特許第6828152号(P6828152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828152
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】圧延スタンドのロールの冷却
(51)【国際特許分類】
   B21B 27/10 20060101AFI20210128BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B21B27/10 A
   B21B27/10 C
   B21B27/10 D
   B21B45/02 320C
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-520550(P2019-520550)
(86)(22)【出願日】2017年10月12日
(65)【公表番号】特表2019-534792(P2019-534792A)
(43)【公表日】2019年12月5日
(86)【国際出願番号】EP2017076000
(87)【国際公開番号】WO2018073086
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】16194099.4
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アロイス・ザイリンガー
(72)【発明者】
【氏名】エリッヒ・オーピッツ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・ピヒラー
【審査官】 中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−198314(JP,A)
【文献】 特開平10−291011(JP,A)
【文献】 実開昭51−079507(JP,U)
【文献】 特開2001−347307(JP,A)
【文献】 特表2016−515474(JP,A)
【文献】 特開昭55−122609(JP,A)
【文献】 実開昭60−190403(JP,U)
【文献】 特開昭63−119917(JP,A)
【文献】 特開2008−260047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/00−35/14
B21B 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤を受け入れて吐出するための冷却棒(13)を備えた、圧延スタンド(1)のロール(5)を冷却するための冷却装置(7)であって、
前記冷却棒(13)が、前記冷却棒(13)の吐出側面(19)に配置された複数のジェットノズル(21)を有し、前記吐出側面が、ロール(5)に面して前記ロール(5)のロール軸(17)に平行に延在し、一定のジェット径の冷却剤の冷却剤ジェットを、ジェットノズルのそれぞれを通して、前記冷却棒(13)から前記ロール(5)に向けて吐出方向(23)に吐出することができ、
前記冷却棒(13)が、冷却剤を受け入れるための、相互に分離した少なくとも2つの冷却剤室(25〜27)に分割され、各冷却剤室(25〜27)が、複数のジェットノズル(21)が配置された前記冷却棒(13)の前記吐出側面(19)の部分領域(29〜31)に対応し、前記ジェットノズル(21)のそれぞれを通して、冷却剤ジェットを前記冷却剤室(25〜27)から前記ロール(5)に向けて吐出することができる、冷却装置(7)。
【請求項2】
第1の冷却剤室(25)が、前記冷却棒(13)の前記吐出側面(19)の第1の部分領域(29)に対応し、前記第1の部分領域(29)が、前記冷却棒(13)の前記吐出側面(19)の中心線(37)に対して鏡面対称であり、軸が前記ロール軸(17)に垂直であることを特徴とする、請求項に記載の冷却装置(7)。
【請求項3】
中心線(37)に並行する第1の部分領域(29)の範囲が、前記ロール軸(17)の方向に沿って変化し、前記中心線(37)に沿って最大であることを特徴とする、請求項またはに記載の冷却装置(7)。
【請求項4】
第1の部分領域(29)が多角形であることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の冷却装置(7)。
【請求項5】
各冷却剤室(25〜27)が、前記冷却剤室(25〜27)内に冷却剤を供給するための冷却剤供給ライン(41)に接続され、前記冷却剤供給ライン(41)が、前記冷却剤室(25〜27)内に、前記冷却剤の前記吐出方向(23)に垂直に開口していることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の冷却装置(7)。
