(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
[外装システムの構成]
図1は、本実施形態に係る外装システムの構成を概略的に示す図であり、(a)は部分立面図、(b)は部分縦断面図である。また、
図2は、
図1の外装システムの詳細を示す拡大部分縦断面図である。本実施形態では、本発明の外装システムを、複数階を有するオフィスビルに適用した場合を説明する。なお、
図1の構成はその一例を示すものであり、本発明に係る外装システムが適用される構成は、
図1のものに限られない。
【0019】
図1(a)及び(b)に示すように、外装システム1は、オフィスビル100の外壁100aに取り付けられ、少なくとも2層の金属層を有するLow−E複層ガラス2と、外壁100aの屋外側Aに取り付けられ、鉛直方向に延設した複数の第1日射遮蔽部材3と、Low−E複層ガラス2との間に空間4を設けるように屋内側Bに配置され、Low−E複層ガラス2から入射した日射光を遮蔽する第2日射遮蔽部材5と、空間4内から空気を排出する機械排気構造6とを備えている。本発明の外装システムは、種々の外壁構造に適用することができ、特にスパンドレル方式、方立(マリオン)方式、層方式、柱・梁方式などのカーテンウォール構造に適用することができる。
【0020】
Low−E複層ガラス2は、鉛直方向に延在して複数階の床101,101,・・・に掛け渡された方立7(縦材)と、水平方向に延在する無目8(横材)とで構成される枠体に嵌め込まれた板ガラス積層体である。本実施形態では、隣接する方立7,7間に、Low−E複層ガラス2及び外装パネル9が嵌め込まれており、鉛直方向に関してLow−E複層ガラス2及び外装パネル9が交互に嵌め込まれている。そして、水平方向に関して、複数の外装パネル9が並んで配置されると共に、複数のLow−E複層ガラス2,2,・・・が並んで配置されることにより横連窓が構成されている。
【0021】
Low−E複層ガラス2は、対向配置された2枚の板ガラス2a、2aと、2枚の板ガラス間に設けられた中空層2bと、2枚の板ガラスの対向面にそれぞれ設けられた金属層2c,2cとを有している(
図2)。この金属層は、遮熱性及び/又は断熱性を有しており、このような金属層を少なくとも2層設けることにより、Low−E複層ガラス2に入射する日射光に対して優れた断熱、遮蔽を発揮することができる。Low−E複層ガラスの金属層が1層であると、Low−E複層ガラスの断熱性及び遮熱性が不十分であり、外装システム全体の断熱性能及び遮蔽性能が十分でない。よって本発明では、金属層を少なくとも2層有するLow−E複層ガラスを採用する。
【0022】
このLow−E複層ガラス2は、3層以上の板ガラスを有していてもよい。この場合、上記金属層を3層以上設けることができ、更に優れた断熱性及び/又は遮蔽性を発揮することができる。
【0023】
第1日射遮蔽部材3は、例えば外壁100aから屋外側Aに突出した複数のフィンであり(
図1)、複数のフィンが、外壁100aの水平方向に関して所定の配置ピッチで配置されている。本実施形態では、方立7が水平方向に関して所定ピッチで配置されており、第1日射遮蔽部材3が各方立に固定され、方立7と同一ピッチで配置されている。
【0024】
第2日射遮蔽部材5は、例えばLow−E複層ガラス2からオフィスビル100に入射した日射光を遮蔽するブラインドである。この第2日射遮蔽部材5は、採光を確保しつつ、Low−E複層ガラス2で遮蔽されなかった日射光を遮蔽することができる。
【0025】
第2日射遮蔽部材5は、例えば回動可能な複数のスラットを有する横型ブラインド或いは縦型ブラインド、又は、クロスブラインドである。第2日射遮蔽部材5のスラットは、遮蔽性能の観点から、アルミニウム合金などの金属材料に、所定色の塗装膜を設けたものが好ましく、上記所定色は、白或いはグレーが好ましい。また、第2日射遮蔽部材5がクロスブラインドの場合、スラットを有しないため、空間4の密閉性が高くなり、断熱性能をより高めることができる。
