(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1.第一実施形態>
(1−1.異常解析システムの構成)
本実施形態の異常解析システム1の構成について
図1を参照して説明する。
図1に示すように、異常解析システム1は、生産設備11〜13と、他の生産設備21〜23と、生産設備11〜13に接続されるフォグネットワーク31と、他の生産設備21〜23に接続される他のフォグネットワーク32と、フォグネットワーク31,32に接続されるクラウドネットワーク40と、解析装置50と、他の解析装置60と、上位解析装置70とを備える。ここで、解析装置50,60及び上位解析装置70は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)やCNC(Computerized Numerical Control)装置などの組み込みシステムとすることもでき、パーソナルコンピュータやサーバなどとすることもできる。
【0017】
生産設備11〜13(本発明の生産設備に相当する)は、所定の生産対象物を生産する設備である。他の生産設備21〜23(本発明の他の生産設備に相当する)は、所定の生産対象物を生産する設備である。なお、生産設備11〜13が生産する生産対象物と他の生産設備21〜23が生産する生産対象物とは、同種でも異種でもよい。
【0018】
生産設備11,21は、例えば、生産ラインにおける第一加工工程を担当する工作機械であって、クランクシャフトを研削する研削盤などである。生産設備13,23は、第二加工工程を担当する工作機械であって、上記同様にクランクシャフトを研削する研削盤などである。生産設備12,22は、生産設備11,13の間、又は、生産設備21,23の間にて、生産対象物を搬送する搬送機などである。
【0019】
また、生産設備11〜13は、同一の建物内又は近隣の建物内に設置されている。他の生産設備21〜23は、同一の建物内又は近隣の建物内に設置されており、生産設備11〜13とは異なる場所の建物内に設置されている。例えば、生産設備11〜13は、日本に設置され、他の生産設備21〜23は、日本以外の国に設置されている場合や、生産設備11〜13と他の生産設備21〜23とは、共に日本に設置されているが、遠く離れた地域に設置されている場合などがある。
【0020】
つまり、生産設備11〜13は、後述するフォグコンピューティングを構築することができる所定領域内に設置されている。また、他の生産設備21〜23も、同様に、フォグコンピューティングを構築することができる所定領域内に設置されている。ただし、生産設備11〜13と他の生産設備21〜23とは、フォグコンピューティングを構築することができない領域に設置されている。
【0021】
ここで、フォグコンピューティングとは、クラウドコンピューティングと比較して、狭い領域でのネットワーク接続されたシステムである。つまり、フォグコンピューティングを構築するネットワークは、クラウドコンピューティングを構築する領域より狭い所定領域内に設置されているネットワークである。なお、フォグコンピューティングは、エッジコンピューティングと称されることもある。
【0022】
フォグネットワーク31(本発明の第一ネットワークに相当する)は、生産設備11〜13に接続されており、フォグコンピューティングを構築する所定領域内に設置されたネットワークである。フォグネットワーク31は、生産設備11〜13が設置されている建物と同一の建物内に設置されているか、生産設備11〜13の何れかが設置されている建物と近隣の建物内に設置されている。
【0023】
他のフォグネットワーク32は、他の生産設備21〜23に接続されており、フォグコンピューティングを構築する所定領域内に設置されたネットワークである。他のフォグネットワーク32は、他の生産設備21〜23が設置されている建物と同一の建物内に設置されているか、他の生産設備21〜23の何れかが設置されている建物と近隣の建物内に設置されている。また、他のフォグネットワーク32は、フォグネットワーク31とは直接接続されていない。ここで、フォグネットワーク31,32は、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)などを適用できる。
【0024】
クラウドネットワーク40(本発明の第二ネットワークに相当する)は、フォグネットワーク31,32に接続されるネットワークである。クラウドネットワーク40は、フォグネットワーク31,32に比べて広域のネットワークであり、例えばインターネットである。そのため、クラウドネットワーク40は、生産設備11〜13と他の生産設備21〜23とを接続するネットワークとなる。
【0025】
解析装置50は、フォグネットワーク31に直接接続されており、生産設備11〜13が設置されている建物と同一又は近隣の建物内に設置される。解析装置50は、生産設備11〜13から取得した検出情報に基づいてデータ解析を行う。解析装置50は、例えば、生産設備11〜13の1日分の検出情報を取得して、毎日データ解析を行う。データ解析は、何度も繰り返すことにより、学習することもできる。そして、解析装置50は、生産設備11〜13の異常又は生産設備11〜13による生産対象物の異常に関する判定情報を、データ解析の結果として記憶する。また、解析装置50は、後述する上位解析装置70による上位データ解析の結果を取得することで、解析装置50によるデータ解析の結果及び上位解析装置70による上位データ解析の結果に基づいて、判定情報を決定し記憶する。
【0026】
他の解析装置60は、フォグネットワーク32に直接接続されており、生産設備21〜23が設置されている建物と同一又は近隣の建物内に設置される。他の解析装置60は、他の生産設備21〜23から取得した検出情報に基づいてデータ解析を行う。他の解析装置60は、対象を他の生産設備21〜23として、上述した解析装置50と同様の処理を行う。
【0027】
上位解析装置70は、クラウドネットワーク40に接続され、取得した情報に基づいて上位データ解析を行う。つまり、上位解析装置70は、クラウドネットワーク40及びそれぞれのフォグネットワーク31,32を介して、生産設備11〜13から情報を取得すると共に、他の生産設備21〜23から情報を取得する。上位解析装置70は、解析装置50,60によるデータ解析に比べて長時間を要する上位データ解析を対象とし、多数の情報を利用する上位データ解析を対象とする。上位解析装置70は、例えば、1週間分、数週間分、1か月分又は数か月分の生産設備11〜13及び他の生産設備21〜23の検出情報を取得して、取得期間に応じたデータ解析を行う。上位データ解析は、何度も繰り返すことにより、学習することもできる。
【0028】
(1−2.生産設備11の構成)
次に、生産設備11の構成の一例について、
図2〜
