特許第6828052号(P6828052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828052空調システムならびに空調システム用の制御システムおよび制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828052
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】空調システムならびに空調システム用の制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 5/02 20060101AFI20210128BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20210128BHJP
   F24F 11/58 20180101ALI20210128BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20210128BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   F25B5/02 520A
   F25B1/00 304L
   F25B1/00 331Z
   F24F11/58
   F24F11/86
   B60H1/32 621C
   B60H1/32 624J
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-550734(P2018-550734)
(86)(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公表番号】特表2019-510190(P2019-510190A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】CN2017078814
(87)【国際公開番号】WO2017167232
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年12月10日
(31)【優先権主張番号】201610201269.5
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516071103
【氏名又は名称】杭州三花研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hangzhou Sanhua Research Institute Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 ▲驍▼▲駿▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲レイ▼昆
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 海燕
(72)【発明者】
【氏名】▲陸▼ 穎▲チュウ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 根祥
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲栄▼▲栄▼
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−106609(JP,A)
【文献】 特開2008−155850(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02789935(EP,A1)
【文献】 国際公開第2013/093991(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0353391(US,A1)
【文献】 特開平10−089785(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/043519(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103033004(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103673209(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 5/02
B60H 1/32
F24F 11/58
F24F 11/86
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、第1熱交換器と、第2熱交換器と、第1蒸発器と、第2蒸発器と、第1電子膨張弁と、第2電子膨張弁と、を備える空調システムであって、前記第1熱交換器は、前記圧縮機の吐出口と、前記第1電子膨張弁および前記第2電子膨張弁それぞれの入口との間の管路上に配置され、
前記第2熱交換器は第1熱交換部と第2熱交換部とを備え、前記第1熱交換部および前記第2熱交換部は互いに熱交換可能に構成されており、前記第2熱交換器の前記第1熱交換部は、前記第1熱交換器の出口と、前記第1電子膨張弁および前記第2電子膨張弁それぞれの入口との間の管路上に配置され、前記第2熱交換器の前記第2熱交換部は、前記第1蒸発器および前記第2蒸発器それぞれの出口と、前記圧縮機の吸入口と、の間の管路上に配置され、
前記第1蒸発器および前記第2蒸発器は並列に配置され、前記第1電子膨張弁および前記第1蒸発器は直列に配置され、前記第2電子膨張弁および前記第2蒸発器は直列に配置され、
前記空調システムは、前記第1電子膨張弁および前記第2電子膨張弁それぞれの開度を個別に調整するように構成され、前記第1電子膨張弁および前記第2電子膨張弁はそれぞれ、前記第1電子膨張弁および前記第2電子膨張弁について、前記空調システムにより記憶された弁開度位置情報に従って、目標位置を較正された目標位置に調整する目的で、位置調整を実行するように構成され、
前記弁開度位置情報は、或る設定圧力差における前記電子膨張弁の弁開度位置値であって、前記弁開度位置値は、位置検出素子を設けることにより検出されるか、または、前記弁開度位置情報は、異なる複数の設定圧力差値に対応する前記電子膨張弁の弁開度位置値として具現化され、前記複数の弁開度位置値は、位置検出素子により検出され、前記複数の圧力差値は、圧力検出素子により検出され、
前記弁開度位置値は、全閉の位置から前記電子膨張弁が流体の通過を許可し始めるまで動作するステッピングモータがとる対応する数のステップの個数である、空調システム。
【請求項2】
前記空調システムは、熱換気空調システムであって、前記空調システムは第3電子膨張弁と冷却器とをさらに備えており、前記第3電子膨張弁および前記冷却器は、前記第1熱交換器の前記出口と前記圧縮機の前記吸入口との間に配置され、前記冷却器は前記第1蒸発器および前記第2蒸発器と並列に配置される、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第3電子膨張弁および前記冷却器は直列に配置され、前記冷却器が位置する分岐部における冷媒の流量は、前記第3電子膨張弁の開度を調整することにより制御され、前記冷却器は発熱部材用の冷却素子であって、前記発熱部材の温度を低下させるように構成され、前記第3電子膨張弁は、前記熱交換システムに記憶された弁開度位置情報に従って、目標位置を較正された目標位置に調整する目的で、位置調整を実行するように構成される、請求項に記載の空調システム。
【請求項4】
空調コントローラと、電子膨張弁の動作を制御するように構成された電子制御部と、を備える、空調システム用の制御システムであって、前記空調コントローラは前記空調システムの制御中心であって、車両システムまたは制御パネルの制御信号および入力情報のうち少なくとも1つを受信・解析し、解析により生成した制御信号を前記電子膨張弁へと送信するように構成され、前記電子膨張弁は前記制御信号により制御されるように構成され、
前記空調コントローラまたは前記電子制御部はメモリセルを備え、前記メモリセルは、前記電子膨張弁の検出された弁開度位置情報を少なくとも記憶するように構成され、前記メモリセルは、前記空調コントローラの中央処理モジュール内、または前記電子膨張弁の前記電子制御部の中央処理モジュール内に配置され、前記メモリセルは不揮発性記憶素子により構成され、
前記制御システムは、前記メモリセルにより提供された前記弁開度位置情報に従って、前記制御システムにより提供される前記電子膨張弁の目標位置を制御することにより、その目標位置を較正された目標位置へと変換させるように構成さ
