特許第6828051号(P6828051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828051
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】ゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20210128BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20210128BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K5/544
   B60C1/00 A
   B60C1/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-548278(P2018-548278)
(86)(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公表番号】特表2018-538427(P2018-538427A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2016079023
(87)【国際公開番号】WO2017097625
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】102015224436.9
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カーレン レーベン
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ エアハート
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−131943(JP,A)
【文献】 特開2016−074877(JP,A)
【文献】 特開2016−044305(JP,A)
【文献】 特開2016−044307(JP,A)
【文献】 特開2008−169157(JP,A)
【文献】 米国特許第06284861(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 −13/08
C08L 1/00 −101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムを除く少なくとも1種のゴムおよび一般式(I):
【化1】
(上記式中、Gは、一価の、非分枝鎖状または分枝鎖状の、飽和または不飽和の、(〜C)の脂肪族炭化水素鎖であり、
、XおよびXは、それぞれ互いに独立して、水素(−H)、直鎖状の置換されていないまたは分枝鎖状の置換されていない(C〜C10)アルキルを意味する)
の少なくとも1種のシラトラン
を含有し、かつ一般式(I)のシラトランを、使用されるゴム100重量部を基準として、0.1〜8重量部の量で含有することを特徴とするゴム混合物。
【請求項2】
一般式(I)のシラトランがCH−CH−CH−Si(−O−CH−CH−)Nであることを特徴とする、請求項1記載のゴム混合物。
【請求項3】
フィラーおよび場合によってはさらなるゴム助剤を含有することを特徴とする、請求項1または2記載のゴム混合物。
【請求項4】
シリコーンゴムを除く少なくとも1種のゴムおよび式(I)の少なくとも1種のシラトランを混合することを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項記載のゴム混合物の製造方法。
【請求項5】
成形体を製造するための、請求項1から3までの何れか1項記載のゴム混合物の使用。
【請求項6】
空気圧式タイヤ、タイヤのトレッド面、ゴムを含有するタイヤ構成要素、ケーブルシース、ホース、ドライブベルト、コンベヤベルト、ローラカバー、タイヤ、靴のソール、シールリングおよび減衰要素を製造するための、請求項1から3までの何れか1項記載のゴム混合物の使用。
【請求項7】
ゴム混合物中での二次促進剤としての、一般式(I)
【化2】
(上記式中、Gは、一価の、非分枝鎖状または分枝鎖状の、飽和または不飽和の、(〜C)の脂肪族炭化水素鎖であり、
、XおよびXは、それぞれ互いに独立して、水素(−H)、直鎖状の置換されていないまたは分枝鎖状の置換されていない(C〜C10)アルキルを意味する)
のアルキルシラトランの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム混合物、その製造方法およびその使用に関する。
【0002】
米国特許第4,048,206号明細書(US4,048,206)から、一般式X‘−Z‘−Si(OR‘)Nの化合物の合成が公知であり、前記式中、X‘=ハロゲン、HS−であり得、Z‘=二価炭化水素であり得、かつR‘=−CH−CH−または−CH(CH)−CH−であり得る。
【0003】
