特許第6828143号(P6828143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828143プリント回路板製造用エッチング抵抗性インキジェットインキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828143
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】プリント回路板製造用エッチング抵抗性インキジェットインキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20210128BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20210128BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20210128BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20210128BHJP
【FI】
   C09D11/30
   B41M5/00 120
   B41M5/00 100
   B41M5/00 116
   H05K3/06 H
   C09D11/38
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-514283(P2019-514283)
(86)(22)【出願日】2017年9月1日
(65)【公表番号】特表2019-534909(P2019-534909A)
(43)【公表日】2019年12月5日
(86)【国際出願番号】EP2017071968
(87)【国際公開番号】WO2018050457
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年3月14日
(31)【優先権主張番号】16188702.1
(32)【優先日】2016年9月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア−ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】トルフ,リタ
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−225482(JP,A)
【文献】 特表2008−516416(JP,A)
【文献】 特開2010−008780(JP,A)
【文献】 特開2009−132720(JP,A)
【文献】 特開2013−083929(JP,A)
【文献】 特開昭50−100128(JP,A)
【文献】 特開平06−122608(JP,A)
【文献】 米国特許第05770637(US,A)
【文献】 米国特許第05514732(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第01464250(GB,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02130817(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02033949(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01721949(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30
B41M 5/00
C09D 11/38
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)金属またはガラスの表面上に放射線硬化性インキジェットインキをプリントしそして硬化させることにより前記金属またはガラスの表面上に保護領域を形成する工程と、
b)エッチング処理により、前記金属またはガラスの表面の未保護領域から前記金属またはガラスを取り除く工程と、
c)前記金属またはガラスの表面の保護領域から、前記硬化済み放射線硬化性インキジェットインキを少なくとも一部取り除く工程と
を含む、インキジェットプリント法であって、
該放射線硬化性インキジェットインキは
(1)アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な基と、
(2)少なくとも1つの脂肪族第三アミンと、
(3)少なくとも1つのカルボン酸またはその塩と
を含む定着剤(adhesion promoter)を含む、放射線硬化性インキジェットインキであって、前記カルボン酸は、置換される場合があるメチレン基および置換される場合があるエチレン基からなる群から選択される2価の結合基を介して、脂肪族第三アミンに結合される、放射線硬化性インキジェットインキである
インキジェットプリント法
【請求項2】
前記フリーラジカル重合性基は、アクリレートまたはメタクリレートである、請求項1記載のインキジェットプリント法
【請求項3】
前記の2価の結合基は、置換される場合があるメチレン基である、請求項1または2記載のインキジェットプリント法
【請求項4】
前記定着剤は、置換される場合があるメチレン基を介して、脂肪族アミンに結合された少なくとも2つのカルボン酸またはその塩を含む、請求項1から3のいずれかに記載のインキジェットプリント法
【請求項5】
前記定着剤は、式I、
【化1】
[式中、点線は前記定着剤の別の部分に対する共有結合を表わす]
に従う少なくとも1つの構造単位を含む、請求項1から4のいずれかに記載のインキジェットプリント法
【請求項6】
前記定着剤は、式II、
【化2】
[式中、点線は前記定着剤の別の部分に対する共有結合を表わす]
に従う少なくとも1つの構造単位を含む、請求項1から5のいずれかに記載のインキジェットプリント法
【請求項7】
前記定着剤は、式III、
【化3】
[式中、
XはOおよびNHからなる群から選択され、
Rは水素またはメチル基であり、そして
Lは2ないし15個の炭素原子を含む2価の結合基を表わす]
に従う、少なくとも1つの構造単位を含む、請求項1から6のいずれかに記載のインキジェットプリント法
【請求項8】
Xは酸素であり、Lは置換される場合があるエチレン基、置換される場合があるプロピレン基および置換される場合があるブチレン基からなる群から選択される2価の結合基を表わす、請求項7記載のインキジェットプリント法
【請求項9】
前記定着剤の量は前記インキジェットインキの総重量について1ないし20重量%の間である、請求項1から8のいずれかに記載のインキジェットプリント法
【請求項10】
更に、アクリルアミドまたは二もしくは多官能価アクリレートを含む、請求項1から9のいずれかに記載のインキジェットプリント法
【請求項11】
前記アクリルアミドは環式アクリルアミドであり、そして前記二もしくは多官能価アクリレートは、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール(2×プロポキシル化)ジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジトリメチロイルプロパンテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびポリエチレングリコールジアクリレートからなる群から選択される、請求項10記載インキジェットプリント法
【請求項12】
前記金属表面は銅の表面である、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化工程はUV光線を使用して実施される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のインキジェットプリント法を含む、導体パターンを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング抵抗性(etch−resistant)インキジェットインキと、導体パターン(conductive patterns)の製法とに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路板(printed circuit boards)は通常、非導体基板に接着された銅シート上にフォトレジスト層をコートし、所望の導体パターンのネガ画像の一時的UVマスクを適用し、前記フォトレジスト層をUV曝露し、現像液により未曝露フォトレジスト層を除去し、エッチング処理により所望されない銅を除去し、アルカリ性ストリッピング浴により前記の曝露されたフォトレジスト層を除去し、それにより非導体基板上に、所望される導体銅パターンのみを残す、工程により製造される。
