特許第6828281号(P6828281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828281
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線重合性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 230/08 20060101AFI20210128BHJP
   C08G 59/02 20060101ALI20210128BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20210128BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20210128BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20210128BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C08F230/08
   C08G59/02
   C08J7/04 ACEP
   C08F2/48
   C09D4/02
   B32B27/16 101
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-118415(P2016-118415)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-8306(P2017-8306A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-127153(P2015-127153)
(32)【優先日】2015年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 大
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳二
(72)【発明者】
【氏名】石崎 慎治
(72)【発明者】
【氏名】山口 薫
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−079177(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/102370(WO,A1)
【文献】 特開2003−335822(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/085421(WO,A1)
【文献】 特表2005−504128(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0083452(US,A1)
【文献】 特開2012−172064(JP,A)
【文献】 特開2009−179655(JP,A)
【文献】 特開平09−251670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08F 2/00− 2/60
C08G59/00− 59/72
C08L 1/00−101/14
C09D 1/00−201/10
C09J 1/00−201/10
B32B27/16
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤(a1)と、水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)とを置換反応させて化合物(A)を合成し、さらに重合性官能基含有化合物(B)を混合する工程を有し、
前記シランカップリング剤(a1)が、アルコキシシリル基、および他の官能基を有し、
前記他の官能基が、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、およびアミノ基からなる群より選択される官能基であり、
前記重合性官能基含有化合物(B)は、ラジカル重合性基を有する、
活性エネルギー線重合性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)の重合性官能基が、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基である、請求項1記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記化合物(A)および前記重合性官能基含有化合物(B)との合計100重量%のうち、前記化合物(A)を0.5〜95重量%、前記重合性官能基含有化合物(B)を5〜99.5重量%含む、請求項1または2記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
シランカップリング剤(a1)と、水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)とを置換反応させて化合物(A)を合成し、さらに重合性官能基含有化合物(B)を混合する工程を有し、
前記シランカップリング剤(a1)が、アルコキシシリル基、および他の官能基を有し、
前記他の官能基が、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、およびアミノ基からなる群より選択される官能基であり、
前記重合性官能基含有化合物(B)は、ラジカル重合性基を有する、
活性エネルギー線重合性樹脂組成物を製造し、
基材上に、前記活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工して樹脂層を形成する、塗工シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤やコート剤等に使用できる活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、重合速度が速く、また一般に無溶剤で使用できるため、作業性に優れ、さらに重合時に必要となるエネルギーが極めて低い等の優れた特性を有している。活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、一般的に、ラジカル重合性の活性エネルギー線重合性樹脂組成物や、カチオン重合性の活性エネルギー線重合性樹脂組成物が知られており、接着剤やコート剤等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
近年、ディスプレイなどの表示装置を含めた情報通信機器の発達と汎用化は目覚しいものがある。これらの表示装置においては、コート剤、接着剤、あるいはシーリング剤等の更なる性能向上および生産性の向上が求められており、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いた様々な提案がされている。このような表示装置には、通常、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)など、用途に応じて様々なフィルムが使用されており、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)を構成する液晶セル用部材においては、偏光板や位相差フィルムが積層されている。
【0004】
また、フラットパネルディスプレイ(FPD)は、表示装置として利用するだけではなく、その表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置として利用されることもある。タッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
【0005】
また、表示装置には、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し、液晶層の下面側にエッジライト型、直下型等のバックライトユニットが装備されている。かかるエッジライト型のバックライトユニットは、基本的には光源としての線状のランプと、ランプに端部が沿うように配置される方形板状の導光板と、導光板の表面側に配設される光拡散シートと、光拡散シートの表面側に配設されるプリズムシートを備えている。最近では、光源として、冷却極管(CCFL)に代わり、色再現性や省電力に優れた発光ダイオード(LED)が使用されるようになってきたため、より耐熱性や寸法安定性の要求が高まってきている。
【0006】
このようなフィルムは、接着剤を介して被着体に貼着して光学素子用積層体として表示装置に使用されており、活性エネルギー線重合性接着剤が一形態として使用されている。
【0007】
表示装置の具体的な例を挙げると、LCDに使用する偏光子は、通常ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素や染料を吸着させたものを一軸延伸して製造されるが、このPVA系偏光子は、熱や水分により収縮することで偏光性能が低下し易い。そこで、PVA系偏光子の表面に保護フィルムを貼り合せた積層体を偏光板として使用されている。この貼り合わせに使用する接着剤は、従来からポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(PVA系水性接着剤)が広く使用されていた。しかし、水性接着剤は塗工後に乾燥工程が必要であるところPVA系偏光子は、耐熱性が低いため低温での長時間の乾燥が必要になり生産効率が悪い。そこで生産効率向上のため水系接着剤に代えて、活性エネルギー線として紫外線を用いたカチオン系活性エネルギー線重合性接着剤が検討されている。
