(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828091
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】炭素同位体を分離する方法及び炭素同位体の濃縮方法
(51)【国際特許分類】
B01D 59/34 20060101AFI20210128BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
B01D59/34 B
B01D59/34 G
H01S3/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-114181(P2019-114181)
(22)【出願日】2019年6月20日
(65)【公開番号】特開2020-82071(P2020-82071A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2019年6月20日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0148969
(32)【優先日】2018年11月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ド ヨング
(72)【発明者】
【氏名】リ リム
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パーク ヒョンミン
(72)【発明者】
【氏名】コ カン ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム テク ソ
(72)【発明者】
【氏名】オ セオン ヨン
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/077528(WO,A1)
【文献】
特開2020−082069(JP,A)
【文献】
特開平06−063361(JP,A)
【文献】
特開平06−182158(JP,A)
【文献】
特開平03−060722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 59/00−59/50
G02F 1/00−1/125、1/21−7/00
H01S 3/00−3/02、3/04−3/0959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド気体を190K〜250Kの温度に冷却する段階と、
冷却されたホルムアルデヒド気体を光分解レーザーの波数(wavenumber)28396.1cm−1〜28401.3cm−1で光分解して、炭素13(13C)を含む一酸化炭素と水素を含む混合気体及び残存ホルムアルデヒドを獲得する段階と、
を含む、炭素同位体を分離する方法。
【請求項2】
前記冷却する段階は、エタノール及びドライアイス混合物を含む冷却バス(cooling bath)または冷却機(chiller)によって行われる、請求項1に記載の炭素同位体を分離する方法。
【請求項3】
前記光分解は、0.01〜5Torrの圧力下で行われる、請求項1又は2に記載の炭素同位体を分離する方法。
【請求項4】
前記光分解時の光分解レーザーの波数(wavenumber)は、28396.1cm−1、28401.3cm−1またはそれらの組み合わせである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の炭素同位体を分離する方法。
【請求項5】
前記光分解時に用いられる光分解レーザーは光ファイバレーザーである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の炭素同位体を分離する方法。
【請求項6】
前記炭素13(13C)を含む一酸化炭素と水素を含む混合気体及び残存ホルムアルデヒドを獲得する段階に後続して、前記混合気体及び残存ホルムアルデヒドを冷却凝縮して残存ホルムアルデヒドを分離する段階をさらに含む、請求項1に記載の炭素同位体を分離する方法。
【請求項7】
前記冷却凝縮は181K(−92℃)以下の温度で行われる、請求項6に記載の炭素同位体を分離する方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭素同位体を分離する方法により、ホルムアルデヒドから炭素13(13C)を含む一酸化炭素及び水素を含む混合気体を獲得する段階を含む、炭素同位体の濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素同位体(carbon isotope)を分離する方法及びそれを用いた炭素同位体の濃縮方法に関するものであり、より詳細には、炭素13を高選択的に分離することができる方法と、単一段階において高濃縮炭素13を獲得する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素は、自然成分比同位体存在度が98.89%である炭素12と、1.1%である炭素13の二種類の安定同位体があり、このような炭素12と炭素13は、産業的に非常に有用である。1.1%の炭素13を99%レベルに濃縮した炭素13は、化学、生化学、環境分野において追跡子(tracer)として用いられ、炭素13で標識された尿素(urea)とブドウ糖(glucose)などの化合物(