【請求項6】
前記冷却剤室(25〜27)内に供給される前記冷却剤の量を、それぞれの制御弁(43)、および/または、それぞれのポンプ(45)によって互いに独立して制御することができることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の冷却装置(7)。
【請求項7】
前記冷却剤室(25〜27)内に供給される前記冷却剤の量を制御するための自動化システムによって特徴付けられた、請求項からのいずれか一項に記載の冷却装置(7)。
【請求項8】
前記ロール軸(17)に平行な方向に沿って相互に隣り合うジェットノズル(21)のノズル間隔(d)が、前記方向に沿って変化していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の冷却装置(7)。
【請求項9】
前記ノズル間隔(d)が、前記冷却棒(13)の前記吐出側面(19)の中央領域において最も狭いことを特徴とする、請求項に記載の冷却装置(7)。
【請求項10】
前記ノズル間隔(d)が、25mmから50mmの間であることを特徴とする、請求項またはに記載の冷却装置(7)。
【請求項11】
記ジェットノズル(21)が、相互に平行な複数のノズル列(39)になるように配置されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の冷却装置(7)。
【請求項12】
前記冷却棒(13)が、前記ジェットノズル(21)が取り外し可能に固定された、各ジェットノズル(21)のためのノズル開口を有していることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の冷却装置(7)。
【請求項13】
前記ロール(5)から冷却剤をぬぐい取るためのワイパ(15)であって、前記冷却棒(13)と一緒に枢動させることができるワイパ(15)によって特徴付けられた、請求項1から12のいずれか一項に記載の冷却装置(7)。
【請求項14】
ロール(5)と、請求項1から12のいずれか一項に記載されたようにそれぞれ設計された2つの冷却装置(7)と、を備えた圧延スタンド(1)であって、前記2つの冷却装置(7)が、圧延方向において、前記ロール(5)の両側に配置されている、圧延スタンド(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延スタンドのロールを冷却するための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延素材を圧延するための圧延スタンドは、冷却液体、一般的には冷却水を用いて冷却されるロールを有する。
【0003】
特許文献1には、低圧の冷却液体を圧延スタンドのロールにかけることができる、剛性の高い凹状のシェルが開示されている。
【0004】
特許文献2には、移動可能な関節式冷却シェルによる圧延スタンドのワークロールの流動冷却が開示されている。この場合、冷却液体は、冷却シェルを用いて主として低圧でかけられるが、さらに、冷却液体は、高圧でかけられて十分な冷却効果を生じる。
【0005】
特許文献3には、圧延スタンドのワークロールを冷却するための冷却装置が開示されており、この装置は、関係する圧延スタンドを用いて生産される最も狭い片よりもやや狭い固定スプレー棒を有し、そのときに圧延されている片の幅に対応するワークロールのこれらの部分のみを冷却するための、軸方向に移動可能なスプレー棒を有する。
【0006】
特許文献4には、圧延スタンドのワークロールを冷却するための方法が開示されており、この方法では、冷却水が、高圧ではなく低圧でワークロールに噴霧されるが、同時に、かけられる範囲が広くされている。
【0007】
特許文献5には、圧延材を冷却するためのスプレー棒が開示されており、このスプレー棒は、圧延材の移動方向に横断して延在し、中央領域および2つの縁領域を有して、冷却媒体をそれらのそれぞれに別々に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0089112号
【特許文献2】独国特許出願公開第102009053074号
【特許文献3】特開平6-170420号
【特許文献4】特開昭59-156506号
【特許文献5】国際公開第2014/170139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
