特許第6828295号(P6828295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828295光コヒーレンストモグラフィ装置、および光コヒーレンストモグラフィ制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828295
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】光コヒーレンストモグラフィ装置、および光コヒーレンストモグラフィ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20210128BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A61B3/10 100
   A61B3/12 300
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-151375(P2016-151375)
(22)【出願日】2016年8月1日
(65)【公開番号】特開2018-19771(P2018-19771A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】青野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−509914(JP,A)
【文献】 特開2016−106651(JP,A)
【文献】 特開2011−092702(JP,A)
【文献】 特開2015−107420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系と、
前記OCT光学系を用いて予め取得された正面MC画像データ又は3次元MC画像データである第1のMC画像データに基づいて、前記被検体上における正面MC画像データ又は3次元MC画像データである第2のMC画像データを取得するための撮影範囲を設定する設定手段と、
前記OCT光学系を制御し、前記設定手段によって設定された撮影範囲において時間的に異なる複数のOCT信号を取得し、取得された複数のOCT信号に基づいて前記第2のMC画像データ動画又は静止画として得る制御手段と、
を備えることを特徴とする光コヒーレンストモグラフィー装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記第1のMC画像データを解析し、解析結果に基づいて撮影範囲を設定する請求項の光コヒーレンストモグラフィー装置。
【請求項3】
被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系と、
前記OCT光学系を用いて予め取得された画像データに基づいて、前記被検体上におけるOCTモーションコントラストデータの撮影範囲を設定する設定手段と、
前記OCT光学系を制御し、前記設定手段によって設定された撮影範囲において時間的に異なる複数のOCT信号を取得し、取得された複数のOCT信号に基づいて被検体のOCTモーションコントラストデータを得る制御手段と、
を備えることを特徴とする光コヒーレンストモグラフィー装置であって、
前記制御手段は、前記OCT光学系を制御し、
被検体上の第1の範囲での第1のOCTモーションコントラストデータを得るための第1の制御と、
前記設定手段によって設定された撮影範囲であって、前記第1の制御によって取得された第1のOCTモーションコントラストデータに基づいて前記設定手段によって設定される第2の範囲であり、前記第1の範囲内であって前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲での第2のOCTモーションコントラストデータを得るための第2の制御と、
を連続的に行うことを特徴とする光コヒーレンストモグラフィー装置。
【請求項4】
被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系と、
前記OCT光学系を制御し、被検体上の第1の範囲での第1のOCTモーションコントラストデータを得るための第1の制御と、前記第1の範囲内であって前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲での第2のOCTモーションコントラストデータを得るための第2の制御と、を連続的に行う制御手段と、
を備えることを特徴とする光コヒーレンストモグラフィー装置。
【請求項5】
被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系を備える光コヒーレンストモグラフィー装置において実行される光コヒーレンストモグラフィ制御プログラムであって、
光コヒーレンストモグラフィー装置のプロセッサによって実行されることで、
前記OCT光学系を用いて予め取得された正面MC画像データ又は3次元MC画像データである第1のMC画像データに基づいて、前記被検体上における正面MC画像データ又は3次元MC画像データである第2のMC画像データを取得するための撮影範囲を設定する設定ステップと、
前記OCT光学系を制御し、前記設定ステップによって設定された撮影範囲において時間的に異なる複数のOCT信号を取得し、取得された複数のOCT信号に基づいて前記第2のMC画像データ動画又は静止画として得る制御ステップと、
を前記光コヒーレンストモグラフィ装置に実行させることを特徴とする光コヒーレンストモグラフィ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検体のモーションコントラストデータを得ることが可能な光コヒーレンストモグラフィ装置、および光コヒーレンストモグラフィ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、OCT技術を応用して、モーションコントラストを得る装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−131107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、1回の撮影によって得られたOCTモーションコントラストデータを用いて被検体を評価する場合があり、注目部位(例えば、疾患部)等を評価することが困難となる可能性があった。また、モーションコントラストデータの取得には、通常のOCTデータの取得に比べて撮影時間を要するので、検者及び被検者にとって負担であり、的確な撮影範囲でのモーションコントラストデータの取得が望まれる。
【0005】
本開示は、上記問題点を鑑み、良好なモーションコントラストデータを得ることができる光コヒーレンストモグラフィ装置、及び光コヒーレンストモグラフィ制御プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)
被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系と、
前記OCT光学系を用いて予め取得された正面MC画像データ又は3次元MC画像データである第1のMC画像データに基づいて、前記被検体上における正面MC画像データ又は3次元MC画像データである第2のMC画像データを取得するための撮影範囲を設定する設定手段と、
前記OCT光学系を制御し、前記設定手段によって設定された撮影範囲において時間的に異なる複数のOCT信号を取得し、取得された複数のOCT信号に基づいて前記第2のMC画像データ動画又は静止画として得る制御手段と、
を備えることを特徴とする。
(2)
被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系と、
前記OCT光学系を用いて予め取得された画像データに基づいて、前記被検体上におけるOCTモーションコントラストデータの撮影範囲を設定する設定手段と、
前記OCT光学系を制御し、前記設定手段によって設定された撮影範囲において時間的に異なる複数のOCT信号を取得し、取得された複数のOCT信号に基づいて被検体のOCTモーションコントラストデータを得る制御手段と、
を備えることを特徴とする光コヒーレンストモグラフィー装置であって、
前記制御手段は、前記OCT光学系を制御し、
被検体上の第1の範囲での第1のOCTモーションコントラストデータを得るための第1の制御と、
前記設定手段によって設定された撮影範囲であって、前記第1の制御によって取得された第1のOCTモーションコントラストデータに基づいて前記設定手段によって設定される第2の範囲であり、前記第1の範囲内であって前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲での第2のOCTモーションコントラストデータを得るための第2の制御と、
を連続的に行うことを特徴とする。
(3)
被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系と、
前記OCT光学系を制御し、被検体上の第1の範囲での第1のOCTモーションコントラストデータを得るための第1の制御と、前記第1の範囲内であって前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲での第2のOCTモーションコントラストデータを得るための第2の制御と、を連続的に行う制御手段と、
を備えることを特徴とする。
(4)
被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するためのOCT光学系を備える光コヒーレンストモグラフィー装置において実行される光コヒーレンストモグラフィ制御プログラムであって、
光コヒーレンストモグラフィー装置のプロセッサによって実行されることで、