13C−labelled compound)は、各種疾患の非侵襲診断と代謝物の研究に用いられる。例えば、炭素13で標識した化合物を摂取した後、呼気の炭素13の成分比を測定して各種疾患を診断する呼気検査(breath test)は、診断の正確性と簡便性のため適用範囲を徐々に拡大している。炭素13尿素呼気検査(13C−UBT:urea breath test)と炭素13メタセチン呼気検査(13C−MBT:methacetin breath test)などが一般的に用いられることにより、今後、炭素13に対する需要が大きく増加することが見込まれる。
【0003】
99%レベルに濃縮された炭素13は、年間1トン以上が生産されており、グラム当たり約100〜150ドルで販売されている。一方、99.95%以上に濃縮された炭素−12で製造した合成ダイヤモンドとグラフェンは、常温における熱伝導度が一般的なダイヤモンドとグラフェンに比べて約2倍高いことが明らかになったことから、熱発散体(heat spreader)素材としての使用が有望である。しかし、現在の技術で生産された99.95%の炭素−12は10ドル、99.99%の炭素−12は20ドルと高価なため、幅広い活用において制約要素として作用している。
【0004】
現在、産業的に適用されている炭素13の濃縮技術としては、一酸化炭素(CO)とメタン(CH
4)極低温蒸留技術が唯一である。83Kの温度で一酸化炭素とメタンを蒸留する場合、分離単位(separation unit)当たりの炭素13の分離係数(separation factor)は、それぞれ1.01と1.005程度と、1.1%の炭素13を99%レベルに濃縮するためには、蒸留塔の長さが数百メートルでならなければならない。また、このような極低温蒸留は、大規模な生産設備が必要であり、稼動後から最終生成物が得られるまでの時間である始動時間(start−up time)が0.5年以上と長いため、市場の変化に迅速に対応することができないという点が弱点として指摘されている。
【0005】
日本特許第6082898号公報は、活性炭素繊維を吸着剤として用いるメタンの炭素同位体分離方法に関するものである。この方法は、77Kの温度における炭素13同位体の選択度が1.01程度であり、MOF利用方法は、200Kの温度で1.1と小さいため、商業的な技術に発展するには限界がある。また、米国特許第8337802 B2号公報は、赤外線波長の二酸化炭素レーザーを用いてトリフルオロメタン(trifluoromethane、CF
3H)を多光子光分解する炭素同位体の分離方法に関するものであり、光分解される分子当たり、97eVという多くのエネルギーが消耗され、炭素13に対して99%レベルの濃縮度を得るためには、二段階の分離工程が必要であるが、この時、光分解生成物であるCF
2とHFをCF
3Hに化学変換する工程が追加されなければならないという点などは、商業的な技術に発展する上で制約要素となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特許第6082898号公報
【特許文献2】米国特許第8337802 B2号公報
【0007】
したがって、炭素13を単一段階において高濃縮することができる方法と、それに関するホルムアルデヒドの光分解波長が提供される場合、関連分野に広く適用することができると期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の一側面は、炭素同位体を分離する方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の側面は、上記本発明の炭素同位体を分離する方法を用いた炭素同位体の濃縮方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一見地によると、ホルムアルデヒド気体を190K〜250Kの温度に冷却する段階と、冷却されたホルムアルデヒド気体を光分解して、炭素同位体を含む一酸化炭素と水素を含む混合気体及び残存ホルムアルデヒドを獲得する段階を含む、炭素同位体を分離する方法が提供される。
【0011】
