特許第6828057号(P6828057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828057ノズル交換器および防護エンクロージャを備えた加工機械
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828057
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】ノズル交換器および防護エンクロージャを備えた加工機械
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20210128BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20210128BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20210128BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20210128BHJP
   F16P 1/02 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B23K26/70
   B23Q3/155 Z
   B23Q11/08 Z
   B23Q11/00 D
   B23Q3/155 G
   B23Q11/00 N
   F16P1/02
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-562636(P2018-562636)
(86)(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公表番号】特表2019-524442(P2019-524442A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017062439
(87)【国際公開番号】WO2017207359
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】102016209285.5
(32)【優先日】2016年5月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518006075
【氏名又は名称】トルンプフ シュヴァイツ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Schweiz AG
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブンツ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ニーディング
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン ルドー
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン シュニーダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ビューラー
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−166126(JP,A)
【文献】 特開2013−226631(JP,A)
【文献】 実開平5−2852(JP,U)
【文献】 特開2003−200329(JP,A)
【文献】 特開2006−312182(JP,A)
【文献】 特開2004−209540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工ビーム(6)によりワーク(3)を加工するための加工機械(1)であって、
当該加工機械(1)の加工ヘッド(7)に対するノズル(11)の取付けおよび/または取外しのためのノズル交換器(12)を有しており、該ノズル交換器(12)は、ノズル(11)を収容する複数のノズル収容部(13)を有している、加工機械(1)において、
当該加工機械(1)は、前記加工ビーム(6)を前記ワーク(3)に対して位置調整する加工ヘッド(7)と、該ワーク(3)をその内部で加工するための作業空間(8)を作業空間周辺環境(9)から遮蔽するための防護エンクロージャ(2)を有しており、かつ
前記ノズル交換器(12)は、前記防護エンクロージャ(2)の内部のノズル交換位置(WP)と、前記防護エンクロージャ(2)の外部の装備位置(RP)との間で移動可能であることを特徴とする、加工機械。
【請求項2】
当該加工機械(1)はさらに、ノズル交換が機能しない休止位置(HP)において前記ノズル交換器(12)の複数のノズル収容部(13)をカバーするケーシング(29)を有しており、
前記ノズル交換器(12)は、前記防護エンクロージャ(2)内で前記ノズル交換位置(WP)と前記休止位置(HP)との間で移動可能であり、該休止位置(HP)から前記ノズル交換器(12)は、前記装備位置(RP)へ移動可能である、請求項1記載の加工機械。
【請求項3】
前記ノズル交換器(12)は、前記休止位置(HP)から手動により前記装備位置(RP)に移動可能である、請求項2記載の加工機械。
【請求項4】
前記ノズル交換器(12)は、前記休止位置(HP)および前記装備位置(RP)では第1の引出し状の構成部材(28a)内に収容されており、該第1の引出し状の構成部材(28a)は、前記装備位置(RP)において前記防護エンクロージャ(2)から引き出された状態にある、請求項2または3記載の加工機械。
【請求項5】
前記ノズル交換器(12)は、前記ノズル交換位置(WP)では第2の引出し状の構成部材(28b)内に収容されており、該第2の引出し状の構成部材(28b)は、前記休止位置(HP)では前記第1の引出し状の構成部材(28a)内に配置されている、または前記ノズル交換器(12)は、前記ノズル交換位置(WP)では第1の引出し状の構成部材(28a)内に収容されており、前記休止位置(HP)では、前記第1の引出し状の構成部材(28a)が、前記第2の引出し状の構成部材(28b)内に配置されている、請求項4記載の加工機械。