図4を参照して説明する。本実施形態においては、生産設備11は、例えば研削盤とする。研削盤11の一例として、砥石台114をベッド111に対してトラバース(Z軸方向への移動)を行う砥石台トラバース型研削盤を例に挙げて説明する。ただし、研削盤11は、主軸装置112がベッド111に対してトラバース(Z軸方向への移動)を行うテーブルトラバース型研削盤にも適用できる。
【0029】
研削盤11による生産対象物(工作物)は、例えばクランクシャフトWである。研削盤11による研削部位は、クランクシャフトのクランクジャーナル及びクランクピン等である。
【0030】
研削盤11は、以下のように構成される。設置面にベッド111が固定され、ベッド111には、クランクシャフトWを回転可能に両端支持する主軸装置112及び心押装置113が取り付けられる。クランクシャフトWは、クランクジャーナルを中心に回転するように、主軸装置112及び心押装置113に支持される。主軸装置112は、クランクシャフトWを回転駆動するモータ112aを備える。主軸装置112には、主軸の振動を検出する検出器(振動センサ)112bが取り付けられている。
【0031】
さらに、ベッド111上には、Z軸方向(クランクシャフトWの軸線方向)及びX軸方向(クランクシャフトWの軸線に直交する方向)に移動可能な砥石台114が設けられる。砥石台114は、モータ114aによってZ軸方向に移動し、モータ114bによってX軸方向に移動する。さらに、砥石台114には、砥石台114のZ方向位置を検出する検出器114c、及び、砥石台114のX方向位置を検出する検出器114dが設けられる。検出器114c,114dは、モータ114bの回転などを測定するロータリエンコーダなどであり、リニアスケールなどの直線位置検出器とすることもできる。
【0032】
砥石台114には、クランクピン又はクランクジャーナルを研削する砥石車115が回転可能に設けられる。砥石車115は、モータ115aによって回転駆動される。さらに、砥石台114には、モータ115aの動力などを検出する検出器115bが設けられる。検出器115bは、例えばモータ電力計であるが、モータ115aの電圧や電流を測定する電圧計や電流計などとすることもできる。なお、砥石車115のモータ115aの電力、電圧、電流などは、間接的に、研削抵抗を得ることができる。上記の他に、検出器115bは、主軸装置112や砥石台114に設けられる負荷検出器として、研削抵抗を直接的に得るようにすることもできる。
【0033】
さらに、ベッド111には、クランクシャフトWの研削部位であるクランクピン又はクランクジャーナルの外径を計測する定寸装置116が設けられる。さらに、ベッド111には、環境温度(外気温度)を検出する検出器117が設けられる。さらに、ベッド111には、研削部位にクーラントを供給するためのポンプ118a、クーラントの供給のON/OFFを切り替える弁118b、及び、弁118bの状態を検出する検出器118cを備える。検出器118cは、クーラントの流量計であるが、クーラントの圧力を検出する圧力センサなどとしてもよい。
【0034】
さらに、研削盤11は、CNC装置121、PLC122、異常判定装置123、及び、操作盤124を備える。ここで、異常判定装置123は、CNC装置121又はPLC122の組み込みシステムとすることもでき、さらにパーソナルコンピュータやサーバなどとすることもできる。
【0035】
CNC装置121は、
図3に示すように、主軸装置112及び砥石車115を回転するモータ112a,115aを制御し、且つ、クランクシャフトWに対する砥石車115の相対移動するモータ114a,114bを制御する。CNC装置121は、制御に際して、砥石台114の位置の検出器114c,114d、モータ115aの動力の検出器115bを取得する。
【0036】
PLC122は、定寸装置116からの検出情報を取得する。また、PLC122は、ポンプ118a及び弁118bを制御することで、クーラントの供給を制御する。この制御に際して、PLC122は、弁118bの状態を検出する検出器118cの検出情報を取得する。さらに、PLC122は、環境温度を検出する検出器117の検出情報を取得する。
【0037】
ここで、各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cのサンプリング周期は、全てが同一ではなく、少なくとも一部が異なる。例えば、モータ115aの動力の検出器115bのサンプリング周期は、数msecであり、定寸装置116のサンプリング周期は、数msecであり、弁状態の検出器118cのサンプリング周期は、数十msecであり、温度の検出器117のサンプリング周期は、数十msecである。それぞれのサンプリング周期は、制御方法によって適宜調整される。
【0038】
異常判定装置123は、研削盤11の異常又は生産対象物(工作物)の異常を判定する。異常判定装置123は、判定対象に応じた閾値を記憶しており、各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cによる検出情報と対応する閾値とを比較することで、異常判定を行う。
【0039】
例えば、異常判定装置123は、
図4に示すように、1個の生産対象物(工作物)について、モータ115aの動力の検出器115bによる検出情報と比較するための閾値Th11,Th12を予め記憶している。閾値Th11,Th12は、1個の生産対象物(工作物)について、研削開始からの経過時間に対するモータ115aの動力の挙動に応じて変化するように設定されている。閾値Th11が上限値であり、閾値Th12が下限値である。
【0040】
異常判定装置123は、モータ115aの動力と閾値Th11,Th12とを比較することで、生産対象物の異常を判定する。具体的には、異常判定装置123は、モータ115aの動力が上限閾値Th11を超えた場合又は下限閾値Th12を下回った場合には、生産対象物に研削焼けや形状精度を満たしていない状態が発生しているとして、当該生産対象物は異常であると判定する。なお、砥石車115のモータ115aの動力は、研削抵抗に相当する。そこで、砥石車115のモータ115aの動力に代えて、他の検出方法により検出される研削抵抗を採用することもできる。研削抵抗と閾値との比較により生産対象物に研削焼け等が生じているかの判定については、例えば、特開2013−129027号公報に記載されている。
【0041】
また、異常判定装置123は、CNC装置121及びPLC122による制御対象の駆動装置112a,114a,114b,115a,118a,118bの異常を判定する。例えば、異常判定装置123は、モータ114a,114bの使用状態及び使用履歴などの情報から得られる使用実績値と、予め記憶されている閾値とを比較することで、駆動機構に用いられるボールねじや軸受等の異常の判定を行う。また、異常判定装置123は、弁118bの使用状態及び使用履歴などの情報から得られる使用実績値と、予め記憶されている閾値とを比較することで、弁118bの異常の判定を行う。なお、駆動機構の異常や弁118bの異常は、駆動機構及び弁118bの故障のみならず、寿命、メンテナンスが必要となる状態を含む意味で用いる。
