(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828030
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】パッケージからの熱を放散するベースを備えた冷却エレメント
(51)【国際特許分類】
G21F 5/008 20060101AFI20210128BHJP
G21F 3/00 20060101ALI20210128BHJP
G21F 5/00 20060101ALI20210128BHJP
G21F 5/10 20060101ALI20210128BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20210128BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
G21F5/008
G21F3/00 N
G21F5/00 K
G21F5/10 N
G21F5/10 P
G21F9/36 501J
G21C19/32 110
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-519377(P2018-519377)
(86)(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公表番号】特表2018-534561(P2018-534561A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2016074561
(87)【国際公開番号】WO2017064174
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】1559894
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514312343
【氏名又は名称】テーエヌ アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ド ディヌシン ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】パロマー ロイック
(72)【発明者】
【氏名】リペール エルヴェ
【審査官】
関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−279685(JP,A)
【文献】
特公平02−025478(JP,B2)
【文献】
特公昭57−056038(JP,B1)
【文献】
特開2015−175788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C19/00−19/10
19/12−19/313
19/32−19/50
23/00
G21F1/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料アセンブリのような放射性物質の運搬と保管の少なくとも一方を行なうためのパッケージ(2)であって、
壁エレメント(26)と、
前記壁エレメントに装着されて当該壁エレメントから前記パッケージ(2)の外方へ突出している冷却エレメント(30、31、32)と、
を備えており、
前記冷却エレメント(30、31、32)は、ベース(40)、および当該ベース(40)に対して一体であるか固定されている少なくとも一つのフィン(34、35)を備えており、
前記ベース(40)は、その両側端(44、45)に向かって前記フィンの両側に延びており、
前記両側端(44、45)の各々は、溶接部を介して前記壁エレメント(26)に装着されており、
前記壁エレメント(26)の外面(S1)は、前記ベース(40)を収容するためのハウジング(50)を形成している凹部を有しており、
前記両側端(44、45)の少なくとも一つは、溶接部を介して前記ハウジング(50)における少なくとも一つの側縁(54、55)に接続されている、
パッケージ(2)。
【請求項2】
前記ベース(40)は、前記少なくとも一つの側縁(54、55)において前記壁エレメント(26)の表面と同一面をなすように前記ハウジングに収容されている、
請求項1に記載のパッケージ(2)。
【請求項3】
前記ハウジング(50)における前記側縁(54、55)同士の間の幅寸法(I3)は、前記ベース(40)の幅寸法(I2)と前記溶接部の幅寸法の合計以下である、
請求項1または2に記載のパッケージ(2)。
【請求項4】