【0003】
エッチング処理は、化学薬品、通常強酸または腐蝕剤(mordant)を使用して金属表面の前記未保護部分に刻みこむ(cut into)工程である。しばしば50μm以上の厚さのフォトレジスト層を取り除くための現像液の使用は、追加の経費および化学薬品の無駄遣いをもたらす。従って、前記銅シート上にエッチング抵抗性インキジェットインキ層をUV硬化性インキジェットプリントし、それが、エッチング処理後に、前記アルカリ性ストリッピング浴により除去されて、前記導体の銅パターンを露出する(expose)ことにより、前記現像工程が省略可能かどうか検討されてきた。
【0004】
プリント回路板(PCB)は典型的には、エッチング処理、すすぎおよびストリッピング処理が、中間の乾燥を伴わずにインラインで実施される自動化生産ラインで製造される。すべての中間工程期間中、前記プリント回路板の前駆体は、湿った状態でローラーと接触する。前記導体銅パターンの望ましくない損傷を回避するために、前記エッチング抵抗性インキジェットインキはストリッピング処理の前のすべての工程において前記銅の表面に十分な接着性を有することが重要な意味をもつ。
【0005】
先行技術分野において、主として重合可能な定着剤(adhesion promoter)に焦点を当てた、異なる金属基板上へのエッチング抵抗性インキジェットインキの接着性を最大にするためのいくつかのアプローチが開示された。
【0006】
特許文献1(Avecia)は、ストリッピング工程期間中の定着剤および溶解促進剤として、1ないし30重量%の、1つ以上の酸性基を含むアクリレート官能(functional)モノマーを含む、非水性のエッチング抵抗性インキジェットインキを開示する。
【0007】
特許文献2(Avecia)は、好ましくは、金属下塗り剤(primer)および歯科用途にしばしば使用される定着剤の一種の、(メタ)アクリレート化カルボン酸、(メタ)アクリレート化リン酸エステルおよび(メタ)アクリレート化スルホン酸のような(メタ)アクリレート酸定着剤を含む、エッチング抵抗性インキジェットインキを開示する。
【0008】
前記の定着剤は、エッチング抵抗性インキジェットインキ中に導入される(implemented)ときに、PCB製造プロセスのすべての環境における接着性の需要を満たすとは限らないことが見いだされた。従って、エッチング抵抗性インキジェットインキと適合する、代わりの定着剤がまだ必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2004026977号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/106437号パンフレット
【発明の概要】
【0010】
前記の課題、とりわけ、PCB製造プロセスのすべての工程における前記銅表面上へのエッチング抵抗性インキジェットインキの接着性の課題を克服するために、本発明は、請求項1に記載の放射線硬化性インキジェットインキを提供する。
【0011】
本発明の更なる目的は、以下の説明から明白になると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
例えば一官能価重合性化合物における用語「一官能価(monofunctional)」は、前記重合性化合物が1つの重合性基を含むことを意味する。
【0013】
例えば二官能価重合性化合物における用語「二官能価」は、前記重合性化合物が2つの重合性基を含むことを意味する。
【0014】
例えば多官能価重合性化合物における用語「多官能価」は、前記重合性化合物が3つ以上の重合性基を含むことを意味する。
【0015】
用語「アルキル」は、前記アルキル基内の炭素原子の各数について可能なすべての変形物(variants)、すなわち、メチル、エチル、3個の炭素原子についてはn−プロピルおよびイソプロピル、4個の炭素原子についてはn−ブチル、イソブチルおよび第三ブチル、5個の炭素原子についてはn−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピルおよび2−メチル−ブチル等を意味する。
【0016】
別記されない限り、置換もしくは未置換アルキル基は好ましくは、C1ないしC6−アルキル基である。
【0017】
別記されない限り、置換もしくは未置換アルケニル基は好ましくは、C2ないしC6−アルケニル基である。
【0018】
別記されない限り、置換もしくは未置換アルキニル基は好ましくは、C2ないしC6−アルキニル基である。
【0019】
別記されない限り、置換もしくは未置換アラルキル基は好ましくは、1、2、3もしくは4以上のC1ないしC6−アルキル基を含むフェニルまたはナフチル基である。
【0020】
別記されない限り、置換もしくは未置換アルカリール基は好ましくは、フェニル基またはナフチル基を含むC7ないしC20−アルキル基である。
【0021】
別記されない限り、置換もしくは未置換アリール基は好ましくは、フェニル基またはナフチル基である。
【0022】
別記されない限り、置換もしくは未置換ヘテロアリール基は好ましくは、1、2もしくは3個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはそれらの組み合わせ物により置換された5もしくは6員環である。
【0023】
例えば置換アルキル基における用語「置換された」は、前記アルキル基が、このような基中に通常含まれる原子、すなわち炭素および水素以外の原子により置換される場合があることを意味する。例えば、置換アルキル基はハロゲン原子またはチオール基を含む場合がある。未置換アルキル基は炭素および水素原子のみを含む。
【0024】
別記されない限り、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリールおよび置換ヘテロアリール基は好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよび第三−ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、スルホンアミド、−Cl、−Br、−I、−OH、−SH、−CNおよび−NO2からなる群から選択される1つ以上の成分(constituents)により置換される。
【0025】
放射線硬化性インキジェットインキ
本発明の放射線硬化性インキジェットインキは、
(1)アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な基、
(2)少なくとも1つの脂肪族第三アミン、並びに
(3)少なくとも1つのカルボン酸またはその塩、ただし該カルボン酸は、置換される場合があるメチレン基および置換される場合があるエチレン基からなる群から選択される2価の結合基を介して、脂肪族第三アミンに結合されることを条件とする:
を含む定着剤を含む。
【0026】
前記放射線硬化性インキジェットインキは、あらゆる種類の放射線、例えば電子ビーム光線、により硬化される場合があるが、好ましくはUV光線によって、より好ましくはUVLEDからのUV光線によって硬化される。従って、前記放射線硬化性インキジェットインキは好ましくはUV硬化性インキジェットインキである。
【0027】
信頼できる工業的インキジェットプリントのための放射線硬化性インキジェットインキの粘度は、好ましくは45℃で20mPa.s以下、より好ましくは45℃で1ないし18mPa.s、そしてもっとも好ましくは45℃で4ないし14mPa.sの間である。
【0028】
良好な画質および接着性のための放射線硬化性インキジェットインキの表面張力は好ましくは、25℃で18mN/mないし70mN/mの範囲、より好ましくは、25℃で約20mN/mないし約40mN/mの範囲内にある。
