(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
生体組織内で伝送される電気信号の測定は、一般的に多くの科学、特に医療において実施されている。電気生理学的測定は、しばしば、人の心臓を検査及び診断するために行われる。電気生理学的測定を行うために使用される殆どのシステムは、動作するために電極対皮膚の接触を必要とする生理学的電極に依存している。これらの電極センサの一般的に使用される例は、幾つかを例示すると、脳波検査(EEG)、心電図検査(EKG)、筋電図検査(EMG)及び電気眼振図法(EOG)を含む。これらシステムの各々は、対応する電気信号を信号処理システムに導くために生理学的電極を皮膚に接触させて配置することを要する。これらの電気信号の品質は、当該電極と患者の身体との間の接続の品質及び当該電極と信号処理システム自体との間の接続の品質に高度に依存する。
【0003】
劣った信号品質は、しばしば、高いインピーダンスの電極/皮膚接触に起因するものであり、このことは当然劣った生理学的信号となる。また、劣った信号は、しばしば、当該システムにおける電気的ノイズ又は歪から分離することが困難である。これらの信号欠陥は、不正確な診断及び後続する全ての付随する危険を生じさせ得る。更に、劣った生理学的信号の品質の全体としての影響は、不明確な検査結果、医療技術者時間の増加、ハードウェアの変更及び、勿論、これら全ての困難さに関わる費用である。このように、各電極におけるインピーダンスを測定することは、電気生理学的測定におけるエラーを補正及び修正する助けとなり得、従って大いに望ましいものである。
【0004】
心臓における電気的活動の測定は、典型的に、身体の種々の位置に配置された一方の組の入力電極の加重和と他方の組の入力電極の加重和との間の電圧差を測定することを含む。典型的に、上記加重和を形成する上記グループの電極から除外される1つの電極が、コモンモード干渉を低減するフィードバックループのための出力電極となる。出力電極信号測定の品質は、皮膚/電極境界面のインピーダンスにより直に影響を受ける。例えば、高いインピーダンスの皮膚/電極境界面が存在すると、測定される信号は、通常、高い又は増加されたノイズ及び/又は歪を被る。高いインピーダンスは、例えば、不適切に取り付けられた電極、不十分な皮膚の準備又は電極の経年変化により生じ得る。
【0005】
電極インピーダンスを測定するための幾つかの従来のシステムは、多電極システムにおける各電極を介して変化する電流を順次供給するシステムを必要とする。電極インピーダンスは、各電極を介して交流電流を供給すると共に、現電極と同一の周波数及び位相の入力電流が注入されない他の入力電極との間の対応する電圧を測定することにより測定することができる。このインピーダンス測定方法は、電極の着/脱及び入力/出力状態が測定の間に変化し得る又は変化し、及び当該インピーダンス測定が特定の電極が取り外されて機能することが必要とされる場合に、一層複雑にされ得る。これらの従来の技術の多くは動作可能であるが、このインピーダンス検査を実行するために要するハードウェアは、典型的に、高価であると共に動作させるのが困難である。
【0006】
1つ又は2つの周波数の注入電流を用いて電極インピーダンスを測定するシステムは、幾つかの問題に直面する。最初に、これらのシステムにおいては全ての取り付けられた電極が注入される同一の周波数のAC電流を有する故に全ての部分組の取り付けられた電極がインピーダンスを測定することができるというものではない。この場合、システムはインピーダンス値を表示しないか、又は1以上の取り付けられた電極に注入される周波数を別の値に切り換えることができる。
【0007】
上述した周波数の切り換え技術は欠点を有する。これらのシステムはインピーダンスを正確に測定するために追加の回路を必要とし得、これにより、複雑な内部状態マシンを必要とする。更に、これらのシステムは特定の電極に注入され得る各周波数に対して校正を必要とし、さもなければ、1つの校正点しか使用されない場合、異なるAC電圧周波数において異なる利得を有する回路により測定エラーを生じる。
【0008】
このように、当業技術においては、電気生理学的測定システムにおいてシステム停止時間及びデータ損失を最小限にしながら電極インピーダンスを高信頼度で且つ効率的に監視するシステム及び方法に対する要求が存在する。
【0009】
米国特許出願公開第2014/194759号は生理学データ収集装置を開示し、該装置は、3以上のリード線(導線)と、少なくとも1つのAC電流源と、該電流源を選択されたリード線対に選択的に結合して、該選択されたリード線対の間にAC電流を注入し、これにより該選択されたリード線対の間にAC電圧を生成するように構成された切り換え機構と、処理装置とを含む。上記処理装置は、(i)現在選択されているリード線対の間のインピーダンスを前記AC電圧に基づいて決定し、(ii)該インピーダンスが所定の閾値より小さいかを判定し、(iii)該インピーダンスが上記所定のインピーダンス閾値より小さい場合は現在選択されているリード線が生理学的パラメータデータを発生するために使用されるようにし、(iv)前記インピーダンスが前記閾値より小さくない場合は前記切り換え機構が前記少なくとも1つのAC電流源を前記リード線のうちの新たに選択された対に結合させるよう構成される。