前記両側端(44、45)の少なくとも一方における前記ベース(40)の高さ寸法(h2)は、前記フィン(34、35)の平均厚み寸法(e1)の半分以上である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のパッケージ(2)。
【請求項5】
前記壁エレメント(26)、前記ベース(40)、および前記フィン(34、35)の少なくも一つは、銅を含有している、
請求項1から4のいずれか一項に記載のパッケージ(2)。
【請求項6】
前記ベース(40)と前記フィン(34、35)は、ワンピース部品として一体に形成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のパッケージ(2)。
【請求項7】
中性子シールドブロック(24)と、
少なくとも一つの熱伝導内側エレメント(28)と、
を備えており、
前記壁エレメント(26)は、前記熱伝導内側エレメント(28)に対して一体とされているか固定されており、
前記熱伝導内側エレメント(28)は、前記パッケージ(2)のフェルール(21)と接触しており、
前記フェルール(21)、前記熱伝導内側エレメント(28)、および前記壁エレメント(26)は、前記中性子シールドブロック(24)を少なくとも部分的に包囲している、
請求項1から6のいずれか一項に記載のパッケージ(2)。
【請求項8】
前記冷却エレメント(30、31、32)は、少なくとも二つのフィン(34、35)、および当該少なくとも二つのフィン(32、35)に共通のベース(40)を備えている、
請求項1から7のいずれか一項に記載のパッケージ(2)。
【請求項9】
前記壁エレメント(26)に装着された第二冷却エレメント(30、32)を備えており、
前記第二冷却エレメント(30、32)は、前記ベース(40)に対して一体であるか固定されている少なくとも一つのフィン(34、35)を備えており、
前記冷却エレメント(31)と前記第二冷却エレメント(32)の間の距離(d)は、前記少なくとも一つのフィン(34、35)の高さ寸法(h1)よりも小さい、
請求項1から8のいずれか一項に記載のパッケージ(2)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のパッケージ(2)の製造方法であって、
前記ベース(40)を前記壁エレメント(26)に設けられたハウジング(50)内に配置する工程と、
前記ベース(40)の両側端(44、45)の少なくとも一方を前記ハウジング(50)における少なくとも一つの側縁(54、55)に溶接する工程を含んでいる、
製造方法。
【請求項11】
前記ベース(40)の前記両側端(44、45)の間の幅寸法(I2)は、前記フィン(34、35)の平均厚み寸法(e1)の2倍以上である、
請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ベース(40)は、電子ビームまたはレーザビーム(61、62)によって前記壁エレメント(26)に溶接される、
請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ベース(40)は、熱接触界面(S4、S5)に沿って前記ハウジング(50)に溶接され、
前記熱接触界面(S4、S5)は、前記フィン(34、35)の高さ方向(Y−Y)に対して0°から30°の角度(α1、α2)だけ傾いている、
請求項10から12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
プレート(36)に複数の切欠き(33)を形成することによって、前記冷却エレメント(30、31、32)の前記フィン(34)を形成する工程を含んでおり、
前記複数の切欠き(33)同士は、前記プレート(36)の長手方向(X−X)に沿って離間している、
請求項10から13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記プレート(36)は、前記冷却エレメント(30、31、32)の前記ベース(40)を備えており、
前記ベース(40)の前記両側端(44、45)は、前記複数の切欠き(33)が形成された後で前記プレート(36)の長手方向に沿って溶接される、
請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
溶接後に前記フィン(34)をその長手軸(Y−Y)を中心として捩る、
