【文献】
Y. Guanyu et al.,Automatic coronary calcium scoring using noncontrast and contrast CT images ,Med. Phys.,2016年 4月 5日,43(5),2175-2186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
放射線心臓血管検査では、カルシウム含有量を特定することは、例えば冠動脈カルシウムスコアを特定するために特に有用である。このようなカルシウムスコアは、心筋に供給する動脈壁内に存在するカルシウム量を特定するために、例えば推定するために、及び/又は定量化するために当技術分野において知られた測定値である。このカルシウム量は、動脈壁の硬化と相関し、例えば動脈硬化性血管疾患、例えば特に粥状硬化を示す。粥状硬化では、粥種の結節性蓄積、コレステロールの結晶沈着、及び、特に、より進行した病巣の外側基底部における石灰化を含むプラークが動脈壁上に形成される。粥状硬化状態がさらに進行を許されると、壁に付着した蓄積された物質が突然解放されて、心筋に供給する冠動脈を閉塞し得る管腔内血栓を形成することにより、心筋梗塞をもたらすか、又は血栓塞栓症を形成し得る。粥状硬化は慢性的であるが、何十年にもわたって無症状である場合がある。
【0003】
従って、冠動脈カルシウムスコアは、他の診断上の変数、患者病歴及び他の関連医療パラメータと併せて、将来における、例えば数年から約10年の期間にわたる心臓発作又は心発作のリスクを評価するための重要な指標となる変数を表す。冠動脈壁内のカルシウムは冠動脈疾患(CAD)のマーカーなので、心臓CTスキャンにおいて検出された、及びカルシウムスコアにより定量化されたカルシウム量は、役立つ予後ツールを形成する。高いスコアの患者は深刻な有害心臓事象のリスクがより高くなるので、カルシウムスコアリングは早期のリスク層別化を可能にする。とはいえ、高いカルシウムスコアは、個人が将来的に深刻な有害心臓事象、例えば心臓発作を患うことを意味するわけではなく、低いカルシウムスコアは、個人がこのような事象を患わないことを意味するわけではなく、例えばカルシウムスコアは、健康に関係する確率を表す定量化可能なパラメータにすぎない。冠動脈カルシウム量を定量化する、例えば推定するカルシウムスコアは、冠動脈粥状硬化の重要なマーカーであるが、血管の狭窄、例えば狭窄の程度を反映するとは限らない。
【0004】
非強調低線量コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを使用したカルシウムスコアリングにより冠動脈石灰化の程度を推定することが当技術分野において知られている。このような非強調低線量CTスキャンは、心臓CTを受ける患者において、特にこの目的のために日常的に実施される専用のCTスキャンである。本説明では概して患者を対象として言及がなされるが、スクリーニング検査を構成するか、又はスクリーニング検査の一部を形成するCTスキャンを実施することにより、カルシウムスコアリングのためのCT画像、例えばボリュメトリック画像が取得されることが当業者により理解される。従って、本説明において「患者」を対象として言及がなされ得るが、このような患者は、疾病の何らかの兆候又は症状を示すとは限らず、医学的疾病が見つかるか否か、又は、重篤な疾病を患う相当な確率が存在するか否かを判定するために、情報が集められる対象となる健康な人を同様に指すことが理解される。
【0005】
複数のアキシャルスキャン又は螺旋スキャンによりボリュメトリック画像が獲得されるECGトリガリング又は遡及的ゲーティングを使用して、息止め状態で、カルシウムスコアリングのためにCT撮像を実施することが当技術分野において知られている。さらに、残存する呼吸又は心臓の運動が、例えば画像の不鮮明さに起因して、知られた技術により獲得されたこのようなボリュメトリック画像に由来するカルシウムスコアを劣化させる。
【0006】
カルシウムの減衰、例えば線減衰係数又は放射線濃度は、X線スペクトルに、及びCT検出システムの特性に依存し、従って、カルシウムを含有する撮像されたボリュームの、例えばハウンズフィールド単位で校正されたCTピクセル又はボクセル値は、放射源及びディテクターの性質にも依存する。従って、カルシウムスコアは、半定量的尺度とみなされ、すなわち、使用される撮像システム及びモダリティに本質的に結び付けられる。
【0007】
米国特許出願US2012/0076377は、血管狭窄の可視化及び定量化を提供するデュアルエネルギーCTスペクトル撮像のためのシステム及び方法を開示する。データ獲得システムは、第1のクロマティックエネルギーレベルにおける関心領域に対する第1のCT画像データセットを取得し、第2のクロマティックエネルギーレベルにおける関心領域に対する第2のCT画像データセットを取得するようにプログラムされる。第2のCT画像データセットを分析することにより、関心領域内でプラーク物質が識別される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CTデータからカルシウム含有量を特定する、例えば計算する、及び/又は推定するための、良好な、効果的な、及び/又は堅牢な方法及び手段を提供することが、本発明の実施形態の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、本発明による方法及びデバイスにより実現される。
【0010】
低線量CTスキャンプロトコルにより獲得されたCT画像に基づいて冠動脈石灰化が定量化され得ることが、本発明の実施形態の利点である。造影剤が患者に注入されることを必要としないCTスキャンプロトコルにより獲得されたCT画像に基づいて、冠動脈石灰化が定量化され得ることが、本発明の実施形態の利点である。低線量及び/又は非強調CTスキャンプロトコルに基づくこのような定量化は、医療スクリーニング用途に特に適することが、本発明の実施形態のさらなる利点である。
【0011】