上記ブラインドは、太陽高度に応じた自動制御型ブラインド装置を構成してもよい。例えば、ブラインド装置は、電動モータ、上下機構、回動機構及び制御装置を備え、第1日射遮蔽部材3が日射光を遮蔽する時間帯(朝方や夕方)には遮蔽を小さくくして採光をできるだけ屋内空間Rに取り入れ、第1日射遮蔽部材3が日射光を遮蔽しにくい時間帯(昼間)には、遮蔽を大きくして日射光をより遮蔽するように制御してもよい。
【0026】
機械排気構造6は、オフィスビル100内の天井102内に設けられ、且つ空間4の上方に配置された排気口6aと、天井ボード103と上階の床101との間の天井空間105内に配置され、排気口6aと不図示の排気ダクトで接続された排気ファン6bとを有する。本実施形態では、排気口6aは、天井ボード103と外装パネル9との間であって、且つ梁106よりも屋外側Aに設けられており、空間4内で上昇した空気が、排気口6aを介して天井空間105に排出される。また、排気口6aは空間4の直上に配置されるのが好ましく、これにより空間4内で上昇した熱気を効率良く排出することができる。
【0027】
排気ファン6bは、排気口6aから天井空間105内に導入された空気を、不図示の排気ダクトを介してオフィスビル100の外部に排気する。排気ファン6bは、天井空間105内に配置されていてもよいし、天井空間105以外の他の場所に配置されていてもよい。また、排気ファン6bを設けずに、オフィスビル100に通常設置される換気・排気或いは空調用ファンを用い、当該ファンと排気口6aとを排気ダクトで接続することで機械排気構造6を構成してもよい。
【0028】
上記のように構成される外装システム1では、
図2に示すように、先ず、オフィスビル100に到達した日射光(主に、直達日射光)のうちの一部、特に、東側或いは西側からの日射光S1が第1日射遮蔽部材3で反射する。また、オフィスビル100に到達した日射光の一部、特に南側からの日射光S2がLow−E複層ガラス2に入射すると、日射光S2の一部が当該Low−E複層ガラス2で反射すると共に、残りの日射光がLow−E複層ガラス2を透過して、空間4に到達する。更に、空間4を介して第2日射遮蔽部材5に到達した入射光S2’は、その一部が当該第2日射遮蔽部材5で反射し、残りの日射光S2”が第2日射遮蔽部材5を透過して屋内空間Rに到達する。
【0029】
空間4内の空気は、日射光S2’によって温められると、空気の密度変化による自然の上昇気流によって空間4の上方に移動し、排気口6aを介して空間4から排出される。空間4から排出された空気F1は、排気ファン6b及び不図示の排気ダクトを介してオフィスビル100の外部に排出される。また、空間4内の空気が排気口6aを介して排出される際、オフィスビル100の内部の空気F2が第2日射遮蔽部材5の隙間から空間4内に導入される。このように、空間4内の空気が当該空間4内で滞留し難くなり、これにより空間4内での空気の温度上昇が抑制される。
【0030】
従来のダブルスキン方式の場合、Low−E複層ガラス2のみならず、屋内側Bに別途の板ガラスを設ける構成であるが、上述のように、メンテナンス作業が煩雑であると共にメンテナンスコストが高い。本発明の外装システムでは、Low−E複層ガラス2で構成されるシングルスキン方式であるため、清掃を要するガラス面は2面であり、メンテナンス作業が容易であると共にメンテナンスコストを低減することができる。
【0031】
また、従来のプッシュプルウィンドウ方式の場合、空間4の上方に排気ファンを設けると共に、空間4の下方に給気ファンを設け、空気流れによって空間4にエアバリアを形成する。しかし空間4の熱気は、密度変化によって機械的な風圧等に因らずに上昇し、空間4の上方に設けられた排気口6aに到達する。よって本発明の外装システム1のように吹き出しファンを設けない構成でも、Low−E複層ガラス2と第2日射遮蔽部材5の間に設けられた空間4を空気流路とし、また、空間4の密閉性をある程度確保することで、吹き出しファンを設けた構成に匹敵する断熱性能を実現することが可能となる。
【0032】
[本発明の外装システムの性能評価]