【請求項6】
当該加工機械(1)はさらに、前記防護エンクロージャ(2)の、前記作業空間周辺環境(9)側の面に取り付けられた、第1の位置(S1)と第2の位置(S2)との間で移動可能な外装構成部材(19)および/またはカバー(20)を有しており、前記第1の位置(S1)において前記外装構成部材(19)および/または前記カバー(20)は、前記装備位置(RP)を前記作業空間周辺環境(9)から隔離しており、前記第2の位置(S2)では前記作業空間周辺環境(9)から前記装備位置(RP)にアプローチすることができるようにしている、請求項1から5までのいずれか1項記載の加工機械。
【請求項7】
当該加工機械(1)はさらに、前記外装構成部材(19)および/または前記カバー(20)の第1および/または第2の位置(S1,S2)を検出するセンサ装置(21a,21b)を有している、請求項6記載の加工機械。
【請求項8】
当該加工機械(1)は、前記外装構成部材(19)および/または前記カバー(20)が前記第2の位置(S2)にあるときには、前記ノズル交換位置(WP)から前記装備位置(RP)へのかつその逆方向への前記ノズル交換器(12)の移動を阻止するように形成されている、請求項6または7記載の加工機械。
【請求項9】
当該加工機械(1)はさらに、前記ノズル交換器(12)が前記装備位置(RP)に配置されていないときに、前記第1の位置(S1)において前記外装構成部材(19)および/または前記カバー(20)をロックするためのロック装置(22)を有している、請求項6から8までのいずれか1項記載の加工機械。
【請求項10】
当該加工機械(1)はさらに、ノズル(11)を保管するノズルマガジン(18)を有しており、該ノズルマガジン(18)は、前記装備位置(RP)に位置する前記ノズル交換器(12)に隣接して配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の加工機械。
【請求項11】
前記ノズル交換器(12)は、前記作業空間(8)から前記作業空間周辺環境(9)へのレーザビームの出射を防止する少なくとも1つの遮蔽部材(27)を有している、または該遮蔽部材(27)に取外し可能に結合されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の加工機械。
【請求項12】
当該加工機械(1)はさらに、前記ノズル交換位置(WP)から前記休止位置(HP)へまたは前記ノズル交換位置(WP)から前記装備位置(RP)へ、かつその逆方向に前記ノズル交換器(12)を移動させるための駆動装置(26)を有している、請求項2および請求項2を引用する請求項3から11までのいずれか1項記載の加工機械。
【請求項13】
当該加工機械(1)はさらに、前記ノズル交換器(12)が前記休止位置(HP)または前記装備位置(RP)に配置されている場合に前記加工ヘッド(7)に取り付けられたノズル(11)をクリーニングするための、前記作業空間(8)内または前記遮蔽部材(27)に位置固定されて配置されたブラシ部材(23)を有している、請求項2を引用する請求項11または請求項11を引用する12記載の加工機械。
【請求項14】
当該加工機械(1)はさらに、前記ノズル交換器(12)の前記ノズル交換位置(WP)において前記加工ヘッド(7)に対し前記ノズル収容部(13)に収容されたノズル(11)の取付けおよび/または取外しを行うために、少なくとも1つのノズル収容部(13)の回転運動を生ぜしめる回転駆動装置(24)を有している、請求項2を引用する請求項3から13までのいずれか1項記載の加工機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工ビーム、特にレーザビームによりワークを加工するための加工機械、特にレーザ加工機であって、加工機械の加工ヘッドに対するノズルの取付けおよび/または取外し用のノズル交換器を有しており、ノズル交換器は、ノズルを収容する複数のノズル収容部を有している、加工機械に関する。加工ビームは、レーザビームであってよいが、しかしまた、例えばプラズマアークの形態の、異なる種類の加工ビームを使用することも可能である。
【0002】
レーザ加工機用のノズル交換器は、例えば欧州特許第2589458号明細書(EP 2 589 458 B1)から公知となっている。このノズル交換器は、共通の保管装置内に配置された複数のノズル収容部を有している。各ノズル収容部は、レーザ加工機の加工ヘッドに対するノズルの取付けおよび/または取外しに用いられる。
【0003】
加工プロセスを実施するためにレーザ加工装置のレーザ加工ヘッドに取り付けられるレーザノズル、またはプラズマ加工機のバーナヘッドに取り付けられるバーナノズルは、加工プロセスから生じたワーク部分、飛沫および汚れと衝突することにより、汚染または損傷される恐れがある。つまりこのようなノズルは、プロセス確実性の理由から定期的に交換されるべき、摩耗部品である。ノズルの交換は、異なる切断プロセス用に異なるタイプのノズルが使用されるべき場合にも必要とされている。
【0004】
独国特許出願公開第19546677号明細書(DE 195 46 677 A1)から公知となっている火炎切断機は、カバーが設けられかつ複数の工具部品収容ステーションを備えた工具部品収容部を有しており、工具部品収容部は、交換可能な工具部品群を鉛直方向に摺動可能に、差込み可能にかつ取出し可能に保管することに適するように形成されている。工具部品はノズルであってよい。工具部品収容部は、引出し状の構成部材を有していてよく、引出し状の構成部材は、工具、例えばバーナヘッドにおける各工具部品を交換するために、リニア移動装置により制御されて、カバーから進出させることができるようになっている。
【0005】
欧州特許第1602439号明細書(EP 1 602 439 B1)から公知の、レーザ加工機の防護エンクロージャの内部のノズルマガジンは、工具自動交換用の位置に配置されており、この場合は埃密なカバーがノズル交換マガジンを上方からカバーしており、レーザ加工工具のノズルを交換するときにのみ、開くようになっている。
【0006】
