(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップ(d)が、検出された相互作用を使用して、反応混合物のうちの2つに共通な被験ヌクレオチドが、プライミングされた鋳型核酸分子の、次の適正なヌクレオチドであるのかどうかを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
ステップ(b)において、4つの異なる反応混合物が、プライミングされた鋳型核酸分子と、逐次的に接触され、異なるヌクレオチドの各々が、合計2つの反応混合物中に存在する、請求項2に記載の方法。
ステップ(d)が、検出された相互作用を使用して、反応混合物のうちの3つに共通な被験ヌクレオチドが、プライミングされた鋳型核酸分子の、次の適正なヌクレオチドであるのかどうかを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
ステップ(b)において、6つの異なる反応混合物が、プライミングされた鋳型核酸分子と、逐次的に接触され、異なるヌクレオチドの各々が、合計3つの反応混合物中に存在する、請求項4に記載の方法。
ステップ(a)及び(b)が、2種類の被験ヌクレオチドの、4つの異なる組合せについて、逐次的に実行され、異なるヌクレオチド種類の各々が、プライミングされた鋳型核酸と、合計2回にわたり接触される、請求項18に記載の方法。
ステップ(a)及び(b)が、2種類の被験ヌクレオチドの、6つの異なる組合せについて、逐次的に実行され、異なるヌクレオチド種類の各々が、合計3回にわたり存在する、請求項18に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(詳細な説明)
本明細書において、プライミングされた鋳型核酸分子のヌクレオチド配列を決定するために使用されうる技法であって、配列内の次の適正なヌクレオチドの同定が、ヌクレオチドの組込みから完全に独立である技法が、開示される。より特定すると、開示された結合によるシーケンシング法は、三元複合体の形成及び検出に依拠して、次の適正なヌクレオチドを同定する。これは、組み込まれたヌクレオチドを同定することに依拠して配列情報を決定する、合成によるシーケンシング手順と、顕著に異なる。
【0024】
結合によるシーケンシング手順は、次の鋳型塩基を同定する「精査」ステップ及び1つ以上の相補的なヌクレオチドを、プライマーの3’末端へと付加する、任意選択の「組込み」ステップを含む。組込みステップは、精査ステップと同時であってもよく、別個であってもよい。精査ステップは、ヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼとシーケンシングされる核酸(鋳型核酸)との間の相互作用をモニタリングすることを含む。任意選択的に、相互作用は、次の適正なヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼ−核酸間の相互作用を安定化させる安定化剤の存在下でありうる。代替的に、3’末端のヌクレオチドをブロッキングされたプライマーは、三元複合体を安定化させ、組込み反応の進行を防止するのに使用されうる。プライミングされた鋳型核酸及びポリメラーゼの間の二元複合体は、高濃度の一価のカチオン、グルタミン酸イオンの濃度及びこれらの組合せの条件をもたらすことのような、多数の異なる手法により不安定化させうるので有利である。
【0025】
この技法は、非標識化(例えば、天然)ヌクレオチド、検出可能な標識(例えば、蛍光標識又は他の光学的に検出可能な標識)を含むヌクレオチド又は標識化ヌクレオチド若しくは非標識化ヌクレオチド類似体(例えば、可逆性のターミネーター部分を含有する修飾ヌクレオチド)を含む、多様な種類のヌクレオチドを使用して実施しうるので、有利である。さらに、この技法は、制御された反応条件、配列の一義的な決定、安価な試薬の総費用及び安価な測定器の費用をもたらす。
【0026】
開示された技法は、任意の手段により、任意の理由のために、プライミングされた鋳型核酸の次の塩基のアイデンティティーを決定するために使用される結合反応へと適用されうる。この技法は、DNAポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸に相補的な次の適正なヌクレオチド(例えば、dNTP)との特異的結合をモニタリングし、この特異的結合を非特異的結合から識別するのに使用されうる。この技法は、単一のヌクレオチドの決定(例えば、SNP決定)へと適用される場合もあり、代替的に、一度に1つずつのヌクレオチドを同定する、反復的なサイクルを利用する、より広範な核酸シーケンシング手順へと適用される場合もある。
【0027】
本明細書において提示された組成物、システム及び方法は、現行の、合成によるシーケンシング方法と関連する1つ以上の問題を、克服又は軽減する。提示された方法は、外因性の検出可能な標識を欠く天然ヌクレオチドを使用してもなお、実行されうる。任意選択的に、この方法は、検出可能な標識(例えば、ヌクレオチド上、ポリメラーゼ上又はシーケンシングされる鋳型上の標識)の非存在下において実行される。当然ながら、開示された手順において、標識化ヌクレオチド及び/又は標識化ポリメラーゼもまた、使用されうる。
【0028】
(定義)
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書において使用される、全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。明確さのために述べると、以下の具体的用語は、指定された意味を有する。他の用語は、本明細書の、他の節において定義されている。
【0029】
文脈により、そうでないことが明確に指示されない限りにおいて、単数形の「ある(a)」、「ある(an)」及び「その(the)」は、複数の指示対象を含む。本記載及び特許請求の範囲において使用された概算の言葉は、その言葉が関連する基本的な機能を結果的に変えることなく許容可能な形で変動しうる、任意の定量的表現を修飾するのに適用されうる。したがって、「約」のような用語により修飾された値は、指定された正確な値に限定されないものとする。そうでないことが示されない限りにおいて、本明細書及び特許請求の範囲において使用された、分子量、反応条件のような、成分、特性の数量を表す全ての数は、全ての場合に、「約」という用語により修飾されていると理解するものとする。したがって、逆のことが示されない限りにおいて、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲において明示された数値パラメータは、本発明により得られようとする、所望の特性に応じて変動しうる近似値である。せめて、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、かつ、常套的な丸めの技法を適用することにより、解釈すべきである。
【0030】
項目の集合に言及して、本明細書で使用された場合の「各」という用語は、集合中の個々の項目を同定することが意図され、必ずしも、集合中のあらゆる項目を指すわけではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外も生じうる。
【0031】
本明細書で使用された「結合によるシーケンシング」とは、ポリメラーゼ及びコグネイトの(cognate)ヌクレオチドのプライミングされた鋳型核酸への特異的結合が、プライミングされた鋳型核酸のプライマー鎖へと組み込まれる、次の適正なヌクレオチドを同定するために使用されるシーケンシング法を指す。特異的結合相互作用は、ヌクレオチドのプライマーへの化学的組込みをもたらさなくともよい。一部の実施形態において、特異的結合相互作用は、ヌクレオチドのプライマー鎖への化学的組込みに先行するか、又は類似する次の適正なヌクレオチドのプライマーへの化学的組込みに先行する。したがって、次の適正なヌクレオチドの同定は、次の適正なヌクレオチドの組込みを伴わずに生じうる。
【0032】
本明細書で使用された「〜を安定化させる」及びこの文法的変化形は、定常を保つ、又は変動を制限することを意味する。三元複合体の「安定化」とは、三元複合体の存在を促進し、ヌクレオチドの組込みを防止する工程を指す。この用語は、二元複合体又は三元複合体を含むがこれらに限定されない様々な複合体のうちのいずれかに適用されうる。例えば、安定化する複合体は、ポリメラーゼ、プライミングされた鋳型核酸分子及びコグネイトのヌクレオチドの間の、三元複合体でありうる。一般に、三元複合体の安定化は、三元複合体のヌクレオチド構成要素の、三元複合体のプライミングされた核酸構成要素への組込みを、防止する。したがって、三元複合体を安定化させることとは、三元複合体の構成要素に結合する非共有結合的相互作用を促進又は延長すること、又は三元複合体の構成要素に結合する非共有結合的相互作用の破壊を阻害することを指す場合がある。
【0033】
本明細書で使用された「〜を不安定化させる」及びこの文法的変化形は、何かを、その通常の様式では、存在又は機能し続けることが不可能とすることを意味する。二元複合体「を不安定化させること」とは、二元複合体の溶解又は分解を促進する工程を指す。「〜を不安定化させること」とはまた、二元複合体の形成を阻害又は防止する工程も含む。
【0034】
本明細書で使用された「一価のカチオンをもたらす塩」とは、水溶液中において解離して、単一の陽性の電荷を有するカチオンをもたらすイオン化合物である。例えば、カチオンは、酸化状態が、+1である金属カチオンでありうる。
【0035】
本明細書で使用された「グルタミン酸塩」とは、水溶液中において解離して、グルタミン酸アニオンをもたらすイオン化合物である。
【0036】
本明細書で使用された、二元複合体の形成よりも三元複合体の形成を「増強する」反応条件をもたらすこととは、三元複合体のシグナルの二元複合体のシグナルに対して1を超える比を与える条件をもたらすことを意味する。2倍の増強とは、三元複合体の形成と関連するシグナルが、二元複合体の形成と関連するシグナルの2倍であることを意味する。
【0037】
本明細書で使用された「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」とは、互いに共有結合的に連結された、少なくとも2つのヌクレオチド又はこれらの類似体を意味する。したがって、「核酸」は、核酸の合成時に、重合化酵素の影響を受けうる、DNA、RNA又はこれらの任意の組合せを包含する。用語は、一本鎖、二本鎖又は多数本鎖の、DNA、RNA及びこれらの類似体(誘導体)を含む。二本鎖核酸は、核酸の合成を妨げうる二次構造を最小化しうるので有利である。二本鎖核酸は、ニック又は一本鎖ギャップを有しうる。核酸は、単一の核酸分子の集団を表す場合もあり、複数の核酸分子の集団を表す場合もあり、クローン的に増幅された核酸分子の集団を表す場合もある。
【0038】
本明細書で使用された「鋳型核酸」とは、任意の開示された方法を使用して、検出、シーケンシング、査定、又は他の形において解析される核酸である。
【0039】
本明細書で使用された「プライミングされた鋳型核酸」とは、プライマーによりプライミングされた(すなわち、これとハイブリダイズされた)鋳型核酸であり、この場合、プライマーは、鋳型核酸の少なくとも一部と相補的な配列を含む3’末端を有するオリゴヌクレオチドである。プライマーは、任意選択的に、遊離5’末端を有しうる(例えば、鋳型と非共有結合的に会合したプライマー)、又はプライマーは、鋳型と連続的でありうる(例えば、ヘアピン構造を介して)。プライミングされた鋳型核酸は、鋳型核酸に結合した、相補的なプライマーを含む。
【0040】
本明細書で使用された「次の鋳型ヌクレオチド」(又は「次の鋳型塩基」)は、ハイブリダイズしたプライマーの3’末端のすぐ下流に位置する鋳型核酸内の、次のヌクレオチド(又は塩基)を指す。言い換えると、次の鋳型ヌクレオチド(又は塩基)は、鋳型鎖において、プライマーの3’端とハイブリダイズした鋳型鎖内の塩基のすぐ5’側に位置する。
【0041】
本明細書で使用された「次の適正なヌクレオチド」(場合によって、「コグネイト」ヌクレオチドと称する)とは、ハイブリダイズしたプライマーの3’末端のすぐ下流に位置する、次の鋳型塩基と相補的な塩基を有するヌクレオチドである。次の鋳型塩基と相補的ではない塩基を有するヌクレオチドは、「不適正な」(又は「非コグネイト」)ヌクレオチドと称される。
【0042】
本明細書で使用された「ブロッキングされた、プライミングされた鋳型核酸」とは、プライマーの3’末端におけるホスホジエステル結合の形成を回避する、又は防止するように修飾された、プライミングされた鋳型核酸である。ブロッキングは、例えば、プライマーの3’末端における、五炭糖の3’又は2’位における、ブロッキング基を含む化学修飾により達せられうる。代替的に、又は加えて、ホスホジエステル結合の形成を回避又は防止する化学修飾はまた、ヌクレオチドの窒素性塩基に対してもなされうる。当業者は、これらの種類のブロッキング基の各々を含む、可逆性のターミネーターであるヌクレオチド類似体に精通している。プライマー3’末端におけるこれらの類似体の組込みは、ブロッキングされた、プライミングされた鋳型核酸を生じる。
【0043】
本明細書で使用された「ヌクレオチド」とは、窒素性塩基、五炭糖(リボース又はデオキシリボース)及び少なくとも1つのリン酸基を含む分子である。用語は、外因性の標識又は可逆性のターミネーター及びヌクレオチド類似体を含むように修飾された、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチドを包含する。
【0044】
本明細書で使用された「被験ヌクレオチド」とは、プライミングされた鋳型核酸及びポリメラーゼをさらに含む、三元複合体の形成に関与するその能力について探索されるヌクレオチドである。
【0045】
本明細書で使用された「天然」ヌクレオチドとは、外因性の標識(例えば、蛍光色素又は他の標識)又はヌクレオチド類似体を特徴付けうる化学修飾のような化学修飾を含まない、自然におけるヌクレオチドを指す。本明細書で記載された、結合によるシーケンシング手順を実行するために有用な天然ヌクレオチドの例は、dATP(2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸);dGTP(2’−デオキシグアノシン−5’−三リン酸);dCTP(2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸);dTTP(2’−デオキシチミジン−5’−三リン酸)及びdUTP(2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸)を含む。
【0046】
本明細書で使用された「ヌクレオチド類似体」は、天然ヌクレオチドの構成要素(例えば、窒素性塩基、五炭糖又はリン酸基)のうちのいずれかを置きかえ、かつ/又は修飾する化学的部分などの修飾を有する。ヌクレオチド類似体は、核酸重合化反応において、ポリメラーゼにより組込み可能な場合もあり、組込み不可能な場合もある。任意選択的に、ヌクレオチド類似体の3’−OH基は、ある部分により修飾される。この部分は、可逆性又は不可逆性の3’ターミネーターでありうる。ヌクレオチドの塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン若しくはウラシル又はこれらの類似体のうちのいずれかでありうる。任意選択的に、ヌクレオチドは、イノシン塩基、キサンチン塩基、ヒポキサンチン塩基、イソシトシン塩基、イソグアニン塩基、ニトロピロール(3−ニトロピロールを含む)塩基又はニトロインドール(5−ニトロインドールを含む)塩基を有する。ヌクレオチドは、ATP、UTP、CTP、GTP、ADP、UDP、CDP、GDP、AMP、UMP、CMP、GMP、dATP、dTTP、dUTP、dCTP、dGTP、dADP、dTDP、dCDP、dGDP、dAMP、dTMP、dCMP及びdGMPを含みうるがこれらに限定されない。ヌクレオチドはまた、DNAポリメラーゼの終結阻害剤であり、ddNTP(ddGTP、ddATP、ddTTP、ddUTP及びddCTP)と略記される、ジデオキシヌクレオチド又は2’,3’ジデオキシヌクレオチドも含有しうる。
【0047】
ヌクレオチド類似体に関して、本明細書で使用される場合の「ブロッキング部分」とは、核酸重合化反応の組込みステップにおいて、ヌクレオチドの3’酸素が、第2のヌクレオチドへの共有結合的連結を(例えば、プライマーの3’端において存在する場合、ヌクレオチド類似体の3’酸素を介して)形成することを阻害又は防止する、ヌクレオチドの部分である。「可逆性のターミネーター」ヌクレオチドのブロッキング部分は、ヌクレオチドの組込みを可能とするように、ヌクレオチド類似体から除去されうる。本明細書において、このようなブロッキング部分は、「可逆性のターミネーター部分」と称される。
【0048】
本明細書で使用された「ポリメラーゼ」とは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、プリマーゼ及びトランスフェラーゼを含むがこれらに限定されない核酸合成酵素を指す場合がある。典型的に、ポリメラーゼは、ヌクレオチドの結合及び/又はヌクレオチドの重合化の触媒が生じうる、1つ以上の活性部位を含む。ポリメラーゼは、その相補的な核酸鎖に結合したプライマーの3’末端への、ヌクレオチドの重合化を触媒しうる。例えば、ポリメラーゼは、次の適正なヌクレオチドの、プライマーの3’−OH基への、ホスホジエステル結合を介する付加を触媒し、これにより、ヌクレオチドを、プライマーへと化学的に組み込む。任意選択的に、ポリメラーゼは、例えば、突然変異又は化学修飾のような修飾に起因して、触媒性ヌクレオチドの重合化機能を欠く。任意選択的に、提示された方法において使用されるポリメラーゼは、加工性の(processive)ポリメラーゼである。任意選択的に、提示された方法において使用されるポリメラーゼは、離散性(distributive)ポリメラーゼである。
【0049】
本明細書で使用された、鋳型、プライマー、プライミングされた鋳型核酸又はブロッキングされたプライミングされた鋳型核酸を「用意すること(providing)」とは、1つ又は多くの核酸ポリマーの、例えば、反応混合物又は反応チャンバーへの調製又は送達を指す。
【0050】
本明細書で使用された「〜をモニタリングすること」(又は、場合によって、「〜を測定すること」)は、2つ分子種の間の、測定可能な相互作用又は結合を検出する工程を指す。例えば、モニタリングすることは、典型的に、手順全体にわたる種々の時点において、ポリメラーゼ及びプライミングされた鋳型核酸の間の、測定可能な相互作用を検出することを含みうる。モニタリングは、間欠的(例えば、定期的)な場合もあり、連続的(例えば、中断を伴わない)な場合もあり、定量的結果の収集を含みうる。モニタリングは、結合イベント中の時間にわたり、複数のシグナルを検出することにより実行される場合もあり、代替的に、結合イベント中又はこの後の単一の時点において、シグナルを検出することにより実行される場合もある。
【0051】
本明細書で使用された「〜を接触させること」とは、物理的結合反応又は化学的反応が生じうるように、試薬を一緒にして混合すること(例えば、固定された鋳型核酸と、ポリメラーゼ又はポリメラーゼ及び被験ヌクレオチドの組合せを含む緩衝溶液とを混合すること)を指す。
【0052】
プライマー及びコグネイトのヌクレオチドに関して、本明細書で使用される場合の「〜を組み込むこと」又は「〜を化学的に組み込むこと」とは、ホスホジエステル結合の形成により、コグネイトのヌクレオチドを、プライマーへと接続する工程を指す。
【0053】
本明細書で使用された「二元複合体」とは、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸との間の複合体であり、この場合、複合体は、次の適正なヌクレオチドを含まない。
【0054】
本明細書で使用された「三元複合体」とは、ポリメラーゼと、プライミングされた鋳型核酸(例えば、遊離3’−OH又はブロッキングされた3’位を含むプライマーを有する)と、プライマーのすぐ下流に位置しかつプライミングされた鋳型核酸の鋳型鎖と相補的な次の適正なヌクレオチドとの間の、複合体である。プライミングされた鋳型核酸は、例えば、遊離3’−OHを含むプライマーを含む場合もあり、ブロッキングされたプライマー(例えば、3’末端のヌクレオチドの塩基上又は糖部分上の化学修飾を含むプライマーであって、修飾が、酵素的なホスホジエステル結合の形成を回避するプライマー)を含む場合もある。
【0055】
本明細書で使用された「触媒性金属イオン」とは、核酸(例えば、プライマー)の3’−OHと新来のヌクレオチドのリン酸との間のホスホジエステル結合の形成に要求される、金属イオンを指す。「二価の触媒性金属カチオン」とは、2の価数を有する、触媒性金属イオンである。触媒性金属イオンは、ポリメラーゼとヌクレオチドとプライミングされた鋳型核酸との間の複合体の形成を安定化させるのに必要な濃度であって、金属イオンの非触媒濃度と称する濃度において存在しうる。金属イオンの触媒性濃度とは、核酸(例えば、プライマー)の3’−OH基と新来のヌクレオチドのリン酸基との間の反応を触媒するのに、ポリメラーゼにより必要とされる金属イオンの量を指す。
【0056】
本明細書で使用された「非触媒性金属イオン」とは、ポリメラーゼ酵素の存在下にある場合に、ヌクレオチドのプライマーへの化学的組込みに必要とされる、ホスホジエステル結合の形成を容易としない、金属イオンを指す。典型的に、非触媒性金属イオンは、カチオンである。非触媒性金属イオンは、ポリメラーゼによるホスホジエステル結合の形成を阻害することが可能であるので、ヌクレオチドの組込みを防止することにより、三元複合体を安定化させうる。非触媒性金属イオンは、触媒性金属イオンと比較して、例えば、競合的結合を介して、ポリメラーゼと相互作用しうる。「二価の非触媒性金属イオン」とは、2の価数を有する、非触媒性金属イオンである。二価の非触媒性金属イオンの例は、Ca2+、Zn2+、Co2+、Ni2+及びSr2+を含むがこれらに限定されない。三価のEu3+イオンは、3の価数を有する、非触媒性金属イオンである。
【0057】
本明細書で使用された「外因性の標識」とは、ヌクレオチド又はポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)のようなシーケンシング試薬へと付加された、検出可能な化学的部分を指す。天然のdNTPは、特徴的な限定された蛍光プロファイルを有しうる一方、付加された任意の比色又は蛍光部分を含まない。逆に、接合させた化学的成分は、通常、ヌクレオチドの一部ではないため、化学的リンカー及びガンマリン酸へと接合させた蛍光部分を含むように修飾されたdATP(2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸)分子は、外因性の標識を含むことになる。当然ながら、検出可能な標識を、ヌクレオチド塩基へと付加する化学修飾もまた、外因性の標識と考えられる。同様に、標識は、通常、ポリメラーゼの一部ではないため、蛍光色素(例えば、酵素の一次配列の一部である、cys残基への接合)を含むように修飾されたDNAポリメラーゼもまた、外因性の標識を含むことになる。
【0058】
本明細書で使用された「ポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せ」とは、一緒に使用され(例えば、混合物又は組合せとして、一緒に混合され、送達される)、どちらもこの組み合わせに必要である、ポリメラーゼ及びヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を指す。
【0059】
ポリメラーゼ複合体に関して、本明細書で使用される場合の「弁別条件」とは、二元複合体(コグネイトのヌクレオチドの非存在下における、ポリメラーゼ及びプライミングされた鋳型核酸分子の間の複合体)の形成と、三元複合体(ポリメラーゼ、プライミングされた鋳型核酸分子及びコグネイトのヌクレオチドの間の複合体)の形成とを識別する反応条件である。弁別条件は、塩(例えば、一価のカチオン又はグルタミン酸アニオンをもたらす塩)の使用、非コグネイトのヌクレオチドの存在下において低バックグラウンドの結合を呈するように操作されたポリメラーゼ酵素の使用、温度の調整及び/又はpHの調整などを含む、多数の経路を介してもたらされる。
【0060】
本明細書で使用された、「逐次的に(serially)」又は「逐次的に(in serial fashion)」行われることとは、順次、逐次的に行われることを意味する。一部の実施形態において、2つのステップは、ステップ又は行為が介在し得る(すなわち、必ずしも中断を伴わずにというわけではなく)連鎖において行われうる。したがって、核酸分子を、2つの異なるポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せと、「逐次的に(serially)」又は「逐次的に(in serial fashion)」接触させることとは、第1の組合せと接触させ、次いで、第2の組合せと接触させることを意味する。任意選択的に、プライミングされた鋳型核酸を逐次的に接触させる、ポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せは、互いに混じり合わない。
【0061】
本明細書で使用された「フローセル」とは、所望の反応を行うように、所定の方式により流体を方向付ける、1つ以上のチャネルを含む反応チャンバーである。フローセルは、反応チャンバー内において生じる反応が観察されうるように、検出器へとカップリングさせることができる。例えば、フローセルは、(又はブロッキングされたプライミングされた鋳型核酸分子)、例えば、固体支持体へとテザリングされたプライミングされた鋳型核酸分子を含有し得、これに対してヌクレオチド及び補助的試薬が反復的に適用されて、洗い流される。フローセルは、所望の反応が生じた後において、試料のイメージングを可能とする透明な材料を含みうる。例えば、フローセルは、小型の流体チャネルを含有するスライドガラスを含み得、それを通して、ポリメラーゼ、dNTP及び緩衝液がポンピングされる。チャネル内のガラスは、1つ以上の、プライミングされた鋳型核酸分子であって、シーケンシングされる鋳型核酸分子により装飾されている。外部のイメージングシステムは、ガラスの表面上の分子を検出するように配置されうる。フローセル内の試薬交換は、フローセルを通して、異なる液体試薬をポンピングする、吸い出す、又は他の形において「流動させること」により、達せられる。例示的なフローセル、これらを製造するための方法及びこれらの使用のための方法は、米国特許出願公開第2010/0111768A1号又は同第2012−0270305A1号;又はWO05/065814において記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本明細書で使用された「非標識化」とは、添加された標識若しくはタグ又は外因性の標識若しくはタグを含有しない分子種を指す。天然ヌクレオチドとは、非標識化分子種の例である。
【0063】
結合によるシーケンシング
本明細書において、ポリメラーゼベースの、結合反応による核酸のシーケンシングであって、ポリメラーゼが、反応の個別のステップにおいて、オープンコンフォメーション及びクローズドコンフォメーションの間のコンフォメーション転移を受けるシーケンシングが、記載される。1つのステップにおいて、ポリメラーゼは、プライミングされた鋳型核酸に結合して、本明細書においてプレインサーションコンフォメーションともまた称される、二元複合体を形成する。後続のステップにおいて、新来のヌクレオチドが結合し、ポリメラーゼフィンガーが閉じ、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとを含む、プレケミストリーコンフォメーションを形成するが、この場合、結合したヌクレオチドは組み込まれていない。本明細書において、精査ステップとも称されるこのステップに、化学的組込みステップが後続しうるが、この場合、ヌクレオチドからの共時的なピロリン酸の切断により、ホスホジエステル結合が形成される(ヌクレオチドの組込み)。ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸と新たに組み込まれたヌクレオチドとは、ポストケミストリーコンフォメーションである、プレトランスレーションコンフォメーションをもたらす。プレケミストリーコンフォメーション及びプレトランスロケーションコンフォメーションのいずれも、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとを含み、この場合、ポリメラーゼは閉じた状態にあるので、本明細書において、いずれのコンフォメーションも、三元複合体と称されうる。しかし、言及された三元複合体が必然的にプレケミストリーコンフォメーションにあるように、ホスホジエステル結合の形成が本明細書で記載された手法により回避されうることは、注目に値する。閉じた挿入前状態において、Mg2+のような、二価の触媒性金属イオンは、プライマー末端の3’−ヒドロキシルによる、ピロリン酸(PPi)の求核置換を含む、急速な化学的ステップを媒介する。PPiが放出されると、ポリメラーゼは開いた状態に戻り(ポストトランスロケーションステップ)、トランスロケーションが反応の次のラウンドを誘発する。三元複合体は、二価の触媒性金属イオン(例えば、Mg2+)の非存在下において形成されうるが、二価の金属イオンの存在下において、ヌクレオチドの化学的付加が活発である。Mg2+のような触媒性金属イオンが、低レベル又は欠損レベルであることは、緊密な三元複合体における、次の適正なヌクレオチドの非共有結合的(物理的)捕捉をもたらす傾向がある。この三元複合体は、安定化させた三元複合体又はトラップされた三元複合体と称されうる。上記で記載された、任意の反応ステップにおいて、ポリメラーゼの立体配置及び/又は核酸との相互作用は、核酸配列内の、次の適正な塩基を同定するように、精査ステップにおいてモニタリングされうる。組込みの前において、又はこの後において、反応条件は、ポリメラーゼを、プライミングされた鋳型核酸から解除するように変化させる場合があり、局所的な環境から、ポリメラーゼの結合を阻害する任意の試薬を除去するように再び変化させる場合がある。
【0064】
一般的に述べると、SBB手順は、次の鋳型塩基を同定する「精査」ステップを含み、任意選択的に、プライミングされた鋳型核酸のプライマーの3’末端構成要素へと、1つ以上の相補的なヌクレオチドを付加する「組込み」ステップを含む。付加される次の適正なヌクレオチドのアイデンティティーは、共有結合を介するこのヌクレオチドのプライマーの3’末端への化学的連結を伴わずに決定されるか、又は化学的連結の前に決定される。精査ステップは、手順において使用される、プライミングされた鋳型核酸を用意すること及びプライミングされた鋳型核酸を、ポリメラーゼ酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)及び潜在的な次の適正なヌクレオチドとして探索される1つ以上の被験ヌクレオチドと、接触させることを含みうる。さらに、被験ヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼ及びプライミングされた鋳型核酸の間の相互作用をモニタリング又は測定することを含むステップも存在する。任意選択的に、相互作用は、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーが、新来のヌクレオチドのプライマーへの酵素的組込みを回避するブロッキング基を含む場合に、生じうる。任意選択的に、相互作用は、次の適正なヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼ−核酸間の相互作用を安定化させる安定化剤(すなわち、三元複合体を安定化させる安定化剤)の存在下において生じうる。また、精査ステップは、次の適正なヌクレオチドのアイデンティティーを、このヌクレオチドの組込みを必要とせずに、同定又は決定する。言い換えると、次の適正なヌクレオチドのアイデンティティーは、精査の1つ以上のサイクルが、標識化ヌクレオチド又は非標識化ヌクレオチドを使用して実行される場合に、ヌクレオチドのプライマーへの化学的組込みを伴わずに確立されうる。同様に、手順において利用されるポリメラーゼは、標識化されてもよく、標識化されなくてもよい。
【0065】
簡便のために、単一の鋳型核酸分子を含む方法について記載されうるが、これらの方法は、例示的なものである。本明細書において提示されるシーケンシング法は、複数の鋳型核酸を、たやすく包摂するが、この場合、この複数の核酸は、単一の核酸のクローン的に増幅されたコピーの場合もあり、クローン的に増幅された異種核酸の集団などの組合せを含む異種核酸の場合もある。
【0066】
精査ステップ
精査ステップは、典型的に、以下のサブステップ:(1)プライミングされた鋳型核酸(すなわち、その3’末端において、任意選択的に、伸長をブロッキングされうるプライマーとハイブリダイズされた鋳型核酸分子)を用意するサブステップ;(2)プライミングされた鋳型核酸を、ポリメラーゼ及び少なくとも1つのヌクレオチドを含む反応混合物と接触させるサブステップ;(3)ヌクレオチドの存在下において、かつ、プライミングされた鋳型核酸へのヌクレオチドの化学的組込みを伴わずに、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングするサブステップ;並びに(4)モニタリングされた相互作用から、鋳型核酸内の次の塩基のアイデンティティー(すなわち、次の適正なヌクレオチド)を決定するサブステップを、含む。任意選択的に、プライミングされた鋳型核酸分子を、ヌクレオチドに接触させる前に、ヌクレオチドの非存在下において、まず、ポリメラーゼと接触させうる。プライミングされた鋳型核酸のプライマーは、伸長可能なプライマーでありうる。被験ヌクレオチドの塩基が、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的である場合に、プライミングされた鋳型核酸とポリメラーゼと被験ヌクレオチとドは、三元複合体を形成することが可能である。被験ヌクレオチドの塩基が、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的ではない場合に、プライミングされた鋳型核酸とポリメラーゼとは、二元複合体を形成することが可能である。任意選択的に、接触させるサブステップは、二元複合体の形成より、三元複合体の形成に優先的な条件下において行われる。任意選択的に、三元複合体の形成に優先的な条件又は三元複合体を安定化させる条件は、(1)プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーの3’ヌクレオチド上の、可逆性のターミネーター部分の存在;又は(2)非触媒性イオン(例えば、二価の非触媒性金属イオン)の存在により、もたらされる。任意選択的に、二元複合体の形成を優先しない条件又は二元複合体を不安定化させる条件は、精査ステップにおける、反応混合物中の1つ以上の一価のカチオン及び/又はグルタミン酸アニオンの存在によりもたらされる。決定するサブステップ又は同定するサブステップは、プライミングされた鋳型核酸の次の塩基と相補的なヌクレオチドの塩基を同定することを含みうる。任意選択的に、これは、三元複合体が選択的に維持されること又は解離することを可能とする異なるヌクレオチド組成を有する1つ以上の洗浄液と、三元複合体を接触させることを含む。
【0067】
精査ステップは、ヌクレオチドの組込みが、弱められるか又は達せられるように、制御されうる。ヌクレオチドの組込みが弱められる場合、別個の組込みステップが実施されうる。塩基は、精査ステップにおいて既に同定されているので、個別の組込みステップは、モニタリングに対する必要なく達せられうる。ヌクレオチドの組込みが、精査時に進行する場合、後続のヌクレオチドの組込みは、組込みの後において、核酸上のポリメラーゼをトラップする安定化剤により弱められうる。単一のサイクルにおける、1つを超えるヌクレオチドの付加を防止するように、可逆的に終結したヌクレオチドを、組込みステップにおいて使用しうる。
【0068】
ポリメラーゼ及び鋳型核酸の間の相互作用は、ヌクレオチド上の標識を用いずにモニタリングされうるので、結合によるシーケンシング法は、標識化ヌクレオチドに対する必要なく、鋳型核酸の塩基の、制御された決定を可能とする。制御されたヌクレオチドの組込みはまた、標識化ヌクレオチドの使用を必然化せずに、反復的領域及びホモポリマー領域についての正確な配列情報ももたらしうる。さらに、鋳型核酸分子は、鋳型核酸又はポリメラーゼの固相支持体への接合を要求しない精査条件下において、シーケンシングされうる。しかし、ある特定の好ましい実施形態において、シーケンシングされるプライミングされた鋳型核酸は、フローセルの内部表面のような固体支持体へと接合される。本明細書で記載された組成物、方法及びシステムは、制御された反応条件、配列の一義的な決定、長いリード長、低廉な試薬の総費用及び低廉な測定器の費用などの、前のシステムに対する多数の利点をもたらす。
【0069】
本明細書において、鋳型核酸分子をシーケンシングするための方法であって、プライマーによりプライミングされた鋳型核酸分子(すなわち、プライミングされた鋳型核酸分子)を用意すること;プライミングされた鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ及び第1のヌクレオチド分子を含む第1の反応混合物と接触させることであって、ここて、第1のヌクレオチド分子が、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的である場合に、プライミングされた鋳型核酸分子とポリメラーゼと第1のヌクレオチド分子とが三元複合体を形成することが可能であり、第1のヌクレオチド分子がプライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的でない場合に、プライミングされた鋳型核酸分子とポリメラーゼとが二元複合体を形成することが可能である、接触させることを含む、精査ステップを含む方法が、さらに提示される。この方法は、第1のヌクレオチド分子の存在下において、かつ、第1のヌクレオチド分子のプライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの化学的組込みを伴わずに、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングするステップ;及びモニタリングされた相互作用により、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的であるヌクレオチドのアイデンティティーを決定するステップを、さらに含む。任意選択的に、接触させることは、三元複合体の形成を安定化させ、二元複合体の形成を不安定化させる条件下において行われる。任意選択的に、三元複合体の形成を安定化させる条件は、(1)プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーの3’ヌクレオチド上の可逆性のターミネーター部分の存在;又は(2)非触媒性イオン(例えば、二価の非触媒性金属イオン)の存在により、もたらされる。任意選択的に、二元複合体の形成を不安定化させる条件は、精査ステップにおける、反応混合物中の1つ以上の一価のカチオン及び/又はグルタミン酸アニオンの存在により、もたらされる。これらのステップは、1回以上にわたり反復されうる。例えば、接触させるステップ及びモニタリングするステップは、1回以上にわたり反復されうる。任意選択的に、接触させるステップ及びモニタリングするステップは、第1の反応混合物を使用して反復される。任意選択的に、接触させるステップ及びモニタリングするステップは、ポリメラーゼ及び第2のヌクレオチド分子を含む第2の反応混合物を使用して反復される。任意選択的に、接触させるステップ及びモニタリングするステップは、ポリメラーゼ及び第3のヌクレオチド分子を含む第3の反応混合物を使用して反復される。任意選択的に、接触させるステップ及びモニタリングするステップは、ポリメラーゼ及び第4のヌクレオチド分子を含む第4の反応混合物を使用して反復される。
【0070】
また、鋳型核酸分子をシーケンシングするための方法も、提示される。この方法は、プライマーによりプライミングされた鋳型核酸分子(すなわち、プライミングされた鋳型核酸分子)を用意すること;プライミングされた鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ、(この第1のヌクレオチド分子及び第2のヌクレオチド分子は、互いに異なり、任意選択的に異なる濃度において、反応混合物中に同時に存在する)を含む反応混合物と接触させることであって、第1のヌクレオチド分子及び/又は第2のヌクレオチド分子が、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的である場合に、プライミングされた鋳型核酸分子とポリメラーゼと第1のヌクレオチド分子及び/又は第2のヌクレオチド分子とが三元複合体を形成することが可能であり、第1のヌクレオチド分子及び/又は第2のヌクレオチド分子が、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的でない場合に、プライミングされた鋳型核酸分子とポリメラーゼとが二元複合体を形成することが可能である、接触させることを含む、精査ステップを含む。任意選択的に、接触させることは、三元複合体の形成を安定化させかつ二元複合体の形成を不安定化させる条件下において、行われる。任意選択的に、この条件は、三元複合体の形成を安定化させかつ二元複合体の形成を不安定化させる。任意選択的に、三元複合体の形成を安定化させる条件は、(1)プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーの3’ヌクレオチド上の可逆性のターミネーター部分の存在;又は(2)非触媒性イオン(例えば、二価の非触媒性金属イオン)の存在により、もたらされる。任意選択的に、二元複合体の形成を不安定化させる条件は、精査ステップにおける、反応混合物中の、1つ以上の一価のカチオン及び/又はグルタミン酸アニオンの存在によりもたらされる。この方法はまた、第1のヌクレオチド分子及び第2のヌクレオチド分子の存在下において、かつ、第1のヌクレオチド分子又は第2のヌクレオチド分子のプライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの化学的組込みを伴わずに、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングするステップ;及びモニタリングされた相互作用により、ヌクレオチドのうちのいずれかが、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的な塩基を含むのかどうかを決定するステップも含む。任意選択的に、反応混合物は、第3のヌクレオチド分子をさらに含み、この場合、第3のヌクレオチド分子は、第1のヌクレオチド分子及び第2のヌクレオチド分子と異なり、第1のヌクレオチド分子及び第2のヌクレオチド分子と異なる濃度において、反応混合物中に存在する。任意選択的に、反応混合物は、第4のヌクレオチド分子をさらに含み、この場合、第4のヌクレオチド分子は、第1のヌクレオチド分子、第2のヌクレオチド分子及び第3のヌクレオチド分子と異なり、第1のヌクレオチド分子、第2のヌクレオチド分子及び第3のヌクレオチド分子と異なる濃度において、反応混合物中に存在する。任意選択的に、第1の反応混合物は、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの組込みが可能な1つ以上の第1のヌクレオチド分子及びこれへの組込みが不可能な1つ以上の第1のヌクレオチド分子を、含む。任意選択的に、第2の反応混合物は、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの組込みが可能な1つ以上の第2のヌクレオチド分子及びこれへの組込みが不可能な1つ以上の第2のヌクレオチド分子を含む。任意選択的に、第3の反応混合物は、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの組込みが可能な1つ以上の第3のヌクレオチド分子及びこれへの組込みが不可能な1つ以上の第3のヌクレオチド分子を含む。任意選択的に、第4の反応混合物は、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの組込みが可能な1つ以上の第4のヌクレオチド分子及びこれへの組込みが不可能な1つ以上の第4のヌクレオチド分子を含む。
【0071】
任意選択的に、提示された方法は、洗浄ステップをさらに含む。洗浄ステップは、この方法における他の任意のステップの前に行われる場合もあり、この後において行われる場合もある。任意選択的に、洗浄ステップは、モニタリングするステップの前及び/又は決定するステップ若しくは同定するステップの前に、実施される。任意選択的に、洗浄ステップは、三元複合体を安定化させる条件下において行われる。任意選択的に、この条件は、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーの3’ヌクレオチド上の可逆性のターミネーター部分の存在から生じる。任意選択的に、この条件は、安定化剤を含む。任意選択的に、安定化剤は、非触媒性金属イオン(例えば、二価の非触媒性金属イオン)である。非触媒性金属イオンは、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレニウム、ロジウム、ユーロピウム及びテルビウムのイオンを含むが、これらに限定されない。任意選択的に、非触媒性金属イオンは、ストロンチウムイオン、スズイオン、又はニッケルイオンのうちのいずれかである。任意選択的に、三元複合体は、半減期を有し、洗浄ステップは、ヌクレオチド分子が、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的な塩基をもたらす場合に形成された三元複合体の半減期より短い持続時間にわたり、実施される。
【0072】
任意選択的に、モニタリングするステップに続き、リローディングステップが存在する。リローディングステップは、三元複合体の形成を安定化させ、二元複合体の形成を不安定化させる条件下において、プライミングされた鋳型核酸を、ポリメラーゼ並びに第1のヌクレオチド分子、又は任意選択的な第2のヌクレオチド分子、第3のヌクレオチド分子及び第4のヌクレオチド分子を含む、リローディング混合物と接触させることを含む。
【0073】
精査ステップは、部分的に、ヌクレオチドの化学的組込みを防止する反応条件をもたらす一方、プライミングされた鋳型核酸分子上の、次の適正な塩基のアイデンティティーの決定を可能とすることにより制御されうる。このような反応条件は、精査反応条件と称されうる。任意選択的に、三元複合体は、精査条件下において形成される。任意選択的に、安定化した三元複合体は、精査条件下において、又はプレケミストリーコンフォメーションにおいて形成される。任意選択的に、安定化した三元複合体は、プレトランスロケーションコンフォメーションにあり、この場合、閉じ込められたヌクレオチドは組み込まれているが、三元複合体は後続のヌクレオチドの組込みを可能としない。
【0074】
任意選択的に、精査条件は、例えば、二元複合体を不安定化させることにより、異なるヌクレオチドの存在下において、プライミングされた鋳型核酸に対するポリメラーゼのアフィニティーの差違を強調する。任意選択的に、精査条件は、異なるヌクレオチドの存在下において、プライミングされた鋳型核酸に対する、ポリメラーゼの示差的アフィニティーを引き起こす。例示を目的として述べると、異なるヌクレオチドの存在下において、プライミングされた鋳型核酸に対するポリメラーゼの示差的アフィニティーを引き起こす精査条件は、高塩濃度及び高グルタミン酸イオン濃度を含むが、これらに限定されない。例えば、塩は、水溶液中に溶解して、一価の金属カチオン(例えば、ナトリウムイオン又はカリウムイオン)のような、一価のカチオンをもたらす。任意選択的に、一価のカチオン(例えば、一価の金属カチオン)をもたらす塩は、グルタミン酸アニオンをさらにもたらす。グルタミン酸イオンの供給源は、グルタミン酸カリウムでありうる。場合によって、プライミングされた鋳型核酸のポリメラーゼへのアフィニティーを変更するのに使用されうる、グルタミン酸カリウムの濃度は、10mM〜1.6Mのグルタミン酸カリウム又は10mM〜1.6Mの間の任意の量にわたる。任意選択的に、上記に表示の通り、高塩濃度は、50〜1,500mMの塩濃度を指す。
【0075】
精査は、典型的に、ポリメラーゼの鋳型核酸との相互作用を検出することを含む。検出は、光学的手段、電気的手段、熱的手段、音響的手段、化学的手段及び機械的手段を含みうる。任意選択的に、精査は、洗浄ステップの後において実施され、この場合、洗浄ステップは、任意の結合しなかった試薬(例えば、結合しなかったポリメラーゼ及び/又はヌクレオチド)を、観察領域から除去する。任意選択的に、精査は、ポリメラーゼ−核酸複合体又はポリメラーゼ−核酸−ヌクレオチド複合体の解離反応速度が、次の塩基のアイデンティティーを決定するのに使用されうるように、洗浄ステップにおいて実施される。任意選択的に、精査は、ポリメラーゼの核酸への会合反応速度が、核酸上の、次の塩基のアイデンティティーを決定するのに使用されうるように、精査反応混合物(又は第1の反応混合物)の添加経過において実施される。任意選択的に、精査は、三元複合体を、ポリメラーゼ及び核酸の二元複合体から識別することを含む。任意選択的に、精査は、測定されるアフィニティーが、平衡アフィニティーである平衡条件下において実施される。次の鋳型塩基のアイデンティティーを、逐次的に確認するように、異なる精査試薬又は類似の精査試薬を含む複数の精査ステップが実施されうる。複数の精査ステップは、複数の鋳型核酸が、1つのシーケンシング反応において、同時にシーケンシングされる場合であって、異なる核酸が、異なる精査試薬に異なって反応する場合に、用いられうる。任意選択的に、複数の精査ステップは、次の塩基決定の精度を改善しうる。
