開2014−84936(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0045335(US,A1)
【文献】 実開平4−34520(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00 − 9/10
F16D 41/00−47/06
H02P 9/00− 9/48
H02K 7/00− 7/20
F02C 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電および電気グリッド安定化のための駆動ライン(1)であって、制御可能なパワーユニット(2と、前記電気グリッドに電力を供給するための、前記電気グリッドに接続可能な発電機(15)
前記発電機(15)と前記パワーユニット(2)との間において、前記駆動ライン(1)に配置されたトルク制限継手(16)と、
を有する、駆動ライン(1)において、
前記トルク制限継手(16)には、スリップセンサとして温度センサ(93)が設けられており、
前記トルク制限継手(16)の温度は、前記温度センサ(93)によって測定され、
前記トルク制限継手(16)の過熱を回避するために、第2の切断安全継手(19)が設けられており、
前記トルク制限継手(16)および前記第2の切断安全継手(19)は、所定の時間にわたるスリップの後で、前記パワーユニット(2)と前記発電機(15)との間の切断を提供する、
ことを特徴とする、駆動ライン(1)。
【請求項2】
前記駆動ライン(1)は、前記パワーユニット(2)と前記トルク制限継手(16)との間に配置されたギヤボックス(13)を有することを特徴とする、請求項1に記載の駆動ライン(1)。
【請求項3】
前記パワーユニット(2)は、ガスタービン(5)または蒸気タービンである、
請求項1または2に記載の駆動ライン。
【請求項4】
前記トルク制限継手(16)として摩擦継手(11,9)が使用されており、前記摩擦継手(9,11)は冷却装置(63)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の駆動ライン。
【請求項5】
前記冷却装置(63)は、液体冷却ユニットを有することを特徴とする、請求項4に記載の駆動ライン。
【請求項6】
前記摩擦継手(9)として多板クラッチ(11)が使用されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の駆動ライン。
【請求項7】
前記トルク制限継手(16)は、負荷制限および切断安全継手(43)であり、前記負荷制限および切断安全継手(43)は、切断の前に所定のスリップ角度までのスリップを提供することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の駆動ライン(1)。
【請求項8】
前記負荷制限および切断安全継手(43)は、所定の回数のスリップ動作の後または所定の時間の後、前記トルク制限継手(16)をリセットするための機構を有する、請求項7に記載の駆動ライン。
【請求項9】
切断の前の前記所定のスリップ角度は、前記パワーユニット(2)の出力シャフトの回転速度に依存することを特徴とする、請求項7または8に記載の駆動ライン。
【請求項10】
前記測定された温度は、制御装置(95)へ伝送され、前記制御装置(95)は、切断を提供するために前記第2の切断安全継手(19)を電気的に作動させる、請求項1から9までのいずれか1項に記載の駆動ライン(1)。
【請求項11】
前記トルク制限継手(16)としてヒステリシス継手(61)が使用されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の駆動ライン。
【請求項12】
発電ユニットであって、制御可能なパワーユニット(2と、電気グリッドに電力を供給するための、前記電気グリッドに接続可能な発電機(15)とを有する、発電ユニットにおいて、
前記発電機(15)前記パワーユニット(2)との間にトルク制限継手(16)が配置されており、
前記トルク制限継手(16)には、スリップセンサとして温度センサ(93)が設けられており、
前記トルク制限継手(16)の温度は、前記温度センサ(93)によって測定され、
前記トルク制限継手(16)の過熱を回避するために、第2の切断安全継手(19)が設けられており、
前記トルク制限継手(16)および前記第2の切断安全継手(19)は、所定の時間にわたるスリップの後で、前記パワーユニット(2)と前記発電機(15)との間の切断を提供する、