【0010】
米国特許出願公開第2014/0247058号は、生理学信号測定に使用される電極の状態を監視するシステム及び方法を開示している。1つの方法は、第1周波数を持つ第1テスト信号を複数の電極のうちの少なくとも1つに印加するステップ及び第2周波数を持つ第2テスト信号を上記複数の電極のうちの少なくとも1つに印加するステップを含む。両周波数は、当該生理学的信号に関連する周波数範囲より低い。該方法は、更に、上記複数のテスト信号を印加している間に生理学的信号をキャプチャするステップ、並びに測定された生理学的信号及び前記複数のテスト信号の両方を含む出力信号を発生するステップを含む。該方法は、更に、前記出力信号から前記複数のテスト信号の各々に関する出力振幅を取り出すステップ、及び前記複数の電極の各々に関する推定されるインピーダンスを前記複数のテスト信号の前記取り出された出力振幅に基づいて計算するステップを含む。
【0011】
米国特許出願公開第2007/0038257号公報は、患者/電極境界面の電気特性を評価するための装置を開示し、該装置はDCオフセットを持つAC信号を有する2つのキャリア信号を電極に注入するキャリア信号源を有する。これらキャリア信号は位相がずれている。電極からの出力は、前置増幅器回路において心電計リード信号に形成される。信号処理回路が上記前置増幅器回路に結合され、ECGリード信号に含まれたACキャリア信号を有する第1信号及びDCオフセット信号を含む第2信号を供給する。該第1及び第2信号は、当該ECGリード信号に関する電極境界面の電気的特性を示す出力を得るためにマイクロプロセッサに供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、当業技術においては、電気生理学的測定システムにおいてシステム停止時間及びデータ損失を最小限にしながら電極インピーダンスを高信頼度で且つ効率的に監視するシステム及び方法に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様によれば、上述した目的に対する解決策は、添付された独立請求項に示される。好ましい実施態様は、従属請求項に示される。
【0014】
本開示は、例えば患者に取り付けられた3以上の電極を用いて電気生理学的測定を実行するための方法、システム及び装置に関するものである。該システムは、種々の実施態様において、患者に取り付けられる3以上の電極及び斯かる電極に電気的に結合された外部回路を備える少なくとも1つのアナログ/デジタル変換器を含むことができる。該システムは、更に、アナログ/デジタル変換処理を実行するためのマイクロプロセッサ、前記電極から信号を受信すると共に該電極に駆動電流信号を送出するために該マイクロプロセッサに電気的に結合された種々の入力部及び出力部を含むことができる。上記マイクロプロセッサ又はコントローラは、一体のデジタル信号処理部を含むことができ、更に、各電極において測定された電気生理学的電圧を表示又は通知するためにユーザインターフェースを採用することができる。本発明の幾つかの態様において、当該システムは、異なる周波数の少なくとも3つの交流電流(AC)信号を発生すると共に、前記電気的に結合された電極の各々に1つの割り当てられた周波数のAC電流を注入するための回路又はハードウェアを含む。本発明のシステムは、更に、タイマ、パルス幅変調出力部、又はAC信号を発生するためのデジタル/アナログ変換器等の前記マイクロコントローラに組み込まれる周辺装置を有することができる。代わりに、これらの機能は、前記マイクロコントローラに電気的に結合された外部回路により実行することもできる。
【0015】
幾つかの態様及び実施態様においては、1つの入力信号周波数を各電極に割り当てることができ、現存する電極に対する周波数の割り当ては、前記電極のうちの指定された部分群が患者に取り付けられた場合に、電気生理学的測定及び皮膚/電極間インピーダンスの測定の両方が機能することを可能にするような態様で選択される。本発明の一実施態様において、各電極における電圧は、測定される信号の連続したアナログ/デジタル変換を用いてサンプリングされる。入力電極の各皮膚/電極間インピーダンスの測定のために、3つの電極、即ち、(1)インピーダンスが測定されるべき入力電極(E
1);(2)E
1とは同一の注入される周波数を有さず且つ基準として働く、取り付けられた(患者と接触する)入力電極(E
2);並びに(3)E
1及びE
2において注入される電流に対する吸収部として働くように接続されねばならない出力電極;が使用される。
【0016】
本発明の幾つかの態様において、前記マイクロプロセッサ又はコントローラは、E
2における電圧をE