【0042】
ここで、異常判定装置123が記憶する閾値は、対象となる研削盤11に応じて異なる値である。仮に、
図1において、生産設備11と他の生産設備21が同一の対象物を生産する場合であっても、使用環境が異なっていたり、生産対象物の材料配合が異なっていたりする。また、生産設備11,21に個体差がある場合もある。そこで、同一の対象物を生産する場合であっても、生産設備11の閾値と他の生産設備21の閾値は異なる値に設定されることがある。
【0043】
また、上記においては、生産設備11について説明したが、研削盤としての生産設備13,21,23についても同様である。さらに、搬送装置としての生産設備12,22についても、同様に、異常判定装置123を備える。この場合、異常判定装置123は、搬送装置としての生産設備12,22の使用状態及び使用履歴などの情報から得られる使用実績値と、予め記憶されている閾値とを比較することで、例えば搬送路を構成する部品の異常(故障、寿命、メンテナンスが必要となる状態)の判定を行うことができる。なお、異常判定装置123は、
図2に示すように生産設備11内に設けたが、解析装置50内に設けるようにしてもよい。
【0044】
(1−3.解析装置50の構成)
次に、解析装置50の構成について、
図5を参照して説明する。解析装置50は、フォグネットワーク31を介して、生産設備11〜13の各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cに接続されている。解析装置50は、生産設備11〜13の各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報を、フォグネットワーク31を介して取得する。さらに、解析装置50は、生産設備11〜13のCNC装置121及びPLC122にも接続されている。解析装置50は、各種制御パラメータを、フォグネットワーク31を介して取得する。
【0045】
フォグネットワーク31は、クラウドネットワーク40に比べて狭い領域に構築されている。従って、解析装置50は、生産設備11〜13の各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報を、検出時点から早期に取得することができる。
【0046】
解析装置50は、
図5に示すように、解析部51と、表示部52と、入力部53とを備える。解析部51は、生産設備11〜13の各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報を取得する。ここで、解析部51は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cのそれぞれが検出する検出情報の全てを取得する。つまり、各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cのサンプリング周期に関わりなく、解析部51は、検出情報の全てを取得する。ここで、解析部51は、検出情報の全てを取得するため、膨大なデータ量となるが、フォグネットワーク31を介するため、通信時間の遅延は問題にならない。
【0047】
さらに、解析部51は、各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報に加えて、生産設備11〜13における各種制御パラメータを取得する。例えば、生産設備11,13における制御パラメータには、生産対象物としてのクランクシャフトWの形状及び材質、砥石車115の形状及び材質、研削切込量及びクーラントの流量等の研削工程情報が含まれる。
【0048】
解析部51は、取得した検出情報及び各種制御パラメータに基づいてデータ解析を行う。データ解析は、いわゆるデータマイニングである。特に、解析部51は、1つの生産設備11における各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報等のみではなく、複数の生産設備11〜13における各検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報等を取得する。
【0049】
そして、解析部51は、データ解析により生産対象物の異常に関する判定情報を生成することができ、この判定情報を記憶する。例えば、解析部51は、データ解析により生産対象物の研削焼けの有無を判定するための閾値Th11,Th12(
図4に示す)を、判定情報の一つとして生成する。また、解析部51は、データ解析により生産設備11〜13のそれぞれの部品の異常を判定するための閾値を、判定情報の他の一つとして生成する。さらに、解析部51は、一旦判定情報を生成した後において、新たな検出情報を取得することにより判定情報を更新する。
【0050】
表示部52は、解析部51によるデータ解析の結果としての判定情報を表示し、オペレータにデータ解析の結果を確認させることができる。また、表示部52は、解析部51が取得した検出情報及び各種制御パラメータを表示することもできる。例えば、表示部52は、解析部51により得られる研削焼けの有無を判定するための閾値、生産設備11におけるモータ115aの動力の検出器115bによる検出情報、及び、生産設備13におけるモータ115aの動力の検出器115bによる検出情報を重ねて表示する。
【0051】
入力部53は、オペレータによる判定情報等の入力を受け付ける。入力部53は、生産設備11〜13のそれぞれに応じた判定情報を設定できる。解析部51は、生産設備11〜13のそれぞれに応じた判定情報を得ることができるが、オペレータは、得られた判定情報を参照しながらさらに任意に編集することができる。編集された判定情報は、解析部51に記憶される。
【0052】
そして、生産設備11〜13は、解析部51に記憶された判定情報を、フォグネットワーク31を介して取得し記憶する。生産設備11〜13の異常判定装置123は、取得した判定情報に基づいて、生産設備11〜13の異常又は生産対象物の異常を判定する。
【0053】
(1−4.異常判定装置123、解析装置50,60及び上位解析装置70の詳細処理)
次に、異常判定装置123、解析装置50,60及び上位解析装置70の詳細処理について、
図6を参照して説明する。解析装置50,60及び上位解析装置70は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報を取得して、各種の判定情報を生成する。ただし、説明の容易化のため、以下では、検出器115bの検出情報を用いる場合の処理を例にあげて説明する。
【0054】
検出器115bが、生産対象物(工作物)が研削されるたびに、モータ115aの動力を検出する(S1)。続いて、異常判定装置123は、1個分の生産対象物についてのデータを収集する(S2)。このデータは、例えば、