請求項14または15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質(新しい核燃料アセンブリや照射済み核燃料アセンブリなど)を保管や運搬するためのパッケージに関連する。具体的には、当該パッケージの外壁エレメントに冷却エレメントを装着することに関連する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質を保管や運搬するためのパッケージは、その長手方向両端が底と蓋によって閉塞された側体を備えている。
【0003】
側体は、外壁エレメントからパッケージの外方へ突出する複数の冷却エレメントを備えている。これらの冷却エレメントは、パッケージの周方向にそって非常に近接していることが多い。
【0004】
具体的には、冷却エレメントは、外壁エレメントに対してはんだ付けにより装着される。しかしながら、はんだ付けによる手法は、冷却エレメント(特にそのベース付近)を破断する虞や、外壁エレメントを劣化させる虞を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術に係る問題の少なくとも一部を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の対象の一つは、核燃料アセンブリのような放射性物質の運搬と保管の少なくとも一方を行なうためのパッケージである。
【0007】
前記パッケージは、壁エレメントと当該壁エレメントに装着された冷却エレメントを備えている。前記冷却エレメントは、前記壁エレメントから前記パッケージの外方へ突出している。前記冷却エレメントは、ベース、および当該ベースに対して一体であるか固定されている少なくとも一つのフィンを備えている。
【0008】
本発明によれば、前記ベースは、その両側端に向かって前記フィンの両側に延びており、前記両側端の各々は、溶接部を介して前記壁エレメントに装着されている。
【0009】
ベースは、冷却エレメントの壁エレメントへの装着時において溶接金属領域をフィンの基端から遠ざけることを可能にする。よって、レーザビームや電子ビームなどにより局所的に高熱が入力される既知の溶接法が用いられる場合において、フィンが破断する虞が低減される。
【0010】
加えて、そのような溶接法は、溶接時における壁エレメントの温度上昇を抑制することにより、可塑性収縮により壁エレメントが不可逆的に変形する虞も抑制する。
【0011】
したがって、本発明は、冷却エレメントが損傷する虞を抑制しつつ、冷却エレメントの壁エレメントの装着時における壁エレメントの変形も抑制する。
【0012】
本発明は、以下に列挙する特徴の少なくとも一つを含みうる。各特徴は、相互に組み合わされてもよい。
【0013】
好ましくは、前記壁エレメントの外面は、前記ベースを収容するためのハウジングを形成している凹部を有しており、前記両側端の少なくとも一つは、溶接部を介して前記ハウジングにおける少なくとも一つの側縁に接続されている。
【0014】
これにより、ベースと壁エレメント間の熱伝導が促進される。
【0015】
特定の実施形態においては、前記ベースは、前記少なくとも一つの側縁において前記壁エレメントの表面と同一面をなすように前記ハウジングに収容されている。
【0016】
その結果、冷却エレメントの良好な装着状態、および冷却エレメントと壁エレメント間の良好な熱伝導が得られる。
【0017】
好ましくは、前記両側端の少なくとも一方における前記ベースの高さ寸法は、前記フィンの平均厚み寸法の半分以上である。
【0018】
これにより、ベースと壁エレメント間の熱伝導が向上する。
【0019】
有利な実施形態においては、前記壁エレメント、前記ベース、および前記フィンの少なくも一つは、銅を含有している。
【0020】
銅は適当な熱伝導をもたらすが、壁エレメント、ベース、およびフィンの少なくとも一つは塑性変形しやすくなる。
【0021】
好ましくは、前記ベースと前記フィンは、ワンピース部品として一体に形成される。
【0022】
これにより、製造が大幅に容易とされつつ、パッケージの熱放散性が向上する。
【0023】
別の有利な実施形態においては、前記パッケージは、中性子シールドブロックと少なくとも一つの熱伝導内側エレメントを備えている。前記壁エレメントは、前記熱伝導内側エレメントに対して一体とされているか堅固に固定されている。前記熱伝導内側エレメントは、前記パッケージのフェルールと接触している。前記フェルール、前記熱伝導内側エレメント、および前記壁エレメントは、前記中性子シールドブロックを少なくとも部分的に包囲している。
【0024】
特定の別実施形態においては、前記冷却エレメントは、少なくとも二つのフィン、および当該少なくとも二つのフィンに共通のベースを備えている。前記ベースは、その両側端に向かって前記フィンの両側に延びている。前記両側端の各々は、溶接部を介して前記壁エレメントに装着されている。