ことを特徴とする、発電ユニット。
【請求項13】
前記トルク制限継手(16)は、負荷制限および切断安全継手(43)であり、前記負荷制限および切断安全継手(43)は、切断の前に所定のスリップ角度までのスリップを提供することを特徴とする、請求項12に記載の発電ユニット。
【請求項14】
電気グリッドの安定化の方法であって、前記電気グリッドは、請求項1から11までのいずれか1項に記載の駆動ラインを有し、前記安定化は、
a.所定のトルクを超えたときにトルク制限継手(16)のスリップにより、発電機(15)に加えられるトルクを制限するステップと、
b.前記トルク制限継手(16)の温度を、スリップセンサとしての温度センサ(93)により測定するステップと、
.スリップの継続時間および/または周波数に応じて第2の切断安全継手19)の作動によってパワーユニット(2)前記発電機(15)から切断するステップと、
を含み、
前記スリップの前記継続時間および/または前記周波数は、前記温度センサ(93)により測定される前記トルク制限継手(16)の温度上昇によって検出される、
電気グリッドの安定化の方法。
【請求項15】
前記測定された温度は、制御装置(95)へ伝送され、前記制御装置(95)は、切断を提供するために前記第2の切断安全継手(19)を電気的に作動させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記トルク制限継手(16)は、負荷制限および切断安全継手(43)であり、
前記負荷制限および切断安全継手(43)による切断は、前記パワーユニット(2)またはギヤボックスの出力シャフトの回転速度およびスリップ角度に応じて行われ、低速において、高速におけるスリップと比較して、より小さいスリップ角度が許容される、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、電気エネルギを供給するための駆動ラインに関する。エネルギ市場、特に欧州エネルギ市場は、集中電力供給から分散電極供給へ変化している。電気エネルギ/電流は、2つの異なる発生装置、つまり、発電所などの制御可能エネルギ発生装置と、太陽電力供給装置または風車電力供給装置などの非制御可能エネルギ発生装置とによって、供給される。
【背景技術】
【0002】
集中電力供給から分散電力供給および非制御可能エネルギ発生装置への変化は、電力網において以下の電気的フォルト;1相、2相および3相の短絡、電圧変動、グリッドにおけるマイクロインタラプション、を生じている。全てのこれらの電気的フォルトは、駆動ラインにおいて過負荷を生ぜしめる可能性がある。過負荷は、公称トルクの7.5乃至16.5倍となる可能性がある。電圧変動および電力故障を防止するために、電気グリッドのためのネットワークおよびシステムルールが、制定されている。
【0003】
ルールは、電気発生装置はグリッドを安定させなければならないという、不安定なネットワークの場合の義務を含む。電気発生装置のために、特定の時間だけグリッドを離脱することはもはや許容されていない。現在のところ、国によって、150乃至300msだけグリッドにとどまることが義務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、電気グリッドを安定させることができる電気発生装置を提供することである。
【0005】
さらに、本発明の課題は、故障後に、電気発生装置が、所定の時間にわたって電気グリッドに電力を供給することができることを保証することである。
【0006】
本発明の別の課題は、非制御可能な電流発生装置の電流によって供給の変動を補償することができる電気発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、請求項1,10および11の特徴によって解決される。
【0008】
制御可能なパワーユニットを有する駆動ラインを提供するために、エンドユーザの高い電力消費または家庭用ソーラ、ソーラ形式およびウィンドファームなどの非制御可能なパワーユニットからの電力の低い供給のときに電気グリッドに電力を供給することによって電力グリッドを安定させることが可能である。制御可能なパワーユニットは、非制御可能なエネルギ発生装置の変動を補償するためにおよび高い電力消費のときに始動させることができる。特に、ガスモータまたはガスタービンは、オンデマンドで始動させることができる好適なパワーユニットである。さらに、パワーユニットとして蒸気タービンを使用することができる。フォルトの場合にグリッドの不安定化を回避するためにパワーユニットと発電機との間にトルク制限継手が配置されている。特に、発電機に加えられるトルクを制限することができる。さらに、発電機の側におけるフォルトの場合、パワーユニットが保護されている。
