特許第6828296号(P6828296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828296
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】蓄電装置および蓄電装置の充電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20210128BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20210128BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20210128BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20210128BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20210128BHJP
【FI】
   H02J7/10 B
   H02J7/02 H
   H01M10/48 P
   H01M10/44 Q
   H01M4/58
   H02J7/10 H
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-156356(P2016-156356)
(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-26923(P2018-26923A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年3月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−103514(JP,A)
【文献】 特開2011−078147(JP,A)
【文献】 特開2014−039400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H01M 4/58
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
前記蓄電素子への充電電圧を降下させる電圧降下手段と、
前記電圧降下手段と並列に接続され、前記蓄電素子への充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える電流切替手段と、
前記蓄電素子の電圧を検出する電圧検出部と、
制御部とを備える蓄電装置であって
前記蓄電素子は、リン酸鉄系のリチウムイオン電池であり、
前記電流切替手段は、第1半導体スイッチであり、
前記電圧降下手段は、前記第1半導体スイッチに対して並列に接続され、充電方向を順方向とする第1ダイオードであり、
前記第1半導体スイッチ及び前記第1ダイオードは、前記蓄電装置の外部端子部と前記蓄電素子の電極と、を接続する通電路に位置し、
前記制御部は、前記蓄電素子が鉛蓄電池用の充電器によって充電され、前記蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合、前記電流切替手段によって、前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替えることにより充電電圧を降下させる蓄電装置。
【請求項2】
前記所定値は、前記蓄電素子の満充電電圧よりも高く、かつ前記蓄電素子の過充電電圧よりも低く設定されており、
前記蓄電素子が前記蓄電素子の満充電電圧よりも高い電圧で充電され、前記蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に前記電流切替手段によって前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
第1の充電器と、前記第1の充電器よりも充電電圧が高い第2の充電器とのいずれの充
電器においても充電可能な蓄電装置であって、
蓄電素子と、
前記蓄電素子への充電電圧を降下させる電圧降下手段と、
前記電圧降下手段と並列に接続され、前記蓄電素子への充電電流を前記電圧降下手段経
由に切り替える電流切替手段と、
前記蓄電素子の電圧を検出する電圧検出部と、
制御部とを備え、
前記電流切替手段は、第1半導体スイッチであり、
前記電圧降下手段は、前記第1半導体スイッチに対して並列に接続され、充電方向を順方向とする第1ダイオードであり、
前記第1半導体スイッチ及び前記第1ダイオードは、前記蓄電装置の外部端子部と前記蓄電素子の電極とを接続する通電路に位置し、
前記制御部は、前記蓄電素子が前記第2の充電器によって充電され、前記蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に、前記電流切替手段において前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える蓄電装置。
【請求項4】
前記所定値は、前記第2の充電器の充電電圧から前記電圧降下手段が電圧降下させる電圧降下分を減算して決定する請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記蓄電素子は、リン酸鉄系のリチウムイオン電池であって、
前記第2の充電器は、鉛蓄電池用の充電器であり、
前記第1の充電器は、リチウムイオン電池用の充電器である、請求項3又は請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記蓄電素子は、直列に複数接続されており、
前記電圧検出部は、複数の前記蓄電素子の各電圧及び総電圧を検出し、