さらに、J.Gen.Chem.USSR(EN)45(6)、1975、1366(Voronkov等)から、相応するメトキシシランとトリエタノールアミンとをエステル交換してメタノールを放出することにより、NCS−CH−Si(O−CH−CHNおよびNCS−CH−CH−CH−Si(O−CH−CHNを合成することが公知である。
【0004】
Synthesis and Reactivity in Inorganic and Metal−Organic Chemistry(1987)、17(10)、1003−9から、アルキルシラトランが公知である。
【0005】
さらに、欧州特許出願公開第2206742号明細書(EP2206742)から、シリカとゴムとのカップリング剤として使用されるシラトラン含有粒子が公知である。
【0006】
欧州特許出願公開第0919558号明細書(EP0919558)から、式R‘‘‘−Si(O−CR‘R‘‘−CR‘R‘)Nのシラン誘導体が公知であり、ここで、少なくとも1つのR‘‘がアルケニルオキシアルキル基である。これらのシラン誘導体は、シリコーン化合物中で使用され得る。
【0007】
さらに、欧州特許出願公開第1045006号明細書(EP1045006)、欧州特許出願公開第1045002号明細書(EP1045002)および欧州特許出願公開第0919558号明細書(EP0919558)から、シリコーンゴムの用途のためのシラトランが公知である。
【0008】
ジフェニルグアニジンを二次促進剤としてシリカ充填ゴム混合物中で使用することは、様々な文献の箇所から公知である(例えばH.−D.Luginsland、A Review on the chemistry and reinforcement of the silica−silane filler system for rubber applications、Shaker、Aachen、2002、49頁)。
【0009】
公知の促進剤であるジフェニルグアニジンまたはグアニジン誘導体の欠点は、有毒なアニリンまたは有毒なアニリン誘導体が混合の間に放出されることである。
【0010】
本発明の課題は、有毒なアニリンまたはその誘導体を放出しない促進剤を有するゴム混合物を製造することである。
【0011】
本発明の対象は、シリコーンゴムを除く少なくとも1種のゴムおよび一般式(I):
【化1】
(上記式中、Gは、一価の、非分枝鎖状または分枝鎖状の、飽和または不飽和の、脂肪族、芳香族または脂肪族/芳香族が混ざった(C〜C)、好ましくは(C〜C)、特に好ましくは(C〜C)、極めて特に好ましくは(C)の炭化水素鎖であり、
、XおよびXは、それぞれ互いに独立して、水素(−H)、直鎖状の置換されていないまたは分枝鎖状の置換されていない(C〜C10)アルキル、好ましくは直鎖状の置換されていないまたは分枝鎖状の置換されていない(C〜C)アルキル、特に好ましくはメチルまたはエチルを意味する)
の少なくとも1種のシラトラン
を含有することを特徴とするゴム混合物である。
【0012】
ゴムは、好適にはジエンゴムであり得る。
【0013】
Gは、好ましくはCHCHCH−であり得る。X、XおよびXは、好ましくはHであり得る。好ましくは、一般式(I)のシラトランは、CHCHCH−Si(−O−CH−CH−)Nであり得る。
【0014】
一般式(I)のシラトランは、一般式(I)のシラトランの混合物であり得る。
【0015】
一般式(I)のシラトランは、部分的に加水分解された、一般式(I)のシラトランの化合物を含み得る。
【0016】
一般式(I)のシラトランは、以下のものであってよい:
【化2】
【0017】
式(I)のシラトランは、一般式(II):
【化3】
(上記式中、Gは上記の意味を有し、Alkは、互いに独立して、(C〜C10)アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルである)
の少なくとも1種の化合物を、一般式III:
【化4】
(上記式中、X、XおよびXは上記の意味を有する)
の化合物と反応させて、Alk−OHを脱離させ、Alk−OHを反応混合物から分離することにより製造され得る。
【0018】
この反応は、触媒を用いて、または触媒を用いずに行われ得る。Alk−OHは、反応混合物から連続的または非連続的に分離され得る。
【0019】
一般式IIIの化合物についての例は、以下のものであり得る:トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンおよび[HO−CH(フェニル)CHN。
【0020】
使用される式IIIの化合物の含水量が低いことは、化合物の組成および生成物特性に有利な影響を与え得る。好ましくは、式IIIの化合物は、含水量を1重量%未満、特に好ましくは0.2重量%未満有することができる。
【0021】
この反応は、200℃未満、好ましくは100℃未満の沸点を有する一般的な有機溶剤中で実施され得る。
【0022】