【0076】
一般に、精査ステップは、ポリメラーゼの、1つ以上のヌクレオチドを含む反応混合物中の、プライミングされた鋳型核酸の重合化開始部位への結合及び相互作用をモニタリングすることを含む。任意選択的に、ポリメラーゼにより閉じ込められたヌクレオチドの組込みが、弱められるか又は阻害される条件下において、ヌクレオチドは、ポリメラーゼ−プライミングされた鋳型核酸複合体内に捕捉されて、三元複合体を形成する。任意選択的に、三元複合体は、プライマーの3’末端のヌクレオチド上のブロッキング部分(例えば、可逆性のターミネーター部分)の存在により安定化する。任意選択的に、安定化剤は、次の適正なヌクレオチドの存在下において、三元複合体を安定化させるように添加される。この三元複合体は、安定化したプレケミストリーコンフォメーション又はポリメラーゼによりトラップされたプレケミストリーコンフォメーションにある。閉じ込められたヌクレオチドの組込みを可能とするが、後続のヌクレオチドの組込みを可能としない三元複合体は、安定化したプレトランスロケーションコンフォメーション又はトラップされたプレトランスロケーションコンフォメーションにある。任意選択的に、ポリメラーゼは、ポリメラーゼドメインの架橋、核酸へのポリメラーゼの架橋、低分子、不競合的阻害剤、競合的阻害剤、非競合的阻害剤によるアロステリック阻害及び変性に限定されない、1つの手段又は手段の組合せにより、その三元複合体内の重合化部位にトラップされ、この場合、トラップされた三元複合体の形成は、核酸鋳型上の、次の塩基のアイデンティティーについての情報をもたらす。
【0077】
一般的に述べると、本明細書において提示される方法に従い、ポリメラーゼは、少なくとも1つのヌクレオチド分子の存在下において、プライミングされた鋳型核酸分子と相互作用して、複合体を形成する。任意選択的に、ヌクレオチド分子は、プライミングされた鋳型核酸分子内において、プライマーの3’末端の下流にある鋳型核酸分子の塩基と相補的な塩基を含む、ヌクレオチドである。任意選択的に、ヌクレオチド分子は、次の適正なヌクレオチド(すなわち、プライミングされた鋳型核酸分子内において、プライマーの3’末端の下流にある鋳型核酸分子の塩基と相補的な塩基を含む)であり、複合体は、プライミングされた鋳型核酸分子とポリメラーゼと次の適正なヌクレオチドとを含む、三元複合体である。任意選択的に、三元複合体の形成は、プライミングされた鋳型核酸とポリメラーゼとの間の二元複合体の形成より優先される。任意選択的に、接触させることは、三元複合体の形成を安定化させ、二元複合体の形成を不安定化させる条件下において生じる。任意選択的に、三元複合体の形成を安定化させる条件は、(1)プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーの3’ヌクレオチド上の、可逆性のターミネーター部分の存在;又は(2)非触媒性イオン(例えば、二価の非触媒性金属イオン)の存在によりもたらされる。任意選択的に、二元複合体の形成を不安定化させる条件は、精査ステップにおける、反応混合物中の1つ以上の一価のカチオン及び/又はグルタミン酸アニオンの存在により、もたらされる。好ましい実施形態では、第1の反応混合物が高濃度の塩を含む場合、三元複合体の形成は、二元複合体の形成より優先されうる。任意選択的に、第1の反応混合物は、二元複合体の形成を不安定化させるように、50mM〜1,500mMの塩を含む。100mM〜1,500mM及び200mM〜1,500mMの範囲内の塩濃度もまた、極めて好ましい。ある特定の実施形態において、二元複合体を不安定化させるために使用される塩は、溶解して、一価の金属カチオン(例えば、ナトリウムイオン又はカリウムイオン)のような一価イオンをもたらす。場合によって、塩は、一価の金属カチオン及びグルタミン酸アニオンをもたらすグルタミン酸塩である。代替的に、第1の反応混合物が高pHを有する緩衝液を含む場合、三元複合体の形成は二元複合体の形成より優先されうる。任意選択的に、pHは、7.4〜9.0である。極限微生物環境から抽出されたある特定のポリメラーゼについて、第1の反応混合物が低pHを有する緩衝液を含む場合、三元複合体の形成は二元複合体の形成より優先されうる。任意選択的に、pHは、4.0〜7.0である。ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸分子との間のアフィニティーをモジュレートするのに、反応温度並びに/又は有機添加剤及び無機添加剤もまた、使用されうる。
【0078】
本明細書において提示されるシーケンシング法において、精査ステップにおいて使用される反応混合物は、1、2、3、又は4種類のヌクレオチド分子を含みうる。任意選択的に、ヌクレオチドは、dATP、dTTP(又はdUTP)、dCTP及びdGTPから選択される。任意選択的に、反応混合物は、1つ以上の三リン酸ヌクレオチド及び1つ以上の二リン酸ヌクレオチドを含む。任意選択的に、三元複合体は、4種類の三元複合体が形成されうるように、プライミングされた鋳型核酸、ポリメラーゼ及び4つのヌクレオチド分子のうちのいずれか1つの間において形成される。
【0079】
接触させるステップ
提示された方法において、プライミングされた鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ及び1つ以上のヌクレオチド分子を含む反応混合物と接触させるステップは、好ましくは、三元複合体の形成を安定化させ、二元複合体の形成を不安定化させる条件下において行われる。これらの条件は、エンドユーザーによる選択の問題である、代替的な手法によりもたらされうる。
【0080】
任意選択的に、この条件は、プライミングされた核酸分子を浸透圧を調節する緩衝液と接触させることを含む。任意選択的に、精査ステップにおいて使用される反応混合物は、浸透圧を調節する緩衝液を含む。任意選択的に、緩衝液は、50〜1,500mMの濃度における一価の金属イオン(例えば、カリウムイオン又はナトリウムイオン)のような一価イオンを含む高塩濃度緩衝液である。100〜1,500mM及び200〜1,500mMの範囲内の塩濃度もまた、極めて好ましい。任意選択的に、緩衝液は、グルタミン酸イオン(例えば、グルタミン酸カリウム)の供給源をさらに含む。任意選択的に、三元複合体の形成を安定化させる条件は、プライミングされた核酸分子を、安定化剤と接触させることを含む。任意選択的に、精査ステップにおいて使用される反応混合物は、安定化剤を含む。任意選択的に、安定化剤は、非触媒性金属イオン(例えば、二価の非触媒性金属イオン)である。この文脈において有用な非触媒性金属イオンは、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレニウム、ロジウム、ユーロピウム及びテルビウムを含むがこれらに限定されない。任意選択的に、三元複合体の形成を容易とするように、精査反応物中にNi2+が提供される。任意選択的に、三元複合体の形成を容易とするように、精査反応物中にSr2+が提供される。任意選択的に、非触媒性金属イオンは、ストロンチウムイオン、スズイオン、又はニッケルイオンである。任意選択的に、第1の反応混合物は、0.01mM〜30mMの塩化ストロンチウム又は塩化ニッケルを含む。
【0081】
任意選択的に、接触させるステップは、フローセル又はチャンバー(本明細書の以下においては、「フローセル」とする)の使用により、容易となる。液体試薬を、内部の固体支持体表面(例えば、平面)を含有するフローセルを通して流動させることは、簡便に試薬を交換することを可能とする。フローセルの内部表面に、本明細書で記載された手順を使用してシーケンシングされるすなわち問い合わせられる、1つ以上のプライミングされた鋳型核酸が、固定されている。典型的なフローセルは、液体試薬(例えば、本明細書において論じられた「反応混合物」の成分)の、流入ポートへの送達を可能とする、マイクロ流体バルビングを含む。液体試薬は、流出ポートを通して駆出することにより、フローセルから除去されうる。
【0082】
任意選択的に、接触させるステップは、センサーの1つの試薬レザバーから、別の試薬レザバーへの、物理的な移動又は輸送により容易とされる。プラスチック製のマルチウェルプレートは、試薬レザバーとして用いられうる。例えば、プライミングされた鋳型核酸分子をその上に固定した光学的センサーチップは、輸送ステップにおける、連続的又は間欠的なモニタリングによりk、マルチウェルプレートの1つのウェルから、マルチウェルプレートの異なるウェルへと輸送されうる。
【0083】
モニタリングするステップ
ヌクレオチド分子の存在下において、ポリメラーゼの、プライミングされた鋳型核酸分子との相互作用をモニタリング又は測定するステップは、多くの異なる方式で達せられうる。例えば、モニタリングするステップは、プライミングされた鋳型核酸とポリメラーゼと4つのヌクレオチド分子のうちのいずれか1つとの間の相互作用についての会合反応速度を測定することを含みうる。ヌクレオチド分子の存在下において、ポリメラーゼの、プライミングされた鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングするステップは、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸分子との平衡結合定数(すなわち、4つのヌクレオチドのうちのいずれか1つの存在下における、鋳型核酸に対する、ポリメラーゼの平衡結合定数)を測定することを含みうる。したがって、例えば、モニタリングするステップは、4つのヌクレオチドのうちのいずれか1つの存在下において、プライミングされた鋳型核酸に対するポリメラーゼの平衡結合定数を測定することを含む。ヌクレオチド分子の存在下において、ポリメラーゼの、プライミングされた鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングするステップは、4つのヌクレオチドのうちのいずれか1つの存在下において、ポリメラーゼの、プライミングされた鋳型核酸からの解離反応速度を測定することを含む。任意選択的に、ヌクレオチド分子の存在下において、ポリメラーゼの、プライミングされた鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングするステップは、閉じた複合体の解離(すなわち、プライミングされた鋳型核酸とポリメラーゼと4つのヌクレオチド分子のうちのいずれか1つとの解離)についての解離反応速度を測定することを含む。任意選択的に、測定される会合反応速度は、ヌクレオチド分子のアイデンティティーに応じて異なる。任意選択的に、ポリメラーゼは、4種類のヌクレオチド分子の各々に対して、異なるアフィニティーを有する。任意選択的に、ポリメラーゼは、各種の三元複合体における、4種類のヌクレオチド分子の各々について、異なる解離定数を有する。会合反応速度、平衡反応速度及び解離反応速度は、公知であり、当業者によりたやすく決定されうる。例えば、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれた、Markiewiczら、Nucleic Acids Research、40(16):7975〜84(2012);Xiaら、J.Am.Chem.Soc.135(1):193〜202(2013);Brownら、J.Nucleic Acids、Article ID 871939、11頁(2010);Washingtonら、Mol.Cell.Biol.24(2):936〜43(2004);Walsh及びBeuning、J.Nucleic Acids、Article ID 530963、17頁(2012);並びにRoettgerら、Biochemistry、47(37):9718〜9727(2008)を参照されたい。
【0084】
モニタリングするステップは、第1のヌクレオチド分子の存在下において、第1のヌクレオチド分子の、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの化学的組込みを用いずに、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子との定常状態における相互作用をモニタリングすることを含みうる。任意選択的に、モニタリングするステップは、第1のヌクレオチド分子の存在下において、第1のヌクレオチド分子のプライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの化学的組込みを伴わずに、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子との解離をモニタリングすることを含む。任意選択的に、モニタリングするステップは、第1のヌクレオチド分子の存在下において、第1のヌクレオチド分子のプライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの化学的組込みを伴わずに、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子との会合をモニタリングすることを含む。また、これらの手順における被験ヌクレオチドは、天然ヌクレオチド(すなわち、非標識化)の場合もあり、標識化ヌクレオチド(例えば、蛍光標識化ヌクレオチド)の場合もあり、ヌクレオチド類似体(例えば、可逆性のターミネーター部分を含むように修飾されたヌクレオチド)の場合もある。
【0085】
本明細書において提示されるシーケンシング法において、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーの3’ヌクレオチド(例えば、ヌクレオチドの塩基上又は糖上の可逆性のターミネーター部分)上の化学的ブロック又は反応混合物中の触媒性金属イオンの非存在又はポリメラーゼの活性部位における触媒性金属イオンの非存在は、プライミングされた鋳型核酸のプライマーへの、ヌクレオチドの化学的組込みを防止する。任意選択的に、接触させるステップの反応混合物中の触媒性金属イオンのキレート化は、プライミングされた鋳型核酸のプライマーへの、ヌクレオチドの化学的組込みを防止する。任意選択的に、非触媒性金属イオンは、次の適正なヌクレオチドの存在下において、三元複合体のための安定化剤として作用する。任意選択的に、接触させるステップの反応混合物中の触媒性金属イオンの、非触媒性金属イオンによる置換は、プライミングされた鋳型核酸への、ヌクレオチド分子の化学的組込みを防止する。任意選択的に、触媒性金属イオンは、マグネシウムである。ポリメラーゼの金属イオン機構は、ポリメラーゼ−ヌクレオチド−DNA間結合相互作用を安定化させるのに、低濃度の金属イオンが必要とされうることを前提とする。例えば、27.2.2節、Berg JM、Tymoczko JL、Stryer L、Biochemistry、5版、WH Freeman Press、2002を参照されたい。
【0086】
任意選択的に、精査ステップにおいて使用される反応混合物中の、低濃度の触媒性イオンは、プライミングされた鋳型核酸への、ヌクレオチド分子の化学的組込みを防止する。任意選択的に、低濃度は、約1μM〜約100μMである。任意選択的に、低濃度は、約0.5μM〜約5μMである。任意選択的に、精査ステップにおいて使用される反応混合物は、コバルトイオンを含み、組み込むステップは、第1の反応混合物中のコバルトイオンの濃度と比較して、高濃度のコバルトイオンを含む組込み反応混合物と接触させることを含む。
【0087】
例示的なシーケンシング反応において、精査ステップは、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとを含む三元複合体の、形成及び/又は安定化を含む。三元複合体の形成及び/又は解放の特徴は、閉じ込められたヌクレオチドを同定し、これにより、鋳型核酸内の次の塩基を同定するようにモニタリングされる。三元複合体の特徴は、シーケンシング反応の成分(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、鋳型核酸、ヌクレオチド)及び/又は反応混合物の成分及び/又は反応条件に依存しうる。任意選択的に、三元複合体は、プレケミストリーコンフォメーションにある。任意選択的に、三元複合体は、プレトランスロケーションコンフォメーションにある。任意選択的に、三元複合体は、ポストトランスロケーションコンフォメーションにある。
【0088】
精査ステップは、ヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼの、鋳型核酸との相互作用をモニタリングすることを含む。三元複合体の形成は、モニタリングされうる。任意選択的に、三元複合体の形成の非存在は、モニタリングされる。任意選択的に、三元複合体の解離は、モニタリングされる。任意選択的に、組込みステップは、ヌクレオチドの組込みをモニタリングすることを含む。任意選択的に、組込みステップは、ヌクレオチドの組込みの非存在をモニタリングすることを含む。
【0089】
精査ステップ及び/又は組込みステップの任意の工程が、モニタリングされうる。任意選択的に、ポリメラーゼは、検出可能なタグを有する。任意選択的に、シーケンシング反応のいかなる成分も、検出可能に標識化されない。任意選択的に、ポリメラーゼ上の検出可能なタグ又は標識は、除去可能である。任意選択的に、ヌクレオチド又はポリメラーゼは、検出可能な標識を有するが、標識はシーケンシング時に検出されない。
【0090】
適正なヌクレオチド及び不適正なヌクレオチドの存在下で、ヌクレオチドの組込みを可能としても、これを可能としなくてもよい条件下において、鋳型核酸に対するポリメラーゼのアフィニティーの変動をモニタリングすることは、核酸の配列を決定するために使用されうる。修飾ヌクレオチド又は標識化ヌクレオチドを含む異なるヌクレオチドの存在下における、鋳型核酸に対するポリメラーゼのアフィニティーは、多様なヌクレオチドの存在下におけるポリメラーゼ−核酸間の相互作用の解離速度としてモニタリングされうる。当技術分野において、多様な、マッチする/適正なヌクレオチド、ミスマッチである/不適正であるヌクレオチド、及び修飾ヌクレオチドに対する、多くの標準的なポリメラーゼのアフィニティー及び解離速度は、公知である。クレノウポリメラーゼの単一分子イメージングは、異なるヌクレオチド型でありかつ組込みを防止されたヌクレオチド型に対する、鋳型核酸の解離速度が、顕著かつ測定可能な形において、異なることを明らかにする。
【0091】
任意選択的に、プライミングされた鋳型核酸の存在下において、特定の種類のヌクレオチドが、ポリメラーゼに利用可能とされる。反応は、モニタリングされ、ここで、ヌクレオチドが次の適正なヌクレオチドである場合、ポリメラーゼは三元複合体を形成するように安定化しうる。ヌクレオチドが不適正なヌクレオチドである場合、三元複合体はやはり形成されうるが、安定化剤又は反応条件のさらなる支援を伴わない(例えば、触媒性イオン、ポリメラーゼ阻害剤、塩が非存在である)限りにおいて、三元複合体は解離しうる。解離の速度は、ポリメラーゼ、鋳型核酸及びヌクレオチドの特定の組合せのアフィニティーのほか、反応条件にも依存する。任意選択的に、アフィニティーは、解離速度として測定される。任意選択的に、アフィニティーは、三元複合体に対して、異なるヌクレオチドの間において異なる。例えば、プライマーの3’末端の下流における、鋳型核酸内の次の塩基がGである場合、解離速度として測定されたポリメラーゼ−核酸間のアフィニティーは、dATPが添加されるのか、dCTPが添加されるのか、dGTPが添加されるのか、dTTPが添加されるのかに基づき異なることが予測される。この場合、他のヌクレオチドが、相互作用について、異なる解離速度をもたらすとすれば、dCTPは、最も遅い解離速度を有する。任意選択的に、解離速度は、反応条件、例えば、安定化剤の存在(例えば、マグネシウム又は阻害性の化合物の非存在)又は反応条件(例えば、ヌクレオチドの修飾又は修飾ポリメラーゼ)に応じて異なりうる。
【0092】
次の適正なヌクレオチドのアイデンティティーが決定されたら、三元複合体の形成を特異的にターゲティングする条件下において、1つ、2つ、3つ、4つ又はこれを超えるヌクレオチド型が、反応混合物へと同時に導入されうる。過剰なヌクレオチドは、任意選択的に反応混合物から除去されてもよく、反応条件は、三元複合体の次の適正なヌクレオチドを組み込むように、モジュレートされうる。このシーケンシング反応は、シーケンシングのサイクル1つ当たり、1つのヌクレオチドだけが組み込まれることを保証する。好ましくは、組込みステップにおいて、可逆性のターミネーターヌクレオチドが利用され、任意選択の洗浄ステップは、省略される。
【0093】
同定するステップ
次の適正な塩基又はヌクレオチドのアイデンティティーは、三元複合体の存在、形成及び/又は解離をモニタリングすることにより決定されうる。次の塩基のアイデンティティーは、プライマーの3’末端へ次の適正なヌクレオチドを化学的に組み込むことなく決定されうる。任意選択的に、次の塩基のアイデンティティーは、付加されるヌクレオチドの存在下において、プライミングされた核酸鋳型に対する、ポリメラーゼのアフィニティーをモニタリングすることにより決定される。任意選択的に、次の適正なヌクレオチドの存在下において、プライミングされた鋳型核酸に対するポリメラーゼのアフィニティーは、鋳型核酸上の、次の適正な塩基を決定するのに使用されうる。任意選択的に、不適正なヌクレオチドの存在下における、プライミングされた核酸鋳型に対するポリメラーゼのアフィニティーは、鋳型核酸上の、次の適正な塩基を決定するのに使用されうる。
【0094】
ある特定の実施形態において、プライミングされた鋳型核酸(又はブロッキングされた、プライミングされた鋳型核酸)を含む三元複合体は、ポリメラーゼ及び複数のヌクレオチドの存在下において形成される。三元複合体に参与するコグネイトのヌクレオチドは、任意選択的に、コグネイトのヌクレオチドが反応混合物に存在しない場合に生じる複合体の不安定化を観察することにより、同定される。これは、例えば、1つの反応混合物を、別の反応混合物と交換することにより、簡便に実行される。ここで、複合体の喪失は、コグネイトのヌクレオチドのアイデンティティーの指標である。結合シグナル(例えば、特定の固体支持体上の点と関連する蛍光結合シグナル)の喪失は、プライミングされた鋳型核酸が、コグネイトのヌクレオチドを含まない反応混合物へと曝露された場合に生じうる。任意選択的に、反応混合物中の単一のヌクレオチドの存在下における三元複合体の維持もまた、コグネイトのヌクレオチドのアイデンティティーを示しうる。
【0095】
組込みステップ
本明細書で記載されたシーケンシング法は、任意選択的に、組込みステップを含む。組込みステップは、鋳型核酸に結合したプライマーの3’末端において、1つ以上のヌクレオチドを、化学的に組み込むことを含む。任意選択的に、1つ以上のヌクレオチドが、プライマーの3’末端に組み込まれる。好ましい実施形態では、単一のヌクレオチドだけが、プライマーの3’末端に組み込まれる。任意選択的に、同じ種類の複数のヌクレオチドが、プライマーの3’末端に組み込まれる。任意選択的に、異なる種類の複数のヌクレオチドが、プライマーの3’末端に組み込まれる。組み込まれるヌクレオチドは、代替的に、非標識化ヌクレオチドの場合もあり、可逆性のターミネーターヌクレオチドの場合もあり、検出可能に標識化されたヌクレオチド類似体の場合もある。ポリメラーゼは、ヌクレオチド組込みの後において、重合化開始部位から解離する場合もあり、組込みの後において、重合化開始部位に保持される場合もある。
【0096】
組込み反応は、組込み反応混合物により容易とされうる。任意選択的に、組込み反応混合物は、精査反応物と異なるヌクレオチド組成を有する。例えば、精査反応物は、1種類のヌクレオチドを含む場合があり、組込み反応物は、別の種類のヌクレオチドを含みうる。別の例示を目的として述べると、精査反応物は、1種類のヌクレオチドを含み、組込み反応物は、4種類のヌクレオチドを含む、又はこの逆も成り立つ。任意選択的に、精査反応混合物は、組込み反応混合物により、変更される、又は置きかえられる。任意選択的に、組込み反応混合物は、触媒性金属イオン(例えば、二価の触媒性金属イオン)、一価の金属カチオン(例えば、カリウムイオン又はナトリウムイオン)、グルタミン酸イオン又はこれらの組合せを含む。
【0097】
組込みステップにおいて使用されるヌクレオチドの性質には、柔軟性が存在する。例えば、少なくとも1つのヌクレオチドは、例えば、遊離3’−ヒドロキシル基でありうる、3’−ヒドロキシル基を含みうる。任意選択的に、少なくとも1つのヌクレオチド分子の3’位は、3’ターミネーター部分を含むように修飾される。3’ターミネーター部分は、可逆性のターミネーターの場合もあり、不可逆性のターミネーターの場合もある。任意選択的に、少なくとも1つのヌクレオチド分子の、可逆性のターミネーターは、精査ステップの前又は後において置きかえられる、又は除去される。
【0098】
反応混合物中に存在するが、三元複合体内に捕捉されていないヌクレオチドは、複数のヌクレオチドの挿入を引き起こしうる。洗浄ステップは、化学的組込みステップの前に、トラップされた三元複合体内に捕捉されたヌクレオチドだけが組込みステップにおいて組込みに利用可能であることを保証するように、利用されうる。任意選択的に、遊離ヌクレオチドは、ホスファターゼのような酵素により除去されうる。トラップされたポリメラーゼ複合体は、三元複合体、安定化した三元複合体又はポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸と次の適正なヌクレオチドとを含む三元複合体でありうる。
【0099】
任意選択的に、精査ステップの三元複合体内に閉じ込められたヌクレオチドは、組込みステップにおいて、鋳型核酸プライマーの3’末端へと組み込まれる。例えば、精査ステップの、安定化した三元複合体は、組み込まれた次の適正なヌクレオチドを含む。任意選択的に、精査ステップの三元複合体内に閉じ込められたヌクレオチドは、精査ステップにおいて組み込まれるが、三元複合体は、後続のヌクレオチドの組込みを可能としない。この場合、三元複合体は、組込みステップにおいて解放され、これにより、後続のヌクレオチドが組み込まれることを可能とする。
【0100】
任意選択的に、組込みステップは、精査ステップに由来するヌクレオチド(例えば、ヌクレオチドは、不適正なヌクレオチドである)を置きかえ、別のヌクレオチドを、鋳型核酸プライマーの3’末端へと組み込むことを含む。組込みステップは、ヌクレオチドを、三元複合体内から放出し(例えば、ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体である)、異なる種類のヌクレオチドを、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーの3’末端へと組み込むことを含みうる。任意選択的に、放出されたヌクレオチドは除去され、次の適正なヌクレオチドを含有する組込み反応混合物により置きかえられる。例えば、組み込まれたヌクレオチドは、検出可能なフルオロフォアを含まない可逆性の非標識化ターミネーターヌクレオチドなどの、可逆性のターミネーターヌクレオチドでありうる。
【0101】
組込みに適する反応条件は、精査反応混合物を、組込み反応混合物により置きかえることを含みうる。任意選択的に、精査反応混合物中に存在するヌクレオチドは、組込み反応混合物中の1つ以上のヌクレオチドにより置きかえられる。任意選択的に、精査ステップにおいて存在するポリメラーゼは、組込みステップにおいて置きかえられる。この手法により、精査ステップ及び組込みステップにおいて、異なる種類のポリメラーゼを利用することが可能である。任意選択的に、精査ステップにおいて存在するポリメラーゼは、組込みステップにおいて修飾される。任意選択的に、精査ステップにおいて存在する1つ以上のヌクレオチドは、組込みステップにおいて修飾される。精査ステップにおいて存在する反応混合物及び/又は反応条件は、組込みステップにおける任意の手段により変更されうる。これらの手段は、試薬を除去すること、試薬をキレート化すること、試薬を希釈すること、試薬を添加すること、導電性又はpHのような反応条件を変更すること及びこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。ポリメラーゼ、プライミングされた鋳型核酸及びヌクレオチドの任意の組合せ並びにこれらの各々を含む反応混合物中の試薬は、精査ステップ及び/又は組込みステップにおいて改変されうる。
【0102】
任意選択的に、組込みステップにおいて利用される反応混合物は、複数の組込みの発生を低減する競合的阻害剤を含む。一実施形態において、競合的阻害剤は、組込み不可能なヌクレオチドである。ある実施形態において、競合的阻害剤は、アミノグリコシドである。競合的阻害剤は、第1の組込みの後において、競合的阻害剤が活性部位を占有して第2の組込みを防止するように、活性部位におけるヌクレオチド又は触媒性金属イオンを置きかえることが可能である。一部の実施形態において、プライマーの3’末端における単一のヌクレオチドの組込みを保証しうるように組込み可能なヌクレオチド対阻害剤の比が調整される形で、組込み可能なヌクレオチド及び競合的阻害剤のいずれも、組込みステップに導入される。
【0103】
任意選択的に、組込み反応混合物を含む、用意された反応混合物は、組込み不可能なヌクレオチド又は核酸鎖への組込みが不可能なヌクレオチドである、少なくとも1つのヌクレオチド分子を含む。言い換えると、用意された反応混合物は、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの組込みが不可能な、1つ以上のヌクレオチド分子を含みうる。組込みが不可能な、このようなヌクレオチドは、例えば、二リン酸ヌクレオチドを含む。例えば、ヌクレオチドは、ヌクレオチドを組込み不可能とする三リン酸基への修飾を、含有しうる。組込み不可能なヌクレオチドの例は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、米国特許第7,482,120号において見出されうる。任意選択的に、プライマーは、その3’末端において遊離ヒドロキシル基を含有しなくてもよく、これにより、プライマーが、ヌクレオチドを組み込むことを不可能とし、これにより、ヌクレオチドの組込みを不可能とする。
【0104】
次の適正なヌクレオチドの結合時に、核酸上のポリメラーゼをトラップするように、ポリメラーゼ阻害剤が、任意選択的に、精査ステップにおける被験ヌクレオチドを含有する反応混合物と共に含まれうる。任意選択的に、ポリメラーゼ阻害剤は、ピロリン酸類似体である。任意選択的に、ポリメラーゼ阻害剤は、アロステリック阻害剤である。任意選択的に、ポリメラーゼ阻害剤は、DNAアプタマー又はRNAアプタマーである。任意選択的に、ポリメラーゼ阻害剤は、ポリメラーゼ内の触媒性イオンへの結合性部位と競合する。任意選択的に、ポリメラーゼ阻害剤は、逆転写酵素阻害剤である。ポリメラーゼ阻害剤は、HIV−1逆転写酵素阻害剤又はHIV−2逆転写酵素阻害剤でありうる。HIV−1逆転写酵素阻害剤は、(4/6−ハロゲン/MeO/EtO置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オンでありうる。
【0105】
提示された方法は、組込みステップの後において、次の精査ステップのために、プライミングされた鋳型核酸分子を調製するステップをさらに含みうる。任意選択的に、調製するステップは、プライミングされた鋳型核酸又は核酸/ポリメラーゼ複合体を、1つ以上の洗浄ステップ;温度の変化;機械的振動;pHの変化;又は光学的刺激にかけることを含む。任意選択的に、洗浄ステップは、プライミングされた鋳型核酸又はプライミングされた鋳型核酸/ポリメラーゼ複合体を、1つ以上の緩衝液、デタージェント、タンパク質変性剤、プロテアーゼ、酸化剤、還元剤、又はポリメラーゼ内の内部架橋又はポリメラーゼ及び核酸の間の架橋を放出することが可能な他の薬剤と、接触させることを含む。
【0106】
任意選択的に、本方法は、精査ステップ及び組込みステップを反復して、鋳型核酸分子をシーケンシングするステップをさらに含む。精査ステップは、組込みステップを実施する前に、1回以上反復されうる。任意選択的に、2つの連続精査ステップは、異なるヌクレオチド分子を含む反応混合物を含む。任意選択的に、精査ステップは、対応のあるヌクレオチドの組合せのような、異なるヌクレオチドの組合せを含む、反応混合物の使用を含む。任意選択的に、単一のヌクレオチドを、プライミングされた鋳型核酸分子へと組み込む前に、第1の反応混合物は、ポリメラーゼ及び1、2、3、又は4種類のヌクレオチド分子を含む、第2の反応混合物に置きかえられる。任意選択的に、ヌクレオチド分子は、dATP、dTTP(又はdUTP)、dCTP及びdGTPから選択される。
【0107】
提示されるシーケンシング法において、次の塩基は、組込みステップの前に同定され、組込みステップが、標識化された試薬及び/又はモニタリングを要求しないことを可能とする。したがって、提示された方法において、ヌクレオチドは、任意選択的に、接合させた検出可能なタグ又は標識を含有しない。任意選択的に、ヌクレオチドは、検出可能な標識を含有するが、標識は、本方法において検出されない。任意選択的に、適正なヌクレオチドは、検出可能な標識を含有しないが、不適正なヌクレオチド又は次の塩基と非相補的なヌクレオチドは、検出可能な標識を含有する。
【0108】
シーケンシング反応の精査ステップは、組込みステップの前に、1、2、3、4回又はこれを超える回数にわたり反復されうる。精査ステップ及び組込みステップは、所望された鋳型核酸の配列が得られるまで反復されうる。
【0109】
三元複合体又は安定化した三元複合体の形成は、シーケンシングのサイクル1つ当たり1つのヌクレオチドだけが鋳型核酸のプライマーへと付加されることを保証するように利用されうるが、この場合、付加されるヌクレオチドは、三元複合体内に捕捉される。シーケンシングのサイクル1つ当たり、単一のヌクレオチドの制御された組込みは、ホモポリマーリピートを含む核酸領域についてのシーケンシング精度を増強する。
【0110】
反応混合物
核酸シーケンシング反応混合物、又は単に「反応混合物」は、典型的に、ポリメラーゼベースの核酸合成反応において一般に存在する試薬を含む。反応混合物中の試薬は、酵素(例えば、ポリメラーゼ)、dNTP、鋳型核酸、プライマー核酸、塩、緩衝液、低分子、共因子、金属及びイオンを含むがこれらに限定されない。イオンは、触媒性イオン、二価の触媒性イオン、非触媒性イオン、非共有結合的金属イオン又はこれらの組合せでありうる。反応混合物は、水溶液中においてイオン化して、一価のカチオンをもたらすNaCl、KCl、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、グルタミン酸カリウム、NH4Cl、又は(NH4HSO4)のような塩を含みうる。反応混合物は、Mg2+イオン又はMn2+イオン、Co2+イオン、Cd2+イオン又はBa2+イオンのようなイオンの供給源を含みうる。反応混合物は、スズ、Ca2+、Zn2+、Cu2+、Co2+、Fe(II)SO4若しくはNi2+又はプライミングされた鋳型核酸分子及びコグネイトのヌクレオチドの間のホスホジエステル結合の形成を阻害することにより、三元複合体を安定化させる、他の二価の非触媒性金属カチオンを含みうる。
【0111】
緩衝液は、トリス、トリシン、HEPES、MOPS、ACES、MES、リン酸ベースの緩衝液及び酢酸ベースの緩衝液を含みうる。反応混合物は、EDTA、EGTAなどのようなキレート剤を含みうる。任意選択的に、反応混合物は、架橋試薬を含む。本明細書において、精査ステップにおいて任意選択的に使用される第1の反応混合物のほか、ヌクレオチドの組込み時に使用される、前述の薬剤のうちの1つ以上を含みうる組込み反応混合物が、提示される。本明細書において、精査時に使用される場合の、第1の反応混合物は、精査反応混合物と称される。任意選択的に、第1の反応混合物は、高濃度の塩;高pH;1、2、3、4種若しくはこれを超える種類のヌクレオチド;グルタミン酸カリウム;キレート剤;ポリメラーゼ阻害剤;触媒性金属イオン;非触媒性金属イオン又はこれらの任意の組合せを含む。第1の反応混合物は、10mM〜1.6Mのグルタミン酸カリウム(10mM〜1.6Mの間の任意の量を含む)を含みうる。任意選択的に、組込み反応混合物は、触媒性金属イオン;1、2、3、4種若しくはこれを超える種類のヌクレオチド;塩化カリウム;非触媒性金属イオン又はこれらの任意の組合せを含む。
【0112】
提示された方法は、精査ステップにおいて、三元複合体の形成及び安定化をモジュレートする反応条件下において行われる。精査ステップの反応条件は、ヌクレオチドを封入する、三元複合体の形成及び/又は安定化を優先し、二元複合体の形成及び/又は安定化を妨げる。ポリメラーゼ及び鋳型核酸の間の二元相互作用は、イオン強度、pH、温度又はこれらの任意の組合せのようなシーケンシング反応パラメータをモジュレートすることにより操作される場合もあり、二元複合体の不安定化剤の、反応物への添加により操作される場合もある。任意選択的に、二元複合体を不安定化させるのに、高塩濃度(例えば、50〜1,500mM)及び/又はpHの変化が用いられる。任意選択的に、二元複合体は、ヌクレオチドの存在に関わらず、シーケンシング反応の精査ステップ又は組込みステップの、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の間において形成されうる。任意選択的に、反応条件は、三元複合体の安定化及び二元複合体の不安定化を優先する。例示を目的として述べると、精査反応混合物のpHは、三元複合体の安定化及び二元複合体の不安定化を優先するように、4.0〜10.0に調整されうる。任意選択的に、精査反応混合物のpHは、4.0〜6.0である。任意選択的に、精査反応混合物のpHは、6.0〜10.0である。
【0113】
本明細書において、ヌクレオチドの化学的付加を制御しながら、次の塩基のアイデンティティーを明らかにする形において、ポリメラーゼの、ヌクレオチド及び鋳型核酸との相互作用を促進するシーケンシング法が提示される。任意選択的に、方法は、検出可能に標識化されたヌクレオチドの非存在下において、又は標識が検出されない標識化ヌクレオチドの存在下において実施される。
【0114】
本明細書において、精査反応条件下において、ポリメラーゼ−鋳型核酸複合体内に閉じ込められたプライミングされた鋳型核酸及びヌクレオチドに結合したポリメラーゼを含む、三元複合体の形成及び/又は安定化のための方法が提示される。精査反応条件は、ヌクレオチドの組込みを阻害するか又は弱めうる。任意選択的に、閉じ込められたヌクレオチドの組込みは、阻害され、複合体は、プレケミストリーコンフォメーションに、又は三元複合体内において、安定化するか又はトラップされる。任意選択的に、閉じ込められたヌクレオチドは組み込まれて、後続のヌクレオチドの組込みは、阻害される。この場合、複合体は、プレトランスロケーションコンフォメーションにおいて、安定化するか又はトラップされる。本明細書において提示されたシーケンシング反応について、三元複合体は、精査ステップにおいて、安定化し制御されたヌクレオチドの組込みを可能とする。任意選択的に、安定化した三元複合体とは、閉じ込められたヌクレオチドの組込みが、精査ステップにおいて、一過性に(例えば、複合体を精査し、次いで、ヌクレオチドを組み込むように)、又は恒久的に(例えば、精査のためだけに)弱められた複合体である。任意選択的に、安定化した三元複合体は、閉じ込められたヌクレオチドの組込みを可能とするが、後続のヌクレオチドの組込みを可能としない。任意選択的に、鋳型核酸内の次の塩基の同定のため、ヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼの、鋳型核酸との、任意の相互作用をモニタリングするために、閉じた複合体を安定化させる。
【0115】
任意選択的に、閉じ込められたヌクレオチドは、三元複合体内の鋳型核酸への結合が、大幅に低減又は失効している。任意選択的に、閉じ込められたヌクレオチドは、次の塩基において、鋳型核酸に塩基対合する。任意選択的に、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、鋳型核酸又はこれらの任意の組合せのアイデンティティーは、三元複合体内の、閉じ込められたヌクレオチド及び鋳型核酸の間の相互作用に影響を及ぼす。
【0116】
任意選択的に、閉じ込められたヌクレオチドは、閉じた複合体のポリメラーゼに結合している。任意選択的に、閉じ込められたヌクレオチドは、三元複合体のポリメラーゼと弱く会合している。任意選択的に、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマー、鋳型核酸又はこれらの任意の組合せのアイデンティティーは、閉じ込められたヌクレオチド及び三元複合体内のポリメラーゼの間の相互作用に影響を及ぼす。所与のポリメラーゼについて、各ヌクレオチドは、ポリメラーゼに対して、別のヌクレオチドと異なるアフィニティーを有する。任意選択的に、このアフィニティーは、部分的に、鋳型核酸及び/又はプライマーに依存する。
【0117】
三元複合体は、一過性で形成されうる。任意選択的に、閉じ込められたヌクレオチドは、次の適正なヌクレオチドである。一部の方法において、次の適正なヌクレオチドの存在は、部分的に、三元複合体の安定化に寄与する。任意選択的に、閉じ込められたヌクレオチドは、次の適正なヌクレオチドではない。
【0118】
任意選択的に、精査反応条件は、複数のプライミングされた鋳型核酸、ポリメラーゼ、ヌクレオチド又はこれらの任意の組合せを含む。任意選択的に、複数のヌクレオチドは、1、2、3、4種又はこれを超える種類の異なるヌクレオチド、例えば、dATP、dTTP(又はdUTP)、dGTP及びdCTPを含む。任意選択的に、複数の鋳型核酸は、鋳型核酸のクローン集団である。
【0119】
精査反応混合物は、酵素を含むがこれらに限定されない、他の分子を含みうる。任意選択的に、精査反応混合物は、核酸重合化反応において一般に存在する、任意の試薬又は生体分子を含む。反応成分は、塩、緩衝液、低分子、デタージェント、クラウディング剤、金属及びイオンを含みうるがこれらに限定されない。任意選択的に、反応混合物の特性は、例えば、電気的に、磁気的にかつ/又は振動により操作されうる。
【0120】
ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体
任意選択的に、精査ステップの三元複合体は、三元複合体の安定化を容易とする、天然ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体又は修飾ヌクレオチドを含む。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、窒素性塩基、五炭糖及びリン酸基を含み、この場合、ヌクレオチドの任意の成分は、修飾され、かつ/又は置きかえられうる。ヌクレオチド類似体は、組込み不可能なヌクレオチドでありうる。組込み不可能なヌクレオチドは、シーケンシング法の中の任意の時点において、組込み可能となるように修飾されうる。
【0121】
ヌクレオチド類似体は、アルファ−リン酸修飾ヌクレオチド、アルファ−ベータヌクレオチド類似体、ベータ−リン酸修飾ヌクレオチド、ベータ−ガンマヌクレオチド類似体、ガンマ−リン酸修飾ヌクレオチド、ケージドヌクレオチド又はddNTPを含むが、これらに限定されない。ヌクレオチド類似体の例は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、米国特許第8,071,755号において記載されている。
【0122】
ヌクレオチド類似体は、プライマーの3’末端における、ヌクレオチドの組込みを可逆的に防止するターミネーターを含みうる。1種類の可逆性のターミネーターは、3’−Oブロッキングされた、可逆性のターミネーターである。ここで、ターミネーター部分は、ヌクレオチドの五炭糖の3’−OH端の酸素原子へと連結されている。例えば、U.S.7,544,794及びU.S.8,034,923(これらの特許の開示は、参照により組み込まれている)は、3’−OH基を、3’−ONH2基により置きかえた、可逆性のターミネーターdNTPについて記載している。別の種類の、可逆性のターミネーターは、3’ブロッキングされていない、可逆性のターミネーターであり、ターミネーター部分は、ヌクレオチドの窒素性塩基へと連結されている。例えば、U.S.8,808,989(その開示は、参照により組み込まれている)は、本明細書で記載された方法との関連において使用されうる、塩基が修飾された可逆性のターミネーターヌクレオチドの特定の例について開示している。本明細書で記載された方法との関連において、同様に使用されうる、他の可逆性のターミネーターは、U.S.7,956,171、U.S.8,071,755及びU.S.9,399,798(これらの米国特許の開示は、参照により組み込まれている)において記載されている、可逆性のターミネーターを含む。ターミネーターを有するヌクレオチド類似体の総説は、例えば、Mu,R.ら、「The History and Advances of Reversible Terminators Used in New Generations of Sequencing Technology」、Genomics,Proteomics & Bioinformatics、11(1):34〜40(2013)を参照されたい。任意選択的に、精査ステップにおいて利用される1つ以上の天然ヌクレオチドは、組込みステップにおいて、第2の種類の組み込まれるヌクレオチドにより置きかえられる。例えば、精査ステップにおいて使用される反応混合物中に存在するヌクレオチドは、可逆性のターミネーター部分(例えば、ヌクレオチド分子の、塩基上又は糖上に位置する)を含む、ヌクレオチド類似体により置きかえられうる。
【0123】
任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、プライマーの3’末端におけるヌクレオチドの組込みを、不可逆的に防止するターミネーター部分を有する。不可逆性のヌクレオチド類似体は、2’,3’−ジデオキシヌクレオチド、ddNTP(ddGTP、ddATP、ddTTP、ddCTP)を含む。ジデオキシヌクレオチドは、ポリメラーゼにより媒介された合成に不可欠な、dNTPの3’−OH基を欠く。
【0124】
任意選択的に、組込み不可能なヌクレオチドは、ヌクレオチドが、核酸重合化反応の組込みステップにおいて、第2のヌクレオチド(プライマーの3’−OH)への共有結合的連結を形成することを阻害又は防止するブロッキング部分を含む。ブロッキング部分は、ヌクレオチドから除去され、ヌクレオチドの組込みを可能としうる。
【0125】
任意選択的に、三元複合体内に存在するヌクレオチド類似体は、三元複合体を安定的にする。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、組込み不可能である。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は放出され、天然ヌクレオチドは組み込まれる。任意選択的に、三元複合体は解放され、ヌクレオチド類似体は修飾され、修飾ヌクレオチド類似体は組み込まれる。任意選択的に、三元複合体は、三元複合体内のヌクレオチド類似体を修飾し、かつ/又はこれを不安定化させる反応条件下において解放される。
【0126】
任意選択的に、三元複合体内に存在するヌクレオチド類似体が組み込まれ、三元複合体は安定化する。三元複合体は、ヌクレオチド類似体により安定化する場合もあり、例えば、本明細書で開示された、任意の安定化法により安定化する場合もある。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、後続のヌクレオチドの組込みを可能としない。三元複合体は、例えば、本明細書で記載された、任意の方法により解放される場合があり、ヌクレオチド類似体は修飾される。修飾ヌクレオチド類似体は、後続のヌクレオチドのその3’末端への組込みを、可能としうる。
【0127】
任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、精査ステップにおいて、反応混合物中に存在する。例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又はこれを超えるヌクレオチド類似体は、精査ステップにおいて、反応混合物中に存在する。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、組込みステップにおいて置きかえられるか、希釈されるか、又は捕捉される。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチドにより置きかえられる。天然ヌクレオチドは、次の適正なヌクレオチドを含みうる。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、組込みステップにおいて修飾される。修飾ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチドと類似する場合もあり、同じ場合もある。
【0128】
任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、ポリメラーゼに対して、天然ヌクレオチドと異なる結合アフィニティーを有する。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、次の塩基に対して、天然ヌクレオチドと異なる相互作用を有する。ヌクレオチド類似体及び/又は組込み不可能なヌクレオチドは、鋳型核酸の相補的な塩基と塩基対合しうる。
【0129】