1における電圧から減算し、これによりコモンモード干渉を低減することによりベクトルを形成する。次いで、注入された電流により生じる電圧の振幅が当該信号から、これらに限定されるものではないが、デジタルフィルタ処理、離散/高速フーリエ変換及び/又はGroertzelアルゴリズムを含む標準的デジタル信号処理を用いて抽出される。特定の皮膚/電極境界面のインピーダンスは、幾つかの実施態様では、該電圧から、例えば、注入される電流の値の許容誤差、アナログ/デジタル変換器(ADC)に接続された外部回路の振幅応答及び当該皮膚/電極間インピーダンスと直列に現れる全ての外部回路のインピーダンス(測定されるインピーダンスから減算される)を考慮に入れた利得/オフセット校正係数を用いて計算することができる。
【0017】
本発明の種々の実施態様において、前記ユーザインターフェースは、患者データを表示するためにLED光ディスプレイ又は電子インクスクリーン等の低出力ディスプレイを含むことができる。本発明の幾つかの態様において、操作者インターフェースは、患者情報及びシステム情報の入力を容易にするために、エネルギ蓄積システム又は発電器により給電されるタッチパッド又はキーパッドを更に含むことができる。
【0018】
本発明の更に他の実施態様においては、前記システムにおける個々の電極のインピーダンスの測定及び計算のための方法を含む命令セットが記憶メモリ内に設けられる。
【0019】
本開示の目的で本明細書において使用される場合、“電極”なる用語は、種々の生体組織における電圧又は電流の変化を測定する目的で生体組織又は患者と監視回路との間の電気的接続を確立する種々の装置を記述するために広く使用されている。電極は、これらに限定されるものではないが、脳波検査(EEG)、心電図検査(EKG)、筋電図検査(EMG)及び電気眼振図法(EOG)を含む生理学的測定を実行するための種々の測定システムにおいて使用することができる。
【0020】
“プロセッサ”又は代替的に“コントローラ”なる用語は、ここでは、当該システムの1以上の構成要素の動作に関係する種々の装置を広く記述するために使用されている。コントローラは、ここで述べる種々の機能を果たすために、多数の形態で(例えば、専用のハードウェアによる等)実施化することができる。“プロセッサ”は、ここで述べる種々の機能を実行するために、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いてプログラムすることができる1以上のマイクロプロセッサを使用するコントローラの一例である。コントローラは、プロセッサを使用するか又は使用しないで実施化することができ、幾つかの機能を実行するための専用のハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1以上のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組み合わせとして実施化することもできる。本開示の種々の実施態様で使用することが可能なコントローラ部品の例は、これらに限定されるものではないが、通常のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル・ロジック・コントローラ及びフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を含む。
【0021】
種々の構成において、プロセッサ又はコントローラは1以上の記憶媒体(例えばRAM、PROM、EPROM及びEEPROM等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ、フロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ等であり、ここでは広く“メモリ”と称する)に関連され得る。幾つかの構成例において、上記記憶媒体は、1以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行された場合に本明細書で述べる機能の少なくとも幾つかを実行する1以上のプログラムによりコード化することができる。種々の記憶媒体は、プロセッサ若しくはコントローラ内に固定され、又は当該記憶媒体上に記憶された1以上のプログラムをプロセッサ又はコントローラにロードして、ここで述べる本発明の種々の態様を実施することができるように、移送可能なものとすることができる。“プログラム”又は“コンピュータプログラム”なる用語は、ここでは、1以上のプロセッサ又はコントローラをプログラムするために使用することが可能な如何なるタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)をも示すように汎用的な意味で使用されている。
【0022】