前記OCT光学系を用いて予め取得された正面MC画像データ又は3次元MC画像データである第1のMC画像データに基づいて、前記被検体上における正面MC画像データ又は3次元MC画像データである第2のMC画像データを取得するための撮影範囲を設定する設定ステップと、
前記OCT光学系を制御し、前記設定ステップによって設定された撮影範囲において時間的に異なる複数のOCT信号を取得し、取得された複数のOCT信号に基づいて前記第2のMC画像データ動画又は静止画として得る制御ステップと、
を前記光コヒーレンストモグラフィ装置に実行させることを特徴とする。

【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示における典型的な実施形態について説明する。
【0009】
本実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィー装置(以下、OCT装置)は、例えば、OCT光学系と、制御部とを備えてもよい。ここで、制御部は、OCT光学系を制御するために設けられてもよい。制御部は、例えば、OCT光学系を含むOCT装置の全体を制御するために用いられてもよい。
【0010】
<基本的構成>
OCT光学系は、例えば、被検体に照射された測定光と参照光によるOCT信号を取得するために設けられてもよい。OCT光学系は、例えば、OCT光源と、光分割器と、測定光学系と、参照光学系と、光検出器を主に備えてもよい。この場合、光分割器は、OCT光源からの光を測定光と参照光に分割するために設けられてもよい。測定光は、測定光学系を介して被検体に導かれてもよい。被検体で反射された測定光と、参照光との干渉による干渉光が検出器に受光されてもよい。
【0011】
測定光学系は、例えば、走査部(例えば、光スキャナ)を備えてもよい。走査部は、例えば、被検体上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させるために設けられてもよい。例えば、制御部は、走査部を制御し、設定された走査位置に測定光を走査してもよい。
【0012】
参照光学系は、例えば、参照光を生成するために設けられてもよい。参照光は、被検体での測定光の反射によって取得される反射光と合成されてもよい。参照光学系は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであってもよい。
【0013】
光検出器は、測定光と参照光との干渉状態を検出するために設けられてもよい。フーリエドメインOCTの場合、例えば、干渉光のスペクトル強度が光検出器によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によってOCT信号が取得されてもよい。
【0014】
制御部は、例えば、OCT光学系によって検出された受光信号に基づいて、被検体のOCT信号(OCTデータともいう)を取得してもよい。さらに、制御部は、測定光の走査等によって異なる位置で得られたOCT信号を並べることで、BスキャンOCT信号を取得してもよい。さらに、深さ方向に直交する方向に関する二次元範囲でのOCT信号を並べることによって3次元OCT信号を取得してもよい。制御部は、得られたOCT信号を記憶部に記憶してもよい。制御部は、得られた結果を表示部に表示してもよい。
【0015】
<モーションコントラストデータの取得>
制御部は、例えば、被検体のOCT信号(OCTデータ)を処理してOCTモーションコントラストデータ(以下、MCデータ)を取得してもよい。この場合、制御部は、例えば、同一位置に関して時間的に異なる少なくとも2つのOCT信号を処理して、MCデータを取得してもよい。ここで、MCデータは、例えば、被検体の血流の動きを画像化したデータであってもよい。この場合、MCデータは、血流の動きが輝度値として表現されたデータであってもよい。
【0016】
制御部は、例えば、異なる位置でのMCデータを並べることによってBスキャンMCデータを取得してもよい。制御部は、例えば、深さ方向に直交する方向に関する二次元範囲でのMCデータを並べることによって3次元MCデータを取得してもよい。さらに、制御部は、3次元MCデータを処理して正面MCデータを取得してもよい。
【0017】
MCデータを取得するためのOCTデータの演算方法としては、例えば、複素OCTデータの強度差もしくは振幅差を算出する方法、複素OCTデータの強度もしくは振幅の分散もしくは標準偏差を算出する方法(Speckle variance)、複素OCTデータの位相差もしくは分散を算出する方法、複素OCTデータのベクトル差分を算出する方法、複素OCT信号の位相差及びベクトル差分を掛け合わせる方法が挙げられる。なお、演算手法の一つとして、例えば、特開2015−131107号公報を参照されたい。
【0018】
MCデータの基礎となるOCT信号を得る場合、制御部は、例えば、走査部を制御し、同一の走査ラインに関して測定光を複数回走査することによって、時間的に異なる複数のBスキャンOCT信号を得てもよい。制御部は、時間的に異なる複数のBスキャンOCT信号を処理して、BスキャンMCデータを得てもよい。
【0019】
さらに、制御部は、二次元走査範囲を形成する複数の走査ラインに関してそれぞれ、測定光を複数回走査してもよい。制御部は、各走査ラインに関して、時間的に異なる複数のBスキャンOCT信号を処理してBスキャンMCデータを取得してもよい。制御部は、各走査ラインでのBスキャンMCデータに基づいて、3次元MCデータを取得してもよい。
【0020】
<予め取得された画像データに基づくMCデータの撮影範囲設定(例えば、図3図5図6参照)>
本実施形態に係るOCT装置には、被検体上におけるMCデータの撮影範囲を設定する設定部が設けられてもよい。設定部は、予め取得された画像データに基づいてMCデータの撮影範囲を設定してもよい。設定部は、制御部が兼用してもよいし、別のプロセッサが用いられてもよい。予め取得された画像データとしては、静止画としてキャプチャーされた画像であってもよいし、動画であってもよい。
【0021】
撮影範囲としては、XY方向(深さ(Z)方向に直交する方向)に関して一次元的であってもよいし、二次元的であってもよい。なお、一次元的な撮影範囲の場合、例えば、一つの走査ラインに関してラインスキャンによってMCデータが取得されてもよいし、二次元的な撮影範囲の場合、撮影範囲が矩形状であってもよく、例えば、ラスタースキャンによってMCデータが取得されてもよい。その他、撮影範囲が放射状であってもよく、例えば、ラジアルスキャンによってMCデータが取得されてもよい。
【0022】
予め取得された画像データとしては、例えば、OCT光学系を用いて予め取得された画像データであってもよい。これによって、例えば、OCT光学系を用いて取得された画像データによって撮影範囲を設定できるので、撮影範囲の設定を精度よく行うことができる。この場合、例えば、MCデータであってもよいし、OCT信号(OCTデータ)であってもよい。MCデータとしては、例えば、BスキャンMCデータであってもよいし、正面MCデータであってもよいし、3次元MCデータであってもよい。また、OCT信号としては、BスキャンOCTデータであってもよいし、正面OCTデータであってもよいし、3次元OCTデータであってもよい。
【0023】
なお、正面MCデータ又は正面OCTデータは、深さ方向全体のデータに基づく正面画像データ(いわゆるエンフェイス画像データ)であってもよいし、深さ方向における一部のデータに基づく正面画像データであってもよい。正面画像データは、撮影範囲を設定する際、深さ方向に直交する方向に関する情報を二次元的に備えているので、有利である。
【0024】
予め取得された画像データとしては、例えば、OCT光学系とは異なる光学系を用いて予め取得された画像データであってもよい。この場合、OCT光学系とは異なる光学系としては、例えば、OCT光学系とは異なる光検出器を備え、被検体の正面画像を撮影する正面撮影光学系であってもよい。例えば、被検体が眼底の場合、正面撮影光学系は、眼底カメラ光学系であってもよいし、SLO光学系(スキャニング・レーザ・オフサルモスコープ)であってもよい。また、眼底の血流を計測するためのレーザスペックルフローグラフィ(LSFG)であってもよい。また、画像データに限定されず、設定部は、眼科検査装置を用いて予め取得された検査データに基づいて、MCデータの撮影範囲を設定してもよい。検査データとしては、例えば、視野計を用いて予め取得された視野計測結果であってもよい(眼底のMCデータを得る際に有用)。また、検査データとしては、例えば、角膜形状測定装置を用いて予め取得された検査データに基づいて、MCデータの撮影範囲を設定してもよい(前眼部のMCデータを得る際に有用)。
【0025】
前述の画像データを予め得るための装置構成は、本実施形態に係るOCT装置に設けられてもよいし、本実施形態に係るOCT装置とは別の筐体に配置されてもよい。なお、別の筐体にて画像データが取得される場合、有線又は無線の通信手段を介して、OCT装置に画像データが送られてもよい。
【0026】
設定部は、予め取得された画像データを解析し、解析結果に基づいてMCデータの撮影範囲を設定してもよい。これによって、MCデータの撮影範囲を容易に設定できる。なお、画像データの解析は、例えば、画像処理によって行われてもよい。
【0027】
画像データを解析する場合、設定部は、例えば、予め取得された画像データを解析することによって注目部位を特定し、特定された注目部位が含まれるように撮影範囲を設定してもよい。注目部位は、例えば、被検体における異常部位であってもよいし、被検体の特徴部位であってもよい。注目部位を特定するための手法としては、例えば、注目部位の画像的特徴(例えば、形態、輝度、サイズ等)を利用して注目部位を特定するために作成された画像処理プログラムを用いて、画像処理によって注目部位が特定されてもよい。