前記弁開度位置情報は、或る設定圧力差における前記電子膨張弁の弁開度位置値であって、前記弁開度位置値は、位置検出素子を設けることにより検出され、前記メモリセルは、前記弁開度位置値を少なくとも記憶するように構成されるか、または、
前記弁開度位置情報は、異なる複数の設定圧力差値における前記電子膨張弁の対応する複数の弁開度位置値として具現化され、前記複数の弁開度位置値は、位置検出素子を設けることにより検出され、前記複数の圧力差値は、圧力検出素子を設けることにより検出され、前記メモリセルは、異なる複数の設定圧力差における前記電子膨張弁の前記複数の弁開度位置値のそれぞれ、および対応する前記複数の圧力差値を少なくとも記憶するように構成され、
前記弁開度位置値は、全閉の位置から前記電子膨張弁が流体の通過を許可し始めるまで動作するステッピングモータがとる対応する数のステップの個数である、空調システム用の制御システム。
【請求項5】
前記制御信号は、前記電子膨張弁の目標位置信号を有し、前記電子膨張弁の開度を調整するプログラムにおいて、前記電子膨張弁は、前記制御システムにより与えられた前記目標位置信号に従って、前記目標位置信号の値を較正された目標位置値へと変換するように構成されるか、または、
前記制御システムは、前記電子膨張弁の現在の圧力差を検出し、前記現在の圧力差に従って調整された目標位置値を取得し、前記調整された目標位置値を較正された目標位置値に変換するように構成されるか、または
前記制御信号は、前記電子膨張弁用の目標位置信号と、圧力差信号とを有し、前記電子膨張弁の開度を調整するプログラムにおいて、前記目標位置信号の値は、前記制御システムにより与えられた前記圧力差信号に従って、較正された目標位置値へと変換される、請求項4に記載の空調システム用の制御システム。
【請求項6】
前記弁開度位置情報は、ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードで前記電子膨張弁に送信され、
前記電子膨張弁が、前記制御システムにより与えられた目標位置信号を受信し、前記目標位置信号の値を前記メモリセルに記憶するように構成されるか、または、前記制御システムが、入力信号に応じて前記中央処理モジュールにより行われる計算により、前記電子膨張弁の前記目標位置を取得するように構成される、請求項4または5に記載の空調システム用の制御システム。
【請求項7】
前記空調コントローラにより前記電子膨張弁に与えられる前記制御信号はLIN信号であり、前記制御信号は、少なくとも2LINデータバイトからなり、前記2LINデータバイトはそれぞれ8データビットからなり、記憶された初期位置情報は、N番目のバイトの全8ビットと(N+1)番目のバイトの下位2ビット(ビット0およびビット1)とにより表され、前記圧力差信号は前記(N+1)番目のバイトの上位6ビット(ビット2からビット7)により表され、ここでNは1以上であり、前記空調コントローラは、前記目標位置信号と、前記圧力差信号とを、前記制御信号により前記電子膨張弁へと送信し、弁開度位置調整を実行するように構成される、請求項に記載の空調システム用の制御システム。
【請求項8】
空調システムの電子膨張弁を制御する制御方法を含む、空調システム用の制御方法であって、前記電子膨張弁を制御する前記制御方法は、前記電子膨張弁が自らの弁開度位置を獲得する段階と、前記電子膨張弁の前記弁開度位置を較正する段階と、を含み、
前記電子膨張弁が自らの弁開度位置を獲得する前記段階において、前記空調システムは、規定の圧力差における前記電子膨張弁の弁開度位置値を位置検出素子を設けることにより検出し、この場合、前記弁開度位置値は、弁開度位置情報であるか、または、前記空調システムは、異なる設定圧力差値に対応する前記電子膨張弁の複数の弁開度位置値を位置検出素子を設けることにより検出し、圧力検出素子を設けることにより前記圧力差値を検出し、この場合、前記複数の弁開度位置値は、弁開度位置情報であり、
前記電子膨張弁の前記弁開度位置を較正する段階において、前記制御方法は、前記獲得した弁開度位置情報に従って位置調整を行うように前記電子膨張弁を制御し、目標位置値を較正された目標位置値へと調整することを含
前記弁開度位置値は、全閉の位置から前記電子膨張弁が流体の通過を許可し始めるまで動作するステッピングモータがとる対応する数のステップの個数である、空調システム用の制御方法。
【請求項9】
前記電子膨張弁に自らの弁開度位置を獲得させる前記制御方法は、
或る特定の圧力差における前記電子膨張弁の弁開度位置値を検出することと、
前記空調システムを用いて、ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードで、前記弁開度位置値を前記電子膨張弁に送信することと、
前記電子膨張弁を用いて、前記電子膨張弁の中央処理モジュールのメモリセル、あるいは前記空調システムの中央処理モジュールのメモリセルに前記弁開度位置値を記憶することと、
を含むか、または
前記電子膨張弁に自らの弁開度位置を獲得させる前記制御方法は、
異なる複数の圧力差における前記電子膨張弁の複数の弁開度位置値を検出することと、
ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードで、前記複数の弁開度位置値のそれぞれと、対応する圧力差情報とを、前記電子膨張弁に送信することと、
前記電子膨張弁を用いて、前記電子膨張弁の中央処理モジュールのメモリセル、あるいは前記空調システムの中央処理モジュールのメモリセルに、前記複数の弁開度位置値のそれぞれと、前記対応する圧力差情報とを記憶することと、
を含む、請求項8に記載の空調システム用の制御方法。
【請求項10】
前記電子膨張弁の前記弁開度位置を較正する前記段階は、
前記空調システムの中央処理モジュールを用いて、目標位置信号を有するLIN指令フレームを前記電子膨張弁に送信することと、
前記電子膨張弁を用いて、前記LIN指令フレームを受信し、かつ前記電子膨張弁を用いて、前記目標位置信号の値を前記電子膨張弁の記憶装置に記憶することと、
前記電子膨張弁を用いて、前記目標位置信号の前記値を較正された目標位置値に変換することと、
前記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するように前記電子膨張弁を制御することと、
を含むか、または
前記電子膨張弁の前記弁開度位置を較正する前記段階は、
前記空調システムの中央処理モジュールを用いて、目標位置信号および圧力差信号を有するLIN指令フレームを前記電子膨張弁に送信することと、
前記電子膨張弁を用いて、前記LIN指令フレームを受信し、かつ前記電子膨張弁を用いて、前記目標位置信号の値および前記圧力差信号の値を前記電子膨張弁のメモリセルに記憶することと、
前記電子膨張弁を用いて、前記圧力差信号の前記値に従って、前記目標位置信号の前記値を較正された目標位置値に変換することと、
前記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するように前記電子膨張弁を制御することと、
を含む、請求項8または9に記載の空調システム用の制御方法。
【請求項11】
前記電子膨張弁の前記弁開度位置を較正する前記段階は、
前記空調システムの中央処理モジュールを用いて、検出した現在の圧力差または受信した入力信号に従って行った計算により、前記電子膨張弁の目標位置を取得することを含む、請求項8または9に記載の空調システム用の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年3月31日に中華人民共和国の国家知識産権局に出願された「空調システムならびに空調システム用の制御システムおよび制御方法(AIR CONDITIONING SYSTEM, AND CONTROL SYSTEM AND CONTROL METHOD FOR AIR CONDITIONING SYSTEM)」と題する中華人民共和国特許出願第201610201269.5号に基づく優先権を主張する。本明細書では、この出願の全開示内容を参考のため援用する。