【0009】
好適な実施の形態では、パワーユニットとトルク制限継手との間において駆動ラインにギヤボックスが配置されている。ギヤボックスは、発電機および電気グリッドの需要に対する、パワーユニットの被駆動シャフトの回転速度の適応を提供する。
【0010】
好適な実施の形態では、トルクが制限された継手は、スリップによって、伝達されるトルクを制限する。
【0011】
好適な実施の形態では、トルク制限継手として摩擦継手が使用されており、摩擦継手は、好適には、冷却装置を有する。冷却装置は、スリップ中に摩擦によって生じた熱を逃がすことを助ける。好適な実施の形態では、冷却装置は液体冷却ユニットを有する。
【0012】
好適な実施の形態では、摩擦継手として多板クラッチが使用される。多板クラッチは、高いトルクを伝達することができ、コンパクトであることができる。
【0013】
好適な実施の形態では、トルク制限継手は、伝達可能な負荷を制限し、切断安全継手を有する。切断安全継手は、切断の前に所定のスリップ角度までのスリップを許容する。好適な実施の形態では、トルク制限継手は、所定の回数のスリップ動作の後または所定の時間の後、トルク制限継手をリセットするための機構を有する。
【0014】
好適な実施の形態では、切断安全継手は、パワーユニットまたはギヤボックスの出力シャフトの回転速度およびスリップ角度に応じて切断を行う。これにより、低速において、高速におけるスリップと比較してより小さなスリップ角度を許容することが可能である。
【0015】
好適な実施の形態では、トルク制限継手としてヒステリシス継手が使用される。ヒステリシス継手の利点は、トルク制限継手の相互作用部分の面の間の接触がないことである。したがって、摩耗がなく、360°を超える、数分から数時間までにわたるスリップ角度が許容できる。
【0016】
制御可能な電力供給装置は、制御可能なパワーユニット、特に、ガスモータまたはガスタービンと、電力を電気グリッドに供給するために電気グリッドに接続可能な発電機と、パワーユニットを始動させるための制御装置とを備える駆動ラインを有する。トルク制限継手は、制限されたトルクを発電機に提供するために、発電機とパワーユニットとの間に配置されている。
【0017】
電気グリッドの安定化のための方法は、制御可能な駆動ラインを少なくとも含む電気グリッドを含む環境において使用することができる。駆動ラインは、パワーユニットと、少なくとも1つの発電機と、パワーユニットと発電機との間に配置されたトルク制限継手とを有する。グリッドの安定化のための方法は、所定のトルクを超えたときにトルク制限継手のスリップによって発電機に加えられるトルクを制限するステップと、スリップの継続時間および/または周波数に応じて、切断安全継手の作動によって発電機からパワーユニットを切断するステップとを含む。
【0018】
トルク制限継手の温度上昇の検出によりスリップの継続時間および/または周波数を測定することが好適な方法である。この温度測定によって、発電機からパワーユニットを切断するために切断部を作動させることが可能である。
【0019】
本発明のその他の態様および利点は、以下の説明から明らかとなる。
【0020】
図面の簡単な説明
本発明は、その課題および利点とともに、添付の図面とともに現時点で好適な実施の形態の以下の説明を参照することによって最もよく理解され得る。本発明の範囲は、これらの実施の形態によって制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】スリッピングクラッチを備える駆動ラインを示している。
図2】安全クラッチと組み合わされたスリッピングクラッチを備える駆動ラインを示している。
図3】モータと歯車との間に配置されたスリッピングクラッチを備える駆動ラインを示している。
図4】スリッピングクラッチとしての多板クラッチを有するスリッピング継手を示している。
図5】スリッピングクラッチとしてのヒステリシス継手を示している。
図6】切断機構を備えないトルク制限クラッチを示している。
図7】負荷制限クラッチとしてのスリッピングクラッチとしてのツインウォレットスリーブを示している。