次に、外装システム1の性能を評価するために、外装システム1の熱貫流率及び日射遮蔽係数を計算すると共に、本外装システムを採用した建物の年間空調負荷(暖房負荷及び冷房負荷の合計)を計算した。
【0033】
先ず、
図3に示すように、オフィスビル100の所定階における東ペリメータゾーン21,西ペリメータゾーン22、南ペリメータゾーン23及び北ペリメータゾーン24を想定し、各ペリメータゾーンの幅を、西/東ペリメータゾーンにおける柱108の1スパン分、すなわち7.2mとし、奥行きを3.6mとした。
【0034】
年間空調負荷の計算には、熱負荷・空調システム計算プログラム「newHASP」を用いた。計算条件は、オフィスビル100の内部発熱を、照明:5W/m
2、人体(事務作業員):0.15人/m
2、OA機器:25W/m
2とした。入力条件として、気象条件及び熱伝達条件は、JIS A2103に準ずる値とし、窓条件及びLow−E複層ガラス条件は、実際の構造或いは製品の特性値を用い、ブラインド条件は、JIS A2103に準ずる値とした。これらの条件に基づいて入力した値を表1に示す。
【0036】
また、比較として、(1)金属層を1層有する従来のシングルLow−E複層ガラス(Low−Eクリアガラス+6mm中空層+透明フロートガラス、及び明色ブラインド)の構成(以下、単に「Low−E」という)、エアフローウィンドウ方式の外装システム(以下、単に「AFW」という)、及びダブルスキン方式の外装システム(以下、単に「DS」という)のそれぞれについて、同様の計算を行った。結果を表2に示す。
【0041】
表2に示すように、本発明の外装システムの日射熱取得率及び日射遮蔽係数は、それぞれ0.17、0.19である。また、表4に示す入力条件で熱貫流率を算出した結果、本発明の外装システムの熱貫流率は、表5に示す様に、0.91W/m
2・Kである。なお、表4の入力条件において、熱貫流率(冬季)用の熱伝達率(室内側総合熱伝達率及びガラス対流熱伝達率)は、JIS A2102−1:2015の値を用いている。
【0042】
一方、「Low−E」について、日本建築学会環境系論文集(第600号、第39頁〜第44 頁、2006年2月)を参照した結果、「Low−E」の明色ブラインド室内側の熱貫流率及び日射遮蔽係数は、それぞれ2.4W/m
2・K、0.48である。「AFW」の熱貫流率及び日射遮蔽係数は、それぞれ0.98W/m
2・K、0.17である。また、「DS」の熱貫流率及び日射遮蔽係数は、それぞれ1.25W/m
2・K、0.15である。この計算結果から、外装システム1の断熱性能及び遮蔽性能は、計算上「Low−E」と比較して優れており、また、「AFW」及び「DS」と比較しても若干優れていることが分かる。
【0043】
次に、東西南北の各ペリメータゾーンにおける年間空調負荷を計算した結果を、
図4及び
図5に示す。
東ペリメータゾーン21では、
図4(a)に示すように、本発明の外装システムの年間空調負荷は334.71MJ/m
2・年である。一方、「Low−E」の年間空調負荷は476.55MJ/m
2・年、「AFW」の年間空調負荷は320.72MJ/m
2・年、「DS」の年間空調負荷は320.45MJ/m
2・年である。すなわち本発明の外装システムでは、東ペリメータゾーン21において、「Low−E」の年間空調負荷に対して70.2%まで低減することができ、更に、「AFW」及び「DS」とほぼ同等の年間空調負荷であることが分かる。
【0044】
西ペリメータゾーン22では、
図4(b)に示すように、本発明の外装システムの年間空調負荷は、337.65MJ/m
2・年である。一方、「Low−E」の年間空調負荷は、496.85MJ/m
2・年、「AFW」の年間空調負荷は325.06MJ/m
2・年、「DS」の年間空調負荷は322.68MJ/m
2・年である。すなわち本発明の外装システムでは、西ペリメータゾーン22において、「Low−E」の年間空調負荷に対して68%まで低減することができ、更に、「AFW」及び「DS」とほぼ同等の年間空調負荷であることが分かる。
【0045】