ここで使用される“ユーザインターフェース”なる用語は、ユーザ又は操作者と1以上の装置との間のインターフェースであって、ユーザと装置との間の対話を可能にするインターフェースを指す。本開示の種々の実施態様において使用することができるユーザインターフェースの例は、これらに限定されるものではないが、スイッチ、ポテンショメータ、釦、ダイヤル、スライダ、マウス、キーボード、キーパッド、種々のタイプのゲームコントローラ(例えば、ジョイスティック)、トラックボール、表示スクリーン、種々のタイプのグラフィックユーザインターフェース(GUI)、タッチスクリーン、マイクロフォン及び何らかの形態の人により発生された刺激を受け、これに応答して信号を発生することができる他のタイプのセンサを含む。
【0023】
上述した概念及び後に詳述する追加の概念の全ての組み合わせ(斯かる概念が互いに矛楯しない限り)は、ここに開示される本発明の主題の一部であると意図されることが理解されるべきである。特に、この開示の最後に現れる請求項に記載の主題の全ての組み合わせは、ここに開示される本発明の主題の一部であると意図される。また、参照により本明細書に組み込まれる何れかの文献にも現れる、ここで明示的に使用される用語は、ここに開示される特定の概念と最も一貫性のある意味が付与されるべきであると理解されるべきである。
【0024】
尚、図面において同様の符号は、異なる図を通して、同様の部分を概して示している。また、各図は必ずしも寸法通りではなく、代わりに本発明の原理を解説するに当たり概して誇張されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、電極のインピーダンスを測定するためのシステムを実施化する例示的ハードウェア200の図を示す。該装置200は、1以上のシステムバス210を介して相互接続された、プロセッサ220、メモリ230、ユーザインターフェース240、通信インターフェース250及び記憶部260を含む。
図1は幾つかの点で抽象概念を構成するものであり、ハードウェア200の構成要素の実際の組織化は図示されたものより複雑であり得ることが理解されよう。
【0027】
プロセッサ220は、メモリ230若しくは記憶部260に記憶された命令又は他の処理データを実行することができる任意のハードウェア装置とすることができる。かくして、該プロセッサは、マイクロプロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)又は他の同様の装置を含むことができる。
【0028】
メモリ320は、例えばL1、L2若しくはL3キャッシュ又はシステムメモリ等の種々のメモリを含むことができる。従って、メモリ230はスタチックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、フラッシュメモリ、リードオンリメモリ(ROM)又は他の同様のメモリ装置を含むことができる。当該プロセッサが本明細書で述べる機能の1以上をハードウェアで実施化する1以上のASIC(又は他の処理装置)を含む実施態様において、このような機能に対応するとして説明されるソフトウェアは他の実施態様では省略することができることは明らかであろう。
【0029】
ユーザインターフェース240は、管理者等のユーザと通信することを可能にする1以上の装置を含むことができる。例えば、ユーザインターフェース240は、ディスプレイ、マウス、及びユーザコマンドを入力するキーボードを含むことができる。幾つかの実施態様において、ユーザインターフェース240は、通信インターフェース250を介して遠隔端末に提示することができるコマンドラインインターフェース又はグラフィックユーザインターフェースを含むことができる。
【0030】
通信インターフェース250は、他のハードウェア装置との通信を可能にするための1以上の装置を含むことができる。例えば、通信インターフェース250はイーサネット(登録商標)プロトコルに従って通信するように構成されたネットワークインターフェースカード(NIC)を含むことができる。更に、通信インターフェース250はTCP/IPプロトコルによる通信のためのTCP/IPスタックを実施化することができる。更に、通信インターフェース250は、プロセッサ220が種々のセンサ(例えば、この事例では電極)から電気信号を受信する一方、電気信号(例えば、所定の振幅及び電流レベルの電気信号)を出力することを可能にするために複数の入力部252及び出力部254(種々の信号タイプのアナログ、デジタル又は両方の)を含むことができる。入力部252及び出力部254は、プロセッサ220と直接通信するために設けることができ、又はプロセッサ220へ及びプロセッサ220からデジタル信号を、各々、送信及び受信することができる。通信インターフェース250のための種々の代替の又は追加のハードウェア又は構成は明らかであろう。
【0031】
記憶部260は、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリ装置又は同様の記憶媒体等の1以上のマシン読取可能な記憶媒体を含むことができる。種々の実施態様において、記憶部260は、プロセッサ220により実行するための命令又は該プロセッサ220が処理するデータを記憶することができる。例えば、記憶部260はハードウェア200の種々の基本動作を制御するための基本オペレーティングシステム261を記憶することができる。記憶部260は、更に、システム10を動作させるために必要とされる所要のプロセッサ機能を実行するよう動作する複数の命令セット262、263、264を記憶することができる。