圧延スタンドのロールを冷却するための改善された冷却装置を特定することが本発明の基本的な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0011】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0012】
圧延スタンドのロールを冷却するための本発明による冷却装置は、冷却剤を受け入れて吐出するための冷却棒を備える。冷却棒は、冷却棒の吐出側面に配置された複数のフルジェットノズルを有し、前記側面は、ロールに面してロールのロール軸に平行に延在する。ほぼ一定のジェット径の冷却剤の冷却剤ジェットを、各フルジェットノズルを通して、冷却棒からロールに向けて吐出方向に吐出することができる。
【0013】
フルジェットノズルとは、ほぼ一定のジェット径で実質的に直線状の冷却剤ジェットを吐出することができるノズルを意味するものとする。冷却剤を集中させて吐出するおかげで、フルジェットノズルは、従来使用されてきたファンジェットノズルよりも、冷却棒での同じ冷却剤圧力でより高いロールへの衝撃圧を生じる。全体にかけられた大量の冷却剤の量により、典型的には、数ミリメートルから数センチメートルの厚さの特定の冷却剤膜が常にあり、良好な放熱のために冷却剤ジェットを衝突させることによって、この膜はできるだけ完全に貫通されるべきであるので、より高い衝撃圧は、ロール表面での冷却作用に直接良い効果を生じる。フルジェットノズルによって生じた、ロールへの冷却剤ジェットの高い衝撃圧のおかげで、冷却棒の冷却剤圧力は、ファンジェットノズルを使用した場合に比べて大きく下げることができ、それによって、冷却装置のエネルギー消費および運用コストを大きく下げることができることは有利である。
【0014】
冷却剤はフルジェットノズルを通って吐出されるので、ロールからスプレー棒までの間隔はさらに、広い範囲にわたってそれほど重要ではなくなり、したがって、ロール直径に適合させる必要はない。したがって、例えば、実質的に直進する冷却剤ジェットによって、冷却剤ジェットの冷却効果に何ら大きな変化もなしに、50mmから500mmの間の距離で、冷却されるべきロール表面を冷却することができる。
【0015】
冷却剤圧力の低下はまた、負荷の低減、その結果としてノズルの摩耗の低減に関係するので、これもまた、冷却棒の冷却剤圧力の低下の結果、保守費用が低減され、これがフルジェットノズルの使用の別の利点である。
【0016】
本発明の一実施形態では、冷却棒が、冷却剤を受け入れるための、相互に分離した少なくとも2つの冷却剤室に分割されることが想定されている。各冷却剤室は、複数のフルジェットノズルが配置された冷却棒の吐出側面の部分領域に対応し、フルジェットノズルのそれぞれを通して、冷却剤ジェットを冷却剤室からロールに向けて吐出することができる。冷却棒の吐出側面の異なる部分領域に対応する、相互に分離した複数の冷却剤室に、冷却棒を分割すると、互いに独立して、部分領域の冷却剤圧力を制御し、その結果、部分領域によって吐出される冷却剤流量を制御することによって、部分領域の冷却効果を互いに独立して制御することができることは有利である。それによって、位置に応じてロールの冷却に影響を与えることが可能となり、ロール表面のより強く加熱された領域、例えば、ロール表面の中央領域を、それほど強く加熱されていない領域よりも確実に強く冷却することができることは有利である。
【0017】
本発明の上記の実施形態の展開としては、第1の冷却剤室が、冷却棒の吐出側面の第1の部分領域に対応し、第1の部分領域が、冷却棒の吐出側面の中心線に対して鏡面対称であり、その軸がロール軸に垂直であることが想定されている。例えば、中心線に並行する第1の部分領域の範囲は、ロール軸の方向に沿って変化し、中心線に沿って最大である。例えば、第1の部分領域は多角形である。第1の部分領域が中心線に対して鏡面対称の実施形態は、ロールが概ね同様に、中心線に対して対称的に加熱されるという事実を考慮している。中心線に並行する第1の部分領域の範囲がロール軸の方向に沿って変化し、中心線に沿って最大範囲を有することは、ロールが、一般に、中心において最も強く加熱され、ロールの加熱が縁領域に向けて減少するという事実を考慮している。したがって、これに対応した第1の部分領域の構成は、第1の部分領域によって、位置に依存したロールの熱負荷にロールの冷却を適合させることを可能にする。
【0018】
本発明の別の実施形態では、各冷却剤室が、冷却剤室内に冷却剤を供給するための冷却剤供給ラインに接続され、冷却剤供給ラインが、冷却剤室内に、冷却剤の吐出方向に実質的に垂直に開口していることが想定されている。冷却剤供給ラインが、冷却棒内に、吐出方向に実質的に垂直に開口していることによって、各冷却剤室内の冷却剤の圧力分布をほとんど均一にすることができる。それによって、開口近くのフルジェットノズルと開口から離れたフルジェットノズルとの間の圧力勾配がなくなることは有利である。