この反応は、有機溶剤なしで実施され得る。
【0023】
式(I)のシラトランの製造方法における触媒としては、金属不含触媒または金属含有触媒を使用することができる。
【0024】
金属含有触媒としては、第3〜7族、第13〜14族および/またはランタニド群の金属化合物を使用することができる。
【0025】
金属含有触媒としては、遷移金属化合物を使用することができる。
【0026】
金属含有触媒は、金属化合物、例えば金属塩化物、金属酸化物、金属オキシ塩化物、金属硫化物、金属スルホクロリド、金属アルコラート、金属チオラート、金属オキシアルコラート、金属アミド、金属イミドまたは複数の結合配位子を有する遷移金属化合物であり得る。
【0027】
例えば、金属含有触媒としては、チタンアルコキシドを使用することができる。
【0028】
殊に、チタネート、例えばテトラ−n−ブチルオルトチタネート、テトラエチルオルトチタネート、テトラ−n−プロピルオルトチタネートまたはテトライソプロピルオルトチタネートを触媒として使用することができる。
【0029】
金属不含触媒としては、有機酸を使用することができる。
【0030】
有機酸としては、例えばトリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸もしくはp−トルエンスルホン酸を使用することができるか、または有機塩基としては、例えばトリアルキルアンモニウム化合物(RNH)、例えばトリアルキルアミン(NR)を使用することができる。
【0031】
本製造方法は、標準圧力または減圧、好ましくは1〜600mbar、特に好ましくは5〜200mbarで実施され得る。
【0032】
本製造方法は、20℃〜200℃、好ましくは35℃〜150℃の温度範囲内で実施され得る。
【0033】
共沸混合物を形成することにより生成物からの水の運搬を促進する物質を、反応の前または間に反応混合物に添加することができる。相応する物質は、環状または直鎖状の脂肪族化合物、芳香族化合物、芳香族/脂肪族が混ざった化合物、エーテル、アルコールまたは酸であり得る。例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ギ酸、酢酸、酢酸エチルまたはジメチルホルムアミドを使用することができる。
【0034】
縮合反応を避けるためには、反応を水不含の周囲、理想的には不活性ガス雰囲気で実施することが有利であり得る。
【0035】
式(I)のシラトランは、充填されるゴム混合物、例えばタイヤのトレッド面において、促進剤として使用され得る。
【0036】
一般式(I)のシラトランは、使用されるゴム100重量部を基準として、0.1〜8重量部、好ましくは0.2〜6重量部、特に好ましくは0.8〜4重量部で使用され得る。
【0037】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1種のゴムおよび式(I)のシラトランを混合することを特徴とする、本発明によるゴム混合物の製造方法である。
【0038】
このゴム混合物は、少なくとも1種のフィラーを含有することができる。
【0039】
一般式(I)のシラトランの添加およびフィラーの添加は、100〜200℃の材料温度で行われ得る。しかしながら、これらは、例えばさらなるゴム助剤と一緒に、40〜100℃のより低い温度でも添加され得る。
【0040】
式(I)のシラトランは、純粋な形態でも、不活性の有機担体または無機担体に施与されても、また有機担体または無機担体と予め反応させて、混合プロセスに添加することができる。好ましい担体材料は、沈降シリカもしくは焼成シリカ、ワックス、熱可塑性樹脂、天然ケイ酸塩もしくは合成ケイ酸塩、天然酸化物もしくは合成酸化物、好ましくは酸化アルミニウム、またはカーボンブラックであり得る。さらに、シラトランは、使用されるフィラーと予め反応させて、混合プロセスに添加することもできる。
【0041】
本発明によるゴム混合物のためには、フィラーとして以下のものを使用することができる:
−カーボンブラック:ここで使用されるカーボンブラックは、ランプブラック法、ファーネスブラック法、ガスブラック法またはサーマルブラック法により製造され得る。カーボンブラックは、20〜200m/gのBET表面積を有することができる。場合によっては、カーボンブラックには、例えばSiがドープされていてもよい。
−非晶質シリカ、好適には沈降シリカまたは焼成シリカ。非晶質シリカは、5〜1000m/g、好適には20〜400m/gの比表面積(BET表面積)および10〜400nmの一次粒径を有することができる。シリカは、場合によっては、その他の金属酸化物、例えばAl酸化物、Mg酸化物、Ca酸化物、Ba酸化物、Zn酸化物およびチタン酸化物との混合酸化物としても存在することができる。