前記制御部は、直列に接続された複数の蓄電素子のうち、いずれか1つの蓄電素子の電圧がセル用経路切替閾値以上の場合、前記電流切替手段によって、前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記制御部は、直列に接続された複数の前記蓄電素子のうち、いずれか1つの蓄電素子が前記セル用経路切替閾値以上の場合に加え、複数の前記蓄電素子の総電圧が電池用経路切替閾値以上の場合も、前記電流切替手段によって、前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える請求項6に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記セル用経路切替閾値は、前記蓄電素子間の充電量のばらつきを均等化する均等化処理を実行開始する均等化開始閾値よりも高く、
前記制御部は、前記均等化処理の実行中に、複数の前記蓄電素子のうち、いずれか1つの前記蓄電素子の電圧が前記セル用経路切替閾値以上になった場合、前記電流切替手段によって、前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える請求項6又は請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記第1半導体スイッチと直列に接続された第2半導体スイッチと、
前記第2半導体スイッチに並列に接続され放電方向を順方向とする第2ダイオードと、を備え、
前記制御部は、
前記蓄電素子の電圧が、前記所定値を超えた場合、前記第1半導体スイッチを遮断することで、前記蓄電素子への充電電流を、前記第1半導体スイッチを通る経路から前記第1ダイオードを通る経路に切り替えて充電を継続し、
前記蓄電素子の電圧が、前記所定値より高い過充電電圧を超えた場合、前記第2半導体スイッチを遮断して、前記蓄電素子への充電電流を遮断する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記蓄電素子の電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記第1ダイオードを通る経路での充電中に、前記蓄電素子への充電電流が充電器に設定された電流停止値よりも低下した場合に、前記第2半導体スイッチを遮断して、前記蓄電素子への充電電流を遮断する請求項に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記電流切替手段は、前記電圧降下手段を寄生ダイオードとして内蔵する半導体スイッチである請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の車両用12Vの蓄電装置。
【請求項13】
第1の充電器と、前記第1の充電器よりも充電電圧が高い第2の充電器とのいずれの充電器においても充電可能な蓄電装置の充電制御方法であって、
前記第2の充電器は、鉛蓄電池用の充電器であり、
前記第1の充電器は、リチウムイオン電池用の充電器であり、
蓄電素子であるリン酸鉄系のリチウムイオン電池が前記鉛蓄電池用の充電器において充電され、
前記リン酸鉄系のリチウムイオン電池の電圧が満充電電圧を超えた場合、前記蓄電装置の外部端子部から前記蓄電素子の電極までの通電路内において、第1半導体スイッチを用いて、充電電流の電流経路を、第1半導体スイッチを通る経路から、第1半導体スイッチと並列に接続された電圧降下手段である第1ダイオードを通る電流経路に切り替えることで、充電電圧を降下させる蓄電装置の充電制御方法。
【請求項14】
前記蓄電素子の電圧が、所定値を超えた場合、前記第1半導体スイッチを遮断することで、前記蓄電素子への充電電流を、前記第1半導体スイッチを通る経路から前記第1ダイオードを通る経路に切り替えて充電を継続し、
前記蓄電素子の電圧が、前記所定値より高い過充電電圧を超えた場合、前記第1半導体スイッチに対して直列に接続された第2半導体スイッチを遮断して、前記蓄電素子への充電を遮断する、請求項13に記載の蓄電装置の充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、蓄電装置および蓄電装置の充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のエンジン始動用の蓄電システムとして、特開2014−225942号公報が知られている。この蓄電システムは、鉛蓄電池に替えて、リチウムイオン電池など鉛電池に比べて小型化、軽量化が可能な二次電池を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−225942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の蓄電システムは、電池特性の違いから鉛蓄電池の充電電圧は、例えば14.8[V]とされているものの、リチウムイオン電池の充電電圧は、例えば14[V]とされており、リチウムイオン電池の充電電圧は、鉛蓄電池に比べて充電電圧が低く設定されている。
【0005】
ところが、蓄電システムの本体の形状および通信コネクタの形状は、鉛蓄電池と同様の形状とされているため、リチウムイオン電池に対して鉛蓄電池用の充電器によって充電する虞があり、定電流定電圧充電式の鉛蓄電池用の充電器によって充電を行うと、電池電圧が許容充電範囲を超えても充電され、過充電状態となってしまう。
【0006】