本願は、空調システムの技術分野に関する。具体的には、本願は、空調システム、ならびにその空調システム用の制御システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車システムにおいて、自動車用空調機は主要なエネルギー消費機器の一つである。昨今、車両における省エネルギー性の向上を求める声は一層の高まりを見せており、これに応じて、自動車用空調機の省エネルギーについても徐々に提案がなされつつある。自動車用空調システムにおいては、システム中の冷媒流量を効果的に制御することにより、システムの性能が最適化され得る。これは、当該空調システムのエネルギー節約にも有益である。例えば、電気自動車用の空調システムにおいては、速度を可変に調整可能とする圧縮機が採用され、その運転条件には広い変動範囲が設定される。また、その圧縮機において流れを変化させる要求に応じる目的で、開度を高精度に調整可能とするために、電子膨張弁が採用され得る。空調システムにおいて熱交換システムが最適化された性能で信頼性良く動作可能とするためには、当該空調システムにおける電子膨張弁には、実行コンポーネント(execution component)として、合理的な制御論理による制御下にその開度を高精度に調整することが求められる。電子膨張弁の開度調整に同期外れが生じると、空調システムの調整が制御不可能な状態にも陥り得る。現在、自動車用空調システムにおける全動作プロセスにおいて、電子膨張弁の制御プロセスは、一般に、開始段階、動作制御段階、遮断段階等の各種段階を含む。動作制御段階中における調整性能は、空調機のエネルギー消費調整に直接的な影響を与える。したがって、電子膨張弁の開度調整性能をいかに向上させるかが、現在、空調システムの分野における主要な技術開発課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願はこのような技術上の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電子膨張弁において同期外れが生じるリスクを低減可能であり、システムの制御性能を最適化可能である、空調システム、ならびにその空調システム用の制御方法および制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的を達成するために、本願による空調システムは以下のような技術的解決手段を採用する。具体的には、本願による空調システムは、圧縮機と、第1熱交換器と、第2熱交換器と、第1蒸発器と、第2蒸発器と、第1電子膨張弁と、第2電子膨張弁と、を備える。上記第1熱交換器は、上記圧縮機の吐出口と、上記第1電子膨張弁および上記第2電子膨張弁それぞれの入口との間の管路上に配置される。上記第2熱交換器は第1熱交換部と第2熱交換部とを備える。上記第1熱交換部および上記第2熱交換部は互いに熱交換可能に構成される。上記第2熱交換器の上記第1熱交換部は、上記第1熱交換器の出口と、上記第1電子膨張弁および上記第2電子膨張弁それぞれの入口との間の管路上に配置される。上記第2熱交換器の上記第2熱交換部は、上記第1蒸発器および上記第2蒸発器それぞれの出口と、上記圧縮機の吸入口と、の間の管路上に配置される。上記第1蒸発器および上記第2蒸発器は並列に配置される。上記第1電子膨張弁および上記第1蒸発器は直列に配置される。上記第2電子膨張弁および上記第2蒸発器は直列に配置される。上記空調システムは、上記第1電子膨張弁および上記第2電子膨張弁それぞれの開度を個別に調整するように構成される。上記第1電子膨張弁および上記第2電子膨張弁はそれぞれ、上記第1電子膨張弁および上記第2電子膨張弁について、上記空調システムにより記憶された弁開度位置情報に従って、目標位置を較正された目標位置に調整する目的で、位置調整を実行するように構成される。
【0005】
ある実施の形態では、上記空調システムは、熱換気空調システムである。上記空調システムは第3電子膨張弁と冷却器とをさらに備える。上記第3電子膨張弁および上記冷却器は、上記第1熱交換器の上記出口と上記圧縮機の上記吸入口との間に配置される。上記冷却器は上記第1蒸発器および上記第2蒸発器と並列に配置される。
【0006】
別の実施の形態では、上記第3電子膨張弁および上記冷却器は直列に配置される。上記冷却器が位置する分岐部における冷媒の流量は、上記第3電子膨張弁の開度を調整することにより制御される。上記冷却器は発熱部材用の冷却素子であって、上記発熱部材の温度を低下させるように構成される。上記第3電子膨張弁は、上記熱交換システムに記憶された弁開度位置情報に従って、目標位置を較正された目標位置に調整する目的で、位置調整を実行するように構成される。
【0007】
また本願によれば、空調システム用の制御システムが提供される。この制御システムは、空調コントローラと、電子膨張弁の動作を制御するように構成された電子制御部と、を備える。上記空調コントローラは上記空調システムの制御中心であって、車両システムまたは制御パネルの制御信号および入力情報のうち少なくとも1つを受信・解析し、解析により生成した制御信号を上記電子膨張弁へと送信するように構成される。上記電子膨張弁は上記制御信号により制御されるように構成される。
【0008】
上記空調コントローラまたは上記電子制御部はメモリセルを備える。上記メモリセルは、上記電子膨張弁の検出された弁開度位置情報を少なくとも記憶するように構成される。
【0009】
上記制御システムは、上記メモリセルにより提供された上記弁開度位置情報に従って、上記電子膨張弁の目標位置を制御することにより、その目標位置を較正された目標位置へと変換させるように構成される。
【0010】
ある実施の形態では、上記メモリセルは、上記空調コントローラの中央処理モジュール内、または上記電子膨張弁の上記電子制御部の中央処理モジュール内に配置される。上記メモリセルは不揮発性記憶素子により構成される。
【0011】
上記弁開度位置情報は、或る設定圧力差における上記電子膨張弁の弁開度位置値である。上記弁開度位置値は、位置検出素子を設けることにより検出される。上記メモリセルは、上記設定圧力差における上記電子膨張弁の上記弁開度位置値を少なくとも記憶するように構成されるか、または、
上記弁開度位置情報は、異なる複数の設定圧力差における上記電子膨張弁の対応する複数の弁開度位置値である。上記複数の弁開度位置値は、位置検出素子を設けることにより検出される。上記複数の圧力差値は、圧力検出素子を設けることにより検出される。上記メモリセルは、異なる複数の設定圧力差における上記電子膨張弁の上記複数の弁開度位置値のそれぞれ、および対応する上記複数の圧力差値を少なくとも記憶するように構成される。
【0012】
別の実施の形態では、上記制御信号は、上記電子膨張弁の目標位置信号を有する。上記電子膨張弁の開度を調整するプログラムにおいて、上記電子膨張弁は、上記制御システムにより与えられた上記目標位置信号に従って、上記目標位置信号の値を較正された目標位置値へと変換するように構成されるか、または、
上記制御システムは、上記電子膨張弁の現在の圧力差を検出し、上記現在の圧力差に従って調整された目標位置値を取得し、上記調整された目標位置値を較正された目標位置値に変換するように構成されるか、または
上記制御信号は、上記電子膨張弁用の目標位置信号と、圧力差信号とを有する。上記電子膨張弁の開度を調整するプログラムにおいて、上記目標位置信号の値は、上記制御システムにより与えられた上記圧力差信号に従って、較正された目標位置値へと変換される。
【0013】
別の実施の形態では、上記弁開度位置情報は、ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードで上記電子膨張弁に送信され、
上記電子膨張弁が、上記制御システムにより与えられた目標位置信号を受信し、上記目標位置信号の値を上記メモリセルに記憶するように構成される。または、上記制御システムが、入力信号に応じて上記中央処理モジュールにより行われる計算により、上記電子膨張弁の上記目標位置を取得するように構成される。
【0014】
別の実施の形態では、上記空調コントローラにより上記電子膨張弁に与えられる上記制御信号はLIN信号である。上記制御信号は、少なくとも2LINデータバイトからなる。上記2LINデータバイトはそれぞれ8データビットからなる。記憶された初期位置情報は、N番目のバイトの全8ビットと(N+1)番目のバイトの下位2ビット(ビット0およびビット1)とにより表される。上記圧力差信号は上記(N+1)番目のバイトの上位6ビット(ビット2からビット7)により表される。ここでNは1以上である。上記空調コントローラは、上記目標位置信号と、上記圧力差信号とを、上記制御信号により上記電子膨張弁へと送信し、弁開度位置調整を実行するように構成される。
【0015】