−合成ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウムまたはアルカリ土類金属ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウムまたはケイ酸カルシウム。20〜400m/gのBET表面積および10〜400nmの一次粒子直径を有する合成ケイ酸塩。
−合成または天然の酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウム。
−天然ケイ酸塩、例えばカオリンおよびその他の天然に生じるシリカ。
−ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、ストランド)またはマイクロガラスビーズ。
【0042】
好ましくは、非晶質シリカ、特に好ましくは沈降シリカまたはケイ酸塩、殊に好ましくは20〜400m/gのBET表面積を有する沈降シリカを、それぞれゴム100重量部を基準として、5〜180重量部の量で使用することができる。
【0043】
ここで挙げられたフィラーは、単独または混合物で使用され得る。本方法の特に好ましい実施形態において、混合物を製造するために、それぞれゴム100重量部を基準として、10〜180重量部のフィラー、好適には沈降シリカ(場合によっては0〜100重量部のカーボンブラックと併用)および0.1〜8重量部の一般式Iのシラトランを使用することができる。
【0044】
本発明によるゴム混合物を製造するためには、天然ゴムだけでなく、合成ゴムも適している。好ましい合成ゴムは、例えばW.Hofmann、Kautschuktechnologie、Genter Verlag、Stuttgart 1980に記載されている。これらの合成ゴムは、特に、
−ポリブタジエン(BR)、
−ポリイソプレン(IR)、
−スチレン/ブタジエンコポリマー、例えばSBRエマルション(E−SBR)またはSBR溶液(L−SBR)、好適には、ポリマー全体を基準として、1〜60重量%、特に好ましくは2〜50重量%のスチレン含量を有するもの、
−クロロプレン(CR)、
−イソブチレン/イソプレンコポリマー(IIR)、
−ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、好適には、ポリマー全体(NBR)を基準として、5〜60重量%、好適には10〜50重量%のアクリロニトリル含量を有するもの、
−部分的に加水分解されたまたは完全に加水分解されたNBRゴム(HNBR)、
−エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー(EPDM)、または
−官能基、例えばカルボキシ基、シラノール基またはエポキシ基をさらに有する先に挙げたゴム、例えばエポキシ化されたNR、カルボキシにより官能化されたNBR、またはシラノール(−SiOH)もしくはシロキシ(−Si−OR)により官能化された、アミノ、エポキシ、メルカプト、ヒドロキシにより官能化されたSBR、
ならびにこれらのゴムの混合物
を含む。殊に、乗用車のタイヤのトレッド面を製造するためには、−50℃を上回るガラス転移温度を有するアニオン重合したL−SBRゴム(SBR溶液)、およびこのゴムとジエンゴムとの混合物が有利である。
【0045】
本発明による加硫ゴムは、さらなるゴム助剤を含有することができ、このゴム助剤は、例えば反応促進剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、可塑剤、樹脂、粘着剤、発泡剤、着色料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物、ならびに活性化剤、例えばジフェニルグアニジン、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、アルコキシ末端ポリエチレングリコールアルキル−O−(CH−CH−O)yl−H(ただし、y=2〜25、好ましくはy=2〜15、特に好ましくはy=3〜10、極めて特に好ましくはy=3〜6である)またはヘキサントリオールであって、ゴム産業で知られているものである。
【0046】
ゴム助剤は、特に使用目的に即した公知の量で使用され得る。通常の量は、ゴムを基準として、例えば0.1〜50重量%の量であり得る。架橋剤としては、過酸化物、硫黄または硫黄供与物質を使用することができる。本発明によるゴム混合物は、加硫促進剤をさらに含有することができる。適切な加硫促進剤の例は、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートであり得る。加硫促進剤および硫黄は、ゴム100重量部を基準として、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で使用され得る。
【0047】
本発明によるゴム混合物の加硫は、100〜200℃、好ましくは120〜180℃の温度、場合によっては10〜200barの圧力で行われ得る。ゴムとフィラー、任意のゴム助剤、およびシラトランとの混合は、公知の混合ユニット、例えばローラ、インターナルミキサーおよび混合式押出成形機内で実施され得る。