任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、修飾ヌクレオチド又は天然ヌクレオチド、ポリメラーゼへと融合させたヌクレオチドである。任意選択的に、複数のヌクレオチド類似体は、複数のポリメラーゼとの融合体を含み、この場合、各ヌクレオチド類似体は、異なるポリメラーゼを含む。
【0130】
ヌクレオチドは、二元複合体の形成より、閉じた複合体の形成を優先するように修飾されうる。ヌクレオチドの修飾は、遺伝子操作されうる。ヌクレオチドは、ポリメラーゼに対する高アフィニティーを有するように、選択又は修飾される場合があり、この場合、ポリメラーゼは、鋳型核酸に結合する前に、ヌクレオチドに結合する。
【0131】
三元複合体内のポリメラーゼをトラップする、任意のヌクレオチドの修飾は、本明細書で開示された方法において使用されうる。ヌクレオチドは、恒久的にトラップされる場合もあり、一過性にトラップされる場合もある。任意選択的に、ヌクレオチド類似体は、閉じた複合体を安定化させる手段ではない。任意の三元複合体の安定化方法は、ヌクレオチド類似体を用いる反応において組み合わされうる。
【0132】
任意選択的に、閉じた複合体の安定化を可能とするヌクレオチド類似体は、通例、三元複合体を解放する反応条件と組み合わされる。条件は、解放試薬(例えば、マグネシウム又はマンガンのような触媒性金属イオン)の存在を含むがこれらに限定されない。任意選択的に、三元複合体は、触媒性金属イオンの存在下においてもなお安定化する。任意選択的に、三元複合体は、ヌクレオチド類似体の存在下においてもなお解放される。任意選択的に、閉じた複合体の安定化は、部分的に、安定化試薬及び/又は解放試薬の濃度及び/又はアイデンティティー並びにこれらの任意の組合せに依存する。任意選択的に、ヌクレオチド類似体を使用する三元複合体の安定化は、三元複合体を安定化させるように機能する、さらなる反応条件であって、触媒性金属イオンを封鎖すること、これを除去すること、これを低減すること、これを含まないこと及び/又はこれをキレート化すること;ポリメラーゼ阻害剤、架橋剤の存在;並びにこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない反応条件と組み合わされる。
【0133】
任意選択的に、1つ以上のヌクレオチドは、識別タグ及び/若しくは検出可能なタグ又は標識により標識化されうるが、このようなタグ又は標識は、塩基の精査時、同定時又は塩基の組込み時に検出されず、このようなタグ又は標識は、本明細書で開示されたシーケンシング法において検出されない。タグは、蛍光、ラマンスペクトル、電荷、質量、屈折率、発光、長さ又は他の任意の測定可能な特性におけるそれらの差違により、識別可能でありうる。タグは、ポリメラーゼ−核酸複合体への結合の忠実度が、鋳型核酸上の相補的な塩基の同定を適正な形で可能とする程度に十分に維持される限りにおいて、ヌクレオチド上の1つ以上の異なる位置へと接合させうる。任意選択的に、タグは、ヌクレオチドの核酸塩基へと接合させる。適切な反応条件下において、タグ付けされたヌクレオチドは、ポリメラーゼ及びプライミングされた鋳型核酸と共に、三元複合体内に閉じ込められうる。代替的に、タグは、ヌクレオチドのガンマリン酸位へと接合させる。
【0134】
複数の精査ステップにおいて、複数のヌクレオチドを使用する、ヌクレオチド識別の増強
開示された、結合によるシーケンシング法は、精査ステップの各サイクルにおいて、1つを超えるヌクレオチドを使用して実施されうる。例えば、単一の精査ステップは、任意選択的に、2つ、3つなお又は4つの異なるヌクレオチドを使用して行われうる。任意選択的に、ヌクレオチドの各々は、天然ヌクレオチド(すなわち、dATP、dGTP、dCTP、dTTP又はdUTP)のような、非標識化ヌクレオチドである。好ましくは、プライミングされた鋳型核酸分子は、ヌクレオチドの、プライミングされた鋳型核酸への組込みを伴わずに、逐次的に、複数の反応混合物と接触される。任意選択的に、異なる反応混合物の各々は、ポリメラーゼ及び2つ又は3つの異なるヌクレオチドの異なる組合せを含む。例えば、異なるヌクレオチドの各々(例えば、dATP、dGTP、dCTP及びdTTP)が、合計2回にわたり存在する、4つの異なる反応混合物が存在しうる。これは、例えば、ヌクレオチドの以下の4つの組合せ:(dATP及びdTTP)、(dATP及びdGTP)、(dTTP及びdCTP)及び(dGTP及びdCTP)を使用することにより達せられうる。代替的な組合せは、組合せ:(dGTP及びdCTP)、(dGTP及びdTTP)、(dATP及びdCTP)及び(dATP及びdTTP)である。さらに別の代替的な組合せは、組合せ:(dATP及びdGTP)、(dATP及びdCTP)、(dGTP及びdTTP)及び(dCTP及びdTTP)である。精査ステップは、2つの異なるヌクレオチドの、順次4つの組合せ(すなわち、第1の組合せは、第2の組合せにより置きかえられ、第2の組合せは、第3の組合せにより置きかえられ、第3の組合せは、第4の組合せにより置きかえられるように)を使用して行われうる。この場合及びポリメラーゼの、プライミングされた鋳型核酸との相互作用のモニタリングが、結合相互作用を確認するシグナルをもたらす場合、次の適正なヌクレオチドは、陽性の結合シグナルをもたらす、2つの異なるヌクレオチドの組合せに共通なヌクレオチドとして同定されうる。ヌクレオチドの組合せのコレクション間において、3回にわたり、異なるヌクレオチドの各々を表すことが所望される場合、例示的な組合せは、(dATP及びdTTP)、(dATP及びdGTP)、(dATP及びdCTP)、(dTTP及びdGTP)、(dTTP及びdCTP)及び(dGTP及びdCTP)でありうる。精査ステップは、2つの異なるヌクレオチドの、順次6つの組合せ(すなわち、第1の組合せは、第2の組合せにより置きかえられ、第2の組合せは、第3の組合せにより置きかえられ、第3の組合せは、第4の組合せにより置きかえられ、第4の組合せは、第5の組合せにより置きかえられ、第5の組合せは、第6の組合せにより置きかえられるように)を使用して行われうる。この場合及びポリメラーゼの、プライミングされた鋳型核酸との相互作用のモニタリングが、結合相互作用を確認するシグナルをもたらす場合、次の適正なヌクレオチドは、陽性の結合シグナルをもたらす、3つの異なるヌクレオチドの組合せに共通なヌクレオチドとして同定されうる。
【0135】
精査ステップにおける、1つを超えるヌクレオチドの使用の根底をなす、1つの利点は、結合によるシーケンシング手順において、鋳型配列を確立するために使用されうる確証に関する。何らかの理由のために、単一の特定の精査ステップが、結合相互作用を表す、中程度のシグナルをもたらすに過ぎない場合、同じヌクレオチドを、1つを超えるヌクレオチドの組合せにおいて使用して実行された試験は、各特定のヌクレオチドについて、1回を超えて、結合相互作用を検出するための機会をもたらす。これは、モニタリングするステップにおいて、誤って低値とされた結果又は偽陰性の結果を低減することにより、適正な塩基判定を増強する。
【0136】
ポリメラーゼ
開示された技法を実行するのに使用されうるポリメラーゼは、自然におけるポリメラーゼ並びに突然変異体、組換え体、融合体、遺伝子改変、化学修飾、合成体及び類似体を含むがこれらに限定されない、これらの任意の修飾されたバリエーションを含む。自然におけるポリメラーゼ及びこれらの修飾されたバリエーションは、重合化反応を触媒する能力を保持するポリメラーゼに限定されない。任意選択的に、自然における及び/又はこれらの修飾されたバリエーションは、重合化反応を触媒する能力を保持する。任意選択的に、自然における及び/又は修飾されたバリエーションは、DNAをシーケンシングするそれらの能力を増強する、特殊な特性であって、核酸に対する結合アフィニティーの増強、核酸に対する結合アフィニティーの低減、触媒速度の増強、触媒速度の低減などを含む特性を有する。突然変異体ポリメラーゼは、ポリメラーゼを含み、この場合、1つ以上のアミノ酸は、他のアミノ酸(自然における又は自然にはないアミノ酸)及び1つ以上のアミノ酸の挿入又は欠失により置きかえられる。
【0137】
修飾ポリメラーゼは、ポリメラーゼの存在及び相互作用をモニタリングするのに使用されうる、外部のタグ(例えば、外因性の検出可能な標識)を含有するポリメラーゼを含む。任意選択的に、ポリメラーゼに由来する内因性シグナルは、これらの存在及び相互作用をモニタリングするのに使用されうる。したがって、提示された方法は、ポリメラーゼに由来する内因性シグナルの検出を介して、ポリメラーゼ、ヌクレオチド及び鋳型核酸の相互作用をモニタリングするステップを含みうる。任意選択的に、内因性シグナルは、光散乱シグナルである。例えば、内因性シグナルは、トリプトファンのような、ある特定のアミノ酸の、天然の蛍光を含み、この場合、ポリメラーゼに由来する内因性シグナルの変化は、三元複合体の形成を示しうる。
【0138】
任意選択的に、精査ステップにおいて利用されるポリメラーゼは、非標識化ポリメラーゼであり、モニタリングするステップは、ポリメラーゼと会合した、外因性の検出可能な標識の非存在下において実施される。一部の修飾ポリメラーゼ又は自然におけるポリメラーゼは、特異的反応条件下において、単一のヌクレオチドだけを組み込むことが可能であり、単一のヌクレオチドの組込みの後においても、プライマー−鋳型に依然として結合している。任意選択的に、ポリメラーゼのサムドメイン及びフィンガードメインは、ポリメラーゼの閉じた形態におけるそれらの物理的近接性に起因して、一過性の架橋又は共有結合的架橋を形成しうる。架橋は、例えば、サムドメイン上及びフィンガードメイン上の適切な位置における、天然のシステイン又は操作されたシステインにより形成されうる。
【0139】
任意選択的に、精査ステップにおいて利用されるポリメラーゼは、タンパク質単離法を使用して、ポリメラーゼが少なくとも部分的に精製された後において、共有結合によりポリメラーゼの構造へと化学的に連結された、外因性の検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含む。例えば、外因性の検出可能な標識は、ポリメラーゼの遊離スルフヒドリル部分又は遊離アミン部分を使用して、ポリメラーゼへと化学的に連結されうる。これは、ポリメラーゼへのシステイン残基の側鎖を介する化学的連結又はN末端の遊離アミノ基を介する化学的連結を含みうる。ある特定の好ましい実施形態において、ポリメラーゼへと接合させた蛍光標識は、ポリメラーゼが、固定されたプライミングされた鋳型核酸に対応するアレイ上のスポットへと局在化しているのかどうかを決定するために重要でありうるので、ポリメラーゼを位置特定するために有用である。蛍光シグナルは、任意のヌクレオチドへの結合の結果として、吸収又は発光の特徴を変化させる必要がなく、好ましくは、これらを変化させない。言い換えると、標識化ポリメラーゼが発光するシグナルは、可能な次の適正なヌクレオチドとして探索される、任意のヌクレオチドの存在下及び非存在下において、均一に維持される。
【0140】
本明細書で使用された、ポリメラーゼ及びその変化形という用語はまた、互いに連結された少なくとも2つの部分であって、例えば、1つの部分が、ヌクレオチドの、核酸鎖への重合化を触媒しうるペプチドを含み、レポーター酵素又はプロセシビティー修飾ドメインのような、第2の部分を含む別の部分へと連結されている、少なくとも2つの部分を含む融合タンパク質も指す。例えば、T7 DNAポリメラーゼは、核酸重合化ドメイン及びチオレドキシン結合性ドメインを含み、この場合、チオレドキシンへの結合は、ポリメラーゼのプロセシビティーを増強する。チオレドキシンへの結合の非存在下において、T7 DNAポリメラーゼは、プロセシビティーが、1つ〜少数の塩基だけである、離散性ポリメラーゼである。DNAポリメラーゼは、詳細においては異なるが、全体的に類似する手掌の形状であって、フィンガー、パーム及びサムと称する特異的領域を含む形状、並びに全体的に類似する構造的転移であって、核酸の合成時における、サムドメイン及び/又はフィンガードメインの移動を含む構造的転移を有する。
【0141】
DNAポリメラーゼは、細菌DNAポリメラーゼ、真核生物DNAポリメラーゼ、古細菌DNAポリメラーゼ、ウイルスDNAポリメラーゼ及びファージDNAポリメラーゼを含むがこれらに限定されない。細菌DNAポリメラーゼは、E.コリーDNAポリメラーゼI、II及びIII、IV及びV、E.コリーDNAポリメラーゼのクレノウ断片、クロストリジウム・ステルコラリウム(Clostridium stercorarium)(Cst)DNAポリメラーゼ、クロストリジウム・テルモセルム(Clostridium thermocellum)(Cth)DNAポリメラーゼ及びスルフォロブス・ソルファタリクス(Sulfolobus solfataricus)(Sso)DNAポリメラーゼを含む。真核生物DNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼα、β、γ、δ、ε、η、ζ、λ、σ、μ及びκのほか、Revlポリメラーゼ(末端デオキシシチジルトランスフェラーゼ)並びに末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を含む。ウイルスDNAポリメラーゼは、T4 DNAポリメラーゼ、ファイ−29 DNAポリメラーゼ、GA−l、ファイ−29様DNAポリメラーゼ、PZA DNAポリメラーゼ、ファイ−15 DNAポリメラーゼ、Cpl DNAポリメラーゼ、Cp7 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ及びT4 ポリメラーゼを含む。他のDNAポリメラーゼは、テルムス・アクアティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、テルムス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)(Tfi)DNAポリメラーゼ、テルモコックス・ジリギ(Thermococcus zilligi)(Tzi)DNAポリメラーゼ、テルムス・テルモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、テルムス・フラブス(Thermus flavusu)(Tfl)DNAポリメラーゼ、ピロコックス・ウォセイ(Pyrococcus woesei)(Pwo)DNAポリメラーゼ、ピロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ及びTurbo Pfu DNAポリメラーゼ、テルモコックス・リトラーリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ、ピロコックス属種(Pyrococcus sp.)GB−D ポリメラーゼ、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bst)DNAポリメラーゼ、ピロコックス・コダカレンシス(Pyrococcus Kodakaraensis)(KOD)DNAポリメラーゼ、Pfx DNAポリメラーゼ、テルモコックス属種(Thermococcus sp.)JDF−3(JDF−3)DNAポリメラーゼ、テルモコックス・ゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius)(Tgo)DNAポリメラーゼ、テルモコックス・アシドフィリウム(Thermococcus acidophilium)DNAポリメラーゼ;スルフォロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)DNAポリメラーゼ;テルモコックス属種go N−7 DNAポリメラーゼ;ピロディクティウム・オクルツム(Pyrodictium occultum)DNAポリメラーゼ;メタノコックス・ボルテ(Methanococcus voltae)DNAポリメラーゼ;メタノコックス・テルモアウトトロフィクム(Methanococcus thermoautotrophicum)DNAポリメラーゼ;メタノコックス・ヤナスキー(Methanococcus jannaschii)DNAポリメラーゼ;デスルフロコックス株TOK(Desulfurococcus strain TOK)DNAポリメラーゼ(D. Tok Pol);ピロコックス・アビシ(Pyrococcus abyssi)DNAポリメラーゼ;ピロコックス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)DNAポリメラーゼ;ピロコックス・アイランディクム(Pyrococcus islandicum)DNAポリメラーゼ;テルモコックス・フミコランス(Thermococcus fumicolans)DNAポリメラーゼ;アエロピルム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)DNAポリメラーゼ;及びヘテロ二量体のDNAポリメラーゼであるDP1/DP2から単離されたDNAポリメラーゼのような、熱安定性及び/又は好熱性DNAポリメラーゼを含む。操作されたポリメラーゼ及び修飾ポリメラーゼもまた、開示された技法との関連において、有用でありうる。例えば、極好熱性の海洋古細菌であるテルモコックス属種(Thermococcus species)9°N(例えば、New England BioLabs Inc.;Ipswich、MA製のTherminator DNAポリメラーゼ)の修飾形は、使用されうる。3PDXポリメラーゼを含む、さらに他の有用なDNAポリメラーゼは、その開示が、参照によりその全体において組み込まれる、U.S.8,703,461において開示されている。
【0142】
RNAポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ、T3 ポリメラーゼ、SP6 ポリメラーゼ及びKllポリメラーゼのようなウイルスRNAポリメラーゼ;RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV及びRNAポリメラーゼVのような真核生物RNAポリメラーゼ並びに古細菌RNAポリメラーゼを含むがこれらに限定されない。
【0143】
逆転写酵素は、1型ヒト免疫不全ウイルスに由来するHIV−1逆転写酵素(PDB 1 HMV)、2型ヒト免疫不全ウイルスに由来するHIV−2逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルスに由来するM−MLV逆転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルスに由来するAMV逆転写酵素及び真核生物染色体のテロメアを維持するテロメラーゼ逆転写酵素を含むがこれらに限定されない。
【0144】
任意選択的に、ポリメラーゼは、化学発光タグによりタグ付けされ、この場合、閉じた複合体の形成は、適切な発光誘発剤の存在下において、安定的な発光シグナルとしてモニタリングされる。不適正なヌクレオチドの存在下における、鋳型核酸との、ポリメラーゼの不安定的相互作用は、次の適正なヌクレオチドの存在下において形成された三元複合体と比較して、測定可能な形において、弱いシグナルを生じる。加えて、発光を誘発する前における、任意選択の洗浄ステップは、安定的な三元複合体内において結合しなかった、実質的に全てのポリメラーゼ分子を除去しうる。
【0145】
任意選択的に、ポリメラーゼは、光学的散乱タグによりタグ付けされ、この場合、三元複合体の形成は、安定的な光学的散乱シグナルとしてモニタリングされる。不適正なヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼの、核酸との不安定的相互作用は、次の適正なヌクレオチドの存在下において形成された三元複合体と比較して、測定可能な形において、弱いシグナルを生じる。
【0146】
任意選択的に、ポリメラーゼは、プラズモンナノ粒子タグによりタグ付けされ、この場合、三元複合体の形成は、三元複合体の非存在下又は不適正なヌクレオチドを含む三元複合体の存在下におけるプラズモン共鳴と異なる、プラズモン共鳴のシフトとしてモニタリングされる。プラズモン共鳴の変化は、三元複合体内の、局所的誘電環境の変化に起因する場合もあり、クローン的に増幅された核酸分子のクラスター上の、プラズモンナノ粒子の同期的凝集に起因する場合もあり、閉じた複合体の立体配置下、プラズモンに、異なる形において影響を及ぼす、別の手段に起因する場合もある。
【0147】
任意選択的に、ポリメラーゼは、ラマン散乱タグによりタグ付けされ、この場合、三元複合体の形成は、安定的なラマン散乱シグナルとしてモニタリングされる。不適正なヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼの、核酸との不安定的相互作用は、次の適正なヌクレオチドの存在下において形成された三元複合体と比較して、弱いシグナルを、測定可能な形において、生じる。
【0148】
任意選択的に、次の適正なヌクレオチドは、ヌクレオチドに対して高アフィニティーを有するように選択又は修飾されたポリメラーゼ上のタグにより同定され、この場合、ポリメラーゼは、鋳型核酸に結合する前に、ヌクレオチドに結合する。例えば、アフリカ豚コレラウイルスに由来するDNAポリメラーゼXは、基質の結合順序が変更されており、この場合、ポリメラーゼは、まず、ヌクレオチドに結合し、次いで、鋳型核酸に結合する。任意選択的に、ポリメラーゼは、個別の区画内において、各種類のヌクレオチドと共にインキュベートされ、この場合、各区画は、異なる種類のヌクレオチドを含有し、ポリメラーゼは、それが共にインキュベートされるヌクレオチドに応じて、タグにより、異なる形において標識化される。これらの条件において、非標識化ヌクレオチドは、異なる形において、標識化ポリメラーゼに結合している。ポリメラーゼは、各ヌクレオチド型に結合した、同じ種類のポリメラーゼの場合もあり、各ヌクレオチド型に結合した、異なるポリメラーゼの場合もある。示差的にタグ付けされたポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体は、シーケンシング反応の任意のステップへと、同時に添加されうる。各ポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体は、その次の塩基が、ポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体内のヌクレオチドと相補的な鋳型核酸に結合する。次の適正なヌクレオチドは、ヌクレオチドを有するポリメラーゼ上のタグにより同定される。標識化ポリメラーゼ−ヌクレオチド複合体による、次の鋳型塩基の問合せは、非組込み条件及び/又は精査条件下において実施される場合があり、この場合、次の鋳型塩基のアイデンティティーが決定されると、複合体は、不安定化し、除去され、封鎖され、かつ/又は希釈され、個別の組込みステップは、1つのヌクレオチドだけが、組み込まれることを保証する形において実施される。
【0149】
ポリメラーゼ上に検出可能なタグを導入する、一般的な方法は、ポリメラーゼの非活性領域内に存在するアミン又はシステインへの化学的コンジュゲーションを含む。このようなコンジュゲーション法は、当技術分野において周知である。非限定的な例として述べると、n−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)は、酵素上において見出されうるアミン基を標識化するのに、一般に利用される。システインが、チオール基又はマレイミド基とたやすく反応するのに対し、カルボキシル基は、これらを、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)により活性化させることにより、アミンと反応させうる。任意選択的に、1分子のポリメラーゼに単一のタグだけが付加されるように、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)化学反応が、N末端のアミンだけが反応性であるpH範囲(例えば、pH 7)において利用される。
【0150】
任意選択的に、ポリメラーゼへと接合させたタグは、安定的な三元複合体の形成が、鋳型核酸近傍の局所的な電荷密度の変化を測定することを介する電気的手段により検出されうるような、電荷タグである。当技術分野において、電荷を検出するための方法であって、中でも、電界効果トランジスター、誘電分光法、インピーダンスの測定及びpHの測定のような方法を含む方法が、周知である。電界効果トランジスターは、イオン感受性電界効果トランジスター(ISFET)、電荷モジュレート電界効果トランジスター、絶縁ゲート電界効果トランジスター、金属酸化物半導体電界効果トランジスター及び半導電性単層カーボンナノチューブを使用して作製された電界効果トランジスターを含むが、これらに限定されない。
【0151】
任意選択的に、電荷タグは、約4を下回る等電点又は約10を上回る等電点を有するペプチドタグである。任意選択的に、ペプチドタグを含むポリメラーゼは、約5を下回る全等電点又は約9を上回る全等電点を有する。電荷タグは、陽性又は陰性に帯電した、任意の部分でありうる。電荷タグは、質量を含む、さらなる部分及び/又は色素のような標識を含みうる。任意選択的に、電荷タグは、pHの変化のような、ある特定の反応条件下だけにおいて、陽性又は陰性の電荷を有する。
【0152】
ポリメラーゼは、任意選択的に、フルオロフォア及び/又は消光剤により標識化されうる。任意選択的に、核酸は、フルオロフォア及び/又は消光剤により標識化される。任意選択的に、1つ以上のヌクレオチドは、フルオロフォア及び/又は消光剤により標識化される。例示的なフルオロフォアは、蛍光ナノ結晶;量子ドット;ジクロロ[R110]、ジクロロ[R6G]、ジクロロ[TAMRA]、ジクロロ[ROX]などを含む、d−ローダミンアクセプター色素;フルオレセイン、6−FAMを含むフルオレセインドナー色素など;Cy3Bのようなシアニン色素;Alexa色素、SETA色素、Cy3Bと共に、FRET対を形成するatto647NのようなAtto色素などを含むが、これらに限定されない。フルオロフォアは、MDCC(7−ジエチルアミノ−3−[([(2−マレイミジル)エチル]アミノ)カルボニル]クマリン)、TET、HEX、Cy3、TMR、ROX、Texas Red、Cy5、LC red 705及びLC red 640を含むがこれらに限定されない。フルオロフォア及びポリメラーゼ及び他の分子への接合を含む、それらの使用のための方法は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれた、The Molecular Probes(登録商標)Handbook(Life Technologies、Carlsbad Calif.)及びFluorophores Guide(Promega、Madison、WI)において記載されている。例示的な消光剤は、ZEN、IBFQ、BHQ−1、BHQ−2、DDQ−I、DDQ−11、Dabcyl、Qxl消光剤、Iowa Black RQ及びIRDye QC−1を含むが、これらに限定されない。
【0153】
任意選択的に、コンフォメーション的に感受性の色素は、ポリメラーゼ重合化能力又は忠実度に影響を及ぼさずに、ポリメラーゼの活性部位に緊密に接合させうるが、この場合、三元複合体の形成に起因するコンフォメーションの変化又は極性環境の変化は、色素の蛍光又は吸光度特性の変化として反映される。cy3及びフルオレセインのような一般的なフルオロフォアは、ポリメラーゼの結合及び三元複合体の形成に対して、三元複合体の形成がポリメラーゼ−核酸二元複合体から明確に識別されうる程度に、強いソルバトクロミズム応答を示すことは、公知である。任意選択的に、三元複合体は、コンフォメーション的に感受性の色素に由来する蛍光シグナル又は吸光度シグナルの差違に基づき、二元複合体から識別されうる。任意選択的に、コンフォメーションの転移をモニタリングするのに、ソルバトクロミズム色素が利用されうるが、この場合、コンフォメーション変化により誘導される局所的な極性環境の変化は、レポーターシグナルとして使用されうる。ソルバトクロミズム色素は、ライハルト(Reichart’s)色素、IR44、メロシアニン色素(例えば、メロシアニン540)、4−[2−N−置換された−1,4−ヒドロピロジン−4−イリジン)エチリデン]シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−オン、赤色ピラゾロン色素、アゾメチン色素、インドアニリン色素、ジアザメロシアニン色素、インジゴにより例示されるインジゴイド色素及び他の色素並びにこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。当技術分野において、色素又はフルオロフォアをポリメラーゼの特異的部位へと導入する方法は、周知である。非限定的な例として述べると、T7 DNAポリメラーゼの、色素による部位特異的標識化のための手順は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、Yu−Chih Tsai、Zhinan Jin及びKenneth A.Johnson、「Site−Specific Labeling of T7 DNA Polymerase with a Conformationally Sensitive Fluorophore and Its Use in Detecting Single−Nucleotide Polymorphisms」、Analytical Biochemistry 384、1号(2009年1月1日):136〜44において提示されている。
【0154】
任意選択的に、ポリメラーゼは、反応に干渉せずに、三元複合体の形成を感知しうる位置において、フルオロフォアによりタグ付けされる。ポリメラーゼは、天然ポリメラーゼの場合もあり、修飾ポリメラーゼの場合もある。修飾ポリメラーゼは、1つ以上のアミノ酸の突然変異、付加及び/又は欠失を含むポリメラーゼを含む。任意選択的に、全てではないが、1つ以上のシステインアミノ酸は、アラニンのような別のアミノ酸へと突然変異させる。この場合、1つ以上の、残りのシステインは、フルオロフォアへの部位特異的コンジュゲーションのために使用される。代替的に、1つ以上のアミノ酸は、システイン又は一級アミンを含むアミノ酸のような、フルオロフォアコンジュゲーションに適する、反応性のアミノ酸へと突然変異させる。
【0155】
任意選択的に、適正なヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の間の結合が、蛍光の減少を誘導しうるのに対し、不適正なヌクレオチドとの結合は、蛍光の増大を引き起こす。適正なヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の間の結合が、蛍光の増大を誘導しうるのに対し、不適正なヌクレオチドとの結合は、蛍光の減少を引き起こす。蛍光シグナルは、ヌクレオチドにより誘導されるコンフォメーション変化の反応速度をモニタリングし、鋳型核酸配列内の次の塩基を同定するのに使用されうる。
【0156】
任意選択的に、ポリメラーゼ/核酸間相互作用は、ポリメラーゼに由来する散乱シグナル又はポリメラーゼへと接合させたタグ、例えば、ナノ粒子タグによりモニタリングされうる。
【0157】
上記において論じられた通り、ポリメラーゼは、本明細書で記載されたシーケンシング法の精査ステップにおいて、三元複合体の形成及び/又は安定化を容易とするように改変されうる。したがって、修飾ポリメラーゼは、提示された方法において使用されうる。ポリメラーゼの修飾は、三元複合体を維持するように、架橋剤により、三元複合体内のメンバーを架橋すること又はポリメラーゼ内にジスルフィド結合を形成することを含みうる。
【0158】
任意選択的に、システイン残基は、三元複合体が形成されると、システインが近接し、少なくとも1つのジスルフィド結合を形成して、ポリメラーゼをクローズドコンフォメーション内にトラップするように位置する。任意選択的に、ポリメラーゼのフィンガードメイン及びサムドメインは、閉じた複合体内において、対面するフィンガー上のシステインが相互作用し、ジスルフィド結合を形成し、ポリメラーゼをそのクローズドコンフォメーション内にトラップするよう、各々1つ以上のシステインを含有するように操作される。ジスルフィド結合の形成を誘導するように、ポリメラーゼ上の適切な位置へシステインを導入することは、タンパク質操作の技術分野の当業者に公知の方法を使用して達せられうる。2−メルカプトエタノール(BME)、システイン−HCl、ジチオトレイトール(DTT)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はこれらの任意の組合せのような還元剤は、ジスルフィド結合を低減し、ポリメラーゼを放出するのに使用されうる。任意選択的に、ヌクレオチドは、システイン修飾ポリメラーゼと共に、個別の精査ステップにおいて、一度に1つずつ逐次的に付加され、この場合、三元複合体の形成及び/又は安定化を優先する、さらなる精査反応条件に対する必要は、任意選択である。任意選択的に、1つ、2つ、3つ、4つ又はこれを超えるヌクレオチドは、システイン修飾ポリメラーゼと共に、1つの精査ステップにおいて、組み合わせて(例えば、dATP、dTTP、dCTP及びdGTP)付加され、この場合、三元複合体の形成及び/又は安定化を優先する、さらなる精査反応条件に対する必要は、任意選択である。
【0159】
任意選択的に、システインにより修飾されたポリメラーゼは、三元複合体を形成しながら、適正なヌクレオチドを組み込まずに、鋳型核酸に結合する。三元複合体内において、ポリメラーゼのシステインは、空間において、少なくとも1つのジスルフィド結合を形成するのに十分に近接しており、これにより、三元複合体を安定化させる。この例において、ポリメラーゼは、トラップされ、ヌクレオチドの組込みを防止される。
【0160】
任意選択的に、精査反応混合物中に存在するヌクレオチドは、次の適正なヌクレオチドであり、システインにより修飾されたポリメラーゼは、鋳型核酸に結合し、次の適正なヌクレオチドを組み込み、三元複合体を形成し、この場合、閉じた複合体内において、ポリメラーゼのシステインは、空間において少なくとも1つのジスルフィド結合を形成するのに十分に近接しており、これにより、三元複合体を安定化させる。三元複合体の安定化及びモニタリングの後に、組込みステップが実施されうるが、この場合、還元剤が、ジスルフィド結合を切断し、ポリメラーゼを三元複合体から放出する。次いで、還元剤は、除去されてもよく、希釈されてもよく、封鎖されてもよく、別の精査ステップが実施されてもよい。
【0161】
任意選択的に、ジスルフィドにより安定化した三元複合体のヌクレオチドは、三元複合体を安定化させる前に、又は三元複合体を安定化させる時に組み込まれる。組込みステップは、ジスルフィド結合を還元して、後続のヌクレオチドの組込み及び/又はさらなる精査ステップを可能とすることにより実施されうる。
【0162】
任意選択的に、精査ステップにおいて、1つのヌクレオチドが、反応混合物へと添加される。任意選択的に、精査ステップにおいて、1つ、2つ、3つ、4つ以上のヌクレオチドが、反応混合物へと添加される。任意選択的に、次の適正なヌクレオチドが、三元複合体内に閉じ込められる。任意選択的に、不適正なヌクレオチドが、三元複合体内に閉じ込められる。
【0163】
任意選択的に、ポリメラーゼは、三元複合体の形成の後において、これ自体と共に、ジスルフィド結合を形成しうる。ポリメラーゼは、三元複合体の形成の後において、プライミングされた鋳型核酸とのジスルフィド結合を形成しうる。三元複合体は、次の塩基と塩基対合した、次の適正なヌクレオチド及び/又はプライミングされた鋳型核酸のプライマーへと組み込まれた、次の適正なヌクレオチドを含みうる。任意選択的に、三元複合体は、次の塩基への結合及び/又は組込みが弱められた、不適正なヌクレオチドを含む。
【0164】
任意選択的に、ポリメラーゼは、三元複合体のポリメラーゼを含む架橋法を介して安定化する。酵素的切断若しくは化学的切断、変性又はこれらの任意の組合せのような、他の手段を使用して、ポリメラーゼは、核酸に結合しないようにされ得るので、架橋法は、可逆性でなくてもよい。変性剤は、酢酸又はトリクロロ酢酸のような酸;エタノール又はメタノールのような溶媒;尿素、塩化グアニジニウム、過塩素酸リチウムのようなカオトロピック剤;ドデシル硫酸ナトリウムのような界面活性剤又はこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。化学的切断は、天然のプロテアーゼ、修飾プロテアーゼ又は市販のプロテアーゼのうちの1つ以上の使用を含む。架橋されたポリメラーゼを放出するための、さらなる方法は、pH、温度、イオン強度又はこれらの任意の組合せを変更することを含むが、これらに限定されない。
【0165】
三元複合体は、反応の精査ステップにおいて、閉じ込められたヌクレオチドの組込みを伴わずに形成される。任意選択的に、任意の時点における精査反応混合物は架橋剤を含み、この場合、三元複合体は架橋される。この例において、ポリメラーゼはトラップされ、ヌクレオチドの組込みを防止される。任意選択的に、精査反応混合物中に存在するヌクレオチドは、次の適正なヌクレオチドであり、ポリメラーゼは、鋳型核酸に結合し、次の適正なヌクレオチドを組み込み、三元複合体を形成するが、この場合、三元複合体内にあるとき、架橋剤は三元複合体をトラップするのに利用可能である。三元複合体の安定化及びモニタリングの後において、組込みステップが実施される場合があり、三元複合体は、その閉じたコンフォメーションから解放される。任意選択的に、三元複合体は形成され、次の適正なヌクレオチドは、鋳型核酸プライマーへと組み込まれる。架橋は、ポリメラーゼが、次の塩基位置へとトランスロケートすることを阻害し、次のヌクレオチドは、ポリメラーゼがもはや架橋されなくなるまで、付加されることができない。任意選択的に、架橋されて安定化した三元複合体のヌクレオチドは、三元複合体の安定化の前に、又は安定化時に組み込まれる。組込みステップは、連結を切断し、かつ/又はポリメラーゼを変性させて、後続のヌクレオチドの組込みステップ及び/若しくはさらなる精査ステップを可能とすることにより実施されうる。
【0166】
任意選択的に、ポリメラーゼは、三元複合体の形成の後において、それ自体へと架橋されうる。したがって、ポリメラーゼは、三元複合体の形成の後において、プライミングされた鋳型核酸へと架橋されうる。三元複合体は、次の塩基と塩基対合し、かつ/又はプライミングされた鋳型核酸のプライマーへと組み込まれる、次の適正なヌクレオチドを含みうる。任意選択的に、三元複合体は、次の塩基へのその結合及び/又は組込みが弱められる、不適正なヌクレオチドを含む。
【0167】
任意選択的に、ポリメラーゼは、二元複合体の形成より、閉じた複合体の形成を優先するように修飾される。ポリメラーゼの修飾は、遺伝子操作されうる。ポリメラーゼは、鋳型核酸に対する、それらの選択的結合アフィニティーに基づき選択されうる。ポリメラーゼは、ヌクレオチドに対する高アフィニティーを有するように、選択又は修飾される場合があり、この場合、ポリメラーゼは、鋳型核酸に結合する前に、ヌクレオチドに結合する。例えば、アフリカ豚コレラウイルスに由来するDNAポリメラーゼXは、基質の結合順序が変更されており、この場合、ポリメラーゼは、まず、ヌクレオチドに結合し、次いで、鋳型核酸に結合する。まず、ヌクレオチドに結合するポリメラーゼは、新規のシーケンシングスキームを開発するのに用いられうる。ポリメラーゼの修飾は、本明細書で開示された方法において、三元複合体内のポリメラーゼをトラップするようにデザインされうる。ポリメラーゼは、恒久的にトラップされる場合もあり、一過性にトラップされる場合もある。
【0168】
任意選択的に、三元複合体の安定化を可能とする修飾ポリメラーゼは、通例、解放試薬(例えば、マグネシウム又はマンガンのような触媒性金属イオン)の存在を含むがこれらに限定されない、三元複合体を解放する反応条件と組み合わされる。任意選択的に、三元複合体は、触媒性金属イオンの存在下においてもなお安定化する。任意選択的に、三元複合体は、架橋剤の存在下においてもなお解放される。任意選択的に、閉じた複合体の安定化は、部分的に、安定化試薬及び/又は解放試薬の濃度及び/又はアイデンティティー並びにこれらの任意の組合せに依存する。任意選択的に、1つ以上の修飾ポリメラーゼを使用する、三元複合体の安定化は、三元複合体を安定化させるさらなる反応条件であって、触媒性金属イオンを封鎖すること、これを除去すること、これを低減すること、これを含まないこと及び/又はこれをキレート化すること;ポリメラーゼ阻害剤又は組込み不可能なヌクレオチドの存在;及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない反応条件と組み合わされる。
【0169】
ポリメラーゼ送達試薬
一態様において、開示された技法は、ポリメラーゼ及びヌクレオチドを、固定された核酸の特徴の集団へと送達する方法であって、各特徴が、1つ以上の、プライミングされた鋳型核酸分子を含む方法に関する。方法は、固定された核酸の特徴の集団を、ポリメラーゼ、第1のヌクレオチド及び溶液中において遊離している、少なくとも1つの固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子を含む第1の試薬と接触させるステップを含む。第1の試薬の第1のヌクレオチドは、第1の試薬の、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子のいずれについても、次の適正なヌクレオチドではない。同様に、接触させるステップは、三元複合体を安定化させ、ポリメラーゼによる、ホスホジエステル結合の形成の触媒を阻害又は回避する条件下において行われる。この手順により、第1の試薬の、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子の非存在下における、ポリメラーゼ及び第1のヌクレオチドを含む試薬の使用と比較して、二元複合体を形成するプライミングされた鋳型核酸分子へのヌクレオチド非依存性のポリメラーゼの結合は、低減される。技法についての一実施形態において、第1の試薬を、同じ種類の、第1の試薬のポリメラーゼと第2のヌクレオチドと溶液中において遊離している少なくとも1つの固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子とを含む第2の試薬により置きかえる、さらなるステップが存在する。ここで、第1のヌクレオチドと、第2のヌクレオチドとは、互いと異なる。第2のヌクレオチドは、第2の試薬の、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子のいずれについても、コグネイトのヌクレオチドではない。同様に、置きかえるステップは、三元複合体を安定化させ、ポリメラーゼによる、ホスホジエステル結合の形成の触媒を阻害又は回避する条件下において行われる。この場合、第2の試薬の、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子の非存在下における、ポリメラーゼ及び第2のヌクレオチドを含む試薬の使用と比較して、二元複合体を形成するプライミングされた鋳型核酸分子へのヌクレオチド非依存性のポリメラーゼの結合は、低減される。任意選択的に、第1の試薬の、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子と、第2の試薬の、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子とは、互いと異なる。
【0170】
別の態様において、反応混合物が開示される。反応混合物は、複数の固定された核酸の特徴を含み、この場合、各特徴は、固定されたプライミングされた鋳型核酸;ポリメラーゼ;固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子(すなわち、溶液中に遊離する);及びヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子の、コグネイトのヌクレオチドではない。同様に、二元複合体を形成する、固定されたプライミングされた鋳型核酸への、ヌクレオチド非依存性のポリメラーゼの結合は、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子の存在により低減される。好ましい一実施形態において、ポリメラーゼと固定されたプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとは、ヌクレオチドを、固定されたプライミングされた鋳型核酸へと組み込むことが阻害又は回避された、安定化した三元複合体を形成する。
【0171】
さらに別の態様において、ポリメラーゼ;少なくとも1つの、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子;及び少なくとも1つのヌクレオチドを含む、ポリメラーゼ送達試薬が開示される。ここで、いずれのヌクレオチドも、固定されていないプライミングされた鋳型核酸分子のいずれについても、次の適正なヌクレオチドではない。任意選択的に、ポリメラーゼ送達試薬は、液相ポリメラーゼによるホスホジエステル結合の形成を阻害する、三元複合体安定化剤をさらに含む。任意選択的に、少なくとも1つのヌクレオチドは、少なくとも1つの天然ヌクレオチドを含む。任意選択的に、液相のプライミングされた鋳型核酸分子は、各々が、異なる3’末端のヌクレオチドを含む3つ以下の異なる種類のプライミングされた鋳型核酸分子を含む。例えば、ポリメラーゼは、任意選択的に、Mg2+イオンの存在下において、触媒性のホスホジエステル結合形成活性を伴わない突然変異体ポリメラーゼである。
【0172】
三元複合体を安定化させる、ポリメラーゼ阻害剤の使用
三元複合体は、ポリメラーゼ阻害剤の精査反応混合物への添加により、形成されかつ/又は安定化しうる。阻害剤分子であるホスホノ酢酸塩(ホスホノ酢酸)及びホスホノギ酸塩(ホスホノギ酸、一般名:ホスカルネット)、スラミン、アミノグリコシド、INDOPY−1及びタゲチトキシンは、ポリメラーゼ活性に対する不競合的又は非競合的阻害剤の非限定的な例である。酵素の活性部位の近傍における阻害剤分子の結合は、ヌクレオチドの組込みサイクルのプレトランスロケーションステップ又はポストトランスロケーションステップにおいて、ポリメラーゼをトラップし、ヌクレオチドの組込みの前又は後において、その三元複合体コンフォメーションにおいて、ポリメラーゼを安定化させ、阻害剤分子が、除去、希釈又はキレート化により反応混合物中において利用可能でなくなるまで、ポリメラーゼを鋳型核酸に結合させる。
【0173】
したがって、鋳型核酸分子をシーケンシングするための方法であって、プライマーによりプライミングされた鋳型核酸分子を用意すること;プライミングされた鋳型核酸分子を、ポリメラーゼ、ポリメラーゼ阻害剤及び少なくとも1つの非標識化ヌクレオチド分子を含む第1の反応混合物と接触させること;非標識化ヌクレオチド分子の存在下において、ヌクレオチドの、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの組込みを伴わずに、ポリメラーゼの、プライミングされた鋳型核酸分子との相互作用をモニタリングすること;並びにモニタリングされた相互作用により、プライミングされた鋳型核酸分子の次の塩基と相補的なヌクレオチドを同定することを含む、精査ステップを含む方法が、提示される。ポリメラーゼ阻害剤は、プライマー鋳型核酸のプライマーへの、非標識化ヌクレオチド分子の組込みを防止する。任意選択的に、阻害剤は、非競合的阻害剤、アロステリック阻害剤、又は不競合的アロステリック阻害剤である。任意選択的に、ポリメラーゼ阻害剤は、ポリメラーゼ内の結合性部位について、触媒性イオンと競合する。
【0174】
アミノグリコシドは、クレノウポリメラーゼ内のマグネシウム結合性部位を置換することにより、ポリメラーゼの活性を、非競合的に阻害する。ヌクレオチドの結合に関する、相互作用の非競合的性質は、ポリメラーゼが鋳型核酸及びヌクレオチドと相互作用し、ヌクレオチドの組込みの触媒ステップだけに影響を及ぼすことを可能とする。
【0175】
1つの阻害剤分子は、HIV−1逆転写酵素に対して、非競合的阻害剤として作用する薬物である、エファビレンツである。ポリメラーゼが、次の適正なヌクレオチドを組み込んだら、薬物がポリメラーゼに結合し、ポリメラーゼがそのフィンガーを開いて、結合及び/又は後続のヌクレオチドの組込みを可能とすることを防止するように、薬物は、ポリメラーゼの閉じた複合体の立体配置に対して、高アフィニティー及び低解離速度を有する。三元複合体の形成を二元複合体の形成より優先する条件下において反応が生じる場合、非特異的なポリメラーゼ−鋳型核酸間相互作用は消失する場合があり、この場合、ポリメラーゼの結合は、付加されるヌクレオチドが鋳型上の次の塩基と相補的であることを意味する。反応が精査反応条件下で生じる場合、次の適正なヌクレオチドを含有する鋳型核酸への、ポリメラーゼの高アフィニティーの結合は、三元複合体を、ポリメラーゼの鋳型核酸とのランダムな非特異的相互作用と、識別するのに使用されうる。任意選択的に、高アフィニティーのポリメラーゼの結合は、ヌクレオチドの組込みを示し、個別の組込みステップは、要求されない。ポリメラーゼが結合し、結合が検出されたら、過剰量のヌクレオチド及びポリメラーゼは、反応混合物から除去又は封鎖されうる。次のヌクレオチドは、精査反応条件下における付加が可能であり、工程は、所望のリード長のシーケンシングが完了するまで、全てのヌクレオチド型について又はランダムな順序若しくは所定の順序において、周期的に反復された。
【0176】