本発明の他の見地によると、上記本発明の炭素同位体を分離する方法により、ホルムアルデヒドから炭素同位体を含む一酸化炭素及び水素を含む混合気体を獲得する段階を含む、炭素同位体の濃縮方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、単一段階(single stage)において炭素13を高収率で98%以上に高濃縮することができ、本発明は、炭素13の選択度が4,000〜10,000と、成分比が1.1%である炭素13のみに集中的にエネルギーを投入して分離することができるため、エネルギー効率が高く、小規模の設備で大量生産が可能である。本発明を適用する場合、濃縮炭素13の生産コストを大きく節減することで、炭素13の多様な活用に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】28401.3cm
−1領域におけるホルムアルデヒド光分解スペクトルを示したものである。(101:自然成分比ホルムアルデヒドの常温(300K)光分解スペクトル、102:243Kの温度における光分解スペクトル、103:203Kの温度における光分解スペクトル)
【
図2】28396.1cm
−1領域におけるホルムアルデヒド光分解スペクトルを示したものである。(201:自然成分比ホルムアルデヒドの常温(300K)光分解スペクトル、202:203Kの温度における光分解スペクトル)
【
図3】レーザーの周波数が28401.3cm
−1であるときに、ホルムアルデヒドを光分解して生成された一酸化炭素の炭素13の成分比を測定した結果である。(301:低温(243K)光分解生成物の炭素13の成分比(98.6%)、302:常温光分解生成物の炭素13の成分比(97.8%)、303:自然成分比一酸化炭素(1.1%))
【
図4】低温光分解による炭素13の分離工程を示したものである。(401:ホルムアルデヒド気体供給(220〜250K)、402:ホルムアルデヒド気体の冷却バス(cooling bath)(200〜250K)、403:ホルムアルデヒドの低温光分解装置(200〜250K)、404:ホルムアルデヒド捕獲装置(100K)、405:一酸化炭素酸化装置、406:炭素13二酸化炭素の捕獲装置。)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明は、単一段階(single stage)において炭素13を分離し、98%以上に高濃縮する技術に関するものである。
【0016】
より詳細に、本発明の炭素同位体を分離する方法は、ホルムアルデヒド気体を190K〜250Kの温度に冷却する段階と、冷却されたホルムアルデヒド気体を光分解して、炭素同位体を含む一酸化炭素と水素を含む混合気体及び残存ホルムアルデヒドを獲得する段階と、を含む。
【0017】
本発明で分離することができる上記炭素同位体は、炭素13(
13C)である。
【0018】
炭素同位体の分離のために用いられる原料物質としては、ホルムアルデヒドがあり、気体(蒸気)状態で光分解反応部に供給される。ホルムアルデヒドは、融点が−92℃(181K)であり、沸点は−21℃(252K)である。
【0019】
但し、本発明では、光分解前に、このようなホルムアルデヒド気体を190Kから250Kの温度に冷却する段階を行い、例えば、ホルムアルデヒド気体は200K〜245Kの温度範囲に冷却されることができる。光分解時のホルムアルデヒド気体の温度が190未満の場合には、ホルムアルデヒドの蒸気圧が低すぎるという問題があり、250Kを超える場合には、炭素13に対する選択度が低下するという問題がある。
【0020】
このとき、上記冷却する段階を行う方法は、特に制限されるものではないが、例えば、エタノール及びドライアイス混合物を含む冷却バス(cooling bath)または冷却機(chiller)によって行われることができる。
【0021】
この時、上記光分解は0.01〜5Torrの圧力下で行われることが好ましく、例えば、0.2〜1Torrの圧力下で行われることができる。光分解が上記圧力範囲未満で行われる場合には、生産性(productivity)が低下するという問題があり、上記圧力範囲を超えて行われる場合には、炭素13の選択度と光分解量子収率(photodissociation quantum yield)が低くなるという問題がある。
【0022】
特に、本発明は、光ファイバレーザーを用いて特定波数のレーザーを照射することができ、上記光分解時の光分解レーザーの波数(wavenumber)は28396.1cm
−1〜28401.3cm
−1、好ましくは28396.1cm
−1、28401.3cm
−1またはそれらの組み合わせである。このような波数のレーザーをホルムアルデヒドに照射すると、炭素13同位体が含まれた一酸化炭素のみを選択的に獲得することがでる。
【0023】
本発明において、上記光分解時に用いられる光分解レーザーは、エネルギー効率が高く、維持及び管理が容易な光ファイバレーザーを用いることができるが、これに制限されるものではない。上記ファイバレーザーは、光ファイバ中に能動媒質を有するレーザーであって、この媒質に低順位の希土類ハロゲン化物を添加した光ファイバレーザーを意味する。このような光ファイバレーザーは小さくて軽く、維持と管理が便利である。特にエネルギー効率が高く、発振波長領域が広くて、広い範囲にわたって出力調節が可能であるため、ホルムアルデヒドを光分解するための波数を選択的に発生させることができ、本発明に好ましく適用することができる。