本明細書では、想定していた充電電圧よりも高い充電電圧で充電された場合でも、不具合を生じさせずに充電を継続できるようにする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される技術は、蓄電素子と、前記蓄電素子への充電電圧を降下させる電圧降下手段と、前記電圧降下手段と並列に接続され、前記蓄電素子への充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える電流切替手段と、前記蓄電素子の電圧を検出する電圧検出部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に、前記電流切替手段によって前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本明細書によって開示される技術によれば、蓄電装置が所定値よりも高い充電電圧で充電され、蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に、電流切替手段によって充電電流の経路が電圧降下手段経由に切り替えられる。そして、電圧降下手段を経由して充電させることで、蓄電素子に対する充電電圧を低下させ、蓄電素子の電圧が高くなることを防ぐことができる。これにより、例えば、蓄電装置が所定値よりも充電電圧が高い充電器によって充電された場合においても、蓄電素子が過充電状態になることを抑制することができ、不具合を生じさせずに充電を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における蓄電装置の斜視図
図2】蓄電装置の分解斜視図
図3】実施形態1における蓄電装置の電気的構成を示すブロック図
図4】放電回路のブロック図
図5】蓄電素子のSOCとセル電圧との関係を示すグラフ
図6】過充電保護処理のフローチャート図
図7】過放電保護処理のフローチャート図
図8】充電制御処理のフローチャート図
図9】定電流定電圧充電における組電池の電池電圧および充電電流の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本実施形態の概要)
初めに、本明細書によって開示する蓄電装置および蓄電装置の充電制御方法の概要について説明する。
【0011】
本明細書によって開示される蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子への充電電圧を降下させる電圧降下手段と、前記電圧降下手段と並列に接続され、前記蓄電素子への充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える電流切替手段と、前記蓄電素子の電圧を検出する電圧検出部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に、前記電流切替手段によって前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える。
【0012】
また、本明細書によって開示される蓄電装置は、第1の充電器と、前記第1の充電器よりも充電電圧が高い第2の充電器とのいずれの充電器においても充電可能な蓄電装置であって、蓄電素子と、前記蓄電素子への充電電圧を降下させる電圧降下手段と、前記電圧降下手段と並列に接続され、前記蓄電素子への充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える電流切替手段と、前記蓄電素子の電圧を検出する電圧検出部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記蓄電素子が前記第2の充電器によって充電され、前記蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に、前記電流切替手段において前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える。
【0013】
また、本明細書によって開示される蓄電装置の充電制御方法は、第1の充電器と、前記第1の充電器よりも充電電圧が高い第2の充電器とのいずれの充電器においても充電可能な蓄電装置の充電制御方法であって、蓄電素子が前記第2の充電器において充電され、蓄電素子の電圧が満充電電圧を超えた場合に、充電電圧を降下させて充電電流を低下させる。
なお、上記において、蓄電素子の電圧とは、蓄電素子が複数の場合には、各蓄電素子の電圧もしくは複数の蓄電素子の総電圧のいずれかを意味するものである。
【0014】
このような構成によると、蓄電装置が所定値よりも高い充電電圧で充電され、蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に、電流切替手段によって充電電流の経路が電圧降下手段経由に切り替えられる。そして、電圧降下手段を経由して充電させることで、蓄電素子に対する充電電圧を低下させ、蓄電素子の電圧が高くなることを防ぐことができる。これにより、例えば、蓄電装置が所定値よりも充電電圧が高い充電器によって充電された場合においても、蓄電素子が過充電状態になることを抑制することができ、不具合を生じさせずに充電を継続できる。
【0015】
本明細書により開示される蓄電装置の一実施態様として、前記所定値は、前記蓄電素子の満充電電圧よりも高く、かつ前記蓄電素子の過充電電圧よりも低く設定されており、前記蓄電素子が前記蓄電素子の満充電電圧よりも高い電圧で充電され、前記蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に前記電流切替手段によって前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替える構成にしてもよい。
【0016】
このような構成によると、蓄電素子が満充電電圧よりも高い充電電圧で充電され、蓄電素子の電圧が所定値を超えた場合に、電流切替手段によって充電電流の経路が電圧降下手段経由に切り替えられ、電圧降下手段によって充電電圧が降下される。これにより、蓄電素子の満充電電圧値よりも高い電圧で充電された場合に、複数の蓄電素子が過充電状態になることを抑制することができる。
【0017】