任意のポリメラーゼの選択が可能であり、適切な非競合的阻害剤は、ハイスループットスクリーニング(HTS)工程を使用して発見されうる。ポリメラーゼ阻害剤のためのHTS工程の多くの例は、文献において見出されるが、この場合、特異的スクリーニングの基準は、非競合的ポリメラーゼ阻害剤についてのものである。一般的な概念として、これらの阻害剤は、阻害剤の結合が、クローズドコンフォメーションにおいて、ポリメラーゼを安定化させるよう、ポリメラーゼがこのクローズドコンフォメーションにあり高アフィニティー及び極めて小さな解離速度により結合する場合に限り露出される結合性部位を有するように、スクリーニングされうる。このような阻害剤は、単一の塩基の組込みを可能とし、この後、阻害剤の結合は、ポリメラーゼが別のヌクレオチドを受け入れるまで開くことを防止する。シーケンシング反応における次のステップ(精査又は組込み)を誘発する前に、ポリメラーゼを含む系の全体は、洗い流されうる。
【0177】
任意選択的に、ポリメラーゼであるHIV−1逆転写酵素の阻害において有効であることが見出されたポリメラーゼ阻害剤は、三元複合体を安定化させるのに利用される。任意選択的に、阻害剤は、HIV−2逆転写酵素の阻害剤である。HIV−1逆転写酵素阻害剤は、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)を含む。NRTIは、COMBIVIR(ラミブジン及びジドブジン;GlaxoSmithKline、Middlesex、UK)、EMTRIVA(エムトリシタビン;Gilead Sciences、Foster City、CA)、EPIVIR(ラミブジン;GlaxoSmithKline、Middlesex、UK)、EPZICOM(アバカビル硫酸塩及びラミブジン;GlaxoSmithKline、Middlesex、UK)、HIVID(ザルシタビン;Hoffmann−LaRoche、Nutley、N.J.)、RETROVIR(ジドブジン;GlaxoSmithKline、Middlesex、UK)、TRIZIVIR(アバカビル硫酸塩、ジドブジン、ラミブジン;GlaxoSmithKline、Middlesex、UK)、TRUVADA(エムトリシタビン/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩;Gilead Sciences、Foster City、CA)、VIDEX EC(腸溶性コーティングジダノシン;Bristol Myers−Squibb、New York、N.Y.)、VIDEX(ジダノシン;Bristol Myers−Squibb、New York、N.Y.)、VIREAD(テノホビルジソプロキシルフマル酸塩;Gilead Sciences、Foster City、CA)、ZERIT(スタブジン;Bristol Myers−Squibb、New York、N.Y.)及びZIAGEN(アバカビル硫酸塩;GlaxoSmithKline、Middlesex、UK)を含むがこれらに限定されない。NNRTIの例は、VIRAMUNE(ネビラピン;Boehringer Ingelheim、Rhein、Germany)、SUSTIVA(エファビレンツ、Bristol Myers−Squibb、New York、N.Y.)、DELAVIRDINE(Rescriptor;Pfizer、New York、N.Y.)及びINTELENCE(エトラビリン;TibotecTherapeutics、EastgateVillage、Ireland)を含むがこれらに限定されない。任意選択的に、NNRTIは、サブユニットp66上の、RNAポリメラーゼの活性部位の近傍に位置するアロステリック中心に結合する、非競合的ポリメラーゼ阻害剤である。
【0178】
任意選択的に、HIV−1逆転写酵素ポリメラーゼ阻害剤は、(4/6−ハロゲン/MeO/EtO置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オンである。表1は、19の(4/6−ハロゲン/MeO/EtO置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オン阻害剤のリスト(出典:E.Pittaら、Synthesis and HIV−1 RT inhibitory action of novel(4/6−substituted benzo[d]thiazol−2−yl)thiazolidin−4−ones.Divergence from the non−competitive inhibition mechanism, Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry、2013年2月、28巻、1号、113〜122頁)を含む。(4/6−ハロゲン/MeO/EtO置換ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)チアゾリジン−4−オン阻害剤は、以下の式:
【0181】
三元複合体をトラップし/安定化させ、任意選択的にサイクル1つ当たり複数のヌクレオチドの組込みを防止する限りにおいて、ポリメラーゼ阻害剤及びポリメラーゼ突然変異体の任意の適切な組合せを、使用しうる。
【0182】
用意された反応混合物は、100nM〜1mMのポリメラーゼ阻害剤、又は100nM〜1mMの間の任意の量の阻害剤を含みうる。任意選択的に、用意された反応混合物は、1〜200μM又はこの間の任意の量のポリメラーゼ阻害剤を含みうる。任意選択的に、反応混合物は、30〜150μMのポリメラーゼ阻害剤を含む。任意選択的に、反応混合物は、30〜70μMのポリメラーゼ阻害剤を含む。任意選択的に、反応混合物は、60〜140μMのポリメラーゼ阻害剤を含む。
【0183】
任意選択的に、三元複合体のポリメラーゼは、ピロリン酸類似体又は他の関連する分子を使用することにより、そのフィンガードメインを開き、次の鋳型核酸位置へとトランスロケートすることを防止される。ピロリン酸類似体は、ポリメラーゼの活性のポケット内の三リン酸結合性部位と近接した部位を占有することにより、三元複合体内のポリメラーゼを構成する。ピロリン酸(PPi)の放出は、ポリメラーゼがオープンコンフォメーションをとり、次の鋳型核酸位置へとトランスロケートし、次のヌクレオチドを受け入れるために、極めて重要である。ホスカルネット(ホスホノギ酸塩)、ホスホノ酢酸塩又は他のピロリン酸類似体のような非競合的阻害剤は、そのフィンガーを閉じたコンフォメーション内に、ポリメラーゼをトラップする。任意選択的に、PPi類似体の結合は可逆性であり、阻害剤を洗い流すか、希釈するか、又は反応混合物内に封鎖することにより、ポリメラーゼ活性は回復される。広く述べると、ポリメラーゼ活性の、任意の非競合的阻害剤は、シーケンシング反応において使用されうる。
【0184】
任意選択的に、三元複合体を安定化させるポリメラーゼ阻害剤は、通例、マグネシウム又はマンガンのような触媒性金属イオンの存在を含むがこれらに限定されない、三元複合体を解放する反応条件と組み合わされる。任意選択的に、三元複合体は、触媒性金属イオンの存在下においてもなお安定化する。任意選択的に、三元複合体は、ポリメラーゼ阻害剤の存在下においてもなお解放される。任意選択的に、三元複合体の安定化は、部分的に、濃度、安定化試薬のアイデンティティー、解放試薬のアイデンティティー及びこれらの任意の組合せに依存する。任意選択的に、ポリメラーゼ阻害剤を使用する三元複合体の安定化は、これもまた、三元複合体を安定化させるように機能する、さらなる反応条件であって、触媒性金属イオンを封鎖すること、これを除去すること、これを低減すること、これを含まないこと及び/又はこれをキレート化すること;三元複合体内の修飾ポリメラーゼの存在;三元複合体内の組込み不可能なヌクレオチド並びにこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない反応条件と、組み合わされる。
【0185】
三元複合体を形成及び操作するための条件
本明細書で使用された、三元複合体は、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとを含む。三元複合体は、プレケミストリーコンフォメーションにありうるが、この場合、ヌクレオチドは、捕捉されているが、組み込まれていない。任意選択的に、三元複合体は、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーの3’ヌクレオチド上の化学的ブロック(例えば、ヌクレオチドの塩基上又は糖上の、可逆性のターミネーター部分)の存在により安定化させうる。三元複合体は、プレトランスロケーションコンフォメーションにありうるが、この場合、ヌクレオチドは、プライミングされた鋳型核酸内の、プライマーの3’末端とのホスホジエステル結合の形成により組み込まれる。三元複合体は、触媒性金属イオンの非存在下において、又は触媒性金属イオンの欠損レベル下において形成される可能性があり、これにより、化学的組込みを伴わずに、次の適正なヌクレオチドを、ポリメラーゼの活性部位内に物理的に捕捉する。任意選択的に、捕捉されたヌクレオチドは、組込み不可能なヌクレオチドでありうる。三元複合体は、触媒性金属イオンの存在下において形成され得、この場合、三元複合体は、組み込まれるヌクレオチド類似体を含むが、PPiは放出不能である。この場合、三元複合体は、プレトランスロケーションコンフォメーションにおいて安定化する。任意選択的に、プレトランスロケーションコンフォメーションは、ポリメラーゼを、化学的に架橋することにより安定化する。任意選択的に、三元複合体は、外部の手段により安定化させうる。場合によって、三元複合体は、低分子のアロステリック結合により安定化させうる。任意選択的に、三元複合体は、活性部位に、高アフィニティーにより、緊密に結合し、ポリメラーゼのトランスロケーションを防止するホスホノギ酸塩を含むがこれらに限定されないピロリン酸類似体により安定化させうる。
【0186】
本明細書で使用された、安定化した三元複合体とは、クローズドコンフォメーション内のサムドメイン及びフィンガードメインの架橋、ポリメラーゼのオープンコンフォメーションへの復帰を防止するアロステリック阻害剤の結合、プレトランスロケーションステップにおいてポリメラーゼをトラップするピロリン酸類似体の結合、ポリメラーゼの活性部位内の触媒性金属イオンの非存在、並びに触媒性金属イオンの代替物としてのニッケルイオン、バリウムイオン、スズイオン及びストロンチウムイオンのような非触媒性金属イオンの添加を含むがこれらに限定されない1つの手段又は手段の組合せによりプライミングされた鋳型核酸の重合化開始部位(プライマーの3’末端)にトラップされたポリメラーゼを指す。したがって、ポリメラーゼは、ヌクレオチドの組込みの後においてもなお、重合化開始部位にトラップされうる。したがって、ポリメラーゼは、プレケミストリーコンフォメーション、プレトランスロケーションステップ、ポストトランスロケーションステップ、又はこれらの任意の中間ステップにおいてトラップされる場合があり、これにより、次の適正なヌクレオチド又は塩基の十分な精査及び同定を可能とする。
【0187】
本明細書で記載された、ポリメラーゼベースの、結合によるシーケンシング反応は、一般に、プライミングされた鋳型核酸を用意すること、プライミングされた鋳型核酸にポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸の次の塩基に相補的であっても相補的でなくてもよい1種以上のヌクレオチドとを供給すること、並びにヌクレオチドのプライミングされた鋳型核酸への化学的組込みがプレケミストリーコンフォメーションにおいて失効しているか若しくは大幅に阻害されている条件、又は1つ以上の相補的なヌクレオチドの組込みがプライマーの3’末端において生じる条件下において、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸との相互作用を精査することを、含む。任意選択的に、好ましくは、安定化剤又は可逆的に終結させた3’プライマーを使用して、ヌクレオチドの組込みの前にプレケミストリーコンフォメーションが安定化する場合、別個の組込みステップが、精査ステップに後続して、単一のヌクレオチドをプライマーの3’末端に組み込む。任意選択的に、単一のヌクレオチドの組込みが生じる場合、プレトランスロケーションコンフォメーションは、精査を容易とし、かつ/又は後続のヌクレオチドの組込みを防止するように安定化させうる。
【0188】
説明を容易にするために、単一の鋳型核酸分子について記載されうるが、本明細書において提示されるシーケンシング法は、複数の鋳型核酸をたやすく包摂するが、この場合、複数の核酸は、単一の核酸のクローン的に増幅されたコピーであっても、クローン的に増幅された異種核酸の集団のような組合せを含む異種核酸であってもよい。
【0189】
任意選択的に、三元複合体は、本明細書において提示されるシーケンシング法の精査ステップにおいて、一過性で形成される。任意選択的に、三元複合体は、精査ステップにおいて安定化する。精査ステップにおいて安定化した三元複合体は、重合化反応におけるヌクレオチドの組込みが、閉じ込められたヌクレオチドの組込み及び/又は閉じ込められたヌクレオチドの後における後続のヌクレオチドの組込みを含めて、不能である。三元複合体の安定性をモジュレートする反応条件は、触媒性金属イオン、最適未満又は阻害性の金属イオン、イオン強度、pH、温度、ポリメラーゼ阻害剤、架橋試薬及びこれらの任意の組合せの利用可能性を含むがこれらに限定されない。三元複合体の安定性をモジュレートする反応試薬は、組込み不可能なヌクレオチド、不適正なヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、修飾されたポリメラーゼ、伸長不可能な重合化開始部位を含む鋳型核酸及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない。
【0190】
任意選択的に、三元複合体は、プライマー−鋳型核酸二重鎖内のプライマーの3’末端において、ヌクレオチドの組込みを可能としうる、この捕捉コンフォメーション又は安定化コンフォメーションから解放される。三元複合体は、反応条件をモジュレートすることにより、不安定化しそして/又は解放されうる。加えて、三元複合体は、電気的手段、磁気的手段及び/又は機械的手段により不安定化されうる。機械的手段は、例えば、超音波撹拌を使用することによる機械的撹拌を含む。機械的振動は、閉じた複合体を不安定化させ、ポリメラーゼの、DNAへの結合を抑制する。したがって、精査反応混合物が組込み混合物により置きかえられる洗浄ステップではなく、機械的撹拌は、ポリメラーゼを鋳型核酸から除去し、ステップ1つ当たり単一のヌクレオチド付加を含む逐次的な組込みステップを通したサイクリングを可能とするのに、使用されうる。
【0191】
三元複合体の安定化又は三元複合体の解放のための反応条件及び/又は方法の任意の組合せが、使用されうる。例えば、三元複合体を安定化させるポリメラーゼ阻害剤は、三元複合体を解放するように機能する触媒性イオンを含む精査反応物中に存在しうる。前述の例において、閉じた複合体は、ポリメラーゼ阻害剤の特性及び濃度、触媒性金属イオンの濃度、反応混合物の他の試薬及び/又は条件、並びにこれらの任意の組合せに応じて、安定化する場合もあり、解放される場合もある。
【0192】
三元複合体は、ヌクレオチドの、プライミングされた鋳型核酸内の、プライマーの3’末端への共有結合的接合が弱められる反応条件下において安定化させうる。任意選択的に、三元複合体は、プレケミストリーコンフォメーションにある。任意選択的に、三元複合体は、プレトランスロケーションコンフォメーションにある。この三元複合体の形成は、三元複合体の解放及び/又は反応混合物中の、ヌクレオチドの、プライマーへの化学的組込みを可能とする触媒性金属イオンの利用可能性をモジュレートすることにより、誘発される場合もあり、かつ/又は安定化する場合もある。例示的な金属イオンは、マグネシウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオン及びバリウムイオンを含むがこれらに限定されない。触媒性イオン(例えば、二価の触媒性金属イオン)は、任意の処方物、例えば、MgCl2、Mg(C2H3O2)2及びMnCl2のような、塩から生じうる。
【0193】
触媒性金属イオンの選択及び/又は濃度は、シーケンシング反応におけるポリメラーゼ及び/又はヌクレオチドに基づきうる。例えば、HIV逆転写酵素は、ヌクレオチドの組込みのために、マグネシウムを用いる(参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれた、N Kaushik、1996、Biochemistry、35:11536〜11546及びH P Patel、1995、Biochemistry、34:5351〜5363)。マンガンと対比したマグネシウムを使用する、三元複合体の形成の速度は、ポリメラーゼ及びヌクレオチドのアイデンティティーに応じて異なりうる。したがって、閉じた複合体の安定性は、触媒性金属イオン、ポリメラーゼ及び/又はヌクレオチドのアイデンティティーに応じて異なりうる。さらに、三元複合体の安定化に必要な触媒性イオンの濃度は、触媒性金属イオン、ポリメラーゼ及び/又はヌクレオチドのアイデンティティーに応じて変動する場合があり、本明細書において提示された指針を使用して、たやすく決定されうる。例えば、ヌクレオチドの組込みは、1つの金属イオンが高触媒性イオン濃度のときに生じうるが、同じ金属イオンが低濃度のときに生じず、この逆も成り立つ。したがって、金属イオンのアイデンティティー、金属イオンの濃度、ポリメラーゼのアイデンティティー及び/又はヌクレオチドのアイデンティティーを改変することは、精査反応条件の制御を可能とする。
【0194】
三元複合体の解放及び/又は化学的組込みが生じないように、シーケンシング反応の精査ステップにおいて、触媒性金属イオンを封鎖すること、これを除去すること、これを低減すること、これを含まないこと及び/又はこれをキレート化することにより、三元複合体は形成され、そして/又は安定化しうる。キレート化は、触媒性金属イオンをヌクレオチドの組込みに利用不可能にする、任意の手順であって、EDTA及び/又はEGTAの使用を含む手順を含む。低減は、反応混合物中の触媒性金属イオンの濃度を希釈することを含む。
【0195】
精査ステップにおいて使用される反応混合物は、三元複合体の形成を可能とするが、ヌクレオチドの組込みを阻害する非触媒性イオンを含む溶液により希釈されても、置きかえられてもよい。任意選択的に、非触媒性金属イオン及び触媒性金属イオンは、いずれも反応混合物中に存在し、この場合、1つのイオンは、他のイオンより、高有効濃度において存在する。提示された方法において、コバルトのような非触媒性イオンも、高濃度において、触媒性となりうる、すなわち、ヌクレオチドの組込みを容易としうる。
【0196】
非触媒性イオンは、精査条件下において使用される反応混合物へと添加されても、この中に含まれてもよい。反応物は、既に、ヌクレオチドを含みうる。任意選択的に、非触媒性イオンは、1つ以上のヌクレオチドと複合体化し、複合体化したヌクレオチドは、反応混合物へと添加される。高温(約80℃)において、ヌクレオチドを、非触媒性イオンと混合することにより、非触媒性イオンは、ヌクレオチドと複合体化しうる。例えば、クロム−ヌクレオチド複合体は、三元複合体の形成及び安定化を容易とするように、混合物へと添加されうる。任意選択的に、クロム−ヌクレオチド複合体は、クロムの単座複合体、二座複合体又は三座複合体である。任意選択的に、クロム−ヌクレオチド複合体は、α−単座ヌクレオチド又はβ−γ−二座ヌクレオチドである。
【0197】
任意選択的に、三元複合体は、Sr2+を含む反応条件下、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとの間において形成されるが、この場合、Sr2+は、三元複合体の形成を誘導する。Sr2+の存在は、不適正なヌクレオチドを含む複合体の形成より優先的な、次の適正なヌクレオチドを含む三元複合体の形成を可能としうる。Sr2+は、約0.01mM〜約30mMの濃度において存在しうる。任意選択的に、Sr2+は、10mMのSrCl2として存在する。三元複合体の形成は、三元複合体の鋳型核酸内の次の塩基を同定するように、精査条件下においてモニタリングされる。Sr2+の存在下において、ポリメラーゼ(例えば、E.コリーDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、Bst)の、各dNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)に対するアフィニティーは、異なりうる。したがって、精査は、ポリメラーゼ−鋳型核酸の、dNTPに対する結合アフィニティーを測定することを含んでもよく、この場合、結合アフィニティーは、鋳型核酸内の次の塩基を示す。任意選択的に、結合相互作用は、ポリメラーゼ及びプライミングされた鋳型核酸の間の二元相互作用を不安定化させる条件下において実施されうる。任意選択的に、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸と次の適正なヌクレオチドとの間の三元相互作用を安定化させる条件下において、実施されうる。任意選択的に、精査の後において、洗浄ステップは、結合しなかったヌクレオチドを除去し、ヌクレオチドの組込み及びピロリン酸(PPi)の放出を誘導するために、Mg2+が反応物へと添加される。任意選択的に、洗浄ステップは、三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を防止するために、Sr2+を含む。反応は、所望の配列リード長が得られるまで反復されうる。
【0198】
任意選択的に、三元複合体は、Ni2+を含む反応条件下、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとの間において形成されるが、この場合、Ni2+は、三元複合体の形成を誘導する。Ni2+の存在は、不適正なヌクレオチドを含む複合体の形成より優先的な、次の適正なヌクレオチドを含む三元複合体の形成を可能としうる。Ni2+は、約0.01mM〜約30mMの濃度において存在しうる。任意選択的に、Ni2+は、10mMのNiCl2として存在する。三元複合体の形成は、三元複合体の、鋳型核酸内の次の塩基を同定するように、精査条件下においてモニタリングされる。Sr2+の存在下において、ポリメラーゼ(例えば、E.コリーDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、Bst)の、各dNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)に対するアフィニティーは、異なりうる。したがって、精査は、ポリメラーゼ−鋳型核酸の、dNTPに対する結合アフィニティーを測定することを含んでもよく、この場合、結合アフィニティーは、鋳型核酸内の次の塩基を示す。任意選択的に、結合相互作用は、ポリメラーゼ及びプライミングされた鋳型核酸の間の二元相互作用を不安定化させる条件下において、実施されうる。任意選択的に、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸と次の適正なヌクレオチドとの間の三元相互作用を安定化させる条件下において、実施されうる。任意選択的に、精査の後において、洗浄は、結合しなかったヌクレオチド及びポリメラーゼを除去し、ヌクレオチドの組込み及びピロリン酸の放出を誘導するために、Mg2+が反応物へと添加される。任意選択的に、洗浄緩衝液は、三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を防止するために、Ni2+を含む。反応は、所望の配列リード長が得られるまで反復されうる。
【0199】
任意選択的に、三元複合体は、非触媒濃度のCo2+を含む反応条件下、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとの間において形成されるが、この場合、Co2+は、三元複合体の形成を誘導する。非触媒濃度のCo2+の存在は、不適正なヌクレオチドを含む複合体の形成より優先的な、次の適正なヌクレオチドを含む三元複合体の形成を可能としうる。Co2+は、約0.01mM〜約0.5mMの濃度において存在しうる。任意選択的に、Co2+は、0.5mMのCoCl2として存在する。三元複合体の形成は、三元複合体の、鋳型核酸内の次の塩基を同定するように、精査条件下においてモニタリングされる。Co2+の存在下において、ポリメラーゼ(例えば、E.コリーDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、Bst)の、各dNTP(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)に対するアフィニティーは、異なりうる。したがって、精査は、ポリメラーゼ−鋳型核酸の、dNTPに対する結合アフィニティーを測定することを含んでもよく、この場合、結合アフィニティーは、鋳型核酸内の次の塩基を示す。任意選択的に、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸との間の二元相互作用を不安定化させる条件下において実施されうる。任意選択的に、結合相互作用は、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸と次の適正なヌクレオチドとの間の三元相互作用を安定化させる条件下において実施されうる。精査の後において、洗浄は、結合しなかったヌクレオチド及びポリメラーゼを除去し、ヌクレオチドの組込み及びピロリン酸の放出を誘導するために、触媒濃度のCo2+が反応物へと添加される。任意選択的に、洗浄緩衝液は、非触媒量の三元複合体の安定性を維持し、三元複合体の解離を防止するために、Co2+を含む。反応は、所望の配列リード長が得られるまで反復されうる。
【0200】
任意選択的に、触媒性金属イオン(例えば、二価の触媒性金属イオン)は、後続のヌクレオチドの組込み及び三元複合体の解放を伴わない、閉じた複合体の形成を容易にしうる。任意選択的に、Mg2+の、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10μMの、反応混合物中濃度は、後続のヌクレオチドの組込み、PPi及び三元複合体の解放を伴わずに、三元複合体を形成するように、ポリメラーゼのコンフォメーション変化を誘導しうる。任意選択的に、Mg2+の濃度は、約0.5μM〜約10μM、約0.5μM〜約5μM、約0.5μM〜約4μM、約0.5μM〜約3μM、約μM〜約5μM、約1μM〜約4μM及び約1μM〜約3μMである。
【0201】
任意選択的に、触媒性金属イオン(例えば、二価の触媒性金属イオン)の、シーケンシング反応物中濃度であって、ヌクレオチドの組込みを可能とするのに必要な濃度は、約0.001mM〜約10mM、約0.01mM〜約5mM、約0.01mM〜約3mM、約0.01〜約2mM、約0.01mM〜約1mM、約0.05〜約10mM、約0.05mM〜約5mM、約0.05mM〜約3mM、約0.05〜約2mM又は約0.05mM〜約1mMである。任意選択的に、触媒性金属イオンの濃度は、5〜50mMである。任意選択的に、触媒性金属イオンの濃度は、5〜15mM又は約10mMである。
【0202】
非触媒性イオン(例えば、二価の非触媒性金属イオン)は、以下の反応ステップ:プライミングされた鋳型核酸を用意すること、ポリメラーゼを供給すること、二元複合体の形成、ヌクレオチドを供給すること、プレケミストリーの三元複合体の形成、ヌクレオチドの組込み、プレトランスロケーションの三元複合体の形成及びポストトランスロケーションコンフォメーションの形成のうちのいずれかの前、この間、又はこの後を含む任意の段階において、反応混合物へと添加されうる。非触媒性イオンは、洗浄ステップにおいて、反応混合物へと添加されうる。非触媒性イオンは、反応全体を通して、反応混合物中に存在しうる。例えば、触媒性イオンは、非触媒性金属イオンを希釈し、ヌクレオチドの組込みを可能とする濃度において、反応混合物へと添加される。
【0203】
触媒性イオン及び非触媒性イオンが、ヌクレオチドの組込みをモジュレートする能力は、pH、イオン強度、キレート剤、化学的架橋、修飾ポリメラーゼ、組込み不可能なヌクレオチド、機械的又は振動エネルギー及び電界を含むがこれらに限定されない、反応混合物中の条件に依存しうる。
【0204】
任意選択的に、非触媒性金属イオン(例えば、二価の非触媒性金属イオン)の、シーケンシング反応物中濃度であって、ヌクレオチドの組込みを伴わずに三元複合体の形成を可能とするのに必要な濃度は、約0.1mM〜約50mM、約0.1mM〜約40mM、約0.1mM〜約30mM、約0.1mM〜約20mM、約0.1mM〜約10mM、約0.1mM〜約5mM、約0.1mM〜約1mM、約1mM〜約50mM、約1〜約40mM、約1mM〜約30mM、約1mM〜約20mM、約1mM〜約10mM、約1mM〜約5mM、約2mM〜約30mM、約2mM〜約20mM、約2mM〜約10mM又はこれらの範囲内の任意の濃度である。この点において有用な非触媒性イオンは、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレニウム、ロジウム、ユーロピウム及びテルビウムのイオンを含むがこれらに限定されない。任意選択的に、三元複合体の形成を容易とするように、精査反応物中に、Ni2+が提供される。任意選択的に、三元複合体の形成を容易にするために、精査反応物中に、Sr2+が提供される。ある特定の実施形態において、精査ステップにおいて、1つ以上の非触媒性イオンは、上記に表示の濃度において含まれうるが、他の非触媒性イオンは、反応混合物から除外される。例えば、ニッケル又はストロンチウムは、含まれうるが、カルシウムは、除外される。
【0205】
検出プラットフォーム:三元複合体を検出するための計装
ヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼと鋳型核酸との間の相互作用は、タグ付けされた標識の使用を伴ってモニタリングされてもよく、これを用いずにモニタリングされてもよい。例えば、シーケンシング反応は、屈折率の変化の検出、電荷検出、ラマン散乱検出、偏光解析検出、pHの検出、サイズ検出、質量検出、表面プラズモン共鳴、導波モード共鳴、ナノ小孔光学的干渉法、ウィスパリングギャラリーモード共鳴、ナノ粒子散乱、光子結晶、石英結晶微量天秤、Biolayer干渉法、振動検出、圧力検出及び三元複合体内の、ポリメラーゼの、鋳型核酸との結合に起因する質量又は屈折率の付加を検出する、他の無標識検出スキームによりモニタリングされうる。
【0206】
任意選択的に、ポリメラーゼのラマンシグネチャーは、本明細書で開示されたシーケンシング法、例えば、三元複合体の形成又は解放の1つ以上のステップにおいて生じる、ポリメラーゼのコンフォメーション変化を検出するのに利用される。任意選択的に、本明細書で記載された核酸シーケンシング法の1つ以上のステップにおいて、可視光、近赤外又は近紫外の範囲内の光は、シーケンシング反応混合物へと方向付けられる。光は、反応物中の、分子の振動又は他の励起と相互作用する結果として、光のエネルギーのシフトをもたらす。エネルギーのシフトは、反応物の振動モードについての情報をもたらし、したがって、反応成分(例えば、ポリメラーゼ)の立体配置についての情報をもたらす。本開示のシーケンシング法は、表面増強型ラマン分光法、共鳴ラマン分光法、チップ増強型ラマン分光法、偏光ラマン分光法、刺激型ラマン分光法、透過ラマン分光法、空間オフセット型ラマン及びハイパーラマン分光法により検出されうる。
【0207】
任意選択的に、屈折率の変化の検出は、表面プラズモン共鳴センシング、局在化プラズモン共鳴センシング、プラズモン−光子カップリングセンシング、サブ波長ナノホールを通した透過センシング(光透過を増強した)、光子結晶センシング、干渉法センシング、屈折センシング、導波モード共鳴センシング、リング共鳴器センシング、又は偏光解析センシングを含むがこれらに限定されない、1つの手段又は手段の組合せにより達せられる。任意選択的に、核酸分子は、表面へと局在化させることができ、多様なヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼの、核酸との相互作用は、局所的な屈折率の変化として測定されうる。
【0208】
任意選択的に、ヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼと鋳型核酸との相互作用が、表面を透過するか又は表面から反射される光を変化させるように、鋳型核酸は、表面へとテザリングされるか又はこの上若しくは近傍において、適切に局在化させる。表面は、ナノ構造を含有しうる。任意選択的に、表面は、プラズモン又はプラズモン共鳴を維持することが可能である。任意選択的に、表面は、共鳴空洞、共鳴リング又は光子結晶スラブに限定されないフォトニック基質である。任意選択的に、表面は、導波モード共鳴センサーである。任意選択的に、ヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の相互作用が、マイクロ粒子又はナノ粒子と相互作用する光の、吸光度、散乱、反射又は共鳴を変化させるように、核酸は、ナノホールアレイ、ナノ粒子又はマイクロ粒子へとテザリングされる、又はこの上若しくは近傍において、適切に局在化させる。
【0209】
任意選択的に、金表面上のナノホールアレイは、屈折率のセンサーとして使用される。鋳型核酸は、DNAを増幅するPCR反応において使用されるプライマーのうちの1つの上に、チオール基を組み込む、標準的なチオール化学反応により、金属表面へと接合させうる。ナノホールアレイの寸法が、入射光に対して適切に調整されると、ヌクレオチドの存在下におけるポリメラーゼの鋳型核酸への結合は、ナノホールを透過した光の変化としてモニタリングされうる。標識化スキーム及び無標識スキームのいずれについても、平衡シグナル強度の、簡便かつ簡素な測定は、安定的な閉じた複合体の形成を明らかにしうる。
【0210】
任意選択的に、核酸分子を、表面プラズモンを維持することが可能な表面へと局在化させ、この場合、ポリメラーゼの局在化させた核酸との相互作用により引き起こされた屈折率の変化が、表面プラズモンの特性の変化を通してモニタリングされる場合があり、さらに、表面プラズモンの特性は、表面プラズモン共鳴を含みうる。表面プラズモン、局在化表面プラズモン(LSP)又は表面プラズモンポラリトン(SPP)は、電磁波の、表面電荷のプラズマ振動とのカップリングから生じる。LSPが、ナノ粒子表面へと限局されるのに対し、SPPは、高電子移動性表面及び誘電性媒質の間の界面における、高電子密度表面へと限局される。表面プラズモンは、界面の向きに沿って伝搬する一方、誘電性媒質へと、一過性にだけ透過する。表面プラズモンの共鳴条件は、入射電磁放射の周波数が、表面電子の振動の天然の周波数にマッチする場合に確立される。例えば、結合又は分子の混み合いに起因する、界面における誘電特性の変化は、表面電子の振動に影響を及ぼし、これにより、表面プラズモン共鳴の波長を変更する。表面プラズモン共鳴が可能な表面は、限定せずに述べると、ナノ粒子、ナノ粒子のクラスター及び凝集物、連続的な平面、ナノ構造化表面並びにマイクロ構造表面を含む。金、銀、アルミニウム、高導電性金属酸化物(例えば、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化タングステン)のような材料は、これらの表面において、表面プラズモン共鳴を支援することが可能である。
【0211】
任意選択的に、単一の核酸分子又は核酸の複数のクローンコピーは、ポリメラーゼの、核酸への結合が、局在化表面プラズモン共鳴(LSPR)のシフトを引き起こすように、ナノ粒子へと接合させる。ナノ粒子への光の入射は、それらの中の伝導電子を、ナノ粒子のサイズ、形状及び組成に依存する共鳴周波数により、集合的に振動するように誘導する。目的のナノ粒子は、球状ナノ粒子、ナノロッド、ナノピラミッド、ナノダイアモンド及びナノディスクを含む、異なる形状を取りうる。これらのLSPRモードの結果として、ナノ粒子は、単一のナノ粒子が、暗視野(光学的散乱)顕微鏡を使用して、視認により容易に観察されるほど強く、光を吸収し、散乱させる。例えば、単一の80nmの銀ナノスフェアは、445nmの青色光を、フルオレセイン分子の蛍光断面の100万倍であり自己消光限界までのフルオレセインにより満たされた同様のサイズのナノスフェアの断面の1000倍である、(3×10
−2)m
2の散乱断面により散乱させる。任意選択的に、ナノ粒子は、可視スペクトル内の任意の位置において、散乱ピークを含む、超高輝度であり、ナノサイズである光散乱として構成された、プラズモン共鳴粒子である。プラズモン共鳴粒子は、褪色しないので、有利である。任意選択的に、プラズモン共鳴粒子は、鋳型核酸と共に調製され、これによりコーティングされ、ポリメラーゼ及び1つ以上のヌクレオチドを含む反応混合物であって、ポリメラーゼ−鋳型核酸−粒子相互作用が、検出される反応混合物中において用意される。前述のステップのうちの1つ以上は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、Sheldon Schultzら、「Single−Target Molecule Detection with Nonbleaching Multicolor Optical Immunolabels」、Proceedings of National Academy of Sciences、97、3号(2000年2月1日):996〜1001において開示されている、1つ以上の方法に基づく場合もあり、これらから導出される場合もある。
【0212】
共鳴波長における、極めて大きな減衰係数は、貴金属ナノ粒子が、表面近傍相互作用のための、極めて強力な標識として用いられることを可能とする。任意選択的に、ポリメラーゼの、ナノ粒子局在化DNAとの相互作用は、共鳴波長のシフトを生じる。結合又は結合相互作用に起因する、共鳴波長の変化は、多くの方式のうちの1つにより測定されうる。任意選択的に、照射は、イメージングデバイスにおいて、最大の散乱が観察される波長を同定するように、波長範囲を通して走査される。任意選択的に、共鳴ピークが、分光法により同定されるように、広帯域照射が、イメージングデバイスの近傍において、分散性素子と共に用いられる。任意選択的に、ナノ粒子系は、この共鳴波長において又はこの共鳴波長の近傍において照射される場合があり、任意の結合相互作用は、新たな共鳴波長が照射波長からシフトするときの、散乱した光の強度の低下として観察されうる。照射波長の位置に応じて、相互作用は、共鳴ピークが照射波長へとシフトするときのナノ粒子による散乱の増大としてもなお出現する。任意選択的に、DNA接合ナノ粒子は、表面へと局在化させる場合もあり、代替的に、溶液中に懸濁させる場合もある。ナノ粒子を使用するバイオセンシングの広範な総説は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、Jeffrey N.Ankerら、「Biosensing with Plasmonic Nanosensors」、Nature Materials 7、6号(2008年6月):442〜53において記載されている。
【0213】
任意選択的に、LSPRが可能なナノ特徴は、リソグラフにより、平面基質上にパターン化される。ナノ特徴の二次元パターンは、多数の異なる核酸分子についてのマルチプレックス解析及びハイスループット解析において、利点を有する。任意選択的に、金ナノポストは、表面プラズモン共鳴イメージングによるポリメラーゼ−鋳型核酸間相互作用の検出のための基質であり、この場合、核酸は、ナノポストへと接合させる。ナノ構造のサイズ及び時間は、表面プラズモン共鳴によるシグナル増強に影響を及ぼす場合があり、任意選択的に、対照薄膜と比較した場合に、2、3、4、5、6、7、8倍又はこれを超えるシグナル増幅をもたらす。
【0214】
任意選択的に、表面プラズモン共鳴は、平面内において維持されうる。クレッチマン配置(例えば、Biacore、Uppsala、Sweden)及び表面プラズモン共鳴イメージング(例えば、GWC Technologies、Madison、WI、又は日本、京都、株式会社堀場製作所)に基づく多数の市販の測定器が容易に購入可能であり、DNAを、単一のスポット及びマルチプレックス化されたアレイパターンの両方においてそれらの表面へと接合させるための、十分に確立されたプロトコールを有する。クレッチマン配置において、金属薄膜、典型的に金薄膜は、プリズム側の面へと蒸散し、入射放射は、表面プラズモンを励起する角度において放射される。エバネセント波は、金属薄膜を透過し、反対側の面においてプラズモンを励起するが、この場合、エバネセント波は、金薄膜の近傍における表面近傍及び表面間の相互作用をモニタリングするのに使用されうる。共鳴角度において、プリズム−金間界面から反射される光は、大幅に弱められる。一定の波長による照射を仮定すると、結合相互作用は、反射光の強度を、共鳴角度と近い一定の角度においてモニタリングすること並びに表面プラズモン共鳴条件(最小の反射率)を確立するのに要求される入射角の変化をモニタリングすることの両方により精査されうる。反射光をモニタリングするのに、CCDカメラ又はCMOSカメラのような2Dイメージングデバイスが用いられる場合、照射領域の全体は、高解像度によりイメージングされうる。この方法は、表面プラズモン共鳴イメージング(SPRi)と呼ばれる。SPRiは、表面上の独立の領域についての、ハイスループットの解析を同時に可能とする。広帯域照射もまた、一定角の配置において使用される場合があり、この場合、表面プラズモン共鳴とカップリングした波長は、反射スペクトル内のディップを探すことを介して、分光法により同定される。表面相互作用は、共鳴波長のシフトを介してモニタリングされる。
【0215】
表面プラズモン共鳴は、タンパク質−核酸間相互作用をモニタリングするために十分に確立されており、核酸の接合並びにデータの解析の両方のための、多くの標準的なプロトコールが存在する。例示的な参考文献は、それらのいずれもが、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれた、Bongsup Choら、「Binding Kinetics of DNA−Protein Interaction Using Surface Plasmon Resonance」、Protocol Exchange、2013年5月22日及びJennifer M.Brockman、Anthony G.Frutos及びRobert M.Corn、「A Multistep Chemical Modification Procedure To Create DNA Arrays on Gold Surfaces for the Study of Protein−DNA Interactions with Surface Plasmon Resonance Imaging」、Journal of the American Chemical Society 121、35号(1999年9月1日):8044〜51を含む。
【0216】
ポリメラーゼ/核酸間相互作用は、局在化させた表面プラズモンを維持することが可能なナノ構造化表面上においてモニタリングされうる。任意選択的に、ポリメラーゼ/核酸間相互作用は、表面プラズモンポラリトンを維持することが可能なナノ構造化表面上においてモニタリングされうる。
【0217】
任意選択的に、ポリメラーゼ/核酸間相互作用は、局在化させた表面プラズモンを維持することが可能なナノ構造化表面上においてモニタリングされうる。任意選択的に、ポリメラーゼ/核酸間相互作用は、表面プラズモンポラリトンを維持することが可能なナノ構造化表面上においてモニタリングされうる。
【0218】
任意選択的に、ナノホールアレイを通した異常光透過(EOT)は、核酸/ポリメラーゼ間相互作用をモニタリングするのに使用されうる。プラズモン金属薄膜内の、サブ波長ナノホールを透過した光は、古典的な電磁理論から予測される光より強い。この光透過の増強は、共鳴波長において、予期されるよりも大きな割合の光が金属ナノホールを透過する、入射放射とのプラズモン共鳴カップリングを考慮することにより説明されうる。光透過の増強は、ナノホールの大きさ及びピッチ、金属の特性のほか、ナノホールを有する金属薄膜の一方の面の媒質の誘電特性に依存する。バイオセンサーの文脈において、金属ナノホールアレイの透過率は、金属薄膜に接触する媒質の屈折率に依存し、これにより、例えば、金属表面へと接合させたポリメラーゼの、核酸との相互作用は、ナノホールアレイを透過した光の強度の変化としてモニタリングされうる。EOT/プラズモンナノホールアレイ法の素晴らしさは、表面プラズモン共鳴の計装及びアライメント要件が、極めて小型の光学素子及びイメージング素子により置きかえられうることである。例えば、低出力のLED照射及び廉価なCMOSカメラ又はCCDカメラだけが、頑健なEOTプラズモンセンサーを実現するのに十分でありうる。例示的なナノホールアレイベースの表面プラズモン共鳴センシングデバイスは、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、C.Escobedoら、「Integrated Nanohole Array Surface Plasmon Resonance Sensing Device Using a Dual−Wavelength Source」、Journal of Micromechanics and Microengineering、21、11号(2011年11月1日):115001において記載されている。
【0219】
プラズモンナノホールアレイは、ガラス表面上に沈着させた、光学的に不透明な金の層(50nmの厚さを超える)上にパターン化されうる。任意選択的に、プラズモンナノホールアレイは、ガラス表面上に沈着させた、光学的に厚いアルミニウム又は銀の薄膜上にパターン化されうる。任意選択的に、ナノホールアレイは、低屈折率のプラスチック上に沈着させた、光学的に厚い金属の層上にパターン化される。プラズモンナノホールアレイを、低屈折率のプラスチック上においてパターン化することは、金属層の2つの面上の屈折率により良好にマッチさせることにより、デバイスの、屈折率変化に対する感度を増強する。任意選択的に、ナノホールアレイの屈折率感度は、ホールの間の距離を増大させることにより、増大する。任意選択的に、ナノホールアレイは、例えば、エンボス加工、鋳造、インプリントリソグラフィー又はテンプレートストリッピングを介する複製により作製される。任意選択的に、ナノホールアレイは、コロイドを使用する自己組織化により作製される。任意選択的に、ナノホールアレイは、レーザー干渉リソグラフィーのような、直接投射パターン化により作製される。
【0220】
ナノバケット配置は、ナノホール配置に好ましい場合がある。ナノホール配置において、ナノ特徴の底部は、ガラス又はプラスチック又は他の適切な誘電体であるのに対し、ナノバケット配置において、ナノ特徴の底部は、プラズモン金属を含む。ナノバケットアレイ配置は、局所的な屈折率に対する透過感度を維持しながら、大量生産方式において作製することが、容易でありうる。
【0221】
任意選択的に、ナノホールアレイプラズモンセンシングは、大領域イメージングのためのレンズフリーホログラフィーイメージングと、廉価な方式において組み合わされる。任意選択的に、プラズモンバイオセンシングプラットフォームは、ナノホールアレイを含むプラズモンチップ、チップを照射するように構成された発光ダイオード光源、及び表面上の分子結合イベントによりモジュレートされるナノホールの回折パターンを記録するCMOS撮像チップを含む。結合イベントは、ヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の間の三元複合体の形成でありうる。
【0222】
いずれのセンシングスキームも、核酸を接合させる必要がある、類似の金属表面を利用するので、表面(核酸の接合のための)を、表面プラズモン共鳴センシングのために機能化する方法は、EOTナノホールアレイへと、直接適用されうる。
【0223】
任意選択的に、ポリメラーゼ/核酸間相互作用と関連する屈折率変化は、プラズモンを支援しないナノ構造化表面上においてモニタリングされうる。任意選択的に、導波モード共鳴は、ポリメラーゼ/核酸間相互作用をモニタリングするのに使用されうる。導波モード(guided−mode又はwaveguide−mode)共鳴は、光導波路の導波(guided)モードが、回折格子又はプリズムのような位相マッチング素子の導入により励起され、同時に抽出されうる現象である。このような導波(guided)モードはまた、誘導されなくなり、一次元及び二次元の光子結晶スラブ内において観察される場合に、「リーキーモード」とも呼ばれる。導波(guided)モード共鳴とは、互いと隣接するか又は互いの上にある、2つの光学的構造である回折モードの導波(waveguide)モードとのカップリングと考えられうる。例えば、回折格子が、光導波路の上に置かれる場合、回折モードのうちの1つは、光導波路の導波(guided)モードへと、正確にカップリングする結果として、導波路に沿ったこのモードの伝搬をもたらす。オフ共鳴条件の場合、光は、導波路へとカップリングしないので、構造は、完全に透明に見える(誘電体の導波路が使用される場合)。共鳴時に、共鳴波長は導波路へと強くカップリングするが、格子−導波路間界面から下流の素子に応じて、構造から外へもカップリングしうる。格子カプラーが導波路の表面全体に広がる場合において、内へとカップリングする任意の光は次の格子素子において外へとカップリングするので、光は誘導されえない。したがって、格子導波路構造において、共鳴が強い反射ピークとして観察される一方、構造は、オフ共鳴条件に対して透明である。共鳴条件は、角度、格子特性、入射光の偏光及び波長に依存する。例えば、格子が、導波路の表面全体とカップリングしていることに起因して、導波(guided)モードの伝搬が存在しない場合、共鳴モードはまた、強い光の閉込め及び導波路層から横方向の、一過性の放射の伝搬に照らして、リーキーモード共鳴とも呼ばれうる。例えば、生体分子結合に起因する、格子の近傍における誘電特性の変化は、導波路へのカップリングに影響を及ぼし、これにより、共鳴条件を変更する。任意選択的に、核酸分子を、格子導波路構造の表面へと接合させた場合、ポリメラーゼ/核酸間相互作用は、リーキーモード共鳴の波長の変化としてモニタリングされうる。