特開2014−172046号公報に記載されたレーザ加工機では、ノズル保持装置が、加工されるべきワークの自由端部を挟むように形成されたキャリッジの一方の端部に取り付けられている。ノズル保持装置は、ノズル保持装置内に収容された複数のノズルの上面をカバーする、開閉可能なカバーを有している。
【0007】
米国特許出願公開第2008053976号明細書(US 2008053976 A1)から公知の、レーザ加工機の防護エンクロージャの外部に配置された切断ヘッドマガジン内には、複数の切断ヘッドがチェーンに沿って保管される。切断ヘッド交換ユニットが、切断ヘッドマガジンの引渡し位置から切断ヘッドを引き取り、加工ヘッドに取り付けられた切断ヘッドを、切断ヘッドマガジンから取り出された切断ヘッドに交換するようになっている。
【0008】
本発明の課題
本発明の根底を成す課題は、ノズル交換器へのアプローチが改良された加工機械を提供することにある。
【0009】
発明の主題
この課題は、加工ビームによりワークを加工するための作業空間を作業空間周辺環境から仕切るための防護エンクロージャを有している、冒頭で述べた形式の加工機械により解決され、この場合、ノズル交換器は、防護エンクロージャの内部のノズル交換位置と、防護エンクロージャの外部の装備位置との間で移動可能である。
【0010】
防護エンクロージャは、作業空間を周辺環境空間から仕切るもしくは遮蔽するために用いられると共に、例えば、加工ビームによる作業空間内でのワークの加工中に高エネルギビームが周辺環境空間には一切到達しないこと、もしくは定められたビーム限界値が守られる程度に極少量のビームしか周辺環境空間には到達しないことを保証するものであり、これにより、加工中に作業員は防護エンクロージャの外部で危険無く移動することができるようになっている。
【0011】
典型的には作業員がアプローチすることができるようになっている、防護エンクロージャの外部の装備位置へノズル交換器を移動させることにより、機械内でワーク加工または別のプロセス、例えばワークの着脱が行われている間に、ノズル交換器への手動によるまたは例えばロボットにより自動化された事前装備、より厳密に言うと、ノズル交換器のノズル収容部への、後続のワーク加工に適した構成形式を有するノズルの手動または自動装備、および/または加工時に損傷したノズルの、新しいノズルへの交換を行うことができる。つまり前記装備は、加工機械の、ノズル交換が行われないあらゆる運転状態に時間的に並行して行われてよい。
【0012】
典型的には連続する2つの加工の間に行われるノズル交換のために、ノズル交換器は、防護エンクロージャの内部のノズル交換位置へ移動させられる。ノズル交換位置と装備位置との間でのノズル交換器の移動のために、防護エンクロージャは開口を有している。ノズル交換位置は、典型的には、その時々のノズル収容部においてノズル交換を実施するために、加工ヘッドをその運動軸によりノズル交換位置へ移動させることができるように選択されている。よってノズル交換位置は通常、ワークを加工するための加工領域に隣接して位置している。ノズル交換は、例えば冒頭で引用した欧州特許第2589458号明細書に記載された形式で行われてよい、すなわち、加工ヘッドがノズル交換のために、ノズル収容部に上方から接近する。ノズル交換器は例えば、参照により本願の内容とする前掲の欧州特許第2589458号明細書に記載されたように形成されていてよい。
【0013】
1つの実施形態では、ノズル交換器は防護エンクロージャ内でノズル交換位置と休止位置との間で移動可能であり、休止位置からノズル交換器は、防護エンクロージャの外部の装備位置へ移動可能である。ノズル交換器は、典型的には自動制御式の運動により、すなわち駆動装置により、休止位置からノズル交換位置へかつその逆に移動させられる。このためにノズル交換器は、例えば直線的に摺動させられるか、または場合によりレバーアームに沿って旋回させられてよい。ノズル交換位置においてノズル交換器は、加工ヘッドによるノズル交換を行うことができるようにするために、典型的には上方に対して開かれている。加工ヘッドは機械軸により、ノズル交換位置に配置されたノズル交換器の上を移動させられ、これにより、加工ヘッドに取り付けられたノズルを交換することができるようになっている。休止位置は、典型的にはノズル交換位置よりも大幅に、加工領域から離れている。加工プロセスに際してノズル交換器が汚染されることを防ぐために、ノズル交換器は休止位置へ移動させられてよい。
【0014】
1つの改良では、ノズル交換器は休止位置から手動で(引っ張ることまたは押しずらすことにより)装備位置に(かつその逆に)移動可能である。この場合、ノズル交換器は必要に応じて作業員(またはロボット)により、休止位置から装備位置へ移動させることができる。このことは、ノズル交換器が休止位置に配置されているときにのみ、可能である。作業員によるノズル交換器への手動での干渉、すなわち装備位置への手動での移動は、ノズル交換器がノズル交換位置に配置されているとき、またはノズル交換器がノズル交換位置と休止位置との間を移動しているときには、ロックにより遮断され得る。
【0015】
1つの改良では、加工機械は、休止位置においてノズル交換器の複数のノズル収容部をカバーする、(位置固定された)ケーシングを有している。ケーシングにより、ノズル交換器はワーク加工時に生じる汚れから防護され得る。ケーシングは典型的には、ノズル交換器の上面に設けられた複数のノズル収容部をカバーするケーシング蓋を有している。好適には、ノズル交換器がケーシング内の休止位置に配置されているときには、ケーシングの一方の側壁が、ノズル交換器と結合された遮蔽部材により閉じられる。
【0016】
1つの別の改良では、ノズル交換器は、休止位置および装備位置では第1の引出し状の構成部材内に配置もしくは収容されている。好適には、ノズル交換器はノズル交換位置では、別の第2の引出し状の構成部材内に収容されており、この場合、第2の引出し状の構成部材は、休止位置では第1の引出し状の構成部材内に収容されており、特に第1の引出し状の構成部材と共に装備位置へ移動可能であるか、またはその逆もある。装備位置において第1の引出し状の構成部材は、防護エンクロージャから引き出された状態にあり、これにより、作業員(またはロボット)がノズル交換器に装備することができるようになっている。この場合、ノズル交換器は、第1の引出し状の構成部材のフロント面を介して、加工機械の(既存の)外装体もしくは防護エンクロージャ内に組み込まれており、ノズル交換器を、防護エンクロージャから引き出された位置へ、(引出しの形式で)手動で引き出すことができるようになっている。