【0029】
前記放射線硬化性インキジェットインキは更に、別の重合性化合物、着色剤、ポリマー分散剤、光開始剤または光開始系、重合阻害剤あるいは界面活性剤を含む場合がある。
【0030】
定着剤(adhesion promoter)
前記定着剤は、
(1)アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つのフリーラジカル重合可能な基、
(2)少なくとも1つの脂肪族第三アミン、並びに
(3)少なくとも1つのカルボン酸またはその塩、ただし該カルボン酸は、置換される場合があるメチレン基および置換される場合があるエチレン基からなる群から選択される2価の結合基を介して、脂肪族第三アミンに結合されることを条件とする:
を含む。
【0031】
前記のような定着剤は、嫌気的硬化性(anaerobically curing)接着剤中の自然重合を回避するための安定化キレート形成化合物として英国特許第1464250号明細書(Ciba−Geigy)中、古典的に使用された高度に酸性の定着剤に比較して、より良い生物学的適合性を請求している歯科用途のための欧州特許第1721949号明細書(VOCO Gmbh)中、そして歯科用途において高い加水分解安定性を有する接着剤として欧州特許第2065363号明細書(Ivoclar Viovadent)中に開示された。
【0032】
前記フリーラジカル重合性基は好ましくは、アクリレートおよびメタクリレートからなる群から選択される。
【0033】
前記2価の結合基は好ましくは、置換される場合があるメチレン基である。
【0034】
前記定着剤は好ましくは、置換される場合があるメチレン基を介して脂肪族第三アミンに結合された少なくとも2つのカルボン酸またはその塩を含む。
【0035】
好ましい実施態様に従うと、前記定着剤は、式I、
【化1】
[式中、点線は前記定着剤の別の部分に対する共有結合を表わす]
に従う少なくとも1つの構造単位を含む。
【0036】
より好ましい実施態様に従うと、前記定着剤は、式II、
【化2】
[式中、点線は前記定着剤の別の部分に対する共有結合を表わす]
に従う少なくとも1つの構造単位を含む。
【0037】
特に好ましい実施態様に従うと、前記定着剤は、式III、
【化3】
[式中、
XはOおよびNHからなる群から選択され、
Rは水素またはメチル基から選択され、そして
Lは2ないし15個の炭素原子を含む2価の結合基を表わす]
に従う少なくとも1つの構造単位を含む。
【0038】
前記定着剤は好ましくは、式IIIに従う少なくとも2つの構造単位を含む。
【0039】
好ましくは、Xは酸素原子を表わし、そしてLは、置換される場合があるエチレン基と、置換される場合があるプロピレン基と、置換される場合があるブチレン基とからなる群から選択される2価の結合基を表わし、エチレン基は特に好ましい。
【0040】
本発明に従う特に好ましい定着剤は、表1に与えられるが、これらに限られない。
【表1】
【0041】
前記放射線硬化性インキジェットインキ中の定着剤の量は好ましくは、前記インキジェットインキの総重量に対して、1ないし20重量%、より好ましくは5ないし15重量%、もっとも好ましくは7.5ないし12.5重量%の間である。
【0042】
前記の量が低すぎるときは、前記金属表面に対する前記インキジェットインキの接着性が不十分である場合があり、前記の量が高すぎるときは、前記インキの粘度が増加する場合があり、その保管寿命がより重要になる場合がある。
【0043】
別の重合性化合物
前記放射線硬化性インキジェットインキは好ましくは、前記の定着剤以外の、別の重合性化合物を含む。
【0044】
前記別の重合性化合物は、モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーである場合がある。これらのモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーは、異なる度合いの官能価を有する場合がある。一、二、三および四以上の官能価のモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの組み合わせ物を含む混合物が使用される場合がある。前記放射線硬化性インキジェットインキの粘度は、モノマーおよびオリゴマーの間の比率を変えることにより調整される場合がある。
【0045】
特に好ましいモノマーおよびオリゴマーは、欧州特許第1911814号明細書中の[0106]ないし[0115]に挙げられるものである。
【0046】
前記放射線硬化性インキジェットインキは好ましくは、前記重合性組成物の総重量に対して、15ないし70重量%、より好ましくは20ないし65重量%、そしてもっとも好ましくは30ないし60重量%のアクリルアミドを含む重合性組成物を含む。
【0047】
前記放射線硬化性インキジェットインキの重合性組成物は、前記インキジェットインキ中のすべての重合性化合物の合計である。
【0048】
単一のアクリルアミドまたはアクリルアミドの混合物が使用される場合がある。
【0049】
好ましいアクリルアミドは表2に開示される。
【0050】
【表2】
【0051】
前記放射線硬化性インキジェットインキの好ましい実施態様において、前記アクリルアミドは環式アクリルアミドである。
【0052】
前記放射線硬化性インキジェットインキのもっとも好ましい実施態様において、前記アクリルアミドはアクリロイルモルホリンである。
【0053】
前記放射線硬化性インキジェットインキは好ましくは、前記重合性組成物の総重量に対して、重合性組成物中に20ないし75重量%、より好ましくは30ないし65重量%、そしてもっとも好ましくは40ないし55重量%の二もしくは多官能価アクリレートを含む重合性組成物を含む。
【0054】
単一の二官能価もしくは多官能価アクリレートまたは二官能価もしくは多官能価アクリレートの混合物が使用される場合がある。
【0055】
好ましい実施態様において、前記の二官能価もしくは多官能価アクリレートは、ジプロ
ピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール(2×プロポキシル化)ジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジトリメチロイルプロパンテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびポリエチレングリコールジアクリレートからなる群から選択される。
【0056】
前記放射線硬化性インキジェットインキのもっとも好ましい実施態様において、前記の二官能価もしくは多官能価アクリレートはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレートを含む。
【0057】
好ましい実施態様において、前記放射線硬化性インキジェットインキは本発明に従う前記の定着剤、前記のアクリルアミドおよび前記の二もしくは多官能価アクリレートを含む。
【0058】
特に好ましい実施態様において、前記放射線硬化性インキジェットインキは、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、そしてもっとも好ましくは100重量%の前記重合性組成物が、
−15ないし70重量%の前記のアクリルアミド、
−20ないし75重量%の前記の二ないし多官能価アクリレート、および
−1ないし15重量%の前記の定着剤:
からなる、重合性組成物を含む。
【0059】
着色剤
前記放射線硬化性インキジェットは実質的に無色のインキジェットインキである場合があるが、好ましくは、前記放射線硬化性インキジェットは少なくとも1種の着色剤を含む。前記着色剤は導体パターンの製造業者に前記暫定的マスクを明白に可視化させ、それにより品質の目視検査を可能にする。
【0060】
前記着色剤は顔料または染料である可能性があるが、好ましくは、前記放射線硬化性インキジェットのインキジェットプリント工程中にUV硬化工程により漂白されない染料である。前記顔料は黒色、白色、シアン、マゼンタ、黄色、赤色、橙色、紫色、青色、緑色、茶色、それらの混合物、等である場合がある。一つの有色顔料(color pigment)は、HERBST,Willyら、Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.3rd edition.Wiley−VCH;2004.ISBN 3527305769により開示されたものから選択される場合がある。