【0032】
記憶部260に記憶されるとして説明される種々の情報は、加えて又は代わりに、メモリ230に記憶することもできることが明らかであろう。この点に関し、メモリ230は“記憶装置”を構成すると考えることができ、記憶部260は“メモリ”と考えることができる。種々の他の構成も明らかであろう。更に、メモリ230及び記憶部260は、共に、“非一時的マシン読取可能な媒体”と考えることができる。本明細書で使用される場合、“非一時的”なる用語は、一時的信号は除外するが、揮発性及び不揮発性の両メモリを含む全ての形態の記憶部を含むと理解される。
【0033】
ハードウェア200は上述した各構成要素の1つを含むように図示されているが、種々の実施態様では種々の構成要素を複製することができる。例えば、プロセッサ220は、複数のプロセッサが本明細書に記載される機能を果たすべく共動するように、本明細書に記載される各方法を独立に実行するように構成された又は本明細書に記載された各方法のステップ又はサブルーチンを実行するように構成された複数のマイクロプロセッサを含むことができる。更に、当該装置200がクラウドコンピュータシステム内で実施化される場合、種々のハードウェア要素は別個の物理的システムに属し得る。例えば、プロセッサ220は第1サーバにおける第1プロセッサ及び第2サーバにおける第2プロセッサを含み得る。
【0034】
ここで、
図2及び
図3を参照すると、本発明の種々の実施態様によれば、患者1の皮膚/電極間インピーダンスを測定するためのシステム10は、患者に取り付けられる3以上の電極E
1,E
2,E
3〜E
nを含むことができ、これら電極E
nの各々は、
図2ではR
1〜R
nにより示された電極/皮膚間インピーダンスを有する。各電極E
nはアナログ/デジタル変換器310に電気的に結合され、該アナログ/デジタル変換器はプロセッサ220に入力252を供給し、これにより、該プロセッサ220にE
nにおける電圧のデジタル表現を供給する。本発明のアナログ/デジタル変換及び信号処理機能を果たすことに加えて、コントローラ220はユーザインターフェース240に出力を供給し、これにより、何れの電極E
nにおいて測定された電気生理学的電圧も表示又は通知するようにする。
【0035】
本発明の幾つかの実施態様によれば、コントローラ220は、
図2にI(f
1)〜I(f
n)として示された異なる周波数の少なくとも3つのAC電流信号を発生するための複数の出力部254を更に有することができ、これら出力部は多数の異なる既知の回路又はハードウェアを有することができる。これらの電流信号I(f
n)は、1つの割り当てられた周波数I(f
n)を各電極に供給することにより当該電極の各々に電気的に結合又は注入される。幾つかの実施態様によれば、プロセッサ220には、例えば、前記AC電流信号を発生するために使用することができるデジタル/アナログ変換器、タイマ又はパルス幅変調出力部254等の周辺回路を組み込むことができる。代わりに、幾つかの実施態様においては、これらの信号発生機能は外部回路により生成又は提供され、プロセッサ220からの命令又は出力254により駆動することができる。
【0036】
幾つかの実施態様において、1つの電極/皮膚境界面のインピーダンス測定R
nは、3つの電極が動作することを要する。インピーダンスが測定されている第1電極E
1には、予め定められた周波数f
1のAC電流I(f
1)が供給される。第2電極E
2には、予め定められた第2周波数f
2(ここで、f
2≠f
1)のAC電流I(f
2)が供給される。即ち、E
2には、E
1と同一の周波数のAC電流は供給されない。第3電極E
outは、他の電極に注入された全電流I(f
n)に対する吸収点として作用し、かくして、実施される生理学的測定のための出力電極として作用する。
【0037】
本発明の該実施態様において、注入された電流I(f
1)と皮膚/電極間インピーダンスR
1とにより生じる電極E
1における電圧は、システム10においてAD変換器310によるE
1及びE
2の電圧の連続したサンプリング及びアナログ/デジタル変換により測定される。次いで、プロセッサ220はコモンモード干渉を減じるためにE
1及びE
2において測定された2つの電圧を減算する。次いで、プロセッサ220は、注入されたAC電流出力により生じたE
1における電圧の振幅を既知のデジタル信号処理方法により抽出する。本発明の幾つかの態様及び実施態様において、プロセッサ220は測定された電圧信号を、これらに限定されるものではないが、デジタルフィルタ処理、離散フーリエ変換、高速フーリエ変換及び/又はGoertzelアルゴリズムの組み合わせを含む技術により処理する。電極E
1における電圧の振幅が分かったら、皮膚/電極境界面のインピーダンスR