図4の実線で示す挙動である。そして、異常判定装置123に既に判定情報としての閾値Th11,Th12が記憶されていれば、異常判定装置123は、異常判定を行う(S3)。つまり、異常判定装置123は、1個分の生産対象物についてのデータと、既に記憶されている閾値Th11,Th12とを比較することにより、当該生産対象物が異常であるか否かを判定する。
【0055】
さらに、異常判定装置123は、複数個分の生産対象物のデータを収集する(S4)。異常判定装置123は、例えば、1日分の生産対象物のデータを収集する。異常判定装置123が収集した複数個分の生産対象物のデータは、例えば1日に1回、フォグネットワーク31,32を介して、解析装置50,60に送信される。そして、解析装置50,60は、例えば1日に1回、複数個分の生産対象物について、検出器115bの検出情報を取得する(S5)。ここで、解析装置50,60は、検出器115bの検出情報の全てを取得する。
【0056】
解析装置50,60は、複数個分の生産対象物についての検出器115bの検出情報に基づいて、データ解析を行う(S6)。そして、解析装置50,60は、データ解析により、判定情報としての閾値Th11,Th12を生成する(S7)。さらに、解析装置50,60は、新たに検出器115bの検出情報を取得した場合には、再びデータ解析を行うことにより、判定情報としての閾値Th11,Th12を更新する(S7)。そうすると、解析装置50,60は、フォグネットワーク31,32を介して、判定情報としての閾値Th11,Th12を異常判定装置123に送信する。そして、異常判定装置123は、判定情報としての閾値Th11,Th12を逐次更新しながら記憶する(S8)。
【0057】
ところで、解析装置50,60は、判定情報としての閾値Th11,Th12を生成するためのデータ解析と並行して、取得した検出器115bの検出情報のうち一部の情報のみを抽出する(S9)。例えば、解析装置50,60は、
図4において、定常加工を行っているときのモータ115aの動力Pを抽出する。解析装置50,60は、抽出した情報を、クラウドネットワーク40を介して、上位解析装置70に送信される。当該送信は、例えば、1日に1回でもよいし、1月に1回でもよい。
【0058】
そうすると、上位解析装置70は、クラウドネットワーク40を介して、検出器115bの検出情報の一部を取得することになる(S10)。また、上位解析装置70は、必要に応じて、解析装置50,60から、各種制御パラメータを取得する。各種制御パラメータは、検出情報に比べてデータ量が小さい。
【0059】
クラウドネットワーク40におけるデータ通信量は、フォグネットワーク31,32におけるデータ通信量に比べて、格段に少ない。解析装置50及び他の解析装置60と上位解析装置70とが遠方に位置していたとしても、クラウドネットワーク40を介する通信速度の遅延の問題は生じない。
【0060】
上位解析装置70は、解析装置50,60から取得した検出情報の一部及び各種制御パラメータに基づいて上位データ解析を行う(S11)。上位データ解析は、いわゆるデータマイニングである。上位解析装置70は、異なる領域に設置される生産設備11〜13と生産設備21〜23のそれぞれの情報を用いて上位データ解析を行う。従って、上位解析装置70は、多数の情報を利用する上位データ解析を行うことができる。
【0061】
生産設備11〜13と他の生産設備21〜23の設置場所が異なるのであれば、両者の環境温度が異なることがある。例えば、上位解析装置70は、環境温度の影響をより詳細に上位データ解析することができる。
【0062】
解析装置50,60は、クラウドネットワーク40を介して、上位解析装置70による上位データ解析の結果を取得することができる。従って、解析装置50,60は、自身のデータ解析によって生成した判定情報としての閾値Th11,Th12について、上位データ解析の結果を参照して更新する(S7)。そうすると、解析装置50,60は、フォグネットワーク31,32を介して、更新された判定情報としての閾値Th11,Th12を異常判定装置123に送信する。このようにして、異常判定装置123は、上位データ解析の結果を考慮した判定情報としての閾値Th11,Th12を逐次更新しながら記憶する(S8)。
【0063】
ここで、解析装置50の表示部52は、解析装置50自身のデータ解析の結果としての判定情報を表示すると共に、上位解析装置70の上位データ解析の結果としての判定情報を重ねて表示することができる。オペレータは、両者の判定情報を確認しながら、入力部53により生産設備11〜13で使用する判定情報の設定を行うことができる。なお、解析装置60においても同様である。
【0064】
解析装置50,60は、収集したデータの一部又は全部を上位解析装置70へ送信可能である。解析装置50,60が送信するデータの範囲(値の大きさや時間などで設定される範囲)は、解析装置50,60自身、又は、オペレータの操作との協働によって、生産設備11〜13の近いところで決めることができる。
【0065】
<2.第二実施形態>
第二実施形態における、異常判定装置123、解析装置50,60及び上位解析装置70の詳細処理について、
図7〜
図12を参照して説明する。第二実施形態においては、検出器112bの検出情報を用いる場合を例にあげて説明する。
【0066】
図7に示すように、検出器112bが、生産対象物(工作物)が研削されるたびに、主軸の振動を検出する(S21)。続いて、異常判定装置123は、1個分の生産対象物についてのデータを収集する(S22)。続いて、異常判定装置123は、1個分の生産対象物についての振動データに対して周波数解析(本発明の所定処理に相当する)を行う(S23)。周波数解析の結果は、
図8に示す。そして、異常判定装置123は、周波数解析によって得られる振動データの所定周波数帯のピーク値(本発明の処理後データに相当する)を取得する。
【0067】
ここで、
図8に示すように、周波数解析の結果は、複数の周波数帯において、ピーク値(
図8の丸印で囲む)を有する。これらの周波数帯は、主軸の振動原因に対応する。例えば、主軸装置112の軸受の外輪に損傷がある場合、内輪に損傷がある場合、転動体に損傷がある場合などに応じて、周波数帯が異なる。そこで、異常判定装置123は、振動原因毎に対応する周波数帯のピーク値を取得する。
【0068】
そして、異常判定装置123は、既に判定情報のパターンとしての閾値Th21,Th22が記憶されている場合には、異常判定装置123は、異常判定を行う(S24)。判定情報のパターンとしての閾値Th21,Th22は、例えば、
図9に示すように、1日の時間帯(規定パラメータ)に対する振動データの周波数解析のピーク値(評価パラメータ)のパターンである。ここで、1日においても、生産設備11〜13を起動してからの経過時間や、環境温度などによって、振動の大きさが異なる。そこで、
図9に示すように、判定情報のパターンとしての閾値Th21,Th22は、横軸を1日の時間帯(規定パラメータ)とし、縦軸を振動データの周波数解析のピーク値(評価パラメータ)として表す。
【0069】