【0017】
第2の引出し状の構成部材が、休止位置において第1の引出し状の構成部材内に配置されると、ノズル交換器が装備位置へ移動する際に、典型的には第2の引出し状の構成部材の、加工機械の作業空間に面したフロント面は一緒には移動させられないので、ケーシングの、作業空間に面した開口は、前記フロント面により閉じられていることになる。休止位置からノズル交換位置へノズル交換器が移動する際、第1の引出し状の構成部材は典型的には一緒には移動させられないので、防護エンクロージャの開口は、第1の引出し状の構成部材の、作業空間周辺環境に面したフロント面により閉じられたままとなる。このようにして、防護エンクロージャもしくは閉鎖されたケーシングによるビーム保護が、常に保証されている。2つの引出し状の構成部材相互の配置が逆の形式で行われてもよいことは自明である。
【0018】
1つの別の実施形態では、加工機械は追加的に、防護エンクロージャの作業空間周辺環境側の面に取り付けられた、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な外装構成部材および/またはカバーを有しており、この場合、第1の位置において外装構成部材および/またはカバーは、装備位置を作業空間周辺環境から隔離しており、第2の位置では作業空間周辺環境から装備位置にアプローチすることができるようになっている。
【0019】
外装構成部材は、例えばヒンジを介して防護エンクロージャに取り付けられていてよく、外装構成部材が装備位置、より厳密に言うと外装構成部材により包囲または閉鎖された、例えば防護エンクロージャのロッカー形式の部分の内部空間を形成する空間を作業空間周辺環境から隔離する第1の閉鎖位置と、装備位置に作業員がアプローチすることのできる第2の開放位置との間で、ロッカー扉の形式で手動で旋回され得る。この場合、ノズル交換器もしくは内部にノズル交換器が収容された引出し状の構成部材は、装備位置では防護エンクロージャのロッカー形式の機械部分内、例えばそこに設けられたボックス内に収容されている。外装構成部材は、典型的にはそれ自体が作業領域からの散乱ビームに対する遮蔽手段として働くことはなく、例えば1つまたは複数の覗き窓を有していてよい。旋回可能な外装構成部材の代わりに、例えばスライドドアの形式の摺動可能な外装構成部材も使用され得る。
【0020】
装備位置では、ノズル交換器は外装構成部材の内側(「ロッカー」内)で、防護エンクロージャの、周辺環境空間に面した側に収容されており、加工プロセスがノズル交換器に影響を及ぼすことはない。ノズル交換器は、主要時間の間、すなわち加工運転の間、例えばレーザカットの間、ロッカー扉の開口を介して装備され得る。この場合、ノズル交換のためにノズル交換器は、典型的には自動制御されて防護エンクロージャを通り、作業空間内へ移動する。
【0021】
外装構成部材に対して択一的または付加的に、加工機械は、装備位置を、閉鎖位置において作業空間周辺環境から隔離するためもしくは開放位置において作業空間周辺環境とつなぐために、やはり第1の位置と第2の位置との間で移動可能なカバーを有していてもよい。加工機械が上述した外装構成部材を有している場合、カバーは、典型的には外装構成部材により包囲される空間内に配置されている。この場合、カバーは典型的には、ノズル交換器の上面に配置されたノズル収容部への介入を可能にする、ロッカー形式の機械部分に設けられた開口、例えばロッカー形式の機械部分に設けられたボックスの開口を覆うために用いられる。
【0022】
第1の閉鎖位置では、カバーは、開口をカバーするためひいてはノズル交換器内に配置されたノズルを汚れから保護するために用いられる。さらにカバーは、ノズル交換器の走行移動中のユーザの介入およびこれによる例えば手の挟み込みを防止するために用いられてよい。カバーは、上面にノズル交換器のノズル収容部が収容されている基体を、第1の位置では例えば上方から覆っている。カバーは、例えば旋回運動または直線運動において第1の位置から第2の位置へ、かつその逆に動かされるスライダまたはフラップの形式で形成されていてよい。カバーは、ノズル交換器にノズルを装備するためだけに手動で開ける必要があり、さもなければ閉鎖位置に留まっていてよい。
【0023】
1つの改良では、加工機械は、外装構成部材および/またはカバーの第1および/または第2の位置を検出するセンサ装置を有している。センサ装置は、例えば状態「閉」を検出するように、すなわち第1の閉鎖位置を検出するように形成された安全スイッチ(コンタクトスイッチ)により形成されていてよい。場合によりセンサ装置は、例えばセンサ装置が第1の位置からの移動を検出する光学センサ、例えばライトバリアの形式で形成されている場合には、第2の状態もしくは第1の位置から第2の位置への移行を検出するように形成されていてもよい。
【0024】
1つの別の改良では、加工機械は、より厳密に言うと加工機械の制御装置は、外装構成部材および/またはカバーが第2の(開放)位置にあるときには、ノズル交換位置から装備位置へのかつ逆方向でのノズル交換器の(自動化された)移動を防止するように形成されている。このために制御装置は、センサ装置に接続していてよくかつ第1の位置からの離脱が検出される場合には、ノズル交換器の移動用に用いられる駆動装置に作用してよい。第1の位置からの離脱時に、ノズル交換器が装備位置とノズル交換位置との間を移動させられる場合には、この移動を場合により停止させることができるようになっている。このようにして、作業員がノズル交換器に手で介入しようとした際に、例えば防護エンクロージャの構成部材と移動中のノズル交換器との間に指を挟まれたために負傷することを、防ぐことができるようになっている。
【0025】
1つの別の改良では、加工機械は、ノズル交換器が装備位置に配置されていないときに第1の閉鎖位置において外装構成部材および/またはカバーをロックするためのロック装置を有している。ロック装置は、例えばノズル交換器が装備位置に位置していない場合に外装構成部材および/またはカバーを第1の位置においてロックする、機械的な閂を有していてよい。ノズル交換器が装備位置に位置している場合にのみ、ロックが解除され、外装構成部材もしくはカバーを第2の位置へ動かすことができるようになっている。