【0061】
適切な顔料は,国際公開第2008/074548号パンフレットのパラグラフ[0128]ないし[0138]に開示される。
【0062】
インキジェットインキ中の顔料粒子は,特に前記噴射ノズルにおける、前記インキジェットプリント装置を通る前記インキの自由流を可能にするために、十分小型でなければならない。更に、最大の着色力のために、小型粒子を使用し、そして沈降を遅らせることが望ましい。もっとも好ましくは、その顔料の平均粒度は150nm以下である。顔料粒子の平均粒度は好ましくは、動力学的光線散乱の原理にもとづくBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを使用して決定される。
【0063】
染料は、一般に顔料より高い光線退色を示すが、噴射性について問題を引き起こすことはない。アントラキノン染料はUV硬化性インキジェットプリントに使用される通常のUV硬化条件下ではごく僅かな光線退色を示すことが見いだされた。
【0064】
好ましい実施態様において、前記放射線硬化性インキジェットインキ中の着色剤は、LANXESSからのMacrolex(商標)Blue 3R(CASRN 325781−98−4)のようなアントラキノン染料である。
【0065】
別の好ましい染料は、クリスタルバイオレットおよび銅のフタロシアニン染料を含む。
【0066】
好ましい実施態様において、前記着色剤は、前記放射線硬化性インキジェットインキの総重量にもとづいて0.5ないし6.0重量%、より好ましくは1.0ないし2.5重量%の量で含まれる。
【0067】
ポリマー分散剤
前記放射線硬化性インキジェット中の着色剤が顔料の場合は、前記放射線硬化性インキジェットは、前記顔料を分散するために、好ましくは分散剤、より好ましくはポリマー分散剤を含む。
【0068】
適切なポリマー分散剤は2種のモノマーのコポリマーであるが、それらは3、4、5または6種以上のモノマーを含む場合がある。ポリマー分散剤の特性は、前記モノマーの性状と前記ポリマー中のその分布との両方に左右される。コポリマー分散剤は好ましくは以下のポリマー組成物:
・統計的重合モノマー(例えば、ABBAABABに重合されたモノマーAおよびB);・交互の重合モノマー(例えば、ABABABABに重合されたモノマーAおよびB);・勾配(テーパー)重合モノマー(例えば、AAABAABBABBBに重合されたモノマーAおよびB);
・ブロックコポリマー(例えば、AAAAABBBBBに重合されたモノマーAおよびB)、前記ポリマー分散剤の分散能に対し、各ブロックの長さ(2、3、4、5または6以上)が重要である;
・グラフトコポリマー(グラフトコポリマーはその主鎖に結合された(attached)ポリマーの側鎖を伴うポリマーの主鎖からなる);および
・該ポリマーの混合形態、例えば、ブロック状の勾配コポリマー、
を有する。
【0069】
適切なポリマー分散剤は、欧州特許第1911814号明細書中の“Dispersants(分散物)”の項に、より具体的には[0064]ないし[0070]および[0074]ないし[0077]中にリストされている。
【0070】
ポリマー分散剤の市販例は、以下:
・BYK CHEMIE GMBHから市販のDISPERBYK(商標)分散剤;
・NOVEONから市販のSOLSPERSE(商標)分散剤;
・EVONIKからのTEGO(商標)DISPERS(商標)分散剤;
・MUNZING GHEMIEからのEDAPLAN(商標)分散剤;
・LYONDELLからのETHACRYL(商標)分散剤;
・ISPからのGANEX(商標)分散剤;
・CIBA SPECIALTY CHAMICALS INCからのDISPEX(商標)およびEFKA(商標)分散剤;
・DEUCHEMからのDISPONER(商標)分散剤;並びに
・JOHNSON POLYMERからのJONCRYL(商標)分散剤、
である。
【0071】
光開始剤および光開始系
前記放射線硬化性インキジェットは好ましくは、少なくとも1種の光開始剤を含むが、複数の光開始剤および/または共開始剤を含む光開始系を含む場合がある。
【0072】
前記放射線硬化性インキジェット中の光開始剤は、好ましくはフリーラジカルの開始剤、より具体的にはノリッシュ(Norrish)タイプIの開始剤またはノリッシュ(Norrish)タイプIIの開始剤である。フリーラジカル光開始剤は、化学線(actinic radiation)に曝露されると、フリーラジカルの形成によりモノマーおよびオリゴマーの重合を開始する化合物である。ノリッシュ(Norrish)タイプIの開始剤は、励起後に開裂して、即座に開始ラジカルを生成する開始剤である。ノリッシュ(Norrish)タイプIIの開始剤は、化学線により活性化され、そして実際の開始フリーラジカルになる第2の化合物からの水素分離(abstraction)によりフリーラジカルを形成する光開始剤である。この第2の化合物は、重合相乗剤または共開始剤と呼ばれる。タイプIおよびタイプII両方の光開始剤は、本発明において、単独でまたは組み合わせて使用される場合がある。
【0073】
適切な光開始剤はCRIVELLO,J.V.ら、BRADLEY, G.編纂、Photoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Photopolymerization.2nd edition.London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998,p.287−294中に開示されている。
【0074】
光開始剤の具体的な例は、以下の化合物:ベンゾフェノンおよび置換ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、ベンジル−ジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンまたは5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロン、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限られない場合がある。
【0075】
適切な市販の光開始剤は、CIBA SPECIALTY CHEMICALSから市販のIrgacure(商標)184、Irgacure(商標)500、Irgacure(商標)369、Irgacure(商標)1700、Irgacure(商標)651、Irgacure(商標)819、Irgacure(商標)1000、Irgacure(商標)1300、Irgacure(商標)1870、Darocur(商標)1173、Darocur(商標)2959、Darocur(商標)4265およびDarocur(商標)ITX、BASF AGから市販のLucerin(商標)TPO、LAMBERTIから市販のEsacure(商標)KT046、Esacure(商標)KIP150、Esacure(商標)KT37およびEsacure(商標)EDB、SPECTRA GROUP Ltd.から市販のH−Nu(商標)470およびH−Nu(商標)470Xを含む。
【0076】
前記光開始剤はいわゆる拡散阻害(diffusion hindered)光開始剤の場合がある。拡散阻害光開始剤は、硬化インキ層中で、ベンゾフェノンのような一官能
価光開始剤より、ずっと低い移動性(mobility)を示す光開始剤である。該光開始剤の移動性を低下させるためにいくつかの方法を使用する場合がある。一つの方法は、前記拡散速度が低下されるように前記光開始剤の分子量を増加することであり、例えばポリマーの光開始剤である。別の方法は、それが重合ネットワークに組み入れられるように、その反応性を高めることであり、例えば多官能価光開始剤(2、3または4以上の光反応開始基を有する)および重合性光開始剤である。
【0077】
