特許第6828102号(P6828102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828102
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】コンピューターソフトウェア製品
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/22 20060101AFI20210128BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20210128BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20210128BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A61M39/22 100
   A61B18/14
   A61B34/20
   F16K31/06 305L
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-143623(P2019-143623)
(22)【出願日】2019年8月5日
(62)【分割の表示】特願2015-71576(P2015-71576)の分割
【原出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2019-205869(P2019-205869A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年8月5日
(31)【優先権主張番号】14/231,812
(32)【優先日】2014年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】 伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−031659(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/018385(WO,A1)
【文献】 実開昭52−009993(JP,U)
【文献】 特開昭60−034581(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02190983(GB,A)
【文献】 米国特許第03916948(US,A)
【文献】 特開2013−244042(JP,A)
【文献】 特表2001−509697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/22
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体腔に挿入するように構成されているプローブ、及び医療装置と連係して動作するコンピューターソフトウェア製品であって、前記医療装置が、
加圧流体源からの灌注流体を受容すべく構成された流入管と、
前記灌注流体を前記医療装置のそれぞれの流出口に送達すべく構成された少なくとも第1及び第2の流出管であって、前記第1及び第2の流出管の内の一方は、前記第1及び第2の流出管の内の他方の内側に挿入されておらず、前記第1及び第2の流出管の内の一方の外側に、前記第1及び第2の流出管の内の他方が位置している、第1及び第2の流出管と、
前記流入管と少なくとも前記第1及び第2の流出管との間に連結された室を含むマニホールドと、
前記室の内部に含まれる、磁気材料を含んでなるボールと、
前記室の外部に配設された磁場発生器と、
を具備しており、
前記コンピューターソフトウェア製品が、プログラム命令が保存される非一時的なコンピューター可読媒体を具備し、前記プログラム命令が、コンピューターによって読み出されたときに、前記磁場発生器に前記室内に可変磁場を生成させ、それにより、少なくとも、前記第1の流出管を封鎖する第1の位置と、前記第2の流出管を封鎖する第2の位置と、前記第1及び第2の流出管をいずれも封鎖しない第3の位置との間を前記ボールが移動するようにした、コンピューターソフトウェア製品。
【請求項2】