1がE
1における電圧から、例えば、インピーダンスを計算するための既知の方法により利得/オフセット校正係数を使用することにより導出される。
【0038】
例示的なECG(心電図)に使用される本発明の幾つかの実施態様において、システム10は、典型的に患者の右腕(RA)、左腕(LA)及び左脚(LL)上に配置される3つの電極を用いることにより使用することができる。当業技術において知られているように、ECG電極Eの位置RA,LA,RL及びLLは、必ずしも患者の肢自体上である必要はなく、通常、右肩(RA)、左肩(LA)、右下腹部(RL)及び左下腹部(LL)上に配置される。この場合、システム10(特に、プロセッサ220)は3つの信号ベクトルのうちの1つ、即ち、RA−LA電極の間のベクトルI、RA−LL電極の間のベクトルII又はLA−LL電極の間のベクトルIIIを測定することができる。この場合、更に、プロセッサ220は当該ベクトル測定に使用されない何れかの電極(不使用電極)を出力電極として選択する。3つの異なる周波数f
1,f
2,f
3のうちの1つを当該3つの電極の各々に割り当てる(例えば、f
1/RA,f
2/LA,f
3/LL)ことにより、選択される2つの電極の各々に対して、同一の注入周波数を有さない他の入力電極が存在すると共に、皮膚/電極境界面毎に3つの電極を用いる詳細に上述した電極-皮膚間インピーダンス測定を、2つの入力電極の各々に対して達成することができる。
【0039】
本発明の幾つかの実施態様及び態様において、システム10は4つの電極(RA,LA,LL及び右脚RL)を利用するECGシステムとして用いることができ、その場合、RLは、患者1に接続される場合、常に出力電極として用いられるよう選択される。この実施態様において、システム10は、当該4つの電極のうちの何れか3が接続される場合、2つの電極RA,LA,LLの間の少なくとも1つのECGベクトルを測定することが必要とされる。更に、4つの全ての電極が接続される場合、更なるECGベクトルが使用されることが可能になる。3つの周波数f
1,f
2,f
3のうちの1つをRA,LA,LLに割り当てると共に、f
1、f
2又はf
3の何れかをRLに割り当てる(例えば、f
1/RA,f
2/LA,f
3/LL,f
1/RL)ことにより、システム10は、患者の診断のための必要に応じてECG波を測定することができると共に、接続された各入力電極RA,LA,LLのインピーダンスR
nを更に測定することができる(3つの電極の何れかの部分組が患者に電気的に接続されているなら)。
【0040】
再び
図2及び
図3を参照すると、他の実施態様において、システム10は5以上の電極(RA,LA,LL,RL及び、例えば、胸部電極V1,V2,…,Vn)を用いるECG測定システムとして使用することができる。ここでも、このシステムのような多電極システムにおいて、RL電極は患者1に接続されている場合は常に出力電極として使用され、該システム10は、4つの電極RA,LA,LL,RLのうちの何れか3つが患者1に接続される場合、少なくとも1つのECGベクトルを測定することが必要とされる。この実施態様において、本発明は3つの周波数f
1,f
2,f
3のうちの1つをRA,LA,LLに各々割り当てると共に、f
1,f
2,f
3のうちの1つをRL,V1,V2,…,Vn電極に割り当てる(例えば、f
1/RA,f
2/LA,f
3/LL,f
1/RL,f
2/V1,f
1/V2,…)。このような周波数割り当てを用いることにより、システム10は患者1の診断のために必要に応じてECG波を測定すると共に、接続された各入力電極のインピーダンスを更に測定する(RA/LA/LL/RLのうちの3つの電極の何れかの部分組が接続されている場合)ことが可能となる。
【0041】
更に他の態様及び実施態様において、システム10は4以上の電極E
nを使用するEEGシステムからなり、その場合、出力電極E
outは変化せず、インピーダンス測定は少なくとも2つの電極が接続されたなら動作することが必要とされる。本発明の該実施態様において、インピーダンスR
nの測定及び決定技術は、可能な入力電極E
nが存在するだけ多くの周波数を使用し、これにより、入力電極E
nには固有の個別の信号周波数f
nが割り当てられる。固有の周波数f
nの該割り当ては、少なくとも2つの入力電極E
1,E
2及び出力電極E
out又はE
3が患者1に接続される場合、皮膚/電極境界面インピーダンスを前述した3電極方法を用いて測定することができることを保証する。
【0042】
本発明の種々の態様において、ここに開示される技術及びシステム10は、例示的システムをECG監視及び診断に関して説明しているが、これらに限定されるものではないが、脳波測定法(EEG)、心電図記録法(EKG)、筋電図記録法(EMG)及び電気眼振図法(EOG)を含む他の電気生理学的測定にも等しく適用可能であることに注意すべきである。動作時において、本発明は、電気生理学的測定装置が電極E