南ペリメータゾーン23では、
図4(c)に示すように、本発明の外装システムの年間空調負荷は、319.60MJ/m
2・年である。一方、「Low−E」の年間空調負荷は514.55MJ/m
2・年、「AFW」の年間空調負荷は322.01MJ/m
2・年、「DS」の年間空調負荷は309.02MJ/m
2・年である。すなわち本発明の外装システムでは、南ペリメータゾーン23において、「Low−E」の年間空調負荷に対して62.1%まで低減することができ、更に、「AFW」及び「DS」とほぼ同等の年間空調負荷であることが分かる。
【0046】
北ペリメータゾーン24では、
図4(d)に示すように、本発明の外装システムの年間空調負荷は、314.94MJ/m
2・年である。一方、「Low−E」の年間空調負荷は414.40MJ/m
2・年、「AFW」の年間空調負荷は299.97MJ/m
2・年、「DS」の年間空調負荷は303.26MJ/m
2・年である。すなわち本発明の外装システムでは、北ペリメータゾーン24において、「Low−E」の年間空調負荷に対して76.0%まで低減することができ、更に、「AFW」及び「DS」とほぼ同等の年間空調負荷であることが分かる。
【0047】
また,全方位のペリメータゾーンにおける年間空調負荷を計算すると、
図5に示すように、本発明の外装システム1では、シングルスキン方式であるにも係わらず、年間空調負荷が「Low−E」に対して68.7%と小さく且つ「AFW」及び「DS」とほぼ同等であり、「AFW」及び「DS」と同等の遮蔽性能及び断熱性能を実現できると推察される。
【0048】
次に、第1日射遮蔽部材3がオフィスビル100の年間空調負荷に与える影響を考察する。
図6に示すように、オフィスビル100の所定階における東ペリメータゾーン31、西ペリメータゾーン32、南ペリメータゾーン33及び北ペリメータゾーン34を想定した。各ペリメータゾーンの奥行きを、3.6mとした。
【0049】
そして、(A)第1日射遮蔽部材3の配置ピッチP1が1200mmである場合(
図7(a))、(B)第1日射遮蔽部材3の配置ピッチP2が1800mmである場合(
図7(b))、及び(C)第1日射遮蔽部材3を設けない場合(不図示)を想定し、それぞれの場合における年間空調負荷を計算した。年間空調負荷の計算には、上記と同様、熱負荷・空調システム計算プログラム「newHASP」を用いた。結果を
図8及び
図9に示す。
【0050】
図8(a)〜
図8(c)は、東ペリメータゾーン31における空調負荷を示す。
東ペリメータゾーン31の月別空調負荷は、
図8(a)に示すように、いずれの月においても、第1日射遮蔽部材3の配置ピッチP1(=1200mm)、配置ピッチP2(=1800mm)、第1日射遮蔽部材3を設けない場合、の順により大きくなっている。
東ペリメータゾーン31における年間空調負荷は、
図8(b)に示すように、第1日射遮蔽部材3を設けない場合の年間空調負荷を100%としたとき、配置ピッチP1の場合は81.7%、配置ピッチP2の場合は86.6%である。
また、
図8(a)で示す月別空調負荷のピーク月である「8月」について、所定時刻(8時)における東ペリメータゾーン31の空調負荷を計算すると、
図8(c)に示すように、第1日射遮蔽部材3を設けない場合の空調負荷を100%としたとき、配置ピッチP1の場合は93.8%、配置ピッチP2の場合は94.5%である。
【0051】
図8(d)〜
図8(f)は、西ペリメータゾーンにおける空調負荷を示す。
西ペリメータゾーン32の月別空調負荷は、
図8(d)に示すように、いずれの月においても、第1日射遮蔽部材3の配置ピッチP1、配置ピッチP2、第1日射遮蔽部材3を設けない場合、の順により大きくなっている。
西ペリメータゾーン32における年間空調負荷は、
図8(e)に示すように、第1日射遮蔽部材3を設けない場合の年間空調負荷を100%としたとき、配置ピッチP1の場合は79.1%、配置ピッチP2の場合は84.7%である。
また、
図8(d)で示す月別空調負荷のピーク月である「8月」について、所定時刻(15時)における西ペリメータゾーン32の空調負荷を計算すると、