【0026】
1つの別の実施形態では、加工機械は追加的に、ノズル保管用のノズルマガジンを有しており、ノズルマガジンは、装備位置に位置するノズル交換器に隣接して配置されている。ノズルマガジンは、ワーク加工用には目下必要とされないノズルの保管に用いられ、ノズル交換器の事前装備のときに、作業員がこれらのノズルを取ることができるようになっている。ノズルマガジンは、埃が上方からノズル収容部内へもしくはノズルマガジン内に保管されたノズル内へ落下する確率を低下させるために、水平方向に対して傾けて方向付けられていてよい。ノズルマガジンは、例えば防護エンクロージャのロッカー形式の機械部分において、外装構成部材もしくはロッカー扉の背後の共通の挿入部もしくはボックス内に配置されていてよいが、ノズルマガジンは、ノズル交換器と共にまたは別個に、防護エンクロージャから引出し可能な引出し状の構成部材内に配置されることも可能である。
【0027】
1つの別の実施形態では、ノズル交換器は、作業空間から作業空間周辺環境へのビームの出射を防止する少なくとも1つの遮蔽部材を有している、またはノズル交換器は、この遮蔽部材に取外し可能に結合されている。上述したように、ノズル交換器をノズル交換位置から装備位置へかつその逆に移動させるために、防護エンクロージャには開口が設けられている。よってノズル交換器は、加工機械のビーム保護・安全構想上の構成部材を成すものである。それというのも、ノズル交換器が装備位置に配置されているときに開かれた引出し状の構成部材もしくはロッカー形式の機械部分において、加工機械の作業空間から極度に多量のビームが出射する恐れはない、ということが保証されていなければならないからである。ノズル交換器用の休止位置が設けられている場合には、ノズル交換器が休止位置に配置されているときに作業空間から出射することのできるビームは、最大でも許容限界値を超えてはいないことも保証されねばならない。
【0028】
このことは例えば遮蔽部材により、ノズル交換器がこれに沿って直線移動するノズル交換器の移動方向に対して横方向の、ノズル交換器の一方の端面に取り付けられた、例えば遮蔽板もしくはビーム保護板の形式で保証され得る。ノズル交換器に設けられた(側面の)遮蔽部材は、プロセス箇所からの散乱ビームが許容不能には、防護エンクロージャにより仕切られた作業空間から外部へ到達しない程度の大きさに形成されている。このためには例えば、散乱ビームのビーム経路が、プロセス箇所と防護エンクロージャの開口との間で、つまり防護エンクロージャが開かれた状態におけるノズル交換器のあらゆる位置において、遮蔽部材により完全にまたは大部分を覆われてもしくは中断されてよい。
【0029】
ノズル交換器の休止位置にケーシングが配置されている場合、ノズル交換器は一方ではケーシングもしくは休止位置から自動的にノズル交換位置ひいては作業空間内へ移動することができ、かつ他方ではノズル交換器はケーシングから外側に向かって作業空間周辺環境へ手動で引っ張られてよい。ノズル交換器の遮蔽部材は、休止位置および装備位置においてケーシングがノズル交換器の遮蔽部材により少なくとも、ビーム保護が保証されている程度に閉鎖されるように、寸法設定されている。この場合、休止位置から装備位置へノズル交換器が移動する際に、遮蔽部材は、ケーシングの開口を閉鎖するために、ノズル交換器から分離されてよい。ノズル交換器が休止位置からノズル交換位置へ移動する際には、遮蔽部材は典型的にはノズル交換器と運動結合されている、すなわち、遮蔽部材はノズル交換器と共に移動する。遮蔽部材は特に、上述した第2の引出し状の構成部材のフロント面もしくは正面であってよい。
【0030】
1つの別の実施形態では、加工機械は追加的に、ノズル交換位置から休止位置へまたはノズル交換位置から装備位置へ、かつその逆にノズル交換器を移動させるための駆動装置を有している。各位置間でのノズル交換器の移動は、典型的には直線移動である。駆動装置を制御するためには、上述した制御装置を用いることができる。ノズル交換器を自動制御式に移動させるための駆動装置としては、例えば少なくとも1つの空圧シリンダが用いられてよい。空圧シリンダは、典型的には固定のノズル交換位置と固定の休止位置もしくは固定のノズル交換位置と固定の装備位置に対応する2つの終端位置の間でのみ、制御されて移動可能である。択一的に、数値制御式の軸(NC軸)もしくはリニア駆動装置がノズル交換器の位置決め用に用いられてもよい。この場合はノズル交換位置と休止位置もしくは引渡し位置との間で任意の中間位置に到達可能であり、これにより、加工ヘッドは場合により、ノズル交換器の各ノズル収容部に個別に向かわずに済む。それというのも、ノズル交換器の制御式の移動に基づき、作業空間内でのノズル交換位置の場所を適切に適合させることができるようになっているからである。
【0031】
1つの別の実施形態では、加工機械は追加的に、ノズル交換器が休止位置または装備位置に配置されている場合に加工ヘッドに取り付けられたノズルをクリーニングするための、作業空間内または遮蔽部材に位置固定されて配置されたブラシ部材を有している。位置固定されて配置されたブラシ部材により、ノズルクリーニングはノズル交換器の能動的な走行移動無しで持続的に可能であり、これにより、生産性が向上されることになる。汚れたノズルをブラッシングする際に、付着しているスラグや埃が剥離して、あらゆる方向に広がる。ノズル交換器を汚れから保護するために、ノズル交換器は、典型的にはブラシ部材によるノズルのクリーニング前に、ノズル交換位置から装備位置または休止位置へ移動させられる。休止位置にケーシングが配置されている場合には、ブラシ部材はノズル交換器または場合によりノズル交換器に取り外し可能に結合された遮蔽部材に取り付けられて、ノズル交換器または遮蔽部材と共に移動させられてよい。それというのも、ノズル交換器はクリーニング時にはケーシングにより汚れから保護されているからである。ノズル交換器が、ブラッシング時にはブラシ部材の直ぐ近くには配置されていないもしくはケーシング内に配置されていることにより、ノズル交換器は、移動に必要な機構と共に保護されている。これは特に、汚れに敏感なノズル検査コンポーネントならびに個々のノズル収容部に関して有利である。またこのようにして、場合により存在する、ノズル交換器に取り付けられた較正プレートも清潔に保たれると共に、長いクリーニング間隔もしくは保守整備間隔を有していてよい。