n接続部に注入する電流(又は複数の電流)を測定することにより電極/皮膚間インピーダンスR
nを検出するために利用することができる。3以上の異なる周波数の注入電流が存在すると共に、これらの周波数の電極E
nに対する割り当てが、指定された電極の部分群を尊重すると共に測定の間において変化しないような態様で選択される場合、該システム10内の全ての必要とされるインピーダンスR
nを、既知の技術が伴う周波数の切り換えの必要性並びに全ての付随する困難さ及び費用を要することなく、検出することが可能となる。
【0043】
本発明の幾つかの態様において、システム10は、患者1の電極E
1/皮膚境界面のインピーダンスR
1を測定するために以下の方法を採用することができる。最初に、システム10のプロセッサ220は、複数の信号出力I(f
1)〜I(f
n)254を患者1の皮膚に接触して配置された複数の電極E
nに供給する。限定するものでない例示的な3電極システムにおいて、第1電極E
1に注入される交流電流出力の周波数は、第2電極E
2に注入される交流電流出力の周波数とは相違する。このようなシステムにおいて、第3電極E
3は電流吸収部及び出力電極として選択される。取り付けられた各電極E
nはアナログ/デジタル変換器(ADC)310に電気的に結合され、これらADCはプロセッサ220の入力部252に皮膚/電極境界面において測定された電圧を示すデジタル出力を供給する。次いで、これらのE
1及びE
2における結果的電圧はコモンモード干渉を減少させるために減算され、次いで、E
1におけるインピーダンスは、E
1における電圧に選択された信号処理を適用し、E
1電圧の振幅を導出することにより計算することができる。採用することができる信号処理技術の限定するものでない例は、デジタルフィルタ処理、離散フーリエ変換(DFT)、高速フーリエ変換(FFT)及びGoertzelアルゴリズムを含む。E
1電圧の振幅が導出されたら、E
1電極/皮膚境界面におけるインピーダンスは、導出された電圧にシステムオフセット校正及び利得係数を適用することにより算出される。
【0044】
以上、種々の本発明実施態様を本明細書において説明及び図示したが、当業者であれば、ここに説明した機能を実行し、及び/又はここで述べた結果及び利点を得るための種々の他のシステム又は構成に想到することができるであろう。このような変更及び/又は修正の各々は、ここに述べた本発明の実施態様の範囲内であると見なされる。当業者であれば、ここに述べた全てのパラメータ、寸法、材料及び構成は本発明の例示的なものであることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は、本発明の特定の用途又は複数の用途に依存するであろうことを容易に理解するであろう。更に、当業者であれば、ここで述べた本発明の特定の実施態様に対する多くの均等物を認識し、又は通例の実験を用いるだけで確認することができるであろう。従って、上述した実施態様は例示としてのみ提示されたものであり、添付請求項及びその均等物の範囲内で、本発明の実施態様は、特定的に説明及び請求項に記載したもの以外で実施することができると理解される。本開示の発明的実施態様は、本明細書で述べた各フィーチャ、システム、物品、材料、キット及び/又は方法に向けられたものである。2以上の斯様なフィーチャ、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の如何なる組み合わせも、このようなフィーチャ、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が相互に矛楯しないならば、本開示の発明の範囲内に含まれるものである。
【0045】
ここで定められ及び使用された全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた文献における定義及び/又は定義された用語の通常の意味を規制すると理解されるべきである。
【0046】
本明細書及び請求項で使用される単数形は、そうでないと明示しない限り、“少なくとも1つの”を意味すると理解されるべきである。
【0047】
本明細書及び請求項において使用される“及び/又は”なる語句は、そのように結合されたエレメントの“何れか又は両方”、即ち或る場合には連接的に存在し、他の場合には離接的に存在するエレメントを意味すると理解されるべきである。“及び/又は”で列挙された複数のエレメントは、同様に、即ちそのように結合されたエレメントの“1以上”であると見なされたい。“及び/又は”なる文により固有に識別されたエレメント以外の他のエレメントも、これらの固有に識別されたエレメントに関係するか関係しないかによらず、オプションとして存在することもできる。このように、限定するものではない例として、“有する”等の非制限的文言との関連で使用される場合、“A及び/又はB”なる言及は、一実施態様ではAのみを(オプションとしてB以外のエレメントを含む)、他の実施態様ではBのみを(オプションとしてA以外のエレメントを含む)、更に他の実施態様ではA及びBの両方を(オプションとして他のエレメントを含む)等を指すことができる。