つまり、異常判定装置123は、現在取得された実際の時間帯(規定パラメータ)と、現在取得された実際のピーク値(評価パラメータ)と、記憶されている判定情報のパターンとに基づいて、異常の判定を行う。ここで、
図9において、マーク■が、現在取得された実際の時間帯に対するピーク値である。マーク■は、上限の閾値Th21以下であり、下限の閾値Th22以上であるため、正常であると判定される。
【0070】
また、異常判定装置123は、他の判定情報のパターンとしての閾値Th31,Th32は、例えば、
図10に示すように、1年の時期(規定パラメータ)に対する振動データの周波数解析のピーク値(評価パラメータ)のパターンを記憶している。ここで、1年においても、環境温度の違いの影響によって、振動の大きさが異なる。そこで、
図10に示すように、他の判定情報のパターンとしての閾値Th31,Th32は、横軸を1年の時期(規定パラメータ)とし、縦軸を振動データの周波数解析のピーク値(評価パラメータ)として表す。
【0071】
つまり、異常判定装置123は、現在取得された実際の時期(規定パラメータ)と、現在取得された実際のピーク値(評価パラメータ)と、記憶されている判定情報のパターンとに基づいて、異常の判定を行う。ここで、
図10において、マーク▲が、現在取得された実際の時期に対するピーク値である。マーク▲は、上限の閾値Th31以下であり、下限の閾値Th32以上であるため、正常であると判定される。
【0072】
さらに、異常判定装置123は、複数個分の生産対象物のピーク値(処理後データ)を収集する(S25)。異常判定装置123は、例えば、1日分の生産対象物のピーク値を収集する。異常判定装置123が収集した複数個分の生産対象物のピーク値は、例えば1日に1回、フォグネットワーク31,32を介して、解析装置50,60に送信される。そして、解析装置50,60は、例えば1日に1回、複数個分の生産対象物について、振動データの周波数解析のピーク値を取得する(S26)。ここで、解析装置50,60は、検出器112bの検出情報に比べて、遥かに小さなデータ量のピーク値を取得する。
【0073】
解析装置50,60は、複数個分の生産対象物についてのピーク値に基づいて、データ解析を行う(S27)。例えば、2日分のピーク値の分布は、
図11に示すようになる。そして、解析装置50,60は、複数日分のピーク値から、正常傾向パターンを解析する。正常傾向パターンとは、分布されたデータの近似曲線(例えば最小二乗近似曲線)としてもよいし、分布されたデータ全てを含む幅を持った曲線としてもよい。そして、解析装置50,60は、正常傾向パターンに基づいて、
図11の破線にて示すように、判定情報のパターンとしての閾値Th21,Th22を生成する(S28)。
【0074】
さらに、解析装置50,60は、新たに検出器112bの検出情報を取得した場合には、再びデータ解析を行うことにより、判定情報のパターンとしての閾値Th21,Th22を更新する(S28)。そうすると、解析装置50,60は、フォグネットワーク31,32を介して、判定情報のパターンとしての閾値Th21,Th22を異常判定装置123に送信する。そして、異常判定装置123は、判定情報のパターンとしての閾値Th21,Th22を逐次更新しながら記憶する(S29)。
【0075】
また、解析装置50,60は、1年分の生産対象物についてのピーク値に基づいて、データ解析を行う(S27)。例えば、1年分のピーク値の分布は、
図12に示すようになる。そして、解析装置50,60は、1年分のピーク値から、正常傾向パターンを解析する。そして、解析装置50,60は、正常傾向パターンに基づいて、
図12の破線にて示すように、判定情報のパターンとしての閾値Th31,Th32を生成する(S28)。
【0076】
この場合も同様に、解析装置50,60は、新たに検出器112bの検出情報を取得した場合には、再びデータ解析を行うことにより、判定情報のパターンとしての閾値Th31,Th32を更新する(S28)。そうすると、解析装置50,60は、フォグネットワーク31,32を介して、判定情報のパターンとしての閾値Th31,Th32を異常判定装置123に送信する。そして、異常判定装置123は、判定情報のパターンとしての閾値Th31,Th32を逐次更新しながら記憶する(S29)。
【0077】
ところで、解析装置50,60は、判定情報としての閾値Th21,Th22,Th31,Th32を生成するためのデータ解析と並行して、取得したピーク値のうち一部の情報のみを抽出する(S30)。例えば、解析装置50,60は、全ての生産対象物のピーク値ではなく、一部の生産対象物のピーク値を抽出する。解析装置50,60は、例えば、同一ロットの中から1個の生産対象物のピーク値を抽出する。解析装置50,60は、抽出した情報を、クラウドネットワーク40を介して、上位解析装置70に送信される。当該送信は、例えば、1週間に1回でもよいし、1月に1回でもよい。
【0078】
そうすると、上位解析装置70は、クラウドネットワーク40を介して、ピーク値の一部の情報を取得することになる(S31)。また、上位解析装置70は、必要に応じて、解析装置50,60から、各種制御パラメータを取得する。各種制御パラメータは、検出情報に比べてデータ量が小さい。
【0079】
上位解析装置70は、解析装置50,60から取得したピーク値の一部及び各種制御パラメータに基づいて上位データ解析を行う(S32)。上位データ解析は、いわゆるデータマイニングである。上位解析装置70は、異なる領域に設置される生産設備11〜13と生産設備21〜23のそれぞれの情報を用いて上位データ解析を行う。従って、上位解析装置70は、多数の情報を利用する上位データ解析を行うことができる。
【0080】
解析装置50,60は、クラウドネットワーク40を介して、上位解析装置70による上位データ解析の結果を取得することができる。従って、解析装置50,60は、自身のデータ解析によって生成した判定情報のパターンとしての閾値Th21,Th22,Th31,Th32について、上位データ解析の結果を参照して更新する(S28)。そうすると、解析装置50,60は、フォグネットワーク31,32を介して、更新された判定情報としての閾値Th21,Th22,Th31,Th32を異常判定装置123に送信する。このようにして、異常判定装置123は、上位データ解析の結果を考慮した判定情報としての閾値Th21,Th22,Th31,Th32を逐次更新しながら記憶する(S29)。
【0081】
<3.第三実施形態>
第三実施形態における、異常判定装置123、解析装置50,60及び上位解析装置70の詳細処理について、
図13〜
図15を参照して説明する。第三実施形態においては、検出器115b,117の検出情報を用いる場合を例にあげて説明する。
【0082】
図13に示すように、検出器115bが、生産対象物(工作物)が研削されるたびに、モータ115aの動力の電流値を検出する(S41)。また、検出器117が、生産対象物が研削されるたびに、環境温度を検出する(S42)。続いて、異常判定装置123は、1個分の生産対象物についてのそれぞれのデータを収集する(S43)。