図8】スリッピングおよび負荷切断クラッチとしてのスマートセット(SmartSet)安全継手を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適な実施の形態の詳細な説明
図1は、電気グリッド12に電力を供給するための発電装置としての駆動ライン1を開示している。電源として、ガスタービン5、ガスモータ3、蒸気タービンまたは水タービンを使用することによって、これは、制御可能なエネルギ発生装置である。特に、ガスモータ3を、極めて迅速に始動させることができる。したがって、電気グリッドは、この駆動ライン1を始動させることによって安定させることができる。
【0023】
駆動ライン1は、パワーユニット2/パワー源としてガスモータ3またはガスタービン5を有する。パワーユニット2の回転運動は、電流を発生するために発電機15に伝達される。パワーユニット2の回転速度を発電機15に適応させるために、駆動ライン1において発電機15とパワーユニット2との間にギヤボックス13が配置されている。
【0024】
集中発電から分散発電および非制御可能エネルギ発生装置への変更は、電気網において以下の電気的フォルトを生じる可能性がある。すなわち、1相、2相および3相の短絡、電圧変動および/またはグリッドにおけるマイクロインタラプションである。全てのこれらの電気的フォルトは、駆動ライン1において過負荷を生ぜしめる可能性がある。過負荷は公称トルクの7.5乃至16.5倍である可能性がある。電圧変動およびパワー故障を防止するための結果として、電気的な駆動ライン1は、電気グリッド12を安定させなければならない。電気グリッド12にとどまるために、ギヤボックス13と発電機15との間に、駆動ライン保護として、駆動ライン1に、スリッピングトルク制限継手16が組み込まれている。
【0025】
駆動ラインがギヤボックス13を有さない場合、スリッピングトルク制限継手16は、パワーユニット2と発電機15との間に配置されている。スリッピングトルク制限継手16によって、パワーユニット2によって提供されるトルクは、所定の最大トルクに制限される。
【0026】
ほとんどの場合、故障は、短い継続時間のものであり、特にミリ秒の範囲におけるものである。したがって、スリップは、短時間だけのものとなる。スリップによって熱が発生する。極めて短時間のスリップであるので、スリップ動作の間の時間は十分に長く、これにより、スリッピングトルク制限継手16の過熱は生じない。
【0027】
図2は、直列の、クラッチとも呼ばれる2つの継手を有する1つの実施の形態を開示している。一方の継手は、スリッピングトルク制限継手16である。スリッピングトルク制限継手16には、スリップセンサ91として温度センサ93が設けられている。温度センサによって、スリッピングトルク制限継手の温度が検出される。スリッピングトルク制限継手16が、極めて頻繁にまたは長時間にわたってスリップすると、温度は所定の温度を超える。したがって、過熱のリスクが存在する。例えば、このような長いスリップは、パワーユニット2/ギヤボックス13または発電機15におけるブロックの結果であり得る。スリッピングトルク制限継手16の過熱を回避するために、第2の継手19が設けられている。第2の継手19は、パワーユニット/ギヤボックス13と発電機15との間の切断を短期間で実行することができる。このような第2の継手19の一例は、機械的ソリューションとしてのシヤーピン継手であることができる。スリップによって生ぜしめられた測定された温度を制御装置95へ伝送することも可能であり、制御装置95は、切断を提供するために第2の継手19を電気的に作動させる。
【0028】
図3において、駆動ライン1は、パワーユニット2/パワー源としてガスモータ3またはガスタービン5を有する。パワーユニット2の回転運動は、電流を発生するために発電機15に伝達される。パワーユニット2の回転速度を発電機15に適応させるために、駆動ライン1において発電機15とパワーユニット2との間にギヤボックス13が配置されている。幾つかの用途では、ギヤボックス13は不要である。
【0029】
不規則性および過負荷を補償するために、スリッピングトルク制限継手16は、駆動ライン1において、駆動ライン保護として、ガスモータ3またはガスタービン5と発電機との間に組み込まれている。図示した実施の形態では、ギヤボックスは、駆動ラインの一部であり、トルク制限クラッチは、モータ3またはタービン5とギヤボックス13との間に配置されている。このスリッピングトルク制限継手は、ガスタービン5またはガスモータ3のフォルトの場合にギヤを防止する。
【0030】