【0008】
ところで、液晶表示装置は、その用途が拡大するにつれて、さまざまな環境で使用されるようになり、液晶表示装置を構成する偏光板には高い耐熱性が要求されている。例えば、カーナビゲーション等の車載型の液晶表示装置は、LCDテレビとは異なり夏季に過酷な高温雰囲気に晒されるため高度の耐久性(高温耐久性)が必要になる。具体的には高温環境下では接着性が弱いとPVA系偏光子と保護フィルムの熱収縮率の違いにより、PVA系偏光子と保護フィルムとが剥がれる問題があった。
【0009】
そこで、特許文献2には、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびN−アクリロイルモルホリンを含有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物に係る硬化性成分を含有し、硬化後の接着剤層のTgが60℃以上である活性エネルギー線重合性接着剤が開示されている。
【0010】
また、特許文献3には、水酸基とオキセタニル基を有する化合物と、ポリ(テトラアルコキシシラン)の脱アルコール反応で得られるシラン変成オリゴマーを用いた活性エネルギー線重合性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許4744496号公報
【特許文献2】特許2003−171459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の樹脂組成物を含む接着剤を使用した偏光板は、車載用途等のより過酷な環境下における耐久性を満足することが出来なかった。
【0013】
本発明は、優れた接着性を有し、高温耐久性に優れた積層体を形成できる接着剤ないしコート剤等に使用できる活性エネルギー線重合性樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、シランカップリング剤(a1)と水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)とを置換反応させてなる化合物(A)、および重合性官能基含有化合物(B)を含み、
前記シランカップリング剤(a1)がアルコキシシリル基、および他の官能基を有し、
前記他の官能基が、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、およびアミノ基からなる群より選択される官能基である。
【発明の効果】
【0015】
上記の本発明によれば、重合性官能基を有するアルコキシシリル基を有する化合物(A)を含むことで、基材や樹脂層との架橋形成が可能となったことに加え、重合反応を阻害するアルコールの発生量を抑制できたことで、硬化(架橋)で形成した樹脂層の凝集力が向上できた。これらにより密着性(接着性)に加え、耐湿熱性、耐湿熱性といった耐久性が優れる効果が得られた。
【0016】
本発明により、優れた接着性を有し、高温耐久性に優れた積層体を形成できる接着剤ないしコート剤等に使用できる活性エネルギー線重合性樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
<活性エネルギー線重合性樹脂組成物>
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)は、シランカップリング剤(a1)と水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)とを置換反応させてなる化合物(A)、および重合性官能基含有化合物(B)(以下、化合物(B)ともいう)を含み、
前記シランカップリング剤(a1)がアルコキシシリル基、および他の官能基を有し、
前記他の官能基が、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、およびアミノ基からなる群より選択される官能基である。
【0018】
ここで、「活性エネルギー線」とは、紫外線、可視光線等の光線、赤外線等の熱線、エレクトロンビーム(EB)、及び放射線を含む、化学反応を生じさせるための活性化に必要なエネルギーを提供できる、広義のエネルギー線を意味する。本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ともいう)は、上記活性エネルギー線の照射によって、重合反応が進行し、硬化物(樹脂層ともいう)を形成する。照射する活性エネルギー線は、特に制限はないが、光であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いる化合物(A)は、シランカップリング剤(a1)と水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)(以下、化合物(a2)ともいう)を置換反応させた反応生成物である。化合物(A)は、重合性官能基を有するアルコキシシリル基を有するため、活性エネルギーの照射により重合性官能基含有化合物(B)が形成する架橋ネットワークに組み込まれるため凝集力を向上させる。また、アルコキシシリル基の反応により接着剤やコート剤として使用された場合、相手方に対して良好な密着性が得られる。
化合物(A)の原料であるシランカップリング剤(a1)は、アルコキシシリル基、および他の官能基を有している。他の官能基は、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、およびアミノ基からなる群より選択される官能基である。他の官能基は、湿熱耐性の面で加水分解性基を含まないことが重要である。
【0020】
化合物(A)が有する重合性官能基は、2〜3個が好ましい。
【0021】
シランカップリング剤(a1)を例示する。なお、本発明では、「エポキシ」「オキシラン」「エチレンオキサイド」と表記した場合は、特に説明がない限り、三員環の構造を持つ環状エーテルを表すものとする。また、シクロ環に隣接した三員環エーテルもエポキシ基とする。また、「グリシジル」と表記した場合は、「オキシランメチル」を表すものとする。
ビニル基を有するシランカップリング剤は、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤は、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤は、例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤は、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤は、例えばN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
また、化合物(A)の原料である水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)は、水酸基とカチオン重合性官能基を有する化合物(a2−1)、または水酸基とラジカル重合性官能基を有する化合物(a2−2)である。化合物(a2−1)が有するカチオン重合性官能基としては、環状ヘテロ化合物であるエポキシ基およびオキセタニル基、ならびに2個以上の酸素、硫黄、またはリンを含む環状化合物、ならびにビニルエーテル基等が好ましい。
【0023】
水酸基とカチオン重合性官能基を有する化合物(a2−1)を例示する。水酸基を有するオキシラン含有化合物は、例えばアリルアルコールオキシド、3−ブテン−1−オールオキシド、2−ブテン−1−オールオキシド、2−メチル−2−プロペン−1−オールオキシド、1−メチル−2−プロペン−1−オールオキシド、4−ペンテン−1−オールオキシド、3−ペンテン−1−オールオキシド、2−ペンテン−1−オールオキシド、3−メチル−3−ブテン−1−オールオキシド、3−メチル−2−ブテン−1−オールオキシド、2−メチル−2−ブテン−1−オールオキシド、1,1−ジメチル−2−プロペン−1−オールオキシド、1,2−ジメチル−2−プロペン−1−オールオキシド、5−ヘキセン−1−オールオキシド、6−ヘプテン−1−オールオキシド、7−オクテン−1−オールオキシド、1−オクテン−3−オールオキシド、2−メチル−6−ヘプテン−2−オールオキシド、9−デセン−1−オールオキシド、2,7−オクタジエン−1−オールジオキシド、7−オクテン−1、2−ジオールオキシド、1,7−オクタジエン−3−オールジオキシド、2−メチル−3−ブテン−2−オールオキシド、リナロールオキシド、1,2−デヒドロリナロールオキシド、ゲラニオールジオキシド、ネロールジオキシド、ラバンドゥロールオキシド、シトロネロールオキシド、1,2−ジヒドロリナロールオキシド、デヒドロネロリドールジオキシド、ネロリドールトリオキシド、ファルネソールトリオキシド、ビスアボロールジオキシド、ゲラニリナロールテトラオキシド、ゲラニルゲラニオールテトラオキシド、イソフィトールオキシド、フィトールエポキシド、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル等の脂肪族化合物等が挙げられる。