【0025】
共通のベースの存在により、パッケージの製造がより容易になる。
【0026】
有利な別実施形態においては、前記パッケージは、前記壁エレメントに装着された第二冷却エレメントを備えている。前記第二冷却エレメントは、前記ベースに対して一体であるか固定されている少なくとも一つのフィンを備えている。前記冷却エレメントと前記第二冷却エレメントの間の距離は、前記少なくとも一つのフィンの高さ寸法よりも小さい。
【0027】
冷却エレメントの数と密度が増すと、適切な熱放散性を提供できる一方で、パッケージの製造難易度が増す。
【0028】
本発明は、放射性物質の運搬と保管の少なくとも一方を行なうためのパッケージ用の熱伝導エレメントにも関連する。当該熱伝導エレメントは、熱伝導内側エレメント、少なくとも一つの冷却エレメント、および前記パッケージの外殻を形成するための壁エレメントを備えている。前記熱伝導内側エレメントと前記冷却エレメントは、これらを機械的および熱的に接続する前記壁エレメントの両側に配置されている。前記冷却エレメントは、ベース、および当該ベースに対して一体であるか固定されている少なくとも一つのフィンを備えている。
【0029】
本発明によれば、前記ベースは、その両側端に向かって前記フィンの両側に延びており、前記両側端の各々は、溶接部を介して前記壁エレメントに装着されている。
【0030】
本発明は、上述した放射性物質の運搬と保管の少なくとも一方を行なうためのパッケージの製造方法にも関連する。
【0031】
本発明によれば、前記製造方法は、前記ベースの両側端の各々を前記壁エレメントに溶接する工程を含んでいる。
【0032】
好ましくは、前記ベースの前記両側端の間の幅寸法は、前記フィンの平均厚み寸法の2倍以上である。
【0033】
冷却エレメントの壁エレメントへの装着時において溶接金属領域がフィンの基端からさらに遠ざけられることによって、フィンが破断する虞がさらに低減される。
【0034】
特定の実施形態においては、前記ベースは、電子ビームまたはレーザビームによって前記壁エレメントに溶接される。
【0035】
特定の別実施形態においては、前記ベースは、前記壁エレメントに設けられたハウジング内に配置される。前記ベースは、熱接触界面に沿って前記ハウジングに溶接される。前記熱接触界面は、前記フィンの高さ方向に対して0°から30°の角度だけ傾いている。
【0036】
これにより、冷却エレメントのベースへの装着状態が改善しつつ、ベースと冷却エレメント間の熱交換が促進される。
【0037】
有利な実施形態においては、前記製造方法は、プレートに複数の切欠きを形成することによって、前記冷却エレメントの前記フィンを形成する工程を含んでいる。前記複数の切欠き同士は、前記プレートの長手方向に沿って離間している。
【0038】
好ましくは、前記プレートは、前記冷却エレメントの前記ベースを備えている。前記ベースの前記両側端は、前記複数の切欠きが形成された後で前記プレートの長手方向に沿って溶接される。
【0039】
好ましくは、前記製造方法は、溶接後に前記フィンをその長手軸を中心として捩る工程を含んでいる。
【0040】
これにより、多くのフィンを備えるパッケージの製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明は、添付の図面を参照しつつ、限定を目的とすることなく例示される実施形態の説明を読むことによってよりよく理解される。
【0042】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る核燃料アセンブリを運搬や保管するためのパッケージを示す部分断面斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係るパッケージの部分横断面図である。
【
図3】第一実施形態に係るパッケージの熱伝導エレメントの部分斜視図である。
【
図4】第二実施形態に係るパッケージの部分横断面図である。
【
図5】第二実施形態に係るパッケージの熱伝導エレメントの部分斜視図である。
【
図6】第一実施形態または第二実施形態に係るパッケージの冷却エレメントの部分横断面図である。
【
図7】別実施形態に係る冷却エレメントと壁エレメントの部分横断面図である。
【
図8】第一実施形態または第二実施形態に係るパッケージの製造方法の少なくとも一部の実施を例示している。
【
図9】別実施形態に係るパッケージの製造方法の少なくとも一部の実施を例示している。
【
図10】第一実施形態に係るパッケージの製造時における複数のフィンの製造方法を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