【0024】
一方、本発明において、上記炭素同位体を含む一酸化炭素と水素を含む混合気体及び残存ホルムアルデヒドを獲得する段階に後続して、上記混合気体及び残存ホルムアルデヒドを冷却凝縮して残存ホルムアルデヒドを分離する段階をさらに含むことができる。
【0025】
かかる工程により、上記光分解工程で光分解されないホルムアルデヒドを回収して排出し、光分解によって得られた光分解産物であるH
2と
13COを分離回収することができる。この時、上記光分解によって形成された生成物である水素及び炭素13を含む一酸化炭素と、光分解されずに存在するホルムアルデヒドは冷却凝縮させることで回収することができる。光分解されないホルムアルデヒドは氷点が−92℃であり、上記氷点以下に冷却させることにより凝縮させることができる。したがって、上記冷却凝縮は、181K(−92℃)以下の温度で行われることが好ましく、例えば、70K〜180K、好ましくは77K〜130Kの温度で行われることができる。
【0026】
このとき、ホルムアルデヒド凝縮条件でも、水素及び一酸化炭素は相変わらず気体状態で存在するため、光分解反応生成物である水素及び一酸化炭素をガス状態で回収してホルムアルデヒドと分離することができる。
【0027】
一方、上記ホルムアルデヒドの光分解によって生成された上記一酸化炭素には、炭素同位体
13Cが含まれている。したがって、このような一酸化炭素と水素を含む上記残留光分解産物を触媒酸化(catalytic oxidation)反応によって炭素の同位体を回収することができる。
【0028】
したがって、本発明の他の見地によると、炭素同位体の濃縮方法が提供され、これは、上記本発明の炭素同位体を分離する方法により、ホルムアルデヒドから炭素同位体を含む一酸化炭素及び水素を含む混合気体を獲得する段階を含む。
【0029】
上記炭素同位体を含む一酸化炭素は、
13Cを含む一酸化炭素(
13CO)である。
【0030】
さらに、上記混合気体に酸素を追加して酸化反応を行って、水及び炭素同位体を含む二酸化炭素を合成する酸化段階をさらに行うことができ、具体的には、上記ホルムアルデヒドの光分解反応によって生成された水素と一酸化炭素を分離回収した後、これらに酸素を供給して触媒酸化(catalytic oxidation)させることで水(H
2O)と二酸化炭素(CO
2)を生成し、上記水を凝縮させて二酸化炭素を回収することにより、炭素同位体が濃縮された二酸化炭素を最終生成物として抽出することができる。
【0031】
この過程で、外部から酸素が供給されるが、炭素同位体の濃縮度には変化を与えない。
【0032】
上記触媒酸化反応に用いることができる触媒としては、通常に用いられるものを適用することができ、特に限定されないが、例えば、このような触媒としてはCu−Ceを挙げることができる。
【0033】
このように、本発明によると、単一段階(single stage)において炭素13を高収率で98%以上に高濃縮することができ、本発明は、炭素13の選択度が4,000〜10,000と、成分比が1.1%である炭素13のみに集中的にエネルギーを投入して分離することができるため、エネルギー効率が高く、小規模の設備で大量生産が可能である。本発明を適用する場合、濃縮炭素13の生産コストを大きく節減することで、炭素13の多様な活用に寄与することができる。
【0034】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
1.炭素13分離に有用なホルムアルデヒドの光分解波長確認
ホルムアルデヒド(formaldehyde、H
2CO)気体に340〜360nm波長領域の紫外線光を照射すると、下記式(1)のように、水素分子(H
2)と一酸化炭素(CO)に光分解される。この時、光分解量子収率(photodissociation quantum yield)は、10Torrで約0.85であり、5Torr以下では0.9以上と高かった。
【0036】
図1及び
図2は、線幅が60MHzである狭い線幅の単一モード(single mode)レーザーで測定したホルムアルデヒド光分解スペクトルである。101と201は、常温で測定した自然成分比ホルムアルデヒドの光分解スペクトルであり、102は243Kの温度で、103と202は203Kの温度で測定した光分解スペクトルである。
【0037】
図1の(a)と
図2の(b)は、炭素13を単一段階において98%以上に分離及び濃縮するのに有用な光分解波長であり、レーザー波数(wavenumber)としては、それぞれ28401.3cm
−1と28396.1cm
−1である。
【0038】
レーザー波数(wavenumber)28401.3cm
−1でホルムアルデヒドを常温光分解する場合、炭素13の選択度は約4,000であり、243Kにおける炭素13の選択度は約7,000と測定された(