【0019】
本発明の別の実施形態では、冷却剤室内に供給される冷却剤の量を、それぞれの制御弁、および/または、それぞれのポンプによって互いに独立して制御することができることが想定されている。これによって、上記のように、個々の冷却剤室から吐出される冷却剤ジェットの冷却効果を互いに独立して制御することができる。例えば、通常、4barの圧力で冷却水を送出する水供給システムなどの、例えば、いかなるときにも存在する従来の冷却剤供給システムを、関連する圧延システムにおいて使用することができる場合には、制御弁によって冷却剤の量を制御することが特に有利である。この場合、ロール冷却をするために複雑で高価な昇圧システム無しで済ますことができる。適当であれば、制御弁と共に、ポンプによって冷却剤の量を制御することによって、圧延間の休止時、または、低い冷却能力しか必要でない圧延作業の場合に、個々のポンプを止める、またはポンプの動力を下げることができ、それによって、エネルギー消費を低減することができる。
【0020】
本発明の別の実施形態では、冷却剤室内に供給される冷却剤の量を制御するための自動化システムが想定されている。それによって、体積流量をロール表面の温度分布に適合させるために、冷却剤室からロールに吐出される冷却剤の体積流量を自動的に制御することができることは有利である。この場合、冷却剤室内に供給される冷却剤の量は、上記の制御弁および/またはポンプを制御することを通じて、自動化システムによって制御されることが好ましい。
【0021】
本発明の別の実施形態では、ロール軸に平行な方向に沿って相互に隣り合うフルジェットノズルのノズル間隔が前記方向に沿って変化していることが想定されている。この場合、ノズル間隔は、冷却棒の吐出側面の中央領域において最も狭いことが好ましい。例えば、ロール軸に平行な方向に沿うノズル間隔は、約25mmから約50mmの間である。本発明のこれらの実施形態によって、また、ロール軸に平行な方向に沿うノズル間隔が位置に依存したロール表面の熱負荷に従って変えられるので、フルジェットノズルの配置をこの熱負荷に適合させることもできる。最小のノズル間隔が冷却棒の吐出側面の中央領域にあるのは、ロール表面の中央領域が一般に、最大の熱負荷を受けるという事実を考慮している。
【0022】
本発明の別の実施形態では、フルジェットノズルが、相互に平行な複数のノズル列になるように配置されていることが想定されている。これによって、冷却剤をより広い範囲にわたって、かつ、ロールが回転することと併せて、均一にロールにかけることができることは有利である。
【0023】
本発明の別の実施形態では、冷却棒が、フルジェットノズルが取り外し可能に固定された、各フルジェットノズルのためのノズル開口を有していることが想定されている。本発明のこの実施形態によって、不良なジェットノズルを容易に交換することができることは有利である。
【0024】
本発明の別の実施形態では、ロールから冷却剤をぬぐい取るためのワイパが提供され、ワイパと冷却棒を一緒に枢動させることができる。例えば、ワイパによって、過剰な冷却剤が、圧延材に、および/または、圧延材が2つのロール間を案内されるロール間隙に導かれて、圧延材とロールとの間の摩擦を低減するための潤滑剤を洗い流すことを防ぐことができることは有利である。ワイパと冷却棒が一緒に枢動することができることによって、冷却棒を動かすための追加の装置の必要が除かれることは有利である。この場合、上記ですでに言及したフルジェットノズルを使用する利点は、この場合にもまた効果がある。すなわち、フルジェットノズルを使用することによって、スプレー棒とロールとの間の距離は、広い範囲にわたってそれほど重要ではなくなり、したがって、ロール直径に適合させる必要がなくなる。さらに、本発明はまた、ワイパを有する既存の圧延システムに対しては改造策として特に適しており、例えば、従来の高圧スプレー棒のみを本発明による冷却棒に交換するだけでよい。
【0025】
本発明による圧延スタンドは、ロール、および本発明による2つの冷却装置を備え、2つの冷却装置は、ロールの反対側に配置される。本発明による圧延スタンドの利点は、上記ですでに言及した、本発明による冷却装置の利点から生じる。
【0026】
この発明の上記の特性、特徴、および利点、ならびにこれらを達成する態様は、図面と併せてより詳細に説明される例示的な実施形態の以下の説明と関連して、より明確かつ明瞭に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】冷却装置を有する圧延スタンドの概略図である。