前記流入管、前記第1の流出管、及び、前記第2の流出管は、互いに略同一の方向に延在しており、前記流入管の中心軸、前記第1の流出管の中心軸、及び、前記第2の流出管の中心軸は、同軸でない、請求項1に記載のコンピューターソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に侵襲プローブに関し、具体的には、灌注流体をプローブ内の特定の灌注孔に導くことのできるマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲にわたる医療手技では、センサ、管、カテーテル、分配装置、及び移植部材などの物体を体内に配置することが必要となる。カテーテルを用いて行われる医療手技の例は、心臓組織等の体内組織のアブレーションである。アブレーションは、心房細動等の様々な不整脈の治療に用いることができる。そのような手技は、当該技術分野において既知である。静脈瘤の治療など、体内組織のアブレーションを用いる他の医療手技も、当該技術分野において既知である。このような手技を行うためのアブレーションエネルギーは、高周波(RF)エネルギーの形態であってよく、これは、手技に用いられるカテーテルの1つ以上の電極によって、組織に供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このアブレーションエネルギーを体内組織に印加する場合、制御されていないと、組織の温度の望ましくない上昇が起こることがある。したがって、アブレーションを伴う任意の医療手技中に、組織の温度を監視及び制御することが重要である。制御のための1つの方法は、焼灼されている組織を灌注することである。
【0004】
参照により本特許出願に援用される文書は本出願の一部をなすものとみなされるべきであるが、これらの援用される文書において、任意の用語が、本明細書において明示的又は暗示的になされる定義と矛盾するように定義される限りは、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態による灌注医療装置が提供されており、この灌注医療装置は、加圧流体源からの灌注流体を受容すべく構成された流入管と、灌注流体を装置のそれぞれの流出口に送達すべく構成された少なくとも第1及び第2の流出管と、流入管と少なくとも第1及び第2の流出管との間に連結された室を含むマニホールドと、室の内部に含まれる、磁気材料を含むボールと、室の外部に配設された磁場発生器であって、少なくとも、第1の流出管を封鎖する第1の位置と、第2の流出管を封鎖する第2の位置と、流出管をいずれも封鎖しない第3の位置との間をボールが移動するように、可変磁場を室内に生ずるように構成された、磁場発生器と、を含む。
【0006】
幾つかの実施形態において、それぞれの流出口は、複数のアブレーション電極の対応する孔につながっている。追加の実施形態では、灌注流体は食塩水を含み得る。更なる実施形態において、磁気材料は、スチールを含み得る。
【0007】
補足的な実施形態において、磁場発生器は、室の外部に配設された複数の電磁石を含み得る。幾つかの実施形態において、磁場発生器は、所定の電磁石を励起させることによって可変磁場を生ずるように構成され得る。
【0008】
また、本発明の実施形態により、体腔に挿入管の遠位端を挿入することを含む方法も提供されており、この挿入管は医療装置に連結されており、医療装置は、加圧流体源からの灌注流体を受容すべく構成された流入管と、灌注流体を装置のそれぞれの流出口に送達すべく構成された少なくとも第1及び第2の流出管と、該管と少なくとも第1及び第2の流出管との間に連結された室を含むマニホールドと、室の内部に含まれる、磁気材料を含むボールと、を含み、磁場発生器は、室の外部に配設されている。本方法はまた、少なくとも、第1の流出管を封鎖する第1の位置と、第2の流出管を封鎖する第2の位置と、流出管をいずれも封鎖しない第3の位置との間をボールが動くように、磁場発生器を介して室内に可変磁場を生成することも含む。
【0009】
更に、本発明の一実施形態による、患者の体腔に挿入するように構成されているプローブ、及び医療装置と連係して動作するコンピューターソフトウェア製品も提供されており、この医療装置は、加圧流体源からの灌注流体を受容すべく構成された流入管と、灌注流体を装置のそれぞれの流出口に送達すべく構成された少なくとも第1及び第2の流出管と、を含む。医療装置はまた、流入管と少なくとも第1及び第2の流出管との間に連結された室を含むマニホールドと、室の内部に含まれる、磁気材料を含むボールと、室の外部に配設された磁場発生器と、を含む。本製品は、プログラム命令が保存される非一時的なコンピューター可読媒体を含み、この命令は、コンピューターによって読み出されたときに、磁場発生器に室内に可変磁場を生成させ、それにより、少なくとも第1の流出管を封鎖する第1の位置と、第2の流出管を封鎖する第2の位置と、流出管をいずれも封鎖しない第3の位置との間をボールが移動するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面を参照しながらあくまで一例として、本開示を本明細書において説明する。
図1】本発明の一実施形態による、灌注流体の流れを制御すべく構成されたマニホールドを具備する医療システムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態によるマニホールドの長手方向における概略斜視図である。
図3A】本発明の一実施形態によるマニホールドの短手方向における概略断面図である。