【0024】
水酸基を有するオキシラン含有化合物は、2個以上のオキシラン含有化合物のオキシランを水酸基や酸、塩基性化合物で開環した2級水酸基を有するオキシラン含有化合物も挙げることができる。オキシランを開環した水酸基を有するオキシラン含有化合物は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、大豆油変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0025】
水酸基を有するオキセタニル基含有化合物は、例えば3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等が挙げられる。
水酸基を有する2個以上の酸素や硫黄やリンを含む環状へテロ化合物は、例えばグリセリンカーボネート等が挙げられる。
【0026】
水酸基を有するビニルエーテルは、例えばヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ヒドロキシデシルビニルエーテル、ヒドロキシドデシルビニルエーテル、ヒドロキシオクタデシルビニルエーテル、グリセリルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ならびにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加型ビニルエーテル等が挙げられる。
化合物(a2−1)は、単独または2種類以上を併用できる。
【0027】
これらの中でも化合物(a2−1)は、カチオン重合性が良好なオキシラン、およびオキセタニル基含有化合物が好ましい。さらにシランカップリング剤(a1)との反応性が良好な点から、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンがより好ましい。
【0028】
水酸基とラジカル重合性官能基を有する化合物(a2−2)を例示する。なお、本発明では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイルオキシ」、及び「(メタ)アリル」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」、及び「アリル及び/又はメタリル」を表すものとする。
【0029】
化合物(a2−2)は、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル−α−(ヒドロキシメチル)等の単官能(メタ)アクリル酸グリセロール;
(メタ)アクリル酸グリシジルラウリン酸エステル等の脂肪酸エステル系(メタ)アクリル酸エステル;
化合物(a2−2)に対してε−カプロラクトンの開環付加させることで分子末端に水酸基付与した(メタ)アクリル酸エステル;
化合物(a2−2)に対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等;の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
【0030】
ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシデシルビニルエーテル等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系ビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;
【0031】
(メタ)アリルアルコール、イソプロペニルアルコール、ジメチル(メタ)アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル;
エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系(メタ)アリルエーテル等の脂肪族(メタ)アリルアルコール、ならびにその(メタ)アリルエーテル;
【0032】
プロペンジオール、ブテンジオール、ジ(メタ)アクリル酸グルセロール等の複数の水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和二重結合基含有化合物。
【0033】
N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド。
【0034】
ビニルアルコール等の水酸基とビニル基を有する単量体等が挙げられる。
化合物(a2−2)は、単独または2種類以上を併用できる。
【0035】
これらの中でも化合物(a2−2)は、基材との接着性の観点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ε−カプロラクトン1〜2mol付加(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の炭素数2〜18であるα,β−エチレン性不飽和二重結合基含有化合物が好ましい。
【0036】
さらに具体的な反応例としては、例えば化合物(a1)としてトリメトキシシリル基を有するシランカップリング剤を用いた場合、下記一般式(1)の反応で化合物(A)を得ることができる。
一般式(1)
【0037】
【化1】
【0038】
一般式(1)において、nは、1から3の整数であり、R1は、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、およびアミノ基からなる群より選択される官能基を有する有機残基であり、R2は、重合性官能基含有有機残基である。
【0039】
一般式(1)の反応は、副生成するメタノールを留去しながら反応することが好ましい。脱メタノールにより可逆反応が少なくなり、化合物(A)を安定して得ることができる。さらに、脱メタノール量の調整により化合物(A)に含まれる重合性官能基含有有機残基の置換数を調整することができる。また、反応に際し、化合物(a1)と化合物(a2)の比を調整することで化合物(A)に含まれる重合性官能基含有有機残基の置換数を調整することも可能である。例えば、化合物(a1)に対して化合物(a2)を2倍のモル比で反応させた場合、重合性官能基含有有機残基の置換数が2の化合物(A)を得ることができる。
【0040】
化合物(A)を得るための反応条件は、例えば30℃から250℃で10分から10時間、加熱することが好ましい。また、減圧雰囲気下、脱アルコール反応を行ってもよい。さらに必要に応じて酸や塩基性物質、スズやチタン、ジルコニウム等の金属化合物を触媒として使用してもよい。
【0041】
化合物(a1)と化合物(a2)との反応において、化合物(a2)は、化合物(a2−1)と化合物(a2−2)を併用することもできる。
また、化合物(A)は、さらに他の反応性官能基を有してもよい。
【0042】
化合物(A)は、重合性官能基を有するアルコキシシリル基を一つ以上有する。密閉された容器中ではアルコキシシリル基として安定に存在するが、例えば、基材に塗工後は、空気中や基材中の水分と反応しカチオン重合性官能基含有有機残基、ラジカル重合性官能基含有有機残基、アルコールからなるアルコキシ部位の一部が分解しSi−OH結合が現れる。
【0043】
本発明の樹脂組成物を基材に塗工し、活性エネルギー線を照射することで形成した硬化物(樹脂層)は、化合物(A)のアルコキシシリル基が加水分解することで発生するシラノール基が基材の表面官能基(例えば水酸基、カルボニル基等)と共有結合や水素結合などの化学結合を形成するために密着性が向上する。また、化合物(A)の重合性官能基が化合物(B)と反応することで、アルコキシシリル基が架橋構造に取り込まれ易いため、基材と樹脂層は、強固に結合するため非常に優れた密着性(優れた接着性)が得られる。さらにシランカップリング剤である化合物(a1)をそのまま使用した場合と比較し、化合物(A)は加水分解の際に重合性官能基を持たないアルコールの発生量が少なく、硬化物(樹脂層)中に未反応物の残存が少なくなり、樹脂層の凝集力が強固になるため密着性が向上する。
【0044】
本発明で用いる重合性官能基含有化合物(B)は、重合性官能基としてラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有している。ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましい。また、カチオン重合性基は、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基、ビニルエーテル基、2個以上の酸素または酸素以外のヘテロ基を有する環状化合物が好ましい。また、化合物(B)は、既に説明した水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)を含む。
【0045】
カチオン重合性基を有する化合物(B)を例示する。
エポキシ基含有化物は、オキシラン化合物ともいい、脂肪族オキシラン化合物と芳香族オキシラン化合物がある。
【0046】
脂肪族オキシラン化合物は、例えばオキシラン、メチルオキシラン、フェニルオキシラン、1,2−ジフェニルオキシラン、メチリデンオキシラン、オキシラニルメチル、オキシラニルメタノール、オキシランカルボン酸、(クロロメチル)オキシラン、(ブロモメチル)オキシラン、およびオキシラニルアセトニトリル等が挙げられる。