【0224】
回折素子は、導波路素子に対する明示的な必要を伴わずに、透明基質上において、直接使用しうる。格子ナノ構造の近傍における相互作用に起因する共鳴条件の変化は、反射された放射又は透過した放射における共鳴波長のシフトとしてモニタリングされうる。
【0225】
核酸を接合させた、導波(guided)モード共鳴センサーからの反射光は、ポリメラーゼ/核酸間相互作用をモニタリングするのに使用されうる。照射のために、広帯域照射源の利用が可能であり、分光法による反射光の精査は、ポリメラーゼの結合に起因する、局所的な屈折率の変化を明らかにしうる。
【0226】
任意選択的に、広帯域照射の使用が可能であり、透過光は、ポリメラーゼの相互作用に起因する共鳴シフトを同定するように精査されうる。直線偏光狭帯域照射の使用が可能であり、透過光は、交差偏光器を通してフィルタリングされる場合があり、この場合、透過光は、交差偏光器に起因して、その偏光が修飾されたリーキーモード応答を除き、完全に弱められる。この実現は、屈折率のモニタリングを、廉価なイメージングシステム上においてモニタリングされうる簡便な透過アッセイへと転換する。刊行物は、光学コンポーネントのアセンブリーについて記載している。参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、Yousef Nazirizadehら、「Low−Cost Label−Free Biosensors Using Photonic Crystals Embedded between Crossed Polarizers」、Optics Express、18、18号(2010年8月30日):19120〜28を参照されたい。
【0227】
ナノ構造化表面に加えて、単純な、非構造化表面もまた、屈折率のモジュレーションをモニタリングするために使用されうるので有利である。任意選択的に、ポリメラーゼの、構造化されていない、光学的に透明な基質へと結合させた核酸との相互作用をモニタリングする干渉法が、利用されうる。核酸分子は、スライドガラスの頂面への接合が可能であり(当技術分野において公知である、任意の手段により)、系は、スライドガラスの底面から照射される。この配置において、一方は、スライドガラスの底面からの反射であり、他方は、核酸分子を接合させた頂面からの反射である、2つの反射面がある。2つの反射波は、互いと干渉し合い、経路の長さの差違に基づき、強め合う干渉又は弱め合う干渉を引き起こしうるが、頂面から反射された波は、結合した核酸分子(そして、その後、ポリメラーゼの、結合した核酸分子との相互作用により)に起因する誘電率の変化によりモジュレートされている。底面からの反射が変化しない場合、核酸分子への任意の結合は、頂面から反射されたビームと底面から反射されたビームとの位相差に反映されうるが、これは、観察される干渉パターンに影響を及ぼす。任意選択的に、核酸/ポリメラーゼ間相互作用をモニタリングするのに、Biolayer干渉法が使用される。Biolayer干渉法は、Pall Forte Bio corporation(Menlo Park、CA)により販売されているデバイスのような、市販のデバイス上において実施されうる。
【0228】
任意選択的に、頂面からの反射光は、集光光学系を使用することにより、選択的に選び出される。底面からの反射光は、焦点面内にないため、無視される。核酸を接合させた頂面だけに焦点を絞ると、集束レンズにより捕集された光は、部分的に反射された入射放射に対応する平面波及び焦点面内の分子により、捕集方向に散乱した放射に対応する散乱波を含む。入射放射がコヒーレントである場合、これらの2つの成分は、干渉するようにされうる。この散乱ベースの干渉法による検出は、極めて高感度であり、単一のタンパク質分子までも検出するのに使用されうる。
【0229】
任意選択的に、電界効果トランジスター(FET)は、三元複合体の検出のためのバイオセンサーとして構成される。FETのゲート端子は、鋳型核酸の付加により修飾される。帯電タグを含むポリメラーゼの結合は、電気化学シグナルの変化を生じる。次の適正なヌクレオチドを含むポリメラーゼの鋳型核酸への結合は、他の不適正なヌクレオチドの存在下において、鋳型核酸と結合するポリメラーゼと異なるシグナルをもたらすが、この場合、各不適正なヌクレオチドもまた、異なるシグナルをもたらしうる。任意選択的に、ポリメラーゼの鋳型核酸との相互作用は、ポリメラーゼ上、プライミングされた鋳型核酸上又はヌクレオチド上において、標識化されたタグを使用せずに、FETを使用してモニタリングされる。任意選択的に、組込み反応において、H+イオンの放出に起因して生じるpHの変化は、FETを使用して検出される。任意選択的に、ポリメラーゼは、FETにより検出される連続的なH+イオンを発生させるタグを含む。任意選択的に、連続的なH+イオンを発生させるタグは、ATPシンターゼである。任意選択的に、連続的なH+イオン発生タグは、パラジウム、銅又は別の触媒である。任意選択的に、ヌクレオチドの組込みの後におけるPPiの放出は、FETを使用して検出される。例えば、一度に1種類のヌクレオチドが、反応物へと供給されうる。次の適正なヌクレオチドが添加され、条件が組込みを可能とする場合、PPiは、切断され、放出され、FETを使用して、検出され、これにより、次の適正なヌクレオチド及び次の塩基を同定する。任意選択的に、鋳型核酸は、ナノチューブの複数の層に結合している。任意選択的に、ポリメラーゼは、ナノチューブの1つの層に結合している。FETは、その小型サイズ及び軽量のために、シーケンシングセンサーとしての使用に有利であり、ポータブルシーケンシングのモニタリングコンポーネントとしての使用に適切となっている。FETによる、分子の相互作用の検出の詳細は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれた、Dong−Sun Kimら、「An FET−Type Charge Sensor for Highly Sensitive Detection of DNA Sequence」、Biosensors and Bioelectronics、Microsensors and Microsystems 2003、20、1号(2004年7月30日):69〜74、doi:10.1016/j.bios.2004.01.025及びAlexander Starら、「Electronic Detection of Specific Protein Binding Using Nanotube FET Devices」、Nano Letters 3、4号(2003年4月1日):459〜63、doi:10.1021/nl0340172において記載されている。
【0230】
例示を目的として述べると、ポリメラーゼは、蛍光タグを含む。ポリメラーゼ−核酸間の相互作用をノイズに対する高いシグナルによりモニタリングするために、一過性照射又は共焦点イメージングが利用されうる。局在化させた鋳型核酸上の三元複合体の形成は、バックグラウンドと比較した蛍光の増大として観察されうるが、例えば、場合によって、また、消光又は局所的な極性環境の変化に起因する蛍光の減少としても、観察されうる。任意選択的に、同じ反応混合物中において、ポリメラーゼ分子の一部は、フルオロフォアによりタグ付けされうる一方、別の一部は、消光剤によりタグ付けされる場合があり、この場合、局在化させた、核酸のクローン集団上の三元複合体の形成は、バックグラウンドと比較した蛍光の減少として明らかにされる。核酸のクローン集団は、平面基質、マイクロ粒子又はナノ粒子のような支持体表面へと接合させうる。任意選択的に、ポリメラーゼは、フルオロフォア、ルミノフォア、ケミルミノフォア、クロモフォア又はバイオルミノフォアによりタグ付けされる。
【0231】
任意選択的に、複数の鋳型核酸は、表面へとテザリングされ、1つの(又はこれを超える)dNTPは、逐次的に流動させる。アフィニティーのスペクトルは、次の適正なヌクレオチドのアイデンティティーを明らかにし、したがって、鋳型核酸内の次の塩基を明らかにする。任意選択的に、アフィニティーは、反応混合物の条件を除去し、置きかえること、すなわち、洗浄ステップを必要とせずに測定される。測定された結合相互作用の強度の自己相関は、例えば、相互作用の動態をたやすく明らかにし、これにより、洗浄ステップを要求せずに、アフィニティーを明らかにして、解離速度を測定しうる。
【0232】
ポリメラーゼ及び核酸の間の、動的な相互作用を測定しうる、任意の技法は、アフィニティーを測定し、本明細書で開示されたシーケンシング反応法を可能とするのに使用されうる。
【0233】
ヌクレオチド特異的な三元複合体の形成を検出するためのシステム
提示された方法は、プラットフォーム上において実施されうるが、この場合、核酸重合化反応の任意の成分は、表面へと局在化される。任意選択的に、鋳型核酸は、平面基質、ナノホールアレイ、マイクロ粒子又はナノ粒子へと接合される。任意選択的に、全ての反応成分は、反応混合物中に、遊離して懸濁される。
【0234】
任意選択的に、鋳型核酸は、表面へと固定される。表面は、平面基質、ハイドロゲル、ナノホールアレイ、マイクロ粒子又はナノ粒子でありうる。任意選択的に、第1の反応混合物は、複数のクローン的に増幅された鋳型核酸分子を含む。任意選択的に、第1の反応混合物は、複数の識別可能な鋳型核酸を含む。
【0235】
本明細書において、とりわけ、ヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸との間の相互作用の精査であって、鋳型核酸配列内の次の塩基を同定する精査又はシーケンシング時に遭遇するホモポリマー領域を満たすのに必要とされるヌクレオチドの数を同定する精査を含むシーケンシング反応を実施するためのシステムが、提示される。任意選択的に、精査は、ヌクレオチドの存在下において、プライミングされた鋳型核酸に対するポリメラーゼのアフィニティーをモニタリングすることを含む。任意選択的に、ポリメラーゼは、一過性に核酸と結合し、結合反応速度及びアフィニティーは、鋳型核酸上の次の塩基のアイデンティティーについての情報をもたらす。任意選択的に、閉じた複合体の形成に関与する反応条件が、核酸上の次の塩基についての情報をもたらす、閉じた複合体が形成される。任意選択的に、ポリメラーゼは、ポリメラーゼドメインの架橋、核酸へのポリメラーゼの架橋、低分子、不競合的阻害剤、競合的阻害剤、非競合的阻害剤によるアロステリック阻害及び変性に限定されない1つの手段又は手段の組合せにより、その三元複合体内の重合化部位にトラップされ、この場合、トラップされたポリメラーゼ複合体の形成は、核酸鋳型上の、次の塩基のアイデンティティーについての情報をもたらす。
【0236】
また、本明細書で開示された任意のシーケンシング法の、1つ以上のステップを実施するためのシステムも提示される。任意選択的に、システムは、ヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の結合アッセイを実施するのに必要な成分及び試薬を含み、この場合、鋳型核酸は、ナノ構造上において用意される。任意選択的に、システムは、鋳型DNA分子をナノ構造へと結合させるのに必要な、1つ以上の試薬及び指示書を含む。例えば、システムは、結合反応速度を決定する表面プラズモン共鳴を含む使用のために構成された、チップのようなナノ構造をもたらす。このようなチップの例は、CM5センサーSチップ(GE Healthcare、Piscataway、N.J)である。システムは、SPR測定器(例えば、Biacore)のような計装をもたらしうる。システムは、ストレプトアビジン及び/又はビオチンをもたらしうる。任意選択的に、システムは、ビオチン−DNA、DNAリガーゼ、緩衝液及び/又はビオチニル化された鋳型DNAの調製のためのDNAポリメラーゼをもたらす。任意選択的に、システムは、ビオチニル化されたDNAの精製のための、ゲル又は試薬(例えば、フェノール:クロロホルム)をもたらす。代替的に、システムは、ビオチニル化された鋳型DNAの特徴付け、例えば、質量分析又はHPLCのための試薬をもたらす。任意選択的に、システムは、ストレプトアビジンの、チップ上の固定のための、ストレプトアビジン、チップ、試薬、計装及び/又は指示書を含む。任意選択的に、チップは、鋳型DNAをコーティングするために、既に構成されたシステム内に用意されており、この場合、チップは、鋳型核酸又は修飾鋳型核酸(例えば、ビオチニル化された鋳型DNA)を結合させることが可能な試薬により固定される。任意選択的に、システムは、チップの再生のための試薬をもたらす。
【0237】
また、本明細書で開示された、任意のシーケンシング法の、1つ以上のステップを実施するためのシステムも提示される。任意選択的に、システムは、ヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の結合アッセイを実施するのに必要な成分及び試薬を含み、この場合、鋳型核酸は、ナノ粒子上において用意される。任意選択的に、システムは、鋳型DNA分子をナノ粒子へと結合させるのに必要な、1つ以上の試薬及び指示書を含む。ナノ粒子は、例えば、金ナノ粒子を使用することによる、核酸−ポリメラーゼ間相互作用の電気化学的検出のために構成されうる。任意選択的に、DNA−ナノ粒子コンジュゲートは、水性金コロイド溶液と、それらの末端において遊離チオール又はジスルフィド基を含む鋳型DNA分子との間において形成されうる。コンジュゲートは、同じ核酸配列を含んでもよく、含まなくてもよい、DNA分子のクローン増幅集団を含みうる。任意選択的に、ナノ粒子コンジュゲートは、高温度(例えば、>60℃)及び高イオン強度(例えば、1MのNa+)における凝集及び沈殿に対して安定化する。任意選択的に、システムは、ナノ粒子への接合のために、鋳型DNA分子を調製することであって、ジスルフィド又はチオールを含む鋳型DNA分子を作出することを含む、調製のための試薬をもたらす。ジスルフィドを含有する鋳型核酸は、例えば、3’−チオール修飾剤制御型小孔ガラス(CPG)を使用して、又はユニバーサル支持体であるCPGにより開始し、ジスルフィド修飾剤ホスホルアミダイトを、配列中の第1の単量体として付加することにより、合成されうる。システムは、ジスルフィドにより修飾された鋳型核酸を得るための、核酸合成試薬及び/又は指示書をもたらしうる。チオールを含有する鋳型核酸もまた、5’−トリチルチオール修飾ホスホルアミダイトを含む核酸合成時に作出されうる。システムは、例えば、電気泳動又は遠心分離を使用して、ナノ粒子コンジュゲートを精製するための試薬及び/又は指示書をもたらしうる。任意選択的に、ナノ粒子コンジュゲートは、比色法により、ポリメラーゼ−鋳型核酸間相互作用をモニタリングするのに使用される。この場合、ナノ粒子コンジュゲートの溶融温度は、強力なポリメラーゼの結合の存在下において上昇する。したがって、DNAの結合強度は、色の変化により観察可能な、この溶融転移の変化により決定されうる。
【0238】
また、本明細書で開示された、任意のシーケンシング法の、1つ以上のステップを実施するためのシステムも提示される。任意選択的に、システムは、検出可能なポリメラーゼを使用して、ヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の結合アッセイを実施するのに必要な成分及び試薬を含む。任意選択的に、ポリメラーゼは、検出可能に標識化される。任意選択的に、ポリメラーゼは、ポリメラーゼの内因的特性、例えば、芳香族アミノ酸を使用して検出される。任意選択的に、ポリメラーゼ及び鋳型核酸は、支持体へのコンジュゲーションを伴わずに、溶液中の使用のために構成される。ポリメラーゼ上の検出可能な標識は、フルオロフォアであってもよく、蛍光は、ポリメラーゼ−鋳型核酸間の結合イベントをモニタリングするのに使用される。任意選択的に、検出可能なポリメラーゼは、溶液の鋳型核酸と組み合わせて使用されてもよく、支持構造へとコンジュゲートさせた鋳型核酸と組み合わせて使用されてもよい。任意選択的に、ポリメラーゼの1つ以上のシステイン残基は、Cy3マレイミド又はCy3ヨードアセトアミドにより標識化される。任意選択的に、システムは、蛍光標識化ポリメラーゼ分子を調製するのに必要な試薬及び/又は指示書を含む。システムは、蛍光標識化ポリメラーゼを精製するための試薬及び/又は指示書を含みうる。
【0239】
方法の手順の特徴
三元複合体の形成を介して、次の塩基のアイデンティティーが同定された精査ステップに続き、反応条件は、適宜、任意選択の組込みステップ又はさらなる精査ステップのための調製物中において、リセット、リチャージ又は修飾されてもよい。任意選択的に、次の塩基のアイデンティティーは、ヌクレオチドを化学的に組み込まずに同定されている。任意選択的に、次の塩基のアイデンティティーは、ヌクレオチドの化学的組込みにより同定されるが、この場合、後続のヌクレオチドの組込みは、阻害されている。任意選択的に、シーケンシングされる鋳型核酸を除く、精査ステップの全ての成分は、除去されるか又は洗い流されて、システムを、精査前の状態に戻す。任意選択的に、精査ステップの一部の成分は、除去される。任意選択的に、さらなる成分が、精査ステップへと添加される。
【0240】
任意選択的に、組込みステップにおいて、サイクル1つ当たり1つのヌクレオチドが組み込まれ、そして1つのヌクレオチドだけ(すなわち、単一のヌクレオチドだけ)が組み込まれることを保証するために、可逆性のターミネーターヌクレオチドが使用される。塩基のアイデンティティーは、精査ステップから公知であるので、可逆性のターミネーターヌクレオチド上の標識は、必要とされない。蛍光標識化されていない、可逆性のターミネーターは、市販品の供給元から、たやすく入手可能である。標識化されていない、可逆性のターミネーターヌクレオチドは、それらの小さな立体スペース及び天然のヌクレオチドと同様のサイズのために、標識化された、可逆性のターミネーターと比較して、はるかに速い組込み反応速度を有することが予測される。
【0241】
本明細書において、部分的に、精査及び/又は組込みのあらゆるサイクルのために、シーケンシング試薬が順次導入される、試薬サイクリングシーケンシング法が開示される。任意選択的に、シーケンシング反応混合物は、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸と少なくとも1種類のヌクレオチドとを含む。任意選択的に、ヌクレオチド及び/又はポリメラーゼは、シーケンシング反応混合物へと、周期的に導入される。任意選択的に、シーケンシング反応混合物は、複数のポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとを含む。任意選択的に、複数のヌクレオチド及び/又は複数のポリメラーゼは、シーケンシング反応混合物へと、周期的に導入される。任意選択的に、シーケンシング反応の精査ステップは、シーケンシング反応の組込みステップと異なる組成を有する。
【0242】
本明細書において提示される通り、ポリメラーゼは、単一のポリメラーゼ又は複数のポリメラーゼを指す。本明細書において提示される通り、プライミングされた鋳型核酸又は鋳型核酸は、単一の、プライミングされた鋳型核酸若しくは単一の鋳型核酸又は複数の、プライミングされた鋳型核酸若しくは複数の鋳型核酸を指す。本明細書において提示される通り、ヌクレオチドは、1つのヌクレオチド又は複数のヌクレオチドを指す。本明細書において提示される通り、単一のヌクレオチドは、1つのヌクレオチドである。任意選択的に、シーケンシング反応のためのヌクレオチドは、以下のヌクレオチド:dATP、dGTP、dCTP及びdTTP(又はdUTP)のうちの、1つ、2つ、3つ、又は4つを含むがこれらに限定されない。任意選択的に、試薬サイクリングは、鋳型核酸をプラットフォームへと固定し、進行中の反応混合物を洗浄し、新たな反応混合物を鋳型核酸へと添加することを含む。
【0243】
任意選択的に、1つ以上のヌクレオチドが、シーケンシング反応物へと逐次的に添加され、これから、逐次的に除去される。任意選択的に、1、2、3、4種又はこれを超える種類のヌクレオチドが、反応混合物へと添加され、これから除去される。例えば、1種類のヌクレオチドが、シーケンシング反応物へと添加され、除去され、別の種類のヌクレオチドにより置きかえられる。任意選択的に、精査ステップにおいて存在するヌクレオチド型は、組込みステップにおいて存在するヌクレオチド型と異なる。任意選択的に、1つの精査ステップにおいて存在するヌクレオチド型は、連続的な精査ステップにおいて存在するヌクレオチド型と異なる(すなわち、連続的な精査ステップは、組込みステップの前に実施される)。任意選択的に、1、2、3、4種又はこれを超える種類のヌクレオチドは、精査反応混合物中に存在し、1、2、3、4種又はこれを超える種類のヌクレオチドは、組込み反応混合物中に存在する。
【0244】
任意選択的に、ポリメラーゼは、シーケンシング反応物へと、周期的に添加され、これから、周期的に除去される。1つ以上の異なる種類のポリメラーゼは、シーケンシング反応物へと、周期的に添加され、これから、周期的に除去されうる。任意選択的に、精査ステップにおいて存在するポリメラーゼ型は、組込みステップにおいて存在するポリメラーゼ型と異なる。1つの精査ステップにおいて存在するポリメラーゼ型は、連続的な精査ステップにおいて存在するポリメラーゼ型と異なりうる(すなわち、連続的な精査ステップは、組込みステップの前に実施される)。
【0245】
任意選択的に、試薬の存在、pH、温度及びイオン強度のような試薬条件を、シーケンシング反応を通して変動させた。任意選択的に、金属は、シーケンシング反応物へと、周期的に添加され、これから、周期的に除去される。例えば、触媒性金属イオンは、精査ステップにおいて存在せず、組込みステップにおいて存在してもよい。代替的に、ポリメラーゼ阻害剤は、精査ステップにおいて存在し、組込みステップにおいて存在しなくてもよい。任意選択的に、シーケンシング反応において消費される反応成分は、シーケンシング反応中の任意の時点において、新たな成分の添加により補充される。
【0246】
ヌクレオチドは、三元複合体の形成を優先し、二元複合体の形成を不安定化させる反応条件下において、一度に1種類ずつ、ポリメラーゼと共に添加されうる。ポリメラーゼは、次の適正なヌクレオチドが存在する場合に、鋳型核酸だけに結合する。各ヌクレオチド付加の後における洗浄ステップは、三元複合体に関与しない、全ての過剰なポリメラーゼ及びヌクレオチドが、反応混合物から除去されることを保証する。ヌクレオチドが、一度に1つずつ、既知の順序において添加される場合、鋳型核酸上の次の塩基は、付加されるヌクレオチドが次の適正なヌクレオチドであれば、三元複合体の形成により決定される。三元複合体は、コンフォメーションの変化及びポリメラーゼ−鋳型核酸−ヌクレオチド間相互作用の安定性の増大の両方により同定されうる。任意選択的に、次の適正なヌクレオチドの存在下において形成される三元複合体の安定性は、不適正なヌクレオチドの存在下におけるポリメラーゼの鋳型核酸との不安定的相互作用を少なくとも超える桁数の大きさである。洗浄ステップの使用は、結合しなかったヌクレオチド及びポリメラーゼが存在せず、反応物中に存在するヌクレオチドが、ポリメラーゼ及び鋳型核酸と共に三元複合体内に捕捉されたヌクレオチドだけであることを保証する。鋳型核酸上の次の塩基が決定されたら、閉じた複合体内に捕捉された次の適正なヌクレオチドは、解離又は三元複合体の不安定化を優先し、鋳型核酸のプライマー鎖を塩基1つずつ伸長させる反応条件(組込み反応条件)をもたらす、試薬の交換(例えば、フローセルを通した流動)により組み込まれうる。したがって、洗浄ステップは、組み込まれるヌクレオチドが、三元複合体に由来する次の適正なヌクレオチドだけであることを保証する。この試薬サイクリング法は反復され、核酸配列が決定されうる。この試薬サイクリング法は、単一の鋳型核酸分子へと適用される場合もあり、PCR産物又はローリングサークルにより増幅されたDNAのような、クローン集団のコレクションへと適用される場合もある。多くの異なる鋳型は、例えば固体支持体上にアレイ化される場合、並行してシーケンシングされうる。任意選択的に、洗浄ステップは、二元複合体の形成を不安定化させる。任意選択的に、洗浄するステップは、安定化させた閉じた複合体を反応混合物中に残して、二元複合体が除去されることを保証する時間にわたり、実施される。任意選択的に、洗浄ステップは、反応物を、イオン強度の大きな溶液又は高pH溶液により洗浄することを含む。
【0247】
任意選択的に、組込みステップは、3段階の工程である。第1段階において、4つのヌクレオチド型全ては、三元複合体の形成を優先する反応条件下において、プライミングされた鋳型核酸を含む反応物へ高忠実度のポリメラーゼと共に導入され、次の適正なヌクレオチドは、鋳型核酸と共に安定的な三元複合体を形成しうる。第2段階において、過剰量のヌクレオチド及び結合しなかったポリメラーゼは、任意選択的に洗い流される。第3段階において、反応条件は、三元複合体が不安定化し、三元複合体内に捕捉されたヌクレオチドがプライミングされた鋳型核酸の、プライマーの3’末端へと組み込まれるように改変される。組込みステップにおける、緊密なポリメラーゼ−核酸複合体の形成は、非特異的なDNA結合性ドメインをポリメラーゼ(例えば、Phusionポリメラーゼ)へと融合させ、高濃度のヌクレオチドを用いて、適正なヌクレオチドが閉じた複合体内に常に存在することを保証する技法のような、標準的な技法により可能とされうる。
【0248】
フィンガークローズドコンフォメーションにおいて、ポリメラーゼ分子は、次の適正なヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼによる合成反応に典型的に要求される二価金属イオンの非存在下においてもなお、プライミングされた核酸分子に結合する。コンフォメーション変化は、次の鋳型塩基と相補的なヌクレオチドを、ポリメラーゼの活性部位内にトラップする。任意選択的に、三元複合体の形成は、鋳型核酸上の次の塩基のアイデンティティーを決定するのに使用されうる。任意選択的に、ポリメラーゼの存在下、触媒性二価金属イオンの非存在下において、プライミングされた鋳型核酸に、異なるヌクレオチドを逐次的に接触させうるが、この場合、閉じた複合体の形成は、鋳型核酸と現在接触しているヌクレオチドが核酸上の次の塩基と相補的なヌクレオチドであることを示す。鋳型核酸と接触させるヌクレオチド(ポリメラーゼの存在下、触媒性金属イオンの非存在下において)の既知の順序は、三元複合体の形成を誘導する相補的なヌクレオチドの順序内の特定の位置に基づく、容易な同定を保証する。任意選択的に、適切な洗浄ステップは、活性部位における、次の適正なヌクレオチドを含む、三元複合体内の核酸に結合しているポリメラーゼだけを後に残して、全ての過剰量の酵素及びヌクレオチドの除去を保証するように、各ヌクレオチド付加の後において実施されうる。三元複合体は、クローズドコンフォメーションにあるポリメラーゼのコンフォメーション変化を明らかにする手段又はポリメラーゼ−核酸二元複合体と比較して、又はポリメラーゼ、プライミングされた鋳型核酸及び不適正なヌクレオチドの間の不安定的相互作用と比較した、ポリメラーゼ/核酸/次の適正なヌクレオチド複合体の安定性の増大を明らかにする手段により、同定されうる。
【0249】
任意選択的に、次の相補的なヌクレオチドを同定する工程(精査ステップ)は、ヌクレオチドの化学的組込みを阻害する条件下において、固定されたプライミングされた鋳型核酸を1種類のポリメラーゼ及びヌクレオチドを含む精査混合物と接触させるステップ、任意選択的に、洗浄ステップにより結合しなかった試薬を除去するステップ、固定された核酸上のポリメラーゼ三元複合体の存在を検出すること、及び逐次的に三元複合体が形成されそして検出されるまで、異なる種類のヌクレオチドによりこれらのステップを反復するステップを含む。三元複合体は、コンフォメーションの変化及びポリメラーゼ/核酸/次の適正なヌクレオチド複合体の安定性の増大の両方により、同定されうる。逐次的なヌクレオチド付加の間の洗浄ステップは、閉じた複合体の形成を、高忠実度により検出しうる検出機構、例えば、エバネセント波センシング法又は三元複合体からのシグナルを選択的にモニタリングする方法の使用により、なくされうる。上記において言及された精査ステップに続いて、三元複合体を触媒性金属イオンと接触させて、三元複合体内に捕捉されたヌクレオチドをプライマーの3’末端へと共有結合的に付加することを含む、組込みステップが行われうる。任意選択的に、組込みステップは、ヌクレオチドの化学的組込みを阻害する条件下において、固定された核酸を複数の種類のヌクレオチド及びポリメラーゼの組合せを含む、組込み前混合物と接触させることを含んでもよく、この場合、組込み前混合物は、高度に効率的な三元複合体の形成を保証するように、添加剤及び溶液の条件(例えば、低濃度の塩条件)を含有しうる。方法はまた、洗浄ステップを実施して、結合しなかった試薬を除去し、固定された複合体に触媒性金属イオンを含む組込み混合物を供給して、ポリメラーゼの活性部位内に捕捉されたヌクレオチドを、化学的に組み込むことも含みうる。組込み前混合物は、高度に効率的な三元複合体の形成を保証するが、洗浄ステップ及び組込み混合物は、単一のヌクレオチドのプライマーの3’末端への付加を保証する。任意選択的に、組込みステップは、1種類のヌクレオチド付加についての精査の直後に行われうる。例えば、シーケンシングのために使用される反復パターンは、以下のフローパターン:(i)dATP+/ポリメラーゼ、(ii)洗浄、(iii)Mg2+、(iv)洗浄、(v)dTTP+/ポリメラーゼ、(vi)洗浄、(vii)Mg2+、(viii)洗浄、(ix)dCTP+/ポリメラーゼ、(x)洗浄(xi)Mg2+、(xii)洗浄、(xiii)dGTP+/ポリメラーゼ、(xiv)洗浄、(xv)Mg2+、(xvi)洗浄を含みうる。任意選択的に、シーケンシングのために使用される反復パターンは、(i)dATP+/ポリメラーゼ、(ii)洗浄、(iii)dTTP+/ポリメラーゼ、(iv)洗浄、(v)dGTP+/ポリメラーゼ、(vi)洗浄、(vii)dCTP+/ポリメラーゼ、(viii)洗浄、(ix)組込み前混合物、(x)洗浄、(xi)Mg2+、(xii)洗浄を含みうる。洗浄ステップは、精査ステップにおいて、偶発的な組込みを防止するように、典型的に、金属イオンキレート剤及び他の低分子を含有する。組込みステップの後、プライマー鎖は、典型的に、1つの塩基ずつ伸長する。この工程を反復して、核酸の連続的な核酸塩基が同定されることから、核酸配列を有効に決定しうる。任意選択的に、精査ステップは、高塩濃度条件において、例えば、50mM〜1,500mMの塩(すなわち、一価の金属カチオンのような、一価のカチオンをもたらす塩)の条件下において実施される。
【0250】
シーケンシング適用には、流体操作及び試薬交換を最小化するか又はなくすことが有利でありうる。ポンプ、バルブ及び試薬容器の除去は、小型で簡便なデバイスを可能としうる。本明細書において、部分的に、精査及び/又は組込みのあらゆるサイクルのために、試薬を順次導入する必要がなくなった「オールイン」シーケンシング法が開示される。試薬は、反応物に1回だけ添加され、合成によるシーケンシングは、シーケンシング反応物内に既に閉じ込められた試薬を操作することにより実施される。このようなスキームは、異なるヌクレオチドを識別する方法、ヌクレオチドの組込みを核酸のクローン集団間及び/又は異なる核酸分子間において同期させる方法並びにサイクル1つ当たり1つのヌクレオチドだけが添加されることを保証する方法を必要とする。任意選択的に、シーケンシング反応混合物は、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸と少なくとも1種類のヌクレオチドとを含む。任意選択的に、シーケンシング反応混合物は、複数のポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸とヌクレオチドとを含む。本明細書において提示される通り、ポリメラーゼは、単一のポリメラーゼ又は複数のポリメラーゼを指す。本明細書において提示される通り、プライミングされた鋳型核酸又は鋳型核酸は、単一のプライミングされた鋳型核酸若しくは単一の鋳型核酸又は複数のプライミングされた鋳型核酸若しくは複数の鋳型核酸を指す。本明細書において提示される通り、ヌクレオチドは、1つのヌクレオチド又は複数のヌクレオチドを指す。本明細書において提示される通り、単一のヌクレオチドは、1つのヌクレオチドである。任意選択的に、シーケンシング反応のためのヌクレオチドは、以下のヌクレオチド:dATP、dGTP、dCTP及びdTTP(又はdUTP)のうちの、1つ、2つ、3つ、又は4つを含むがこれらに限定されない。
【0251】
任意選択的に、精査ステップ及び組込みステップは、単一のシーケンシング反応混合物中において行われる。
【0252】
任意選択的に、1、2、3、4種又はこれを超える種類のヌクレオチド(例えば、dATP、dGTP、dCTP、dTTP)が、反応混合物中に、一緒に、同時に存在し、この場合、1種類のヌクレオチドは、次の適正なヌクレオチドである。反応混合物は、少なくとも1つのポリメラーゼ及び少なくとも1つのプライミングされた鋳型核酸をさらに含む。任意選択的に、鋳型核酸は、鋳型核酸のクローン集団である。任意選択的に、ポリメラーゼ、プライミングされた鋳型核酸及びヌクレオチドは、精査反応条件下において、三元複合体を形成する。
【0253】
提示された方法において、4種類のヌクレオチドは、顕著に異なる濃度及び異なる濃度において存在することが可能であり、この場合、ポリメラーゼの鋳型核酸への拡散時間及び結合時間は、(次の適正なヌクレオチドである)4つのヌクレオチドの各々について、4つのヌクレオチドの異なる濃度に起因して異なる。例えば、最高濃度のヌクレオチドは、鋳型核酸上のその相補的な塩基に短い時間で結合し、最低濃度のヌクレオチドは、鋳型核酸上のその相補的な塩基に長い時間を伴って結合するが、この場合、鋳型核酸上の相補的な塩基への結合とは、ポリメラーゼの三元複合体内の次の適正なヌクレオチドを含む鋳型核酸への結合を指す。したがって、次の適正なヌクレオチドのアイデンティティーは、ポリメラーゼの、三元複合体内の鋳型核酸への結合の速度又は時間をモニタリングすることにより決定される。任意選択的に、4種類のヌクレオチドは、これらの濃度による識別が可能であり、この場合、ヌクレオチドの異なる濃度は、ポリメラーゼの、核酸への結合について、異なる結合速度を、測定可能な形において生じる。任意選択的に、4種類のヌクレオチドは、それらの濃度による識別が可能であり、この場合、ヌクレオチドの異なる濃度は、安定化した三元複合体の形成について、異なる結合速度を、測定可能な形において生じる。
【0254】
任意選択的に、ポリメラーゼは標識化される。場合によって、ポリメラーゼは標識化されず、本明細書で開示されたか又は当技術分野で公知の任意の無標識の検出法が利用される。任意選択的に、ポリメラーゼの核酸への結合は、ポリメラーゼの検出可能な特徴を介してモニタリングされる。任意選択的に、安定化した三元複合体の形成は、ポリメラーゼの検出可能な特徴を介してモニタリングされる。ポリメラーゼの検出可能な特徴は、光学的特徴、電気的特徴、熱的特徴、比色特徴、質量及びこれらの任意の組合せを含みうるがこれらに限定されない。
【0255】
任意選択的に、1、2、3、4種類又はこれを超えるヌクレオチド型(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)は、1、2、3、4種類又はこれを超える異なるポリメラーゼへとテザリングされ、この場合、各ヌクレオチド型は、異なるポリメラーゼへとテザリングされ、各ポリメラーゼは、その同定を可能とするように、他のポリメラーゼと異なるタグ又は特徴を有する。全てのテザリングされたヌクレオチド型は、一緒に、テザリングされたヌクレオチド−ポリメラーゼを含む三元複合体を形成するシーケンシング反応混合物へと添加され、三元複合体は、ポリメラーゼを同定するようにモニタリングされ、これにより、ポリメラーゼがテザリングされる、次の適正なヌクレオチドを同定する。テザリングは、多リン酸基及びリンカー分子を介して、ヌクレオチドのガンマリン酸において生じうる。当技術分野において、このようなガンマ−リン酸連結法は、標準的であり、この場合、フルオロフォアは、ガンマリン酸リンカーへと接合させる。タグは、光学的特徴、電気的特徴、熱的特徴、比色特徴、質量、又は他の任意の検出可能な特徴を含むがこれらに限定されない。任意選択的に、異なるヌクレオチド型は、識別可能なタグにより同定される。任意選択的に、識別可能なタグは、各ヌクレオチドのガンマリン酸位置へと接合させる。
【0256】
任意選択的に、シーケンシング反応混合物は、触媒性金属イオンを含む。任意選択的に、触媒性金属イオンは、シーケンシング反応中の任意の時点において、ポリメラーゼと、一過性に反応させるのに利用可能である。頑健なシーケンシングを保証するために、触媒性金属イオンは、短時間にわたり利用可能であり、組込みステップにおいて、鋳型核酸内の次の塩基と相補的な単一のヌクレオチドが、プライマーの3’末端へと組み込まれることを可能とする。この場合、他のヌクレオチド、例えば、鋳型核酸内の次の塩基の下流の塩基と相補的なヌクレオチドは、組み込まれない。任意選択的に、触媒性金属イオンマグネシウムは、局在化させたUV照射がマグネシウムを放出し、これを、ヌクレオチドの組込みのためにポリメラーゼに利用可能とするように、シーケンシング反応混合物中に、フォトケージド複合体(例えば、DM−Nitrophen)として存在させる。さらに、シーケンシング反応混合物は、EDTAを含有してもよく、この場合、マグネシウムは、触媒性ヌクレオチドの組込みの後において、ポリメラーゼの活性部位から放出され、シーケンシング反応混合物中のEDTAにより捕捉され、これにより、マグネシウムは、後続のヌクレオチドの組込みを触媒することが不可能となる。
【0257】
したがって、提示された方法において、触媒性金属イオンは、シーケンシング反応物中に、誘発により放出されうる、キレート化形態又はケージド形態において存在しうる。例えば、触媒性金属イオンは、三元複合体による次の適正なヌクレオチドの組込みを触媒するが、触媒性金属イオンが活性部位から放出されると、第2のキレート剤又はケージング剤により封鎖され、金属イオンによる後続の組込みの触媒を失効化させる。触媒性金属イオンの、このキレート化複合体又はケージド複合体からの限局的放出は、エバネセント波の照射又は構造化照射のような、限局的な脱ケージングスキーム又は脱キレート化スキームを使用することにより保証される。触媒性金属イオンの制御放出は、例えば、熱的手段により生じうる。触媒性金属イオンの、これらのフォトケージド複合体からの制御放出は、限局的な光場により、例えば、導波路又は全反射照明顕微鏡のような一過性照射により、鋳型核酸の近傍において局所的に生じうる。触媒性金属イオンの制御放出は、例えば、鋳型核酸の近傍において、溶液のpHを変更することにより生じうる。EDTA及びEGTAのようなキレート剤は、pH依存性である。5を下回るpHにおいて、二価カチオンであるMg2+及びMn2+は、EDTAにより、有効にキレート化されない。鋳型核酸の近傍において、pHを制御可能な形で操る方法は、触媒性金属イオンのキレート剤からの制御放出を可能とする。任意選択的に、局所的なpHの変化は、核酸を接合させた表面へと電圧を加えることにより誘導される。pH法は、pHがキレート化範囲に戻されると、この金属がこのキレート化形態に戻るという点において、利点をもたらす。
【0258】
任意選択的に、触媒性金属イオンは、ポリメラーゼの活性部位に強く結合し、単一のヌクレオチドの組込みの後において、ポリメラーゼを鋳型核酸から除去することを必要とする。ポリメラーゼの除去は、各ヌクレオチド付加の後において、合成された鎖(プライマー)の3’末端から脱離する、高度な離散性ポリメラーゼを使用することにより達せられうる。結合しなかったポリメラーゼは、これを核酸分子の近傍から除去する電場又は磁場にさらにかけられうる。ポリメラーゼに結合した任意の金属イオンは、シーケンシング反応混合物中に存在するキレート剤により封鎖されてもよく、閉じた複合体の形成を攪乱せずに、ポリメラーゼの活性部位への結合について金属イオンと競合する分子により封鎖されてもよい。ポリメラーゼを、鋳型核酸(例えば、電場、磁場及び/又はキレート剤)から除去するか又は移動させる力は、終結させることができてもよく、ポリメラーゼが、シーケンシングの別のラウンド(すなわち、精査及び組込み)のために、鋳型核酸に接近することを可能とする。非限定的な例において、シーケンシングの次のラウンドは、結合しなかったポリメラーゼを鋳型核酸及び/又は三元複合体の近傍から除去し、三元複合体内に捕捉された単一のヌクレオチドを組み込むように触媒性金属イオンの放出を制御し、単一の組込みの後において、鋳型核酸から解離するポリメラーゼを鋳型核酸の近傍から除去し、キレート剤又は競合的結合剤の使用を介して任意の遊離触媒性金属イオンを封鎖し、シーケンシングの次のサイクルを実施するように、ポリメラーゼが鋳型核酸に接近することを可能とする、三元複合体の形成を含む。
【0259】
核酸配列を同定するための、ポリメラーゼ−核酸結合反応について、上記に記載されている。核酸配列の同定は、核酸の修飾に関する情報を含みうる。核酸の修飾は、メチル化及びヒドロキシメチル化を含む。メチル化は、鋳型核酸のシトシン塩基上において生じうる。DNAのメチル化は、遺伝子の発現を安定的に変更しうる。DNAのメチル化はまた、多様な種類のがん、アテローム性動脈硬化及び老化の発生においても示される。したがって、DNAのメチル化は、ヒト疾患についての、後成的バイオマーカーとして用いられうる。
【0260】
任意選択的に、鋳型核酸上の、1つ以上のシトシンのメチル化は、本明細書において提示される結合によるシーケンシング法において同定される。鋳型核酸は、シーケンシングの前にクローン的に増幅されうるが、この場合、単位複製配列は、これらの鋳型核酸と同じメチル化を含む。鋳型核酸の増幅は、単位複製配列のメチル化を達成するように、DNAメチルトランスフェラーゼの使用を含みうる。鋳型核酸又は増幅された鋳型核酸は、ポリメラーゼ及び1つ以上のヌクレオチド型を含む反応混合物へと供給され、この場合、ポリメラーゼ及び核酸の間の相互作用は、モニタリングされる。任意選択的に、メチル化シトシンの存在下におけるポリメラーゼ及び鋳型核酸の間の相互作用は、非修飾シトシンの存在下における相互作用と異なる。したがって、ポリメラーゼ−核酸間の相互作用についての精査に基づき、修飾ヌクレオチドのアイデンティティーが決定される。
【0261】
本明細書において、ヌクレオチド及び次の塩基の様々な可能な組合せのための、ポリメラーゼ−核酸間のアフィニティーについての表を創出する方法が、提示される。これらのアフィニティーは、主に、ヌクレオチド及び核酸鋳型上の次の塩基だけが参与するポリメラーゼの活性部位における相互作用の影響を受けるため、コンテクスト(context)特異的効果は無視されてもよい。コンテクスト特異的効果は、核酸の二次構造及び鋳型核酸上の次の塩基から、配列に沿ってさらに進んだ塩基の寄与を含みうる。アフィニティーの表は、異なる鋳型塩基に対するアフィニティーの、最も大きく、最も容易に測定される分散を誘導する、天然のヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドの決定を可能とする。任意選択的に、鋳型塩基は、塩基であるdATP、dTTP、dCTP及びdGTPのうちの、1つ、2つ、3つ又は4つである。最も強いアフィニティーは、ヌクレオチドと相補的な塩基に対して存在することが理解される。本明細書で使用された分散とは、特に、他の3つの、不適正で非相補的な塩基に対する、アフィニティーの変動を指す。任意選択的に、各アフィニティーは、ヌクレオチドの組込みを阻害し、二元複合体の形成を不安定化させる精査条件下において測定される。任意選択的に、ポリメラーゼは、アフィニティーの大きな分散をもたらすように、修飾又は選択される。操作されたポリメラーゼ又は天然のポリメラーゼは、シーケンシング酵素として好適でないエラープロファイル又は他の好適でない特性を有しうるが、このポリメラーゼは、非組込み条件下だけにおいて使用されるので、これらのエラープロファイル又は特性は重要ではない。ポリメラーゼは、異なる鋳型塩基に対する、容易に測定可能であり顕著に異なるアフィニティーをもたらすその能力について、明示的に選択されうる。所望の特性を含むポリメラーゼのための考案又はスクリーニングは、当技術分野において標準的な手順(例えば、修飾ヌクレオチドに対するアフィニティーが大きなポリメラーゼについてのスクリーニング)である。任意選択的に、ポリメラーゼは、組込みステップのために、高忠実度ポリメラーゼにより置きかえられる。任意選択的に、鋳型塩基に対して最も好都合なアフィニティーをもたらす、ポリメラーゼ及びヌクレオチドの組合せが選択され、これにより、選択されたヌクレオチドの存在下における、選択されたポリメラーゼの鋳型核酸に対するアフィニティーを測定するシーケンシング法の実行を可能とする。鋳型塩基に対するアフィニティーのスペクトルは、構築されたアフィニティー表に提示されるので、核酸上の次の塩基は、測定されたアフィニティーから決定される。アフィニティーは、ポリメラーゼ核酸相互作用の、結合速度であってもよく、解離速度であってもよく、結合速度及び解離速度の組合せであってもよい。
【0262】
ヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼの鋳型核酸に対するアフィニティーは、当業者に公知の複数の方法により測定されうる。任意選択的に、アフィニティーは、解離速度として測定され、この場合、解離速度は、反応物が洗浄緩衝液により洗浄されるときに、ポリメラーゼの鋳型核酸からの放出をモニタリングすることにより測定される。任意選択的に、アフィニティーは、解離速度として測定され、この場合、解離速度は、平衡結合条件、とりわけ、ポリメラーゼの結合速度が、低速度又は拡散限定速度である場合の平衡結合条件下における、ポリメラーゼの鋳型核酸からの放出をモニタリングすることにより、測定される。ポリメラーゼの結合速度は、ポリメラーゼが十分に低濃度であるとき、拡散限定速度であることが可能であり、この場合、ポリメラーゼがDNA−ポリメラーゼ複合体から脱離すると、すぐには再びロードされないことから、ポリメラーゼが複合体から放出されたことを検出するのに十分な時間を与える。高アフィニティーの相互作用の場合、ポリメラーゼは核酸からゆっくり放出されるが、低アフィニティーの相互作用は、ポリメラーゼのより急速な放出を生じる。この場合のアフィニティーのスペクトルは、動的洗浄条件下で、又は平衡時に測定される異なる解離速度へと変換される。最小の解離速度が、付加されるヌクレオチドと相補的な塩基に対応するのに対し、他の解離速度は、選択されたポリメラーゼ及びヌクレオチドの組合せに応じて、公知の様式により変動する。
【0263】
任意選択的に、解離速度は、ポリメラーゼ及びヌクレオチドが、反応混合物中に供給された後において、平衡シグナル強度として測定されるが、この場合、解離速度が最低である(アフィニティーが最高である)ヌクレオチドとの相互作用が、最も強いシグナルをもたらすのに対し、他の解離速度を変動させるヌクレオチドとの相互作用は、測定可能な形において異なる強度のシグナルをもたらす。非限定的な例として述べると、好ましくは、全反射照明(TIRF)条件下において測定される蛍光標識化ポリメラーゼは、適切に選択された時間窓内において、表面に固定された核酸分子に結合したポリメラーゼ分子の数に応じて、異なる測定蛍光強度をもたらす。ポリメラーゼの内因性蛍光、例えば、トリプトファン蛍光もまた、用いられうる。選択された時間窓内において結合するポリメラーゼ分子の数は極めて小さいので、解離速度の大きな相互作用は、測定強度の低下をもたらすが、この場合、高解離速度は、ポリメラーゼの大半が、核酸と結合していないことを示す。標識化スキーム又は蛍光スキームを含むがこれらに限定されない任意の表面局在化測定スキームが、利用されうる。平衡条件下において、アフィニティーを測定する適切な測定スキームは、結合質量、屈折率、表面電荷、誘電定数及び当技術分野で公知のスキームを含むが、これらに限定されない。任意選択的に、結合速度操作及び解離速度操作の組合せは、提起されたスキームにおいて、忠実度の大きな検出をもたらす。非限定的な例として述べると、一様に小さな結合速度、塩基に依存し、変動する解離速度は、長時間にわたり非結合を維持する非結合のポリメラーゼを生じ、解離速度の変動及び測定強度の弁別の増強を可能とする。結合速度は、添加されるポリメラーゼ、ヌクレオチド又はポリメラーゼ及びヌクレオチドの両方の濃度を低下させることにより、操作されうる。
【0264】
任意選択的に、ポリメラーゼと核酸との間の相互作用は、ポリメラーゼへと接合させた検出可能なタグを介してモニタリングされる。タグは、光学的方法、電気的方法、熱的方法、質量、サイズ、電荷、振動及び圧力を含むがこれらに限定されない検出法によりモニタリングされうる。標識は、磁気標識の場合もあり、蛍光標識であっても、帯電標識であってもよい。外部標識スキーム及び内部標識スキームのために、蛍光異方性は、三元複合体内のポリメラーゼの核酸への安定的結合を決定するのに使用されうる。
【0265】
例示を目的として述べると、ポリメラーゼは、フルオロフォアによりタグ付けされ、この場合、閉じた複合体の形成は、安定的な蛍光シグナルとしてモニタリングされる。不適正なヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼの鋳型核酸との不安定的相互作用は、次の適正なヌクレオチドの存在下において形成された三元複合体と比較して、弱いシグナルを測定可能な形において生じる。
【0266】