図3B】本発明の一実施形態によるマニホールドの短手方向における概略断面図である。
図3C】本発明の一実施形態によるマニホールドの短手方向における概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態による、心臓アブレーション手技中にマニホールドを使用して灌注を制御する方法を例示するフローチャートである。
図5】心臓アブレーション手技中に心内膜組織に接触するプローブの遠位先端を示す概略詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概論
心臓アブレーション等の様々な治療手技は、患者の体内に挿入されるカテーテル等の侵襲的医療用プローブを使用する。心臓でのアブレーション手技中に、焼灼される心臓表面、並びに表面の下層の心組織の局所的過熱が起こる場合がある。この表面過熱は、炭化として顕在化する場合があり、下層組織の過熱は、組織への他の損傷を引き起こし、組織の貫通さえももたらす場合もある。表面及び下層組織の温度を制御するために、焼灼される部位は、炭化を防止するために、典型的には食塩水である灌注流体で灌注され得る。
【0012】
炭化の危険性に加えて、焼灼される領域の血液の過熱は、潜在的に危険な血塊の形成を引き起こすことがあり、これは成長して心臓発作又は脳卒中を発症する可能性がある。場合によっては、灌注は、血液を冷却及び希釈することにより、血塊の形成を低減させる可能性がある。
【0013】
カテーテルによっては、組織に灌注流体を送達するための対応する孔を有する、複数のアブレーション電極を含んで構成されるものもある。第1のアブレーション電極が組織を焼灼している間、その電極の対応する孔は組織によって封鎖され得、それによって、灌注流体の殆どが第2のアブレーション電極の孔の中を通るようになっている。本発明の実施形態は、灌注流体を1つ以上のアブレーション電極のそれぞれの孔に方向付け、それにより、適切な領域が確実に潅注されるようにした医療装置を提供するものである。
【0014】
幾つかの実施形態において、医療装置は、流入管と少なくとも第1及び第2の流出管との間に連結されたマニホールドを具備する。以下に記載されているように、流入管は、加圧流体源からの灌注流体を受容すべく構成されており、流出管は、灌注流体を装置のそれぞれの流出口に送達すべく構成されている。
【0015】
幾つかの実施形態では、磁気材料を含んでなるボールが室の内部に含まれ、磁場発生器は室の外部に配設され、少なくとも、第1の流出管を封鎖する第1の位置と、第2の流出管を封鎖する第2の位置と、流出管をいずれも封鎖しない第3の位置との間をボールが移動するように、可変磁場を室内に生ずるように構成されている。
【0016】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による医療システム20の概略描写図である。システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,California)製のCARTO(商標)システムに基づき得る。システム20は、カテーテル等のプローブ22及び制御コンソール24を備える。以下に述べる実施形態において、プローブ22は、診断又は治療処置、例えば、心臓26内の心臓組織にアブレーションを施すなどの目的に使用されるものと想定される。あるいは、プローブ22は、必要な変更を加えて、心臓又は他の体内の臓器において他の治療及び/又は診断目的で使用することもできる。
【0017】
プローブ22は、可撓性挿入管28と、挿入管の近位端に連結されたハンドル30と、を具備する。ハンドル30を操作することで、操作者32は、患者34の体腔内にプローブ22を挿入することができる。例えば、操作者32は、プローブ22の遠位端36が心臓26の室に入り、所望の位置(単数又は複数)で心内膜組織に係合するように、プローブ22を患者34の血管系を通して挿入することができる。
【0018】
システム20は通常、磁気位置検知を用いて、心臓26の内側における遠位端36の位置座標を決定する。コンソール24は、磁場発生器40を駆動させて患者34の体内で磁場を発生させる、ドライバ回路38を備える。通常、磁場発生器40はコイルを含み、患者34の体外の既知の位置で患者の胴体の下方に置かれる。これらのコイルは、心臓26を含む予め既定された作業範囲内に磁場を生成する。プローブ22の遠位端36内の磁場センサ42(本明細書では、ポジションセンサ42とも呼ばれる)は、コイルからの磁場に応じて電気信号を発生させ、それによって、コンソール24は心臓の室内の遠位端36の位置を決定することができる。
【0019】