図2】冷却棒の第1の例示的な実施形態の概略斜視図である。
図3図2に示した冷却棒によって吐出される冷却剤の体積流量を位置の関数として示した図である。
図4】冷却棒の第2の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
図5】冷却棒の第3の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
図6】冷却棒の第4の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
図7】冷却棒の第5の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
図8】冷却棒の第6の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
図9】冷却棒の第7の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
図10】冷却棒の第8の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
図11】冷却棒の第9の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
図12】冷却棒の第10の例示的な実施形態の吐出側面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
すべての図面で、同じ部品には同じ参照符号が付けられている。
【0029】
図1は、圧延素材3を圧延するための圧延スタンド1の概略図である。圧延スタンド1は、ワークロールとして設計された2つのロール5、および各ロール5に対して2つの冷却装置7を備え、前記装置は、ロール5の両側に配置されている。ロール5は、ロール間隙9だけ間隔を置いて配置され、圧延材3を形成するために、圧延素材3をロール間隙9に圧延方向11に通す。各冷却装置7は、冷却棒13およびワイパ15を備える。
【0030】
各冷却棒13は、冷却剤を受け入れて吐出するように設計されている。冷却剤を吐出するために、冷却棒13は、冷却棒13の吐出側面19に配置された複数のフルジェットノズル21を有し、前記側面は、それぞれのロール5に面してロール5のロール軸17に平行に延在し、ほぼ一定のジェット径の冷却剤ジェットを、フルジェットノズルのそれぞれを通して、冷却棒13からロール5に向けて吐出方向23に吐出することができる。冷却剤は、冷却剤供給ライン41を経て冷却棒13内に供給することができ、冷却棒13内に供給される冷却剤の量は、制御弁43、および/または、例えば周波数制御のポンプ45によって制御することができる。冷却剤は、例えば、水である。
【0031】
各ワイパ15は、それぞれのロール5から冷却剤をぬぐい取るように設計され、ロール5に向かうように、またこれから離れるように枢動させることができる。各冷却装置7の冷却棒13およびワイパ15は、冷却装置7の枢動装置に固定され、したがって、冷却棒13およびワイパ15をロール5に向かうように、またロール5から離れるように一緒に枢動させることができることが好ましい。
【0032】
図2は、ロール5に冷却剤を吐出するための冷却棒13の第1の例示的な実施形態の概略斜視図である。冷却棒13は、相互に分離した3つの冷却剤室25〜27に分割されて、冷却剤を受け入れる。各冷却剤室25〜27は、複数のフルジェットノズル21が配置された吐出側面19の部分領域29〜31に対応し、冷却剤ジェットを冷却剤室25〜27からフルジェットノズルのそれぞれを通してロール5に向けて吐出方向23に吐出することができる。吐出側面19は、ロール軸17に平行な2つの長手方向辺33、34、およびロール軸17に垂直な2つの短手方向辺35、36を有する長方形である。
【0033】
第1の冷却剤室25は、吐出側面19の中央領域を形成する、冷却棒13の吐出側面19の第1の部分領域29に対応する。第1の部分領域29は、冷却棒13の吐出側面19の中心線37に対して鏡面対称であり、前記軸はロール軸17に垂直であり、第1の長手方向辺33に配置された2つの頂点と、第2の長手方向辺34の端点にそれぞれ配置された2つの頂点とを有する台形である。
【0034】