前記放射線硬化性インキジェットのための拡散阻害光開始剤は、好ましくは非ポリマーの多官能価光開始剤、オリゴマーもしくはポリマーの光開始剤および重合性光開始剤からなる群から選択される。もっとも好ましくは、前記拡散阻害光開始剤は、重合性開始剤またはポリマーの光開始剤である。
【0078】
好ましい拡散阻害光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルフィド、α−ハロケトン、α−ハロスルホンおよびフェニルグリオキサレートからなる群から選択されるノリッシュ(Norrish)タイプIの光開始剤から誘導される1つ以上の光開始官能基を含む。
【0079】
好ましい拡散阻害光開始剤は、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,2−ジケトンおよびアントラキノンからなる群から選択されるノリッシュ(Norrish)タイプIIの開始剤から誘導される1つ以上の光開始官能基を含む。
【0080】
適切な拡散阻害光開始剤はまた、二官能価および多官能価光開始剤については、欧州特許第2065362号明細書中のパラグラフ[0074]と[0075]中、ポリマーの光開始剤についてはパラグラフ[0077]ないし[0080]中、そして重合性光開始剤についてはパラグラフ[0081]ないし[0083]中に開示されたものである。
【0081】
光開始剤の好ましい量は、前記放射線硬化性インキジェットの総重量の、0.1ないし20重量%、より好ましくは2ないし15重量%、そしてもっとも好ましくは3ないし10重量%である。
【0082】
その光感受性を更に高めるために、前記放射線硬化性インキジェットは更に共開始剤を含む場合がある。共開始剤の適切な例は、3群:(1)メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンおよびN−メチルモルホリンのような第三脂肪族アミン、(2)アミルパラジメチルアミノベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)−エチルベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートのような芳香族アミン、並びに(3)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジエチルアミノエチルアクリレート)またはN−モルホリノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、N−モルホリノエチル−アクリレート)のような(メタ)アクリレート化(meth(acrylated))アミン、に分類される場合がある。前記の好ましい共開始剤はアミノベンゾエートである。
【0083】
1種以上の共開始剤が前記放射線硬化性インキジェットインキ中に含まれるときは、これらの共開始剤は好ましくは、安全性の理由のために拡散阻害される。
【0084】
拡散阻害共開始剤は好ましくは、非ポリマーの二もしくは多官能価共開始剤、オリゴマーもしくはポリマー共開始剤および重合性共開始剤からなる群から選択される。より好ましくは、前記拡散阻害共開始剤は、ポリマー共開始剤および重合性共開始剤からなる群か
ら選択される。もっとも好ましくは、前記拡散妨害共開始剤は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、より好ましくは、少なくとも1つのアクリレート基を有する重合性共開始剤である。
【0085】
前記放射線硬化性インキジェットインキは好ましくは、重合性のまたはポリマーの第三アミン共開始剤を含む。
【0086】
好ましい拡散妨害共開始剤は、欧州特許第2053101号明細書中のパラグラフ[0088]ないし[0097]中に開示された重合性共開始剤である。
【0087】
前記放射線硬化性インキジェットインキは好ましくは、前記放射線硬化性インキジェットインキの総重量の、0.1ないし20重量%の量、より好ましくは0.5ないし15重量%の量、もっとも好ましくは1ないし10重量%の量の前記(拡散阻害)共開始剤を含む。
【0088】
重合阻害剤(polymerization inhibitors)
前記放射線硬化性インキジェットインキは、前記インキの熱安定性を改善するために少なくとも1種の阻害剤(inhibitor)を含む場合がある。
【0089】
適切な重合阻害剤は、フェノールタイプの抗酸化剤、ヒンダードアミンの光安定剤、リンタイプの抗酸化剤、(メタ)アクリレートモノマー中に一般に使用されるヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、そしてヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2,6−ジ−tert.ブチル−4−メチルフェノール(=BHT)が使用される場合もある。
【0090】
適切な市販の阻害剤は例えば、Sumitomo Chemical Co.Ltd.により製造されるSumilizer(商標)GA−80、Sumilizer(商標)GMおよびSumilizer(商標)GS;Rahn AGからのGenorad(商標)16、Genorad(商標)18およびGenorad(商標)20;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastab(商標)UV10とIrgastab(商標)UV22、Tinuvin(商標)460およびCGS20;Kromachem LtdからのFloorstab(商標)UV系列(range)(UV−1、UV−2、UV−5およびUV−8);Cytec Surface SpecialtiesからのAdditol(商標)S系列(S100、S−110、S120およびS130)である。
【0091】
前記阻害剤は好ましくは重合可能な(polymerizable)阻害剤である。
【0092】
前記重合阻害剤の過剰な添加は、硬化速度を低下する場合があるので、混合の前に、重合を阻害することができる量が決定されることが好ましい。重合阻害剤の量は好ましくは、前記の総放射線硬化性インキジェットインキの5重量%未満、より好ましくは3重合%未満である。
【0093】
界面活性剤
前記放射線硬化インキジェットは、少なくとも1種の界面活性剤を含む場合があるが、好ましくは、界面活性剤は含まれない。界面活性剤が含まれない場合は、前記放射線硬化性インキジェットインキは前記金属シート上に十分に広がらず、それにより細い導電性ライン(thin conductive lines)の形成を可能にする。
【0094】
前記界面活性剤はアニオン、カチオン、非イオン性または両イオン性である場合があり
、通常、前記放射線硬化性インキジェットインキの総重量にもとづいて1重量%未満の総量で添加される。
【0095】
適切な界面活性剤は、フッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、アルキルベンゼンスルホネート塩、高級アルコールのスルホスクシネートエステル塩およびホスフェートエステル塩(例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートおよびナトリウムジオクチルスルホスクシネート)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、並びにそのアセチレングリコールおよびエチレンオキシド付加物(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびAIR PRODUCTS&CHEMICALS INC.から市販のSURFYNOL(商標)104、104H、440、465およびTG)を含む。
【0096】
好ましい界面活性剤は、フッ素の界面活性剤(フッ素化炭化水素のような)およびシリコーン界面活性剤から選択される。前記シリコーン界面活性剤は好ましくはシロキサンであり、そしてアルコキシル化、ポリエーテル改質、ポリエーテル改質ヒドロキシ官能化(functional)、アミン改質、エポキシ改質され、そして別の改質体またはそれらの組み合わせ物である場合がある。好ましいシロキサンは、ポリマー、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0097】