【0083】
続いて、異常判定装置123は、1個分の生産対象物についてのモータ115aの動力データの中から、定常加工を行っているときのデータを抽出する(本発明の所定処理に相当する)(S44)。例えば、
図4において、定常加工を行っているときのモータ115aの動力の電流値はPである。そして、異常判定装置123は、抽出処理により得られた動力の電流値Pのデータ及び環境温度のデータ(本発明の処理後データに相当する)を取得する。
【0084】
そして、異常判定装置123は、既に判定情報のパターンとしての閾値Th41,Th42が記憶されている場合には、異常判定装置123は、異常判定を行う(S45)。判定情報のパターンとしての閾値Th41,Th42は、例えば、
図14に示すように、環境温度(規定パラメータ)に対するモータ115aの動力の電流値(評価パラメータ)のパターンである。ここで、環境温度によって、モータ115aの動力の電流値は変化する。そこで、
図14に示すように、判定情報のパターンとしての閾値Th41,Th42は、横軸を環境温度(規定パラメータ)とし、縦軸をモータ115aの動力の電流値P(評価パラメータ)として表す。
【0085】
つまり、異常判定装置123は、現在取得された実際の環境温度(規定パラメータ)と、現在取得された実際の動力の電流値P(評価パラメータ)と、記憶されている判定情報のパターンとに基づいて、異常の判定を行う。ここで、
図14において、マーク■が、現在取得された実際の環境温度に対する動力の電流値Pである。マーク■は、上限の閾値Th41以下であり、下限の閾値Th42以上であるため、正常であると判定される。
【0086】
さらに、異常判定装置123は、複数個分の動力の電流値Pのデータ及び環境温度データ(処理後データ)を収集する(S46)。異常判定装置123は、例えば、1日分の生産対象物の動力の電流値Pのデータ及び環境温度のデータを収集する。異常判定装置123が収集した複数個分のデータは、例えば1日に1回、フォグネットワーク31,32を介して、解析装置50,60に送信される。そして、解析装置50,60は、例えば1日に1回、複数個分の生産対象物について、動力の電流値Pのデータ及び環境温度のデータを取得する(S47)。ここで、解析装置50,60は、検出器115b,117の全ての検出情報に比べて、遥かに小さなデータ量のデータを取得する。
【0087】
解析装置50,60は、複数個分の生産対象物についてのデータに基づいて、データ解析を行う(S48)。例えば、環境温度が異なる複数日分のデータの分布は、
図15に示すようになる。そして、解析装置50,60は、複数日分のデータから、正常傾向パターンを解析する。そして、解析装置50,60は、正常傾向パターンに基づいて、
図14,
図15の破線にて示すように、判定情報のパターンとしての閾値Th41,Th42を生成する(S49)。
【0088】
さらに、解析装置50,60は、新たに検出器115b,117の検出情報を取得した場合には、再びデータ解析を行うことにより、判定情報のパターンとしての閾値Th41,Th42を更新する(S49)。そうすると、解析装置50,60は、フォグネットワーク31,32を介して、判定情報のパターンとしての閾値Th41,Th42を異常判定装置123に送信する。そして、異常判定装置123は、判定情報のパターンとしての閾値Th41,Th42を逐次更新しながら記憶する(S50)。
【0089】
ところで、解析装置50,60は、判定情報としての閾値Th41,Th42を生成するためのデータ解析と並行して、取得したデータのうち一部の情報のみを抽出する(S51)。例えば、解析装置50,60は、全ての生産対象物のデータではなく、一部の生産対象物のデータを抽出する。解析装置50,60は、例えば、同一ロットの中から1個の生産対象物のデータを抽出する。解析装置50,60は、抽出した情報を、クラウドネットワーク40を介して、上位解析装置70に送信される。当該送信は、例えば、1週間に1回でもよいし、1月に1回でもよい。
【0090】
そうすると、上位解析装置70は、クラウドネットワーク40を介して、データの一部の情報を取得することになる(S52)。また、上位解析装置70は、必要に応じて、解析装置50,60から、各種制御パラメータを取得する。各種制御パラメータは、検出情報に比べてデータ量が小さい。
【0091】
上位解析装置70は、解析装置50,60から取得したデータの一部及び各種制御パラメータに基づいて上位データ解析を行う(S53)。上位データ解析は、いわゆるデータマイニングである。上位解析装置70は、異なる領域に設置される生産設備11〜13と生産設備21〜23のそれぞれの情報を用いて上位データ解析を行う。従って、上位解析装置70は、多数の情報を利用する上位データ解析を行うことができる。
【0092】
解析装置50,60は、クラウドネットワーク40を介して、上位解析装置70による上位データ解析の結果を取得することができる。従って、解析装置50,60は、自身のデータ解析によって生成した判定情報のパターンとしての閾値Th41,Th42について、上位データ解析の結果を参照して更新する(S49)。そうすると、解析装置50,60は、フォグネットワーク31,32を介して、更新された判定情報としての閾値Th41,Th42を異常判定装置123に送信する。このようにして、異常判定装置123は、上位データ解析の結果を考慮した判定情報としての閾値Th41,Th42を逐次更新しながら記憶する(S50)。
【0093】
<4.実施形態の効果>
第一実施形態から第三実施形態において、異常解析システム1は、生産対象物を生産する設備であって、1又は複数の検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cをそれぞれ備える複数の生産設備11〜13と、複数の生産設備11〜13に接続され、フォグコンピューティングを構築する所定領域内に設置されたフォグネットワーク(第一ネットワークに相当)31と、フォグネットワークに31接続され、フォグネットワーク31を介して取得した検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報に基づいてデータ解析を行い、且つ、データ解析の結果に基づいて複数の生産設備11〜13のそれぞれの異常又は生産対象物の異常に関する判定情報を生成する解析装置50とを備える。複数の生産設備11〜13のそれぞれは、解析装置50にて生成された判定情報に基づいて複数の生産設備11〜13のそれぞれの異常又は生産対象物の異常の判定を行う。
【0094】