定量的カルシウム含有量を計算するための堅牢な、及び/又は運動に影響されない方法、並びに対応する手段が提供されることが、本発明の実施形態の利点である。
【0012】
例えばカルシウムスコアリングのために特に適応された専用の撮像プロトコルを必要とせずに、例えば標準的な心臓スペクトルCTスキャンにおいて、遡及的に実施され得ることが本発明の実施形態による方法の利点である。
【0013】
運動アーチファクトを修正、補償、防止、又は低減するために心電図トリガリング又は遡及的ゲーティング技術を必要としない、例えば複数のアキシャルスキャン又は螺旋スキャンを含むボリュメトリックCT撮像プロトコルにおいて獲得された画像から定量的カルシウムスコアが取得され得ることが、本発明の実施形態のさらなる利点である。
【0014】
画像の不鮮明さ、例えば残存する呼吸及び/又は心臓の運動によりもたらされる不鮮明さに起因した情報の質の大幅な劣化に対して堅牢であり、例えば情報の質の大幅な劣化を受けない定量的カルシウムスコアが取得され得ることが、本発明の実施形態のさらなる利点である。
【0015】
校正されたCTボクセル値、例えばハウンズフィールド単位により表されるように、観測されたカルシウムの減衰が、画像を獲得するために使用されるCTスキャンシステムのx線スペクトル及びディテクター特性に依存するのに対し、本発明の実施形態によるデバイス又は方法により特定されるカルシウム含有量はこのような差に影響されないようにすることができ、例えばカルシウム含有量の再構成可能で完全に定量的な測定値を提供し得ることが、本発明の実施形態の利点である。
【0016】
第1の態様において、本発明は、カルシウム含有量を特定するための、例えば心臓スペクトルCTデータを分析することによりカルシウムスコアを特定するための画像データ処理デバイスに関する。画像データ処理デバイスは、スペクトルCTスキャンユニットを使用して対象者の心臓領域をスキャンすることにより取得されたスペクトルCT投影データを受信するためのデータ入力と、スペクトルCT投影データにマテリアル分解アルゴリズムを適用して、例えばスペクトルCT投影データのカルシウムに特有なコンポーネントを提供するためのモデル化ユニットと、スペクトルCT投影データを再構成して例えば心臓領域の第1の3D画像を提供するため、及び、スペクトルCT投影データのカルシウムに特有なコンポーネントを再構成して例えば心臓領域内のカルシウム含有量を表す第2の3D画像を提供するための、断層再構成ユニットとを備える。
【0017】
本デバイスは、第1の3D画像をセグメント分けして、例えば心臓領域内の関心のある心臓血管構造物に対応した画像マスクを提供するためのセグメント分けユニットと、画像マスクに基づいて第2の3D画像の一部を選択するための選択ユニットと、第2の3D画像の選択された一部に基づいて、関心のある心臓血管構造物内のカルシウム含有量を計算するための演算ユニットとをさらに備える。
【0018】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、セグメント分けユニットは、心臓領域内の冠動脈又は冠動脈の一部に対応した画像マスクを提供するように適応される。
【0019】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、選択ユニットは、関心のある心臓血管構造物、例えば冠動脈又は冠動脈の一部を形成する第2の3D画像のボクセルの第1の集合を選択するように適応される。このようなデバイスにおいて、演算ユニットは、選択されたボクセルにより表されるカルシウム量を積分して、例えば関心のある心臓血管構造物内のカルシウム含有量を計算するように適応される。
【0020】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、選択ユニットは、関心のある心臓血管構造物を形成するボクセルの補集合、例えばボクセルの第1の集合の補集合である第2の3D画像のボクセルの第2の集合を選択するように適応される。
【0021】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスは、ボクセルの第2の集合を投影して、スペクトルCT投影データと同じ投影に対応したシミュレーションされた投影データを生成するための順投影ユニットをさらに備える。演算ユニットは、例えば特に関心のある心臓血管構造物内のカルシウムに特有な減衰を表す減算された投影データを取得するために、スペクトルCT投影データのカルシウムに特有なコンポーネントからシミュレーションされた投影データを減算するためにさらに適応される。
【0022】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、演算ユニットは、複数のカルシウム含有量測定値を計算するために、減算された投影データに含まれる各投影像により表されるカルシウム量を積分するように適応される。
【0023】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、演算ユニットは、各投影像により表されるカルシウム量の積分前に、減算された投影データを平行な形状に対応した投影像に再ビニングするように適応される。
【0024】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、演算ユニットは、複数のカルシウム含有量測定値の統計的な中心傾向の尺度を計算するように適応される。
【0025】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、演算ユニットは、複数のカルシウム含有量測定値の統計的散布度及び/又は統計的信頼区間の尺度を計算するように適応される。
【0026】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、モデル化ユニットは、スペクトルCT投影データを、カルシウムに特有なコンポーネント、及び、軟組織及び/又は水に特有な減衰を表す少なくとも第1のさらなるコンポーネントに区分するように適応される。