【0032】
1つの別の実施形態では、加工機械は、ノズル交換器のノズル交換位置において加工ヘッドに対しノズル収容部に収容されたノズルの取付けおよび/または取外しを行うために、少なくとも1つのノズル収容部の回転運動を生ぜしめる、回転駆動装置を有している。冒頭で引用した欧州特許第2589458号明細書に記載されているように、ノズルは回転運動により加工ヘッドに対してねじ式に着脱され得る。駆動装置は、例えば歯付きベルトまたは歯車を介して各ノズル収容部の歯付きワッシャに結合されたモータとして形成されていてよい。加工ヘッドに差込み結合部を介して取り付けられるノズルに関しては、(回転)駆動装置を省くことができる。
【0033】
ノズル交換器は、加工機械へ取り付ける際に、予め位置調整されてよい。加工機械に取り付ける際には、シリンダピンおよび加工面により正しい位置が保証され得るようになっており、追加的な位置調整または調節が必要とされることはない。
【0034】
本発明の別の利点は、説明および図面から明らかである。引き続き説明する上述の各特徴もやはりそれ自体で、または複数が任意に組み合わされて使用され得る。図示して説明する各実施形態は、最終的な列挙を意味するものではなく、むしろ本発明を説明するための特徴例を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】レーザ防護室の形式の防護エンクロージャを備えたレーザ加工機の1つの実施例を示す概略図である。
図2図2aは、防護エンクロージャの外部の装備位置におけるノズル交換器を示す図であり、図2bは、図1に示した防護エンクロージャの内部の作業空間内のノズル交換位置におけるノズル交換器を示す図である。
図3図2a、図2bに示したノズル交換器を、加工ヘッドに取り付けられたノズルを取り外す際のノズル交換位置で示す図である。
図4図4a〜図4cは、防護エンクロージャの内部のノズル交換位置および休止位置ならびに防護エンクロージャの外部の装備位置におけるノズル交換器を示す図である。
図5図5a〜図5cは、第1および第2の引出し状の構成部材を備えた、図4a〜図4cに示したものと同様のノズル交換器を示す概略図である。
【0036】
以下の図面の説明では、同じもしくは機能が同じ構成部材には同一の符号を使用する。
【0037】
図1には、レーザ加工機1の形態の加工機械の1つの構成例が概略的に簡略化されて示されており、レーザ加工機1は、レーザ防護室の形態の防護エンクロージャ2を有している。レーザ加工機1は、レーザ加工、例えばワーク支持部4に支持されたワーク3のレーザカットに用いられる。レーザ加工機1は、切断加工用にレーザビーム6をワーク3に対して位置調整するレーザ加工ヘッド7の移動用の移動装置5を有している。防護エンクロージャ2は、防護エンクロージャ2の内部に形成された作業空間8を、防護エンクロージャ2の外部の作業空間周辺環境9から仕切っている。防護エンクロージャ2は、レーザビーム6によるワーク3の加工時に生じる散乱ビームが作業空間周辺環境9に達することを防ぐために、耐レーザ壁を有している。作業空間周辺環境9の遮蔽は、加工時に生じる散乱ビームにより作業員10が傷付けられることを防ぐために、労働保護上の理由から必要とされている。
【0038】
レーザビーム6によりワーク3を加工するために、レーザ加工ヘッド7はノズル11を有しており、ノズル11を通って切断ガス流がワーク3に向かって流れるようになっている。ノズル11は、ワーク3の加工時に例えばスラグにより損傷される恐れのある摩耗部品であり、ノズル11は、場合によっては新しいノズル11に交換する必要がある。また、切断されるべきワークもしくは各切断プロセスに応じて、異なるタイプのノズルが必要になる。
【0039】
図2a、図2bにはそれぞれ、加工ヘッド7に対するノズル11の着脱に用いられるノズル交換器12を備えた防護エンクロージャ2の詳細が示されている。ノズル交換器12は複数のノズル収容部13を有しており、冒頭で引用した欧州特許第2589458号明細書に記載されているように、ノズル収容部13には各1つのまたは場合によっては複数のノズル11が収容され得る。ノズル収容部13は、ノズル交換器12の基体14もしくは保管装置内に配置されており、加工ヘッド7は基体14の上側からアプローチすることができるようになっている。
【0040】
図2bは、防護エンクロージャ2の内部のノズル交換位置WPにおけるノズル交換器12を示し、図2aは、防護エンクロージャ2の外部の装備位置RPにおけるノズル交換器12を示している。ノズル交換位置WPと装備位置RPとの間でノズル交換器12の移動を制御するために、レーザ加工機1は制御装置15を有している(図1参照)。ノズル交換位置WPから装備位置RPへの、ノズル交換器12の図示の例では直線的な移動および該移動とは逆方向の移動に際して、ノズル交換器12は、防護エンクロージャ2のレーザ防護壁に設けられた開口を通って移動させられる。
【0041】
図2aにおいて認められるように、装備位置RPは、防護エンクロージャ2の、周辺環境空間9側の面に取り付けられた、ロッカー形式の機械部分16内に配置されている。防護エンクロージャ2のレーザ防護壁を越えて外側に突出したロッカー形式の機械部分16内にはボックス17が取り付けられており、ボックス17内にはノズル交換器12が装備位置RPで収容されている。ノズル交換器12には、より厳密に言うとノズル収容部13を備えた基体14の上面には、装備位置RPにおいて、上方からアプローチすることができるようになっており、作業員10は、ノズル収容部13およびそこに保管されたノズル11をつかむことができる。ロッカー形式の機械部分16内には、ノズル11の保管に用いられるノズルマガジン18も配置されており、ノズル11は作業員10により、ノズル交換器12のノズル収容部13内に収容されたノズル11に交換され得る。ノズルマガジン18は、装備位置RPに隣接して配置されていると共に、水平方向に対して傾けられており、これにより、埃が上方から、ノズルマガジン18内に保管されたノズル11内へ落下することを防いでいる。