任意選択的に、ヌクレオチドの存在下における、ポリメラーゼ及び鋳型核酸の間の相互作用は、ポリメラーゼに由来する内因性シグナルであって、ラマンシグネチャー、トリプトファン、2−アミノプリン又は他の内因性蛍光を含むがこれらに限定されない内因性シグナルを用いてモニタリングされる。ポリメラーゼのアミノ酸の内因性蛍光は、本明細書で開示されたシーケンシング法、例えば、三元複合体の形成又は解放の、1つ以上のステップにおいて生じる、ポリメラーゼのコンフォメーション変化を検出するのに利用されうる。内因性蛍光を含むアミノ酸は、トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンを含む。任意選択的に、1つ以上のポリメラーゼのアミノ酸は、トリプトファン残基、チロシン残基又はフェニルアラニン残基を含むように、突然変異されている。ポリメラーゼは、内因性蛍光を含むさらなるアミノ酸を含むように、遺伝子修飾又は化学修飾を含む任意の手段により修飾されうる。任意選択的に、内因性蛍光は、蛍光の消光を引き起こしうる他のアミノ酸であって、プロトン化された基(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)を有するアミノ酸のようなアミノ酸の近接の影響を受ける。任意選択的に、ポリメラーゼが、三元複合体内に構成されて水性環境へと曝露されている場合、ポリメラーゼが、解放されている又は閉じた複合体コンフォメーションに関与していない場合、ポリメラーゼのトリプトファン残基は、疎水性コア内に埋もれている。トリプトファンの発光スペクトルは、環境(親水性又は疎水性)に応じて異なり、三元複合体の検出を可能とする。任意選択的に、ポリメラーゼの内因性蛍光は、シーケンシング反応におけるコンフォメーション変化を同定するのに使用される。1つの例において、ポリメラーゼのトリプトファン残基からの、内因性蛍光の発光は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、Yu−Chih Tsai、Zhinan Jin及びKenneth A.Johnson、「Site−Specific Labeling of T7 DNA Polymerase with a Conformationally Sensitive Fluorophore and Its Use in Detecting Single−Nucleotide Polymorphisms」、Analytical、Biochemistry、384、1号(2009年1月1日):136〜44において言及されている技法と同様の技法を使用してモニタリングされる。
【0267】
任意選択的に、提示された方法において、1つ以上の精査ステップ及び/又は組込みステップに続き、フェージングを低減又はリセットするように、ヌクレオチドのサブセットが添加される。したがって、方法は、シーケンシングされる鋳型核酸分子を、ヌクレオチドのサブセット及び核酸分子の鋳型鎖と対向する鎖へと、ヌクレオチドを組み込むための酵素を含む組成物と接触させる、1つ以上のステップを含みうる。接触させるステップは、核酸分子内のフェージングを低減する条件下において行われうる。任意選択的に、鋳型核酸分子を接触させるステップは、組込みステップの後において、かつ/又は精査ステップの後において行われる。任意選択的に、接触させるステップは、シーケンシングの、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95若しくは100ラウンド又はこれを超えるラウンド、すなわち、精査及び組込みのラウンドの後において行われる。任意選択的に、接触させるステップは、シーケンシングの30〜60ラウンドの後において行われる。任意選択的に、接触させるステップは、シーケンシングのあらゆるラウンドの後において、すなわち、1つの精査ステップ及び組込みステップの後において行われる。任意選択的に、複数の接触させるステップは、シーケンシングのあらゆるラウンドの後において行われ、この場合、各接触させるステップは、ヌクレオチドの異なるサブセットを含みうる。任意選択的に、方法は、接触させるステップの後において、1つ以上の洗浄ステップをさらに含む。任意選択的に、サブセットは、2つ又は3つのヌクレオチドを含む。任意選択的に、サブセットは、3つのヌクレオチドを含む。任意選択的に、ヌクレオチドのサブセットは、dATP、dGTP、dCTP、dTTP(又はdUTP)又はこれらの誘導体のうちの3つから選択される。任意選択的に、3つのヌクレオチドは、アデノシン、シトシン及びグアニンを含む。任意選択的に、3つのヌクレオチドは、アデノシン、シトシン及びチミンを含む。任意選択的に、3つのヌクレオチドは、シトシン、グアニン及びチミンを含む。任意選択的に、3つのヌクレオチドは、アデノシン、グアニン及びチミンを含む。任意選択的に、接触させるステップの各ラウンドは、ヌクレオチドの同じサブセット又は異なるサブセットを含む。任意選択的に、核酸鋳型のシーケンシングは、モニタリングされ、フェージングの検出がなされたら、ヌクレオチドのサブセットと接触させるステップが行われる。例えばまた、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、米国特許第8,236,532号も参照されたい。
【0268】
任意選択的に、シーケンシング反応は、複数の鋳型核酸、ポリメラーゼ及び/又はヌクレオチドを伴い、この場合、複数の三元複合体が、モニタリングされる。クローン的に増幅された鋳型核酸は、一緒にシーケンシングされてもよいが、この場合、クローンは、シーケンシングにおけるモニタリングの増強を可能とするように、近接して局在化させる。任意選択的に、三元複合体の形成は、複数の、クローン的に増幅された鋳型核酸間の、塩基伸長の同期性を保証する。塩基伸長の同期性は、シーケンシングのサイクル1つ当たり、1つの塩基だけの添加を可能とする。
【実施例】
【0269】
実施例1は、精査ステップにおいて、二価の触媒性カチオンを含む場合の結果又はこれを含まない場合の結果について探索した手順について記載する。手順は、標識非含有系及びクレノウポリメラーゼを使用して行った。
【0270】
[実施例1]
結合ステップにおいて、マグネシウムを用いるか又は用いない塩基配列の決定
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。ポリメラーゼ緩衝液:20mMのトリス、pH 8.0、300mMのNaCl、5mMのDTT、100μMのdNTP、150nMのクレノウ、0.01%のBSA、0.02%のTween−20、10mMのMgCl
2。精査緩衝液:20mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、300mMのNaCl、5mMのDTT、100μMのdNTP、150nMのクレノウ、0.01%のBSA、0.02%のTween−20。組込み緩衝液:20mMのトリス緩衝液(pH 8)、300mMのNaCl、5mMのDTT、0.01%のBSA、0.02%のTween−20、10mMのMgCl
2。洗浄緩衝液:20mMのトリス緩衝液(pH 8)、300mMのNaCl、5mMのDTT、0.01%のBSA、0.02%のTween−20。
【0271】
図1は、精査ステップにおいてマグネシウムが存在したか又はマグネシウムが存在しなかった、非標識化による光学的検出法を使用する実験の結果を示す。第1のフローは、dCTP(C:Tミスマッチ)を含み、第2のフローは、dATP(A:Tマッチ)を含んだ。
図1中の実線は、ポリメラーゼ緩衝液を使用して得られた結果を示す。前定常状態速度定数は、それぞれ、マッチAステップ及びミスマッチCステップについて、0.0106及び0.0084であった。差違は、コグネイト塩基を正確に弁別するのに小さ過ぎた。
図1中の破線は、精査緩衝液中のマグネシウム非含有の精査ステップに続く、組込み緩衝液中の浸漬を表す。1.1nmのシグナル閾値は、適正な塩基を正確に決定した。これらの結果は、センシングプラットフォームは、マッチ塩基をミスマッチ塩基から弁別しうる一過性の反応速度を捕捉することが不可能であり、マグネシウムが精査時の緩衝液(ポリメラーゼ緩衝液、実線、
図1)中に含まれた場合、配列決定が不可能となることを示した。これに対し、マグネシウムの非存在下における結合は、適正な塩基と不適正な塩基との、極めて大きな弁別をもたらした(精査緩衝液、破線、
図1)。この手順における適正な塩基配列は、結合速度ではなく、シグナルの閾値化により決定した。
【0272】
実施例2は、結合反応速度を使用して、精査ステップにおいて(すなわち、ポリメラーゼ、DNA鋳型及びヌクレオチドの間の三元複合体の形成時において)、どのようにして適正な塩基又はヌクレオチドを決定しうるのかを、裏付けた手順について記載する。Bst酵素は、適正な塩基が提示された場合に二峰性の結合曲線を示し、不適正な塩基が提示された場合に基本的な指数関数的結合挙動を示し、これにより、手順における適正な塩基又はヌクレオチド弁別及び検出を可能とした。
【0273】
[実施例2]
Bst酵素の結合反応速度を使用するシーケンシング
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。FORTEBIO(登録商標)(Menlo Park、CA)Octet測定器(Red384又はQK)は、Biolayer干渉法を使用して、光ファイバーチップの表面における結合反応を測定する。チップは、ストレプトアビジン(SA)により機能化して、鋳型の3’末端近傍の配列と相補的なプライマーとハイブリダイズした、5’ビオチン標識化DNA鋳型への結合を可能とした。phiX_matchC及びphiX_matchAを、個々のチップへとロードした。0.01〜0.02%のBSA及び0.01〜0.02%のTween−20を含有する1〜2倍濃度のPBS(ローディング緩衝液)中100〜500nMの間のプライマー−鋳型を、チップへとロードした。FP2プライマーは、鋳型に対して、1.25〜2倍の過剰量であった。ローディングは、シグナルの変化によりモニタリングしたが、通例、30℃において、5分以内にプラトーに達した。チップを、ローディング緩衝液中に、1〜5分間にわたり浸漬して、結合しなかったDNA材料を除去した。塩基判定のために、チップを、典型的に、0.01〜0.02%のBSA及び0.01〜0.02%のTween−20(LS緩衝液)、100nMのポリメラーゼ酵素、100μMのヌクレオチド及び50〜300mMにおいて濃度を変化させる、さらなるNaClを補充した、1倍濃度のTaq緩衝液(25℃の10mMのトリス−HCl(pH 8.3)、50mMのKCl、マグネシウム非含有)を含有する溶液中に浸漬した。この実験では、適正な塩基を決定するために、30nMのBst2.0酵素、100μMのdNTP及び150mMのNaClを含有するLS緩衝液を使用した。phiX_matchC二重鎖は、三元複合体を形成し、適正な次のヌクレオチド(コグネイト)が提示されるため、結合シグナルの増大を示す。phiX_matchAは、不適正な(非コグネイト)であるため、結合シグナルの増大を示さない。精査ステップの後、センサーを、5mMのMg
2+を含有するLS緩衝液中に浸漬して、ポリメラーゼが、ヌクレオチドを組み込むことを可能とするのに続き、150mMのNaClを含有するLS緩衝液により洗浄した。
【0274】
手順の結果を、
図2に示す。反復的サイクリングは、この方法は、配列を決定するために使用しうることを示した。表2は、この精査法により、最初の3つの塩基が、適正に同定されたことを示す。精査法により、4つ目の塩基は、「判定なし」であり、多重付加を反映しうる。後続の塩基が適正に同定されたことは、これと符合する。全体において、6つの塩基中5つは、適正に同定された。さらに、不適正な塩基の誤組込みは、観察されなかった。
【0275】
【表2】
【0276】
実施例3は、高塩濃度条件を利用した精査ステップに続き、組込みステップを行った、シーケンシング反応について記載する。
【0277】
[実施例3]
結合によるシーケンシング
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。この場合に使用された結合/精査緩衝液は、250mMのNaCl、100μMのdGTP、dCTP、dATP、又はdTTP、1.5mMのSr
2+、100nMのクレノウexo(−)ポリメラーゼを有するLS緩衝液であった。組込み緩衝液は、50mMのNaCl、50mMのMgCl
2を含むLS緩衝液であり、洗浄緩衝液は、250mMのNaClを含むLS緩衝液であった。FORTEBIO(登録商標)Octet Red384システム(Menlo Park、CA)を使用して、SAセンサーチップへと接合させた、ビオチンphiX_matchC鋳型及びFP2プライマー配列を使用するシーケンシングサイクルを実施した。シーケンシングステップは、以下:(a)dATPによる精査、(b)組込み、(c)洗浄;(d)dGTPによる精査、(e)組込み、(f)洗浄;(g)dCTPによる精査、(h)組込み、(i)洗浄;(j)dTTPによる精査、(k)組込み、(l)洗浄に続く、(a)以降のこれらのステップの反復からなった。塩基判定のために、精査ステップは、前の洗浄ステップに由来するベースラインを上回る、検出可能なシグナル及び/又は対照配列と比べた、検出可能なシグナルをもたらした。
【0278】
この手順からの結果は、12の塩基が、適正に同定されたことを示した。2つの塩基は、結合シグナルが低度に過ぎるため、同定されなかった。この実験は、下記の表3に示す通り、14中12の塩基を、適正に同定した。
【0279】
【表3】
【0280】
実施例4は、一価のカチオンを含有する塩の、ポリメラーゼによるマッチ/ミスマッチの弁別に対する効果を確立するのに初期に使用した手順について記載する。手順において利用されたFORTEBIO(登録商標)Octet測定器(Red384又はQK)(Menlo Park、CA)は、Biolayer干渉法を使用して、光ファイバーチップの表面における結合反応を測定した。チップは、ストレプトアビジン(SA)により機能化して、鋳型の3’末端近傍の配列と相補的なプライマーとハイブリダイズした、5’ビオチン標識化DNA鋳型への結合を可能としておいた。
【0281】
[実施例4]
マッチ/ミスマッチ塩基の弁別に対する塩濃度の効果
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。phiX_matchC及びphiX_matchAを、個々のチップへとロードした。0.01〜0.02%のBSA及び0.01〜0.02%のTween−20を含有する1〜2倍濃度のPBS(ローディング緩衝液)中100〜500nMの間のプライマー−鋳型を、チップへとロードした。FP2プライマーは、鋳型に対して、1.25〜2倍の過剰量であった。ローディングは、シグナルの変化によりモニタリングしたが、通例、30℃において、5分以内にプラトーに達した。チップを、ローディング緩衝液中に、1〜5分間にわたり浸漬して、結合しなかったDNA材料を除去した。塩基判定のために、チップを、典型的に、0.01〜0.02%のBSA及び0.01〜0.02%のTween−20(LS緩衝液)、100nMのポリメラーゼ酵素、100μMのdNTP及び50〜300mMにおいて濃度を変化させる、さらなるNaClを補充した、1倍濃度のTaq緩衝液(25℃の10mMのトリス−HCl、50mMのKCl、pH 8.3、マグネシウム非含有)を含有する溶液中に浸漬した。phiX_matchC二重鎖は、三元複合体を形成し、適正な次のヌクレオチド(コグネイト)が提示されるため、結合シグナルの増大を示す。phiX_matchAは、不適正な(非コグネイト)ヌクレオチドであるため、結合シグナルの増大を引き起こさない。
【0282】
結果は、いずれの鋳型も、標準的な反応条件下において、ポリメラーゼ酵素に結合することを示した。しかし、塩濃度が増大するにつれ、非コグネイト複合体の結合アフィニティーが低下したのに対し、コグネイト複合体の結合アフィニティーは、高値を維持した。こうして、この精査ステップにおいて、次の適正な塩基を容易に同定しうるように、塩基弁別のシグナル対ノイズ比(SNR)は増大した(
図3を参照されたい)。この例において、NaClを、モデルの一価カチオンを含有する塩として使用したが、KCl、NH2(SO4)、グルタミン酸カリウム及び当技術分野で公知の他の塩のような、他の塩もまた、使用することができる。適正なヌクレオチドと、不適正なヌクレオチドとの結合アフィニティーの差違を示すポリメラーゼは、クレノウポリメラーゼ、Bst2.0、Bsu及びTaqを含んだ。
【0283】
実施例5は、結合反応の会合相及び解離相の両方における精査を、どのように使用して配列忠実度を改善しうるのかを、裏付けた手順について記載する。この場合、コグネイトのヌクレオチドは、三元複合体の解離(すなわち、この喪失)により同定されうる。
【0284】
[実施例5]
解離/洗浄ステップにおける塩基の弁別
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。この実験では、phiX_matchC及びFP2プライマーを、上記で記載した通り、SAセンサーチップへとロードした。ポリメラーゼ複合体を、100μMのdGTP、dCTP、dATP又はdTTP及び100nMのクレノウ又はBst2.0酵素及び1mMのSrCl
2を含むLS緩衝液中において形成した。
【0285】
結果は、コグネイトのヌクレオチドが存在したのかどうかに関わらず、低塩濃度中において、プライミングされた鋳型核酸のDNAに、ポリメラーゼが効率的に結合したことを示した。洗浄緩衝液(LS緩衝液+50mM又は100mMの、添加されたNaCl)中において、全ての複合体は、解離した。さらなるNaClが存在した場合、SrCl
2であってもなお、複合体を安定化させなかった。しかし、結合緩衝液中に存在した50μMの同じdNTPが洗浄緩衝液中に含まれた場合、不適正なヌクレオチドを含む複合体だけが解離し、適正な三元複合体は安定化した(
図4を参照されたい)。さらに、dNTPは、結合ステップにおいて不要であり、洗浄時に含まれうることが見出された。結合した二元複合体は、その後、適正なdNTPが導入された場合、やはり、適正な塩基が参入して三元複合体を形成することを可能としえた。加えて、忠実度も、不適正なヌクレオチドの存在の効果を受けなかった。したがって、ポリメラーゼの解離速度もまた、dNTPの混合物(例えば、異なる速度において解離する異なる濃度のもの)中において、適正な塩基を決定するのに使用しうる。
【0286】
[実施例6]
洗浄緩衝液中の、核酸:ポリメラーゼ複合体の安定化
ホモポリマー領域内の複数の組込みの可能性を最小化するために、洗浄ステップを、組込みの前に実施することができる。カルシウム及びストロンチウムのような金属カチオンは、ポリメラーゼ複合体を安定化させうる(マグネシウムと同様に)が、ヌクレオチドの組込みを生じる、ホスホジエステル結合の触媒を支援できない。この実験では、濃度を変動させるSrCl
2(0mM〜14mM)を、洗浄緩衝液(LS緩衝液)へと添加した。ポリメラーゼ複合体は、洗浄緩衝液中に3.5mMという低濃度のSr
2+イオン(最低濃度)の存在下においても、はるかにより安定的であった。さらに、結合ステップにおいて、適正なヌクレオチド又は不適正なヌクレオチドが存在した場合も、複合体の安定性がそれほど効果を受けなかったことから、Sr
2+に関連する、ポリメラーゼの安定性が、三元複合体に限定されなかったことが示される。結果を、
図5に示す。
【0287】
実施例7は、DNA Pol Iの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の効果について探索した手順について記載する。ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によりもたらされる校正機能により、不適正な塩基又はフラップは除去されるので、エキソヌクレアーゼ活性は、忠実度を増大させる。しかし、この活性は、適正な塩基を潜在的に切断し、不適正な配列リードをもたらしうる。
【0288】
[実施例7]
3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を伴わないDNA pol Iの使用
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。3’末端のミスマッチを含むプライマーを、フレイド(frayed)末端又はフラップ構築物を創出する鋳型とハイブリダイズさせた。クレノウexo(−)ポリメラーゼは、この末端を伸長させることができない。しかし、DNA pol Iの大型断片は、エキソヌクレアーゼ活性を有し、ミスマッチ塩基を除去しうる。除去されると、プライマーは、通常、クレノウexo(−)ポリメラーゼ又はDNAポリメラーゼにより伸長させることができる。シーケンシングのために、固定されたフラップ構造を有する2つのセンサーを、DNAポリメラーゼ又はクレノウexo(−)へと曝露した。次いで、センサーを、適正な順序において、鋳型配列へと曝露した。DNAポリメラーゼのセンサーが塩基を付加することが可能であるのに対し、クレノウ断片のセンサーは、フラップ構造のために、塩基を付加することが不可能であった。DNAポリメラーゼの3’−5’exo活性は、塩基の添加を、配列と同期させない。
【0289】
手順からの結果を、
図6に提示する。DNAポリメラーゼによるミスマッチ塩基の切断は、後続の塩基の付加を可能とした。塩基は、4サイクルまで適正であった。エキソヌクレアーゼ活性を伴わないクレノウexo(−)は、鋳型を伸長させることが不可能であった。疑似エキソヌクレアーゼ活性が有害である場合、エキソヌクレアーゼを、競合的化合物、不競合的又は非競合的化合物又は類似体により阻害することができる。例えば、NaFは、DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ機能の競合的阻害剤である(Potapovaら、FEBS Letters、277(1〜2):109〜111(1990))。
【0290】
【表4】
【0291】
実施例8は、HIV−1逆転写酵素を、酵素阻害剤と組み合わせて利用する手順について記載する。本実施例において使用された標的配列に対するバックグラウンドとして、非小細胞肺がんを伴う患者のうちの4〜5%において、EML4−ALK融合が見出された(Sodaら、Nature、448:561〜6(2007);Mano、Cancer Sci.、99:2349〜55(2008);並びにHorn及びPao、J.Clin.Oncol.、27:4232〜5(2009))。臨床肺腫瘍内のALKタンパク質内において、L1196M「ゲートキーパー」突然変異を結果としてもたらし、化学療法薬であるクリゾチニブに対する耐性を付与する、ALK C4493A突然変異が同定されている(Choiら、N.Engl.J.Med.、18:1734〜9(2010))。4496−4509ASプライマーは、ゲートキーパー突然変異を含む領域へのシーケンシングを可能とする。鋳型オリゴヌクレオチド配列は、野生型ヒトALK遺伝子(ヌクレオチド番号4460〜4509)に由来した。プライマー配列は、ヒトALK遺伝子の一部(ヌクレオチド番号4496〜4509)と相補的であった。
【0292】
[実施例8]
HIV逆転写酵素(RT)並びに非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)である、化合物7及び18を使用するシーケンシング
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。3’反転dTを含む鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509SのDNA配列は、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号9)であった。プライマーオリゴヌクレオチドである4496−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTC−3’(配列番号10)であった。鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S及びプライマーオリゴヌクレオチドである4496−4509ASは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)により、合成及び解析された(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。オリゴヌクレオチドを、TE緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA)中において、100μMへと調製した。プライマー及び鋳型オリゴヌクレオチドを、アニーリング緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。プライマー−鋳型溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックを、ベンチトップへと移して、周囲温度へと、徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。不競合的NNRTI化合物(参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、Pittaら、J.Enzyme Inhib.Med.Chem.、28(10):113〜22(2013))は、Epigen Biosciences,Inc. (San Diego、CA)製であった。NNRTI化合物7(3−4−クロロ−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−2−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)チアゾリジン−4−オン)及び18(3−(6−エトキシ−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−2−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)チアゾリジン−4−オン)を、それぞれ、ジメチルスルホキシド(DMSO)中、25.0mM及び15.0mMの濃度へと溶解させた。組換え精製HIV逆転写酵素(HIV RT)は、Worthington Biochemical Corp(Lakewood、NJ)製であった。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)は、Ambion(Foster City、CA)製であった。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液へと希釈した(100nM)。使用の直前に、HIV逆転写酵素を、酵素希釈液(50mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、8mMのMgCl2)へとあらかじめ希釈した。結合緩衝液は、50mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、160mMのKCl、0.5mMのEDTA、11mMのMgCl2、0.3%(v/v)のTriton X−100、5.3mMのジチオトレイトール(DTT)、100μg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)、100μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP又はdCTP)、100nMのHIV RTであった。NNRTI化合物を、結合緩衝液へとスパイクする直前に、DMSOによりあらかじめ希釈した。反応緩衝液は、NNRTI、dNTP又はHIV RT酵素を伴わない結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、PT洗浄緩衝液、1つのdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードした(ウェル1つ当たり200μL)。ストレプトアビジン(SA)バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5019)を、使用の前に、約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、PT洗浄緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、HIV RT及びdCTP±NNRTIを含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、反応緩衝液へと移した(dCTPの組込み及び解離相)。同様に、バイオセンサーを、表示の通り、循環的に、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)を含有する溶液へと移した。結合及び組込みのサイクルを、複数回反復した。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。結合反応及び解離反応の進行を、19.4秒間の時間窓内において平均することにより、又はPrismソフトウェア(19.4秒間の時間窓及び6次の平滑化多項式)により平滑化した。
【0293】
手順からの結果を、
図7A〜7B及び
図8に示す。報告によれば不競合的である阻害方式を含む非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)を、HIV逆転写酵素のDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を介するDNAシーケンシングのために用いた。プライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイにおいて、HIV逆転写酵素、適正なdNTP及びNNRTI化合物7(40μM)の組合せは、会合相における結合についての、顕著に異なるピークに続き、解離相における洗浄緩衝液中の、結合の減少を呈する(
図7A、丸)。NNRTIにより安定化させたHIV RT−dNTP混合物と異なり、HIV RT及び適正なdNTPを含有する反応物も、対照(40μMのNNRTI化合物7を用いるか又は用いないHIV RT;
図7A、実線及び破線)も、感知可能な結合ピーク(
図7A、三角)をもたらさなかった。結合及び解離についての時間経過は、
図7A中の、最初の6つのサイクルについてのシーケンシング(ヌクレオチド配列であるCAGCAG)を裏付ける。それぞれ、不適正なヌクレオチドであるdCTP及びdATPを含む、7番目のサイクル及び8番目のサイクルは、結合ピークをもたらさなかった。適正なヌクレオチドであるdGTPを含む、9番目のサイクルは、結合ピークをもたらした(
図7A)。結合(0〜5分間)及び解離(5〜10分間)についての時間経過を、各サイクルについて、
図7Bに示す。同様に、HIV RT及びNNRTI化合物18を使用するシーケンシングもまた、シーケンシング結果をもたらした。プライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイにおいて、HIV逆転写酵素、適正なdNTP及びNNRTI化合物18(80μM)の組合せは、会合相における結合についての、顕著に異なるピークに続き、解離相における洗浄緩衝液中の、結合の減少を呈する(
図8、ひし形)。NNRTIにより安定化させたHIV RT−dNTP混合物と異なり、HIV RT及び適正なdNTPを含有する反応物も、対照(80μMのNNRTI化合物18を用いるHIV RT;
図8、破線)も、感知可能な結合ピーク(
図8、三角)をもたらさなかった。サイクル1〜3において、結合ピークは、HIV RTの、配列CAGに適正なヌクレオチド及び化合物18との結合を示した(
図8)。HIV RT、不適正なヌクレオチドであるdTTP及び化合物18を含むサイクル4は、結合ピークを示さなかった(
図8)。後続のサイクルは、シーケンシング解析のためのさらなるピークを示さなかった。
【0294】
実施例9は、別の標識非含有のシーケンシング系の有用性を裏付けた手順について記載する。より具体的に述べると、結果は、SPRiバイオセンサー上のクレノウ/dNTP結合アッセイを使用して、DNAを正確にシーケンシングする能力を裏付けた。SPRiバイオセンサーは、複数の精査/組込みラウンドにわたり、DNAシーケンシングを実施するために必要な、異なるステップを検出するのに十分な感度及び耐久性を有する。下記では、60bpの鎖内の、3つの塩基対のシーケンシングが示される。この技法は、任意の数のシーケンシングサイクルへと拡張可能でありうる。
【0295】
[実施例9]
表面プラズモン共鳴(SPR)イメージングバイオセンサー上の、DNAシーケンシング
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。SPRセンサーチップ:20mm×20mm×1mmの高屈折率(1.61)スライド(NanoSPR、Chicago、IL)。アルカンチオール、PEG6:モノチオアルカン(C11)PEG6−OH(11−メルカプトウンデシルヘキサエチレングリコール(型番:SPT−0011P6);及びBAT:ビオチニル化アルカンPEGチオール(型番:SPT−0012D)は、Sensopath technologies(Bozeman、MT)から得た。塩基緩衝液(洗浄):300mMのKCl、20mMのトリスHCl(pH 8.0)、0.01%のTween−20、1mMのSrCl2。精査緩衝液:塩基緩衝液+50nMのクレノウ断片及び100nMのdNTP。組込み緩衝液:塩基緩衝液+10mMのMgCl2。実験の前に、金コーティングされたSPRスライドを、18%のBATの、82%のPEG6との混合SAMであって、1×10
−4Mの、100%のEtOH中最終組合せ濃度へと希釈された混合SAMによりコーティングした。SPRスライドを、アルカンチオール溶液中、室温において、一晩にわたりインキュベートした。インキュベーションの後において、SPRスライドを、未使用の100%のEtOH中に続き、脱塩水中50%のEtOH中及び脱塩水中においてすすいだ。次いで、スライドを、空気中において乾燥させた。スライドを、流体の制御、画像の収集及びデータの定量化をもたらす、特注のSPRイメージングシステム上に載せた。塩基緩衝液中10μg/mlのストレプトアビジンを含有する溶液を、フローセルへと注入した。結果として得られるストレプトアビジン層の結合を、SPRチップから反射される光の変化を約180秒間にわたり測定することにより、モニタリングした。これに続き、過剰量の塩基緩衝液により洗浄した。次いで、あらかじめハイブリダイズさせたプライマーFP2/phiX_matchA鋳型DNAをフローセルへと注入し、約180秒間にわたり、ストレプトアビジン層へ結合させるのに続き、過剰量の塩基緩衝液により洗浄した。シーケンシングのために、50nMのクレノウ断片を含有する溶液は、100nMのdATP、dCTP、dTTP又はdGTPを含む塩基緩衝液中において調製した。dNTP溶液を、フローセルへと、個別に(G、A、A、T、C、Gの順序において)注入し、SPRi応答について精査するために、約180秒間にわたりインキュベートした。シグナルの変化が見られない/小さい場合、フローセルを、過剰量の塩基緩衝液により洗浄した。SPRシグナルが塩基のマッチを示した場合、フローセルを、組込み緩衝液(10mMのMg2+を含有する)により30秒間にわたり洗浄して、適正なdNTPを組み込ませ、続いて、塩基緩衝液により洗浄した。精査ステップ、組込みステップ及び洗浄ステップを反復した。
【0296】
図9は、3つのミスマッチ塩基及び3つの適正な塩基を同定するために記録したセンサーグラムを示す。アニールさせたプライマー配列の後における、phiX_matchA鋳型の、最初の3つの、適正なコンジュゲート塩基は、A、T及びGであった。センサー上に流動させた、第1の溶液は、ポリメラーゼ及び塩基対のミスマッチに対応するdGTPを含有した。結果として得られるセンサーの出力波形が、ベースラインの反射率の小さな変化を示したことは、ポリメラーゼ分子がプライミングされた鋳型鎖に結合しなかったことを示す。センサー上に流動させた、次の溶液は、ポリメラーゼ及び適正なコンジュゲート塩基に対応するdATPを含有した。結果として得られる出力波形(グレーボックスにより強調された)が反射光の大きな増大を示したことは、ポリメラーゼがプライミングされた鋳型鎖に結合し、これにより、SPRの位置をシフトさせることを示す。ポリメラーゼ溶液を約180秒間(利用可能な結合性部位の飽和を保証する)にわたりインキュベートした後において、10mMのMg2+を含有する組込み溶液を、フローセルへと導入した。Mg2+の導入は、ポリメラーゼが、結合したdATPを鋳型に結合したプライマー鎖へと組み込むことを可能とした。dATPの組込みの成功を保証するために、ポリメラーゼ−dATP溶液もまた、センサーチップ上に流動させた。しかし、今回、反射光の量が前回ほど増大しなかったことは、適正なコグネイト塩基はもはやAではないので、ポリメラーゼが鋳型鎖に結合しなかったことを示す。次の適正な塩基を精査するために、ポリメラーゼ及びdTTPの溶液を、センサー上に流動させた。今一度、反射光の強度が閾値を上回って増大したことは、dATPの組込みが成功し、次の適正な塩基が予測された通りTであったことを示す。組込み緩衝液をセンサーチップ上に流動させて、塩基を組み込んだ。ミスマッチ(ポリメラーゼ−dCTP)に続き、マッチ(ポリメラーゼ−dGTP)を使用して、工程を、2回にわたり反復した。いずれの場合においても、予測された応答が観察されたことは、次の適正なコンジュゲート塩基が、実際にGであったことを示す。
【0297】
実施例10は、二本鎖DNA鋳型のシーケンシングを裏付けた手順について記載する。
【0298】
[実施例10]
ニックトランスレーションによる、二本鎖DNAのシーケンシング
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。3’反転dTのDNA配列を有する鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509Sは、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号9)であった。プライマーオリゴヌクレオチドである4496−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTC−3’(配列番号10)であった。オリゴヌクレオチドである4460−4494ASのDNA配列は、5’−AGCAGGATGAACCGGG/i5NitInd/CAGGGATTGCAGGCTCAC−3’(配列番号11)[配列中、「/i5NitInd/」は、5−ニトロインドール−2’デオキシリボース残基である。]であった。この文脈において、5−ニトロインドールは、グアニンテトラッドの形成を防止し、ユニバーサル塩基として用いられることが意図される。オリゴヌクレオチドを、TE緩衝液(10mMのトリスpH 8.0、0.1mMのEDTA)において、100μMに調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S及び4496−4509ASを、アニーリング緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。1塩基対のギャップを含むdsDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S、4496−4509AS及び4460−4494ASを、アニーリング緩衝液を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックにロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックを、ベンチトップへと移して、周囲温度へと徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。バチルス・ステアロテルモフィルスによりコードされた全長DNAポリメラーゼ(エシェリキア・コリー(Escherichia coli)から精製された組換え酵素である「Bst DNAポリメラーゼ」)を、New England Biolabs(Ipswich、MA;型番M0328L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)を、Ambion(Foster City、CA)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液に希釈した(100μM)。結合緩衝液は、50mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、300mMのKCl、0.1%(v/v)のTriton−X100、100μg/mLのウシ血清アルブミンであった。反応緩衝液は、10mMのMgCl2を含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1つのdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードし(ウェル1つ当たり200μL)、PCR−grade mineral oil(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M8662)を適用した(ウェル1つ当たり75μL)。ストレプトアビジン(SA)バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5019)を、使用の前に約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、結合緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、表示の通り、1mL当たり136単位のBst DNAポリメラーゼ及び200μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP又はdCTP)を含有する結合緩衝液(会合相)に移し、続いて、dNTPの組込みのために反応緩衝液に移した。バイオセンサーを、dNTPを含まずBst DNAポリメラーゼ(1mL当たり136単位)を含有する反応緩衝液に移して、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を介するニックトランスレーションを促進した。バイオセンサーを、酵素又はマグネシウムを伴わない反応緩衝液に移した(解離相)。同様に、バイオセンサーを、表示の通り、循環的に、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)を含有する溶液へと移した。結合及び組込み並びに5’−3’エキソヌクレアーゼによる切断のサイクルを、複数回にわたり反復して、シーケンシングについて評価した。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。
【0299】
手順からの結果を、
図10A〜10Cに示す。プライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイにおいて、Bst DNAポリメラーゼ及び適正な2’−デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dCTP)の組合せは、会合相における結合について、顕著に異なるピークを呈する(
図10A、10B及び10C、dCTPである「C」)。サイクル1は、dsDNA鋳型内の1つの塩基対ギャップへの結合及び組込み(
図10A及び10B)及び対照のssDNA鋳型内のプライマーの下流における適正なヌクレオチドの組込みを裏付ける(
図10C)。dNTPを欠く対照は、最小限の結合(
図10A、10B及び10C、サイクル1〜7)を示す。サイクル2は、ポリメラーゼの、次の適正なヌクレオチドであるdATP(
図10A及び10B、dATPである「A」)と組み合わせた、dsDNA鋳型への結合を示すが、これは、障害がないssDNA鋳型への結合(
図10C、dATPである「A」)より低度であることから、エキソヌクレアーゼによる相補鎖の切断が完了しなかったことが示される。結合及び解離についての時間経過は、dsDNA(
図10A及び10B)及びssDNA(
図10C)の、最初の3つのサイクル(ヌクレオチド配列であるCAG)についてのシーケンシングを裏付ける。予測された通り、不適正なヌクレオチドであるdTTPを含む第4のサイクルは、結合ピークをもたらさなかった(
図10A、10B及び10C)。これらの結果は、DNAポリメラーゼ及びBst DNAポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を使用する、ニックトランスレーションによる二本鎖DNAをシーケンシングする能力を裏付ける。
【0300】
実施例11は、二本鎖DNA鋳型上のシーケンシングを裏付けるのに使用された、さらなる手順について記載する。
【0301】
[実施例11]
鎖置換による、二本鎖DNAのシーケンシング
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。3’反転dTを含む鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509SのDNA配列は、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号9)であった。プライマーオリゴヌクレオチドである4496−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTC−3’(配列番号10)であった。オリゴヌクレオチドである4460−4494ASのDNA配列は、5’−AGCAGGATGAACCGGG/i5NitInd/CAGGGATTGCAGGCTCAC−3’(配列番号11)[配列中、「/i5NitInd/」は、5−ニトロインドール−2’デオキシリボース残基である。]であった。この文脈において、5−ニトロインドールは、グアニンテトラッドの形成を防止し、ユニバーサル塩基として用いられることが意図される。オリゴヌクレオチドである4460−4494AS−T8のDNA配列は、5’−TTTTTTTTAGCAGGATGAACCGGG/i5NitInd/CAGGGATTGCAGGCTCAC−3’(配列番号12)[配列中、「/i5NitInd/」は、5−ニトロインドール−2’デオキシリボース残基である。]であった。この文脈において、5−ニトロインドールは、グアニンテトラッドの形成を防止し、ユニバーサル塩基として用いられることが意図される。オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S、4460−4494AS、4496−4509AS及び4460−4494AS−T8は、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)により、合成及び解析された(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。オリゴヌクレオチドは、TE緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA)中において、100μMへと調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S及び4496−4509ASを、アニーリング緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。1塩基のギャップを含むdsDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S、4496−4509AS及び4460−4494ASを、アニーリング緩衝液を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。5’オリゴdTフラップ及び1塩基のギャップを含むdsDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S、4496−4509AS及び4460−4494−AS−T8を、アニーリング緩衝液を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックを、ベンチトップへと移して、周囲温度へと、徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。E.コリーDNAポリメラーゼのクレノウ(3’→5’exo(−))断片は、Enzymatics(Beverly、MA;型番P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)は、Ambion(Foster City、CA)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液へと希釈した(50nM)。結合緩衝液は、20mMのトリス、pH 8.0、300mMのKCl、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。反応緩衝液は、50mMのKCl及び10mMのMgCl2を含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1つのdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードし(ウェル1つ当たり200μL)、PCR−grade mineral oil(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M8662)を適用した(ウェル1つ当たり75μL)。ストレプトアビジン(SA)バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5019)を、使用の前に、約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、結合緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、表示の通り、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)及び100μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP又はdCTP)を含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、dNTPの組込みのために反応緩衝液へと移した。バイオセンサーを、酵素又はマグネシウムを含まない反応緩衝液へと移した(解離相)。同様に、バイオセンサーを、表示の通り、循環的に個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)を含有する溶液へと移した。結合及び組込みのサイクルを、複数回にわたり反復して、シーケンシングについて評価した。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。