また、本明細書により開示される蓄電装置の一実施態様として、前記所定値は、前記第2の充電器の充電電圧から前記電圧降下手段が電圧降下させる電圧降下分を減算して決定する構成としてもよい。
【0018】
また、本明細書により開示される蓄電装置の一実施態様として、前記蓄電素子は、直列に複数接続されており、前記電圧検出部は、複数の前記蓄電素子の各電圧をそれぞれ検出可能とされており、前記制御部は、前記電流切替手段によって前記充電電流を前記電圧降下手段経由に切り替えた際に、前記蓄電素子間の充電量のばらつきを均等化する均等化処理を行う構成にしてもよい。
【0019】
ところで、リチウムイオン電池の種類によっては、満充電付近において電池電圧が急激に上昇する場合があるため、電池間の充電量のばらつきを均等化する均等化処理を行っても均等化処理が間に合わず、電池電圧が閾値を超えることで蓄電システム内の電流遮断装置によって電流が遮断されてしまう虞がある。
【0020】
ところが、このような構成によると、電圧降下素子を経由して充電させ、蓄電素子の充電電圧を低下させることで充電電流を減少させる。これにより、蓄電素子間の充電量のばらつきを均等化する均等化処理の時間を確保し、蓄電素子の電圧が閾値を超えることを抑制することができる。
【0021】
また、本明細書により開示される蓄電装置の一実施態様として、前記電流切替手段は、前記電圧降下手段を寄生ダイオードとして内蔵する半導体スイッチである構成としてもよい。
【0022】
このような構成によると、半導体スイッチの寄生ダイオードを電圧降下手段として用いることができるので、例えば、電流切替手段として有接点リレー(機械式スイッチ)を設け、有接点リレーに並列して電圧降下手段であるダイオードなどを設ける場合に比べて、部品点数を低減すると共に、回路を簡素化することができる。
【0023】
また、本明細書により開示される蓄電装置の一実施態様として、前記蓄電素子の電流を検出する電流検出部を備え、前記蓄電素子への充電電流を遮断する補助電流遮断手段が接続されており、前記制御部は、前記蓄電素子への充電電流が充電器に設定された電流停止値よりも低下した場合に、前記補助電流遮断手段により前記蓄電素子への充電電流を完全に遮断する構成としてもよい。
【0024】
このような構成によると、充電器に設定された電流停止値よりも充電電流が低下しているにもかかわらず、充電が継続される場合、充電が完了し、かつ充電器に障害が発生していると見なして蓄電素子への充電電流を完全に遮断し、蓄電装置への充電を完了させることができる。
【0025】
<実施形態>
本明細書で開示される技術を自動車など車両のエンジン始動用の蓄電装置10に適用した実施形態を図1から図9を参照しつつ説明する。
蓄電装置10は、図1に示すように、ブロック状の電池ケース11を有している。電池ケース11内には、図2に示すように、複数(本実施形態では4つ)の蓄電素子21を直列に接続してなる組電池20や制御基板18などが収容されている。
【0026】
なお、以下の説明において、図1および図2を参照する場合、上下方向とは、電池ケース11が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース11の上下方向を基準とし、前後方向とは、電池ケース11の短辺部分に沿う方向(奥行き方向)を基準として図示左手前側を前側とする。また、左右方向とは、電池ケース11の長辺部分に沿う方向を基準とし、図示右手前側を右方向として説明する。
【0027】
電池ケース11は、合成樹脂製であって、図2に示すように、上方に開口する箱型のケース本体13と、複数の蓄電素子21を位置決めする位置決め部材14と、ケース本体13の上部に装着される中蓋15と、中蓋15の上部に装着される上蓋16とを備えて構成されている。
【0028】
ケース本体13内には、複数の蓄電素子21が個別に収容される複数のセル室13Aが左右方向に並んで設けられている。
蓄電素子21は、例えばグラファイト系材料の負極活物質と、リン酸鉄リチウムなどのリン酸鉄系の正極活物質を使用したリチウムイオン電池とされており、満充電状態の蓄電素子21は、例えば、3.5[V]から3.6[V]程度となるように構成されており、本実施形態は、3.5[V]とされている。
【0029】
位置決め部材14は、図2に示すように、複数のバスバー17が上面に配置されている。位置決め部材14がケース本体13内に配置された4つの蓄電素子21の上部に配置されることで、4つの蓄電素子21が位置決めされると共に複数のバスバー17によって直列に接続されることで組電池20が構成されている。
つまり、組電池20は、複数のバスバー17によって接続されることで、満充電状態の時には、14[V]程度となるように構成されている。
【0030】
中蓋15は、図1および図2に示すように、平面視略矩形状をなし、左右方向に高低差を付けた形状とされている。中蓋15の左右方向両端部には、車両の充電器もしくは商用100V電源を用いる外部充電器CHに設けられた図示しないバッテリ端子が接続される一対の外部端子部12が中蓋15に埋設された状態で設けられている。一対の外部端子部12は、例えば、鉛合金等の金属からなり、一対の外部端子部12のうち、例えば、右側が正極側端子部12Pとされ、左側が負極側端子部12Nとされている。なお、外部充電器CHが、充電器の一例である(図3を参照)。
【0031】
また、中蓋15は、図2に示すように、制御基板18が内部に収容可能とされており、中蓋15がケース本体13に装着されることで、組電池20と制御基板18とが接続されるようになっている。
つまり、蓄電装置10の形状は、従来の鉛蓄電池と同様の形状とされている。
【0032】
次に、蓄電装置10の電気的構成を説明する。