異なる図面を跨ぐ参照を助けるために、同一、同様、または同等の部品には同じ参照番号が付与されている。
【0044】
図1は、核燃料アセンブリのような放射性材料を運搬や保管するためのパッケージ2を示している。
【0045】
パッケージ2は、側体20を備えている。側体20は、径方向内側に位置するスチールフェルール21と径方向外側に位置する複数の熱伝導エレメント22によって区画されている。
【0046】
側体20は、パッケージの長手軸X−Xに沿って延びている。パッケージは、側体20の長手軸X−Xに沿う両端において蓋4と底6によって閉塞されている。
【0047】
本明細書においては、特に断りのない限り、「長手方向」という語は、長手軸X−Xと平行であることを意味し、「径方向」という語は、当該軸と実質的に直交する向きに沿うことを意味する。「横断面」という語は、長手軸X−Xと実質的に直交する平面に沿うことを意味する。「周方向」という語は、長手軸X−Xを中心とする回転方向を意味する。
【0048】
フェルール21は、パッケージ2の内側キャビティ5を区画している。内側キャビティ5内には、核燃料アセンブリをパッケージ2内に保管するためのバスケット7が収容される。
【0049】
パッケージ2とその内部に収容されたバスケット7は、放射性材料を運搬や保管するための容器1を区画する。
【0050】
複数の熱伝導エレメント22の各々は、壁エレメント26と少なくとも一つの冷却エレメント30を備えている。冷却エレメント30は、壁エレメント26の外面S
1に溶接されている。熱伝導エレメント22は、高い熱伝導性を有する銅またはその合金からなる。
【0051】
図2においては、見やすさを優先し、各熱伝導エレメント22が周方向に沿って二つの冷却エレメント30を備えた構成が示されている。
図3においては、第一冷却エレメント31と第二冷却エレメント32を含む三つの冷却エレメント30を備えた熱伝導エレメント20が示されている。
【0052】
各熱伝導エレメント22は、熱伝導内側エレメント28を備えている。熱伝導内側エレメント28は、第一端28aにおいて屈曲されており、第一端28aの反対側である第二端28bにおいて壁エレメント26の内表面S
2に接続されている。
【0053】
第一端28aは、例えば溶接などによってフェルール21に装着される。
図2に示されるように、壁エレメント26同士は、溶接部29により接続されてパッケージ2の外壁を形成している。
【0054】
冷却エレメント30は、壁エレメント26からパッケージ2の径方向外側へ突出している。これに対して熱伝導内側エレメント28は、壁エレメント26からパッケージ2の径方向内側へ突出している。すなわち、冷却エレメント30と熱伝導内側エレメント28は、壁エレメント26の径方向両側に位置している。
【0055】
各熱伝導エレメント22は、中性子シールドブロック24を側体20の内側に包囲している。中性子シールドブロック24は、周方向に沿って隣接する二つの熱伝導内側エレメント28の間に配置されている。中性子シールドブロック24は、径方向についてはフェルール21と熱伝導エレメント22の壁エレメント26の間に配置されている。
【0056】
図3においてより具体的に示されるように、第一実施形態においては、各冷却エレメント30は、複数のフィン34を備えている。フィン34同士は、パッケージ2の長手方向X−Xに沿って離間されつつ、径方向Y−Yに沿って延びている。また、各フィン34は、長手軸Y−Yに沿って捩られている。
【0057】
各冷却エレメント30は、単一のベース40を備えている。ベース40は、複数のフィン34に共用されている。複数のフィン34は、ベース40から径方向に延びている。ベース40は、冷却エレメント30の全長にわたり長手方向X−Xに沿ってほぼ連続的に延びている。
【0058】
隣接する二つの冷却エレメント31、32間の距離dは、フィン34の高さ寸法h
1よりも短い。これにより、熱がパッケージ2から適切に放散される。しかしながら、距離dを高さ寸法h
1よりも短くすると、パッケージ2の製造が難しくなる傾向にある。
【0059】
熱は、フェルール21から熱伝導内側エレメント28、壁エレメント26、および場合により冷却エレメント30を通じて、容器1から放散される。
【0060】
図4と
図5は、放射性物質を運搬や保管するための容器1を示している。この容器1は、冷却エレメント30の構造によって、第一実施形態に係る容器1と区別される。
【0061】
第二実施形態においては、各冷却エレメント30は、単一の板状フィン35を備えている。このフィン35は、長手方向X−Xに沿うパッケージ2のほぼ全長に亘って延びている。