【0028】
注目部位が特定された場合、設定部は、例えば、注目部位が撮影範囲に含まれるように、撮影範囲を自動的に設定してよい。この場合、設定部は、例えば、特定された注目部位の大きさに応じて撮影範囲の大きさを変更してもよい。また、設定部は、例えば、予め設定された大きさを持つ撮影範囲を、注目部位に対応する位置に設定することによって、注目部位が撮影範囲に含まれるように設定してもよい。なお、注目部位が複数存在する、或いは注目部位が広範囲に及ぶような場合、設定部は、例えば、複数の撮影範囲を設定してもよい。
【0029】
また、注目部位に関して撮影範囲を設定する場合、設定部は、例えば、予め取得された画像データを解析することによって被検体の注目部位を特定し、特定された注目部位の位置を表示部に表示してもよい。さらに、設定部は、例えば、表示部上の注目部位の位置に基づいて撮影範囲を設定可能であってもよい。
【0030】
解析結果に基づいてMCデータの撮影範囲を設定する場合、上記手法に限定されず、設定部は、例えば、画像データを解析した際の解析パラメータ(例えば、解析値)に基づいて、MCデータの撮影範囲を設定してもよい。この場合、予め取得された画像データは、MCデータの場合であってもよい。例えば、設定部は、予め取得されたMCデータを解析することによって被検体の少なくとも一部の血管密度を求め、血管密度が閾値を超える領域を撮影範囲として設定してもよい。もちろん、血管密度が閾値を下回る領域が撮影範囲として設定されてもよい。なお、解析パラメータを得る場合、設定部は、XY方向に関して画像データを複数の領域に分割し、分割された各領域に関して解析パラメータを求めてもよい。
【0031】
解析結果に基づいてMCデータの撮影範囲を設定する場合、正常か否かの判定処理として、被検体の血管に関する正常眼データベースが用いられてもよい。設定部は、判定処理の結果に基づいて撮影範囲を設定してもよく、例えば、異常と判定された領域を撮影範囲として設定してもよいし、正常と判定された領域を撮影範囲として設定してもよい。
【0032】
例えば、設定部は、予め取得されたMCデータを解析することによって求められた被検体の血管密度に関し、血管密度に関する正常眼データベースを用いて正常か否かを判定処理し、判定結果に基づいて撮影範囲を設定してもよい。
【0033】
また、設定部は、予め取得されたMCデータと、血管形状に関する正常眼データベース(例えば、正常眼の血管モデル)との相違度を画像処理によって求め、正常か否かを相違度に応じて判定処理し、判定結果に基づいて撮影範囲を設定してもよい。
【0034】
なお、MCデータに基づいて、眼底血管の解析パラメータ(例えば、血管密度、血管形状)を求める場合、被検眼の眼軸長値に応じて、解析パラメータを補正してもよい。これによって、眼軸長の違いに伴うデータ取得領域の違いを補正できる。また、前述したように、眼底の解析パラメータと正常眼データベースとの比較を行う場合においても、正確な比較を行うことができる。
【0035】
解析パラメータに基づく撮影範囲の設定に関し、予め取得された画像データは、OCTデータであってもよい。例えば、設定部は、予め取得されたOCTデータを解析することによって被検体の少なくとも一部の厚みを求め、厚みが閾値を超える領域を撮影範囲として設定してもよい。もちろん、厚みが閾値を下回る領域が撮影範囲として設定されてもよい。
【0036】
なお、撮影範囲を設定する他の例としては、設定部は、MCデータの撮影範囲を検者が設定するための指示信号を受け付ける指示受付部を備えてもよい。設定部は、指示受付部からの指示信号に基づいてMCデータの撮影範囲を設定してもよい。これによって、例えば、検者の所望部位を撮影範囲として設定できる。この場合、例えば、予め取得された画像データが表示部にされてもよく、設定部は、操作部からの指示信号に基づいて、予め取得された画像データ上でMCデータの撮影範囲を設定してもよい。なお、設定部は、MCデータ上において撮影範囲に対応する電子的表示を行ってもよい。なお、撮影範囲の大きさ、位置の少なくともいずれかを変更可能であってもよい。さらに、撮影範囲の大きさ、位置の変更に応じて、電子的表示を変更してもよい。
【0037】
ここで、予め取得された画像データとして、OCT光学系によって得られた正面MCデータ又は正面OCTデータが用いられることで、例えば、深さ方向に直交する方向に関するOCTデータを二次元的に備えているので、撮影範囲を正確に設定することができる。
【0038】
なお、設定部は、例えば、被検体における一部の3次元領域を撮影範囲として設定可能であってもよい。これにより、被検体における一部の3次元領域に関するMCデータが取得可能である。
【0039】
また、設定部によって設定されるMCデータの撮影範囲は、予め取得された画像データよりも狭い撮影範囲であってもよい。これによって、例えば、画像データの注目部位に関するMCデータが取得可能である。この場合、撮影範囲は、深さ方向に直交する方向に関して少なくとも撮影範囲が狭くてもよい。
【0040】
<予め取得された画像データに基づいて設定された撮影範囲でのMCデータの取得(例えば、図7参照)>
制御部は、例えば、OCT光学系を制御し、設定部によって設定された撮影範囲において時間的に異なる複数のOCT信号を取得してもよい。さらに、制御部は、取得された複数のOCT信号に基づいて、被検体のMCデータを取得してもよい。これによって、設定部によって設定された撮影範囲でのMCデータが得られる。MCデータの場合、例えば、通常のOCTデータの取得よりも撮影時間を要するので、撮影範囲が的確に設定されることで、MCデータの取得に要する検者又は被検者の負担を軽減できる。
【0041】
ここで、予め取得された画像データが、OCT光学系によって予め取得された画像データの場合、例えば、位置的な対応付けが容易であり、注目部位のMCデータをスムーズに取得できる。
【0042】
また、制御部は、OCT光学系を制御し、設定部によって設定された撮影範囲でのMCデータを、予め取得されたOCTデータ又はMCデータの撮影範囲と同一範囲よりも高密度で取得してもよい。これによって、例えば、注目部位に関するMCデータを高密度で得ることができるので、血管等に関する異常部位、特徴部位での血管状態等の確認に有利である。
【0043】
設定された撮影範囲でのMCデータを得る場合、制御部は、例えば、OCT光学系を制御し、設定部によって設定された撮影範囲でのMCデータを動画像として得てもよい。制御部は、MCデータの動画像を表示部に表示してもよい。これによって、MCデータを動画像として確認でき、血流の変化などを確認できる。この場合、予め取得された画像データを表示部に表示すると共に、取得されたMCデータの動画像を、予め取得された画像データに重畳表示してもよい。また、予め取得された画像データとMCデータの動画像が並列して表示されてもよい。もちろん、動画像に限定されず、制御部は、設定された撮影範囲でのMCデータの静止画を得てもよい。
【0044】
なお、制御部は、取得された撮影範囲でのMCデータを解析し、解析パラメータを得るようにしてもよい。これによれば、例えば、注目部位のMCデータによる解析パラメータが得られるので、注目部位の診断を好適に行うことができる。この場合、予め取得された画像データがMCデータの場合、予め取得されたMCデータと撮影範囲でのMCデータとの両方で解析処理が行われ、各データに基づく解析パラメータが表示部に表示されてもよい。
【0045】
なお、撮影範囲でのMCデータを動画として得る場合、制御部は、OCT光学系を制御してMCデータを繰り返し取得し、取得されたMCデータをライブ画像として表示部に表示してもよい。
【0046】
例えば、第2のMCデータを正面動画像又は3次元動画像として得る場合、被検体における血流速度を考慮して、各位置でのMCデータが検出されるようにOCT光学系100を制御してもよい。この場合、同一位置での時間的に異なるOCT信号において、血流変化による信号の変化を検出するべく、同一位置にて測定光を再度走査する際の時間間隔が設定されてもよい。
【0047】
<動画像の取得(例えば、図7参照)>
動画像を得る場合、制御部は、例えば、二次元走査範囲(例えば、矩形領域)を形成する複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ1回ずつ測定光を走査する第1の走査制御後、再度、複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ1回ずつ測定光を走査する第2の制御を行ってもよい。制御部は、第1の走査制御にて得られた各走査ラインの1フレームのOCT信号と、第2の走査制御にて得られた各走査ラインの1フレームのOCT信号とに基づいて、各走査ラインに関するMCデータを取得してもよい。制御部は、各走査ラインに関するMCデータに基づいて、1フレームの正面MCデータを取得してもよい。
【0048】
制御部は、第2の制御を行った後、同様に、複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ1回ずつ測定光を走査する第3の制御を行ってもよい。制御部は、第2の走査制御にて得られた各走査ラインの1フレームのOCT信号と、第3の走査制御にて得られた各走査ラインの1フレームのOCT信号とに基づいて、各走査ラインに関するMCデータを取得してもよい。制御部は、各走査ラインに関するMCデータに基づいて、1フレームの正面MCデータを取得してもよい。制御部は、上記のようにして1フレームの正面MCデータを繰り返し、表示部に表示される正面MCデータを更新することによって、正面MCデータのライブ動画を表示してもよい。もちろん、正面MCデータに限定されず、MC3次元データのライブ動画を表示してもよい。
【0049】