蓄電装置10は、図3に示すように、組電池20と、電池管理装置(以下、「BMU」という)(「制御部」の一例)30と、電流検出抵抗41と、充電遮断装置42と、放電遮断装置43と、放電回路44とを備えて構成されている。なお、放電遮断装置43が、「半導体スイッチ」および「電流切替手段」の一例である。
【0033】
組電池20と、電流検出抵抗41と、充電遮断装置42と、放電遮断装置43とは、通電路Lを介して直列に接続されており、組電池20の正極側が充電遮断装置42および放電遮断装置43を介して正極側端子部12Pに接続され、負極側が電流検出抵抗41を介して負極側端子部12Nに接続されている。
電流検出抵抗41は、組電池20の電流を検出する抵抗器であって、電流検出抵抗41の両端電圧がBMU30に取り込まれることで組電池20の電流が検出される。
【0034】
充電遮断装置42および放電遮断装置43は、例えばNチャネルのFETなどの半導体スイッチであって、それぞれが寄生ダイオード(「電圧降下手段」の一例)42D,43Dを有している。充電遮断装置42および放電遮断装置43は、図3に示すように、寄生ダイオード42D,43Dを経由した通電経路I2にて通電されると、例えば、0.6[V]程度の電圧降下が生じるようになっている。また、充電遮断装置42および放電遮断装置43は、ドレイン同士が互いに共通接続され、充電遮断装置42のソースが正極側端子部12Pに接続され、放電遮断装置43のソースが組電池20に接続されている。
【0035】
放電回路44は、図4に示すように、放電抵抗Rと放電スイッチSWとを有しており、各蓄電素子21に対して並列に接続されている。そして、放電スイッチSWに対してCPU33から指令を与え、放電スイッチSWをオンすることで蓄電素子21を個別に放電することができるようになっている。これにより、蓄電素子21間の充電量の差を少なくする均等化処理を行うことができるようになっている。
【0036】
BMU30は、電圧検出回路(「電圧検出部」の一例)31と、中央処理装置であるCPU(「制御部」の一例)33と、メモリ34とを備えて構成されており、これらは、制御基板18上に搭載されている。また、BMU30は、通電路Lに接続されることで組電池20から電力の供給を受けている。
【0037】
電圧検出回路31は、電圧検出線L2を介して、各蓄電素子21の両端にそれぞれ接続されており、CPU33からの指示に応答して、各蓄電素子21のセル電圧V1及び組電池20の電池電圧(複数の蓄電素子21の総電圧)V2を測定する。
【0038】
メモリ34は、例えばフラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性メモリとされている。メモリ34には、各蓄電素子21または組電池20を管理する各種プログラム、各種プログラムの実行に必要なデータ、例えば、蓄電素子21および組電池20の過放電検出閾値や過充電検出閾値、放電回路44の放電抵抗Rによって放電可能な時間あたりの放電量などが記憶されている。
【0039】
CPU33は、電流検出抵抗41、電圧検出回路31などの出力から蓄電素子21の電流、電圧などを監視しており、異常を検出した場合には、充電遮断装置42および放電遮断装置43を作動させる過充電保護処理および過放電保護処理を実行することで組電池20に不具合が生じることを防いでいる。
【0040】
また、組電池20における各蓄電素子21の充電量は、当初はほぼ等しくなっているものの、各蓄電素子21は、それぞれ自己放電によって減少するため、各蓄電素子21間において充電量にばらつきが生じる。また、リン酸鉄系のリチウムイオンからなる蓄電素子21は、図5に示すように、SOCが90%以上である充電末期においてSOCの増加に対してセル電圧(OCV:開放電圧)V1が急激に上昇する傾向にある。
【0041】
したがって、組電池20の蓄電素子21間において充電量にばらつきがある状態のまま、組電池20の充電が継続されると、図5に示すように、充電末期に相対的に充電量の大きい蓄電素子21が過充電状態となり、蓄電素子21が劣化してしまう。このため、組電池20の蓄電素子21間において充電量にばらつきがある場合には、蓄電素子21間の充電量を均等化する均等化処理を過充電保護処理内において実行する。
【0042】
以下に、過充電保護処理について、図6を参照しつつ説明し、続けて均等化処理について説明する。
電池保護処理では、CPU33は、まず、電圧検出回路31において、各蓄電素子21のセル電圧V1および組電池20の電池電圧V2を検出する(S11)。
次に、CPU33は、セル電圧V1とメモリ34に記憶された均等化開始閾値とを比較し(S12)、全てのセル電圧V1が均等化開始閾値未満の場合(S12:NO)、CPU33は、後述する過放電保護処理を実行する。
【0043】
一方、セル電圧V1の少なくとも1つが均等化開始閾値以上の場合(S12:YES)、CPU33は、均等化開始閾値以上のセル電圧V1とメモリ34に記憶されたセル過充電検出閾値とを比較する(S13)。セル電圧V1がセル過充電検出閾値以上の場合(S13:YES)、CPU33は、蓄電素子21が過充電状態に至る虞があるとして、充電遮断装置42の電流を遮断する遮断切替指令を送信する。これにより、充電遮断装置42において組電池20と正極側端子部12Pとの間の通電が遮断され、蓄電素子21が過充電状態に至ることが抑制される(S14)。
【0044】
一方、セル電圧V1がセル過充電検出閾値未満の場合(S13:NO)、CPU33は、電池電圧V2とメモリ34に記憶された電池過充電検出閾値とを比較する(S15)。電池電圧V2が電池過充電検出閾値未満の場合(S15:YES)、CPU33は、セル電圧V1が均等化開始閾値以上である蓄電素子21の充電量が、他の蓄電素子21の充電量に比べて相対的に大きいと判断し、後述する均等化処理(S16)を実行する。そして、各蓄電素子21間の充電量がほぼ等しくなったところで、S12に戻る。