フルジェットノズル21は、それぞれがロール軸17に平行に延在する複数のノズル列39になって、吐出側面19に配置されている。この場合、各ノズル列39の相互に隣り合うフルジェットノズル21のノズル間隔dは、中心線37に対して対称的に変化しており、その結果、ノズル間隔dは、吐出側面19の中央領域において最も狭く、吐出側面19の縁領域に向かって、例えば、放物線状に広くなっている。図2に示した例示的な実施形態では、ノズル間隔dは、各ノズル列39の端部ではノズル列39の中心での間隔の2倍大きくなっている。ノズル間隔dは、例えば、25mmから50mmの間を変化する。ノズル列39は、吐出側面19の全範囲にわたって実質的に等間隔に延在し、したがって、ロール5のロール表面に比較的均一な冷却効果を生じる。
【0035】
図2に示した例示的な実施形態のさらなる展開としては、ノズル列39を互いに対してずらして配置することが想定され、したがって、様々なノズル列39のフルジェットノズル21が、ロール軸17に垂直な方向に沿って配置されてはいない。「冷却チャネル」は、ノズル列39に垂直に延在して、そこでは、ロール5に冷却剤が吐出されず、その結果、冷却効果が低下するが、この「冷却チャネル」を避けることができるので、ノズル列39の特に均一な冷却効果が達成されることは有利である。
【0036】
さらに、図2の隣り合う2つの部分領域29〜31間の境界線に非常に近い、または境界線上にあるフルジェットノズル21は、完全に省かれるか、または、図2に示した配置に対してずらされて、隣接した部分領域29〜31の1つに入るように配置され、それは分離板による冷却筒13の内部の冷却剤室25〜27への細分がこのような境界線に沿って延在するからである。
【0037】
各フルジェットノズル21は、冷却棒13のノズル開口に、例えば、ねじ込み継手によって取り外し可能に取り付けられる。フルジェットノズル21はそれぞれ、例えば、約4mmの最小直径のノズル断面を有する。
【0038】
各冷却剤室25〜27は、冷却剤室25〜27内に冷却剤を供給するための冷却剤供給ライン41に接続され、冷却剤供給ライン41は、冷却剤室25〜27内に、冷却剤の吐出方向23に実質的に垂直に開口している。冷却剤供給ライン41の断面はそれぞれ、例えば、100mmから150mmの間の直径を有する。
【0039】
冷却剤供給ライン41を経て冷却剤室25〜27内に供給される冷却剤の量を、それぞれの制御弁43(図2には示されていない)、および/または、それぞれのポンプ45(図2には示されていない)によって互いに独立して制御することができる。これによって、冷却剤室25〜27から吐出される冷却剤の量を、ロール表面の様々な領域の異なる熱負荷に対して適合させることができることは有利である。
【0040】
図3は、一例として、図2に示した冷却棒13から吐出される3つの冷却剤の体積流量V1、V2、V3を、ロール軸17に平行な方向に沿う位置yの関数として示す。ここで、体積流量V1、V2、V3は定格流量に対する比率で示されている。
【0041】
定格流量は、中央位置ymにおける第1の体積流量V1である。第1の体積流量V1は、冷却剤が、すべての冷却剤室25〜27に対して同じ特定の定格圧力で、すべての3つの冷却剤室25〜27内に供給された場合に生じる。第1の体積流量V1は、中央位置ymで最大となる放物線の形状を有し、中央位置ymから2つの端部領域に向かって減少して、中央位置ymの値の半分になる。第1の体積流量V1がこのような形状になる理由は、ノズル列39の中心から2つの端部へ、ノズル列39に沿うフルジェットノズル21のノズル間隔dが2倍になるからであり、ノズル間隔dの放物線状の増大が仮定される。
【0042】
第2の体積流量V2は、定格圧力のほぼ2倍の冷却剤圧力で冷却剤を第1の冷却剤室25内に供給し、定格圧力のほぼ半分の冷却剤圧力で冷却剤を他の2つの冷却剤室26、27内のそれぞれに供給した場合に生じる。
【0043】
第3の体積流量V3は、定格圧力のほぼ半分の冷却剤圧力で冷却剤を第1の冷却剤室25内に供給し、定格圧力のほぼ2倍の冷却剤圧力で冷却剤を他の2つの冷却剤室26、27内のそれぞれに供給した場合に生じる。
【0044】
図3は、ロール軸17に平行な方向に沿う位置yへの依存性が異なるパターンを有する体積流量V1、V2、V3を、冷却剤室25〜27の異なる冷却剤圧力によって生じさせることができ、その結果、冷却棒13から吐出される体積流量V1、V2、V3を、ロール表面の温度分布に適合させることができることを示している。各冷却剤室25〜27の冷却剤圧力は、それぞれの制御弁43および/またはそれぞれのポンプ45によって設定される。
【0045】