【0047】
芳香族オキシラン化合物は、例えばビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、1,3−フェニレンビス(メチレン)ビス(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボキシレート)、および1,3−ビス{(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−イルメトキシ)メチル}ベンゼンが好ましい。芳香族オキシラン化合物を用いると耐熱性および耐湿熱性がより向上する。芳香族オキシラン化合物は、芳香環に置換基を有してもよい。
【0048】
オキシラン化合物のオキシラン当量は、通常30〜3000g/eq程度が好ましく、50〜1500g/eqがより好ましい。オキシラン当量が30g/eq以上の場合、硬化後のシートの可撓性が優れ、接着力もより向上する。また、3000g/eq以下になると、化合物(A)との相溶性がより向上する。
【0049】
エポキシシクロヘキシル基含有化合物は、例えば3,4−オキシランシクロヘキシルメチル、3,4−オキシランシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−オキシラン−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−オキシラン−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4−オキシランシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス(3,4−オキシランシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−オキシラン−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジエチレングリコールビス(3,4−オキシランシクロヘキシルメチルエーテル)、およびジシクロペンタジエンジオキサイド等が挙げられる。
【0050】
オキセタニル基含有化合物は、例えば3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、および3−エチル−{(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタン等が挙げられる。
【0051】
2個以上の酸素または酸素以外のヘテロ環を有する化合物は、環状エステル化合物、環状ホルマール化合物、環状カーボネート化合物、含フッ素環状化合物等が好ましい。環状エステル化合物は、ラクトンが好ましい。また環状ホルマール化合物は、ジオキソラン、ジオキサンおよびトリオキサン等がより好ましい。また、環状カーボネートは、例えばグリコールとジアルキルカーボネートとの反応によって得られるポリマーを解重合する方法(特開平2−56356号公報参照)、または対応するアルキレンオキシドと二酸化炭素の反応によって合成することができる。環状カーボネートは、5員環,6員環または7員環以上の構造を有することが好ましい。
5員環ホルマール化合物は、例えば1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
6員環ホルマール化合物は、例えば1,3−ジオキサン等が挙げられる。
7員環ホルマール化合物は、1,3−ジオキセパンに含まれるが、2位の炭素がカルボニル炭素のため、環状カーボネートとして独立に分類される。
【0052】
環状カーボネートの具体例は、エチレンカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、4‐ペンチル‐1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ブチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−(イソプロポキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヘキシル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヘキシル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−オクチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ノニル−5−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−デシル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ビスメチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラエチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ヘキサヒドロ−1,3−ベンゾジオキソール−2−オン、4−イソプロピル−4−メチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、アリルコハク酸無水物、4−(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメチルカルバモイルオキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン等の5員環カーボネート;
【0053】
炭酸トリメチレン(1,3−ジオキサン−2−オン)、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、炭酸2,2−ジメトキシプロパン−1,3−ジイル、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン(ネオペンチルグリコールカーボネート)、5−メチル−5−プロピル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−ヒドロキシメチル−5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4−フェニル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−(ヒドロキシメチル)−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチレン−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−シアノ−5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメトキシ)−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン等の6員環カーボネート;
【0054】
炭酸テトラメチレン(1,3−ジオキセパン−2−オン)、5−メチル−1,3−ジオキセパン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキセパン−2−オン、5,5−ジメチル−1,3−ジオキセパン−2−オン、5−フェニル−1,3−ジオキセパン−2−オン、4−フェニル−1,3−ジオキセパン−2−オン、4−[1−(フェニルチオ)シクロヘキシル]−1,3−ジオキセパン−2−オン、5,5′−(エチレンビスチオビストリメチレン)ビス(1,3−ジオキセパン−2−オン)等の7員環カーボネートが挙げられる。
これらの中でもエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート等の5員環カーボネートは、活性エネルギー線の反応性が良好であるため好ましい。
【0055】
ビニルエーテル基含有化合物は、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、イソペンチルビニルエーテル、tert−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、イソヘキシルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ヘプチルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等が挙げられる。
カチオン重合性基を有する化合物(B)は、単独または2種類以上を併用できる。
【0056】
カチオン重合性基を有する化合物(B)は、カチオン重合性に優れる面から、3,4−オキシランシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−オキシランシクロヘキシルメチル)アジペート、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールFのグリシジルエーテルが好ましい。
【0057】