好ましい市販のシリコーン界面活性剤はBYK ChemieからのBYK(商標)333およびBYK(商標)UV3510を含む。
【0098】
好ましい実施態様において、前記界面活性剤は重合可能性化合物である。
【0099】
好ましい重合可能性シリコーン界面活性剤は、(メタ)アクリレート化シリコーン界面活性剤を含む。アクリレートはメタクリレートよりも反応性であるために、前記(メタ)アクリレート化シリコーン界面活性剤はもっとも好ましくはアクリレート化シリコーン界面活性剤である。
【0100】
好ましい実施態様において、前記(メタ)アクリレート化シリコーン界面活性剤は、ポリエーテル改質(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル改質(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサンである。
【0101】
前記界面活性剤は、前記放射線硬化性インキジェットインキの総重量にもとづいて、0ないし3重量%の量で前記放射線硬化性インキジェットインキ中に含まれるのが好ましい。
【0102】
インキジェットインキの調製
着色(pigmented)放射線硬化性インキジェットインキの調製は当業者に周知である。好ましい調製法は、国際公開第2011/069943号パンフレットのパラグラフ[0076]ないし[0085]に開示されている。
【0103】
インキジェットプリント法および導体パターンの製法 本発明に従うインキジェットプリントの方法は、
a)金属表面上に前記のとおりの放射線硬化性インキジェットインキをプリントしそして硬化させることにより、前記金属またはガラスの表面上に保護領域を形成し、
b)エッチング処理により、前記金属またはガラス表面の未保護領域から前記金属またはガラスを取り除き、そして
c)前記金属またはガラス表面の前記の保護領域から、前記の硬化済み放射線硬化性イン
キジェットインキを少なくとも一部取り除く:
工程を含む。
【0104】
一つの好ましい実施態様において、前記インキジェットプリント法は導体パターンを製造するために使用される。このような導体パターンは好ましくは、「プリント回路板(PCB)」の製造に使用される。この場合、前記金属表面は好ましくは、基板(substrate)に取り付けられた金属フォイルまたはシートである。
【0105】
基板が不導体(non−conductive)である限りは、前記金属シートに接着される基板のタイプに実際的な制約はない。前記基板はセラミック、ガラスまたは、ポリイミドのようなプラスチック、でできている場合がある。
【0106】
前記金属シートは通常、9ないし105μm間の厚さを有する。
【0107】
前記金属表面の性状に制約はない。前記金属表面は好ましくは、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、チタンまたは亜鉛からなるが、これらの金属を含む合金の場合もある。非常に好ましい実施態様において、前記金属表面は銅でできている。銅は高い導電率を有し、また比較的安価な金属であるために、銅はプリント回路板製造に非常に適する。
【0108】
別の好ましい実施態様において、前記インキジェットプリント法は装飾的エッチング処理金属パネル製造に使用される。
【0109】
使用される前記金属表面は、導体パターンが調製される実施態様について前記金属から選択される場合がある。この場合、好ましくは固体の金属パネルが使用される。しかし、基板に取り付けられた金属フォイルが使用されることもある。前記金属フォイルに接着される基板のタイプに実際的制約はない。前記基板はセラミック、ガラスまたはプラスチック、あるいは更に二次的(より安価な)金属板からできている場合がある。前記金属はまた合金の場合もある。
【0110】
このような装飾的金属パネルは、情報を提供するような、純粋に装飾的であること以外の目的に役立つ場合がある。例えば、前記エッチング抵抗性放射線硬化性インキジェットインキが人名または会社名のような情報としてプリントされ、その後取り除かれて、マットのエッチング済み背景上に光沢のある名前をもたらしたアルミニウムの名札も、装飾的要素を含む装飾的金属パネルとみなされる。エッチング処理は、光沢の変化のような、金属表面の光学的特性の変化を引き起こす。前記金属表面上から前記の硬化された放射線硬化性インキジェットインキの除去後に、エッチング処理金属表面と未エッチング処理金属表面間に審美的効果が形成される。
【0111】
前記インキジェットプリント法の好ましい実施態様において、前記放射線硬化性インキジェットインキをプリントする前に、前記金属表面は洗浄される。これは特に、前記金属表面が手で取り扱われ、手袋を装着されない場合に望ましい。前記金属表面に対する前記放射線硬化性インキジェットインキの接着性を妨げる可能性がある塵粒子および油脂を前記洗浄は除去する。
【0112】
更に別の好ましい実施態様において、前記インキジェット法は装飾的エッチング処理ガラスパネル製造のために使用される。このような方法は例えば、国際公開第2013/189762号パンフレット(AGC)に開示されている。
【0113】
エッチング工程
前記インキジェットプリント法の工程b)におけるような金属表面のエッチング処理は
、エッチング剤(etchant)を使用することにより実施される。前記エッチング剤は好ましくはpH<3または8<pH<10の水溶液である。
【0114】
好ましい実施態様において、前記エッチング剤は2未満のpHを有する酸水溶液である。前記の酸エッチング剤は、好ましくは硝酸、ピクリン酸、塩化水素酸、フッ化水素酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1つの酸を含む。
【0115】
当該技術分野で知られた好ましいエッチング剤は、Kalling’s N°2、ASTM N°30、Kellers Etch、Klemm’s Reagent、Kroll’s Reagent、Marble’s Reagent、Murakami’s
Reagent,Picral and Vilella’s Reagentを含む。
【0116】
別の好ましい実施態様において、前記エッチング剤は9以下のpHを有するアルカリ性水溶液である。前記アルカリ性エッチング剤は好ましくは、アンモニアもしくは水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの塩基を含む。
【0117】
前記エッチング剤はまた、二塩化銅、硫酸銅、フェリシアン化カリウムおよび三塩化鉄のような金属塩を含む場合がある。
【0118】
PCB用途における金属表面のエッチング工程は好ましくは、数秒ないし数分、より好ましくは5ないし150秒の時間枠内で実施される。エッチング工程は好ましくは、35ないし50℃の間の温度で実施される。
【0119】
装飾的金属パネルの製造におけるような別の用途における金属表面のエッチング時間は、エッチング工程中に除去されなければならない金属の種類および量に応じて、実質的により長い場合がある。エッチング時間は15、30または60分より、長い場合がある。
【0120】
ガラスの表面がエッチング処理される方法において、前記エッチング溶液は、好ましくはフッ化水素酸の水溶液である。典型的には、前記エッチング溶液は0ないし5間のpHを有する。
【0121】
エッチング処理の次に、好ましくは、あらゆる残留エッチング剤を除去するための水洗浄が続く。
【0122】
ストリッピング工程
エッチング工程の後に、例えば、電気装置または電子装置が前記残留金属表面(導体パターン)と接触する可能性があるように、またはエッチング処理金属パネルの装飾的特徴(feature)が完全に可視的になるように、前記硬化済み放射線硬化性インキジェットインキは、前記金属表面から少なくとも一部は除去されなければならない。例えば、トランジスターのような電子部品(electronic component)はプリント回路板上の導体(銅)パターンと電気的接触することができなければならない。好ましい実施態様において、前記の硬化済み放射線硬化性インキジェットインキは前記金属表面から完全に除去される。
【0123】