【0048】
本発明によるゴム混合物は、成形体を製造するために、例えば空気圧式タイヤ、タイヤのトレッド面、ケーブルシース、ホース、ドライブベルト、コンベヤベルト、ローラカバー、タイヤ、靴のソール、シールリングおよび減衰要素を製造するために使用され得る。
【0049】
本発明によるゴム混合物は、グアニジンを添加することなく実施することができる。好ましい実施形態において、ゴム混合物は、グアニジン誘導体不含、好適にはジフェニルグアニジン不含であり得る。
【0050】
一般式(I)のシラトランは、二次促進剤として使用され得る。これにより、グアニジン促進剤の使用を、部分的または完全に省略することができる。
【0051】
本発明のさらなる対象は、ゴム混合物中での二次促進剤としての、一般式(I):
【化5】
(上記式中、Gは、一価の、非分枝鎖状または分枝鎖状の、飽和または不飽和の、脂肪族、芳香族または脂肪族/芳香族が混ざった(C〜C)、好ましくは(C〜C)、特に好ましくは(C〜C)、極めて特に好ましくは(C)の炭化水素鎖であり、
、XおよびXは、それぞれ互いに独立して、水素(−H)、直鎖状の置換されていないまたは分枝鎖状の置換されていない(C〜C10)アルキル、好ましくは直鎖状の置換されていないまたは分枝鎖状の置換されていない(C〜C)アルキル、特に好ましくはメチルまたはエチルを意味する)
のシラトランの使用である。
【0052】
本発明によるゴム混合物は、混合物製造および/または加硫の際に、公知のグアニジン促進剤に比べて、有毒なアニリンまたはその誘導体を放出せず、ゴム混合物中で、DPGなしで、より長いインキュベーション時間(Inkubationszeiten)(t10、t20)、向上した架橋密度およびより低いムーニー粘度を示すという利点を有する。
【0053】
実施例
以下の原料を実施例に使用する:BASF SE社のトリエタノールアミン、Evonik Industries AG社のイソブチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランおよびプロピルトリエトキシシラン、Sigma−Aldrich社の水酸化ナトリウムおよびフェニルトリメトキシシラン、Sasol Solvents Germany GmbH社のエタノールおよびメタノール、Merck社のトリメトキシメチルシラン、ならびにVWR社のn−ヘキサンおよびn−ペンタン。
【0054】
比較例1:(1−メチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;1−メチルシラトラン)
撹拌装置(KPG撹拌機)および還流冷却器を備える丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、193.94gのトリエタノールアミン、177.09gのトリメトキシメチルシラン、500mlのメタノールおよび0.52gの水酸化ナトリウムを、撹拌しながら予め装入する。この反応混合物を18時間にわたり36℃に加熱し、ここで生成物は固体として沈殿する。この混合物を、ロータリーエバポレーターにより、真空、40℃で濃縮し、引き続き、加圧濾過により、残りのメタノールから分離し、真空で乾燥させる。241.52gの1−メチルシラトランが、微晶質の白色固体として、98%の収率で得られる。
【0055】
この生成物は、146〜171℃の溶融範囲を有し、かつH−NMR分析によると、94.2重量%の1−メチルシラトランを含有する。
【0056】
実施例1:(1−プロピル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;1−プロピルシラトラン)
撹拌装置(KPG撹拌機)および還流冷却器を備える丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、183.5gのトリエタノールアミン、253.81gのプロピルトリエトキシシラン、500mlのエタノールおよび4.8gの水酸化ナトリウムを、撹拌しながら予め装入する。この反応混合物を12時間にわたり68℃に加熱する。室温に冷却した後に、還流冷却器を蒸留ブリッジと交換する。引き続き、混合物がなおも撹拌可能であるように、78℃および標準圧力でエタノールを除去する。この生成物をペンタンにより完全に沈殿させ、加圧濾過により、残りのエタノールおよびペンタンから分離する。濾過ケークを真空で乾燥させる。267.33gの1−プロピルシラトランが、結晶質の白色固体として、78%の収率で得られる。
【0057】
この生成物は、85℃の融点を有し、かつH−NMR分光法での分析によると、99重量%超の純度を有する。
【0058】
実施例2:(1−オクチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;1−オクチルシラトラン)