【0027】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、モデル化ユニットはスペクトルCT投影データを、カルシウムに特有なコンポーネント、第1のさらなるコンポーネント、及び所定の造影剤に特有な減衰を表す少なくとも第2のさらなるコンポーネントに区分するように適応される。
【0028】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイスにおいて、モデル化ユニットは、スペクトルCT投影データにより表される検出された光子カウント数に対する順モデルを実現し、最尤推定法を適用して、モデル化されたマテリアルごとに各投影経路に沿ったマテリアルの長さを特定するように適応され、モデル化されたマテリアルは少なくともカルシウムを含む。
【0029】
第2の態様において、本発明はさらに、本発明の第1の態様の実施形態による画像データ処理デバイスを備えるワークステーションに関する。
【0030】
第3の態様において、本発明は、さらに、本発明の第1の態様の実施形態による画像データ処理デバイスと、心臓領域をスキャンするときにスペクトルCT投影データを生成し、データ入力にこのスペクトルCT投影データを供給するためのスペクトルCTスキャンユニットと、を備える撮像システムに関する。
【0031】
本発明の実施形態による撮像システムにおいて、スペクトルCTスキャンユニットは、エネルギー分解光子カウント画像ディテクターを備える。
【0032】
第4の態様において、本発明は、さらに、心臓スペクトルCTデータを分析することによりカルシウム含有量を特定する方法に関する。本方法は、対象者のスキャンされた心臓領域に対応したスペクトルCT投影データを取得するステップと、スペクトルCT投影データにマテリアル分解アルゴリズムを適用して、例えばスペクトルCT投影データのカルシウムに特有なコンポーネントを提供するステップと、スペクトルCT投影データを再構成して、例えば心臓領域の第1の3D画像を提供するステップと、スペクトルCT投影データのカルシウムに特有なコンポーネントを再構成して、例えば心臓領域内のカルシウム含有量を表す第2の3D画像を提供するステップと、第1の3D画像をセグメント分けして、例えば心臓領域内の関心のある心臓血管構造物に対応した画像マスクを提供するステップと、画像マスクに基づいて第2の3D画像の一部を選択するステップと、第2の3D画像の選択された一部に基づいて、関心のある心臓血管構造物内のカルシウム含有量を計算するステップとを有する。
【0033】
第5の態様において、本発明は、さらに、コンピュータにより実行されたときに、心臓スペクトルCTデータを分析することによりカルシウム含有量を計算するためのコンピュータ可読プログラムコードが内部に具現化されたコンピュータプログラム製品に関し、計算は、本発明の実施形態による方法のステップを実施することを含む。
【0034】
本発明の特定の好ましい態様が、付随する独立請求項及び従属請求項において提示される。従属請求項の特徴は、必要に応じて、及び特許請求の範囲において明示的に提示されたものに限らず、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わされてよい。
【0035】
本発明のこれらの態様及び他の態様が、以下で説明される実施形態から明らかとなり、以下で説明される実施形態を参照しながら説明される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面は、概略図にすぎず非限定的である。図面において、要素のうちのいくつかの寸法は誇張され、例示を目的として一定の縮尺で描かれていない。
【0038】
特許請求の範囲における参照符号はいずれも、範囲を限定すると解釈されない。
【0039】
異なる図面において、同じ参照符号が同じ又は類似の要素を表す。
【0040】
特定の実施形態に関連して、及び特定の図面を参照しながら本発明が説明されるが、本発明はそれに限定されず、請求項のみにより限定される。説明される図面は概略図にすぎず非限定的である。図面において要素のうちのいくつかの寸法は、例示を目的として誇張され、一定の縮尺では描かれていないことがある。寸法及び相対寸法は本発明の現実における実施状況に対応するわけではない。
【0041】
さらに、本説明における、及び特許請求の範囲における第1の、第2のなどの用語は、類似の要素を区別するために使用され、時間的に、空間的に、順番に、又は任意の他の手法で順序を説明するために使用されるとは限らない。そのように使用される用語が適切な状況において互いに置換可能であることと、本明細書において説明される本発明の実施形態は本明細書において説明又は例示される順序とは異なる他の順序での動作が可能であることとが理解される。
【0042】
さらに、本説明及び請求項における上部、下方などの用語は、説明目的で使用され、相対位置を説明するために使用されるとは限らない。そのように使用される用語が適切な状況において互いに置換可能であることと、本明細書において説明される本発明の実施形態が本明細書において説明又は例示される向きと異なる他の向きで実施することが可能であることとが理解される。
【0043】
特許請求の範囲において使用される「備える」という用語は、続いて列記される手段に限定されると解釈されてはならず、本用語は他の要素もステップも排除しないことに留意されたい。本用語は、従って、記載された特徴、整数、ステップ、又はコンポーネントの存在を言及されるとおりに指定すると解釈され、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、又はコンポーネント、又はそれらの群の存在又は追加を除外しない。従って、「手段AとBとを備えるデバイス」という表現の範囲は、コンポーネントAとBとのみからなるデバイスに限定されてはならない。本表現は、本発明に関連して、単にデバイスの関連するコンポーネントがA及びBであることを意味する。
【0044】