ラジカル重合性基を有する化合物(B)を例示する。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)は、既に説明した水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)が挙げられる。化合物(a2)の中でも、基材との接着性の観点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ε−カプロラクトン1〜2mol付加(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0058】
また、化合物(B)は、環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物、環状構造を有さない(メタ)アクリレート化合物、環状構造を有するビニル化合物、環状構造を有さないビニル化合物、アリル化合物が好ましい。
【0059】
環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、例えば水添ビフェノールAのジアクリレート、3,3−ジシクロプロピルアクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−プロピル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、1,3−アダマンチルジオールジ(メタ)アクリレート、1,3,5−アダマンチルトリ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1,5−アダマンチルジ(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ及びトリアクリレート;が挙げられる。
【0060】
環状構造を有さない(メタ)アクリレート化合物、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、および(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸(メタ)アリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−クロル2−プロペニル、(メタ)アクリル酸2−プロペニルラクチル、(メタ)アクリル酸3,7−ジメチルオクタ−6−エン−1−イル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸ビニル等の他の不飽和基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、および(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸(メトキシカルボニル)メチル、(メタ)アクリル酸2−(エトキシカルボニルオキシ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−(プロポキシカルボニルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸2−(オクチルオキシカルボニルオキシ)ブチル等のカルボニル基を1つ有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2−オキソブタノイルエチル、(メタ)アクリル酸3−オキソブタノイルプロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジ(オキソブタノイル)ブチル、(メタ)アクリル酸2,3−ジ(オキソブタノイル)ヘキシル、および(メタ)アクリル酸2,3−ジ(オキソブタノイル)オクチル等のカルボニル基を2つ有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸3−スルホプロピル、および(メタ)アクリル酸スルホステアリル等のスルホニル基含有の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリロイルオキシジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート等のスルホニル基含有の(メタ)アクリル酸エステルの金属塩、またはそのアンモニウム塩;
(メタ)アクリル酸アシッドホスホオキシエチル、および(メタ)アクリル酸アシッドホスホオキシエチレンオキサイド(エチレンオキサイド付加モル数:4〜10)等のホスホン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ブトキシエチル、および(メタ)アクリル酸4−ブトキシエチル等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリル酸誘導体;
ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸2,2−ジメチルプロピルジオール、ジ(メタ)アクリル酸ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、ジ(メタ)アクリル酸2,5−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,2−オクタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、およびジ(メタ)アクリル酸2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール等の2官能(メタ)アクリル酸エステル;
トリ(メタ)アクリル酸1,2,3−プロパントリオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールヘキサン、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールオクタン、およびトリ(メタ)アクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン等の3官能(メタ)アクリル酸エステル;
テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1,3−プロパンジオール、およびヘプタ(メタ)アクリル酸ジ2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1,3−プロパンジオールポリアルキレンオキサイド等の多官能(メタ)アクリル酸エステル等;
(メタ)アクリロニトリル、イタコンニトリル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル等が挙げられる。
【0061】
また、(メタ)アクリレート化合物は、上記モノマー以外にオリゴマーであってもよい。オリゴマーは、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、およびポリエステル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0062】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ化合物のエポキシ基と、カルボキシル基および水酸基の少なくとも1種を含むモノマーとを反応させて得たエポキシ基を有しない(メタ)アクリレートである。
エポキシ化合物は、例えばビスフェノ−ル型エポキシ化合物、アリルアルコール型エポキシ化合物等の脂肪族エポキシ化合物;フェノ−ル型エポキシ化合物、芳香族エポキシの水添物、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
【0063】
ウレタン(メタ)アクリレートは、分子内にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0064】
ポリエステル(メタ)アクリレートは、分子内にエステル結合と(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0065】
環状構造を有するビニル化合物は、例えばスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)スチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)−α−メチルスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)−α−メチルスチレン、1−ブチルスチレン等が挙げられる。
【0066】
パーフルオロビニル、パーフルオロプロペン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、およびフッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系化合物;
ビニルスルホン酸、2−プロペニルスルホン酸、2−メチル−2−プロペニルスルホン酸、およびビニル硫酸等のアルケニル基含有スルホン酸;
ビニルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸カリウム、およびナトリウムビニルアルキルスルホサクシネート等の金属塩、またはそのアンモニウム塩;
グリシジルシンナマート、アリルグリシジルエーテル、および1,3−ブタジエンモノオキシラン等のグリシジル基含有ビニルエステル;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、およびアリルクロライド等のビニルエステル;
