特許第6828302号(P6828302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828302
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】シーラントタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20210128BHJP
   B29C 73/16 20060101ALI20210128BHJP
   B60C 19/12 20060101ALN20210128BHJP
【FI】
   B29D30/06
   B29C73/16
   !B60C19/12 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-160762(P2016-160762)
(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2018-27655(P2018-27655A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】宗友 直樹
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−217953(JP,A)
【文献】 特開昭58−159864(JP,A)
【文献】 特開2006−103143(JP,A)
【文献】 特開2016−078440(JP,A)
【文献】 特開昭53−111378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/06
B29C 73/16
B60C 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内周面にパンク防止用のシーラント剤の層を形成したシーラントタイヤの製造方法であって、
作業位置に配置されたタイヤの内周面に、シーラント剤排出装置から配管をへてノズルから吐出するシーラント剤を粘着させてシーラント剤の層を形成するシーラント層形成工程と、
前記シーラント層形成工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t、又は排出工程がある場合における該排出工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間tを計測する時間計測工程と、
前記作業位置にて次のタイヤにシーラント層形成工程を開始するとき、前記経過時間tを、予め設定した基準時間t0と比較する時間比較工程とを具えるとともに、
前記時間比較工程において、前記経過時間tが前記基準時間t0を越えたとき、前記シーラント層形成工程の開始前に、前記配管内のシーラント剤を前記ノズルから廃液として排出する前記排出工程を行うことを特徴とするシーラントタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記シーラント層形成工程の後、シーラント剤の層が形成されたタイヤを、前記作業位置以外の位置で次のタイヤに交換するタイヤ交換工程が行われることを特徴とする請求項1記載のシーラントタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記時間比較工程において、前記経過時間tが前記基準時間t0を越えたとき、前記排出工程の前に、前記タイヤを前記作業位置から後退させた後、前記廃液が排出される収容容器を収容位置に移動させる工程を含む、請求項1又は2に記載のシーラントタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記シーラント剤は、前記シーラント剤排出装置から第1の配管をへて第1のノズルから、又は第2の配管をへて第2のノズルから切り替えられて吐出されるとともに、
前記シーラント層形成工程は、
第1の作業位置に配置されたタイヤの内周面に、前記第1のノズルから吐出されるシーラント剤を粘着させてシーラント剤の層を形成する第1のシーラント層形成工程を含み、
前記時間計測工程は、
前記第1のシーラント層形成工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t1、又は第1の排出工程がある場合における該第1の排出工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t1を計測する第1の時間計測工程を含み、
前記時間比較工程は、
前記第1の作業位置にて次のタイヤに第1のシーラント層形成工程を開始するとき、前記第1の経過時間t1を前記基準時間t0と比較する第1の時間比較工程を含み、
前記第1の経過時間t1が基準時間t0を越えた場合、前記第1のシーラント層形成工程の開始前に、前記第1の配管内のシーラント剤を前記第1のノズルから廃液として排出する前記第1の排出工程と、この第1の排出工程に引き続いて前記第2の配管内のシーラント剤を前記第2のノズルから廃液として排出する第2の排出工程とを行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシーラントタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記シーラント剤は、前記シーラント剤排出装置から第1の配管をへて第1のノズルから、又は第2の配管をへて第2のノズルから切り替えられて吐出されるとともに、
前記シーラント層形成工程は、
第2の作業位置に配置されたタイヤの内周面に、前記第2のノズルから吐出されるシーラント剤を粘着させてシーラント剤の層を形成する第2のシーラント層形成工程を含み、
前記時間計測工程は、
前記第2のシーラント層形成工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t2、又は第2の排出工程がある場合における該第2の排出工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t2を計測する第2の時間計測工程を含み、
前記時間比較工程は、
前記第2の作業位置にて次のタイヤに第2のシーラント層形成工程を開始するとき、前記第2の経過時間t2を前記基準時間t0と比較する第2の時間比較工程を含み、
前記第2の経過時間t2が基準時間t0を越えた場合、前記第2のシーラント層形成工程の開始前に、前記第2の排出工程と、この第2の排出工程に引き続いて前記第1の排出工程を行うことを特徴とする請求項4に記載のシーラントタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内周面に、パンク防止用のシーラント剤の層を形成したシーラントタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1、2には、タイヤの内周面にシーラント剤の層が形成されたシーラントタイヤの製造方法が提案されている。この製造方法では、シーラント剤排出装置のノズルから吐出されるシーラント剤を、回転するタイヤの内周面に螺旋状に巻回しながら粘着させ、これによってシーラント剤の層を形成している。