【0062】
ベース40は、長手方向X−Xに沿う冷却エレメント30の全長に亘ってほぼ連続的に延びている。
【0063】
隣接する二つのフィン31、32の間の距離dは、第一実施形態の隣接する二つのフィン34の間の距離とほぼ同一である。
【0064】
第二実施形態に係るパッケージ2における冷却エレメント30の数は、第一実施形態に係るパッケージ2における冷却エレメント30の数とほぼ同一である。
図5においては、明瞭性の観点から二つの冷却エレメント30のみが示されている。
【0065】
第一実施形態と第二実施形態の双方において、各冷却エレメント30は、少なくとも一つのフィン34、35とベース40を備えている。冷却エレメント30は、ベース40の壁エレメント26に接続されている。
【0066】
図6に示されるように、ベース40は、第一側端44、および第一側端44の反対側である第二側端45を備えている。フィン34、35は、側端44、45の間に配置されている。
【0067】
第一実施形態と第二実施形態において、側端44、45を形成している側面は、ベースの底42とほぼ直交している。ベースの底42は、フィン34、35の軸Y−Yとほぼ直交している。
【0068】
側端44、45の間に対応するベースの幅I
2は、フィンの平均厚さe
1の約2倍である。第一側端44の幅I
4は、第二側端45の幅I
5とほぼ同一である。ベースの高さh
2は、フィン34、35の厚さe
1の半分以上である。
【0069】
ベース40は、壁エレメント26に形成された溝50内に収容されている。この溝50は、ほぼパッケージ2の長手方向X−Xに沿って延びている。溝50は、壁26の外面S
1に凹部を形成している。
【0070】
ベース40は、壁エレメント26の表面と同一面をなすように溝50内に収容されている。すなわち、ベース40の高さh
2は、溝50の高さh
3とほぼ同一である。これにより、溝50の底52とベース40の底42の接触による両者間での熱交換が促進される。
【0071】
図8に示されるように、溝50は、第一側縁54、および第一側縁54と反対側の第二側縁55によって側方から区画されている。
【0072】
第一側縁54は、第一溶接部を介して第一熱交換界面S
4に沿ってベース40の第一側端44と機械的に接触するように構成されている。第一側縁54は、第一側端44とほぼ相補的な形状を有している。第一溶接部は、第一側縁54全体にわたって延びている。これにより、壁エレメント26とフィン34、35の間での熱交換が促進される。
【0073】
第二側縁55は、第二溶接部を介して第二熱交換界面S
5に沿ってベース40の第二側端45と機械的に接触するように構成されている。第二側縁55は、第二側端45とほぼ相補的な形状を有している。第二溶接部は、第二側縁55全体にわたって延びている。これにより、矢印Fで示される壁エレメント26とフィン34、35の間での熱交換が促進される。
【0074】
第一溶接部と第二溶接部は、ベース40を壁エレメント26に溶接するに過ぎず、形成に際して充填材は使用されない。
【0075】
溝50の側縁54、55間の幅I
3は、ベース40の幅I
2とほぼ同一であるが、第一溶接と第二溶接の存在を考慮して定められる。これにより、壁エレメント26と冷却エレメント30の間の熱交換が促進される。
【0076】
図7は、第一側端44と第二側端45が円錐台形状をなす別実施形態を示している。第一側端44は、フィン34、35の軸Y−Yに対して角度α
1をなしている。第二側端45は、フィン34、35の軸Y−Yに対して角度α
2をなしている。角度α
1と角度α
2は、ほぼ等しく、最大で約30°である。これにより、溝50の側縁54、55に対するベース40の装着が容易とされる一方、壁エレメント26と冷却エレメント30の間の適当な熱伝導が確保される。
【0077】
第一実施形態または第二実施形態に係るパッケージ2の製造方法は、
図8に例示されている。
【0078】
冷却エレメント30は、溶接によって壁エレメント26に装着される。溶接は、レーザビーム溶接や電子ビーム溶接のように局所的な熱の入力によってなされる。
【0079】
これらの溶接法は、アーク溶接よりも好ましい。アーク溶接は、壁エレメント26と冷却エレメント30の少なくとも一方を予熱する必要があり、可塑性収縮による不可逆的な変形の虞がある。
【0080】
冷却エレメント30は、矢印Aで示されるように、まず壁エレメント26の溝50内に壁エレメント26と同一面をなすように配置される。
【0081】
その後、冷却エレメント30の第一側端44が第一溶接ビーム61によって第一側縁54に装着される。これにより、第一溶接部が第一熱接触界面S