【0042】
同様に図2aにおいて認められるように、防護エンクロージャ2には、より厳密に言うと防護エンクロージャ2の、作業空間周辺環境9側の面には、外装構成部材19がロッカー扉の形式で取り付けられており、外装構成部材19は、ロッカー形式の機械部分16ひいては装備位置RPに作業空間周辺環境9からアプローチ可能な、図2a、図2bに示した第2の開放位置S2と、装備位置RPに作業空間周辺環境9からはもしくは作業空間周辺環境9にいる作業員10がアプローチ不可能な、図示しない第1の閉鎖位置S1との間で移動可能である。
【0043】
同様に図2a、図2bにおいて認められるように、ロッカー形式の機械部分16には、カバー20がフラップの形式で取り付けられており、カバー20は、装備位置RPに、より厳密に言うとノズル交換器12に、ボックス17の上面に形成された開口を介してアプローチ可能な図2aに示す第2の位置S2と、ボックス17の開口がカバー20により覆われ、これによりノズル交換器12の装備位置RPがカバー20により作業空間周辺環境9から隔離されている、図2bに示す第1の位置S1との間で移動可能である。
【0044】
図2aにおいて認められるように、レーザ加工機1は、第1のスイッチ部品21aと第2のスイッチ部品21bとから成るコンタクトスイッチ21a,21bの形態のセンサ装置を有している。第1のスイッチ部品21aは、ボックス17の開口の側方に取り付けられており、第2のスイッチ部品21bは、カバー20の下面に取り付けられている。両スイッチ部品21a,21bは、図2bに示したカバー20の閉鎖位置S1では互いに接触し合っており、コンタクトスイッチ21a,21bにより検出され制御装置15に伝達される、例えば機械式、電気式または誘導式の接触を生ぜしめる。カバー20が第1の位置S1から離れると直ちに、即ち特に図2aに示したカバー20の第2の位置S2においては、制御装置15が、装備位置RPからノズル交換位置WPへのノズル交換器12の移動およびその逆方向でのノズル交換器12の移動を阻止するか、または停止させる。
【0045】
図2aおよび図2bに示した例では、レーザ加工機1は、カバー20を第1の位置S1においてロックするためのロック装置22(図2a参照)を有しており、ロック装置22は、図示の例では第1のスイッチ部品21aに隣接して配置されている。ロック装置22は、ノズル交換器12が装備位置RPに位置していない場合に、制御装置15により作動させられる。例えばピン等の形式の機械的な閂(図示せず)を有するロック装置22は、カバー20に設けられた対応する開口に係合し、これによりロック装置22が作動した状態では、作業員10がカバー20を持ち上げることはできないようになっている。ロック装置22により、ノズル交換器12の移動中に作業員10がボックス17に形成された開口内に介入して、その際に場合により負傷することを防ぐことができる。図2aおよび図2bに示した、旋回可能なフラップの形式のカバー20の代わりに、例えば、第1の位置S1と第2の位置S2との間で摺動可能なスライダが使用されてもよい。
【0046】
ロック装置22は、コンタクトスイッチ21a,21bの接触が失われた際にノズル交換器12の移動が自動的に阻止されるもしくは停止させられる場合には、必ずしも必要とされないが、ロック装置22は付加的に、機械1の安全性を高める。択一的にロック装置22は、純粋に機械的に、かつ制御装置15による制御無しで構成されていてもよい。ロック装置22は、例えばばねにより予荷重を加えられていてよく、この場合、この予荷重は、ノズル交換器12が装備位置RPに位置決めされているときに、ノズル交換器12の駆動軸の力により克服される。
【0047】
図2aおよび図2bにおける図示とは異なり、ロック装置22はレーザ加工機1内に設けられていてもよく、このロック装置22は外装構成部材19を第1の位置S1においてロックし、これにより、ノズル交換器12が装備位置RPに位置していないときには、防護エンクロージャ2のロッカー形式の機械部分16に作業員10がアプローチすることはできないようになっている。この場合は図2aおよび図2bに示したカバー20を、場合により省くことができる。
【0048】
図2aにおいて同様に認められるブラシ部材23(ブラシセグメント)は、レーザ加工ヘッド7に取り付けられたノズル11のクリーニングに用いられる。クリーニングのために、ノズル11を備えたレーザ加工ヘッド7がブラシ部材23上で移動させられ、これにより、付着しているスラグや埃がブラシによって取り除かれる。ブラシ部材23は、ノズル交換位置WPに隣接して取り付けられており、典型的にはノズル交換器12が装備位置RPに位置しているときにのみ、ノズル11をクリーニングするために使用される。このようにして、ノズル交換器12、特にノズル収容部13ならびにノズル交換器12の機構、例えばそこに設けられた較正プレートを、汚れから保護することができるようになっている。
【0049】
図3には、ノズル交換位置WPにおけるノズル交換器12が示されており、ノズル交換位置WPでは、レーザ加工ヘッド7に取り付けられたノズル11をノズル収容部13に収容するためもしくはノズル11をレーザ加工ヘッド7から取り外すために、レーザ加工ヘッド7が、ノズル交換器12の基体14の上に位置決めされている。ノズル11は、図示の例ではねじ山を備えており、例えば前掲の欧州特許第2589458号明細書により正確に記載されているように、基体14においてノズル収容部13の下側に取り付けられた回転駆動装置24により、ノズル11の中心軸線を中心として回転運動させることができるようになっている。
【0050】