また本願によれば、空調システム用の制御方法も提供される。この制御方法は、空調システムの電子膨張弁を制御する制御方法を含む。上記電子膨張弁を制御する上記制御方法は、上記電子膨張弁が自らの弁開度位置を獲得する段階と、上記電子膨張弁の上記弁開度位置を較正する段階と、を含む。上記制御方法は、獲得した弁開度位置情報に従って位置調整を行うように上記電子膨張弁を制御し、目標位置値を較正された目標位置値へと調整することを含む。
【0016】
ある実施の形態では、上記空調システムは、位置検出素子を設けることにより、或る特定の圧力差における上記電子膨張弁の弁開度位置情報を検出する。上記弁開度位置情報は、上記特定の圧力差における上記電子膨張弁の弁開度位置値であるか、または
上記空調システムは、位置検出素子を設けることにより、異なる複数の設定圧力差における上記電子膨張弁の対応する複数の弁開度位置値を検出し、圧力検出素子を設けることにより、複数の圧力差値のそれぞれを検出する。
【0017】
別の実施の形態では、上記電子膨張弁に自らの弁開度位置を獲得させる上記制御方法は、
或る特定の圧力差における上記電子膨張弁の弁開度位置値を検出することと、
上記空調システムを用いて、ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードで、上記弁開度位置値を上記電子膨張弁に送信することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記電子膨張弁の中央処理モジュールのメモリセル、あるいは上記空調システムの中央処理モジュールのメモリセルに上記弁開度位置値を記憶することと、
を含むか、または
上記電子膨張弁に自らの弁開度位置を獲得させる上記制御方法は、
異なる複数の圧力差における上記電子膨張弁の複数の弁開度位置値を検出することと、
ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードで、上記複数の弁開度位置値のそれぞれと、対応する圧力差情報とを、上記電子膨張弁に送信することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記電子膨張弁の中央処理モジュールのメモリセル、あるいは上記空調システムの中央処理モジュールのメモリセルに、上記複数の弁開度位置値のそれぞれと、上記対応する圧力差情報とを記憶することと、
を含む。
【0018】
別の実施の形態では、上記電子膨張弁の上記弁開度位置を較正する上記段階は、
上記空調システムの中央処理モジュールを用いて、目標位置信号を有するLIN指令フレームを上記電子膨張弁に送信することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記LIN指令フレームを受信し、かつ上記電子膨張弁を用いて、上記目標位置信号の値を上記電子膨張弁の記憶装置に記憶することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記目標位置信号の上記値を較正された目標位置値に変換することと、
上記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するように上記電子膨張弁を制御することと、
を含むか、または
上記電子膨張弁の上記弁開度位置を較正する上記段階は、
上記空調システムの中央処理モジュールを用いて、目標位置信号および圧力差信号を有するLIN指令フレームを上記電子膨張弁に送信することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記LIN指令フレームを受信し、かつ上記電子膨張弁を用いて、上記目標位置信号の値および上記圧力差信号の値を上記電子膨張弁のメモリセルに記憶することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記圧力差信号の上記値に従って、上記目標位置信号の上記値を較正された目標位置値に変換することと、
上記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するように上記電子膨張弁を制御することと、
を含む。
【0019】
別の実施の形態では、上記電子膨張弁の上記弁開度位置を較正する上記段階は、上記空調システムの中央処理モジュールを用いて、検出した現在の圧力差または受信した入力信号に従って実行した計算により、上記電子膨張弁の目標位置を取得することを含む。
【発明の効果】
【0020】
本願によれば、電子膨張弁について検出した弁開度位置情報を制御することにより、目標位置を較正された目標位置へと変換し得る。これにより、従来の技術と比べて、上記電子膨張弁における弁開度のずれを低減し、その電子膨張弁が同期外れを起こすリスクを低減し、ひいてはシステムの制御性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本願による空調システムの一実施の形態におけるシステムの一部を示す模式図である。
図2図2は、本願による上記空調システムの別の実施の形態におけるシステムを示す模式図である。
図3図3は、本願による上記空調システムにおける電子膨張弁の一部をなす電子制御部の一実施の形態を示す図である。
図4図4は、本願による上記空調システムにおける電子膨張弁の一部をなす電子制御部の別の実施の形態を示す図である。
図5図5は、図3に示される電子膨張弁に対して弁開度位置調整を行うLIN信号の一部のデータセグメントを示す模式図である。
図6a図6aは、図3に示される電子膨張弁に対してLIN制御モードで弁開度位置調整を行う制御方法を図式的に示す図である。
図6b図6bは、図3に示される電子膨張弁に対してLIN制御モードで弁開度位置調整を行う制御方法を図式的に示す図である。
図7a図7aは、図3に示される電子膨張弁に対してLIN制御モードで弁開度位置調整を行う第2の制御方法を図式的に示す図である。
図7b図7bは、図3に示される電子膨張弁に対してLIN制御モードで弁開度位置調整を行う第2の制御方法を図式的に示す図である。
図8a図8aは、図3に示される電子膨張弁に対してLIN制御モードで弁開度位置調整を行う第3の制御方法を図式的に示す図である。
図8b図8bは、図3に示される電子膨張弁に対してLIN制御モードで弁開度位置調整を行う第3の制御方法を図式的に示す図である。
図9a図9aは、図4に示される電子膨張弁に対して弁開度位置調整を行う第1の制御方法を図式的に示す図である。
図9b図9bは、図4に示される電子膨張弁に対して弁開度位置調整を行う第1の制御方法を図式的に示す図である。
図10a図10aは、図4に示される電子膨張弁に対して弁開度位置調整を行う第2の制御方法を図式的に示す図である。
図10b図10bは、図4に示される電子膨張弁に対して弁開度位置調整を行う第2の制御方法を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および図2には、ある実施の形態による空調システムが開示される。この空調システムは、例えば自動車用や家庭用空調システムのような、少なくとも1つの熱交換システムを備える。この熱交換システムは、システムの冷媒を用いて、冷却液または環境中の空気と熱交換を行う。この熱交換システムは、冷房機能および/または暖房機能および/または除湿機能を有する。具体的には、この空調システムは、制御指令に従って冷凍サイクルまたは加熱サイクルを実行し得る。またこの空調システムは、互いに接続された、圧縮機100、室外熱交換器、室内熱交換器、および少なくとも2つの電子膨張弁(electronic expansion valves (EXV))により冷媒流路を形成する。さらにこの空調システムは、室内熱交換器が蒸発器として機能するときには冷凍サイクルを行い、室内熱交換器が凝縮器として機能するときには加熱サイクルを行う。例えば、冷凍サイクルは、自動車内または室内が涼しくなるように真夏に行われ、加熱サイクルは、自動車内または室内が暖かくなるように真冬に行われる。また、自動車内に曇りが生じないように、さらには室内空気の湿度が適正に保たれるように、自動車内環境または室内環境における空気湿度の調整がなされてもよい。電子膨張弁は、内部熱交換器と外部熱交換器との間の冷媒流量を調整する絞り部材として機能する。
【0023】