本明細書中での、「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」についての言及は、本実施形態との関連で説明される特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書中の様々な場所で使用する「一実施形態において(in one embodiment)」又は「一実施形態において(in an embodiment)」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態に関係するとは限らないが、同じ実施形態に関係してもよい。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が本開示から当業者に明らかなように、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な手法で組み合わされてよい。
【0045】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において本発明の様々な特徴が、本開示を簡略化することを目的として、及び様々な発明の態様のうちの1つ又は複数の理解に役立つように、単一の実施形態、図、又はその説明にまとめてグループ化される場合があることが理解されなければならない。しかし、この開示方法は、請求項に記載された発明が各請求項に明示的に記載されるより多くの特徴を必要とするという意図を反映するようには解釈されない。むしろ、後述の請求項が示すように、発明の態様は本明細書に開示される単一の実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴に内在する。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書においてこの詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項が本発明の別々の実施形態として独立している。
【0046】
さらに、本明細書において説明されるいくつかの実施形態が、他の実施形態に含まれる他の特徴ではないいくつかの特徴を含む一方で、当業者により理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせが本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することが意図される。例えば、後述の特許請求の範囲において、請求項に記載された実施形態のうちの任意の実施形態が、任意の組み合わせで使用され得る。
【0047】
本明細書に提供される説明において、多くの具体的な詳細事項が記載される。しかし、本発明の実施形態がこれらの特定の詳細事項なしで実施されることが理解される。他の例では、よく知られた方法、構造物、及び技術は、本説明の理解を妨げないために詳細には示されない。
【0048】
第1の態様において、本発明は、画像データ処理デバイスに関する。この画像データ処理デバイスは、診断像から定量的カルシウム測定値の形態で医療関連情報を生成するのに適する。
【0049】
図1は、本発明の実施形態による例示的な画像データ処理デバイス10を示す。データ処理デバイス10は、カルシウム含有量を特定するように、例えばカルシウムスコアを特定するために、例えばカルシウム量を測定することにより、又は、このようなカルシウム量を表す値を特定することにより、例えばカルシウムの質量又は体積などのカルシウム量を推定するように、及び/又は定量化するように適応される。
【0050】
データ処理デバイス10は、心臓スペクトルコンピュータ断層撮影(CT)データを分析することにより、スペクトルCTスキャンユニットにより獲得された、例えばスペクトルCTスキャナ、例えばスペクトル光子カウントCTスキャンユニットにより獲得された、例えば生データを、例えば特に投影像などの投影データを分析することにより、カルシウム含有量を特定するように適応される。例えば、本発明の実施形態によるデータ処理デバイス10は、スペクトルCT撮像、例えばスペクトル光子カウントCT撮像を使用してカルシウムを識別するために使用される。カルシウムの完全な定量的尺度が取得され得、例えばスキャンされた心臓領域内に存在するカルシウムの物理量にあいまいさを伴わずに直接的に結びついたカルシウムスコア値が特定され得ることが、本発明の実施形態の利点である。堅牢で、運動に影響されないカルシウムスコア値が、例えば投影領域において、スペクトル分解に基づいて特定され得ることが別の利点である。本発明の実施形態によるデータ処理デバイス10が例えば特定の心臓撮像プロトコルを必要とせずに、任意の心臓スペクトルCTスキャンにより獲得された投影データを分析するために使用され得ることが、さらに異なる別の利点である。データ処理デバイス10が、遡及的分析のために使用され得、例えば心臓スペクトルCTスキャンにおいて存在するカルシウム量を特定し得、この心臓スペクトルCTスキャンは、獲得された画像からこのようなカルシウム量を特定する目的で実施されたとは限らないことが別の利点である。言い換えると、日常的な心臓スペクトルCT検査において本発明の実施形態によるデバイスを使用するとき、特にカルシウム量が特定されることを可能にするための追加的な専用のCTスキャンが必要とされない。
【0051】
特に、データ処理デバイス10は、呼吸又は心臓の運動を補償するための息止め、心電図(ECG)トリガリング、又はゲーティング技術を必ずしも必要としない心臓スペクトルCT撮像プロトコルを実行しながら、スペクトルCTスキャンユニットにより獲得された心臓スペクトルコンピュータ断層撮影(CT)データを分析することにより、カルシウム含有量を特定するように適応される。
【0052】