図4は、スリッピングトルク制限継手16としての多板クラッチ11を開示している。多板クラッチ11は、発電機15からのパワーユニット2またはギヤボックス13の切断のための機構を有さない。多板クラッチ11は、摩擦面を備える多板25と、ばね35と、再調節装置27とを有する。多板クラッチ11は、所定の大きさまでのトルクを伝達する。このトルク量を超えることによって、クラッチ11はスリップし始め、最大では、所定の量以下のトルクが伝達される。スリップによって熱が発生する。多板クラッチ11のハウジングの冷却フィン(図示せず)またはその他の冷却装置によって熱を放出することができる。再調節装置27は、多板クラッチ11の摩擦面の摩耗を補償する。
【0031】
図5は、ヒステリシス継手61を示している。ヒステリシス継手61は、磁石エレメント67およびヒステリシスエレメント69を有する。磁石エレメント67とヒステリシスエレメント69との間にエアギャップが配置されている。継手としての電気的なヒステリシスユニットは、極端に高いトルク範囲を有する。電流によって発生される磁束の場合に、これらの継手61を遠隔で制御することができる。ドラッグトルクが最小であるので、これらのユニットは、あらゆる電磁製品の最も広い利用可能トルク範囲を提供する。全てのトルクは磁気的に伝達される。エアギャップ65により接触は生じないので、トルク伝達コンポーネントのいずれにも摩耗が生じず、極めて長い寿命を提供する。ロータ66に電流が加えられると、ロータ66は磁束を生じる。ヒステリシスエレメント69を有するヒステリシススリーブ68は、磁束の強さに応じて磁化されるための能力を有する。これは、ロータ66が回転したときに、ロータ66とヒステリシススリーブ68との間の磁気ドラッグが生じ、回転を生ぜしめることを意味する。ある意味では、ヒステリシススリーブ68は、ロータ66の後に引っ張られる。所要の出力トルクに応じて、この引っ張りは、結局、入力速度に合致することができ、100%ロックアップを提供する。
【0032】
電流がヒステリシス継手61から除去されると、可動子は自由に回転し、ヒステリシススリーブ68およびロータ66双方の間で相対的な力が伝達されることはない。したがって、入力部と出力部との間に見られる唯一のトルクがドラッグを支持している。
【0033】
永久磁石が装備された磁気ヒステリシス継手を使用することができる。加えられたトルクが所定のトルクを超えた場合、ヒステリシスエレメント69を有するヒステリシススリーブ68は、スリップし、加えられたトルクの一部のみが伝達される。接触は存在しないので、摩耗は生じない。スリップの間、ヒステリシス継手61に熱が発生される。冷却フィン63によって熱を排出することができる。
【0034】
図6は、異なるトルク制限継手16を示している。このトルク制限継手16は、内側シャフト71を有する。内側シャフト71は、パワーユニット2の被駆動シャフトにフランジによって接続されている。くさび形スリーブ73は、内側シャフト71に対して同軸に配置されている。くさび形スリーブ73の内面は、内側シャフト71の外面と摩擦接触されている。くさび形スリーブは、内側シャフト71のフランジ72の遠い側にフランジ74を有する。くさび形スリーブ73は外側圧力リング75によって包囲されている。くさび形スリーブ73および外側リング75の位置決めにより、所定の摩擦係合を選択することができる。したがって、この継手上で伝達可能な最大トルクは、制限され、予め決定される。
【0035】
図7において、トルク制限継手16の別の実施の形態が開示されている。このトルク制限継手16は、摩擦継手9である。トルク制限継手16は、内側シャフト71を有する。内側シャフトには溝77が設けられている。ツインウォレットスリーブ79は、内側シャフト71に対して同軸に配置されており、内側シャフト71を包囲している。ツインウォレットスリーブ79は、圧力流体入口49を有する。ツインウォレットスリーブ79を所定の圧力まで充填することによって、内側シャフト71および外側ツインウォレットスリーブ79の摩擦係合は、所定のトルクまでに制限される。加えられるトルクが所定のトルクを超えると、内側シャフト71とツインウォレット外側スリーブ79との間のスリップが生じる。内側シャフト71は、内側シャフト71の外面とツインウォレットスリーブ79の内面との間に流体を提供するための第2の流体入口50を有する。第2の入口50は、摩擦係合を減じるために流体を導入するために使用される。過負荷状態を示す長いスリップが検出されると、第2の流体入口50を通じた流体の導入によって、摩擦係合の顕著な減少が達成される。この流体を交換することによって、冷却ユニットは統合される。過負荷状態がもはや検出されないと、第2の流体入口はもはや加圧されない。流体は、ツインウォレットスリーブによって加えられる力により、第2の入口50を通って流出する。内側シャフト71の外面とツインウォレットスリーブ79の内面との間の摩擦係合は、流体を絞り出すことによって、再確立される。