好ましい実施態様において、前記の硬化済み放射線硬化性インキジェットインキはアルカリ性ストリッピング浴によって、工程c)において保護領域から除去される。このようなアルカリ性ストリッピング浴は通常、pH>10を伴う水溶液である。
【0124】
別の実施態様において、前記の硬化処理放射線硬化性インキジェットインキは、乾燥層間剥離によって、工程c)において保護領域から除去される。この「乾燥ストリッピング」技術は、プリント回路板製造の技術分野において現在は未知であり、そして前記製造工程にいくつかの環境学的および経済学的利点を導入する。乾燥ストリッピング工程は腐蝕性アルカリ性ストリッピング浴の需要およびその固有の液体廃棄物を回避するのみならずまた、より高い処理量を可能にする。乾燥ストリッピング工程は、例えば接着性フォイルおよびロールからロールの張り合わせ機−剥離機を使用することにより実施される場合がある。前記接着フォイルを最初に、前記金属表面上に存在する前記の硬化済み放射線硬化性インキジェットインキ上でその接着面と張り合わせ、次にそれにより前記金属表面から前記硬化済み放射線硬化性インキジェットインキを除去することにより剥離される。ロールからロールの張り合わせ機―剥離機による剥離は数秒で実施される可能性があるが、アルカリ性ストリッピング工程は数分を要する。
【0125】
インキジェットプリント装置
前記放射線硬化性インキジェットインキは、1個もしくは複数のプリントヘッドについて移動している基板(substrate)上に、制御された方法でノズルを通して小滴を噴射する1個以上のプリントヘッドにより噴射される場合がある。
【0126】
前記インキジェットプリントシステムに好ましいプリントヘッドは、圧電ヘッドである。圧電インキジェットプリントは、圧電セラミック変換器(transducer)に電圧が印加されるときの動き(movement)にもとづく。電圧の印加は、前記プリントヘッドにおける前記圧電セラミック変換器の形状を変化させて、間隙を形成し、次にそれがインキで充填される。前記電圧が再度切断されると、前記セラミックは元来の形状に膨張し、前記プリントヘッドから一滴のインキを噴射する。しかし、本発明によるインキジェットプリント法は、圧電インキジェットプリントに限定はされない。別のインキジェットプリントヘッドが使用される場合があり、連続タイプのような様々なタイプを含む場合がある。
【0127】
前記インキジェットプリントヘッドは、通常移動しているインキレシーバーの表面上を横方向に往復スキャンする。前記インキジェットプリントヘッドはしばしば、復路上ではプリントしない。双方向プリントは、広い面積の処理を得るために好ましい。別の好ましいプリント法は、前記金属板の幅全体をカバーする、ページ幅のインキジェットプリントヘッドまたは複数の千鳥形インキジェットプリントヘッドを使用することにより実施される場合がある「1回パスプリント法」によるものである。1回パスプリント法において、前記インキジェットプリントヘッドは通常、固定されたままであり、そして前記金属基板は前記インキジェットプリントヘッドの下方を運搬される。
【0128】
硬化装置
前記放射線硬化性インキジェットインキは、電子ビームまたは紫外線のような化学線に曝露されることにより硬化される場合がある。好ましくは、前記放射線硬化性インキジェットインキは、紫外線によって、より好ましくはUV LED硬化を使用して硬化される。
【0129】
インキジェットプリントにおいて、その硬化手段は、前記硬化液が噴射の直後に硬化線に曝露されるように、それと一緒に移動している前記インキジェットプリンターのプリントヘッドと組み合わせて配列される場合がある。
【0130】
UV LEDを例外として、このような配列においては、前記プリントヘッドに接続され、それと一緒に移動する、十分に小型の放射線源を提供することは困難である場合があ
る。従って、静的に固定された線源、例えば、光ファイバーの束または内部反射性の柔軟な管のような、柔軟な放射線伝導手段(radiation conductive)により前記放射線源に接続された硬化UV源が使用される場合がある。
【0131】
あるいはまた、前記化学線は、前記放射線ヘッドの上方に鏡を含む、鏡の集成装置(arrangement)により、固定源から前記放射線ヘッドに供給される場合がある。
【0132】
前記放射線源はまた、硬化される基板上を横切って延伸する細長い線源の場合がある。前記放射線源は、前記プリントヘッドにより形成されるその次の画像の列が、段階的にまたは連続的に、その放射線源の下方を通過するように、前記プリントヘッドの横断経路に隣接される場合がある。
【0133】
あらゆる紫外線源は、前記放射光の一部が光開始剤または光開始系により吸収可能である限り、高圧もしくは低圧水銀ランプ、冷陰極管、紫外線照射装置(black light)、紫外線LED、紫外線レーザーおよび閃光灯(flash light)のような放射線源として使用されてもよい。これらのうちで好ましい線源は、300ないし400nmの主要波長を有する比較的長い波長のUV貢献(UV−contribution)を示すものである。具体的には、UV−A光源はより効率的な内部の硬化をもたらす低い光線散乱のために、好ましい。
【0134】
UV光線は一般に、以下:
・UV−A:400nmないし320nm、
・UV−B:320nmないし290nm、
・UV−C:290nmないし100nm、
のとおりにUV−A、UV−BおよびUV−Cと分類される。
【0135】
好ましい実施態様において、前記放射線硬化性インキジェットインキはUV LEDにより硬化される。前記インキジェットプリント装置は、好ましくは360nmより長い波長を伴う1種以上のUV LED、好ましくは380nmより長い波長を伴う1種以上のUV LED、そしてもっとも好ましくは約395nmの波長をもつUV LEDを含む。
【0136】
更に、異なる波長または照度をもつ2つの光源を、連続的にまたは同時に使用してそのインキ画像を硬化することが可能である。例えば、第1のUV源は、とりわけ260nmないし200nmの範囲内のUV−Cが豊富であるように選択される場合がある。次に第2のUV源は、UV−Aが豊富な、例えば、ガリウムドープランプ、またはUV−AとUV−Bとの両方が豊富な、異なるランプである場合がある。2種のUV源の前記の使用は、利点、例えば急速な硬化速度および高い硬化度、を有することがわかっている。
【0137】
硬化を促進するために、前記インキジェットプリント装置は、しばしば1基以上の酸素枯渇(depletion)ユニットを含む。前記酸素枯渇ユニットは、硬化環境内の酸素濃度を低下させるために、調整可能な位置および調整可能な不活性ガス濃度を伴う、窒素または別の、比較的不活性なガス(例えば、CO2)のブランケットを配置する。残留酸素レベルは通常、200ppmまで低く維持されるが、一般には200ppmないし1200ppmの範囲内にある。
【実施例】
【0138】
材料
以下の実施例中に使用されたすべての材料は、別記されない限りALDRICH CHEMICAL Co.(ベルギー)およびACROS(ベルギー)のような、標準的な製
造元から容易に入手可能であった。使用された水は脱イオン水であった。
【0139】
SR606Aは、ARKEMAからのSartomer(商標)SR606Aとして市販されているネオペンチルグリコールヒドロキシピバレ−トジアクリレートである。
【0140】
ACMOは、RAHNから市販のアクリロイルモルホリンである。
【0141】
ITXは、BASFからDarocur(商標)ITXとして市販の2−および4−イソプロピルチオキサントンの異性体混合物である。
【0142】
TPOは、BASFからDarocur(商標)TPOとして市販の光開始剤の2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドである。
【0143】
EPDは、RAHNからGenocure(商標)EPDとして市販のエチル4−ジメチルアミノベンゾエートである。
【0144】
CEAは、ALDRICHからの2−カルボキシエチルアクリレートである。
【0145】
Polysurf HPは、ADD APT Chemicals BVにより供給される、以下の構造を有する酸定着剤である。
【化4】
【0146】