画像データ処理デバイス10は、データ入力11を備え、例えばデータ通信ネットワーク接続部、データキャリア読み取り器、又は専用デバイスリンク、例えば適切なデータ源に、例えばスペクトルCTスキャンユニットに画像データ処理デバイスを接続するデータバス接続部などの入力手段を備える。データ入力11は、スペクトルCTスキャンユニットを使用して対象者の、例えば患者の心臓領域をスキャンすることにより取得されるスペクトルCT投影データ9を受信するように適応される。特に、投影データは、このようなスキャンユニットにより事前に獲得され、画像データ処理デバイス10により処理するためにデータ入力に、例えばネットワーク又はデータバス接続部を介して、又は物理的なデータキャリアを介して送信される。
【0053】
データ入力11は、非強調低線量心臓スペクトルCTスキャン、例えば非強調低線量心臓スペクトル光子カウントCTスキャンに対応したスペクトルCT投影データ9を受信するように適応される。従って、画像データ処理デバイス及びそのコンポーネントは、このような非強調低線量データを処理するように適応される。非強調低線量CTスキャンは、心臓CTを受ける患者に日常的に実施されるので、実施形態によるデバイスは、このような日常的に利用可能なデータを使用してカルシウム含有量の堅牢で正確な尺度を特定し得る。
【0054】
データ入力11は、心電図(ECG)トリガリング、遡及的ゲーティング、又は同様の動き補償技術を使用せずに獲得された、非ゲーティング及び/又は非運動修正心臓スペクトルCTスキャン、例えば心臓スペクトル光子カウントCTスキャンに対応したスペクトルCT投影データ9を受信するように適応される。従って、画像データ処理デバイス及びそのコンポーネントは、このような非ゲーティング及び/又は非運動修正データを処理するように適応される。動き補償を必要としないことにより、処理される適切なデータがより容易に利用可能となり、分析されるデータを獲得するときに、従来の動き補償技術を使用している際に獲得される画像と比べて、より低線量の、及び/又はより速いスキャン時間が達成されることが、実施形態によるデバイスの利点である。
【0055】
データ入力11は、対象者の息止めを必要としない間に獲得された心臓スペクトルCTスキャンに対応したスペクトルCT投影データ9を受信するように適応される。従って、画像データ処理デバイス及びそのコンポーネントは、このようなデータを処理するように適応される。画像獲得中に息止めを必要としないことにより、スキャンされる対象者の快適さが高まること、及び/又は、このような息止めの要求に無意識に又は意識的に違反することに起因した撮像工程の失敗が防止され得ることが、実施形態によるデバイスの利点である。
【0056】
例えば、本発明の実施形態によるデバイス10は、例えば冠動脈石灰化の程度を推定するためのカルシウムスコアリングを提供するように適応され、例えば冠動脈石灰化の程度を推定するためのカルシウムスコアリングを提供することを目的とするように機能する。高いスコアの患者は深刻な有害心臓事象のリスクがより高くなるので、このようなスコアリングは、オペレーターが早期のリスク層別化を特定することを可能にする。
【0057】
残存する呼吸及び/又は心臓の運動が当技術分野で知られた従来の方法によって決定されたカルシウムスコアを劣化させるのに対して、本発明の実施形態によるデバイスは、このような運動アーチファクトに対して特に堅牢であり、例えば、大幅な運動の不鮮明さが処理される画像内に存在する場合でも、正確で再構成可能なカルシウムスコアを生成する。
【0058】
画像データ処理デバイス10は、スペクトルCT投影データ9にマテリアル分解アルゴリズムを適用するための、例えばスペクトルCT投影データをスペクトルCT投影データの情報量に対する異なる及び/又は特定のマテリアルの寄与に対応したコンポーネントにアルゴリズムにより分解するためのモデル化ユニット12をさらに備える。
【0059】
モデル化ユニット12は、このマテリアル分解アルゴリズムを適用するように適応されて、例えばスペクトルCT投影データ9のカルシウム減衰を表すカルシウムに特有なコンポーネント7を提供し、例えば、スペクトルCT投影データを取得するためにスキャンされた心臓領域内におけるカルシウムの存在及び空間分布に特に起因した、スペクトルCT投影データの情報量に対する寄与を表すカルシウムに特有なコンポーネントを提供などする。
【0060】
例えば、モデル化ユニット12は、スペクトルCT投影データを、このカルシウムに特有なコンポーネント、及び軟組織及び/又は水に特有な減衰を表す少なくとも1つの第1のさらなるコンポーネントに区分するように適応される。例えば、スペクトルCTディテクターにより獲得された投影像は、カルシウム及び水ベースの投影に分解される。
【0061】
従って、スペクトルCTディテクターから獲得された投影像は、カルシウム及び水ベースの投影に分解される。しかし、ディテクターにより提供される投影像内におけるスペクトル分離、例えばスペクトル分解能がより詳細な分解を可能にする範囲で、より多くの基底関数が含まれ得る。
【0062】
例えば、モデル化ユニット12はまた、スペクトルCT投影データを、カルシウムに特有なコンポーネント、第1のさらなるコンポーネント、及び所定の造影剤に特有な減衰を表す少なくとも1つの第2のさらなるコンポーネントに区分するように適応される。従って、画像データ処理デバイス10は、コントラスト強調心臓スペクトルCTスキャンプロトコルに対応した入力として投影像を受信するように適応される。有益には、造影剤に起因した投影像における寄与は、例えばコントラストコンポーネントと共にカルシウムに特有なコンポーネントをバイアスしないようにするなど、分析に少なくとも1つの第2のさらなるコンポーネントを含めることにより、効果的に考慮され得る。
【0063】