【0302】
手順からの結果を、
図11A〜11Cに示す。ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイにおいて、クレノウexo(−)は、個々の適正なdNTPの存在下において結合ピークをもたらしたが、不適正なdTTPヌクレオチドによる結合ピークはもたらさなかった(
図11A、暗色の出力波形)。これに対し、一貫してフラットな結合応答により示される通り、陰性対照(dNTPを伴わない酵素)は、結合しなかった(
図11A、グレーの出力波形)。したがって、クレノウexo(−)は、CAGCAG(C?)A(配列番号13)の配列をもたらしたが、これは、予測された配列(CAGCAGGA(配列番号1))と、88%同一である。アンチセンスプライマーと、下流のアンチセンス鎖との間に1塩基のギャップを含むdsDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイにおいて、クレノウexo(−)は、第1の、個々の適正なdCTPヌクレオチドの存在下に限り、結合ピークをもたらした(
図11B、暗色の出力波形)。一貫してフラットな結合応答により示される通り、陰性対照(dNTPを伴わない酵素)は、結合しなかった(
図11B、グレーの出力波形)。したがって、クレノウexo(−)は、ギャップの第1の塩基が、適正なヌクレオチドにより満たされた「C」の配列をもたらした。しかし、後続のサイクルにおいて、二本鎖DNA領域へのさらなる結合又は重合化はブロッキングされている。さらなるシーケンシングのブロッキングは、クレノウexo(−)の、5’−3’エキソヌクレアーゼドメインの固有の欠如(ニックトランスレーションの場合)又は下流におけるDNAの二本鎖螺旋を破壊(鎖置換)できないことのためである可能性が高い。こうして、5’オリゴdTフラップを導入して、鎖置換のために、クレノウexo(−)に対する、より良好な基質をもたらした。バイオセンサーを、アンチセンスプライマーと下流のアンチセンス鎖との間に1塩基のギャップを含む5’オリゴdTフラップを有する、dsDNAプライマー−鋳型によりコーティングした。クレノウexo(−)は、サイクル1の1塩基のギャップ(C)において結合ピークをもたらしたが、dsDNA領域においてもさらなる結合ピークが観察され、サイクル2、3及び5について、配列であるAGCをもたらした(
図11C、暗色の出力波形)。不適正なdNTPを含むサイクル4、6、7及び8は、固定されたDNAへの酵素の結合をもたらさなかった(
図11C)。フラットな結合応答により示される通り、陰性対照(dNTPを伴わない酵素)は、結合しなかった(
図11C、グレーの出力波形)。したがって、クレノウexo(−)は、ギャップの第1の塩基が適正なヌクレオチドにより満たされた、100%の適正な「CAGC」の配列をもたらし、3つのさらなる塩基の二本鎖DNA領域へのさらなる結合又は重合化が、観察された。二本鎖DNA領域と隣接する5’フラップは、クレノウexo(−)が、鎖置換によりシーケンシングすることを可能とした(
図11C)が、5’フラップの欠如は、dsDNA領域へのシーケンシングをブロッキングした(
図11B)。これらの結果は、鎖置換機構により、DNAポリメラーゼのクレノウexo(−)断片を使用して、二本鎖DNAをシーケンシングする能力を裏付ける。
【0303】
実施例12は、グルタミン酸アニオンの、シーケンシング反応に対する効果について探索した手順について記載する。
【0304】
[実施例12]
一本鎖DNAシーケンシングに対する、アニオンの効果
ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S(配列番号9)及び4496−4509AS(配列番号10)を、アニーリング緩衝液(10mMのトリスpH 8.0、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックを、ベンチトップへと移して、周囲温度へと、徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。E.コリーDNAポリメラーゼのクレノウ(3’→5’exo(−))断片を、Enzymatics(Beverly、MA;型番P7010−LC−L)から購入した。グルタミン酸カリウムを、(Teknova、Hollister、CA;型番P2000)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)を、Ambion(Foster City、CA)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。結合緩衝液は、20mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、300mMのKCl、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。反応緩衝液は、50mMのKCl及び10mMのMgCl2を含有する結合緩衝液であった。試験した各レベルのグルタミン酸カリウムについて、0、50、100又は200mMのグルタミン酸カリウムを含有するように、結合緩衝液を調製した。反応緩衝液は、グルタミン酸カリウムを含有しなかった。Octet QKバイオセンサーシステムを、実施例11において記載された通りに設定し、バイオセンサーを、表示の通り、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)及び100μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP又はdCTP)を含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、dNTPの組込みのために反応緩衝液へと移した。バイオセンサーを、酵素を含まずマグネシウムを含有する反応緩衝液へと移した(解離相)。バイオセンサーを、酵素又はdNTPを含まずそれぞれの濃度のグルタミン酸カリウムを含有する結合緩衝液へと移して、再平衡化させた。同様に、バイオセンサーを、表示の通り、循環的に、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)を含有する溶液へと移した。結合及び組込みのサイクルを、複数回にわたり反復して、シーケンシングについて評価した。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。
【0305】
手順の結果を、
図12A〜12Cに示す。ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイにおいて、クレノウexo(−)(グルタミン酸塩を伴わないKCl)は、200mMのグルタミン酸塩を含有するKCl中の酵素と同様に、適正なヌクレオチドを使用して、シーケンシングのための結合ピークをもたらした(
図12A、それぞれ、点線及び実線)。しかし、グルタミン酸塩を含まない緩衝液は、200mMのグルタミン酸塩を含む処方物と比較して、バックグラウンドの増大と組み合わされた、結合ピークの振幅の減少を呈した(
図12A)。適正な配列は、KCl及び200mMのグルタミン酸塩による処方物中において、8.25時間の時間経過にわたり、相対ピーク高に従い、酵素及び適正なdNTPを含有する混合物について観察された(不適正なdNTPを含有する混合物については観察されなかった)(
図12A)。ホモポリマーのランは、これらの条件下において、単一のピークとして検出されると考えられる(
図12A、12B及び12C)。KCl及び100mMのグルタミン酸塩を含有する緩衝液中において、適正な配列が、酵素及び適正なdNTPについて、7時間の経過にわたり強いピークシグナルにより観察されたのに対し、対照(dNTPを含まない酵素)は、ピークをもたらさず、バックグラウンドの漸進的な増大をもたらした(
図12B)。KCl及び50mMのグルタミン酸塩を含有する緩衝液が、7時間の経過にわたり適正な配列を示すのに対し、dNTPを含まない対照酵素は結合ピークをもたらさず、フラットであり、安定的なバックグラウンドをもたらした(
図12C)。これらの結果は、DNAポリメラーゼのクレノウexo(−)断片を使用して、一本鎖DNAをシーケンシングする能力が、グルタミン酸カリウムにより増強され、ミネラルオイルの重層物により、蒸発から保護されることを裏付ける。
【0306】
実施例13は、ssDNA又はdsDNA鋳型を使用して、類似する配列の存在下における、少量の突然変異体配列の検出を裏付けるのに使用した手順について記載する。
【0307】
[実施例13]
一本鎖DNA及び二本鎖5’フラップDNAをシーケンシングすることによる、野生型バックグラウンド内の点突然変異の検出
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。3’反転dTを含む鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509SのDNA配列は、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号9)であった。3’反転dTのDNA配列を含む鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509SC4493Aは、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGATGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号21)であった。プライマーオリゴヌクレオチドである4496−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTC−3’(配列番号10)であった。オリゴヌクレオチドである4460−4494AS−T8のDNA配列は、5’−TTTTTTTTAGCAGGATGAACCGGG/i5NitInd/CAGGGATTGCAGGCTCAC−3’(配列番号12)[配列中、「/i5NitInd/」は、5−ニトロインドール−2’デオキシリボース残基である。]であった。この文脈において、5−ニトロインドールは、グアニンテトラッドの形成を防止し、ユニバーサル塩基として用いられることが意図される。オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S、Btn−4460−4509S C4493A、4496−4509AS及び4460−4494AS−T8は、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)により、合成及び解析された(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。オリゴヌクレオチドは、TE緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA)中において、100μMへと調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S(又はC4493A)及び4496−4509ASを、アニーリング緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。5’オリゴdTフラップ及び1塩基のギャップを含むdsDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S(又はC4493A)、4496−4509AS及び4460−4494−AS−T8を、アニーリング緩衝液を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックを、ベンチトップへと移して、周囲温度へと徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。E.コリーDNAポリメラーゼのクレノウ(3’→5’exo(−))断片を、Enzymatics(Beverly、MA;型番P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及びUltraPure Salmon Sperm DNA Solutionを、Life Technologies(Foster City、CA)から購入した。硫酸ニッケル(II)六水和物(型番467901)、dCDP、dGDP及びdTDPを、Sigma(St.Louis、MO)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液へと希釈した(50nM)。洗浄緩衝液は、20mMのトリス、pH 8.0、200mMのKCl、200mMのグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。結合緩衝液は、2.0mMのNi(II)SO4を含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、20mMのトリス、pH 8.0、50mMのKCl、MgCl2(10mM)、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。EDTA洗浄緩衝液は、100μMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1つのdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードし(ウェル1つ当たり200μL)、PCR−grade mineral oil(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M8662)を適用した(ウェル1つ当たり75μL)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5117)を、使用の前に、約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、洗浄緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、表示の通り、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)、Ni(II)SO4(1.5mM)及び100μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP又はdCTP)を含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、MgCl2(10mM)を含有する反応緩衝液中においてdNTPの組込みを行った(解離相)。バイオセンサーを、EDTA洗浄緩衝液へと移し、続いて、酵素、ヌクレオチド又は二価カチオンを伴わない反応緩衝液中において、再平衡化を行った。同様に、バイオセンサーを、表示の通り、循環的に、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)を含有する溶液へと移した。結合及び組込みのサイクルを、各dNTPについて反復して、シーケンシングについて評価した。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。
【0308】
手順の結果を、
図13A〜13Cに示す。ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイのサイクル1〜2の、適正なdNTPの存在下において、クレノウexo(−)酵素は、バイオセンサーに強く結合した(
図13A)。サイクル3における「G」ピークは、濃度を増大させるALK野生型鋳型を含有する混合物中のピーク高の増大を示す(
図13A)。サイクル4における「T」ピークは、濃度を増大させるALK C4493A突然変異を含有する混合物中のピーク高の増大を示す。サイクル4における「T」リードアウトは、C4493A突然変異体のアンチセンスヌクレオチドに対応する。ALK野生型及びC4493A鋳型のいずれも、サイクル5及び6における「C」及び「A」の最高のピークをもたらす。ピークは、ALK野生型(CAGCA)及びALK C4493A(CATCA)に適正な配列を、
図13Aに示す。シーケンシング時のピーク強度は、野生型配列を含む混合物中の突然変異体対立遺伝子の定量化を可能とする。サイクル4のピーク(T)の強度は、ssDNA(
図13B)及びdsDNAフラップ(
図13C)について、ALK野生型バックグラウンド内の、ALK C4493A突然変異体配列の数量と比例した。同様に、サイクル3のピーク(G)は、ssDNA鋳型内の突然変異体濃度の増大と共に、直線的に低下し(
図13B)、ピーク3の強度は、dsDNAフラップ鋳型の突然変異体濃度と共に減少した(
図13C)。野生型バックグラウンド内の、5%という少量の突然変異体配列も、ssDNA鋳型内又はdsDNAフラップ鋳型内において検出することができた。
【0309】
実施例14は、異なる二価カチオンによる三元複合体の安定化を裏付けるのに使用した手順について記載する。
【0310】
[実施例14]
三元複合体の安定化及びポリメラーゼの触媒に対する、二価カチオンの効果
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。3’反転dTのDNA配列を含む鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S C4493Aは、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGATGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号21)であった。プライマーオリゴヌクレオチドである4496−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTC−3’(配列番号10)であった。オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S C4493A及び4496−4509ASは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)により、合成及び解析された(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。オリゴヌクレオチドは、TE緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA)中において、100μMへと調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S C4493A及び4496−4509ASを、アニーリング緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックを、ベンチトップへと移して、周囲温度へと、徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。E.コリーDNAポリメラーゼのクレノウ(3’→5’exo(−))断片を、Enzymatics(Beverly、MA;型番P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及びUltraPure Salmon Sperm DNA Solutionを、Life Technologies(Foster City、CA)から購入した。塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マンガン、塩化バリウム、塩化コバルト、塩化亜鉛、塩化銅(II)、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸ニッケル(II)六水和物、dCDP、dGDP及びdTDPを、Sigma(St.Louis、MO)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液へと希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、20mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、50mMのKCl、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。結合緩衝液は、20mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、200mMのKCl、200mMのグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。反応緩衝液は、20mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、50mMのKCl、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトール及び表示の二価カチオンであった。EDTA洗浄緩衝液は、100μMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1つのdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードし(ウェル1つ当たり200μL)、PCR−grade mineral oil(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M8662)を適用した(ウェル1つ当たり75μL)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5117)を、使用の前に約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、洗浄緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。組み込まれなかったプライマー/鋳型の初期レベルを測定するため、バイオセンサーを、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)、SrCl2(2.0mM)及び100μMのdCTPを含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、MgCl2を伴わずに、SrCl2(2.0mM)及びサケ精子DNAトラップ(500μg/mL)を含有する洗浄緩衝液へと移した。センサーを、MgCl2を伴わずに、サケ精子DNAトラップ(500μg/mL)を含有する洗浄緩衝液へと移し、続いて、EDTA洗浄緩衝液へと移し、結合緩衝液中において、再平衡化を行った。組み込まれなかったプライマー/鋳型への結合を測定し、二価カチオン非含有の結合緩衝液中の、三元複合体の安定性をモニタリングした。バイオセンサーを、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)、CoCl2(1.0mM)又は表示の二価カチオン(2.0mM)及び100μMのdCTPを含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、MgCl2を伴わずに、同じ濃度の、同じ二価カチオン及びサケ精子DNAトラップ(500μg/mL)を含有する洗浄緩衝液へと移した。センサーを、MgCl2を伴わずに、サケ精子DNAトラップ(500μg/mL)を含有する洗浄緩衝液へと移し、続いて、EDTA洗浄緩衝液へと移し、結合緩衝液中において、再平衡化を行った。dNTPを含まず多様な二価カチオンを含有する結合緩衝液中の、三元複合体の安定化を測定した。バイオセンサーを、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)、CoCl2(1.0mM)又は表示の二価カチオン(2.0mM)及び100μMのdCTPを含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、MgCl2を伴わずに、同じ二価カチオン及びサケ精子DNAトラップ(500μg/mL)を含有する洗浄緩衝液へと移した。センサーを、10mMのMgCl2を伴い、サケ精子DNAトラップ(500μg/mL)を含有する洗浄緩衝液へと移し、続いて、EDTA洗浄緩衝液へと移し、結合緩衝液中において、再平衡化を行った。最後に、組み込まれなかった、残りのプライマー/鋳型を測定することにより、ヌクレオチドの組込みを決定した。バイオセンサーを、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)、SrCl2(2.0mM)及び100μMのdCTPを含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、MgCl2を伴わずに、SrCl2(2.0mM)及びサケ精子DNAトラップ(500μg/mL)を含有する洗浄緩衝液へと移した。センサーを、MgCl2を伴わずに、サケ精子DNAトラップ(500μg/mL)を含有する洗浄緩衝液へと移し、続いて、EDTA洗浄緩衝液へと移し、結合緩衝液中において、再平衡化を行った。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。
【0311】
手順の結果を、
図14A〜14Bに示す。ポリメラーゼ及びdCTPの、ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合について、アッセイを実施した。第1の非触媒性サイクルの、適正なヌクレオチド(dCTP)及びSrCl2の存在下において、クレノウexo(−)酵素は、バイオセンサーに強く結合したが、これに続く洗浄により、ベースラインに戻った(
図14A、ピーク1)。第2の(非触媒性)サイクルの、Ni(II)SO4、BaCl2及びSrCl2の存在下において、センサーに、酵素及びdCTPが強く結合したが、EDTAの存在下においては、結合しなかった(
図14A、ピーク2〜3)。Ni(II)SO4を含有する洗浄緩衝液は、三元複合体を、10分間の経過にわたり安定化させる(
図14A、ピーク2〜3)。Mg2+の存在下において、シグナルは弱まる(
図14A、ピーク3の解離)が、これは、Sr2+により媒介された、クレノウexo(−)及びdCTPの、低レベルの結合により証拠立てられた組込みに対応する(
図14A、ピーク4)。これらの結果は、能力Ni2+が、dNTPを欠く緩衝液中の、クレノウexo(−)、dNTP及びssDNAプライマー/鋳型の三元複合体を安定化させ、この安定化が、DNAポリメラーゼによる、酵素的なヌクレオチドの組込みに適合性であることを裏付ける。クレノウexo(−)は、マグネシウムイオン以外の、代替的な二価カチオンの存在下において、ポリメラーゼ活性を呈する。ポリメラーゼ及びdCTPの、ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合について、アッセイを実施した。第1の非触媒性サイクルの、適正なヌクレオチド(dCTP)及びSrCl2の存在下において、クレノウexo(−)酵素はバイオセンサーに強く結合したが、これに続く洗浄により、ベースラインに戻った(
図14B、ピーク1)。第2の結合サイクルの、SrCl2又は硫酸アンモニウムの存在下において、センサーに、酵素及びdCTPが強く結合した(
図14B、ピーク2〜3)。しかし、いくつかの二価カチオン(Cu2+、Ca2+、Co2+、Fe2+、Zn2+)は、結合緩衝液中のクレノウexo(−)及びdCTPによる、固定されたプライマー/鋳型への結合について、一過性のピークを示した(
図14B、ピーク2)。一過性のピーク(Ca2+、Co2+、Fe2+、Zn2+)又はフラットなピーク(Mn2+)の消失の後、同じ二価カチオン及びサケ精子DNAトラップ又はトラップ単独を含有する洗浄緩衝液は、
図14A中の結合シグナル(ピーク2)を、さらに弱めることがなかった(ベースラインへと戻ったCa2+を除く)。サイクル3において、バイオセンサーの、酵素、dCTP及び二価カチオンであるCa2+、Co2+、Fe2+、Zn2+への第2の曝露は、感知可能な結合を呈せず(
図14B、ピーク3)、標準的なSr2+により媒介された結合対照も、感知可能な結合を呈しなかった(
図14B、ピーク4)。Cu2+への第2の曝露(
図14B、ピーク3)は、第1のCu2+への結合(
図14B、ピーク2)より低度であったので、より小さな程度であるが、Cu2+もまた、クレノウexo(−)によるポリメラーゼ活性を増強すると考えられる。酵素及びdNTPへの第1の曝露の後における、二価カチオン(Ca2+、Co2+、Fe2+、Zn2+、Mn2+)についての結合シグナルのこの欠如及びSr2+により媒介された対照条件が結合を支援できなかったことは、Mg2+の非存在下において、ある特定の二価カチオン(Ca2+、Co2+、Fe2+、Zn2+、Mn2+)を使用して、完全なヌクレオチドの組込みが達成されたことを示唆し、これらの一過性のピークは、DNAのシーケンシングに使用されうることを示唆する。
【0312】
実施例15は、Co2+二価カチオンを利用する手順について記載する。
【0313】
[実施例15]
CoCl
2により媒介される結合及び触媒を使用する、一本鎖DNAのシーケンシングによる長いリード長
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。鋳型オリゴヌクレオチドphiX_100mismatchのDNA配列は、ビオチン−5’−GGCAAATCACCAGAAGGCGGTTCCTGAATGAATGGGAAGCCTTCAAGAA−GGTGATAAGCAGGAGAAACATACGAAGCATCATAACGATACCACTGACCC−3’(配列番号22)であった。プライマーオリゴヌクレオチドであるFP2のDNA配列は、5’−GAGGGTCAGTGGTATCGTTATG−3’(配列番号5)であった。オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)により、合成及び解析された(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。オリゴヌクレオチドは、TE緩衝液(10mMのトリスpH 8.0、0.1mMのEDTA)において、100μMへと調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドである「phiX_100mismatch」及び「FP2」を、アニーリング緩衝液(10mMのトリスpH 8.0、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックをベンチトップへと移して、周囲温度へと徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。E.コリーDNAポリメラーゼのクレノウ(3’→5’exo(−))断片を、Enzymatics(Beverly、MA;型番P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及びUltraPure Salmon Sperm DNA Solutionを、Life Technologies(Foster City、CA)から購入した。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDPK)酵素(型番N0379)、アデノシン二リン酸(ADP)及び塩化コバルト(II)六水和物(型番255599)を、Sigma(St.Louis、MO)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液へと希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、20mMのトリス、pH 8.0、200mMのKCl、200mMのグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。結合緩衝液は、低CoCl2(0.050mM)を含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、高CoCl2(15mM)を含有する結合緩衝液であった。EDTA洗浄緩衝液は、1.0mMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1つのdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードし(ウェル1つ当たり200μL)、PCR−grade mineral oil(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M8662)を適用した(ウェル1つ当たり75μL)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5117)を、使用の前に約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、洗浄緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、表示の通り、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)、CoCl2(100μM)及び100μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP又はdCTP)を含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、CoCl2(15mM)、NDPK、ADP(1mM)及びサケ精子DNA(500μg/mL)を含有する反応緩衝液中において、dNTPの組込みを行った(解離相)。バイオセンサーを、EDTA洗浄緩衝液へと移し、続いて、酵素、ヌクレオチド又は二価カチオンを含まない反応緩衝液中において、再平衡化を行った。同様に、バイオセンサーを、表示の通り、循環的に、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)を含有する溶液へと移した。結合及び組込みの、二連のサイクルを、各dNTPについて反復して、シーケンシングについて評価した。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。
【0314】
手順の結果を、
図15に提示する。ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイの、dNTPの非存在下において、クレノウ(exo(−))酵素は、バイオセンサーにほとんど結合しなかった(
図15、網掛けバー)。適正な個々のdNTPの存在下において、最初の40サイクルについて、強いピークが観察されたが(
図15、黒色バー)これは、各ホモポリマーが、単一のピークへと圧縮されることを仮定すると、最初の30ヌクレオチドについて、100%の適正なDNA配列に対応する。その後、サイクル41以降において、小さなピーク高が観察されたが、これは、識別可能な配列に対応しなかった。これらの結果は、DNAポリメラーゼのクレノウexo(−)断片を使用して、精査相において、低Co2+濃度により媒介される酵素−dNTP−プライマー/鋳型の三元複合体の結合に続く、高Co2+濃度の存在下において、dNTPの組込みにより、二本鎖DNAをシーケンシングする能力を裏付ける。
【0315】
実施例16は、伸長させた配列の決定を裏付けるのに使用された手順について記載する。下記において示される通り、結果は、DNAポリメラーゼ(クレノウexo(−)断片)を使用して、一本鎖DNAをシーケンシングする能力であって、精査相における酵素−dNTP−プライマー/鋳型三元複合体の結合を、二価非触媒性カチオン(すなわち、Ni2+)により安定化させた場合の能力を確認した。その後、二価の触媒性カチオン(すなわち、MgCl2)との交換を介して、コグネイトdNTPを、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへと組み込んだ。
【0316】
[実施例16]
ポリメラーゼトラップ及びdNTPスカベンジング酵素の存在下において、ニッケルにより増強された結合、マグネシウムの交換及び触媒を使用する、一本鎖DNAのシーケンシングによる長いリード長
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。3’反転dTのDNA配列を含む鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S C4493Aは、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGATGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号21)であった。プライマーオリゴヌクレオチドである4496−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTC−3’(配列番号10)であった。オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)により、合成及び解析された(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。オリゴヌクレオチドは、TE緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA)中において、100μMへと調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドである「Btn−4460−4509S C4493A」及び「4496−4509AS」を、アニーリング緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックをベンチトップへと移して、周囲温度へと徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。E.コリーDNAポリメラーゼのクレノウ(3’→5’exo(−))断片を、Enzymatics(Beverly、MA;型番P7010−LC−L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及びUltraPure Salmon Sperm DNA Solutionを、Life Technologies(Foster City、CA)から購入した。サッカロミセス・セレビシエヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDPK)酵素(型番N0379)、アデノシン二リン酸(ADP)及び硫酸ニッケル(II)六水和物(型番467901)を、Sigma(St.Louis、MO)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液へと希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、20mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、200mMのKCl、200mMのグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。結合緩衝液は、2.0mMのNi(II)SO4を含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、MgCl2(10mM)を含有する結合緩衝液であった。EDTA洗浄緩衝液は、1.0mMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1つのdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードし(ウェル1つ当たり200μL)、PCR−grade mineral oil(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M8662)を適用した(ウェル1つ当たり75μL)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5117)を、使用の前に約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。OCTET(登録商標)QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、洗浄緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、表示の通り、クレノウexo(−)(1mL当たり68単位)、Ni(II)SO4(2.0mM)及び100μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP又はdCTP)を含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、MgCl2(10mM)、NDPK、ADP(1mM)及びサケ精子DNA(500μg/mL)を含有する反応緩衝液中において、dNTPの組込みを行った(解離相)。バイオセンサーを、EDTA洗浄緩衝液へと移し、続いて、酵素、ヌクレオチド又は二価カチオンを含まない反応緩衝液中において、再平衡化を行った。同様に、バイオセンサーを、表示の通り、循環的に、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)を含有する溶液へと移した。結合及び組込みの二連のサイクルを、各dNTPについて反復して、シーケンシングについて評価した。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。
【0317】
手順の結果を、
図16に示す。ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイの、dNTPの非存在下において、クレノウ(exo(−))酵素は、バイオセンサーにほとんど結合しなかった(
図16、「クレノウ」)。適正な個々のdNTPの存在下において強いピークが観察されたが(
図16、「クレノウ+dNTP」)これは、各ホモポリマーが、単一のピークへと圧縮されると仮定すると、最初の32ヌクレオチドについて、100%の適正なDNA配列(CATCAGGATGAACCGGGGCAGGGATTGCAGGC(配列番号23))に対応する。750分後、シグナルは、最小となり、最後の4つのヌクレオチド(TCAC)について、識別可能な配列をもたらさなかった。ホモポリマーの圧縮は、反応緩衝液中の、1つを超えるdNTPを組み込むポリメラーゼから生じうる。単一ターンオーバーの組込みを支援するように意図された条件により、2つの方法を利用して、ホモポリマーの圧縮を防止した。第1に、遊離クレノウが、プライマー/鋳型に再結合し、第2のdNTPを組み込むことをブロッキングするために、一部の反応緩衝液は、過剰量のサケ精子DNAを、ポリメラーゼトラップとして含有した。第2に、反応緩衝液中の遊離dNTPが、クレノウ−プライマー/鋳型複合体に再結合し、新生鎖へと酵素的に組み込まれることを防止するため、dNDPがポリメラーゼにより組み込まれえないように、NDPK及びADPを含有する反応緩衝液は、遊離dNTPを、dNDP及びATPへと転換することを意図した。三元複合体を、会合相において形成し、これに続き、反応緩衝液中において解離させた。ポリメラーゼトラップを含有する反応緩衝液は、解離の振幅を超える結合の振幅により証拠立てられる、バイオセンサーチップ上の蓄積を裏付けた(
図16、「クレノウ+dNTP」)。これに対し、NDPK及びADPを含有する反応緩衝液は、解離に続き、ベースラインへの分解(baseline resolution)をもたらしたことから、解離相は、完了したことが示唆される(
図16、「NDPK+ADP+クレノウ+dNTP」)。これらの結果は、シーケンシングの、キャッピングされた非生産的な終結を生じる、ポリメラーゼ−プライマー/鋳型複合体への再結合におけるdNTPの役割を示唆する。NDPK及びADPを含有する反応緩衝液は、触媒時において、遊離dNTPのプールを枯渇させることにより、これらの非生産的なキャッピング生成物を防止すると考えられる。ホモポリマーの圧縮は、サケ精子DNA、NDPK及びADPの存在下においてもなお観察されたので、単一ターンオーバーの組込みは達成されず、予測配列(CATCAGGATGAACCGGGGCAGGGATTGCAGGCTCAC(配列番号24))は、
図16において示される通り、連続的なジヌクレオチド(GG、AA、CC又はTT)、トリヌクレオチド(GGG)又はテトラヌクレオチド(GGGG)を含まない、CATCAGATGACGCAGATGCAGC(配列番号25)として検出された。
【0318】
実施例17は、前出の実施例において利用されたポリメラーゼと異なるポリメラーゼを使用して伸長させた配列の決定を裏付けるのに使用された手順について記載する。下記において示される通り、結果は、Bsu Pol I(大型断片)を使用して、一本鎖DNAをシーケンシングする能力であって、精査相における酵素−dNTP−プライマー/鋳型三元複合体の結合を、二価非触媒性カチオン(すなわち、Ni2+)により安定化させた場合の能力を確認した。その後、二価の触媒性カチオン(すなわち、MgCl2)との交換を介して、コグネイトdNTPを、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへと組み込んだ。反応緩衝液中の競合的dNDPを使用することにより、ホモポリマーの分解を改善した。
【0319】
[実施例17]
ポリメラーゼトラップ及び2’−デオキシリボヌクレオシド二リン酸の存在下において、ニッケル(II)により増強された結合、マグネシウムの交換及び触媒を使用する、一本鎖DNAのシーケンシングによるホモポリマーの分解
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。3’反転dTのDNA配列を含む鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509S C4493Aは、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGATGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号21)であった。プライマーオリゴヌクレオチドである4496−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTC−3’(配列番号10)であった。オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)により、合成及び解析された(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。オリゴヌクレオチドは、TE緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA)中において、100μMへと調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドである「Btn−4460−4509S C4493A」及び「4496−4509AS」を、アニーリング緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックを、ベンチトップへと移して、周囲温度へと、徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)に由来するBsu DNAポリメラーゼI(大型断片)であって、エキソヌクレアーゼ活性を欠くBsu DNAポリメラーゼI(大型断片)を、New England Biolabs(Ipswich、MA;型番M0330L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及びUltraPure Salmon Sperm DNA Solutionを、Life Technologies(Foster City、CA)から購入した。硫酸ニッケル(II)六水和物(型番467901)、dCDP、dGDP及びdTDPを、Sigma(St.Louis、MO)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液へと希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、20mMのトリス、pH 8.0、200mMのKCl、200mMのグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。結合緩衝液は、2.0mMのNi(II)SO4を含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、20mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、50mMのKCl、MgCl2(10mM)、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。EDTA洗浄緩衝液は、1.0mMのEDTAを含有する結合緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、1つのdNTPを含有する結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードし(ウェル1つ当たり200μL)、PCR−grade mineral oil(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M8662)を適用した(ウェル1つ当たり75μL)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5117)を、使用の前に約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、洗浄緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、表示の通り、Bsu Pol I(1mL当たり68単位)、Ni(II)SO4(1.0mM)及び100μMのdNTP(dATP、dTTP、dGTP又はdCTP)を含有する結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、MgCl2(10mM)、サケ精子DNA(500μg/mL)及び対応するdNDP(使用されなかったdADPを除く)を含有する反応緩衝液中において、dNTPの組込みを行った(解離相)。バイオセンサーを、EDTA洗浄緩衝液へと移し、続いて、酵素、ヌクレオチド又は二価カチオンを伴わない反応緩衝液中において、再平衡化を行った。同様に、バイオセンサーを、表示の通り、循環的に、個々のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)を含有する溶液へと移した。結合及び組込みのサイクルを、各dNTPについて反復して、シーケンシングについて評価した。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。