【0045】
一方、セル電圧V1の少なくとも1つが均等化開始閾値以上であって、電池電圧V2が電池過充電検出閾値以上である場合(S15:NO)、CPU33は、組電池20が過充電状態に至る虞があるとして、充電遮断装置42の電流を遮断する遮断切替指令を送信する。これにより、充電遮断装置42において外部端子部12と組電池20との間の通電が遮断され、組電池20が過充電状態に至ることが抑制される(S14)。
【0046】
なお、セル過充電検出閾値とは、蓄電素子21が過充電に至ることを検出する為の基準電圧値であって、例えば、4.0[V]に設定されており、均等化開始閾値とは、均等化処理を開始するための基準電圧値であって、蓄電素子21の満充電電圧よりも低く、例えば、3.45[V])に設定されている。また、電池過充電検出閾値とは、蓄電素子21が過充電に至ることを検出する為の基準電圧値であって、例えば、14.5[V]に設定されている。
【0047】
次に、均等化処理について説明する。
均等化処理では、CPU33は、放電回路44を動作させて均等化開始閾値以上と判断された蓄電素子21を放電させ、各蓄電素子21間における充電量の差を小さくすることで、蓄電素子21間の充電量を均等化する(S16)。
【0048】
具体的には、CPU33は、各蓄電素子21間の充電量の差と、予めメモリ34に記憶された放電抵抗Rの時間あたりの放電量に基づいて、蓄電素子21の放電時間を算出する。そして、セル電圧V1が均等化開始閾値以上の蓄電素子21に対応する放電スイッチSWを放電時間だけオンし、蓄電素子21を放電させることで、蓄電素子21間の充電量を均等化する。
【0049】
次に、過放電保護処理について図7を参照しつつ説明する。
過放電保護処理では、CPU33は、まず、各セル電圧V1および電池電圧V2と、メモリ34に記憶されたセル過放電検出閾値および電池過放電検出閾値とを比較する(S21)。
なお、セル過放電検出閾値は、蓄電素子21の1つが過放電状態になった時の電圧値よりもやや大きい値であり、電池過放電検出閾値は、組電池20が過放電状態になったときの電圧値よりもやや大きい値である。
【0050】
そして、CPU33は、セル電圧V1の少なくとも1つがセル過放電検出閾値以下、もしくは、電池電圧V2が電池過放電検出閾値以下の場合(S21:YES)、組電池20もしくは蓄電素子21のいずれかが過放電状態に至る虞があるとして、放電遮断装置43に遮断切替指令を送信する。これにより、放電遮断装置43において組電池20と正極側端子部12Pとの間の通電が遮断され、組電池20が過放電状態に至ることが抑制される(S22)。
【0051】
一方、CPU33は、全てのセル電圧V1がセル過放電検出閾値よりも大きく、かつ、電池電圧V2が電池過放電検出閾値よりも大きい場合(S21:NO)、過放電保護処理を終了する。
【0052】
そして、この過充電保護処理および過放電保護処理を、常時或いは定期的に、繰り返すことで、組電池20が過充電状態または過放電状態になることを防いでいる。
【0053】
ところで、本実施形態の蓄電装置10は、従来の鉛蓄電池と同様の形状とされているため、リチウムイオン電池用の定電流定電圧式の外部充電器(「第1の充電器」の一例)によって充電可能であることは勿論のこと、誤って鉛蓄電池用の12Vもしくは24V用の定電流定電圧式の外部充電器(「第2の充電器」の一例)によって充電される虞がある。また、一般に、リチウムイオン電池用の外部充電器の充電電圧は、14[V]であるのに対し、鉛蓄電池用の外部充電器の充電電圧は、14.8[V]となっている。したがって、誤って鉛蓄電池用の外部充電器によって定電流定電圧充電が行われた場合には、蓄電素子21のSOCが90%以上である充電末期においてセル電圧V1が急激に上昇する。このため、均等化処理を行っても均等化処理が間に合わず、蓄電素子21のセル電圧V1がセル過充電検出閾値を超えることで通電路Lが充電遮断装置42によって遮断されてしまうことが懸念される。
【0054】
具体的には、例えば、均等化開始閾値が3.45[V]、セル過充電検出閾値が4[V]、鉛蓄電池用の充電器が定電流充電から定電圧充電に切り替わる電圧が14.8[V]の場合、14.8[V]の充電電圧を、1つの蓄電素子21あたりの充電電圧に換算すると、各蓄電素子21に対する充電電圧は3.7[V]となる。
【0055】
したがって、蓄電素子21間にばらつきがあると、蓄電素子21におけるSOCの充電末期において充電量が大きい蓄電素子21のセル電圧V1が急激に上昇する。すると、均等化処理を行っても均等化処理が間に合わず、蓄電素子21のセル電圧V1がセル過充電検出閾値である4[V]を超えてしまい、通電路Lが充電遮断装置42によって遮断されてしまうことが懸念される。また、蓄電素子21間にばらつきがなかったとしても、組電池20の電池電圧V2が電池過充電検出閾値である14.5[V]を超えてしまう虞がある。
【0056】
そこで、本実施形態では、図8に示すように、CPU33による充電制御処理を行う。
充電制御処理では、外部充電器CHが一対の外部端子部12に接続され、充電が開始されると、図8に示すように、CPU33は、まず、電圧検出回路31において、各蓄電素子21のセル電圧V1および組電池20の電池電圧V2を検出する(S31)。
【0057】
次に、CPU33は、セル電圧V1とメモリ34に記憶されたセル用経路切替閾値とを比較する(S32)。ここで、セル用経路切替閾値とは、電流経路を切り替え、蓄電素子21に対する充電電圧を低下させるための閾値であって、蓄電素子12の満充電電圧よりも高く、かつ蓄電素子12が過充電状態となるセル過充電検出閾値よりも低い値に設定されている。
【0058】