モデル化ユニット12は、従って、投影領域内におけるマテリアルの分解を実施するように適応される。例えば、モデル化ユニットは、例えばスペクトルCT投影データ9を構成する投影像内におけるピクセル値で表される検出された光子カウント数のための順モデルを実現し、検出されたカウント数を説明するための反復集束アルゴリズムの停止基準が考慮される限りにおいて、最良の適合又は少なくとも良好な適合に対応した、モデル化されたマテリアルの各々に対するマテリアルの長さ、例えば少なくとも各投影経路に沿ったカルシウムの長さ、例えば好ましくは、カルシウムの長さ、及び少なくとも1つの他のマテリアル、例えば水又は軟組織の長さを特定するための最尤推定法を適用する。このような順モデルは、検出システムの物理的態様、及び撮像された物体、例えば対象者の減衰特性を考慮する。例えば、モデル化ユニットは、対象者の心臓領域に対応したデータを獲得するときにX線源により放射されたX線スペクトルを考慮するように適応され、例えば、入力としてこのようなX線スペクトルを規定するパラメータを受信し、順モデルにそのような入力を含めるように適応される。モデル化ユニットは、対象者の心臓領域に対応したデータを獲得したX線ディテクターのスペクトル応答を考慮するように適応され、例えば、入力としてこのようなスペクトル応答を規定するパラメータを受信し、順モデルにそのような入力を含めるように適応される。例えば、対象者のスペクトル減衰は、例えば軟組織及び骨材料を表す、例えば水及びカルシウムに対応した、2つ以上の基底関数によりモデル化される。例えば、このような順モデルにおいて、減衰μは、エネルギーE及び位置ベクトル
【数1】
の関数として、次の形成の式を使用してモデル化される。
【数2】
ここで、位置依存関数a
αは局所密度を表し、エネルギー依存関数f
αは、総数N個のモデル化されたマテリアルのうちの添え字αを付したマテリアルの質量減衰係数を表す。例えば、例えば15から150keVの範囲内における、診断CT撮像において使用される典型的なエネルギーに対するマテリアルの線減衰係数のエネルギー依存性は、光電及びコンプトン散乱断面の線形結合により適切に近似される。
【0064】
例えば、このような最尤推定法では、尤度関数
【数3】
は、例えばマテリアルの長さといった、パラメータA
αによりパラメータ表示された物体の組成が与えられたとき、例えばN個の異なるエネルギービンに対する光子カウント数m
1,…,m
Nといった、観測された測定結果にマッチングする任意の測定結果の確率として尤度を表すパラメータA
αの関数として最適化される。尤度関数は、例えばエネルギービンがポアソン分布関数に従って独立して分布すると仮定すると、ポアソンランダム確率密度関数の、例えば乗算といった組み合わせに対応するが、本発明の実施形態は確率モデルのこのような選択に限定されず、例えばポアソン分布の近似、ノイズ及び/又は他の因子を考慮したより複雑な確率モデルを使用し、及び/又は、独立分布の仮定が不適切とみなされない場合の、相互作用項又は結合確率モデルを含む。
【0065】
例えば、パラメータA
αは、減衰のマテリアル成分の線積分、例えば局所密度係数の線積分
【数4】
を表し、ここで、線形減衰は例えば次の係数を使用して、例えばカルシウムを含む異なる基礎マテリアルに分解される。
【数5】
この例において、f
αは、例えば光電効果、マテリアルのコンプトン効果、及びKエッジ寄与の断面を含む、マテリアルに特有の断面を表す。
【0066】
λ
i(A
α)は、この例では、マテリアルパラメータA
αを考慮した確率モデルに従った測定値m
iに対する推測平均値を表す。例えば、
【数6】
と表され、ここで、D(E)はエネルギーの関数としてディテクター吸収効率を表し、S
i(E)は、異なるエネルギービンに対する感度を表し、各ビンに対するそれぞれの閾値エネルギーにより決定された制限を伴った、例えば矩形関数、例えばシフトされたヘビサイド関数又はシフトされたヘビサイド関数の線形結合である。しかし、本発明の実施形態は、尤度最適化パラメータに対する観測可能量の期待値に関係したこのような例示的なモデルに限定されるとは限らない。
【0067】
当技術分野において知られているように、尤度関数は、便宜上及び演算効率の点で、例えば負の対数尤度関数、例えば、
【数7】
を最小化することにより最適化される。
【0068】
画像データ処理デバイス10は、例えば心臓領域の第1の3D画像8を提供するためにスペクトルCT投影データ9を、例えば当技術分野において知られる断層再構成技術を使用して再構成するための断層再構成ユニット13をさらに備える。断層再構成ユニット13は、例えば心臓領域内のカルシウム含有量を表す第2の3D画像6を提供するために、スペクトルCT投影データのカルシウムに特有なコンポーネント7を再構成するようにさらに適応される。
【0069】
例えば、標準的な3D再構成は断層再構成ユニット13により実施され、その際、スペクトルCT投影データ9内に存在するすべてのスペクトルチャネルが使用される。心臓領域の第1の3D画像8を提供するこの標準的な3D再構成は、例えば、スペクトルCT投影データ9のすべてのスペクトルのチャネルに対して実施され、全体の視野(FOV)をカバーする。
【0070】
同様に、3D再構成は断層再構成ユニット13により実施され、その際、スペクトルCT投影データ9のカルシウムに特有なコンポーネント7が使用される。第2の3D画像6を提供するこの3D再構成は、例えば、特にスペクトルCT投影データ9のカルシウムに特有なコンポーネントに対して実施され、全体の視野(FOV)をカバーする。好ましくは、第1の3D画像8及び第2の3D画像6は、例えば両方の画像内におけるボクセル要素の1対1対応を取得するなどのために、対応する座標格子内に再構成される。しかし、このことは、以下で説明されるさらなる処理ステップを実施する際に、発明的な努力を一切伴わずに当業者により理解されるように、適切な座標変換が考慮され得るので、必ず該当するとは限らない。
【0071】
画像データ処理デバイス10は、例えば心臓領域内の関心のある心臓血管構造物に対応した画像マスク5を提供するために、第1の3D画像8をセグメント分けするセグメント分けユニット14をさらに備える。
【0072】
セグメント分けユニット14は、第1の3D画像8により表される標準的な3Dボリュームに対する心臓領域全体及び/又は特定の関心領域(ROI:region of interest)のセグメント分けに適応される。適切なセグメント分けアルゴリズムは、このセグメント分けを実施するために、当技術分野において知られるように、セグメント分けユニット14により実現される。例えば、このようなセグメント分けアルゴリズムは、ボクセル値閾値処理演算、形態学的フィルタ処理、曲線及び/又は面フィッティング演算、有限又は無限インパルス応答フィルタ、マルコフランダム場を使用した処理、ウォーターシェッドセグメント分け演算、及び/又は当技術分野において知られた他のこのような技術を含む。セグメント分けユニットは、半自動的に、又は好ましくは自動的に、関心のある心臓血管構造物をセグメント分けするように適応される。