本発明の例では、システム20は磁気ベースのセンサを使用して遠位端36の位置を測定するが、他の位置追跡技術を使用してもよい(例えば、インピーダンスベースのセンサ)。磁気位置追跡技術は、例えば、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第5,443,489号、同第6,788,967号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、及び同第6,177,792号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。インピーダンスに基づいた位置追跡技術は、例えば、米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号及び同第5,944,022号に説明されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。両システムでは、遠位端36の位置に応じて異なる信号が生成される。
【0020】
プロセッサ44は、ロケーション座標及び配向座標の両方を通常含む、遠位端36の位置座標を決定するために、これらの信号を処理する。上記に説明された位置を検知する方法は、上述のCARTO(商標)システムで実行され、上記に引用した特許及び特許出願に詳細に説明されている。
【0021】
典型的には、プロセッサ44は、プローブ22からの信号を受け取り、コンソール24の他の構成要素を制御するのに適した、フロントエンド回路及びインターフェース回路を備えた、汎用コンピューターを含む。プロセッサ44は、本明細書に記載される機能を実行するように、ソフトウェアでプログラムすることができる。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードするか、又は光学的、磁気的又は電子的記録媒体などの、非一時的な実体のある媒体上に提供され得る。あるいは、プロセッサ44の機能の一部又はすべては、専用の又はプログラム可能な、デジタルハードウェア構成要素によって実行され得る。
【0022】
プローブ22及びシステム20の他の構成要素から受け取られる信号に基づいて、プロセッサ44は、ディスプレイ46を駆動させて、患者の体内における遠位端36の位置を示す画像48、並びに進行中の手技に関する状況情報及びガイダンスを操作者に32を提示する。プロセッサ44は、画像48を表わすデータをメモリ50に保存する。幾つかの実施形態では、操作者32は、1つ以上の入力装置52を用いて、画像48を操作することができる。
【0023】
プローブ22はまた、遠位端36内に収容された力センサ54も含む。力センサ54は、遠位先端により心内膜組織に加えられる力を示すコンソールへの信号を生成することによって、プローブ22の遠位先端56により心臓26の心内膜組織に加えられる力を測定する。一実施形態において、力センサは、遠位先端56内のばねによって接続された磁場送受信器を具備していてもよく、ばねのたわみ測定に基づく力の示度を生成することができる。この種のプローブ及び力センサの更なる詳細は、米国特許出願公報第2009/0093806号及び同第2009/0138007号に記載されており、これらの開示内容を参照により本明細書に援用する。あるいは、遠位端32は、別の種類の力センサを備えてもよい。
【0024】
本実施形態において、電極58は、遠位端36上に取り付けられている。電極58は典型的に、挿入管28の絶縁シース60を覆って形成される薄い金属層を含む。以下に記載されているように、図1に示す構成において、各電極58は、1つ以上の対応する灌注孔62と、遠位端36内の1つ以上の孔を通して灌注流体を送達すべく構成されている対応する流出管64と、を有する。図1に示す実施例において、電極58、孔62、及び流出管64は、識別用の数字に英字を付加することによって、電極に電極58A及び58Bが包含されるといったように区別され得る。電極58Aは孔62Aを有し、流出管64Aと流体連通している。電極58Bは孔62Bを有し、流出管64Bと流体連通している。
【0025】
コンソール24は更に、無線周波数(RF)アブレーションモジュール66と灌注モジュール68とを含む。プロセッサ44は、アブレーションモジュールを用いて、電極58を介して印加されるアブレーション電力のレベルなどのアブレーションパラメーターを、監視し制御する。アブレーションモジュールは更に、提供されるアブレーションの持続時間を監視及び制御してもよい。
【0026】
通常、アブレーション中は、アブレーションを提供する1つ以上の電極、並びにその周辺領域に熱が生じる。熱を消散させ、アブレーションプロセスの効率を改善するために、システム20は、流入管72を介して遠位端36に灌注流体を送達する。システム20では、灌注流体の圧力及び温度などの灌注パラメーターの監視及び制御を行う加圧流体源として、灌注モジュール68が使用されている。灌注流体は通常、食塩液であり、灌注モジュール68によって制御される流体の流量は、一般的に、およそ10〜20cc/分の範囲であるが、この範囲より大きくても小さくてもよい。