図8(f)に示すように、第1日射遮蔽部材3を設けない場合の空調負荷を100%としたとき、配置ピッチP1の場合は92.8%、配置ピッチP2の場合は94.8%である。
【0052】
図9(a)〜
図9(c)は、南ペリメータゾーン33における空調負荷を示す。
南ペリメータゾーン33の月別空調負荷は、
図9(a)に示すように、いずれの月においても、第1日射遮蔽部材3の配置ピッチP1、配置ピッチP2、第1日射遮蔽部材3を設けない場合、の順により大きくなっている。
南ペリメータゾーン33における年間空調負荷は、
図9(b)に示すように、第1日射遮蔽部材3を設けない場合の年間空調負荷を100%としたとき、配置ピッチP1の場合は71.9%、配置ピッチP2の場合は80.4%である。
また、
図9(a)で示す月別空調負荷のピーク月である「8月」について、所定時刻(11時)における南ペリメータゾーン33の空調負荷を計算すると、
図9(c)に示すように、第1日射遮蔽部材3を設けない場合の空調負荷を100%としたとき、配置ピッチP1の場合は87.8%、配置ピッチP2の場合は91.7%である。
【0053】
図9(d)〜
図9(f)は、北ペリメータゾーン34における空調負荷を示す。北ペリメータゾーン34における空調負荷は、第1日射遮蔽部材3の配置ピッチがP2(=1800mm)である場合のみ計算した。
北ペリメータゾーン34の月別空調負荷は、
図9(d)に示すように、いずれの月においても、配置ピッチP2の場合の方が、第1日射遮蔽部材3を設けない場合よりも小さくなった。
北ペリメータゾーン34における年間空調負荷は、
図9(e)に示すように、第1日射遮蔽部材3を設けない場合の年間空調負荷を100%としたとき、配置ピッチP2の場合は81.6%である。
また、
図9(d)で示す月別空調負荷のピーク月である「8月」について、所定時刻(9時)における北ペリメータゾーン34の空調負荷を計算すると、
図9(f)に示すように、第1日射遮蔽部材3を設けない場合の空調負荷を100%としたとき、配置ピッチP2の場合は87.3%である。
【0054】
この結果から、外装システム1に第1日射遮蔽部材3を設けることで、東西南北の全てのペリメータゾーンにおいて、各月の空調負荷が小さくなると共に(
図8(a),(d)、
図9(a),(d))、年間空調負荷が小さくなり(
図8(b),(e)、
図9(b),(e))、上記特定時刻での空調負荷も小さくなることが分かる(
図8(c),(f)、
図9(c),(f))。そして、第1日射遮蔽部材3の配置ピッチを小さくすることにより(P1<P2)、各月の空調負荷及び年間空調負荷のいずれも小さくできることが分かる。
【0055】
また、東ペリメータゾーン31では、第1日射遮蔽部材3を設けない場合と比較して、朝8時における空調負荷が低減しており、朝方の東側からの日射光を効果的に遮蔽できることが分かる。同様に、西ペリメータゾーン32でも、第1日射遮蔽部材3を設けない場合と比較して、15時における空調負荷が低減しており、夕方の西側からの日射光を効果的に遮蔽できることが分かる。
【0056】
[外装システムの複層ガラス近傍における温度分布]
ペリメータゾーンは、建物の大きさにも因るが、建物の壁から2.0m〜5.5mの範囲内の直達日射光が入射する外周空間である。このペリメータゾーンは、その内側に位置するインテリアゾーン(内部空間)と比較して、外光や外気などの外部環境の影響が大きく、温度変化が大きいため、このような温度変化をできるだけ抑制できる外装システムとするのが望ましい。そこで、本発明の外装システム1を建物に採用した場合の空間4の温度分布をシミュレーションし、比較として、従来のプッシュプルウィンドウ方式の外装システムを建物に適用した場合の温度分布をシミュレーションした。
【0057】
図10は、
図1の外装システム1を建物に適用した際の空間4の縦断面における温度分布を示す図であり、(a)は夏季、(b)は冬季の場合をそれぞれ示す。また、