なお、上記のような走査制御は、OCTのAスキャンに要する速度が高速化された場合に特に有利であり、Aスキャン速度の高速化によって、二次元走査範囲全体において各走査ラインの1フレームのOCT信号を得る際の時間が短縮化される。結果として、同じ走査ラインに関して再度OCT信号を得るまでの時間と、血流変化によるOCT信号の変化が現れる時間とを同期させることができ、正面MCデータ又は3次元MCデータを動画にて表示することが可能となる。
【0050】
なお、上記説明においては、複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ1回ずつ測定光を走査する走査制御を繰り返し行ったが、これに限定されず、複数の走査ラインの各々に関して測定光を複数回ずつ走査する走査制御を繰り返して、MCデータの動画撮影を実施してもよい。
【0051】
<被検眼への適用>
なお、本実施形態のOCT装置は、例えば、眼(前眼部、眼底等)のOCT信号を取得する眼科用OCT装置に適用可能である。この場合、予め取得された画像データとしては、例えば、眼の正面MCデータ、眼の正面OCTデータであってもよい。眼の正面MCデータ(又は眼の正面OCTデータ)は、例えば、眼の3次元MCデータ(又は眼の3次元OCTデータ)から生成されてもよく、例えば、深さ方向の少なくとも一部の領域に関して3次元データを画像化することによって取得されてもよい。
【0052】
眼の正面MCデータ(又は眼の正面OCTデータ)は、深さ方向全体の層領域に関して3次元MCデータ(又は3次元OCTデータ)を演算することによって取得されてもよい。
【0053】
眼の正面MCデータ(又は眼の正面OCTデータ)は、3次元MCデータ(又は3次元OCTデータ)を深さ方向の一部の特定の層領域に関して3次元MCデータ(又は3次元OCTデータ)を演算することによって取得されてもよい。演算手法としては、積算処理であってもよいし、他の手法(例えば、ヒストグラム演算)であってもよい。特定の層領域に関するデータは、例えば、3次元MCデータ(又は3次元OCTデータ)に対するセグメンテーション処理によって、各データは層毎に分離されてもよい。
【0054】
例えば、眼底の特定の層領域に関する正面MCデータ(又は正面OCTデータ)を用いて、MCデータの撮影範囲を設定することによって、特定の層の状態を考慮した撮影範囲を設定できる。また、深さ方向に直交する方向に関して二次元的な情報を持つので、例えば、注目部位に関する撮影範囲の設定を精度よく行うことができる。
【0055】
なお、被検体としては、眼(前眼部、眼底等)、皮膚など生体のほか、生体以外の材料であってもよい。
【0056】
<第1のMCデータを用いた第2のMCデータの撮影範囲の設定>
次に、予め取得された画像データとして、眼底のMCデータが用いられる場合の実施形態の一例を示す。以下の説明では、予め取得されたMCデータを第1のMCデータとし、第1のMCデータに基づく撮影範囲にて取得されるMCデータを第2のMCデータとして説明する。
【0057】
制御部は、例えば、OCT光学系を制御し、第1のMCデータとして眼底の広範囲におけるMCデータを予め取得してもよい。取得されたMCデータは、例えば、記憶部に記憶されてもよい。眼底の広範囲におけるMCデータは、1回の撮影動作によって得られたMCデータであってもよいし、複数回の撮影動作によって得られた複数のMCデータによるパノラマデータであってもよい。
【0058】
眼底の広範囲におけるMCデータとしては、例えば、眼底上において6mm×6mmの範囲、より広くは、眼底上において9mm×9mmの範囲、さらにこれを超える範囲であってもよい。また、眼底の広範囲におけるMCデータとしては、例えば、黄斑部及び乳頭部の両方を含むMCデータであってもよい。
【0059】
設定部は、例えば、予め取得された第1のMCデータに基づいて注目部位を特定し、特定された注目部位が含まれるように撮影範囲を設定してもよい。眼底における注目部位としては、例えば、加齢黄斑変性等によって生じる新生血管(CNV)であってもよいし、増殖網膜症等によって生じる虚血領域であってもよい。眼底における注目部位としては、例えば、眼底上の特徴部位(例えば、黄斑部、乳頭部)であってもよい。
【0060】
設定部は、例えば、予め取得された第1のMCデータを画像処理によって解析し、注目部位を自動的に検出してもよい。もちろん、表示部に表示された第1のMCデータに対する検者の指定操作を介して、注目部位が手動で検出されてもよい。
【0061】
設定部は、例えば、第1のMCデータにおいて注目部位が検出された場合、検出された注目部位が撮影範囲に含まれるように撮影範囲を自動的に設定してよい。これによって、撮影範囲が自動的に設定されるので、注目部位に対する撮影範囲の設定をスムーズに行うことができる。
【0062】
注目部位が検出された場合、他の手法としては、設定部は、例えば、第1のMCデータを表示部に表示すると共に、第1のMCデータ上における注目部位を強調して表示してもよい。強調表示としては、例えば、マーキング表示(図 参照)、色分け表示であってもよい。
【0063】
設定部は、例えば、第1のMCデータ上において、第2のMCデータの撮影範囲を検者が設定するための指示信号を受け付ける指示受付部を備えてもよい。上記構成に関し、例えば、前述の強調表示がMCデータ上に行われることで、検者は、強調表示を用いて撮影範囲を設定できるので、注目部位に対する撮影範囲の設定をスムーズに行うことができる。もちろん、これに限定されず、強調表示がない場合であっても、MCデータ上において検者の所望する部位を撮影範囲として設定できるので有用である。
【0064】
<第2のMCデータの取得>
撮影範囲が設定されると、設定部は、例えば、被検眼上に設定された撮影範囲に関して第2のMCデータを得る際の撮影条件を設定してもよい。撮影条件としては、例えば、複数のOCT信号を取得する際の時間間隔、走査速度、走査密度、測定光と参照光との光路長差、同一位置でのOCT信号の取得数の少なくともいずれかであってもよい。
【0065】
撮影条件を設定する場合、設定部は、例えば、設定された撮影範囲に関して、予め取得されたMCデータの同一範囲の密度よりも高密度のMCデータを取得するように、撮影条件を設定してもよい。
【0066】
高密度の第2のMCデータを得るためには、例えば、第1のMCデータの同一範囲における走査ポイント数よりも多い走査ポイント数に設定されてもよい。なお、仮に、第1のMCデータの全体を得た際の走査ポイント数と同じ走査ポイント数にて、第2のMCデータを得たとしても、走査範囲が狭い分、高密度のMCデータが得られる。また、高密度のMCデータを得る他の手法としては、各位置でのOCT信号の取得時間(Aスキャンに要する時間)を第1のMCデータよりも長くすることで、OCT信号のS/N比が向上し、結果として、第2のMCデータの画質が向上される。
【0067】
撮影条件が設定されると、制御部は、OCT光学系を制御し、第1のMCデータに基づいて設定された撮影範囲に関する第2のMCデータを得てもよい。この場合、例えば、制御部は、設定された撮影範囲において、時間的に異なる複数のOCT信号を得るための走査制御を行うことによって、第2のMCデータを得てもよい。なお、撮影条件は、予め設定されてもよいし、検者によって任意に変更可能であってもよい。
【0068】
制御部は、第2のMCデータを動画又は静止画として取得し、記憶部に記憶してもよい。また、制御部は、第2のMCデータを表示部に表示してもよい。また、制御部は、さらに第2のデータを用いて、撮影範囲を設定してもよい。
【0069】
第1のMCデータに基づいて設定された撮影範囲での第2のMCデータを得ることによって、例えば、注目部位における第2のMCデータによる詳細な検査が可能となる。この結果として、例えば、検者は、注目部位の血流等の状態を詳細に観察できる。或いは、第2のMCデータを画像処理により解析し、解析パラメータ(例えば、血管密度、虚血面積等)を得ることによって、解析パラメータを精度よく取得できる。
【0070】
なお、上記説明においては、予め取得された画像データとして、眼底のMCデータが用いられる場合の実施形態の一例を示したが、これに限定されず、眼のMCデータが用いられる場合においても上記実施形態の一例の適用が可能である。また、眼に限定されず、皮膚など生体のほか、生体以外の材料等の被検体においても、上記実施形態の一例の適用が可能である。
【0071】
なお、撮影条件の設定に関し、設定部は、予め取得された画像データを解析してもよく、MCデータを得る際の撮影条件を解析結果に基づいて設定してもよい。例えば、設定部は、予め取得された画像データを解析することによって特定された注目部位に関し、注目部位の特性に応じて走査密度を変更してもよい。例えば、注目部位における血管の太さに応じて、走査密度を変更してもよく、例えば、血管が細いほど、走査密度を大きくし、血管が太いほど、走査密度を小さくしてもよい。
【0072】
なお、設定部は、OCT光学系を用いて予め取得された画像データに対して撮影範囲を変更せず、撮影条件を変更してもよい。例えば、設定部は、予め取得された画像データと同一の撮影範囲に関して、MCデータを得る際の撮影条件を、画像データの解析結果に基づいて変更してもよい。
【0073】
また、上記説明においては、設定部は、OCT光学系を用いて予め取得された画像データに対して撮影範囲を狭く設定したが、これに限定されない。例えば、設定部は、予め取得された画像データに対して撮影範囲を広く設定してもよい。
【0074】
また、上記説明においては、設定部は、OCT光学系を用いて予め取得された画像データに対して走査密度を密にしたが、これに限定されない。例えば、設定部は、予め取得された画像データに対して走査密度を粗にしてもよい。
【0075】