図4図12はそれぞれ、冷却棒13の別の例示的な実施形態の吐出側面19を示す。これらの例示的な実施形態は、図2に示した例示的な実施形態とは、冷却剤室25〜27、およびそれに対応する吐出側面19の部分領域29〜31の形状および数だけが異なる。図2に示した例示的な実施形態のように、フルジェットノズル21はそれぞれ、複数のノズル列39になるように配置され、それぞれの場合のノズル間隔dは、それに沿って中央から2つの端部に向かって増大する。したがって、図4図12のフルジェットノズル21はここでまた説明することはしない。吐出側面19のフルジェットノズル21の、図2に示した例示的な実施形態と同様な分布によって、図4図12に示される例示的な実施形態のそれぞれで、図3と同様な体積流量V1、V2、V3を生じさせることができる。
【0046】
図2に示した例示的な実施形態のように、図4図10に示した例示的な実施形態はそれぞれ、3つの冷却剤室25〜27、および吐出側面19にそれに対応する部分領域29〜31を有する。図2に示した例示的な実施形態と同様に、第1の部分領域29は、冷却棒13の吐出側面19の、ロール軸17に垂直な中心線37に対して鏡面対称であり、他の2つの部分領域30、31は、第1の部分領域29と中心線37の異なる側で隣接する。
【0047】
図4は、第1の部分領域29が、第1の長手方向辺33に配置された2つの頂点と、第2の長手方向辺34に配置された2つの頂点とを有する台形である例示的な実施形態を示す。
【0048】
図5は、第1の部分領域29が、中心線37と第1の長手方向辺33との交点に配置された1つの頂点と、第2の長手方向辺34の端部に配置された2つの頂点とを有する三角形である例示的な実施形態を示す。
【0049】
図6は、第1の部分領域29が、中心線37と第1の長手方向辺33との交点に配置された1つの頂点と、第2の長手方向辺34に配置された2つの頂点とを有する三角形である例示的な実施形態を示す。
【0050】
図7は、第1の部分領域29が、頂点が長手方向辺33、34に配置された長方形である例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、2つの外側の部分領域30、31を経て冷却剤を吐出しないので、冷却剤の吐出を吐出側面19の中央領域からのみ生じさせることができる。したがって、この例示的な実施形態は、異なる幅の圧延素材3を圧延するのに特に適している。
【0051】
図8は、第2の部分領域30および第3の部分領域31がそれぞれ、第1の長手方向辺33上の頂点と、第1の長手方向辺33の一端に配置された頂点と、短手方向辺35、36に配置された頂点とを有する長方形である例示的な実施形態を示す。
【0052】
図9は、第1の部分領域29が、第1の長手方向辺33上の2つの頂点と、第2の長手方向辺34の端部にそれぞれ配置された2つの頂点と、それぞれの短手方向辺35、36上の頂点とを有する六角形である例示的な実施形態を示す。
【0053】
図10は、第1の部分領域29が、中心線37と第1の長手方向辺33との交点に配置された1つの頂点と、第2の長手方向辺34の端部にそれぞれ配置された2つの頂点と、それぞれの短手方向辺35、36上の1つの頂点とを有する五角形である例示的な実施形態を示す。
【0054】
図11および図12に示した例示的な実施形態はそれぞれ、2つの冷却剤室25、26、およびそれに対応する、吐出側面19の部分領域29、30を有する。両方の部分領域29は、冷却棒13の吐出側面19の、ロール軸17に垂直な中心線37に対して鏡面対称である。
【0055】
図11は、第1の部分領域29が、中心線37に配置された1つの頂点と、第2の長手方向辺34の端部にそれぞれ配置された2つの頂点とを有する三角形である例示的な実施形態を示す。
【0056】
図12は、第1の部分領域29が、中心線37に配置された1つの頂点と、第2の長手方向辺34の端部にそれぞれ配置された2つの頂点と、それぞれの短手方向辺35、36上の頂点とを有する五角形である例示的な実施形態を示す。
【0057】
本発明を、好ましい例示的な実施形態によって、より詳細に例示および説明したが、本発明は、開示した例に限定されるものではなく、当業者は、本発明の保護の範囲を超えずにこれらから他の変形を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 圧延スタンド
3 圧延素材、圧延材
5 ロール
7 冷却装置
9 ロール間隙
11 圧延方向
13 冷却棒
15 ワイパ
17 ロール軸
19 吐出側面
21 フルジェットノズル
23 吐出方向
25〜27 冷却剤室
29〜31 部分領域
33、34 長手方向辺
35、36 短手方向辺
37 中心線
39 ノズル列
41 冷却剤供給ライン
43 制御弁
45 ポンプ
d ノズル間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12