【0048】
本明細書及び請求項で使用される場合、“又は”は上記に定義した“及び/又は”と同じ意味を持つと理解されたい。例えば、リスト内で項目を分ける場合、“又は”又は“及び/又は”は、包含的であると、即ち、少なくとも1つの包含のみならず、複数の又は一連のエレメントのうちの2以上及びオプションとして追加の非掲載項目も含むと解釈されるべきである。“のうちの1つのみ”又は“のうちの正確に1つ”のように、そうでないと明確に示された用語のみ、又は請求項で使用される場合の“からなる”は、複数の又は一連のエレメントのうちの正確に1つのエレメントの包含を指す。一般的に、ここで使用される“又は”なる用語は、“何れか”、“のうちの1つ”、“のうちの1つのみ”又は“のうちの正確に1つ”等の排他性の用語により先行された場合にのみ、排他的な代替物(即ち、“一方又は他方であるが、両方ではない”)を示すと解釈されるべきである。“から本質的になる”は、請求項において使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものである。
【0049】
本明細書及び請求項で使用される場合、1以上のエレメントのリストを参照する“少なくとも1つの”なる語句は、該エレメントのリストにおけるエレメントの何れか1以上から選択された少なくとも1つのエレメントを意味するものであり、該エレメントのリスト内の各及び全エレメントの少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、該エレメントのリスト内のエレメントの如何なる組み合わせをも除くものではないと理解されるべきである。この定義は、上記“少なくとも1つの”なる語句が参照する上記エレメントのリスト内で特定的に識別されるエレメント以外のエレメント(上記の特定的に識別されたエレメントに関係するか又は関係しないかに拘わらず)がオプションとして存在することも可能にする。このように、限定するものではない例として、“A及びBの少なくとも1つ”(又は等価的に“A又はBの少なくとも1つ”若しくは等価的に“A及び/又はBの少なくとも1つ”)は、一実施態様では、少なくとも1つの(オプションとして2以上を含む)Aで、Bは存在しない(オプションとしてB以外のエレメントを含む)場合、他の実施態様では、少なくとも1つの(オプションとして2以上を含む)Bで、Aは存在しない(オプションとしてA以外のエレメントを含む)場合、更に他の実施態様では、少なくとも1つの(オプションとして2以上を含む)A及び少なくとも1つの(オプションとして2以上を含む)B(オプションとして他のエレメントを含む)の場合等を指すことができる。
【0050】
明確にそうでないと示さない限り、請求項に記載された2以上のステップ又は動作を含む如何なる方法においても、該方法のステップ又は動作の順序は、該方法の斯かるステップ又は動作が記載された順序に必ずしも限定されるものではないと理解されるべきである。
【0051】
請求項及び明細書において、“有する”、“含む”、“担持する”、“持つ”、“収容する”、“伴う”、“保持する”及び“からなる”等の全ての移行句は非制限的であると、即ち含むが限定されるものではないことを意味すると理解されるべきである。“からなる”及び“から本質的になる”なる移行句のみが、各々、制限的又は半制限的移行句である(米国特許庁の特許審査手順マニュアル、第2111.03節に記載されているように)。特許協力条約(“PCT”)の規則6.2(b)に従って請求項で使用される特定の表現及び符号は、当該範囲を限定することはないと理解されるべきである。
【0052】
一態様においては、患者の電極/皮膚境界面のインピーダンスを測定するシステムが提供され、該システムは、前記患者に複数の位置において電気的に結合されるように配置される少なくとも3つの電極であって、これら少なくとも3つの電極の各々がアナログ/デジタル変換器に電気的に結合される電極と;これら電極の各々における電圧を表す信号を測定するために前記アナログ/デジタル変換器に電気的に結合された複数の入力部を有するプロセッサと;前記3つの電極の各々に固有の周波数電流信号を供給するように構成された複数の交流電流出力部と;を有し、前記交流電流出力部は前記3つの電極のうちの第1及び第2の電極に電流を供給するよう構成され、前記電極のうちの第3の電極は前記第1及び第2電極へ入力される電流のための吸収部として働く出力電極として指定される。
【0053】
他の態様においては、患者の電極/皮膚境界面のインピーダンスを測定するシステムが提供され、該システムは、前記患者に複数の位置において電気的に結合される複数の電極であって、該複数の電極の各々がアナログ/デジタル変換器に電気的に結合される電極と;これら電極の各々における電圧を表す信号を測定するために各電極の前記アナログ/デジタル変換器に電気的に結合されたプロセッサと;前記複数の電極に電流を異なる周波数で供給するように構成された複数の交流電流出力部と;を有する。