図1に示される実施の形態では、熱交換システムは、圧縮機100と、第1熱交換器200と、第2熱交換器300と、第1蒸発器401と、第2蒸発器402と、第1電子膨張弁501と、第2電子膨張弁502と、を備える。これらは、冷媒管を介して互いに接続される。第1熱交換器200は、圧縮機の吐出口と、第1電子膨張弁および第2電子膨張弁それぞれの入口との間に配置される。第2熱交換器300は第1熱交換部301と第2熱交換部302とを備える。第1熱交換部は第2熱交換部と熱交換可能である。具体的には、第2熱交換部は、2経路熱交換器であり、第1熱交換部用流路の作動媒体と、第2熱交換部用流路の作動媒体とは、物質移動を伴わない熱伝達方式により互いに接触する。第2熱交換器の第1熱交換部は、第1熱交換器の出口と、第1電子膨張弁および第2電子膨張弁それぞれの入口との間の管路上に配置される。第2熱交換器の第2熱交換部は、第1蒸発器および第2蒸発器それぞれの出口と、圧縮機の吸入口と、の間の管路上に配置される。液体貯蔵装置600が、第2熱交換器300の入口と、第1および第2蒸発器それぞれの出口との間の管路上に配置され、冷媒が圧縮機に対して液滴衝突を起こすことを防止する。この熱交換システムにおいては、第2熱交換器の出口と、圧縮機の吸入口との間に2つの分岐部が並列に配置される。これら2つの分岐部のうち一方は第1電子膨張弁と第1蒸発器とを含み、他方は第2電子膨張弁と第2蒸発器とを含む。具体的には、第1蒸発器401は、第1電子膨張弁の出口と圧縮機の吸入口との間に配置される。第2蒸発器402は、第2電子膨張弁の出口と圧縮機の吸入口との間に配置される。第1電子膨張弁501および第1蒸発器401は直列に配置され、第2電子膨張弁502および第2蒸発器402は直列に配置される。第1電子膨張弁は、その開度を調整することにより、第1蒸発器が位置する分岐部の冷媒流量を制御し、第2電子膨張弁は、その開度を調整することにより、第2蒸発器が位置する分岐部の冷媒流量を制御する。これにより、具体的な条件に従って各分岐部が効果的に制御され、これらの分岐部間の相互干渉が抑制される。
【0024】
図2に示す別の実施の形態では、この空調システムの各構成要素間の接続の仕方から分かるように、この熱交換システムには、上記二つの分岐部と並列に配置されたもう一つ別の分岐部が追加して設けられる。この分岐部は、第2熱交換器の出口と、圧縮機の吸入口との間に配置され、第3電子膨張弁と冷却器とを備える。冷却器は、発熱するバッテリ装置の温度を低下させるバッテリ冷却素子として機能し得る。具体的には、第3電子膨張弁および冷却器は直列に配置される。第3電子膨張弁は、その開度を調整することにより、バッテリ冷却器が位置する分岐部における冷媒流量を制御する。なお、以下の第1電子膨張弁、第2電子膨張弁および第3電子膨張弁を制御するシステムと方法の説明では、第1電子膨張弁、第2電子膨張弁および第3電子膨張弁を総称して単に「電子膨張弁(EXV)」と呼ぶことがある。第1熱交換器200は、例えば蒸発器や凝縮器のような、吸熱装置または熱拡散装置として機能し、冷媒を用いて外部環境媒体から熱を吸収するか、または外部環境媒体へと熱を拡散させることができる。第2熱交換器300は、例えば蒸発器のような吸熱装置として機能し、冷媒を用いて環境媒体から熱を吸収し得る。第3熱交換器400は、例えば凝縮器や空冷装置のような熱拡散装置として機能し、冷媒を用いて環境媒体へと熱を拡散させ得る。
【0025】
それらの電子膨張弁のそれぞれが位置するシステムに対する圧力差環境に従って、各電子膨張弁の弁開度位置は調整可能である。流量のゼロ点較正が電子膨張弁に対して実行される。これにより、このシステムの持つ複数の電子膨張弁のあいだでの弁開度のズレを低減させることが可能になり、および/または、異なる複数の冷媒圧力差における複数の電子膨張弁それぞれの弁開度のズレを補正可能となる。具体的には、電子膨張弁の弁開度位置を調整することにより、第1蒸発器および第2蒸発器それぞれの流量値と、要求される目標値との間のズレまたは誤差が最小化される。これにより、ある分岐部において電子膨張弁が開くのが早すぎたり遅すぎたりすることで、流量のズレが比較的大きくなる事態を避けることができる。また、それら電子膨張弁のそれぞれが「標準値」に較正されることで、システム制御の精度を向上させ、各分岐部間の流量のズレにより生じ得るシステムの変動を防ぐこともできる。さらに、それら電子膨張弁それぞれの弁開度位置が調整されることで、このシステムの冷媒圧力差に変化・変動が生じても、その圧力差の変化により、それら電子膨張弁それぞれの弁開度位置の開きが早すぎたり、遅すぎたりすることはなくなる。これにより、電子膨張弁の開度制御精度について性能向上が可能になる。ここで、電子膨張弁の弁開度位置値および関連するパラメータとは、全閉の位置から、電子膨張弁が流体の通過を許可し始めるまで動作する、ステッピングモータがとり得る対応するステップの個数を指す。それら複数の電子膨張弁のもつ機械的製造・組み立て技術のレベルに個体差がある場合、異なる複数の電子膨張弁の間で弁開度位置に大きなズレが生じることになる。例えば、弁開度位置の公称値が32ハーフステップである場合、+12ハーフステップまたは―12ハーフステップのズレが生じ得る。また、電子膨張弁の圧力差は、弁開度位置にも影響を与える。一般に、圧力差が大きければ大きいほど、弁開度位置も大きくなる。こうして、異なる複数の電子膨張弁間で弁開度位置にズレが生じると、ひいては流量に大きなズレが生じることになる。すなわち、複数の弁の間で流量曲線が互いに異なる場合、これらの電子膨張弁を用いる冷凍サイクルシステムの制御に影響が及び、ひいてはシステム全体の制御性能に影響が及ぶことになる。
【0026】
次に図3および図4を参照する。図3および図4は、それぞれ、上記空調システムが用いる制御システムの2つの実施の形態を模式的に示す図である。この制御システムは、空調コントローラと、EXVの動作を制御するように構成された電子制御部と、を備える。空調コントローラは空調システムの制御中心として機能し、車両システムまたは制御パネルから制御信号および/または入力情報および/またはセンサ情報を受信・解析し、解析により生成した制御信号をEXVへと送信するように構成される。EXVの電子制御部は、空調コントローラから送信された入力情報および/またはセンサ情報を受信・解析し、その受信し、解析した入力情報および/またはセンサ情報を、電子制御部により記憶され、EXV用にあらかじめ設定された制御プログラム、および/または電子制御部に記憶されたフィードバック情報と組み合わせて、制御信号を計算により取得し、その後、その制御信号をEXVにより実行可能な電気量へと変換するように構成される。これにより、EXVは、その電気量に基づいて動作するように制御され得る。空調コントローラまたは電子制御部はメモリセルを備える。そのメモリセルは、電子膨張弁の検出された弁開度位置情報を少なくとも記憶し得る。この制御システムは、メモリセルにより提供された前記弁開度位置情報に従って、電子膨張弁の目標位置を制御し、その目標位置を較正された目標位置へと変換させることができる。
【0027】
この制御システムは、或る特定の冷媒圧力差および/または異なる複数の冷媒圧力差におけるEXVの弁開度値を検出するように構成された位置検出モジュールをさらに備える。具体的には、弁開度位置情報は、或る設定圧力差(a set pressure differential)における電子膨張弁の弁開度位置値であり得る。その場合、弁開度位置値は、位置検出素子を設けることにより検出される。メモリセルは、その設定圧力差における電子膨張弁の弁開度位置値を少なくとも記憶し得る。これにより、弁開度位置を或る特定の圧力差(a specific pressure differential)において調整可能となるという効果が得られる。上記特定の圧力差は、0MPaから15MPaの範囲内の任意の圧力差値であればよい。あるいは、弁開度位置情報は、異なる複数の設定圧力差(different set pressure differentials)における電子膨張弁の対応する複数の弁開度位置値でもあり得る。その場合、それら複数の弁開度位置値は、位置検出素子を設けることにより検出される。上記複数の圧力差値は、圧力検出素子を設けることにより検出される。メモリセルは、異なる複数の設定圧力差における電子膨張弁の複数の弁開度位置値のすべてと、対応する複数の圧力差値とを記憶し得る。
【0028】