【0027】
以下に詳細に記載されているように、流入管72から流出管64A及び/又は流出管64Bへの灌注流体の流れは、マニホールド70で制御されている。図1の構成に示すマニホールド70はハンドル30内に位置付けられているが、マニホールドは、システム20のどの部分に位置付けられてもよい。例えば、マニホールドは、挿入管28の内部に位置付けられてもよいし、又はコンソール24の内部に位置付けられてもよい。
【0028】
図2は、本発明の実施形態によるマニホールド70の長手方向における概略斜視図であり、図3A〜3Cは、マニホールド70の短手方向における概略断面図である。マニホールド70は、室の第1の端部にて流入管72と流体連通し、かつ室の第2の端部にて流出管64A、64Bと流体連通している密閉室80を具備する。流出管によって、マニホールドのそれぞれの孔(この場合、図1の孔62A及び62B)に灌注流体が送達される。
【0029】
ボール82は室80の内部に収容され、電磁石84は、典型的には対称的に室80の外部に配設される。図2及び3に示す実施例において、電磁石84は、識別用の数字に英字を付加することによって、電磁石に電磁石84A、84B及び84Cが包含されるといったように区別され得る。
【0030】
ボール82はスチールなどの磁気材料を含み、電磁石84は室80の内部に可変磁場を生ずる磁場発生器として構成されていることから、ボールが室の内部を移動するようになっている。本発明の実施形態において、プロセッサ44は、所定の電磁石に電力を伝達することによって、所定の電磁石84を励起させることができる。同様に、プロセッサ44は、所定の電磁石への電力の流れを止めることによって、所定の電磁石84を失活させ得ることができる。本発明の実施形態は、ボール82を室80の内部に位置決めし、かつ電磁石84を室の外部に位置決めすることにより、密閉式のマニホールドを提供し、それによって医療手技中に外部からの何らかの物質がマニホールド70に侵入するのを防ぐ。
【0031】
図3Aに示す実施例において、プロセッサ44は、電磁石84Aを励起させ、かつ電磁石84B及び84Cを失活させることにより、室80の内部のボール82を第1の位置に移動させて、流出管64Aを封鎖する。マニホールド70は、ボール82が第1の位置にあるときに流入管72から流出管64Aへの灌注流体の流れが封鎖されるように構成されている。ボール82が第1の位置にあるとき、流入管72からの灌注流体は、流出管64Bを経由して孔62Bの中を通る。
【0032】
図3Bに示す実施例において、プロセッサ44は、電磁石84Bを励起させ、かつ電磁石84A及び84Cを失活させることにより、室80の内部のボール82を第2の位置に移動させて、流出管64Bを封鎖する。マニホールド70は、ボール82が第2の位置にあるときに流入管72から流出管64Bの灌注流体の流れが封鎖されるように構成されている。ボール82が第2の位置にあるとき、流入管72からの灌注流体は、流出管64Aを経由して孔62Aの中を通る。
【0033】
図3Cに示す実施例において、プロセッサ44は、電磁石84Cを励起させ、かつ電磁石84A及び84Bを失活させることにより、室80の内部のボール82を第3の位置に移動させて、流出管64A及び64Bが封鎖されないようにしている。ボール82が第3の位置にあるとき、いずれの流出管も封鎖されないため、流入管72からの灌注流体は、流出管64Aを経由して孔62Aの中を通ると共に、流出管64Bを経由して孔62Bの中を通る。
【0034】
図4は、本発明の実施形態によるアブレーション手技中の潅注制御方法を示すフローチャートであり、図5は、心臓のアブレーション手技中に心内膜組織110と接触している遠位先端部56を示す概略詳細図である。挿入工程90では、操作者32はハンドル30を操作してプローブ22の遠位端36を心臓26の室に挿入する。選択工程92では、操作者は入力装置52を使用して、アブレーション手技を施行するための所定の電極58を選択する。
【0035】
識別工程94においては、励起されたときに、識別された電極内の孔62へと灌注流体を流動させる位置にボール82を移動させる所定の電磁石84が、プロセッサ44によって識別される。操作工程96では、操作者32はハンドル30を操作して、選択された電極を心内組織に対して位置付ける。また、励起工程98では、プロセッサ44は、識別された磁石を励起させることにより、ボール82を上述の位置のいずれか1箇所に移動させる。
【0036】
システム20は選択された電極を用い、開始工程100にて孔62を経由して心内組織の灌注を開始し、アブレーション工程102にてアブレーション手技を施行し、停止工程104にて灌注を停止させて、本方法を終了する。図5に示す実施例では、プロセッサ44は(図3Bに示すように)電磁石84Bを励起させて流出管64Bを封鎖し、それにより、灌注流体112を流出管64A及び孔62Aに通過させて、焼灼対象の心内組織を灌注する。