【0036】
図8には、トルク制限継手16としてのVoith社のスマートセット(SmartSet)継手が開示されている。スマートセット継手は、「トルク制限継手。セーフセット、スマートセットおよびオートセット(Torque limiting coupling. Safeset, SmartSet and Autoset)」というタイトルで、パンフレットcr421 enに記載されている。パンフレットの開示は引用により組み込まれる。
【0037】
スマートセット43は、スリップが制御される、プロセス改良継手である。スマートセットは、短い継続時間およびダイナミックトルクピークを減じるために、解放せずにスリップする能力を有する。スマートセットは、調節可能なピークシェーバとして機能することによって、プロセスを改良しかつ用途の出力を最大化する。スマートセットは、解放せずに、短いスリップでシステム過渡トルクを減じることができる。スマートセットは、多くの短いピークを経験する、始動または連続的な運転のために適応させることができる。技術は、セーフセット(SafeSet)継手の場合と同じであるが、スマートセットには、継手に付加的なスリップ特徴を提供するオートリセット(Autoreset)装置という名称の遠心装置45が装備されている。この遠心装置45は、意図された用途の回転速度によって作動させられる。これは、高い過渡トルクの間に継手がスリップすることを可能にする。トルクピークが、完全なブロックのように、過負荷状況において長い継続時間であるならば、スマートセット継手は、通常のセーフセット継手として完全に解放し、その後、破局的な故障から駆動ラインを保護することができる。
【0038】
スマートセットの遠心装置45は、シャフト57、ばね59によって予負荷された遠心ユニット46、半径方向に可動なスリーブ58、メインレバー55、メインレバー55に回転可能に取り付けられかつばねによって予負荷されたストップレバー56を有する。ストップレバー56の回転運動は、ストッパによって制限され、ストッパはメインレバー55に配置されている。さらに、メインレバー55は、シヤーチューブ53を収容するための開口を有する。メインレバー55は、遠心装置45のシャフト57に回転可能かつ半径方向に可動に取り付けられている。メインレバー55が回転した場合、シヤーチューブ53はせん断し、油圧が低下し、被駆動エレメントと駆動エレメントとの摩擦面が分離する。メインレバー55の回転は、解放突出部を備えるシフティングゲート51によって作動させられる。スマートセット装置が駆動エレメントに取り付けられている場合、解放突出部を備えるシフティングゲート51は、被駆動エレメントに関して固定されている。したがって、所定の角度を超えるスリップの場合、シヤーチューブのせん断が生じる。
【0039】
別のトルク制限継手が市場で公知である。例えば、MAYR社は、EASという名称のトルク制限継手を提供する。
【符号の説明】
【0040】
1 エネルギ提供装置、駆動ライン
2 制御可能なパワーユニット
3 ガスモータ
5 ガスタービン
9 摩擦継手
11 多板クラッチ
12 電気グリッド
13 ギヤボックス
15 発電機
16 トルク制限継手
19 切断安全継手;第2の継手
25 多板
27 再調節装置
35 ばね
43 スマートセット(SmartSet)継手
45 遠心装置
46 遠心ユニット
49 圧力流体入口
50 第2の流体入口
51 シフティングゲート
53 シヤーオフチューブ
55 メインレバー
56 ストップレバー
58 半径方向可動なスリーブ
61 ヒステリシス継手
63 冷却フィン、冷却装置
65 エアギャップ
66 ロータ
67 磁石エレメント
68 ヒステリシススリーブ
69 ヒステリシスエレメント
71 内側シャフト
72 内側シャフトのフランジ
73 くさび形スリーブ
74 くさび形スリーブのフランジ
75 外側圧力リング
91 スリップセンサ
93 温度センサ
95 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8