(E)−ブタ−2−エン酸ビニル、(Z)−オクタデカ−9−エン酸ビニル、および(9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−9,12,15−トリエン酸ビニル、アレン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、および2−メチル−1,3−ブタジエン等のジエン;
エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン、1−テトラデセン、1−トリアコンテン、1−オクタトリアコンテン、および1−テトラコンテン等が挙げられる。
【0067】
アリル化合物は、例えば酢酸(メタ)アリル、プロピオン酸(メタ)アリル、およびピバリン酸ビニル等の飽和カルボン酸の(メタ)アリルエステル;
2−メチル−2−プロペニルスルホン酸アンモニウム、および2−メチル−2−プロペニルスルホン酸ナトリウム等の2−メチル−2−プロペニルスルホン酸の金属塩、またはそのアンモニウム塩;アセト酢酸(メタ)アリル、アセトプロピオン酸(メタ)アリル、プロパノイル酢酸(メタ)アリル、およびブチリル酢酸(メタ)アリル等のアシル基を有する脂肪族(メタ)アリル化合物;cis−コハク酸ジアリル、2−メチリデンコハク酸ジアリル、2−プロペンニトリル等が挙げられる。
【0068】
これらの中でもラジカル重合性基を有する化合物(B)は、反応性の観点から(メタ)アクリレート化合物が好ましく、本発明の樹脂組成物を活性エネルギー線重合性接着剤、または活性エネルギー線重合性コート剤として用いた場合、基材との接着性の観点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
また、ラジカル重合性基を有する化合物(B)は、接着力、耐熱性、耐湿熱性向上の観点から2官能以上の(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。具体的には、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAのジアクリレート、水添ビフェノールAのジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ及びトリアクリレートが好ましい。
【0069】
本発明において化合物(A)と化合物(B)の配合比率は、化合物(A)と化合物(A)との合計100重量%のうち、化合物(A)を0.5〜95重量%、化合物(B)を5〜99.5重量%含有することが好ましく、化合物(A)を1〜70重量%、化合物(B)を30〜99重量%を含有することがより好ましく、化合物(A)を2〜50重量%、化合物(B)を50〜98重量%含有することがさらに好ましい。化合物(A)が0.5%より多いと化合物(A)と基材および化合物(B)との化学結合により密着性が向上する。95重量%より少ないと粘度が低くなり、塗工適正に優れる。
【0070】
本発明の樹脂組成物が、カチオン重合性官能基を有する化合物を含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤は、公知の化合物を使用できる。市販品を挙げると、例えばUVACURE1590(ダイセル・サイテック社製)、CPI−110P(サンアプロ社製)等のスルホニウム塩、IRGACURE250(BASF社製)、WPI−113(和光純薬社製)、Rp−2074(ロ−ディア・ジャパン製)等のヨ−ドニウム塩が挙げられる。
【0071】
光カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物100重量%中に0.1〜10重量%配合することが好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
【0072】
本発明の樹脂組成物が、ラジカル重合性官能基を有する化合物を含む場合、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤は、公知の化合物を使用できる。市販品を挙げると、例えば、イルガキュア−184,907,651,1700,1800,819,369,261、DAROCUR−TPO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ダロキュア−1173(メルク社製)、エザキュア−KIP150、TZT(日本シイベルヘグナ−社製)、カヤキュアBMS、カヤキュアDMBI、(日本化薬製)等が挙げられる。
【0073】
光ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物100重量%中に0.1〜10重量%配合することが好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
【0074】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、さらに光増感剤、アミン系触媒、リン系触媒、フィラ、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、可塑剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を含有できる。
【0075】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これまで説明した原料を配合し、攪拌混合することで作製できる。
【0076】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物の製造は、既に説明した通り、シランカップリング剤(a1)と、水酸基を有する重合性官能基含有化合物(a2)とを置換反応させて化合物(A)を合成し、さらに重合性官能基含有化合物(B)を混合する工程を有し、
前記シランカップリング剤(a1)がアルコキシシリル基、および他の官能基を有し、
前記他の官能基が、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、およびアミノ基からなる群より選択される官能基である。
【0077】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、コ−ト剤または接着剤として使用することが好ましい。樹脂組成物は、基材の片面(または両面)に塗工し、次いで活性エネルギー線の照射を行い重合(硬化)することで樹脂層(用途により接着剤層、または塗膜ともいう)を形成することが好ましい。
【0078】
樹脂層の厚さは、0.1〜6μmが好ましく、0.1μm〜3μmがより好ましい。樹脂層の厚さを0.1μm以上にすると密着性や接着力がより向上する。また3μmを超えても特に不具合は無いが、コスト面でデメリットがある。
【0079】
塗工は、公知の塗工装置を使用できる。例えば、マイヤ−バ−、アプリケ−タ−、刷毛、スプレ−、ロ−ラ−、グラビアコ−タ−、ダイコ−タ−、マイクログラビアコ−タ−、リップコ−タ−、コンマコ−タ−、カ−テンコ−タ−、ナイフコ−タ−、リバ−スコ−タ−、スピンコ−タ−等が挙げられる。
【0080】
硬化に使用する活性エネルギー線は、光カチオン重合開始剤が通常反応可能な紫外線を含む波長が好ましく、150〜550nmがより好ましい。活性エネルギー線の光源は、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェ−ブ励起水銀灯、LEDランプ、キセノンランプ、およびメタルハライドランプ等が挙げられる。
【0081】
活性エネルギー線の照射強度は、10〜500mW/cm2が好ましい。照射強度と照射時間の積として表される積算照射量は、10〜5000mJ/cm2が好ましく、30〜4000mJ/cm2がより好ましい。
【0082】
本発明の接着剤は、必須成分として活性エネルギー線重合性樹脂組成物を含む。
【0083】
本発明の塗工シートは、基材と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成してなる樹脂層とを備えており、ディスプレイやタッチパネル等の情報通信機器等の光学フィルムに使用することが好ましい。
【0084】
本発明の積層体は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を含む接着剤から形成した樹脂層と、基材とを備えている。積層体なので基材は、少なくとも第一の基材と第二の基材を通常備えている。
【0085】
接着剤の活性エネルギー線重合反応は、樹脂組成物の塗工時、あるいは積層する際、さらには積層した後に活性エネルギー線を照射して進行するが、基材を積層した後に活性エネルギー線を照射して重合反応を進めることが好ましい。この際、上記基材は、活性エネルギー線の照射によって重合反応を進行させるために、活性エネルギー線を透過し易い材料から構成する必要がある。
基材は、透明フィルム、または透明ガラス板が好ましい。例えば第一の基材に透明フィルムまたは透明ガラス板を使用すれば、第二の基材として活性エネルギー線が透過し難い基材、例えば、木材、金属板、プラスチック板、紙加工品等を使用しても良い。
つまり樹脂層への活性エネルギー線照射は、基材越しに照射されるため第一の基材と第二の基材のうち、いずれか一方が活性エネルギー線を透過する必要がある。