ノズル交換位置WPから装備位置RPへ、かつその逆にノズル交換器12を移動させるために、ノズル交換器12は、リニアガイド25に支持されておりかつ図示の例では空圧シリンダとして形成された駆動装置26により、リニアガイド25に沿って摺動させられてよい。空圧シリンダの形態の駆動装置26の代わりに、ノズル交換器12をリニアガイド25に沿った任意の位置に位置決めすることを可能にする別の駆動装置、例えば制御式のリニア駆動装置もしくはNC軸を使用してもよい。この場合はその都度所望されたノズル収容部13をレーザ加工ヘッド7の下に位置決めするために、場合により、リニアガイド25に沿ったノズル交換位置が(僅かに)変更されてもよい。このようにして、レーザ加工ヘッド7は場合により、リニアガイド25に沿って1つの位置にだけ向かえば済む、すなわち、ノズル交換のために加工ヘッド7をリニアガイド25に沿って異なる複数の位置へ移動させることは必要ない。ノズル交換器12は直線移動の代わりに、場合により回転運動および/または旋回運動により、ノズル交換位置WPから装備位置RPへかつその逆に移動させられてよい。
【0051】
図3において同様に認められるように、ノズル交換器12は遮蔽板の形態の遮蔽部材27を有しており、遮蔽部材27は、ノズル交換器12の端面に取り付けられていて、ノズル交換器12の、ノズル交換位置WPから装備位置RPへの移動時に、このために防護エンクロージャ2に形成された開口において、プロセス箇所からの散乱ビームを遮蔽し、すなわち開口を通過する散乱ビームの経路を中断し、これにより、許容量を超える散乱ビームが作業空間8から作業空間周辺環境9へ到達する恐れはなくなっている。
【0052】
図4a〜図4cには、図2a、図2bおよび図3に示したレーザ加工機1とは異なるレーザ加工機1の防護エンクロージャ2の詳細が示されている。図4aおよび図4bでは、側壁の背後に位置するノズル交換器12を見ることができるようにするために、防護エンクロージャ2の一方の側壁は図示されていない。
【0053】
ノズル交換器12は、図4aではノズル交換位置WPに位置しており、図4bでは防護エンクロージャ2内の休止位置HPに位置しており、かつ図4cでは防護エンクロージャ2の外側の装備位置RPに位置している。図2aおよび図2bに示した例のように、ノズル交換器12は、ノズル交換位置WPと休止位置HPとの間で駆動装置(図4a〜図4cには図示せず)により自動的に、軸線Xに沿って摺動させることができる。この場合、ノズル交換器12は、ノズル交換器12と共に軸線Xに沿って移動させられる、第2の引出し状の構成部材28b内に収容されている。図4bにおいて認められるように、ノズル交換器12は、休止位置HPではケーシング29内に収容されており、ケーシング29は、ノズル交換器12を、より厳密に言うとノズル収容部13が取り付けられているノズル交換器12の上面を覆いかつ休止位置HPにおいて作業空間8からの埃やスラグから保護する、ケーシング蓋を有している。ノズル交換器12もしくは第2の引出し状の構成部材28bは、その端面に、ノズル交換器12と結合可能でかつ第2の引出し状の構成部材28bと共に軸線Xに沿って走行可能な、取外し可能なフロント面を有している。このフロント面は、遮蔽部材27として用いられ、かつノズル交換器12が休止位置HPに配置された場合と、装備位置RPに配置された場合の両方において、ケーシング29を閉鎖しており、それによって、ビーム保護が保証されると共に許容不能な量の散乱ビームが作業空間周辺環境9に到達しないようになっている。第2の引出し状の構成部材28bは、ケーシング29内の休止位置HPでは第1の引出し状の構成部材28a内に収容されており、第1の引出し状の構成部材28aは、防護エンクロージャ2から装備位置RPへ引き出すことができる。この場合、遮蔽部材27は第2の引出し状の構成部材28bから切り離され、ケーシング29を閉鎖する位置に留まる。
【0054】
図4cにおいて認められるように、第1の引出し状の構成部材28a内に収容されたノズル交換器12は、装備位置RPでは防護エンクロージャ2から引き出された状態にあり、これにより、作業員10が作業空間周辺環境9においてノズル交換器12にノズル11を装備することができるようになっている。ノズル交換器12は、作業員10により手動で休止位置HPから装備位置RPへかつその逆に移動させられてよい。これを可能にするために、第1の引出し状の構成部材28aには、より厳密に言うと休止位置HPおよびノズル交換位置WPにおいて防護エンクロージャ2の外壁の一部を形成する、引出し状の構成部材28aのフロント面31には、作業員10用のグリップ30が設けられている。引出し状の構成部材28aの、防護エンクロージャ2からの引出しは、ノズル交換器12が第1の引出し状の構成部材28a内に配置されているときにのみ可能であり、このことは図2aおよび図2bについて説明したように、同様にコンタクトスイッチおよび/またはロックにより保証され得る。
【0055】
図4aおよび図4bにおいて同様に認められるように、遮蔽部材27を形成するノズル交換器12のフロント面には、ブラシ部材23が取り付けられており、ブラシ部材23も遮蔽部材27と同様に、ノズル交換器12が休止位置HPからノズル交換位置WPへかつその逆に移動させられるときに、ノズル交換器12と共に移動させられる。図2aおよび図2bに示した例の場合と同様に、ブラシ部材23は、ノズル交換器12が休止位置HPに位置しているときに、加工ヘッド7に取り付けられたノズル11をクリーニングするために用いられる。図4a〜図4cに示した例では、休止位置HPにおけるノズル交換器12は、ケーシング29により、クリーニング時に生じるスラグや埃から保護されている。
【0056】
図5a〜図5cにおいても良好に認められる引出し状の構成部材28a,28bの配置は、ノズル交換器12を図4a〜図4cと同様に、ノズル交換位置WP、休止位置HPならびに装備位置RPにおいて概略的に示すものである。休止位置HPにおける2つの引出し状の構成部材28a,28bの配置は逆にすることもできる。すなわち、第1の引出し状の構成部材28aが、第2の引出し状の構成部材28b内に収容もしくは配置されているようにも選択され得ることは自明である。
【0057】
上述したレーザ加工機1では、レーザ加工機1において別のプロセス、例えば作業空間8内でのレーザビーム6によるワーク3の加工または加工されるべきワーク3の交換が行われている間に、作業員10がアプローチすることのできる、防護エンクロージャ2の外部の装備位置RPへノズル交換器12を移動させ、ノズル収容部13に適宜に装備することにより、ノズル11の事前装備を行うことができる。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c