複数の生産設備11〜13における検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cと解析装置50とは、フォグコンピューティングを構築する所定領域内に設置されたフォグネットワーク31を介して接続されている。フォグコンピューティングとは、クラウドコンピューティングと比較して、狭い領域でのネットワーク接続されたシステムである。つまり、フォグコンピューティングを構築するフォグネットワーク31は、クラウドコンピューティングを構築する領域より狭い所定領域内に設置されているネットワークである。そのため、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cと解析装置50との間におけるデータ通信において、通信渋滞の発生は抑制される。また、フォグネットワーク31は狭い所定領域内に構築されているため、生産設備11〜13と解析装置50との間の通信時間を短くすることができる。従って、解析装置50は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cによる検出情報を高速で受信できる。
【0095】
解析装置50は、複数の生産設備11〜13における検出情報を早期に取得でき、データ解析を行うことができるため、解析装置50による結果を早期に生産設備11〜13にフィードバックすることができる。解析結果を生産設備11〜13に早期にフィードバックできるため、生産対象物の異常発生をより早期に且つ確実に抑制できる。
【0096】
また、第一実施形態においては、解析装置50は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報の全てをフォグネットワーク31を介して取得し、検出情報の全てに基づいてデータ解析を行う。特に、複数の検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cは、それぞれ異なるサンプリング周期で検出情報を取得し、解析装置50は、複数の検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cのそれぞれにおける検出情報の全てを取得し、検出情報の全てに基づいてデータ解析を行う。フォグネットワーク31にて、多量のデータ通信を行ったとしても、通信遅延の問題は生じない。そこで、解析装置50は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報の全てを取得するようにしている。従って、解析装置50は、高精度に且つリアルタイムにデータ解析を行うことができる。
【0097】
また、第二実施形態及び第三実施形態においては、異常判定装置123は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報に所定処理を施して処理後データを生成すると共に、判定情報に基づいて異常の判定を行っている。そして、解析装置50,60は、処理後データをフォグネットワーク31を介して取得し、処理後データに基づいてデータ解析を行い、データ解析の結果に基づいて判定情報を更新する。
【0098】
異常判定装置123が異常判定を行っており、解析装置50,60が判定情報の更新を行っている。ここで、解析装置50,60は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報に所定処理を施した処理後データを用いている。つまり、解析装置50,60は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報そのもの全てに基づいて、判定情報を更新している訳ではない。従って、解析装置50,60は、判定情報を更新するに際して、検出情報そのもの全てを用いる場合に比べて高速に処理することができる。以上より、異常解析システム1は、異常判定をしながら、判定情報の更新を確実に行うことができる。
【0099】
特に、異常判定装置123による所定処理が施された処理後データのデータ容量は、処理前の検出情報に比べて小さくなるようにされている。そのため、フォグネットワーク31の通信量を少なくすることができるため、解析装置50,60は、例えば1日分のデータを取得するための時間を短時間にすることができる。その結果、解析装置50,60は、解析を行う時間に十分な時間を確保できる。
【0100】
また、第二実施形態において、異常判定装置123は、生成した処理後データと判定情報とに基づいて異常の判定を行い、解析装置50,60は、異常判定装置123で判定に用いた処理後データに基づいて判定情報を更新している。つまり、処理後データは、異常判定装置123及び解析装置50,60にて共用される。
【0101】
特に、第二実施形態において、検出器112bは、振動検出センサであり、異常判定装置123による所定処理は、検出器112bの検出情報に対する周波数解析としている。従って、異常判定装置123は、解析装置50,60にて用いるための専用のデータを生成するのではなく、自身で用いるデータを生成するだけとなる。従って、異常判定装置123は、専用の処理を必要としないため、異常判定装置123自身の処理の高速化を図りつつ、フォグネットワーク31の通信量の低減効果を図ることができる。
【0102】
また、第三実施形態において、異常判定装置123による所定処理は、検出器115b,117の検出情報から特定情報を抽出する処理としている。この場合も、異常判定装置123は、解析装置50,60にて用いるための専用のデータを生成するのではなく、自身で用いるデータを生成するだけとなる。従って、異常判定装置123は、専用の処理を必要としないため、異常判定装置123自身の処理の高速化を図りつつ、フォグネットワーク31の通信量の低減効果を図ることができる。
【0103】
また、第二実施形態及び第三実施形態において、解析装置50,60は、データ解析により、規定パラメータに対する評価パラメータについての正常傾向パターンを解析し、正常傾向パターンに基づいて、規定パラメータに対する評価パラメータについての判定情報のパターンを更新している。そして、異常判定装置123は、実際の規定パラメータと実際の評価パラメータを取得し、判定情報のパターンと実際の規定パラメータと実際の評価パラメータとに基づいて、異常の判定を行っている。
【0104】
例えば、第二実施形態においては、第一例として、規定パラメータは、1日における時間帯であり、評価パラメータは、1日における時間帯に応じて変化するパラメータとしている。また、第二実施形態において、第二例として、規定パラメータは、1年における時期であり、評価パラメータは、1年における時期に応じて変化するパラメータとしている。
【0105】
生産設備11〜13の構成部品の状態又は生産対象物の状態は、例えば生産設備11〜13を起動してからの経過時間や環境温度などによって変化する。環境温度は、1日における時間帯によって、又は、1年における時期によって変化する。また、生産設備11〜13を起動してからの経過時間は、1日に1回起動するような場合には、1日における時間帯によって変化する。そこで、規定パラメータ及び評価パラメータを上記のように設定することで、確実に、生産設備11〜13の状態又は生産対象物の状態を評価することができる。