【0073】
心臓血管構造物は、冠動脈又は冠動脈の一部である。例えば、セグメント分けユニット14は、心臓領域内の冠動脈又は冠動脈の一部に対応した画像マスク5を提供するように適応される。
【0074】
画像データ処理デバイス10は、画像マスク5に基づいて第2の3D画像6の一部を選択するための選択ユニット15をさらに備える。
【0075】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイス10において、選択ユニット15は、関心のある心臓血管構造物を形成する第2の3D画像6のボクセルの第1の集合を選択するように適応される。従って、画像マスクにより規定された関心領域は、第2の3D画像6により表される3Dカルシウムボリューム内において対応するボクセルをマスクアウトするために使用される。
【0076】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイス10において、選択ユニット15は、例えばここまでに説明されるボクセルの第1の集合の選択に対して、代替的に又は追加的に第2の3D画像6のボクセルの第2の集合を選択するように適応される。このような実施形態において、このボクセルの第2の集合は、関心のある心臓血管構造物を形成するボクセルの補集合であり、例えばボクセルの第2の集合は、ボクセルの第1の集合の補集合である。ボクセルの第1の集合の「補集合」であるこのボクセルの第2の集合は、第1の集合に含まれない第2の3D画像6のすべてのボクセルにより形成されたボクセルの集合の集合論的概念を表す。
【0077】
画像データ処理デバイス10は、第2の3D画像6の選択された一部に基づいて、関心のある心臓血管構造物内のカルシウム含有量を計算するための演算ユニット16をさらに備える。
【0078】
本発明の実施形態による画像データ処理デバイス10において、演算ユニット16は、例えば関心のある心臓血管構造物内のカルシウム含有量を計算するために、選択されたボクセル、例えばここまでに説明されるボクセルの第1の集合により表されるカルシウム量を積分するように適応される。
【0079】
演算ユニット16は、計算されたカルシウム含有量を表す少なくとも1つの値、例えばカルシウムスコアを出力するように適応される。例えば、画像データ処理デバイス10は、それぞれ計算されたカルシウム含有量を表す少なくとも1つの値を表示、印刷、書き込み、及び/又は送信するための、ディスプレイモニターなどのディスプレイデバイス、印刷機、デジタルデータキャリアライター、例えばポータブルメモリ又はデータディスクデバイスとインターフェースをとるポート及び/若しくは光ディスクライター、並びに/又は、データネットワークインターフェースを備える。
【0080】
さらに、画像データ処理デバイス10は、スペクトルCT投影データ9と同じ投影に対応したシミュレーションされた投影データ4を生成するために、ここまでに説明されたボクセルの第2の集合を投影するための順投影ユニット17を備える。このように、このシミュレーションされた投影データは、心臓領域を撮像するときに視野内に存在していた、関心のある心臓血管構造物内に含まれないカルシウム、例えば肋骨及び/又は椎骨内のカルシウムの投影、例えば投影像を含む。
【0081】
本発明の実施形態によると、演算ユニット16は、特に関心のある心臓血管構造物内におけるカルシウムに特有な減衰を表す減算された投影データを取得するために、スペクトルCT投影データのカルシウムに特有なコンポーネント7から、シミュレーションされた投影データ4を減算するように適応される。
【0082】
演算ユニット16は、複数のカルシウム含有量測定値を計算するために、減算された投影データに含まれる各投影像により表されるカルシウム量を積分するように適応される。各投影ビュー内に投影されたカルシウム量は実質的に一定であるので、複数の冗長な測定値から堅牢な尺度が取得され得る。
【0083】
演算ユニット16は、例えば平行な形状に対応した投影内に、減算された投影データを再ビニングすることにより、減算された投影データから複数の平行な投影像を特定するように適応される。演算ユニット16は、複数のカルシウム含有量測定値を計算するために、平行な投影像の各々により表されるカルシウム量を積分するように適応される。
【0084】
従って、演算ユニット16は、例えば再ビニングされた投影像の各々による、各投影像により表されるカルシウム量のこの積分前に、平行な形状に対応した投影像内に、減算された投影データを再ビニングするように適応される。
【0085】
演算ユニット16は、複数のカルシウム含有量測定値の統計的な中心傾向の尺度を計算するように適応される。例えば、統計的な中心傾向のこのような尺度は、平均値、中央値、最頻値、算術平均、幾何平均、加重平均、及び/又は、当技術分野において知られた複数の比較可能な値の中心傾向を統計的に要約するための同様の尺度を含む。
【0086】
演算ユニット16はまた、複数のカルシウム含有量測定値の統計的散布度及び/又は統計的信頼区間の尺度を計算するように適応される。例えば、統計的散布度のこのような尺度は、四分位範囲、分散、標準偏差、又は当技術分野において知られた複数の比較可能な値の散布度を統計的に要約するための同様の尺度を含む。
【0087】