そして、いずれかの蓄電素子21におけるセル電圧V1がセル用経路切替閾値以上の場合(S32:YES)、CPU33は、放電遮断装置43に遮断切替指令を送信する。これにより、放電遮断装置43におけるドレインとソースの間の電流が遮断され、図3に示すように、通電経路が、寄生ダイオード43Dを経由した通電経路I2に切り替えられることで、蓄電素子21に対する充電電圧を低下させる(S34)。
【0059】
つまり、いずれかの蓄電素子21におけるセル電圧V1がセル用経路切替閾値以上の場合、蓄電素子21を寄生ダイオード42D経由で充電させ、蓄電素子21に対する充電電圧を低下させることができるから、充電電流が大幅に減少し、蓄電素子21のセル電圧V1がセル過充電検出閾値に到達するまでの時間を遅延させることができる。なお、蓄電素子21のセル電圧V1がセル用経路切替閾値に至る過程おいて、セル電圧V1が均等化開始閾値以上となり、過充電保護処理のS16において均等化処理(S16)が実行される。
【0060】
一方、いずれの蓄電素子21におけるセル電圧V1もセル用経路切替閾値未満の場合(S32:NO)、CPU33は、組電池20の電池電圧V2とメモリ34に記憶された電池用経路切替閾値とを比較する。ここで、電池経路切替閾値とは、セル用経路切替閾値と同様、電流経路を切り替えて蓄電素子21に対する充電電圧を低下させるための閾値であって、蓄電素子12の満充電電圧の合計である組電池20の満充電電圧値以上で、かつ複数の蓄電素子12の総電圧(組電池20の電池電圧V2)が過充電状態となる電池過充電検出閾値よりも低い値に設定されている。
そして、CPU33は、電池電圧V2が電池用経路切替閾値未満の場合(S35:NO)にはS31に戻り、電池電圧V2が電池用経路切替閾値以上の場合(S35:YES)、放電遮断装置43に遮断切替指令を送信する。これにより、放電遮断装置43におけるドレインとソースの間の電流が遮断され、通電経路が寄生ダイオード43Dを経由した通電経路I2に切り替えられることで、蓄電素子21に対する充電電圧を低下させる(S34)。
【0061】
つまり、いずれの蓄電素子21におけるセル電圧V1もセル用経路切替閾値未満であっても、組電池20の電池電圧V2が電池経路切替閾値以上である場合、蓄電素子21および組電池20を寄生ダイオード42D経由で充電させ組電池20に対する充電電圧を低下させることで充電電圧を低下させることができるから、組電池20が過充電状態になることを防ぎつつ、充電を継続させることができる。
【0062】
具体的には、例えば、図9は、定電流定電圧充電における組電池20の電池電圧V2および充電電流の変化を示している。ここで、定電流充電から定電圧充電に切り替わる電圧が14.8[V]の定電流定電圧式の鉛蓄電池用の外部充電器の場合(充電器出力電圧は、14.8[V])、蓄電素子10の電池電圧充電閾値は、充電電圧から寄生ダイオード43Dによって電圧降下させる電圧降下分(0.6[V])を減算して14.2[V]と設定する。
【0063】
つまり、電池経路切替閾値は、蓄電素子12の満充電電圧3.5[V]の合計である組電池20の満充電電圧値14[V]よりも高く、かつ複数の蓄電素子12の総電圧(組電池20の電池電圧V2)が過充電状態となる電池過充電検出閾値14.5[V]よりも低い値、例えば、14.2[V]に設定されている。また、セル経路切替閾値は、蓄電素子12の満充電電圧3.5[V]よりも高く、かつ蓄電素子12が過充電状態となる電池過充電検出閾値4.0[V]よりも低い値、例えば、3.6[V]に設定されている。
このような条件において、鉛蓄電池用の外部充電器CHが一対の外部端子部12に接続され、図3に示す通電経路I1にて定電流充電が開始されると、図9に示すように、電池電圧V2が上昇し始める。また、CPU33は、定電流充電が開始されると、電圧検出回路31により各蓄電素子21のセル電圧V1および組電池20の電池電圧V2を検出する。
【0064】
なお、外部充電器CHによる充電開始の判断は、例えば、CPU33が電圧検出回路31による外部端子部12の電圧検出や電流検出抵抗41の出力による充電電流の検出により行われる。
【0065】
そして、いずれかの蓄電素子21におけるセル電圧V1がセル用経路切替閾値(3.6[V])以上である場合、もしくは、いずれの蓄電素子21におけるセル電圧V1もセル用経路切替閾値(3.6[V])未満であって、組電池20の電池電圧V2が電池経路切替閾値(14.2[V]))以上である場合、CPU33は放電遮断装置43のドレインとソースの間の電流を遮断して、図3に示すように、寄生ダイオード43Dを経由した通電経路I2の充電に切り替える。すると、図9に示すように、組電池20に対する充電電圧が寄生ダイオード42Dによって0.6[V]程度低下し、組電池20は、組電池20に適合した14.2[V](蓄電素子21あたり3.55[V])程度の充電電圧によって充電される。なお、外部充電器CHは、図9に示すように、組電池20の電池電圧が14.8[V]に達したと見なして、定電流充電を定電圧充電に切り替える。
【0066】
つまり、いずれかの蓄電素子21におけるセル電圧V1がセル用経路切替閾値以上である場合、蓄電素子21および組電池20を寄生ダイオード42D経由で充電させ、蓄電素子21および組電池20に対する充電電圧を低下させることで充電電流を大幅に減少させることができるから、蓄電素子21のセル電圧V1が、セル過充電検出閾値に到達するまでの時間を遅延させることができる。
【0067】
これにより、例えば、蓄電装置10が想定した充電電圧よりも高い電圧の外部充電器CHによって充電された場合においても、蓄電素子21間の充電量のばらつきを均等化する均等化処理の時間を確保することができ、均等化処理が間に合わず、蓄電素子21のセル電圧V1がセル過充電検出閾値を超えることで、充電遮断装置42において外部充電器CHから組電池20への通電が遮断されてしまうことを抑制することができる。ひいては、蓄電装置10の充電を継続させることができる。