具体的には、上記空調コントローラは、メモリセルを備える。ここで、メモリセルは、EXVのパワーがオフである時もデータを保持できる不揮発性記憶素子として構成される。メモリセルは、EXVについて検出された弁開度位置値を記憶し得る。検出された弁開度位置値は、或る特定の圧力差において検出されたEXVの弁開度値、および/または異なる複数の冷媒圧力差において検出されたEXVの弁開度値を含む。EXVは、自らの弁開度位置を取得するために用いられ、EXVの開度調整中に位置較正が実行され得る。具体的には、空調コントローラに中央処理モジュールが設けられ、メモリセルは、空調コントローラの中央処理モジュール内に一体的に配置されてもよい。あるいは、別の実施の形態では、EXVの電子制御部にメモリセルを設けてもよい。具体的には、電子制御部に中央処理モジュールを設けることによりメモリセルを設けてもよい。その場合、メモリセルは、電子制御部の中央処理モジュール内に一体的に配置され得る。なお、EXVの弁開度位置値を含む、EXVの複数の位置値は、例えばニードル弁が配置される位置により表示され得る。それら複数の位置値は、ステップの個数または関連するパラメータの個数により表示され得る。例えば、ゼロステップの位置は、ニードル弁が底部に位置することを表示する。その場合、流量はゼロである。一方、480ステップの位置は、ニードル弁が頂部に位置することを表示する。その場合、流量は最大となる。
【0029】
具体的には、電子膨張弁に送信される制御信号は、少なくともその電子膨張弁用の目標位置信号を有する。電子膨張弁の開度を調整するプログラムにおいて、電子膨張弁は、制御システムにより与えられた目標位置信号に従って、目標位置信号の値を較正された目標位置値へと変換し得る。あるいは、制御システムは、電子膨張弁の現在の圧力差を検出し、その現在の圧力差に従って調整された目標位置値を取得した後、調整された目標位置値を較正された目標位置値に変換する。あるいは、別の実施の形態では、制御信号は、電子膨張弁用の目標位置信号と、圧力差信号とを少なくとも有し、電子膨張弁の開度を調整するプログラムにおいて、制御システムにより与えられた圧力差信号に従って、目標位置信号の値が較正された目標位置値へと変換される。この制御システムにおいて、弁開度位置情報は、ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードのいずれかで電子膨張弁に送信される。電子膨張弁は、制御システムにより与えられた目標位置信号を受信し、その目標位置信号の値をメモリセルに記憶する。または、制御システムは、入力信号に従って中央処理モジュールにより行われる演算によって、電子膨張弁の目標位置を取得する。EXVの弁開度位置を基準ゼロ点に調整することにより、開度調整を通して複数の電子膨張弁のそれぞれを「標準的な電子膨張弁」に調整可能である。これにより、異なる複数のEXVがそれぞれ異なる弁開度位置を有することにより生じる流量差を低減することができ、同一のEXVの弁開度位置が圧力差に応じて変動しないようにすることができる。さらにまた、システムの圧力差に揺れが生じている場合でも、電子膨張弁の弁開度のズレを低減可能である。これにより、冷凍システムの制御安定性および制御精度の向上が実現される。
【0030】
図3に示す制御システムの実施の形態において、制御システムはLIN制御システムであって、信号の送信にローカルインターネットネットワーク(Local Internet Network (LIN))制御モードを用いる。このLIN制御システムは、親ノードと複数の子ノードとを有する。この実施の形態において(例えばHVAC制御器のような)空調コントローラ61はLIN親ノードまたはLINバスとして働き、EXVは、それら複数の子ノードの1つとして働く。EXVの電子制御部62は、上記中央処理モジュール621と、バス信号送受信モジュール(LIN送受信モジュール622)と、ステッピング駆動制御モジュール623と、駆動モジュール624と、を備える。電子制御部は、ロータのようなEXVの機械部、ステッピングモータの送信部、またはニードル弁(不図示)の動作を制御するように構成される。具体的には、電子制御部は、ロータの回転を制御可能であり、そのロータの回転によりニードル弁を上下に駆動させる。これにより、ニードル弁の位置を調整して開度を制御することが可能になる。EXVの開度調整段階において、メモリセルに記憶された弁開度位置情報を獲得することにより、EXVの受信した目標位置を較正された目標位置に調整可能である。これにより、EXVの弁開度のズレを低減させ、EXVが同期外れを起こすリスクを低減させ、EXVの調整精度を向上させることが可能になるとともに、冷凍システムの制御安定性や制御精度に悪影響を及ぼす可能性のある、長期間使用後のEXV弁開度の比較的大きなズレを避けることも可能になるという顕著な効果が得られる。
【0031】
LIN送受信モジュール622は、検出された信号をLINバスから中央処理モジュールへと送信する。
【0032】
中央処理モジュール621は、信号を解析して解析結果を得、LIN信号送信モジュール13を用いて、解析結果に対応するフィードバック信号をLINバスに送信する。
【0033】
中央処理モジュール621は、空調システムの主制御基板から制御情報を受信・解析し、解析したEXV用の制御信号を駆動制御モジュールへと送信し、EXVの現在位置情報を記録または記憶し、解析結果に対応するフィードバック信号を、バス送受信モジュールを介してLINバスへと送信するように構成される。
【0034】
駆動制御モジュール623は、空調コントローラまたは電子制御部の中央処理モジュールから送信された、EXVを制御するための制御信号を受信し、その制御信号を駆動モジュールへと送信するように構成される。
【0035】
駆動モジュール624は、制御信号の要件を満たす電気信号を電子コイルに与えるように構成される。ここで、制御信号の要件を満たす電気信号は、ニードル弁を動作するように制御可能である。
【0036】
空調コントローラからEXVに与えられる制御信号は、LIN信号である。図5に示すように、LIN信号は、少なくとも2LINデータバイトを含み、それらのLINデータバイトはそれぞれ8データビットを含む。目標位置情報は、以下のようにLIN位置信号により表される。N番目のバイトの全8ビットと、(N+1)番目のバイトの下位2ビット(ビット0およびビット1)は、LIN親ノードがEXVに到達を要求する目標位置を表すのに用いられる。「圧力差」信号は、(N+1)番目のバイトの上位6ビット(ビット2からビット7)により表される。ここでNは1以上である。これら2つの信号により、LIN親ノードは、LIN親ノードが「目標位置」信号および「圧力差」信号を含むLIN指令フレームをEXVに与える制御ステップを実行する。また、その他のLIN信号の定義に関しては、LIN指令フレームの応答データに含まれる上記2つの信号の定義を参照されたい。
【0037】
図4に示す空調システムの別の実施の形態では、図3に示す実施の形態とは異なり、EXVの電子制御部が空調コントローラ63内に一体的に設けられ得る。
【0038】
空調コントローラ63は、空調システムの主制御基板に関する入力情報および/またはセンサ情報を受信し、受信した入力情報および/またはセンサ情報を、空調コントローラに記憶され、EXV用にあらかじめ設定された制御プログラム、および/または空調コントローラに記憶されたフィードバック情報と結びつけ、演算により制御信号を取得し、その制御信号を電子制御部64へと送信するように構成される。フィードバック情報は、空調コントローラのメモリセルに記憶された、初期化完了状態情報と位置情報とを少なくとも有する。
【0039】
電子制御部64は、制御信号を、EXVにより実行可能な電気量へと変換するように構成される。これにより、EXVはその電気量だけ制御され得る。
【0040】
空調コントローラには中央処理モジュール630が設けられ、EXVの電子制御部64には駆動制御モジュール641と駆動モジュール642とが設けられる。空調コントローラの中央処理モジュールは、入力情報、スイッチ情報、および/またはセンサ情報を受信し、EXV用の制御信号を演算により取得し、その制御信号を駆動制御モジュールへと送信し、EXVの現在位置情報を記録または記憶するように構成される。具体的には、EXVの開度調整段階において、弁開度位置情報が空調コントローラの中央処理モジュール内に記憶されることで、空調コントローラの中央処理モジュールは自己認識を行うことができ、また、空調コントローラの中央処理モジュールは、上記入力情報または入力信号に従って演算を行うことにより、EXVについて目標位置のみならず圧力差値を取得することもできる。
【0041】
この実施の形態では、空調コントローラのメモリセルは、空調コントローラの中央処理モジュール630内に一体的に設けられる。空調コントローラ63は、記憶された弁開度位置情報に従って、あるいはEXVの弁開度位置情報および圧力差値の両方に従って、目標位置を較正された目標位置へと変換し得る。
【0042】