例えば、予め取得された画像データに対して、撮影範囲を広くし、走査密度を粗くすることで、太い血管が多く、高密度が必要ないような血管構造を、広範囲で観察する場合に有利である。
【0076】
<実施例>
以下、本実施形態に係る本実施例のOCT装置について図面を用いて説明する。図1に示すOCT装置1は、OCTデバイス10によって取得されたOCT信号を処理する。
【0077】
OCT装置1は、例えば、CPU71を備える。CPU71は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73、等で実現される。ROM72には、例えば、OCT信号を処理するためのOCT信号処理プログラム、OCTデバイス10の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶される。RAM73は、例えば、各種情報を一時的に記憶する。なお、CPU71は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0078】
CPU71には、図1に示すように、例えば、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)74、操作部76、および表示部75等が電気的に接続されている。記憶部74は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ等を記憶部74として使用することができる。
【0079】
操作部76には、検者による各種操作指示が入力される。操作部76は、入力された操作指示に応じた信号をCPU71に出力する。操作部76には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかのユーザーインターフェイスを用いればよい。
【0080】
表示部75は、装置1の本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。例えば、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、表示部75は、タッチパネルであってもよい。表示部75がタッチパネルである場合、表示部75は操作部76として兼用されてもよい。表示部75は、例えば、OCTデバイス10によって取得されたOCT画像、モーションコントラスト画像等を表示する。
【0081】
なお、本実施例のOCT装置1は、例えば、OCTデバイス10が接続されている。接続方法は、無線であってもよいし、有線であってもよいし、その両方であってもよい。なお、OCT装置1は、例えば、OCTデバイス10と同一の筐体に収納された一体的な構成であってもよいし、別々の構成であってもよい。CPU71は、接続されたOCTデバイス10からOCT信号,モーションコントラストデータ,Enface画像等の少なくともいずれかのOCTデータを取得してもよい。もちろん、CPU71は、OCTデバイス10と接続されていなくともよい。この場合、CPU71は、記憶媒体を介してOCTデバイス10によって撮影されたOCTデータを取得してもよい。
【0082】
<OCTデバイス>
以下、図2に基づいてOCTデバイス10の概略を説明する。例えば、OCTデバイス10は、被検眼Eに測定光を照射し、その反射光と測定光とによって取得されたOCT信号を取得する。OCTデバイス10は、例えば、OCT光学系100を主に備える。
【0083】
<OCT光学系>
OCT光学系100は、被検眼Eに測定光を照射し、その反射光と参照光との干渉信号を検出する。OCT光学系100は、例えば、測定光源102と、カップラー(光分割器)104と、測定光学系106と、参照光学系110と、検出器120等を主に備える。
【0084】
OCT光学系100は、いわゆる光断層干渉計(OCT:Optical coherence tomography)の光学系である。OCT光学系100は、測定光源102から出射された光をカップラー104によって測定光(試料光)と参照光に分割する。分割された測定光は測定光学系106へ、参照光は参照光学系110へそれぞれ導光される。測定光は測定光学系106を介して被検眼Eの眼底Efに導かれる。その後、被検眼Eによって反射された測定光と,参照光との合成による干渉光を検出器120に受光させる。
【0085】
測定光学系106は、例えば、走査部(例えば、光スキャナ)108を備える。走査部108は、例えば、被検眼上の撮像位置を変更するため、被検眼上における測定光の走査位置を変更する。例えば、CPU71は、設定された走査位置情報に基づいて走査部108の動作を制御し、検出器120によって検出された受光信号に基づいてOCT信号を取得する。
【0086】
走査部108は、例えば、眼底上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させる。走査部108は、瞳孔と略共役な位置に配置される。例えば、走査部108は、2つのガルバノミラー51,52を有し、その反射角度が駆動機構50によって任意に調整される。これによって、光源102から出射された光束はその反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。つまり、眼底Ef上における「Bスキャン」が行われる。なお、走査部108としては、光を偏向させる構成であればよい。例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
【0087】
参照光学系110は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120に導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
【0088】
参照光学系110は、例えば、参照光路中の光学部材を移動させることによって、測定光と参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、参照ミラーが光軸方向に移動される。なお、光路長差を変更するための構成は、導光光学系106の光路中に配置されてもよい。
【0089】
検出器120は、測定光と参照光との干渉状態を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。
【0090】
なお、OCTデバイス10として、例えば、Spectral-domain OCT(SD−OCT)、Swept-source OCT(SS−OCT)、Time-domain OCT(TD−OCT)等が用いられてもよい。
【0091】
SD−OCTの場合、光源102として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられ、検出器120には、干渉光を各周波数成分(各波長成分)に分光する分光光学系(スペクトルメータ)が設けられる。スペクトルメータは、例えば、回折格子とラインセンサからなる。
【0092】
SS−OCTの場合、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられ、検出器120として、例えば、単一の受光素子が設けられる。光源102は、例えば、光源、ファイバーリング共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたものが挙げられる。
【0093】
<正面撮影光学系>
正面撮影光学系200は、例えば、被検眼Eの眼底Efを正面方向(例えば、測定光の光軸方向)から撮影し、眼底Efの正面画像を得る。正面撮影光学系200は、例えば、光源から発せられた測定光(例えば、赤外光)を眼底上で二次元的に走査させる第2の走査部と、眼底と略共役位置に配置された共焦点開口を介して眼底反射光を受光する第2の受光素子と、を備え、いわゆる走査型レーザ検眼鏡(SLO)の装置構成であってもよい(例えば、特開2015−66242号公報参照)。なお、正面撮影光学系200の構成としては、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい(特開2011−10944参照)。なお、本実施例の正面撮影光学系200は、測定光学系106の一部の光学素子を兼用している。
【0094】
<固視標投影部>
固視標投影部300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。投影部300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。
【0095】
例えば、固視標投影部300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これによって、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。
【0096】
固視標投影部300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光スキャナを用いて光源からの光を走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成等、種々の構成が考えられる。また、固視標投影部300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
【0097】
<制御動作>
以上のようなOCT装置1において、OCTデバイス10によって取得されたOCTデータを処理するときの制御動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。本実施例のOCT装置1は、例えば、OCTデバイス10によって検出されたOCT信号を処理してモーションコントラストを取得する。
【0098】
(ステップS1)