【0086】
本発明の積層体では、基材として、フィルム状基材を使用することが好ましい。フィルム状基材は、
例えばセロハン、各種プラスチックフィルム、および紙等が挙げられる。なかでも、透明な各種プラスチックフィルムの使用が好ましい。また、フィルム状基材は、フィルムが透明であれば、単層または、複数の基材を積層した多層構造でも良いを有するものであっても良い。
【0087】
本発明のコート剤は、必須成分として活性エネルギー線重合性樹脂組成物を含む。
本発明のシートは、活性エネルギー線重合性樹脂組成物から形成した樹脂層と、基材とを備えている。
【0088】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物をコ−ト剤として用いる場合、活性エネルギー線重合反応は、樹脂組成物を基材の片面、あるいは両面の塗工した後に活性エネルギー線を照射して架橋(硬化)が進行する。前記基材は、木材、金属板、プラスチック板、フィルム状基材、ガラス板、紙加工品等であってよく、これらを特に制限なく使用することができる。
【0089】
以下、本発明の積層体のより具体的な実施形態について、基材として透明フィルムを使用した場合を例にして説明する。
【0090】
本発明の樹脂組成物を接着剤として使用して構成する積層体は、例えば透明フィルム/接着層/透明フィルム、又は透明フィルム/接着層/透明フィルム/接着層/透明フィルムといった、複数の透明フィルムを積層して得られるシ−ト状の多層フィルムである。また、別の形態において、積層体は、透明フィルム/接着層/透明フィルム/接着層/透明フィルム/接着層/透明フィルムといったシ−ト状の多層フィルムを、ガラス又は光学シートといった他の光学部材に接着した構成も好ましい。上記積層体は、概樹脂組成物を、フィルムの片面、あるいは両面から活性エネルギー線で重合硬化することによって、接着層を硬化させることによって得ることができる。
【0091】
本発明の樹脂組成物をコ−ト剤として使用して構成される積層体は、代表的に、透明フィルム/コ−ト層(塗膜ともいう)、又はコ−ト層/透明フィルム/コ−ト層の構造を有する、シ−ト状のフィルムである。このような積層体は、透明フィルムの少なくとも一方の主面に樹脂組成物を塗工し、該樹脂組成物を重合硬化させて、コ−ト層を形成することによって得ることができる。
【0092】
透明フィルムは、例えばポリビニルアルコールフィルム、ポリトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ポリカーボネート系フィルム、ポリノルボルネン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリビニル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、並びにポリオキシラン系フィルム等が挙げられる。
基材に透明フィルムを使用した場合、本発明の積層体は、光学用途に使用することが好ましい。
【0093】
透明フィルムの厚さは、適宜決定することができるが、一般には、強度又は取扱性等の作業性、および薄層性などの観点から、1〜500μmが好ましく、1〜300μmがより好ましく、5〜200μmがさらに好ましい。また、光学用途に使用する場合、透明フィルムの厚さは、5〜150μmが好ましい。
【0094】
本発明の積層体の実施態様の一例、光学素子用積層体は、透明フィルムとして、主に光学用途にて用いられる光学フィルムを使用することが好ましい。
【0095】
光学フィルムは、例えばハ−ドコ−トフィルム、帯電防止コ−トフィルム、防眩コ−トフィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、プリズムフィルム(プリズムシ−トともいう)、加飾フィルム(タッチパネル用充填シ−トを意味する)、および導光フィルム(導光板ともいう)等が挙げられる。
【0096】
偏光フィルムは、偏光板とも呼ばれ、ポリビニルアルコール系偏光子の両面を2枚のポリアセチルセルロース系フィルムであるポリトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)や、ポリビニルアルコール系偏光子の片面や両面をポリノルボルネン系フィルムであるポリシクロオレフィン系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム等接着剤を介して積層した多層構造のシ−ト状の光学素子用積層体である。
【0097】
本発明の樹脂組成物を接着剤として使用して、液晶表示装置、PDPモジュ−ル、タッチパネルモジュ−ル、および有機ELモジュ−ル等の積層体を形成できる。
【0098】
本発明の偏光板は、保護フィルムと、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成される樹脂層と、偏光子とを備えている。この偏光板には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を接着剤として使用することが好ましい。
【0099】
活性エネルギー線硬化性接着剤を使用した偏光板(偏光フィルム)は、より具体的には、以下のようにして得ることができる。
【0100】
(I)第1の透明フィルムである保護フィルムの一方の面に、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗工し、第1の樹脂層(接着剤層)を形成し、
透明フィルムである第2の保護フィルムの一方の面に、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗工し、第2の樹脂層(接着剤層)を形成し、
【0101】
次いで、ポリビニルアルコール系偏光子の各面に、第1の樹脂層(接着剤層)および第2の樹脂層(接着剤層)面を、同時に/または順番に重ね合わせた後、活性エネルギー線を照射し、第1の樹脂層(接着剤層)および第2の樹脂層(接着剤層)を重合硬化することによって製造する方法。
【0102】
(II)ポリビニルアルコール系偏光子の一方の面に、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗工し、第1の樹脂層を形成し、形成された第1の樹脂層の表面を透明フィルムである第1の保護フィルムで覆い、次いでポリビニルアルコール系偏光子の他方の面に、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗工し、第2の樹脂層を形成し、形成された第2の樹脂層の表面を第2の保護フィルムで覆い、活性エネルギー線を照射し、第1の樹脂層および第2の樹脂層を重合硬化することによって製造する方法。
【0103】
(III)第1の透明フィルムである保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子を重ねた端部および、ポリビニルアルコール系偏光子の第1の保護フィルムがない面に重ねた第2の保護フィルムの端部に活性エネルギー線硬化性接着剤をたらした後、ロ−ルの間を通過させ各層間に接着剤を広げる。次に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性接着剤を重合硬化させることによって製造する方法等があるが、特に限定するものではない。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお「部」は「重量部」であり、「%」は「重量%」を表す。
【0105】
[ポリビニルアルコール系偏光子]の製造例
ホウ酸20重量部、ヨウ素0.2重量部、ヨウ化カリウム0.5重量部を水480重量部に溶解させて染色液を調整した。この染色液にPVAフィルム(ビニロンフィルム#40、アイセロ社製)を、30秒浸漬した後、フィルムを一方向に2倍に延伸し、乾燥させて、膜厚30μmのPVA偏光子を得た。
【0106】
表1に合成例および比較例で使用する原料の略称を以下に記載する。
【0107】
【表1】
【0108】
<化合物(A)の製造>
[合成例1]
冷却管、分留管、撹拌装置、温度計、窒素導入管、真空ポンプとマノメーターを備えた4つ口フラスコに、KBE−1003を181部、ジグリセロールトリグリシジルエーテル819部、N,N−ジメチルベンジルアミン0.2部を仕込み、窒素雰囲気下で110℃に昇温し反応を開始した。110℃で温度が安定した後、減圧を開始した。減圧度は4kPaであった。そのまま脱アルコールしながら2時間保持し、淡黄色透明な化合物(A)を得た。なお、KBE−1003のエトキシ基が2置換体した場合の理論脱エタノール量は113gであり、実際の脱エタノール量は108gであった。
【0109】
[合成例11]
冷却管、分留管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、KBE−802を350部、OXT101 650部を仕込み、窒素雰囲気下で反応を開始した。脱メタノールしながら130℃まで昇温し、常圧で4時間保持し、褐色透明な化合物(A)を得た。なお、シランカップリング剤のアルコキシ基より化合物(a2)のモル数の方が少ないため、化合物(a2)が全て置換した場合の理論脱アルコール量は62であり、実際の脱アルコール量は60gであった。
【0110】