【0068】
また、いずれの蓄電素子21におけるセル電圧V1もセル用経路切替閾値未満であっても、組電池20の電池電圧V2が電池経路切替閾値以上である場合、蓄電素子21および組電池20を寄生ダイオード42D経由で充電させ組電池20に対する充電電圧を低下させることで充電電圧を低下させることができるから、組電池20が過充電状態になることを防ぎつつ、充電を継続させることができる。
【0069】
次に、外部充電器CHの充電が定電流充電から定電圧充電に切り替わった後に、CPU33は、充電電流Iと、メモリ34に記憶された過充電電流閾値とを比較する(S35)。そして、充電電流Iが過充電電流閾値を超えている場合(S35:NO)、充電制御処理を終了する。なお、過充電電流閾値とは、外部充電器CHが、蓄電装置10が満充電に至ったと判断する停止電流値よりも小さい値とされている。
【0070】
一方、充電電流Iが過充電電流閾値以下に至った場合(S35:YES)、CPU33は、充電遮断装置42の電流を遮断する遮断切替指令を送信し、充電遮断装置42において外部充電器CHから組電池20への通電を遮断することで、組電池20が過充電状態に至ることを防止する(S36)。
【0071】
つまり、充電電流Iが外部充電器CHに設定された停止電流値よりも低下しているにもかかわらず、充電が継続される場合、外部充電器CHに障害が発生していると見なして蓄電素子21への充電電流を完全に遮断し、蓄電装置10への充電を完了させる。
【0072】
そして、この充電制御処理を、常時或いは定期的に、繰り返すことで、蓄電素子21および組電池20が過充電状態になることを防いでいる。
なお、本実施形態では、蓄電装置10が鉛蓄電池用の外部充電器CHに接続されて充電された場合について説明した。しかしながら、これに限らず、蓄電装置10が車両に搭載された鉛蓄電池用のオルターネータなどの車両充電器によって充電された場合においても、充電制御処理によって蓄電素子21や組電池20が過充電状態になることを防ぐことができる。
【0073】
以上のように、本実施形態によると、蓄電装置10を外部充電器CHによって充電する場合に、誤って鉛蓄電池用の12Vもしくは24V用の定電流定電圧式の外部充電器CHによって充電した場合においても、蓄電素子21のいずれかのセル電圧V1がセル用経路切替閾値以上、もしくは組電池20の電池電圧V2が電池用経路切替閾値以上になった場合に、放電遮断装置43のソースとドレイン間の通電を遮断する。そして、充電経路を寄生ダイオード43D経由に切り替えることで、蓄電素子21および組電池20に対する充電電圧を低下させ、充電電流を大幅に減少させる。これにより、蓄電素子21間の充電量にばらつきがあったとしても、蓄電素子21間の充電量を均等化する均等化処理の時間を確保し、蓄電素子21のセル電圧V1がセル過充電検出閾値を超えることを抑制することができる。
【0074】
つまり、鉛蓄電池用の定電流定電圧式の外部充電器CHであったとしても、組電池20が過充電状態になることを防ぎつつ、蓄電装置10の充電を継続させることができる。ひいては、外部充電器CHの出力が遮断されることなく蓄電装置10の充電を正常に終了させることができるから、蓄電装置10が突然電流を遮断するなど想定外の動作をすることに起因して外部充電器CHに不具合が生じることを抑制することができる。
【0075】
ところで、例えば、放電遮断装置43の代替手段として、通電路Lに有接点リレー(機械式スイッチ)を設けると共に、有接点リレーに並列して電圧を降下させるダイオードを設け、充電経路をダイオード経由にする方法も考えられる。
【0076】
しかしながら、有接点リレーとダイオードとを設け、充電経路をダイオード経由にする場合、有接点リレーとダイオードとを個別に設ける必要があるため、制御基板の部品点数が増加してしまう。
【0077】
ところが、本実施形態によると、放電遮断装置(FET)43に内蔵された寄生ダイオード43Dを用いて充電電圧を降下させることができるから、例えば、有接点リレーとダイオードとを制御基板に個別に設ける場合に比べて、制御基板18の部品点数を低減すると共に、制御回路を簡素化することができる。
【0078】
また、本実施形態によると、外部充電器CHによる充電電流Iが、蓄電装置10が満充電に至ったと判断する停止電流値よりも低い過充電電流閾値以下に至った場合に、充電遮断装置42において通電を遮断できるから、充電が完了しているにもかかわらず、外部充電器CHに障害が発生し、充電が継続される場合には、蓄電素子21への充電電流を完全に遮断し、蓄電装置10への充電を完了させることができる。
【0079】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0080】
(1)上記実施形態では、通電路Lに充電遮断装置42を接続した構成にした。しかしながら、これに限らず、例えば、充電器側に過充電防止機構を設けることで、通電路Lに充電遮断装置を接続しない構成にしてもよい。
【0081】
(2)上記実施形態では、通電制御手段を、寄生ダイオード43Dを内蔵するFETからなる放電遮断装置43によって構成した。しかしながら、これに限らず、有接点リレーと、有接点リレーに並列して電圧を降下させるダイオードとによって通電制御手段を構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
21:蓄電素子
30:電池管理装置(「制御部」の一例)
31:電圧検出回路(「電圧検出部」の一例)
33:CPU(「制御部」の一例)
43:放電遮断装置(「半導体スイッチ」および「電流切替手段」の一例)
43D:寄生ダイオード(「電圧降下手段」の一例)
CH:外部充電器(「充電器」の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9