<OCT信号の取得>
まず、OCT装置1は、OCT信号を取得する。例えば、CPU71は、OCTデバイス10によって検出されたOCT信号を取得し、そのデータを記憶部74等に記憶させる。なお、以下の説明では、例えば、CPU71がOCTデバイス10を制御してOCT信号を取得するが、OCTデバイス10に個別に制御部が設けられてもよい。
【0099】
以下、OCTデバイス10によってOCT信号を検出する方法を説明する。例えば、CPU71は、固視標投影部300を制御して被検者に固視標を投影する。そして、CPU71は、図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像に基づいて、被検眼Eの瞳孔中心に測定光軸がくるように図示無き駆動部を制御して自動でアライメントを行う。
【0100】
アライメントが完了すると、CPU71はOCTデバイス10を制御し、被検眼Eの撮影を行う。例えば、CPU71は、眼底Efにおいて測定光を走査させる。例えば、図4(a)に示すように、CPU71は、走査部108の駆動を制御し、眼底Ef上の領域A1において測定光を走査させる。なお、図4(a)において、z軸の方向は、測定光の光軸の方向とする。x軸の方向は、z軸に垂直であって被検者の左右方向とする。y軸の方向は、z軸に垂直であって被検者の上下方向とする。
【0101】
例えば、CPU71は、領域A1において走査ラインSL1,SL2,・・・,SLnに沿ってx方向に測定光を走査させる。なお、測定光の光軸方向に交差する方向(例えば、x方向)に測定光を走査させることを「Bスキャン」と呼ぶ。そして、1回のBスキャンによって得られたOCT信号を1フレームのOCT信号として説明する。CPU71は、測定光を走査する間、検出器120によって検出されたOCT信号を取得する。CPU71は、例えば、領域A1において取得されたOCT信号を記憶部74に記憶させる。なお、領域A1は、上記のように、xy方向の走査領域であってx方向の走査ラインがy方向に複数並んだ走査領域であってもよい。したがって、CPU71は、例えば、xy方向に2次元的に測定光を走査させ、各走査位置においてz方向のAスキャン信号を得る。つまり、CPU71は、例えば、3次元データを取得する。
【0102】
なお、本実施例では、OCT信号に基づいてモーションコントラストを取得する。モーションコントラストは、例えば、被検眼の血流、網膜組織の変化などを捉えた情報であってもよい。モーションコントラストを取得する場合、CPU71は、被検眼の同一位置に関して時間的に異なる少なくとも2つのOCT信号を取得する。例えば、CPU71は、各走査ラインにおいて時間間隔を空けて複数回のBスキャンを行い、時間の異なる複数のOCT信号を取得する。例えば、CPU71は、ある時間において1回目のBスキャンを行った後、所定時間経過してから1回目と同じ走査ラインで2回目のBスキャンを行う。CPU71は、このときに検出器120によって検出されたOCT信号を取得することによって、時間の異なる複数のOCT信号を取得してもよい。
【0103】
例えば、図4(b)は、走査ラインSL1,SL2,・・・,SLnにおいて時間の異なる複数回のBスキャンを行った場合に取得されたOCT信号を示している。例えば、図4(b)は、走査ラインSL1を時間T11,T12,・・・,T1Nで走査し、走査ラインSL2を時間T21,T22,・・・,T2Nで走査し、走査ラインSLnを時間Tn1,Tn2,・・・,TnNで走査した場合を示している。このように、CPU71はOCTデバイス10を制御し、各走査ラインにおいて時間の異なる複数回のBスキャンを行うことによって、時間の異なる複数のOCT信号を取得してもよい。例えば、CPU71は、同一位置における時間の異なる複数のOCT信号を取得し、そのデータを記憶部74に記憶させる。
【0104】
(ステップS2)
<モーションコントラストの取得>
CPU71は上記のようにOCT信号を取得すると、OCT信号を処理してモーションコントラストを取得する。モーションコントラストを取得するためのOCT信号の演算方法としては、例えば、複素OCT信号の強度差を算出する方法、複素OCT信号の位相差を算出する方法、複素OCT信号のベクトル差分を算出する方法、複素OCT信号の位相差及びベクトル差分を掛け合わせる方法、信号の相関を用いる方法(コリレーションマッピング)などが挙げられる。本実施例では、モーションコントラストとして位相差を算出する方法を例に説明する。
【0105】
例えば、位相差を算出する場合、CPU71は複数のOCT信号をフーリエ変換する。例えば、Nフレーム中n枚目の(x,z)の位置の信号をAn(x,z)で表すと、CPU71は、フーリエ変換によって複素OCT信号An(x,z)を得る。複素OCT信号An(x,z)は、実数成分と虚数成分とを含む。
【0106】
CPU71は、同じ位置の少なくとも2つの異なる時間に取得された複素OCT信号A(x,z)に対して位相差を算出する。例えば、CPU71は下記の式(1)を用いて、位相差を算出する。例えば、CPU71は、各走査ラインにおいて位相差を算出し(図4(c)参照)、そのデータを記憶部74に記憶させてもよい。なお、数式中のAnは時間TNに取得された信号を示し、*は複素共役を示している。
【0107】
【数1】
【0108】
上記のように、CPU71は、OCT信号に基づいて被検眼Eの3次元モーションコントラストデータを取得する。なお、前述のように、モーションコントラストとしては、位相差に限らず、強度差、ベクトル差分等が取得されてもよい。
【0109】
(ステップS3)
<確認画面の表示>
被検眼の撮影が行われると、CPU71は、例えば、図5に示すような確認画面80を表示部75に表示する。確認画面80は、モーションコントラストデータ(以下、MCデータと略す)の良否を確認するための画面である。例えば、CPU71は、第1表示領域81、第2表示領域(MCデータの基礎となるOCTデータの表示領域)82、第3表示領域(MCデータの画質評価値の表示領域)83、第1切替部84、第2切替部85等を確認画面80Aに表示する(図5(a)参照)。
【0110】
<第1表示領域>
第1表示領域81は、モーションコントラスト画像(以下、MC画像と略す)が表示される領域である。CPU71は、例えば、任意の深さ領域のMC画像を第1表示領域81に表示する。本実施例のようにOCTデバイス10によって被検眼Eの眼底Efを撮影した場合、MC画像は血管造影画像(いわゆるOCT Angiography像)として観察される。MC画像は、例えば、3次元モーションコントラスト画像(以下、3次元MC画像と略す)であってもよいし、モーションコントラスト正面画像(以下、MC正面画像と略す)であってもよい。ここで、正面画像とは、いわゆるEn face画像であってもよい。En faceとは、例えば、眼底面に対して水平な面、または眼底2次元水平断層面などのことである。
【0111】
なお、3次元MCデータからMC正面画像を生成する方法としては、例えば、深さ方向の少なくとも一部の深さ領域に関してMCデータを取り出す方法などが挙げられる。この場合、少なくとも一部の深さ領域におけるMCデータのプロファイルを用いてMC正面画像が生成されてもよい。
【0112】
<第1切替部>
第1切替部84は、第1表示領域81に表示させるMC画像の深さ領域を指定するインターフェースである。第1切替部84は、例えば、チェックボックス(図5参照)、ボタン、スライダー等であってもよい。例えば、第1切替部84は、神経線維層(nerve fiber layer: NFL)、神経節細胞層(ganglion cell layer: GCL)、網膜色素上皮(retinal pigment epithelium: RPE)、脈絡膜(choroid)等の網膜層毎に深さ領域を切り替えられるようにしてもよい。また、第1切替部84は、血管の分布に基づいて、表層(SCP:Superficial Capillary Plexus)、中間層(ICP:Intermediate Capillary Plexus)、深層(DCP:Deep Capillary Plexus)、網膜外層(IPL/INL−RPE/BM)等に深さ領域を切り替えられるようにしてもよい。もちろん、上記の層に限らず、第1切替部84は、各網膜層の境界から所定の範囲内に設定された深さ領域、または検者が独自に設定した深さ領域に切り替えできてもよい。また、深さ領域は、例えば、複数の網膜層を合わせた領域であってもよい。
【0113】
例えば、CPU71は、第1切替部84によって指定された深さ領域におけるMC画像を第1表示領域81に表示する。例えば、CPU71は、セグメンテーション処理によってMCデータを複数の深さ領域に分離し、分離された各深さ領域のうち、第1切替部84によって指定された深さ領域におけるMCデータを取り出して第1表示領域81に表示する。
【0114】
なお、セグメンテーション処理によって深さ領域を分離する場合、例えば、CPU71は、強度画像のエッジ検出によって検出された網膜層の境界に基づいて深さ領域を分離させてもよいし、MC画像から検出された血管の分布に基づいて深さ領域を分離させてもよい。ここで、強度画像とは、例えば、OCT信号の強度(Intensity)に応じて輝度値が決定された画像である。
【0115】
図5(a)は、第1切替部84によって網膜外層が指定されたときの確認画面80Aの様子である。一方、図5(b)は、第1切替部84によって網膜表層が指定されたときの確認画面80Aの様子である。このように、CPU71は、第1表示領域81に表示させるMC画像の深さ領域の深さを切り替えることができる。これによって、深さの異なる深さ領域ごとにMCデータの良否を確認することができる。
【0116】
<第2切替部85>