図3参照)。したがって、203Kの温度で光分解する場合、炭素13の選択度は10,000以上と、単一段階濃縮工程において99%以上の炭素13を得ることができると判断される。ここで、同位体の選択度Sは、次のように式(2)によって定義される。
式(2)において、C
Fは原料の炭素13の成分比であり、C
Pは生成物の炭素13の成分比である。
【0039】
2.高選択的な炭素13の分離
実施例1
図4は、低温光分解による炭素13の分離工程を示したものである。より詳細には、無水ホルムアルデヒド(anhydrous formaldehyde)貯蔵庫から供給されるホルムアルデヒド気体は、冷却バス(cooling bath)402によって190K〜250Kの温度範囲で一定の温度に冷却されて光分解装置403に注入される。この時、光分解装置の圧力は0.2〜1Torrとなるようにする。上記冷却バス402は、エタノール(ethanol)とドライアイス(dry ice)混合物を用いるか、または冷却機(chiller)を用いることができる。温度が200〜245Kの範囲で一定に維持される光分解装置403により、炭素13ホルムアルデヒドは高い選択度で光分解されることができ、この時、本実施例1では0.2Torrの圧力下、243Kの温度で波数28401.3cm
−1によって光分解を行った。
【0040】
残存ホルムアルデヒドは、液体窒素で冷却される装置(liquid−nitrogen trap)404に捕獲されて、光分解生成物である合成気体から分離されることができる。
【0041】
さらに、合成気体は、酸素がさらに供給される酸化装置405で、下記式(3)によって炭素13二酸化炭素に変換され、貯蔵406されることができる。
【0042】
かかる工程により、本発明は、単一段階(single stage)において炭素13を98%以上に高濃縮することができる。
【0043】
実施例2
レーザーの波数が28401.3cm
−1であるときに、203Kでホルムアルデヒドを光分解したことを除いては、実施例1と同一の工程によりホルムアルデヒドを光分解した。
【0044】
実施例3
レーザーの波数が28396.1cm
−1であるときに、203Kでホルムアルデヒドを光分解したことを除いては、実施例1と同一の工程によりホルムアルデヒドを光分解した。
【0045】
比較例1
レーザーの周波数が28401.3cm
−1であるときに、常温(300K)でホルムアルデヒドを光分解したことを除いては、実施例1と同一の工程によりホルムアルデヒドを光分解した。
【0046】
比較例2
レーザーの周波数が28396.1cm
−1であるときに、常温(300K)でホルムアルデヒドを光分解したことを除いては、実施例1と同一の工程によりホルムアルデヒドを光分解した。
【0047】
3.本発明によってホルムアルデヒドを光分解して生成された一酸化炭素の炭素13の成分比測定
図3はレーザーの周波数が28401.3cm
−1であるときに、ホルムアルデヒドを光分解して生成された一酸化炭素の炭素13の成分比を測定した結果である。
【0048】
より詳細には、301は実施例1によって243Kで光分解したものであり、炭素13の成分比は98.6%であり、炭素13の選択度は約7,000と測定された。
【0049】
これに対し、302は比較例1によって常温光分解した場合であり、炭素13の成分比は97.8%、炭素13の選択度は約4,000であった。
【0050】
一方、303は自然成分比である1.1%の炭素13を比較したものである。
【0051】
その結果、本発明による実施例1は、炭素13の選択度が4,000〜10,000と、成分比が1.1%である炭素13のみに集中的にエネルギーを投入して分離することができるため、エネルギー効率が高く、小規模の設備で大量生産が可能であることが確認できる。本発明を適用する場合、濃縮炭素13の生産コストを大きく節減することで、炭素13の様々な活用に寄与することができると期待される。
【0052】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
【符号の説明】
【0053】
101 自然成分比ホルムアルデヒドの常温(300K)光分解スペクトル
102 243Kの温度における光分解スペクトル
103 203Kの温度における光分解スペクトル
201 自然成分比ホルムアルデヒドの常温(300K)光分解スペクトル
202 203Kの温度における光分解スペクトル
301 低温(243K)光分解生成物の炭素13の成分比(98.6%)
302 常温光分解生成物の炭素13の成分比(97.8%)
303 自然成分比一酸化炭素(1.1%)
401 ホルムアルデヒド気体供給(220〜250K)
402 ホルムアルデヒド気体の冷却バス(cooling bath)(200〜250K)
403 ホルムアルデヒドの低温光分解装置(200〜250K)
404 ホルムアルデヒド捕獲装置(100K)
405 一酸化炭素の酸化装置
406 炭素13二酸化炭素の捕獲装置