次に図6aから図10bを参照する。図6a〜図10bは、図3および図4に示される2種類の空調システムにそれぞれ対応する複数の制御方法を図式的に示す。これらの制御方法は、EXVの弁開度位置を制御する方法を含む。その方法は、EXVが自らの弁開度位置を獲得する段階と、EXVの弁開度位置を較正する段階と、を有する。EXVが自らの弁開度位置を獲得する段階は、EXVが対応するLINネットワークに接続される前に実行され得る。電子制御弁は、獲得した弁開度位置情報に従って位置調整を実行し、目標位置値を較正された目標位置値へと調整するように制御される。
【0043】
この制御方法では、上記空調システムには、或る特定の圧力差における電子膨張弁の弁開度位置情報を検出するように構成された位置検出素子が設けられ、その弁開度位置情報は、その特定の圧力差における電子膨張弁の弁開度位置値である。あるいは、上記空調システムには、異なる複数の設定圧力差における電子膨張弁の対応する複数の弁開度位置値を検出するように構成された位置検出素子が設けられ、それら複数の圧力差値のそれぞれを検出するように構成された圧力検出素子が設けられる。
【0044】
この制御方法において、上記電子膨張弁に自らの弁開度位置を獲得させる上記制御方法は、
或る特定の圧力差における上記電子膨張弁の弁開度位置値を検出することと、
上記空調システムを用いて、ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードで、上記弁開度位置値を上記電子膨張弁に送信することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記電子膨張弁の中央処理モジュールのメモリセル、あるいは上記空調システムの中央処理モジュールのメモリセルに上記弁開度位置値を記憶することと、
を含むか、または
上記電子膨張弁に自らの弁開度位置を獲得させる上記制御方法は、
異なる複数の圧力差における上記電子膨張弁の複数の弁開度位置値を検出することと、
ローカルインターネットネットワーク制御モードまたはコントローラ・ローカルエリアインターネットネットワーク制御モードで、上記複数の弁開度位置値のそれぞれと、対応する圧力差情報とを、上記電子膨張弁に送信することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記電子膨張弁の中央処理モジュールのメモリセル、あるいは上記空調システムの中央処理モジュールのメモリセルに、上記複数の弁開度位置値のそれぞれと、上記対応する圧力差情報とを記憶することと、
を含む。
【0045】
この制御方法において、上記電子膨張弁の上記弁開度位置を較正する上記段階は、
上記空調システムの中央処理モジュールを用いて、目標位置信号を有するLIN指令フレームを上記電子膨張弁に送信することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記LIN指令フレームを受信し、かつ上記電子膨張弁を用いて、上記目標位置信号の値を上記電子膨張弁の記憶装置に記憶することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記目標位置信号の上記値を較正された目標位置値に変換することと、
上記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するように上記電子膨張弁を制御することと、
を含むか、または
上記電子膨張弁の上記弁開度位置を較正する上記段階は、
上記空調システムの中央処理モジュールを用いて、目標位置信号および圧力差信号を有するLIN指令フレームを上記電子膨張弁に送信することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記LIN指令フレームを受信し、かつ上記電子膨張弁を用いて、上記目標位置信号の値および上記圧力差信号の値を上記電子膨張弁のメモリセルに記憶することと、
上記電子膨張弁を用いて、上記圧力差信号の上記値に従って、上記目標位置信号の上記値を較正された目標位置値に変換することと、
上記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するように上記電子膨張弁を制御することと、
を含む。
【0046】
上記電子膨張弁の上記弁開度位置を較正する上記段階は、上記空調システムの中央処理モジュールを用いて、検出した現在の圧力差または受信した入力信号に従って実行した計算により、上記電子膨張弁の目標位置を取得することをさらに含む。
【0047】
具体的には、EXVを制御する空調システムの制御方法を示す図6図6aおよび図6bを含む)に示すように、空調コントローラは、ローカルインターネットネットワーク制御モードでEXVと通信する。図3に示す空調システムの第1の実施の形態が、図6には図式的に示される。
【0048】
図6aに示されるように、EXVに自らの弁開度位置を獲得させる段階は、
S6a01:或る特定の圧力差におけるEXVの弁開度位置値を検出するステップと、
S6a02:LIN指令フレームを介して、検出した弁開度位置値をEXVに送信するステップと、
S6a03:EXVを用いて、中央処理モジュールのメモリセルに、受信した弁開度位置値を記憶するステップと、
を含む。
【0049】
図6bに示されるように、LINネットワークにおいてEXVの弁開度位置を較正する段階は、
S6b01:LIN親ノードを用いて、目標位置信号を有する指令フレームをEXVに送信するステップと、
S6b02:EXVを用いて、LIN指令フレームを受信し、かつEXVを用いて、目標位置信号の値を上記メモリセルか、追加要素として設けられた記憶装置RAMに記憶するステップと、
S6b03:EXVを用いて、上記目標位置信号の上記値を較正された目標位置値に変換するステップと、
S6b04:上記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するようにEXVを制御するステップと、
を含む。
【0050】
図3に示す空調システムの第2の実施の形態を図式的に示す図7図7aおよび図7bを含む)に示されるように、図7の実施の形態が図6に示す制御方法と比べて改善された点は、EXVが異なる複数の圧力差において、対応する複数の弁開度位置値を記憶すること、またそれに応じて、LIN親ノードからEXVに送信されたLIN指令フレームには圧力差信号が追加されることである。これにより、EXVの弁開度位置を、広範な作動圧力差範囲内で調整することが容易になる。
【0051】
図7aに示されるように、この実施の形態では、EXVに自らの弁開度位置を獲得させる段階は、
S7a01:異なる複数の圧力差におけるEXVの複数の弁開度位置値を検出するステップと、
S7a02:LIN指令フレームを介して、複数の弁開度位置値のそれぞれと、対応する圧力差情報とを、EXVに送信するステップと、
S7a03:EXVを用いて、受信した複数の弁開度位置値と、対応する圧力差情報とを中央処理モジュールのメモリセルに記憶するステップと、
を含む。
【0052】
図7bに示されるように、この実施の形態では、LINネットワークにおいてEXVの弁開度位置を較正する段階は、
S7b01:LIN親ノードを用いて、目標位置信号および圧力差信号を有する指令フレームをEXVに送信するステップと、
S7b02:EXVを用いて、LIN指令フレームを受信し、かつEXVを用いて、目標位置信号の値および圧力差信号の値をRAMに記憶するステップと、
S7b03:EXVを用いて、圧力差信号の値に従って、上記目標位置信号の上記値を較正された目標位置値に変換するステップと、
S7b04:上記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するようにEXVを制御するステップと、
を含む。
【0053】
図3に示す空調システムの第3の実施の形態を図式的に示す図8図8aおよび図8bを含む)に示される制御方法では、EXV自体が、或る特定の圧力差における弁開度位置値を記憶し、その弁開度位置値は、EXVが位置するシステムのLIN親ノードによりあらかじめ記憶された弁開度位置値と、その圧力差との間の機能的関係と結びつけられるか、またはEXVに送信される目標位置が、その圧力差情報にしたがって調整されても良い。したがって、弁開度位置値が全圧力差範囲で調整されるという効果は、図7に示されるLIN圧力差信号を加えなくても同様に達成可能である。
【0054】
図8aに示されるように、この実施の形態では、EXVに自らの弁開度位置を獲得させる段階は、
S8a01:或る特定の圧力差におけるEXVの弁開度位置値を検出するステップと、
S8a02:LIN指令フレームを介して、上記弁開度位置値をEXVに送信するステップと、