第2切替部85は、確認画面80Aと確認画面80B(図6参照)とを切り替えるためのインターフェースである。CPU71は、第2切替部85が操作されると、確認画面80Aと確認画面80Bとを切り替える。第2切替部85は、例えば、ボタン、チェックボックス等であってもよい。
【0117】
<撮影の成否判定>
検者によってリトライボタン88が押されると、CPU71は、例えば、取得されたOCTデータを放棄し(ステップS5)、再びOCTデバイス10による被検眼Eの撮影を行う(ステップS1)。一方、検者によってOKボタン87が押されると、CPU71は、例えば、取得されたOCTデータを記憶部74に記憶させる。
【0118】
<撮影範囲の設定>
(ステップ5)
図5、確認画面において網膜外層の正面MCデータを表示した場合の一例を示す図であり、図6は、確認画面において網膜表層の正面MCデータを表示した場合の一例を示す図であり、図5は、新生血管が検出された例、図6は、虚血領域が検出された例である。
【0119】
例えば、CPU71は、前述のように予め取得された正面MCデータ(MC画像)500から注目部位510を検出し、検出された注目部位510を含む二次元走査範囲SAを撮影範囲として設定してもよい。CPU71は、撮影範囲として設定された二次元走査範囲SAの各走査ラインに関して、MCデータの動画又は静止画を取得してもよい。
【0120】
注目部位510を検出する場合、例えば、CPU71は、正面MCデータ500において、眼疾病(例えば、加齢黄斑変性、増殖網膜症等)による異常部位を判別し、異常部位を含む二次元走査範囲SAを撮影範囲として設定してもよい。つまり、注目部位510として、眼疾病による異常部位が設定されてもよく、異常部位として、例えば、新生血管領域、虚血領域であってもよい。また、異常部位の判別は、眼底の少なくとも一つの層単位でそれぞれ行ってもよい。例えば、表層、中間層、深層、外層毎に異常部位が判別されてもよい。
【0121】
異常部位を自動的に検出する場合の例を以下に示す。異常部位の自動検出は、例えば、正面MCデータ520、又は正面MCデータ520の基礎となる3次元MCデータの輝度情報に基づいて行われてもよい。
【0122】
異常部位として新生血管を検出する場合の一例を以下に示す。この場合、例えば、新生血管の血流によって輝度レベルが一定の閾値を超えている点、新生血管が一定の長さを持つ点を考慮して、新生血管が画像処理によって検出されてもよい。
【0123】
CPU71は、例えば、3次元MCデータにおける網膜外層に関して正面MCデータを抽出し、抽出された正面MCデータでの新生血管を抽出してもよい(図5参照)。なお、眼底の新生血管は、網膜外層に主に表れることが多く、網膜外層での正面MCデータを解析することで、新生血管に関する解析を精度よく行うことができる。
【0124】
CPU71は、抽出された正面MCデータの各画素の輝度値に関して、新生血管を抽出するために設定された閾値にて二値化処理を行い、閾値を超える輝度の画素成分を得る。
【0125】
さらに、CPU71は、閾値を超える輝度の画素に関する連結性を判定する。この場合、CPU71は、閾値を超える輝度の画素に関して、連続した画素領域を探索すると共に、連続した画素領域の長さを求める。そして、求められた長さが、新生血管を抽出するために予め設定された閾値を超える場合、CPU71は、閾値を超えた連続血管領域に関して新生血管であると判定する。CPU71は、同様の判定処理を、各連続輝点に関して行うことによって、抽出された正面MCデータ全体での新生血管の位置を特定する。なお、新生血管の検出手法としては、もちろん、上記に限定されない。なお、検出処理において、連続した画素領域の長さに加え、太さが考慮されてもよい。
【0126】
なお、網膜外層における新生血管の判定において、網膜外層に関する正面MCデータにノイズとして現れる網膜内層のMCデータ(Projection Artifact)を画像処理によって除去してもよい。この場合、網膜内層に関する正面MCデータとして取得された画像データを用いて、網膜外層に関する正面MCデータに対するノイズ除去を行うようにしてもよい。
【0127】
異常部位として虚血領域を検出する場合の一例を以下に示す。この場合、例えば、虚血領域では輝度レベルが一定の閾値を下回る点、虚血領域が一定の領域を持つ点を考慮して、虚血領域が画像処理によって検出されてもよい。
【0128】
CPU71は、例えば、3次元MCデータにおける網膜表層に関して正面MCデータを抽出し、抽出された正面MCデータでの虚血領域を抽出してもよい(図6参照)。また、これに限定されず、CPU71は、例えば、3次元MCデータに基づいて各層の正面MCデータを抽出し、抽出された各層の正面MCデータでの虚血領域を抽出してもよい。
【0129】
CPU71は、抽出された正面MCデータの各画素の輝度値に関して、虚血領域を抽出するために設定された閾値にて二値化処理を行い、閾値を下回る輝度の画素成分を得る。さらに、CPU71は、閾値を下回る輝度の画素に関して、連続した画素領域を探索すると共に、連続した画素領域の面積を求める。そして、求められた長さが、虚血領域を抽出するために予め設定された閾値を超える場合、CPU71は、閾値を超えた連続無血管領域に関して虚血領域であると判定する。CPU71は、同様の判定処理を、各連続輝点に関して行うことによって、抽出された正面MCデータ全体での虚血領域の位置を特定してもよい。なお、虚血領域の検出手法としては、もちろん、上記に限定されない。この場合、中心窩を中心とする一定範囲よりも外側の領域に関して、虚血領域の検出を行うようにしてもよい。これによって、例えば、中心窩領域は、虚血領域から確実に除外され、正常眼であれば血管が存在する領域に関して、虚血領域の検出が可能となる。
【0130】
なお、異常部位として、血管瘤が検出されてもよい。血管溜は、例えば、通常の血管径よりも部分的に太い点に画像的特徴を有する。この場合、CPU71は、血管を抽出するために設定された閾値にて二値化処理を行い、血管領域を抽出すると共に、抽出された血管領域の太さを計算することで、血管溜を検出してもよい。
【0131】
注目部位510が自動的に検出されると、CPU71は、注目部位510を含む二次元走査範囲SAを撮影範囲として設定してもよい。この場合、例えば、CPU71は、正面MCデータ520、又は正面MCデータ520の基礎となる3次元MCデータにおける注目部位510の位置情報に基づいて、二次元走査範囲SAの位置又は大きさの少なくともいずれかを設定してもよい。
【0132】
なお、二次元走査範囲SAの位置としては、例えば、注目部位510の中心位置を基準として設定されてもよいし、注目部位510の少なくとも一部が含まれるように設定されてもよい。二次元走査範囲SAの大きさとしては、注目部位510の全体が含まれる大きさであってもよいし、注目部位510の一部が含まれる大きさであってもよい。走査範囲SAの大きさは、固定値として予め設定されていてもよいし、検者が任意に設定可能であってもよい。さらに、注目部位510の大きさに応じて、走査範囲SAの大きさが自動的に変更されてもよい
ここで、二次元走査範囲SAにおける撮影条件として、予め取得された正面MCデータ500における二次元走査範囲SAと同じ領域での走査ポイント数よりも、走査ポイント数が多く設定されることで、正面MCデータ500よりも高密度な正面MCデータ520を撮影できる。これによって、注目部位に関する高密度な正面MCデータを容易に撮影できる。なお、二次元走査範囲SAにおける撮影条件は、固定値として予め設定されていてもよいし、検者が任意に設定可能であってもよい。
【0133】
また、撮影条件の設定に関して、注目部位510が検出された深さ位置に応じて、測定光と参照光との光路長差を変更してもよい。例えば、網膜外層における注目部位が撮影範囲として設定された場合、網膜外層における注目部位を高感度で撮影するべく、OCTデータにおいて、測定光と参照光の光路長が一致する深さ位置より眼底の裏面(脈絡膜)が前側に配置されるように、光路長差が設定されてもよい。また、OCT信号における所定の深さ位置に注目部位510が形成されるように、光路長差が設定されてもよい。
【0134】
なお、上記説明においては、注目部位を自動的に検出したが、検者によってマニュアルで設定されてもよい。例えば、CPU71は、操作部76からの操作信号に基づいて、正面MCデータ520上における二次元走査範囲SAを撮影範囲として設定してもよい。この場合、操作部74からの操作信号に基づいて、二次元走査範囲SAの位置、大きさの少なくともいずれかが変更可能であってもよい。ここで、検者は、正面MCデータ520の注目部位510の表示を参考にして、二次元走査範囲SAを設定できる。
【0135】
また、CPU71は、操作部74からの操作信号に基づいて注目部位510の位置を検出し、検出された注目部位510を含む二次元走査範囲SAを設定してもよい。この場合、例えば、操作部74からの操作信号に基づいて注目部位510が選択されると、検出された注目部位510を含むように二次元走査範囲SAが設定されてもよい。注目部位510の選択手法としては、例えば、クリック操作、範囲選択等であってもよい。
【0136】
なお、検者によって注目部位が設定される場合、CPU71は、確認画面に表示する正面MCデータの層領域を切換え表示可能であってもよく、切換えられた正面MCデータ上で注目部位を設定可能であってよい。もちろん、これに限定されず、CPU71は、少なくとも一部の層領域が異なる複数の正面MCデータを同時に表示し、各正面データにおいて二次元走査範囲SAが検者によって設定可能であってもよい。
【0137】
<動画取得>
(ステップ6)
設定された撮影範囲においてMCデータの画像を得る場合の一実施例を以下に示す(図7参照)。以下の例では、撮影範囲として二次元走査範囲SAが設定されており、二次元走査範囲SAは、副走査方向に関して互いに異なる複数の走査ラインSLi(i=1〜n:n>2)によって形成される。