【0106】
特に、検出器112bは、生産設備11〜13又は生産対象物の振動を検出するものとし、評価パラメータは、振動における所定周波数帯のピーク値としている。振動の振幅は、例えば生産設備11〜13を起動してからの経過時間や環境温度などによって変化するパラメータである。つまり、ピーク値は、生産設備11〜13を起動してからの経過時間や環境温度などによって変化するパラメータである。そこで、評価パラメータをピーク値とすることで、確実に、生産設備11〜13の状態又は生産対象物の状態を評価することができる。
【0107】
また、第三実施形態においては、規定パラメータは、環境温度であり、評価パラメータは、環境温度に応じて変化するパラメータとしている。この場合、環境温度そのものを規定パラメータとすることで、環境温度に応じて変化するパラメータを評価することにより、生産設備11〜13の状態又は生産対象物の状態を評価することができる。
【0108】
また、第二実施形態及び第三実施形態において、解析装置50,60は、異常判定装置123による所定処理が複数回行われた後に、異常判定装置123による複数回分の処理結果をまとめて取得している。つまり、解析装置50,60は、異常判定装置123が検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cから検出情報を取得するたびに、異常判定装置123からデータを取得する訳ではない。
【0109】
ここで、第二実施形態及び第三実施形態においては、異常判定装置123は、検出情報に対して所定処理を施しており、解析装置50,60は、所定処理によりデータ量を小さくされた処理後データを取得している。従って、解析装置50,60が、複数回分の結果をまとめて取得したとしても、フォグネットワーク31の通信量は十分に小さく済む。
【0110】
また、第一実施形態から第三実施形態において、フォグネットワーク31が構築される所定領域は、複数の生産設備11〜13の何れかが設置されている建物と同一の建物内、又は、生産設備11〜13が設置されている建物と近隣の建物内である。従って、確実に、生産設備11〜13と解析装置50とを、フォグネットワーク31により構成できる。
【0111】
また、第一実施形態から第三実施形態において、生産設備11〜13に近いところで解析がなされるので、オペレータは、生産対象物や生産設備11〜13の状態を確認しながら異常や正常などを判定する値(判定情報)を決めることが可能となる。また、生産設備11〜13又は生産対象物に突発的な異常が発生したときに、生産設備11〜13の近いところで解析がなされるので、オペレータと解析装置50との協働によって、データの解析が即時に行うことができ、その結果を対象の生産設備11〜13に対する判定情報へ即座に反映することも可能となる。また、解析装置50の解析結果によって異常判定又は異常判定の前段階(異常ではないが異常に近い状態)において、生産設備11〜13又は解析装置50は、オペレータに異常状態を伝えたり、自動で生産設備11〜13の動作を止めたりすることが可能となる。
【0112】
また、第一実施形態から第三実施形態において、解析装置50は、データ解析の結果を表示する表示部52と、オペレータによる判定情報の入力を受け付ける入力部53とを備える。オペレータにより、手動で、生産設備11〜13に対する判定情報の設定が可能となる。なお、オペレータによる手動設定に限られず、システムによる自動設定も可能である。
【0113】
また、第一実施形態から第三実施形態において、異常解析システム1は、フォグネットワーク31に直接接続されておらず、他の検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cを備える他の生産設備21〜23と、複数の生産設備11〜13及び他の生産設備21〜23に接続され、フォグネットワーク31の所定領域より広域のクラウドコンピューティングを構築するクラウドネットワーク40(第二ネットワークに相当)と、クラウドネットワーク40に接続され、クラウドネットワーク40を介して取得した検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報及び他の検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報に基づいて上位データ解析を行う上位解析装置70とを備える。
【0114】
解析装置50は、解析装置50によるデータ解析の結果及び上位解析装置70による上位データ解析の結果に基づいて、判定情報を決定し記憶することもできる。従って、生産設備11〜13では得られない情報を用いた上位データ解析を行い、生産設備11〜13にフィードバックすることで、より良い判定情報を得ることができる。
【0115】
また、第一実施形態から第三実施形態において、解析装置50は、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報の全てを取得し、且つ、データ解析を行う。一方、上位解析装置70は、生産設備11〜13の検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの検出情報の一部及び他の生産設備21〜23の他の検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118c器の検出情報の一部を取得し、且つ、上位データ解析を行う。上位解析装置70は、高速な処理を要求されるものではないとしても、仮に、検出器112b,114c,114d,115b,116,117,118cの全てをクラウドネットワーク40を介して上位解析装置70に送信したとすると、クラウドネットワーク40の通信遅延の影響を他者へ与えるおそれがある。そこで、上記のように、クラウドネットワーク40のデータ通信量を検出情報の一部となり、クラウドネットワーク40における通信遅延の影響を与えることを抑制できる。
【0116】
また、第一実施形態から第三実施形態において、複数の生産設備11〜13は、生産対象物を研削する研削盤を含み、判定情報は、例えば、生産対象物の研削異常に関する判定情報である。これにより、研削盤を含むシステムにおいて、確実に研削焼けなどの研削異常の発生を抑制できる。
【0117】
また、第一実施形態から第三実施形態において、判定情報は、複数の生産設備11〜13の何れかの部品故障、部品寿命又は部品のメンテナンス要否に関する判定情報としてもよい。これにより、生産設備11〜13の部品故障の予測をすることができ、事前の交換部品の準備をすることができる。また、これまでは、部品の使用期間に基づいて部品交換を行うことが多かったが、各部品の寿命をより高精度に把握した上で、部品交換をできるため、部品の使用期間を長くすることができる。また、部品の性能が悪化する前に、適切な時期に部品のメンテナンスを行うことができる。これにより、部品の使用期間を長くすることができる。