S8a03:EXVを用いて、受信した弁開度位置値を中央処理モジュールのメモリセルに記憶するステップと、
を含む。
【0055】
図8bに示されるように、この実施の形態では、LINネットワークにおいてEXVの弁開度位置を較正する段階は、
S8b01:LIN親ノードを用いて、EXVの圧力差を検出するステップと、
S8b02:LIN親ノードを用いて、EXVに送信されるべき目標位置値を上記圧力差に従って調整し、調整された目標位置値を得るステップと、
S8b03:LIN親ノードを用いて、目標位置信号を有するLIN指令フレームをEXVに送信するステップと、
S8b04:EXVを用いて、LIN指令フレームを受信し、かつEXVを用いて、目標位置信号の値をRAMに記憶するステップと、
S8b05:EXVを用いて、上記目標位置信号の上記値を較正された目標位置値に変換するステップと、
S8b06:上記較正された目標位置値に従って、対応する位置へと移動するようにEXVを制御するステップと、
を含む。
【0056】
なお図8に示す実施の形態では、或る特定の圧力差の値を例えば3Mpaとし、検出された弁開度位置の値を例えば22ハーフステップとして、詳細に説明しているが、特定の圧力差の値は3MPaに限定されるわけではない。
【0057】
この実施の形態では、EXVに自らの弁開度位置を獲得させる段階は、
上記圧力差3Mpaにおける弁開度位置を22ハーフステップであると検出するステップと、
LIN指令フレームを介して、上記弁開度位置値をEXVに送信するステップと、
EXVを用いて、上記弁開度位置値をEXVのメモリセルに記憶するステップと、
を含む。
【0058】
また、EXVの弁開度位置を較正する段階は、
LIN親ノードにより検出された、EXVの圧力差が5Mpaであると仮定するステップと、
現在の圧力差は実際に5Mpaであるため、LIN親ノードにより元々要求されたとおり、EXVの到達すべき目標位置は102ハーフステップであると仮定し、現在の実際の圧力差を、その圧力差と、空調システムによりあらかじめ記憶された弁開度位置値との間の機能的関係に結び付け、目標位置を107ハーフステップにあらかじめ調整することにより、弁開度がずれる可能性をさらに低減させるステップと、
LIN親ノードを用いて、LIN指令フレームをEXVに送信するステップであって、上記目標位置信号の値は107である、ステップと、
EXVを用いて、LIN指令フレームを受信し、かつEXVを用いて、目標位置信号の値をRAMに記憶するステップと、
EXVを用いて、上記目標位置信号の上記値を、あらかじめ記憶された弁開度位置値である22ハーフステップと結びつけ、かつEXVを用い、以下の式
EXVの較正された目標位置S=(LIN目標位置信号の値−基準弁開度位置値)+EXVの弁開度位置値
に従って元々の目標位置を変換するステップと、
を含む。
【0059】
上記パラメータは、この式に従って計算され、較正された目標位置値Sは97ハーフステップとなる。すなわち、EXVが97ハーフステップの位置に移動するとき、対応する流量は、102ハーフステップを取る標準的なEXVの流量と等価となる。これにより、元々の目標位置に従ってEXVに対して流量調整を行う際に生じ得る、流量の比較的大きなズレを防止する。
【0060】
このような位置変換により、EXVは、LIN親ノードから送信されたLIN指令フレームに含まれる目標位置信号のもつ値と実質的に同じだけ開く。EXVは、例えば、32ハーフステップだけ開く。したがって、EXVを制御する観点からすると、弁開度にズレが生じているEXVは、標準的な電子膨張弁に較正される。
【0061】
図4に示す空調システムの一実施の形態を図式的に示す図9図9aおよび図9bを含む)に示される制御方法では、EXVの電子制御部は、空調コントローラ63内に一体的に設けられ得る。その場合、EXVの電子制御部は、LIN子ノードとして独立して設けられることはない。
【0062】
図9aに示されるように、この実施の形態では、EXVに自らの弁開度位置を獲得させる段階は、
S9a01:或る特定の圧力差において、EXVの電子制御部と整合する、弁本体の弁開度位置値を検出するステップと、
S9a02:上記検出された弁開度位置値をLIN指令フレームまたはCANフレームを介してEXVに送信するステップと、
S9a03:EXVを用いて、受信した弁開度位置値を自動車用空調機の中央処理モジュール内のメモリセルに記憶するステップと、
を含む。
【0063】
図9bに示されるように、この実施の形態では、EXVの弁開度位置を較正する段階は、
S9b01:空調機の中央処理モジュール621、630を用いて、スイッチ情報、センサ情報等の入力情報を受信するステップと、
S9b02:空調機の中央処理モジュール621、630を用いて、EXVが到達することを要求される目標位置を計算により求めるステップと、
S9b03:空調機の中央処理モジュール621、630を用い、上記弁開度位置に従って、上記目標位置を較正された目標位置に変換するステップと、
S9b04:空調機の中央処理モジュール621、630を用い、上記較正された目標位置に従って、ステッピング駆動制御モジュールを制御し、EXVのニードル弁を対応する位置に移動するように駆動するステップと、
を含む。
【0064】
図4に示す空調システムの別の実施の形態を図式的に示す図10図10aおよび図10bを含む)に示される制御方法によれば、図9に示される制御方法と比べて、圧力差のもたらす影響をさらに緩和することができる。
【0065】
図10aに示されるように、この実施の形態では、EXVに自らの弁開度位置を獲得させる段階は、
S10a01:異なる複数の圧力差において、EXVの電子制御部と整合する弁本体の複数の弁開度位置値を検出するステップと、
S10a02:上記複数の弁開度位置値のそれぞれ、および対応する複数の圧力差値をLIN指令フレームまたはCANフレームを介してEXVに送信するステップと、
S10a03:EXVを用いて、受信した複数の弁開度位置値および対応する複数の圧力差値を、自動車用空調機の中央処理モジュール内のメモリセルに記憶するステップと、
を含む。
【0066】
図10bに示されるように、この実施の形態では、EXVの弁開度位置を較正する段階は、
S10b01:空調機の中央処理モジュールを用いて、スイッチ情報、センサ情報等の入力情報を受信するステップと、
S10b02:空調機の中央処理モジュールを用いて、EXVが到達することを要求される目標位置を計算により求めるステップと、
S10b03:空調機の中央処理モジュールを用い、EXVの圧力差値を獲得するステップと、
S10b04:空調機の中央処理モジュールを用い、上記弁開度位置および上記圧力差値に従って、上記目標位置を較正された目標位置に変換するステップと、
S10b05:空調機の中央処理モジュールを用い、上記較正された目標位置に従って、ステッピング駆動制御モジュールを制御し、EXVのニードル弁を対応する位置に移動するように駆動するステップと、
を含む。
【0067】
本願によれば、電子膨張弁の弁開度位置調整を制御することにより、目標位置を較正された目標位置へと変換し、異なる複数の圧力差における電子膨張弁の弁開度のズレを低減させ、および/またはシステムに含まれる異なる複数の電子膨張弁間の弁開度位置のズレを低減させる。これにより、上記電子膨張弁を、構造の変更を伴うことなく、標準的な電子膨張弁に調整することが可能になる。その結果、冷媒系における流量曲線の均一性向上が実現される。また、弁開度のズレを低減させる、または排除するために機械的な構造設計を用いる解決手段に比べて、本願によれば、製造および組み立て技術のもたらすコストをさらに低減することも可能となる。
【0068】
以上に述べた実施の形態は、本願の好ましい実施の形態にすぎず、いかなる意味でも本願の範囲を限定するものではない。また本願は、以上に好ましい実施の形態のかたちで開示されたが、本願はそれらの好ましい実施の形態に限定されるわけではない。以上に開示した方法および技術内容を用いて、本願により提供された技術的解決手段の範囲を超えることなく、それらの技術的解決手段に対して様々な変更・改変・等価な置き換えを施すことは、当業者には容易である。したがって、本願の技術的本質に基づき、本願により提供される技術的解決手段の内容から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対して、様々なかたちで単純な改変を施し、等価な置き換え・変更を行うことはすべて、本願により提供される技術的解決手段の権利保護範囲内に入るものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b