4に沿って形成される。
【0082】
並行して、あるいは第一溶接部の形成後に、冷却エレメント30の第二側端45が第二溶接ビーム62によって第二側縁55に装着される。これにより、第二溶接部が第二熱接触界面S
5に沿って形成される。
【0083】
ベースの側端44、45において冷却エレメント30を溶接することにより、溶接ビーム61、62をフィン34、35から離すことができる。これにより、溶接時における破断の虞を抑制できる。溶接ビーム61、62は、フィン34、35の軸Y−Yとほぼ平行である。
【0084】
冷却エレメント30は、パッケージ2の周方向に沿って次々と壁エレメント26に溶接される。第二冷却エレメント32の壁エレメント26への装着は、すぐ隣の第一冷却エレメント31がその全長にわたって対応する壁エレメント26に装着されてからなされる。
【0085】
図9は、第三実施形態に係る放射性物質を運搬や保管するためのパッケージ2の製造を例示している。このパッケージにおける各冷却エレメント30は、長手方向X−Xに沿って離間された第一実施例に係る複数のフィン34、または第二実施形態に係る単一の板状フィン35を備えている。
【0086】
図9に係る製造方法は、以下の点において
図8に係る製造方法と区別される。各冷却エレメント30のベース40は、溝50に収容されない。ベース40は、壁エレメント26の均一に平坦な表面に溶接される。
【0087】
冷却エレメント30の第一側端44は、第一溶接ビーム61により第三熱接触界面S
6に沿って装着される。
【0088】
冷却エレメント30の第二側端45は、第二溶接ビーム62により第四熱接触界面S
7に沿って装着される。
【0089】
第三熱接触界面S
6と第四熱接触界面S
7は、ベース40の側端44、45が壁エレメント26に対して溶融することによって形成される。
【0090】
溶接ビームは、冷却エレメント30における少なくとも一つのフィン34、35の軸Y−Yとほぼ平行であることが好ましい。第一溶接ビーム61の軸Y−Yに対する角度θ
1は、0°と30°の間である。第二溶接ビーム62の軸Y−Yに対する角度θ
2は、0°と30°の間である。角度θ
1は、角度θ
2とほぼ同一である。
【0091】
図10は、第一実施形態に係るパッケージ2の複数の冷却エレメント30の一つにおける複数のフィン34の製造を例示している。
【0092】
この製造方法は、まずプレート36に複数の切欠き33を形成することによって複数のフィン34を形成する工程を含んでいる。プレート36は、第二実施形態に係る冷却エレメント30と同様の板形状を有している。切欠き33同士は、長手方向X−Xに沿って等間隔で離間されている。この工程においては、各フィン34は、矩形状を有している。
【0093】
切り欠かれた冷却エレメント30は、続いてその全長にわたって壁エレメント26に溶接される。
【0094】
各フィン34は、続いて矢印Bに沿って(好ましくは同方向に)自身の長手軸Y−Yを中心として捩られる。これにより、隣接する二つのフィン34の間隔が増す。この場合、熱伝導エレメント22は、
図3に示される第一実施形態に係るものとほぼ同一である。
【0095】
本発明の開示範囲から逸脱しなければ、上記に記載された発明に対して当業者による様々な改変が可能であることは勿論である。
【0096】
パッケージ2は、ほぼ円筒形の側体20を備えている。しかしながら、側体20は、他の適当な形状(六角形状など)を有しうる。
【0097】
例示された熱伝導エレメント22は、単一の冷却エレメント30を備えてもよいし、二つの冷却エレメント30を備えてもよいし、三つ以上の冷却エレメント30を備えてもよい。しかしながら、冷却エレメント30間の距離dは、フィン34、35の高さ寸法h
1よりも短いことが好ましい。
【0098】
例示された実施形態においては、各冷却エレメント30は、パッケージ2の長手方向X−Xにほぼ沿うように延びているが、長手軸X−Xに対して傾斜して延びるように構成されてもよい。但し、冷却エレメント30同士はほぼ平行に延びることが好ましい。
【0099】
例示された実施形態においては、ベース40は、冷却エレメント30におけるフィン34、35の軸Y−Yを通る対称平面に対してほぼ対称である。しかしながら、ベース40は、当該平面に対して非対称であってもよい。
【0100】
図10に示した第一実施形態に係る製造においては、冷却エレメント30が壁エレメント26に溶接されてから切欠き33が形成されうる。
【0101】
図6において、ベース40の底42もまた、溝の底52に溶接されうる。この溶接は、充填材を用いてなされうる。