別の一態様において、本発明は、さらに、本発明の第1の態様の実施形態による画像データ処理デバイスを備えるワークステーションに関する。例えば、このようなワークステーションは、例えばオペレーターコンソールとして機能するコンピュータを備える。ワークステーションは、モニター又はディスプレイなどの人間により可読な出力デバイスと、キーボード及びマウスなどのヒューマンインターフェース入力デバイスとを備える。オペレーターは、非対話型又は対話型の手法で、例えばグラフィカルユーザーインターフェースを使用して、又は別のやり方で画像データ処理デバイスと対話する。ワークステーションは、データ入力11に動作可能に接続されたCTスキャンユニットを制御するように適応される。しかし、実施形態によるワークステーションは、このようなCTスキャンユニットに動作可能に接続されるとは限らない。例えば、投影データは、ワークステーションを動作させることによるこのようなデータの処理から実質的に独立して獲得される。
【0088】
別の一態様において、本発明は、さらに、本発明の第1の態様の実施形態による画像データ処理デバイスを備える撮像システム、及び、心臓領域をスキャンするときにスペクトルCT投影データ9を生成するためのスペクトルCTスキャンユニットに関する。スペクトルCTスキャンユニットは、データ入力11にスペクトルCT投影データ9を供給するようにさらに適応される。例えば、
図2は、本発明の実施形態による例示的な撮像システム200を示す。
【0089】
本発明の実施形態による撮像システムにおいて、スペクトルCTスキャンユニットは、例えばスペクトルCT投影データ9を生成するために、心臓領域の複数のアキシャルスキャン及び/又は螺旋スキャンを実施するように適応される。
【0090】
本発明の実施形態による撮像システムにおいて、スペクトルCTスキャンユニットは、エネルギー分解光子カウント画像ディテクターを備える。
【0091】
スペクトルCTスキャンユニットは、投影データを獲得するときに対象者の心臓領域を横断するための放射線を放射する放射源を備える。
【0092】
例えば、スペクトルCTスキャンユニット、例えばコンピュータ断層撮影スキャナは、固定ガントリー202と、固定ガントリー202により回転可能に支持される回転ガントリー204とを備える。回転ガントリー204は、投影データを獲得するときに対象者の心臓領域を含むように、長軸を中心として検査領域206の周囲を回転する。スペクトルCTスキャンユニットは、検査領域206内で対象者を支持するために、カウチなどの対象者支持体を備える。
【0093】
スペクトルCTスキャンユニットは、回転ガントリー204により支持される、及び、回転ガントリー204と共に回転するように構成されたx線管などの放射源208を備える。放射源は、アノードとカソードとを含む。アノードとカソードとの間に印加されたソース電圧は、カソードからアノードまで電子を加速する。電子の流れは、カソードからアノードまでの電流の流れを提供して、例えば検査領域206を横断するための放射線を生成する。
【0094】
スペクトルCTスキャンユニットは、ディテクターアレイ210を備える。このディテクターアレイは、放射源208に対して検査領域206の反対側に角度をもつ弧を張る。ディテクターアレイは、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、及び/又は、他の直接変換材などの直接変換材を含む直接変換ディテクターピクセルなどのピクセルの一次元又は二次元アレイを含む。ディテクターアレイは、検査領域を横断する放射線を検出し、放射線のエネルギーを示す信号を生成するように適応される。
【0095】
さらに、スペクトルCTスキャンユニットは、例えば対応する複数のエネルギー閾値に対して、生成された信号の関係するエネルギーの観点から生成された信号を評価するように構成された複数の比較器を備えるエネルギー識別器を備える。スペクトルCTスキャンユニットは、例えばエネルギー識別器の出力に基づいて各エネルギー閾値に対するカウント値をインクリメントするためのカウンター、例えば複数のカウンターを備える。スペクトルCTスキャンユニットは、複数のエネルギービン内におけるカウントを体系化するためのエネルギービナーを備え、各ビンは異なるエネルギー範囲を表す。
【0096】
さらに異なる別の一態様において、本発明は、カルシウム含有量を特定する方法、例えば冠動脈カルシウムスコアを特定する方法に関する。
【0097】
図3を参照すると、本発明の実施形態による例示的な方法30は、対象者のスキャンされた心臓領域に対応したスペクトルCT投影データ9を取得するステップ31を有する。例えば、スペクトルCT投影データは、スペクトルCTスキャナ、例えば光子カウントスペクトルCTスキャンユニットにより事前に生成される。
【0098】
本方法30は、例えばスペクトルCT投影データ9のカルシウムに特有なコンポーネント7を提供するために、スペクトルCT投影データ9にマテリアル分解アルゴリズムを適用するステップ32をさらに有する。
【0099】
本方法は、例えば心臓領域の第1の3D画像8を提供するために、スペクトルCT投影データ9を再構成するステップ33をさらに有する。
【0100】
本方法は、例えば心臓領域内のカルシウム含有量を表す第2の3D画像6を提供するために、スペクトルCT投影データ9のカルシウムに特有なコンポーネント7を再構成するステップ34をさらに有する。
【0101】
本方法30は、例えば心臓領域内の関心のある心臓血管構造物、例えば心臓、心臓の一部、冠動脈、又は冠動脈の一部、例えば冠動脈の関心のあるセクションに対応した画像マスク5を提供するために、第1の3D画像8をセグメント分けするさらなるステップ35を有する。
【0102】
本方法は、画像マスク5に基づいて第2の3D画像6の一部を選択するステップ36をさらに有する。
【0103】
本方法は、第2の3D画像6の選択された一部に基づいて、関心のある心臓血管構造物内におけるカルシウム含有量を計算するステップ37をさらに有する。
【0104】
さらに異なるさらなる態様において、本発明は、さらに、コンピュータにより実行されたときに、心臓スペクトルCTデータを分析することによりカルシウム含有量を計算するための、コンピュータ可読プログラムコードが内部に具現化されたコンピュータプログラム製品に関する。このようなコンピュータプログラム製品において、計算は、本発明の実施形態による方法のステップを実施することを有する。