【0320】
手順の結果を、
図17A〜17Bに提示する。ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイの、適正なdNTPの存在下において、Bsu Pol I酵素は、バイオセンサーに強く結合した(
図17A)。反応緩衝液が、過剰量のdNDP(3.0mM)を含有する場合のシグナルピークは、適正なDNA配列であるCATCAGGに対応し、ホモポリマーである2つのGGは分解されて、2つの顕著に異なるピークの検出により示される(
図17A、矢印)。これに対し、反応緩衝液のdNDPを欠く対照では、GGホモポリマーが単一のGピークへと圧縮されたと仮定すると適正なDNA配列であるCATCAGGATに対応するシグナルピークにおいて、ホモポリマーの分解の失敗が観察された(
図17A、「対照」)。dNDPの、ホモポリマーの分解に対する効果を、次の2つの手段により検証した:(1)GGジヌクレオチドの第2のGピークの高さが、dNDPの、反応緩衝液中濃度に依存すること(
図17A、第2の矢印);及び(2)GGホモポリマーに続く次のヌクレオチド(A及びT)のピーク高が、dNDPの、反応緩衝液中濃度と逆相関すること。ホモポリマーの圧縮は、反応緩衝液中の、1つを超えるdNTPを組み込むポリメラーゼから生じうる。単一ターンオーバーの組込みを支援するように意図された条件により、2つの方法を利用して、ホモポリマーの圧縮を防止した。第1に、遊離Bsu Pol Iが、プライマー/鋳型に再結合し、第2のdNTPを組み込むことをブロッキングするために、反応緩衝液は、過剰量のサケ精子DNAを、ポリメラーゼトラップとして含有した。第2に、反応緩衝液中の遊離dNTPが、Bsu Pol−プライマー/鋳型複合体に再結合し、新生鎖へと酵素的に組み込まれることを防止するために、ポリメラーゼへの結合について遊離dNTPと競合するようにdNDPを含有する反応緩衝液は、Bsu Pol−プライマー/鋳型複合体に結合し、さらなる組込みをブロッキングするので、したがって、ホモポリマーの圧縮をブロッキングすることが予測される。GGホモポリマーの第2のピークが、第1のGピークの60.1%のサイズであり(
図17B)、ホモポリマーの圧縮による次の2つヌクレオチド(A及びT)についての結合が、それぞれ、73.4%及び92.0%低下した(
図17B)ので、単一ターンオーバーの組込みの目標は、ほぼ達成される。
【0321】
実施例18は、ホモポリマー配列の、分解反応速度を裏付けるのに使用された手順について記載する。下記において示される通り、結果は、2ステップ法を使用して、ホモポリマー鋳型への、単一及び複数の組込みを定量的に検出する能力に一致した。第1に、三元複合体の会合についての反応速度パラメータは、単一の組込み(ALK−G1)について、複数の組込み(ALK−G2、ALK−G3、ALK−G4)と比較して異なった。第2に、三元複合体によりコーティングされたバイオセンサーチップを、反応緩衝液へと移した後において、解離の初期速度(0〜8秒後)は、ホモポリマー鋳型(ALK−G2、ALK−G3、ALK−G4)内の、2つ、3つ又は4つのヌクレオチドの組込みを、定量的に識別することを可能とした。
【0322】
[実施例18]
2’−デオキシリボヌクレオシド二リン酸及び競合基質の存在下において、ニッケル(II)により増強された結合、マグネシウムの交換及び触媒を使用する、一本鎖DNAのシーケンシングによるホモポリマーの分解のための反応速度法
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。反転dTを含む野生型ALK3’鋳型オリゴヌクレオチドであるBtn−4460−4509SのDNA配列は、ビオチン−5’−GTGAGCCTGCAATCCCTGCCCCGGTTCATCCTGCTGGAGCTCATGGCGGG−3’−(3’−dT−5’)(配列番号7)であった。ALK−G1プライマーオリゴヌクレオチドである4494−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTCCA−3’(配列番号26)であった。ALK−G2プライマーオリゴヌクレオチドである4491−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTCCAGCA−3’(配列番号27)であった。ALK−G3プライマーオリゴヌクレオチドである4476−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTCCAGCAGGATGAACC/ideoxyI/GGGCA−3’(配列番号28)[配列中、「/ideoxyI/」は、2’−デオキシイノシン残基である。]であった。ALK−G4プライマーオリゴヌクレオチドである4482−4509ASのDNA配列は、5’−CCCGCCATGAGCTCCAGCAGGATGAACC−3’(配列番号29)であった。オリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)により、合成及び解析された(液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI))。オリゴヌクレオチドは、TE緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA)中において、100μMへと調製した。ssDNAプライマー/鋳型を調製するために、オリゴヌクレオチドである「Btn−4460−4509S」及び「4494−4509AS」、「4491−4509AS」、「4476−4509AS」又は「4482−4509AS」(それぞれ、ALK−G1、ALK−G2、ALK−G3又はALK−G4の二重鎖)を、アニーリング緩衝液(10mMのトリス緩衝液(pH 8.0)、0.1mMのEDTA、80mMのKCl)を含有する試験管中において(各鎖10μMずつ)組み合わせた。オリゴヌクレオチド溶液を含有する試験管を、乾燥ヒートブロックへとロードし(95℃5分間にわたり)、ブロックをベンチトップへと移して、周囲温度へと徐々に冷却することにより、鎖をアニールさせた。バチルス・スブチリスに由来するBsu DNAポリメラーゼI(大型断片)であって、エキソヌクレアーゼ活性を欠くBsu DNAポリメラーゼI(大型断片)を、New England Biolabs(Ipswich、MA;型番M0330L)から購入した。超高純度ウシ血清アルブミン(BSA)及びUltraPure Salmon Sperm DNA Solutionを、Life Technologies(Foster City、CA)から購入した。基質類似体である2’−デオキシアデノシン−5’−O−(1−チオ三リン酸)(「α−S−dATP」)、2’−デオキシシチジン−5’−O−(1−チオ三リン酸)(「α−S−dCTP」)、2’−デオキシグアノシン−5’−O−(1−チオ三リン酸)(「α−S−dGTP」)及び2’−デオキシチミジン−5’−O−(1−チオ三リン酸)(「α−S−dTTP」)を、TriLink Biotechnologies,Inc.(San Diego、CA)から購入した。硫酸ニッケル(II)六水和物(型番467901)を、Sigma(St.Louis、MO)から購入した。全ての試薬及び溶液は、分子生物学グレードであった。プライマー−鋳型二重鎖を、アニーリング緩衝液へと希釈した(100nM)。洗浄緩衝液は、30mMのトリス、pH 8.0、160mMのKCl、160mMのグルタミン酸カリウム、0.01%(v/v)のTween−20、100μg/mLのウシ血清アルブミン、1.0mMのジチオトレイトールであった。結合緩衝液は、Bsu Pol I(1mL当たり68単位)、100μMのdGTP+1.0mMのNi(II)SO4を含有する洗浄緩衝液であった。反応緩衝液は、Bsu(1U/mL)、MgCl2(80μM)、dGTP(28.1μM)、α−S−dGTP(162μM)を含有する洗浄緩衝液であった。EDTA洗浄緩衝液は、Ni(II)SO4を含まないが、1.0mMのEDTAを含有する洗浄緩衝液であった。プライマー−鋳型(PT)を含有する緩衝液、結合緩衝液及び反応緩衝液を、Greiner 96−well black microplate(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M9685)へとロードし(ウェル1つ当たり200μL)、PCR−grade mineral oil(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;型番M8662)を適用した(ウェル1つ当たり75μL)。高精度ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA;型番18−5117)を、使用の前に約10分間にわたり、アニーリング緩衝液中において再水和させた。Octet QKバイオセンサーシステム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)を、30℃の作動のために設定し、プライマー−鋳型によりバイオセンサーをコーティングし、洗浄緩衝液により結合しなかったプライマー−鋳型を洗い流すようにプログラムした。バイオセンサーを、結合緩衝液(会合相)へと移し、続いて、反応緩衝液中において、dNTPの組込みを行った(解離相)。バイオセンサーを、EDTA洗浄緩衝液へと移し、続いて、酵素、ヌクレオチド又はMgCl2を伴わない反応緩衝液中において、再平衡化を行った。提示のために、Octet干渉法測定器により生成されたモニタリングデータを、Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)へとインポートした。Prismソフトウェアを使用して、会合相の時系列を、単一の指数関数会合式へと当てはめた。会合相の反応速度パラメータ(ノブ及び振幅)を、Gの単一の組込みを対照状態とするダネットの検定を使用する、InStat統計学ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)により解析した。Prismソフトウェアを使用して、解離相の時系列を、二重の指数関数解離式へと当てはめた。
【0323】
手順の結果を、
図18A〜18Eに示す。ssDNAプライマー−鋳型によりコーティングされたバイオセンサーへの結合についてのアッセイにおいて、Bsu Pol I酵素は、適正なdGTPの存在下において、プライマー/鋳型によりコーティングされたバイオセンサーに強く結合した(
図18A及び18B)。ALK−G1への結合についてのシグナル(
図18A)は、ALK−G2、ALK−G3及びALK−G4への結合についてのシグナル(
図18A及び18B)より強かった。三元複合体によりコーティングされたバイオセンサーを、ポリメラーゼ、dGTP及びα−S−dGTP、Ni2+及びMg2+を含有する組込み緩衝液へと移した後において、ALK鋳型に応じて、顕著に異なる解離時間経過が観察された(
図18C)。三元複合体の形成についての会合相を、会合反応速度パラメータが、どのようにして、プライマー/鋳型のホモポリマーへの組込みのためのヌクレオチドの数の影響を受けうるのかについて解析した。ホモポリマーへの組込みのためのヌクレオチドが、複数(2つ〜4つ)であるプライマー/鋳型は、会合の振幅が、対照である単一の組込みより弱く(
図18D)、これは、ダネットの検定により、統計学的に有意(p<0.01)であった。同様に、ホモポリマーへの組込みのためのヌクレオチドが、複数(2つ〜4つ)であるプライマー/鋳型は、会合についての見かけの反応速度定数(knobs)が、対照である単一の組込みより大きく(
図18D)、これは、ダネットの検定により、統計学的に有意(p<0.01)であった。この知見は、ホモポリマー鋳型内の単一の組込みが、複数の組込みと、反応速度的に識別可能であることを示す。最後に、観察された解離速度(反応緩衝液へと移した0〜8秒後において)は、組込みのためのヌクレオチドの数の増大と共に、ALK−G2<ALK−G3<ALK−G4≒ALK−G1の順に増大するが、この場合、Bsuポリメラーゼの濃度は、0.13〜1U/mLの間である(
図18E)。
【0324】
実施例19は、ヌクレオチドの、プライミングされた鋳型核酸分子のプライマーへの化学的組込みの非存在下において、ポリメラーゼによる、適正なヌクレオチドと不適正なヌクレオチドとの弁別を最適化するために使用された手順について記載する。手順は、水溶液中に溶解して、一価のカチオンをもたらす塩を滴定することに焦点を当てた。ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子への結合は、コグネイトのヌクレオチド又は非コグネイトのヌクレオチドの存在下においてモニタリングした。手順は、二元複合体の形成を優先的に不安定化させた条件下における、ヌクレオチドの弁別の増強に焦点を当てた。
【0325】
[実施例19]
二元複合体の形成を優先的に不安定化させることを介する、ポリメラーゼによる、コグネイトのヌクレオチドと、非コグネイトのヌクレオチドとの弁別の増強
手順において使用された材料及び方法は、以下の通りであった。Biolayer干渉法を利用して、光ファイバーチップの表面における結合反応を測定するFORTEBIO(登録商標)(Menlo Park、CA)OCTET(登録商標)測定器を、マルチウェルプレートフォーマットにおいて使用して、二元複合体と三元複合体との示差的安定性について探索した。標準的な手順に従い、それらの5’末端においてビオチニル化された鋳型鎖を使用して、プライミングされた鋳型核酸を、ストレプトアビジン(SA)により機能化された光ファイバーチップへと固定させた。ビオチニル化された鋳型DNAから予測された配列リードは、86ヌクレオチドの潜在的なリード長を有し、この場合、プライマーへと付加される次の適正なヌクレオチドは、dCTPであった。サイクリングプロトコールを開始する前に、まず、チップを、30mMのトリス−HCl(pH 8.0)及び0.1mMのEDTAを含有するトリス緩衝溶液中において平衡化させた。2つの被験ヌクレオチド(すなわち、コグネイトのヌクレオチド及び非コグネイトのヌクレオチド)について独立の結合反応を、50mM〜500mMにおいて変動させた濃度のNaCl、KCl又はグルタミン酸カリウムの存在下において実行した。第4の試行は、160mMの固定濃度のグルタミン酸カリウムを使用して行ったが、KClの濃度は、50mM〜500mMにおいて変動させた。全ての場合に、精査ステップにおいて使用される反応混合物は、トリス−HCl(pH 8.0)、0.01%のTween−20、100μg/mlのBSA、2mMのNiSO4、350U/mlのBsu DNAポリメラーゼ大型断片及び濃度を100μMとするヌクレオチドのうちの1つ(dCTPを、コグネイトのヌクレオチドとして使用し、dGTPを、非コグネイトのヌクレオチドとして使用した)を含有した。各精査ステップに続き、チップを、30mMのトリス−HCl(pH 8.0)、500mMのKCl、2mMのEDTA及び0.05%のTween−20を含有する緩衝液へと、20秒間にわたり曝露して、酵素複合体を、プライミングされた鋳型核酸からはがした。ストリッピングステップに続き、酵素、dNTP又は二価カチオンを含まない精査緩衝液への、15秒間にわたる曝露であって、次の精査サイクルのために、チップを再生させる曝露を行った。単一の接触させるステップを使用して、ポリメラーゼ及びヌクレオチドのプライミングされた鋳型核酸への結合を行う場合、結合ステップは、45秒間であり、結合相互作用を、持続的にモニタリングした。これは、プライミングされた鋳型核酸を、ポリメラーゼ及び被験ヌクレオチドを含んだ単一の溶液と接触させることにより達せられた。干渉法によるモニタリングからの結果を解析して、三元複合体の形成(すなわち、コグネイトのヌクレオチドを同定すること)又は二元複合体(すなわち、非コグネイトのヌクレオチドを同定すること)を同定した。干渉法試験からの数値結果を、表5〜8に提示する。丸められた二元複合体についての測定値の一部は、表中において、0.00と見えるほどに低値であったが、なお増強倍数の計算が可能であった。
【0326】
【表5】
【0327】
【表6】
【0328】
【表7】
【0329】
【表8】
【0330】
表5〜8に提示された結果は、ヌクレオチドの組込みを回避した条件下において、一価のカチオンをもたらす塩が、どのようにして二元複合体の形成を優先的に不安定化させ、ポリメラーゼの弁別力を増強したのかを示した。結合反応混合物中の、一価のカチオン及びグルタミン酸イオンの実質的に全ては、添加された塩によりもたらされたので、緩衝液及び他の供給源からの一価のカチオンの寄与は、この解析に重要ではないと考えられた。結合シグナルを測定し、コグネイトのヌクレオチド又は非コグネイトのヌクレオチドの存在下において、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸との相互作用について比較した。また、これらの結果は、リードアウトとしてのヌクレオチドの組込みに依拠せずに、適正なヌクレオチドと不適正なヌクレオチドとを弁別する結合反応にもあてはまる。当然ながら、手順において使用されたヌクレオチドは、標識化される場合もあり、標識化されない場合もある。しかし、ヌクレオチドは、標識化されていない天然ヌクレオチドであることが好ましい。
【0331】
二元複合体の形成は、精査ステップにおいて使用された条件下において不安定化させた。一価のカチオンをもたらすモデル塩(例えば、NaCl、KCl及びグルタミン酸カリウム)による用量反応滴定は、同様に、二元複合体と三元複合体とが、添加された塩に対して、示差的に感受性であることを示した。塩濃度が増大するにつれ、二元複合体は、対応する三元複合体と比べて、次第に安定性が低下した。三元複合体(コグネイトのヌクレオチドの存在を示す)と二元複合体(非コグネイトのヌクレオチドの存在を示す)との弁別を増強するための濃度範囲の例は、一価のカチオンをもたらす、200mM〜500mMの塩であった。これらの値は、手順において有用であり、この場合、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子への結合は、ヌクレオチドのアイデンティティー(すなわち、非コグネイトと対比したコグネイト)の指標として用いられた。グルタミン酸カリウムについての用量反応滴定は、同様に、二元複合体と三元複合体との示差的安定性を示した。ここでもまた、添加されたグルタミン酸塩の濃度が増大するにつれ、二元複合体は対応する三元複合体と比べて、次第に安定性が低下した。グルタミン酸カリウムは、各グルタミン酸イオンについて、2つのカリウムイオンを含むので、カリウムイオンの反応混合物中濃度への寄与は、添加されたグルタミン酸塩の2倍の濃度であった。
【0332】
記載された手順の非組込み条件下であり、かつ、グルタミン酸塩の供給源の非存在下において、一価のカチオンを含有する塩の濃度であって、200mMを下回る濃度は、コグネイトのヌクレオチドの結合と非コグネイトのヌクレオチドの結合との、わずかな弁別をもたらした。しかし、ポリメラーゼ酵素は、これらの条件下において、高結合能を維持した。KCl又はNaCl単独の滴定は、二元複合体の形成の不安定化を示し、250mMを上回る濃度において、弁別倍数(fold−discrimination)が達成されるが、ポリメラーゼの結合活性の一部の喪失があることを示した。グルタミン酸カリウムもまた、二元複合体の形成を不安定化させ、被験濃度の実質的に全範囲にわたり、弁別力を増強した。結合によるシーケンシング手順を使用して長いリード長を得るために、適正な塩基判定を不適正な塩基判定から弁別する高シグナルは、標的鋳型の多くの塩基にわたり、維持されなければならない。弁別倍数を改善しながら、高結合能を維持する利益のために、50mM〜500mMにおいて、KClを滴定するときに、一定レベルのグルタミン酸塩(例えば、0mM、80mM、160mM及び320mM)を使用した。
【0333】
ポリメラーゼによる弁別力の増強は、重合化が回避された条件下において、グルタミン酸塩と共に、一価のカチオンをもたらした塩を組み合わせることから生じた。例えば、150mMのKCl又は150mMのグルタミン酸カリウムのときに、三元複合体の形成と二元複合体の形成との、わずかな弁別がみられた。しかし、2つの薬剤を組み合わせることは、弁別力を増強した。この効果を、一価のカチオン濃度又はグルタミン酸イオン濃度単独の増大に帰することはできなかった。精査ステップにおいて、二元複合体の形成を不安定化させるために好ましい条件は、一価のカチオンをもたらす塩を含み、この場合、塩の濃度は、50mM〜1,500mMの範囲、より好ましくは、50mM〜500mMの範囲に収まった。
【0334】
表5〜8からの結果についてのさらなる解析と共に、前出の記載と符合するさらなる手順を実行して、精査ステップにおいて、二元複合体を不安定化させるために有用な条件を、より良好な形において確立した。一価の金属カチオン(例えば、KCl)をもたらした塩による滴定は、塩が、約300mM〜350mMの濃度範囲にある場合に、三元複合体についてのシグナルと二元複合体についてのシグナルとの最大の差違(結合によるシーケンシング手順に関与するパラメータ)が生じたこと(表5を参照されたい)を示すプロットをもたらした。しかし、グルタミン酸塩(例えば、グルタミン酸カリウム)もまた組み入れたところ、低濃度範囲へのシフトが達成された。ここで、シグナルの間の差違は、一価のカチオン(例えば、一価の金属カチオン)をもたらす塩の範囲を、約100mM〜300mMとして、グルタミン酸塩を、80mM〜320mMの濃度において組み入れた場合に最も顕著であった。実際、シグナルの間の差違は、100mM〜200mMの範囲において、グルタミン酸塩を320mMとしたとき;150mM〜250mMの範囲において、グルタミン酸塩を160mMとしたとき(表8を参照されたい);及び175mM〜300mMの範囲において、グルタミン酸塩を80mMとしたときに最も顕著であった。三元複合体の二元複合体に対する、最大のシグナル比(弁別の有効性を測定する異なるパラメータ)は、グルタミン酸塩の非存在下において滴定を実行した場合、一価の金属カチオンをもたらす塩について約450mMを中心とした。滴定を組み合わせた場合の比は、一価の金属カチオンをもたらす塩が、200mM〜250mMの範囲において、グルタミン酸塩を320mMとし;350mM〜450mMの範囲において、グルタミン酸塩を160mMとし;275mM〜350mMの範囲において、グルタミン酸塩を80mMとする範囲に収まった場合に最も顕著であった。全ての場合に、最大の弁別比をもたらした、一価のカチオンをもたらす塩の濃度は、三元複合体を示すシグナルと二元複合体を示すシグナルとの最大の差違を達成するのに必要とされた濃度より、実質的に高濃度であった。実質的に、上記において引用された濃度(すなわち、75mM、150mM及び325mM)の、グルタミン酸塩単独(すなわち、KClを添加しない)を使用して行われた試験が、実質的に弁別力の増強を示さなかったこと又は極めて小幅な増強だけを示した(表7を参照されたい)ことは、注目に値する。添加された塩の非存在下において、精査ステップにおいて有用な条件を作り出すために要求されたグルタミン酸塩の濃度は、好ましくは、325mMより高濃度であった。
【0335】
Bst及びクレノウポリメラーゼを使用して行ったなおさらなる試験は、二元複合体の形成を、グルタミン酸塩及び/又は一価のカチオン(例えば、一価の金属カチオン)をもたらした塩を含んだ精査条件により、優先的に不安定化させたことを確認した。一般的に述べると、グルタミン酸カリウムの濃度を増大させるにつれ、二元複合体を不安定化させたKClの濃度を低下させえたが、やはり、良好な弁別結果が得られた。グルタミン酸カリウム濃度を500mMという高濃度としたところ、KClの添加を、完全に省略しえた(すなわち、添加されたKClの濃度は、0mMであった)が、やはり、適正なヌクレオチドと不適正なヌクレオチドとの、良好な弁別がもたらされた。同様に、クレノウポリメラーゼを使用して、グルタミン酸カリウム濃度を320mMとしたところ、25mMのKCl濃度により、目覚ましい結果が得られた。Bst酵素を使用したところ、最良の結果を達成するには、やや高濃度のKClが必要とされた。
【0336】
したがって、最適の弁別条件は、異なるポリメラーゼの間においてやや異なったが、一般に、単独の又は別のグルタミン酸塩と組み合わせた、一価のカチオン(例えば、一価の金属カチオン)をもたらす塩が、二元複合体を優先的に不安定化させ、これにより、適正なヌクレオチドへの結合と不適正なヌクレオチドへの結合との弁別を増強したことは事実であった。グルタミン酸塩が、一価の金属カチオンをもたらす塩として用いられうることもなお、裏付けられた。
【0337】
前出に基づき、かつ、実施例において記載された手順に従うさらなる試験をさらに考慮すると、二元複合体の形成を不安定化させるために好ましい条件は、以下の通りであった。精査ステップにおいて利用された反応混合物は、一価のカチオン、好ましくは、一価の金属カチオン(例えば、+1の酸化状態を有する金属カチオン)の供給源を含有するものとする。これは、反応混合物中に、一価のカチオンをもたらす塩を含めることにより、簡便に達することができ、この場合、塩は、約50mM〜1,500mMの濃度において含まれる。好ましくは、塩は、約50mM〜500mMの濃度において含まれる。さらにより好ましくは、塩は、約100mM〜300mMの濃度において含まれる。任意選択的に、一価のカチオンをもたらす塩はまた、グルタミン酸アニオン(すなわち、塩は、グルタミン酸塩である)ももたらす。これらの濃度範囲において使用される塩が、グルタミン酸塩以外の塩である場合、塩を含有する反応混合物は、任意選択的に、グルタミン酸塩を、約10mM〜1,600mMの濃度において、より好ましくは、10mM〜500mMの範囲において、又はなおより好ましくは、80mM〜320mMの範囲においてさらに含みうる。一般的に述べると、プライミングされた鋳型核酸分子を、精査ステップにおける反応混合物と接触させるために使用される反応条件は、好ましくは、三元複合体の形成を、二元複合体の形成より、少なくとも2倍、少なくとも5倍なお又はこれを超えて優先する。組込み反応は、ポリメラーゼとプライミングされた鋳型核酸分子との間の相互作用(例えば、二元複合体の形成を許容又は優先する相互作用を含む)を促進する異なる反応条件下において高効率に行われうるため、結合によるシーケンシング手順の精査ステップにおいて、三元複合体の形成の低減が許容されうることは、注目に値する。
【0338】
二元複合体の形成から生じるシグナルに起因する寄与を低減又は最小化するための、さらに別の手法は、ポリメラーゼを、プライミングされた鋳型核酸分子へと送達するために使用される試薬及び手法を含む。ここで、精査を受けるヌクレオチドに対する、ある特定の制約下にある、結合によるシーケンシング手順に特化した「ポリメラーゼ送達試薬」(PDR)を使用することができる。PDRは、望ましくない二元複合体の形成を最小化する一助となる一方、効率的な三元複合体の形成をやはり可能とするので、有利である。開示されたPDRは、改善された結果を得るように、様々なプラットフォーム(例えば、標識非含有のSPR;フローセル内の蛍光ポリメラーゼなど)上において使用されうる。一般的に述べると、PDRを利用し、ポリメラーゼの結合をコグネイトのヌクレオチドと非コグネイトのヌクレオチドとのアイデンティティーの指標としてモニタリングする手順において、シグナル対ノイズ比が改善され、これは、適正な塩基判定及びリードの伸長の一助となる。
【0339】
PDRを開発する前は、遊離核酸分子の非存在下において、ポリメラーゼ試薬を、固定されたプライミングされた鋳型核酸分子へと送達した。コグネイトのヌクレオチドの非存在下における、プライミングされた鋳型核酸分子へのポリメラーゼの結合に起因して、少なくともあるレベルのバックグラウンドシグナルは、常に検出された。実際、適正な塩基が付加されても、観察可能な差違が検出されない程度に、バックグラウンドの結合が広範となる条件を同定することができた。このバックグラウンドシグナルは、コグネイトのヌクレオチドの非存在下において、ポリメラーゼがプライミングされた鋳型核酸分子に結合する、二元複合体の形成に帰せられた。
【0340】
本明細書の別の箇所において記載された通り、二元複合体の形成から生じるシグナルを低減するのに使用される代替的な手法は、塩の濃度及び組合せに焦点を当てた。例えば、KCl及びグルタミン酸カリウムの濃度範囲は、二元複合体の形成を抑制するために有用かつ十分であると示された。しかし、PDRの代替的な使用も、二元複合体の形成の低減を最適化するために使用される塩条件の変化を可能とする(やはり、目覚ましい結果をもたらす)ので、有利である。これは、複数の異なる手法を、二元複合体の形成を抑制する、又は「不安定化させる」ために使用しうることをさらに例示した。
【0341】
実施例20は、PDRの使用が、どのようにして適正な三元複合体の形成を可能としながら二元複合体の形成から生じるシグナルを有利に低減したのかを、裏付けた手順について記載する。ポリメラーゼ送達試薬は、(a)DNAポリメラーゼ;及び(b)プライミングされた鋳型核酸を含んだ。含まれた、プライミングされた鋳型核酸は、溶液中において遊離であり、ポリメラーゼと相互作用して、複合体(例えば、二元複合体)を形成する。
【0342】
[実施例20]
結合によるシーケンシング手順における二元複合体の形成を低減するためのポリメラーゼ送達試薬(PDR)
4つのストレプトアビジンによりコーティングされたOctetチップを、プライマーとハイブリダイズさせたビオチニル化鋳型DNA鎖を含有する結合緩衝液と接触させて、固定されたプライミングされた鋳型核酸分子を調製した。この手順では、結合緩衝液は、KCl、グルタミン酸カリウム、TbCl3、Tween−80及びBSAを含む、ACES緩衝(pH 7.5)液であった。その後、核酸を含まない結合緩衝液を使用して、バイオセンサーチップを洗浄した。二元複合体の形成は、バイオセンサーチップを、付加されたシステイン残基を含有するように操作された1μMのBst DNAポリメラーゼを、0nM、10nM、100nM又は1,000nMのいずれかの可溶性相すなわち液相の(すなわち、溶液中に遊離している)ビオチニル化されていないプライミングされた鋳型核酸と一緒に含有する結合緩衝液と接触させることにより、達成した。バックグラウンドシグナルを表す二元複合体を形成するのに使用された溶液は、コグネイトのヌクレオチドを含まなかった。液相のプライミングされた鋳型核酸が、バイオセンサーチップへと固定されたプライミングされた鋳型核酸の配列と異なる配列を有したことは、注目に値する。最後に、三元複合体は、バイオセンサーチップを、0nM、10nM、100nM又は1,000nMの可溶性相又は液相の(すなわち、溶液中に遊離している)プライミングされた鋳型核酸を、固定されたプライミングされた鋳型核酸分子の次の適正なヌクレオチドである、100μMのヌクレオチドと一緒に含む結合緩衝液と接触させることにより、形成した。結合緩衝液中に含まれた液相ヌクレオチドは、液相の、プライミングされた鋳型核酸に対する、コグネイトのヌクレオチドではなかった。固定された核酸の特徴(例えば、フローセル内の表面へと、直接的に、又は間接的に固定されたプライミングされた鋳型核酸)に対する、コグネイトのヌクレオチドとして調べられる液相ヌクレオチドを含有する異なる試薬を使用する場合、液相ヌクレオチドは、液相のプライミングされた鋳型核酸に対する、コグネイトのヌクレオチドであってはならない。このようにすると、三元複合体ではなく二元複合体だけが、液相ヌクレオチド及び液相のプライミングされた鋳型核酸分子の間において形成されうる。任意選択的に、液相ヌクレオチドを含有する試薬溶液中に、1つを超える液相のプライミングされた鋳型核酸分子が存在しうる。より特定すると、単一の液相ヌクレオチドを含有する試薬溶液中に、最大3つの、異なる液相のプライミングされた鋳型核酸が存在する場合があり、この場合、液相ヌクレオチドは、液相の、プライミングされた鋳型核酸のうちのいずれかに対する、コグネイトのヌクレオチドではない。
【0343】
図19に示された、これらの手順からの結果は、液相ヌクレオチド及び液相のプライミングされた鋳型核酸と組み合わせたポリメラーゼの送達であって、液相ヌクレオチドが、液相の、ライミングされた鋳型核酸に対する、コグネイトのヌクレオチドではない送達は、三元複合体の形成をやはり可能としながら、二元複合体の形成を抑制したか又は不安定化させたので、有利であることを確認した。より特定すると、ヌクレオチドの非存在下において、液相のプライミングされた鋳型核酸の濃度が増大するにつれ、ポリメラーゼ結合シグナルの大きさの、対応する減衰が見られた。この場合、二元複合体の形成だけが可能であった。その後、バイオセンサーチップへと固定されたプライミングされた鋳型核酸に対する、コグネイトのヌクレオチドであるヌクレオチドの組入れが、結合シグナルの増大をもたらした。この手順からの結果の比較は、このシグナルの大きさの最適の差違が、液相のプライミングされた鋳型核酸が、100nMの濃度において存在する場合に生じたことを示した(
図20を参照されたい)。したがって、規定の手順に従い、良好な結果をもたらすのに必要とされる、液相のプライミングされた鋳型核酸の濃度を最適化することができる。
【0344】
まとめると、これらの結果は、PDR試薬の使用が、どのようにして二元複合体の形成と三元複合体の形成との弁別を、従来可能ではなかった形において改善したのかを示す。2つ独立したDNAポリメラーゼ酵素を使用して、同様に良好な結果が得られた。これは、手法の一般的な有用性を確認した。
【0345】
一部の実施形態において、任意の組込み反応を実施する前に、複数の独立の精査反応が完了している。異なる好ましい手法に従い、これは、検出可能に標識化されたポリメラーゼ使用して、又は1つ以上の検出可能に標識化されたヌクレオチドを使用して、精査反応を実行することを伴いうる。
【0346】
1つの手法において、精査反応は、識別可能に標識化されたポリメラーゼのコレクションではなく、単一という少数の標識化ポリメラーゼを使用して、実行することができる。プライミングされた鋳型核酸(例えば、固定されたRCA産物又はプライミングされた鋳型核酸を提示するビーズのような、間隔を置かれた特徴のコレクション)を、標識化ポリメラーゼ及び1つ以上のヌクレオチドの組合せと接触させうる。結合を可能とする時間の後、任意選択的に、任意の非複合体化させた材料(例えば、標識化ポリメラーゼ)を、結合反応混合物から除去する洗浄ステップを行い、続いて、標識化ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子との相互作用について評価する。第1の精査反応の完了及びポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せの、プライミングされた鋳型核酸分子からの除去又はストリッピングの後において、プライミングされた鋳型核酸分子を第2のポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せと接触させることにより、第2の精査反応を実行する。次いで、検出手順及び除去手順を反復する。この手順において、コグネイトのヌクレオチドのアイデンティティーの指標として検出又はモニタリングされるのは、ポリメラーゼのプライミングされた鋳型核酸分子への局在化であるため、この手順において使用されるヌクレオチドは、検出可能な標識を有する必要がない。また、検出可能に標識化されたポリメラーゼは、ヌクレオチドとの相互作用の結果として実質的に変化するのではないシグナルを優先的にもたらす。より特定すると、シグナルは、実質的に均一である。この手法により、シグナルの産出と対比される、シグナルの局在化をモニタリングして、三元複合体の形成について評価することができる。手順は、三元複合体を安定化させる、非触媒性金属イオン又はプライミングされた鋳型核酸分子内の、可逆的にブロッキングされたプライマーを使用して実行することができる。したがって、逐次的な精査反応は、単一という少数種類の、検出可能に標識化されたポリメラーゼを、異なるヌクレオチド又はヌクレオチドの組合せを三元複合体の形成を促進する能力について、反復的に、又は繰り返して調べる手順を使用して実行することができる。
【0347】
代替的な手法において、検出可能に標識化されたヌクレオチドを、検出可能に標識化されたポリメラーゼの代わりに使用することができる。任意選択的に、標識化ヌクレオチドは、蛍光部分、ラマン活性部分などを有する。任意選択的に、手順において使用された、複数の標識化ヌクレオチドの間の、異なる標識化ヌクレオチドの各々は、同じ種類の蛍光部分を含む。代替的に、手順において使用された、複数の標識化ヌクレオチドの間の、異なる標識化ヌクレオチドの各々は、手順におけるそれらの光学的特性により、互いと識別されない、異なる蛍光部分を含みうる。例えば、単一又は共通の検出チャネル又は波長範囲を、三元複合体内の異なる標識化ヌクレオチドを検出するために使用することができる。好ましくは、標識化ヌクレオチドが、溶液中に遊離していて(すなわち、三元複合体内に組み入れられていなくて)も、三元複合体に参与していても、標識化ヌクレオチドの蛍光部分の光学的特性(例えば、励起又は発光スペクトル)は、実質的に変化しないままである。したがって、標識化ヌクレオチドは、三元複合体に参与する場合に、コンフォメーション的に感受性となる標識又は顕著な光学的シグナルを発光する挿入色素により標識化される必要がない。同様に、技法の成功は、検出可能な標識が、他の任意の蛍光色素又は消光剤部分とのエネルギー移動関係に参与することを要求しない(例えば、検出可能な部分は、好ましくは、FRETのパートナーである必要がない)。一部の実施形態において、ポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せは、プライミングされた鋳型核酸分子(例えば、フローセル内に固定されたプライミングされた鋳型核酸分子)へと、一度に1つずつ、逐次的に送達することができる。コグネイトのヌクレオチドの同定は、ヌクレオチドへと接合させた標識部分を検出することにより、三元複合体を検出することを伴いうる。例えば、これは、コグネイトのヌクレオチドのアイデンティティーを、ポリメラーゼと組み合わせた、プライミングされた鋳型核酸分子と接触させた(この場合、三元複合体が、結果として形成される)、ヌクレオチドのアイデンティティーと関連付けることを伴いうる。単に、ポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せを、プライミングされた鋳型核酸へと、既知の順序において(例えば、逐次的に)送達した場合の三元複合体を検出するだけで、次の適正なヌクレオチドを同定するのに十分でありうる。
【0348】
一部の好ましい手法において、1つ以上のヌクレオチドと組み合わせたポリメラーゼを、プライミングされた鋳型核酸分子(例えば、固定されたプライミングされた鋳型核酸分子)へと接触させることを含むステップは、ブロッキングされたプライミングされた鋳型核酸分子を、触媒性金属イオン(例えば、マグネシウムイオン又はマンガンイオン)の存在下において使用して、実行することができる。ブロッキングされたプライミングされた鋳型核酸分子は、本明細書で記載された通り、可逆性のターミネーター部分を有する、3’末端のヌクレオチドを含むプライマーを含みうる。実際的に述べると、異なるポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せを含有する試薬又は溶液もまた、触媒性金属イオンを含みうる。ブロッキングされたプライミングされた鋳型核酸分子へと接触させると、プライミングされた鋳型核酸分子の鋳型鎖とハイブリダイズしたプライマー鎖の3’末端のヌクレオチド上の、可逆性のターミネーター部分の存在により、コグネイトのヌクレオチドの組込みは回避される。ブロッキングされたプライミングされた鋳型核酸分子を含む三元複合体は、ポリメラーゼの触媒性能力に関わらず、組込みを伴わずに、効率的に形成されうる。作動についてのいかなる特定の理論により制約されることも望まないが、1つの可能性は、触媒性金属イオンの存在が、ポリメラーゼの完全性の維持、及びコグネイトのヌクレオチドと非コグネイトのヌクレオチドとを認識し弁別するその能力を助けることである。代替的に、触媒性金属イオンの組入れは、三元複合体これ自体の構造に、有益な影響を与えうる。基礎機構にも関わらず、開示された技法を実行するための、一部の好ましい手法は、触媒性金属イオン(例えば、マグネシウムイオン及びマンガンイオンの一方又は両方)の存在下において、ブロッキングされたプライミングされた鋳型核酸分子(例えば、可逆性のターミネーター部分を、3’末端のヌクレオチドへと接合させたプライマーを有する)を、ポリメラーゼ−ヌクレオチドの組合せへと接触させるステップを伴いうる。接触させるステップは、触媒性金属イオンの存在下において、かつ、ヌクレオチドの組込みを阻害する非触媒性金属イオンの非存在下において実行することが好ましい。
【0349】
図21は、単一種類の、検出可能に標識化されたポリメラーゼを利用する、反復的なシーケンシング手順についての、簡略化したワークフローを例示し、
図22は、本質的に、本明細書で記載された手順及びプロトコールを使用して得られた結果を例示する。ここで、標識化ポリメラーゼ及び一度に1つずつのヌクレオチドを、Alk−C2標的配列に対する可逆的にブロッキングされたプライミングされた鋳型核酸を有するビーズと接触させたが、この場合、ヌクレオチドの予測配列は、CGGGであった。全ての結合反応を、Mg2+イオンの存在下において実行したが、この触媒性金属イオンの組入れは、任意選択的であった。4つの異なるヌクレオチドを、逐次的に精査する各サイクルにおいて、適正なヌクレオチドは、最大の結合シグナルと関連した。これは、検出可能に標識化されたポリメラーゼが、ブロッキングされた、プライミングされた鋳型核酸分子と会合して、予測された形において、三元複合体を形成したことを示した。
【0350】
以下の例は、結合によるシーケンシング法についての、1つの実施形態であって、単一種類の、検出可能に標識化されたポリメラーゼを使用して、天然ヌクレオチドの結合について評価した実施形態を例示する。
【0351】
[実施例21]
標識化されたポリメラーゼシーケンシング
フローセルを、公知の配列の、合成の、プライミングされた鋳型核酸を提示する、1μMの磁気マイクロビーズを使用して調製した。略述すると、ストレプトアビジンによりコーティングされたMyOne C1磁気ビーズ(ThermoFisher Scientific;Waltham、MA)を、ストレプトアビジン上の遊離アミン部分と反応するTCO−PEG4−NHS(トランスシクロオクテン−ポリエチレングリコール−N−ヒドロキシスクシンイミド)部分により官能化した。次いで、TCOにより修飾されたビーズを、所望のプライミングされた鋳型核酸分子を100nMの濃度において含有する溶液中において、インキュベートした。次に、ビーズを、TCO修飾ビーズに共有結合的に結合するようにNHS−テトラジンエステル試薬により修飾された、アミノシランによりコーティングされたカバースリップにより構築されたフローセルへと導入した。ビーズを表面へと沈着させ、約15分間にわたり結合させ、ビーズの密度を光学顕微鏡により点検した。大きなビーズ密度が要求された場合、多くのビーズを流入させ、結合させた。フローセルの内容物は、SuperBlock(ThermoFisher Scientific)により「ブロッキング」して、試薬の、ビーズ又はバックグラウンド表面への非特異的結合を最小化した。
【0352】
シーケンシングランを開始する前に、試薬を15mLの円錐管へとロードし、フローセルへと至る試薬ラインを含む流体分枝管へと連絡させた。ビーズアレイを含有するフローセルを、20倍の対物レンズを装備した顕微鏡に載せ、次いで、流体分枝管へと連絡させた。フローセルを、洗浄試薬によりパージして、ビーズ及びプライミングされた鋳型核酸を、出発反応条件と平衡化させた。自動式プロトコールを使用して、シーケンシングを開始して、試薬の送達の順序及びタイミングを制御した。
図21は、ワークフローの例を概括するフローダイアグラムを示す。この手順において、標識化ポリメラーゼ及び一度に単一のヌクレオチドを、固定されたプライミングされた鋳型核酸分子へと接触させた。手順において使用されたポリメラーゼは、蛍光Cy5標識へと化学的に接合させたシステインを含有するように操作された、BSUポリメラーゼであった。
【0353】
図22は、得られた蛍光標識化ポリメラーゼの平衡結合についての最大の蛍光強度を示すが、この場合、ポリメラーゼは、一度に1つの天然ヌクレオチドと組み合わせた、プライミングされた鋳型核酸分子に結合した。また、検出をもたらすのに、蛍光部分とヌクレオチドとの間のエネルギー移動は見られなかった。同様に、ポリメラーゼ上の標識を、ポリメラーゼの位置を追跡する方途をもたらすためだけに用いたが、この場合、ポリメラーゼの蛍光は、反応混合物中に存在する異なるヌクレオチドの結果として、実質的に不変なままであった。各サイクルについて、最大の結合シグナルを、適正な塩基判定と考えた。各サイクルについて、図中に表された特徴を有する塩基判定は、鋳型パネル内に含まれたAlk遺伝子断片のうちの1つの、最初の4つの塩基に対応した。各場合において、シーケンシングされた特徴は、各精査ステップに対する固有の応答を示した。これは、蛍光標識化ポリメラーゼを使用する、一度に1つという少数のヌクレオチドを精査する反復的サイクルを、鋳型核酸をシーケンシングするために、どのようにして使用しうるのかを裏付けた。
【0354】
開示された方法及び組成物のために使用しうるか、これらと共に使用しうるか、これらを調製するために使用しうるか、又はこれらの生成物である、材料、組成物及び成分について、上記に開示されている。これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合に、一方において、これらの化合物の、各々多様であり個別かつ総体的な組合せ及び順列についての具体的基準が明示的に開示されえない場合、本明細書において、各組合せ及び各順列は、具体的に想定され、記載されることが理解されるものとする。例えば、方法について開示され、論じられ、方法において使用される分子を含む多数の分子へと施されうる多数の修飾について論じられる場合、逆のことが具体的に示されない限りにおいて、可能な方法及び修飾の、各組合せ及び各順列並びにあらゆる組合せ及びあらゆる順列が、具体的に想定される。同様にこれらの任意のサブセット又は組合せも具体的に想定され論じられる。この概念は、開示された組成物を使用する方法におけるステップを含む、本開示の全ての態様に当てはまる。したがって、様々なさらなるステップが実施されうる場合、これらのさらなるステップの各々は、開示された方法の、任意の具体的方法ステップ又は方法ステップの組合せと共に実施されてもよく、このような組合せ又は組合せのサブセットの各々が、具体的が想定され、開示されると考えられるべきであることが理解される。
【0355】
本明細書において引用された刊行物及びそれらが引用される材料は、参照によりそれらの全体において具体的に組み込まれる。本明細書において言及される、全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許又は特許出願が、参照により組み込まれることが、具体的、かつ、個別に示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0356】
本明細書において使用された小見出しは、構成上の目的のためだけのものであり、記載又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0357】
多数の実施形態について、記載されてきた。しかしながら、多様な改変を行いうることが理解される。したがって、他の実施形態も、特許請求の範囲内にある。