【0037】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかであろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組合わせと部分的組合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には想到されるものであり、従来技術では開示されていないものである。
【0038】
〔実施の態様〕
(1) 灌注医療装置であって、
加圧流体源からの灌注流体を受容すべく構成された流入管と、
前記灌注流体を前記装置のそれぞれの流出口に送達すべく構成された少なくとも第1及び第2の流出管と、
前記流入管と少なくとも前記第1及び第2の流出管との間に連結された室を含むマニホールドと、
前記室の内部に含まれる、磁気材料を含んでなるボールと、
前記室の外部に配設された磁場発生器であって、少なくとも、前記第1の流出管を封鎖する第1の位置と、前記第2の流出管を封鎖する第2の位置と、前記流出管をいずれも封鎖しない第3の位置との間を前記ボールが移動するように、可変磁場を前記室内に生ずるように構成された、前記磁場発生器と、
を具備してなる、灌注医療装置。
(2) 前記それぞれの流出口が、複数のアブレーション電極のそれぞれの孔につながっている、実施態様1に記載の灌注医療装置。
(3) 前記灌注流体が食塩水を含む、実施態様1に記載の灌注医療装置。
(4) 前記磁気材料がスチールを含む、実施態様1に記載の灌注医療装置。
(5) 前記磁場発生器が、前記室の外部に配設された複数の電磁石を含む、実施態様1に記載の灌注医療装置。
【0039】
(6) 前記磁場発生器が、所定の電磁石を励起させることによって前記可変磁場を生ずるように構成されている、実施態様5に記載の灌注医療装置。
(7) 方法であって、
体腔内に挿入管の遠位端を挿入することであって、前記挿入管が医療装置に連結されており、前記医療装置が、
加圧流体源からの灌注流体を受容すべく構成された流入管と、
前記灌注流体を前記装置のそれぞれの流出口に送達すべく構成された少なくとも第1及び第2の流出管と、
前記流入管と少なくとも前記第1及び第2の流出管との間に連結された室を含むマニホールドと、
前記室の内部に含まれる、磁気材料を含んでなるボールと、
前記室の外部に配設された磁場発生器と、
を具備している、ことと、
少なくとも、前記第1の流出管を封鎖する第1の位置と、前記第2の流出管を封鎖する第2の位置と、前記流出管をいずれも封鎖しない第3の位置との間を前記ボールが移動するように、前記磁場発生器を介して前記室内に可変磁場を生成することと、
を含む、方法。
(8) 前記それぞれの流出口が、複数のアブレーション電極のそれぞれの孔につながっている、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記灌注流体が食塩水を含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記磁気材料がスチールを含む、実施態様7に記載の方法。
【0040】
(11) 前記磁場発生器が、前記室の外部に配設された複数の電磁石を含む、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記可変磁場を生成することが、所定の電磁石を励起させることを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 患者の体腔に挿入するように構成されているプローブ、及び医療装置と連係して動作するコンピューターソフトウェア製品であって、前記医療装置が、
加圧流体源からの灌注流体を受容すべく構成された流入管と、
前記灌注流体を前記装置のそれぞれの流出口に送達すべく構成された少なくとも第1及び第2の流出管と、
前記流入管と少なくとも前記第1及び第2の流出管との間に連結された室を含むマニホールドと、
前記室の内部に含まれる、磁気材料を含んでなるボールと、
前記室の外部に配設された磁場発生器と、
を具備しており、
前記製品が、プログラム命令が保存される非一時的なコンピューター可読媒体を具備し、前記命令が、コンピューターによって読み出されたときに、前記磁場発生器に前記室内に可変磁場を生成させ、それにより、少なくとも、前記第1の流出管を封鎖する第1の位置と、前記第2の流出管を封鎖する第2の位置と、前記流出管をいずれも封鎖しない第3の位置との間を前記ボールが移動するようにした、コンピューターソフトウェア製品。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5