図11は、従来のプッシュプルウィンドウ方式の温度分布を示す図であり、(a)は夏季、(b)は冬季の場合をそれぞれ示す。
【0058】
図1の外装システム1では、年間で最も日射光の影響を受ける夏季には(
図10(a))、空間4の上部に35℃前後の領域があるものの、Low−E複層ガラス2の近傍に設けられた空間4の中央部が27℃前後となっている。また、年間で最も日射光の影響を受け難い冬季には(
図10(b))、空間4の下端に16℃前後の領域があるものの、空間4の大部分が23℃前後となっている。
【0059】
また、従来のプッシュプルウィンドウ方式の場合、夏季にはLow−E複層ガラスの近傍に設けられた空間4の上部が28℃前後であり、空間4の中央部が27℃前後となっている(
図11(a))。また、冬季には、空間4の下端に16℃前後の領域がある程度であり、空間4の大部分が23℃前後となっている。(
図11(b))。このように、
図11(a)の温度分布によれば、夏季において、空間4の下方に吹き出しファンを設けても熱気をそれ程遮断できていないと推察される。
【0060】
このシミュレーション結果から、本発明の外装システムを適用した場合、夏季には空間4の上部に若干の高温領域が生じているものの、空間4の大部分でプッシュプルウィンドウ方式とほぼ同等の温度分布を得られることが分かる。また、冬季でも、空間4の大部分でプッシュプルウィンドウ方式とほぼ同等の温度分布となり、更に、空間4の下部に生じる低温領域を小さくできることが分かる。よって、空間4の上方にのみ機械排気構造6を設けて、空間4の下方に吹き出しファンを設けない方式を採用する本発明の構成でも、プッシュプルウィンドウ方式とほぼ同等の断熱性能を維持できると推察される。
【0061】
上述したように、本実施形態によれば、2層の金属層2c,2cを有するLow−E複層ガラス2がオフィスビル100の外壁100aに取り付けられ、鉛直方向に延設した複数の第1日射遮蔽部材3,3,・・・が、オフィスビル100の外壁100aの屋外側Aに取り付けられる。また、Low−E複層ガラス2から入射した日射光S2’を遮蔽する第2日射遮蔽部材5が、Low−E複層ガラス2との間に空間4を設けるように屋内側Bに配置され、更に、機械排気構造6が空間4内から空気を排出する。本構成により、南側、東側及び西側からの日射光による蓄熱が抑制され、優れた熱貫流率及び日射遮蔽係数を実現することができ、従来構成と同等の断熱性能及び遮蔽性能を実現することができる。また、屋内側Aに別途の板ガラスが設置されないため、メンテナンス作業を容易に行うことができ、システム設置時やメンテナンス時などのコストを低減することができる。
【0062】
また、第1日射遮蔽部材3は、外壁100aから屋外側Aに突出した複数のフィンであり、当該複数のフィンが、外壁100aの水平方向に関して所定の配置ピッチP1或いはP2で配置されるので、東側及び西側からの日射光を確実に遮蔽することができ、遮蔽性能のより優れた外装システムを提供することができる。
【0063】
以上、上記実施形態に係る外装システムについて述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0064】
例えば、本実施形態では、第1日射遮蔽部材3は方立7毎に取り付けるが、これに限らず、方立7とは異なる別途の縦材を所定ピッチで外壁に取り付け、当該縦材毎に取り付けられてもよい。また、第1日射遮蔽部材は、方立或いは上記縦材とは異なるピッチで配置されてもよい。
【0065】
第1日射遮蔽部材3がフィンである場合、水平断面形状が矩形、或いは三角形であってもよい。また、第1日射遮蔽部材3はフィン形状に限らず、東側及び西側からの日射光を遮蔽できる他の立体形状であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態の外装システム1には庇が設けられていないが、これに限らず、建物の外壁に庇が設けられてもよい。すなわち、外装システムは、建物の外壁に、建物の鉛直方向に延設された第1日射遮蔽部材と、Low−E複層ガラスの上方に配置された庇とを備えていてもよい。