【0138】
第1の走査制御において、CPU71は、光スキャナ108を制御することによって、各走査ラインに対してそれぞれ測定光を1回走査する。CPU71は、各走査ラインに関して、1フレームのOCT信号を取得する。
【0139】
例えば、CPU71は、第1の走査ラインSL1において測定光を主走査方向に1回走査する。CPU71は、検出器120からの出力信号に基づいて、第1の走査ラインSL1に対応する1フレームのOCT信号を生成する。次に、CPU71は、光スキャナ108を制御することによって、第2の走査ラインSL2において測定光を主走査方向に1回走査する。CPU71は、検出器120からの出力信号に基づいて、第2の走査ラインSL2に対応する1フレームのOCT信号を生成する。
【0140】
同様に、CPU71は、第3の走査ラインSL3、・・・、第n−1の走査ラインSLn−1、第nの走査ラインSLnそれぞれにおいて測定光を1回走査することによって、各走査ラインに対応する1フレームのOCT信号を生成する。
【0141】
CPU71は、予め設定された二次元走査範囲SAの走査ラインSLi(i=1〜n)に対応する1フレームのOCT信号をメモリ72に記憶する。各OCT信号は、静止画像として、各走査ラインに対応付けて記憶されてもよい。この結果、各走査ラインに関して1フレームのOCT信号を有する第1の3次元OCTデータが取得される。
【0142】
第1の走査制御の終了後、CPU71は、第2の走査制御に移行する。CPU71は、光スキャナ108を制御することによって、第1の走査制御と同じ順序にて、各走査ラインにおける1フレームのOCT信号を取得してもよい。つまり、CPU71は、第1の走査ラインSL1、第2の走査ラインSL2、第3の走査ラインSL3、・・・、第n−1の走査ラインSLn−1、第nの走査ラインSLnそれぞれにおいて、順次、測定光を1回走査することによって、各走査ラインに対応する1フレームのOCT信号を生成する。この結果、各走査ラインに関して1フレームのOCT信号を有する第2の3次元OCTデータが取得される。
【0143】
第2の走査制御の終了後、CPU71は、第1の3次元OCTデータと、第2の3次元OCTデータとに基づいて各走査ラインのMCデータを得る。この場合、CPU71は、例えば、同一の走査ラインに関して、第1の走査制御にて得られた1フレームのOCT信号と、第2の走査制御にて得られた1フレームのOCT信号とを処理して、1フレームのMCデータを取得してもよい。そして、CPU71は、各走査ラインにて得られた1フレームのMCデータに基づいて正面MCデータ又は3次元MCデータを生成し、表示部75に表示してもよい。
【0144】
さらに、CPU71は、第2の走査制御の終了後、引き続き、第2の走査制御と同じ順序にて、各走査ラインにおける1フレームのOCT信号を取得してもよい。そして、第3の走査制御の終了後、CPU71は、同一の走査ラインに関して、第2の走査制御にて得られた1フレームのOCT信号と、第3の走査制御にて得られた1フレームのOCT信号とを処理して、1フレームのMCデータを取得する。そして、CPU71は、各走査ラインにて得られた1フレームのMCデータに基づいて正面MCデータ又は3次元MCデータを生成し、表示部75に表示してもよい。
【0145】
以上のようにして、CPU71は、複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ1回ずつ測定光を走査する走査制御を繰り返し行うと共に、同一の走査ラインに関して時間的に連続する2つのOCT信号に基づいて各走査ラインのMCデータを繰り返し取得し、各走査ラインのMCデータに基づく正面MCデータ又は3次元MCデータの動画像を表示部75に表示してもよい。
【0146】
これによれば、例えば、検者は、注目部位に関する正面MCデータ又は3次元MCデータの動画像を得ることができるので、注目部位に関して脈動等による血管の血流状態の変化等を2次元的又は3次元的に観察できる。
【0147】
なお、同一の走査ラインに関して時間的に連続する2つのOCT信号に基づいてMCデータを生成したが、これに限定されず、同一の走査ラインに関して時間的に連続する複数のOCT信号に基づいてMCデータを生成してもよく、例えば、同一の走査ラインに関して時間的に連続する3つ以上のOCT信号に基づいてMCデータを生成してもよい。
【0148】
上記MCデータの動画像の取得において、動画像をリアルタイムにて得るべく、CPU71は、1秒間に5フレーム以上の正面MCデータ又は3次元MCデータの動画撮影(5fps以上)を実施してもよい。
【0149】
この場合、CPU71は、撮影範囲を設定するために用いられた正面MCデータ又は3次元MCデータに対して、走査範囲、走査ポイント数の少なくともいずれかを変更してもよい。その一例としては、ラインスキャンレート300kHz以上のOCT光学系(例えば、FDMLレーザ(フーリエドメインモードロックレーザ)を有するSS−OCT)が用いられ、1回のBスキャンレートが700Hz(ラインスキャンレート300kHz、スキャンポイント:50)の場合、5fps以上のMCデータの動画を得るには、例えば、スキャン本数50本、加算枚数2に設定されることで、7fpsの動画レートが得られる。
【0150】
なお、MCデータのリアルタイム動画を得るには、ラインスキャンレートが高速化されたOCT光学系が用いられるのが好ましい。高速OCTとしては、例えば、ラインスキャンレートが100kHz以上を持つ波長可変光源等が用いられてもよい。なお、高速OCTでなくとも、走査ポイント数、走査本数を制限することで、MCデータのリアルタイム動画を取得できる。
【0151】
なお、上記実施例においては、OCT光学系を用いて予め取得された画像データとして、MCデータを用いたが、これに限定されず、他の画像データにおいても、本実施例の適用は可能である。例えば、CPU71は、予め取得された正面OCTデータに基づいて撮影範囲を設定してもよい。この場合、上記実施例同様、少なくとも一部の層領域が異なる複数の正面OCTデータを用いて撮影範囲が設定可能であってもよい。
【0152】
<変容形態>
以下、本実施形態に係る変容形態について説明する。例えば、制御部は、OCT光学系を制御し、被検体上の第1の範囲での第1のMCデータを得るための第1の制御と、前記第1の範囲内であって前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲での第2のMCデータを得るための第2の制御と、を連続的に行ってもよい。
【0153】
上記制御によれば、例えば、広範囲のMCデータと、注目部位に関して狭範囲でのMCデータとをスムーズに取得できる。なお、MCデータの場合、例えば、通常のOCTデータの取得よりも撮影時間を要するので、上記のような連続制御によって、複数の範囲に係るMCデータの取得に要する検者又は被検者の負担を軽減できる。
【0154】
もちろん、第1の制御と第2の制御の順序は、どちらが先であってもよく、例えば、広範囲を優先するか狭い範囲を優先するかの優先順位に応じて変更可能であってもよい。なお、先に取得した方が、被検者の瞬きが少なく有利である。
【0155】
なお、第1の制御と第2の制御とを連続的に行う場合、例えば、1回のトリガ信号に基づいて、制御部は、第1の制御と第2の制御とを連続して実施してもよい。また、第1の制御にて取得された第1のMCデータの確認画面及び画面上での良否確認を経ずに、第2の制御にて移行してもよい。また、制御部は、被検体上の測定光の走査範囲を制御することによって、第1の走査範囲に関する第1の制御と第2の走査範囲に関する第2の制御とを行ってもよい。
【0156】
なお、第2の制御での撮影条件としては、第2の範囲に関して、第1の範囲の同一範囲の密度よりも高密度のMCデータを取得するように、撮影条件を設定してもよい。これにより、例えば、注目部位に関する狭範囲でのMCデータを高密度にて取得できる。
【0157】
なお、第1の制御と第2の制御とを連続的に行う場合、例えば、第1の制御よりも前に予め設定された位置にて第2の制御が行われることで、撮影範囲の設定動作を軽減できる。例えば、第2の範囲は、眼底の黄斑部が中心に配置されるように予め設定されていてもよい。第2の範囲は、眼底の乳頭部が中心に配置されるように予め設定されていてもよい。なお、第2の範囲は、第1の制御よりも前に得られたOCTデータ、正面画像データ等を用いて、予め位置が設定されてもよい。
【0158】
なお、上記連続制御を行う場合、第1のMCデータに基づいて前記第2の範囲の位置を設定し、設定された位置にて第2の制御を行ってもよい。この場合、例えば、第1のMCデータが画像処理によって解析され、第2の範囲の位置が解析結果に基づいて設定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0159】
図1】本実施例の概略を示すブロック図である。
図2】OCTデバイスの光学系の一例を示す図である。
図3】本実施例の制御動作を示すフローチャートである。
図4】モーションコントラストの取得について説明するための図である。
図5】本実施例の表示画面の一例を示す図である。
図6】本実施例の表示画面の一例を示す図である。
図7】第2のモーションコントラストの取得の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0160】
1 OCT装置
10 OCTデバイス
70 制御部
71 CPU
72 ROM
73 RAM
74 記憶部
75 表示部
76 操作部
100 OCT光学系
108 走査部
200 正面撮影光学系


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7