[合成例2〜10、12、13、15〜17]
化合物1の原料および反応条件を表2に記載された通りに変えた以外は、合成例1と同様に作製することでそれぞれ合成例2〜10および12〜17の化合物(A)を得た。なお、合成例2、4、6、10、13、14および16の理論脱アルコール量は化合物(a1)のアルコキシ基が全て置換した場合の理論脱アルコール量である。また、合成例1、3、5、7〜9、11、12、15、および17の理論脱アルコール量は、化合物(a1)のアルコキシ基より化合物(a2)の物質量の方が少ないため、化合物(a2)が全て置換した場合の理論脱アルコール量である。
【0111】
<化合物(A)’の製造>
[合成例14]
化合物1の原料および反応条件を表2に記載された通りに変えた以外は、合成例1と同様に作製することで合成例14の化合物(A)’を得た。
【0112】
【表2】
【0113】
表3に実施例で使用する原料の略称を以下に記載する。
【0114】
【表3】
【0115】
[実施例1]
遮光された容量300mLのガラス瓶に、2021Pを45部、EX−212Lを20部、OXT−101を15部、合成例1で得られた化合物(A)20部、CPI−110Pを2部加え、十分に攪拌と脱泡を行い、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0116】
<塗工シートAの製造例>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を使用し、以下の塗工シートAを作成した。
透明フィルムとして、ポリアセチルセルロース系フィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック:80μm」、紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系フィルム)を用いた。透明フィルム表面を300W・分/m2の放電量でコロナ処理を行った後、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をワイヤ−バ−コ−タ−を用いて塗工後の膜厚が2μmとなるように塗工し、樹脂層を有する積層体を形成した。積層体を80℃−2分乾燥し、溶媒を除去した後、透明フィルムがブリキ板に接するように、積層体の四方をセロハンテ−プで、ブリキ板に固定した。UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)内を乾燥窒素で置換後、波長365nmの最大照度500mW/cm2、積算光量1000mJ/cm2の紫外線を樹脂層側から照射して塗工シートAを作製した。
【0117】
得られた塗工シートAについて、密着力、耐湿熱性、耐熱性を以下の方法に従って求め、結果を同様に表4に示した。
《密着力》
JIS K5600−5−6:1999に従い、碁盤目剥離試験を実施した。100マス中の剥離したマス数を4段階評価した。
(評価基準)
◎:0マス(極めて良好)
○:1〜10マス(良好)
△:11〜30マス(使用可)
×:31マス以上(使用不可)
【0118】
《耐湿熱性》
積層体を、50mm×40mmの大きさに裁断し、85℃−85%RHの条件下で1000時間暴露した後、上記密着力と同様にJIS K5600−5−6:1999に従い、碁盤目剥離試験を実施した。100マス中の剥離したマス数を4段階評価した。
(評価基準)
◎:0〜10マス(極めて良好)
○:11〜30マス(良好)
△:31〜60マス(使用可)
×:61マス以上(使用不可)
【0119】
《耐熱性》
積層体を、50mm×40mmの大きさに裁断し、100℃−dryの条件下で1000時間暴露した後、上記密着力と同様にJIS K5600−5−6:1999に従い、碁盤目剥離試験を実施した。100マス中の剥離したマス数を4段階評価した。
(評価基準)
◎:0〜10マス(極めて良好)
○:11〜30マス(良好)
△:31〜60マス(使用可)
×:61マス以上(使用不可)
【0120】
<積層体Bの製造例>
透明フィルム(1)として、富士フィルム社製の紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系フィルム:商品名「フジタック:80μm」(厚み80μm)を用い、透明フィルム(2)として、富士フィルムビジネスサプライ社製の紫外線吸収剤を含有しないポリトリアセチルセルロース系フィルム:商品名「TAC50μ」(厚み50μm)を使用した。透明フィルム(1)、(2)の片側の表面に300W・min/m2の放電量でコロナ処理を行い、その後1時間以内に、活性エネルギー線硬化性組成物を、各フィルムのコロナ処理面上に、ワイヤ−バ−コ−タ−を用いて厚みが4μmとなるように塗工し、被膜を形成した。80℃−2分乾燥し、溶媒を除去した後、前記透明フィルム(1)、(2)に形成した樹脂層との間にポリビニルアルコール系偏光子を挟み、透明フィルム(1)/樹脂層/PVA系偏光子/樹脂層/透明フィルム(2)からなる積層体を得た。透明フィルム(1)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテ−プで固定し、ブリキ板に固定した。
【0121】
活性エネルギー線照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度500mW/cm2、積算光量1000mJ/cm2の紫外線を透明フィルム(2)側から照射して、積層体B(偏光板)を作成した。
【0122】
得られた積層体Bについて、接着力、耐湿熱性、耐熱性を以下の方法に従って求め、結果を同様に表4に示した。
【0123】
《接着力》
密着力は、JIS K6 854−4 接着剤−剥離接着強さ試験方法−第4部:浮動ロ−ラ−法に準拠して測定した。
即ち、得られた積層体Bを、25mm×150mmのサイズにカッタ−を用いて裁断して測定用サンプルとした。サンプルの片面に両面粘着テ−プ(ト−ヨ−ケム社製DF8712S)を貼り付け、ラミネ−タを用いて金属板上に接着させて、偏光板と金属板との測定用の積層体を得た。測定用の積層体には、透明フィルムと偏光子の間に予め剥離用のキッカケを設けておき、この測定用の積層体を23℃、相対湿度50%の条件下で、300mm/分の速度で90°の角度で引き剥がし、剥離力を測定した。この際、ポリビニルアルコール系偏光子と透明フィルム(1)、およびポリビニルアルコール系偏光子と透明フィルム(2)との双方の剥離力を測定した。
この剥離力を接着力として4段階で評価した。◎、○、△の評価であれば、実用上、問題のないレベルである。
◎:剥離不可、あるいは偏光板破壊 (極めて良好)
○:剥離力が2.0(N/25mm)以上 (良好)
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満 (使用可)
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満 (使用不可)
【0124】
《耐湿熱性》
積層体を、50mm×40mmの大きさに裁断し、85℃−85%RHの条件下で1000時間暴露した後、上記接着力と同様ににJIS K6 854−4に従い、剥離力を測定した。。
◎:剥離力が2.0(N/25mm)以上 (極めて良好)
○:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満 (良好)
△:剥離力が0.5(N/25mm)以上1.0(N/25mm)未満 (使用可)
×:剥離力が0.5(N/25mm)未満 (使用不可)
【0125】
《耐熱性》
積層体を、50mm×40mmの大きさに裁断し、100℃−dryの条件下で1000時間暴露した後、上記接着力と同様ににJIS K6 854−4に従い、剥離力を測定した。。
◎:剥離力が2.0(N/25mm)以上 (極めて良好)
○:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満 (良好)
△:剥離力が0.5(N/25mm)以上1.0(N/25mm)未満 (使用可)
×:剥離力が0.5(N/25mm)未満 (使用不可)
【0126】
[実施例2〜13、15〜33、比較例1〜9]
実施例1と同様に遮光された容量300mLのガラス瓶に、表4,5に記載の組成で各原料を加え、十分に攪拌と脱泡を行い、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用い、塗工シートA、積層体Bを作製後、密着力、接着力、耐湿熱性、耐熱性を評価し表4および表5に示した。
ただし、実施例1、3〜6、8、11、15〜16は参考例である。
【0127】
【表4】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いた実施例1〜33は、密着性、接着性、耐湿熱性、耐熱性に優れていた。この理由は、化合物(A)を含むため、物性低下につながるアルコールの発生量が少ない上、化合物(A)が一部は多官能モノマーとして機能し、化合物(B)との間で架橋することで凝集力が優れた樹脂層が形成できたためである。
一方、ラジカル反応性の比較例1は、未反応物として残留するアルコールが多いため、物性が低下した。また、カチオン反応性の比較例2〜9は、発生するアルコールがカチオン重合の連鎖移動剤として働き、架橋により形成する樹脂層の分子量が低いため物性が大幅に低下した。