Polysurf HPACEは、ADD APT Chemicals BVにより供給される、以下の構造を有する酸定着剤である。
【化5】
【0147】
Polysurf HPLは、ADD APT Chemicals BVにより供給される、以下の構造を有する酸定着剤である。
【化6】
【0148】
Polysurf HPHは、ADD APT Chemicals BVにより供給される、以下の構造を有する酸接着促進剤である。
【化7】
【0149】
Mono−1は、欧州特許第1721949号明細書(VOGO GmbH)の実施例中に開示されたとおりに合成された、本発明に従う定着剤である。
【0150】
CN146は、ARKEMAからの(2−アクリロイルオキシエチル)フタレートである。
【0151】
INHIBは、表3に記載の組成物を有する重合阻害剤を形成する混合物である:
【0152】
【表3】
【0153】
Cupferron(商標)ALは、WAKO CHEMICALS LTDからのアルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンである。
【0154】
Dye−1は、LANXESSからMacrolex(商標)Blue3Rとして市販の、青色アントラキノン染料である。
【0155】
使用されたFeCl3エッチング溶液は、MEGA ELECTRONICSから得られる“Mega”酸エッチング剤(pH=2)である。
【0156】
CuCl2エッチング溶液は、17gのHClを含む80gの蒸留水中、34.9gの塩化銅(2)水和物の溶液(37%)である。
【0157】
方法
銅の洗浄
CCI EurolamからのIsola(商標)400の銅板を、pH<1を有し、H2SO4、H22およびCu2+を含む、MEC EuropeからのMecbrite(商標)CA−95と呼ばれる溶液で25℃において5秒間洗浄した。この操作中に、Cu(0.3ないし0.5μm)の薄い最上層が除去された。次に前記銅板を90秒間、水のジェットですすぎ、乾燥し、そして直ちに使用した。
【0158】
粘度
前記インキの粘度を、CAMBRIDGE APPLIED SYSTEMSからの“Robotic Viscometer Type VISCObot”を使用して45℃および1000s-1のずり速度において測定した。
【0159】
工業的インキジェットプリントについては、45℃および1000s-1のずり速度における粘度は、好ましくは、5.0ないし15mPa.s間である。より好ましくは、45℃および1000s-1のずり速度における粘度は15mPa.s未満である。
【実施例1】
【0160】
本実施例は本発明に従う定着剤を含むUV硬化性インキジェットインキの優れた湿潤接着性を示す。
【0161】
対照(comparative)インキCOMP−1ないしCOMP−5および本発明のインキINV−1
前記対照放射線硬化性インキジェットインキCOMP−1ないしCOMP−5および本発明の放射線硬化性インキジェットインキINV−1を表4に従って調製した。重量百分率(重量%)はすべて前記放射線硬化性インキジェットインキの総重量にもとづく。
【0162】
【表4】
【0163】
本発明のインキおよび対照のインキそれぞれの粘度を前記のとおりに測定し、前記インキの保存寿命安定性を、80℃で7日間保存し、そして粘度を再測定することにより決定した。その結果は表5に要約される。
【0164】
【表5】
【0165】
対照の試験サンプルCOMP−S−1ないしCOMP−S−5および本発明の試験サンプルINV−S−1
前記放射線硬化性インキジェットインキCOMP−1ないしCOMP−5およびINV−1それぞれの5×10cmの2つのパッチを、洗浄されたIsola(商標)銅板上に10μmの厚さにコートし、次に、20/分の速度でコンベヤーベルト上を前記UV−ランプの下方で完全硬化のために前記サンプルを2回運搬した、Fusion VPS/1600ランプ(D−電球)を備えたFusion DRSE−120コンベヤー上で硬化させることにより調製した。前記ランプの最大出力は1.05J/cm2であり、5.6W/cm2のピーク強度であった。
【0166】
湿潤接着性の評価
対照の試験サンプルCOMP−S−1ないしCOMP−S−5および本発明の試験サンプルINV−S−1
PCB製造のための作業の流れ全体に渡る前記湿潤接着性を以下のとおりにシミュレートした。
【0167】
対照の試験サンプルCOMP−S−1ないしCOMP−S−5および本発明の試験サンプルINV−S−1それぞれの第1サンプルを、前記CuCl2エッチング溶液を使用して50℃で90秒間、Rotaspray中でエッチング処理した。前記接着性を、湿ったQ−ティップを使用して湿った銅版の表面を引っかくことにより試験した。前記接着性は前記被膜が損傷されなかったときにOKと評価された。基礎を成す銅の一部が現れたときは、前記接着性はnOKと評価された。
【0168】
前記対照の試験サンプルCOMP−S−1ないしCOMP−S−5および本発明の試験サンプルINV−S−1の第2のサンプルを、前記CuCl2エッチング溶液を使用して、50℃で90秒間、Rotaspray中でエッチング処理した。次に前記サンプルを脱ミネラル水で90秒間すすぎ、前記接着性試験を反復した。
【0169】
その結果は表6に要約される。
【表6】
【0170】
表5および6の結果から、本発明に従うUV硬化性エッチング抵抗インキのみが、全PCB製造工程期間を通して、高い保存寿命の安定性および保証された湿潤接着能を合わせもったことが結論できる。
【実施例2】
【0171】
本実施例は、本発明のエッチング抵抗インキの異なるエッチング条件での適合性を示す。
【0172】
対照インキCOMP−6、COMP−7および本発明のインキINV−2
対照インキCOMP−6およびCOMP−7および本発明のインキINV−2を表7に従って調製した。重量百分率(重量%)はすべて前記放射線硬化性インキジェットインキの総重量にもとづいた。
【0173】
【表7】
【0174】
対照の試験サンプルCOMP−S−6、COMP−S−7および本発明の試験サンプルINV−S−2
対照の試験サンプルCOMP−S−6およびCOMP−S−7および本発明の試験サンプルINV−S−2を、720*1440 DPIの解像度において単方向プリントの8パスプリントモードでプリントされるAnapurna Mを使用して、洗浄直後の銅板
上に前記インキCOMP−6およびCOMP−7およびINV−2を噴射することにより得た。前記サンプルを、前記プリンター上にHバルブを使用して全出力で硬化した。
【0175】
各インキの第1のサンプルを、Rotasprayを使用して、50℃で90秒間、前記CuCl2エッチング溶液中でエッチング処理した。各サンプルの湿潤接着性を、湿ったQ−ティップを使用し、前記の湿った銅板の表面を引っかくことにより、エッチング処理の直後に試験した。前記接着性を、前記被膜が損傷されなかったときにOKと評価した。土台の銅板の一部が現れたときに、前記接着性はnOKと評価した。
【0176】
各インキの第2のサンプルを、前記のとおりのCuCl2基剤のエッチング化学薬品中でエッチング処理したが、次に、今度は90秒間、脱ミネラル水ですすいだ。前記銅板の表面上に残留するエッチング抵抗剤の百分率を計算し、すすぎ後の湿潤接着性を前記のとおりに再度評価した。プリント回路板の製造において十分な生産許容範囲(production latitude)を保証するためには、少なくとも95%の百分率が必要である。
【0177】
各インキの第3のサンプルを、FeCl3エッチング溶液中で35℃において115秒間エッチング処理した。各サンプルの湿潤接着性を、Q−ティップを使用して前記湿潤銅板の表面を引っかくことにより、エッチング直後に試験した。
【0178】
各インキの第4のサンプルを、前記FeCl3エッチング溶液中でエッチング処理したが、今度は、その後に90秒間、脱ミネラル水ですすいだ。前記表面上に残留するエッチング抵抗剤の百分率を計算し、すすぎ後の前記湿潤接着性を、前記のとおりに再度評価した。
【0179】
前記の評価結果は表8に要約される。
【表8】
【0180】
表8から、本発明に従う前記エッチング抵抗インキは、異なるエッチング条件に対し、最も広い適用範囲を有することが明白になる。