撹拌装置(KPG撹拌機)および還流冷却器を備える丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、134.3gのトリエタノールアミン、256.5gのオクチルトリエトキシシラン、400mlのエタノールおよび3.56gの水酸化ナトリウムを、撹拌しながら予め装入する。この反応混合物を24時間にわたり80℃に加熱する。室温に冷却した後に、この反応混合物を、ロータリーエバポレーターにより、40℃、減圧下で濃縮する。ペンタンを添加することにより、この生成物を完全に沈殿させ、加圧濾過により、残りのエタノールおよびペンタンから分離する。濾過ケークを真空で乾燥させる。186.8gの1−オクチルシラトランが、ベージュ色の粉末として、71%の収率で得られる。
【0059】
この生成物は、69℃の融点を有し、かつH−NMR分析によると、98.4重量%の1−オクチルシラトランを含有する。
【0060】
比較例2:(1−ヘキサデシル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;1−ヘキサデシルシラトラン)
撹拌装置(KPG撹拌機)および還流冷却器を備える丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、90.0gのトリエタノールアミン、208.0gのヘキサデシルトリエトキシシラン、900mlのメタノールおよび2.39gの水酸化ナトリウムを、撹拌しながら予め装入する。この反応混合物を16時間にわたり36℃に加熱する。室温に冷却した後、この反応混合物を、ロータリーエバポレーターにより、40℃、減圧下で濃縮する。n−ヘキサンを添加することにより、この生成物を完全に沈殿させ、加圧濾過により、残りのメタノールおよびヘキサンから分離する。濾過ケークを真空で乾燥させる。159.8gの1−ヘキサデシルシラトランが、微晶質の白色固体として、66%の収率で得られる。
【0061】
この生成物は、79℃の融点を有し、かつH−NMR分析によると、99.8重量%の1−ヘキサデシルシラトランを含有する。
【0062】
実施例3:(1−イソブチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;イソブチルシラトラン)
撹拌装置(KPG撹拌機)および還流冷却器を備える丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、203.1gのトリエタノールアミン、300.0gのイソブチルトリエトキシシラン、500mlのエタノールおよび5.68gの水酸化ナトリウムを、撹拌しながら予め装入する。この反応混合物を16時間にわたり沸騰温度に加熱する。室温に冷却した後、この反応混合物を、ロータリーエバポレーターにより、40℃、減圧下で濃縮する。エタノールを完全に除去するために、この生成物を溶融させ、70℃、真空で乾燥させる。314.6gの1−イソブチルシラトランが、黄色の固体として、100%の収率で得られる。
【0063】
この生成物は、55℃の融点を有し、かつH−NMR分析によると、96.0重量%の1−イソブチルシラトランを含有する。
【0064】
実施例4:(1−フェニル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;1−フェニルシラトラン)
撹拌装置(KPG撹拌機)および還流冷却器を備える丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、134.3gのトリエタノールアミン、178.5gのフェニルトリメトキシシラン、900mlのメタノールおよび3.62gの水酸化ナトリウムを、撹拌しながら予め装入する。この反応混合物を4時間にわたり36℃に加熱する。室温に冷却した後、この反応混合物をn−ヘキサンによりスラリー化し、濾過する。濾過ケークを真空で乾燥させる。208.0gの1−フェニルシラトランが、粗い結晶質の白色固体として、92%の収率で得られる。
【0065】
この生成物は、205℃の融点を有し、かつH−NMR分析によると、94.4重量%の1−フェニルシラトランを含有する。
【0066】
実施例5:ゴム技術調査
ゴム混合物に使用される配合は、以下の表1に記載されている。ここで、phrという単位は、使用される原料ゴム100重量部を基準とする重量割合を意味する。シラトランは、等モル、つまり同じ物質量で使用される。
【0067】
以下の二次促進剤を調査する:
比較混合物1では、N,N’−ジフェニルグアニジン(DPG−80)
比較混合物2では、二次促進剤なしの混合物
比較混合物3では、比較例1によるシラトラン
本発明による混合物4では、実施例1によるシラトラン
本発明による混合物5では、実施例2によるシラトラン
比較混合物6では、比較例2によるシラトラン
本発明による混合物7では、実施例3によるシラトラン
本発明による混合物8では、実施例4によるシラトラン。
【表1】
【0068】
使用される物質:
a)Buna VSL4526−2:Lanxess AGの溶液重合されたSBRコポリマー(スチレン含量=26重量%、ビニル割合=44.5重量%、TDAE油含量=27.3重量%、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)=50ME)。
b)Buna CB24:Lanxess AGの溶液重合された高シス−1,4−ポリブタジエン(ネオジム触媒)(シス−1,4含量=少なくとも96%、ムーニー粘度(ML1+4/100℃)44ME)。
c)シリカ:Evonik Industries AG社のULTRASIL(登録商標)7000GR(容易に分散可能な沈降シリカ、BET表面積=170m/g、CTAB表面積=160m/g)。
d)Si266(登録商標):Evonik Industries AG社のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド。
e)Corax(登録商標)N330:Orion Engineered Carbons GmbH社のカーボンブラック。
f)ZnO:Arnsperger Chemikalien GmbH社の酸化亜鉛(ZnO)RS RAL844C。
g)Caldic Deutschland Chemie B.V.社の脂肪酸混合物(C16/C18)EDENOR ST1。
h)Vivatec500:H&R AGのTDAE油。
i)Protektor G3108:Paramelt B.V.社の、精製された炭化水素からのオゾン劣化防止用ワックス(凝固点≒57℃)。
j)Vulkanox(登録商標)4020/LG:Rhein Chemie Rheinau GmbHのN−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)。
k)Vulkanox(登録商標)HS/LG:Rhein Chemie Rheinau GmbHのポリマー状の2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)。
l)Rhenogran(登録商標)DPG−80:Rhein Chemie Rheinau GmbHの、20%のエラストマー状の担体上に分散された80%のN,N’−ジフェニルグアニジン(DPG)。
m)Perkacit TBzTD:Weber&Schaerから購入したテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)(メーカー:Dalian Richon)。
n)Vulkacit(登録商標)CZ/EG−C:Rhein Chemie Rheinau GmbH社のN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド。
o)硫黄:Solvay&CPC Barium Strontium GmbH&Co.KG社のMahlschwefel80/90°。
【0069】
これらの混合物を、1.5Lのインターナルミキサー(E型)内、155℃のバッチ温度で、表2に記載の混合規定に従って三段階で製造する。
【0070】
ゴム混合物およびその加硫物の一般的な製造方法は、以下の書籍に記載されている:「Rubber Technology Handbook」、W.Hofmann、Hanser Verlag 1994。
【表2-1】
【表2-2】
【0071】
加硫は、165℃の温度で、t95%後に保持圧力120barの一般的な加硫プレスにおいて行われる。t95%時間は、ISO6502(3.2項「rotorless curemeter」)に従って、ダイ可動式レオメーター(ローターレス加硫計)により165℃で特定される。
【0072】
ゴム技術試験は、表3に記載されている試験法に従って行われる。
【表3】
【0073】
表4には、原料混合物および加硫物に関するゴム技術データが記載されている。
【表4】
【0074】
比較混合物2に比べて、その他全ての混合物では、二次促進剤の効果が、架橋収率(△トルク(M最大−M最小)の向上、加工性(ムーニー粘度)の改善および作業可能時間(t10およびt20の値)の向上において示される。本発明による混合物4、5、7および8、ならびに比較混合物6の架橋収率も同様に、標準的な二次促進剤であるDPGを含有する比較混合物1に比べて、また比較混合物3に比べて改善されている。本発明による混合物4、5、7および8、ならびに比較混合物6の加工性(ムーニー粘度)および作業可能時間(t10およびt20の値)は、比較例1によるシラトランを含有する比較混合物3に比べて、さらに改善されている。
【0075】
それに対して、比較混合物6は、本発明による混合物4、5、7および8に比べて、摩耗(DIN摩耗)において欠点を有する。
【0076】
全ての比較混合物と比べると、本発明による混合物4、5、7および8は、湿潤接着性(23℃での球体の反発弾性)において、比較混合物1、2、3および6に比して、利点を有する。