【0003】
しかしシーラント剤は、液状ゴム、架橋剤、及び架橋助剤等を含有しており、時間経過とともにその物性が急激に変化する。そのため、タイヤ交換に際してシーラント剤の吐出を中断する場合、この中断時間が長くなるときには、ノズルに通じる配管内でシーラント剤の物性が変化してしまう。その結果、交換された次のタイヤに、シーラント剤の層を形成するとき、タイヤの内周面にシーラント剤が十分に粘着しなくなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−078441号公報
【特許文献2】特開2016−078440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、交換された次のタイヤにシーラント剤の層を形成するとき、物性変化に伴うシーラント剤の粘着不良を抑制でき、シーラントタイヤを品質良くかつ効率よく形成しうるシーラントタイヤの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤの内周面にパンク防止用のシーラント剤の層を形成したシーラントタイヤの製造方法であって、
作業位置に配置されたタイヤの内周面に、シーラント剤排出装置から配管をへてノズルから吐出するシーラント剤を粘着させてシーラント剤の層を形成するシーラント層形成工程と、
前記シーラント層形成工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t、又は排出工程がある場合における該排出工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間tを計測する時間計測工程と、
前記作業位置にて次のタイヤにシーラント層形成工程を開始するとき、前記経過時間tを、予め設定した基準時間t0と比較する時間比較工程とを具えるとともに、
前記時間比較工程において、前記経過時間tが前記基準時間t0を越えたとき、前記シーラント層形成工程の開始前に、前記配管内のシーラント剤を前記ノズルから廃液として排出する前記排出工程を行うことを特徴としている。
【0007】
本発明に係るシーラントタイヤの製造方法では、前記シーラント層形成工程の後、シーラント剤の層が形成されたタイヤを、前記作業位置以外の位置で次のタイヤに交換するタイヤ交換工程が行われることが好ましい。
【0008】
本発明に係るシーラントタイヤの製造方法では、前記シーラント剤は、前記シーラント剤排出装置から第1の配管をへて第1のノズルから、又は第2の配管をへて第2のノズルから切り替えられて吐出されるとともに、
前記シーラント層形成工程は、
第1の作業位置に配置されたタイヤの内周面に、前記第1のノズルから吐出されるシーラント剤を粘着させてシーラント剤の層を形成する第1のシーラント層形成工程と、
第2の作業位置に配置されたタイヤの内周面に、前記第2のノズルから吐出されるシーラント剤を粘着させてシーラント剤の層を形成する第2のシーラント層形成工程とを含み、
前記時間計測工程は、
前記第1のシーラント層形成工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t1、又は第1の排出工程がある場合における該第1の排出工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t1を計測する第1の時間計測工程と、
前記第2のシーラント層形成工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t2、又は第2の排出工程がある場合における該第2の排出工程が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t2を計測する第2の時間計測工程とを含み、
前記時間比較工程は、
前記第1の作業位置にて次のタイヤに第1のシーラント層形成工程を開始するとき、前記第1の経過時間t1を前記基準時間t0と比較する第1の時間比較工程と、
前記第2の作業位置にて次のタイヤに第2のシーラント層形成工程を開始するとき、前記第2の経過時間t2を前記基準時間t0と比較する第2の時間比較工程とを含み、
前記第1の経過時間t1が基準時間t0を越えた場合、前記第1のシーラント層形成工程の開始前に、前記第1の配管内のシーラント剤を前記第1のノズルから廃液として排出する前記第1の排出工程と、この第1の排出工程に引き続いて前記第2の配管内のシーラント剤を前記第2のノズルから廃液として排出する前記第2の排出工程とを行い、
又前記第2の経過時間t2が基準時間t0を越え場合、前記第2のシーラント層形成工程の開始前に、前記第2の排出工程と、この第2の排出工程に引き続いて前記第1の排出工程とを行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシーラントタイヤの製造方法では、シーラント剤の吐出停止からの経過時間tを計測し、この経過時間tが予め設定した基準時間t0を越えたときには、次のタイヤにシーラント層形成工程を開始する前に、配管内のシーラント剤をノズルから廃液として排出する排出工程を行う。
【0010】
そのため、交換された次のタイヤに、物性変化していないシーラント剤を用いて層を形成することができる。即ち、シーラント剤の経時的な物性変化に伴う粘着不良を抑制でき、シーラントタイヤを品質良くかつ効率よく形成しうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のシーラントタイヤの製造方法を実施するための製造装置の一例を概念的に示す平面図である。
図2】タイヤ搬送装置を示す側面図である。
図3】回収装置をタイヤ搬送装置とともに示す側面図である。
図4】シーラントタイヤの製造方法のフローチャートである。
図5】第1、第2のノズルを有する場合の製造方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明のシーラントタイヤの製造方法を実施するための製造装置1の一例を概念的に示す平面図であり、製造方法を製造装置1を用いて順次説明する。
【0013】
図1に示すように、製造装置1は、シーラント剤排出装置2、タイヤTを作業位置Pと待機位置Qとの間で移動させるタイヤ搬送装置3と、前記作業位置PのタイヤTの内周面にパンク防止用のシーラント剤の層(以下「シーラント層」という。)を形成するためのノズル4を有する配管5とを含む。
【0014】
前記シーラント剤排出装置2としては、例えば二軸混練押出機などの連続混練機が好適に採用される。
【0015】
前記配管5は、本例では、シーラント剤排出装置2の前端部に連結される集合管部6と、この集合管部6から二股に分岐する第1、第2の分岐管部7a、7bとを具える。第1、第2の分岐管部7a、7bの各前端部に、下方に向かって開口する第1、第2のノズル4A、8Bが配される。集合管部6と第1の分岐管部7aとにより第1の配管5Aが構成され、又集合管部6と第2の分岐管部7bとにより第2の配管5Bが構成される。
【0016】
前記集合管部6には、シーラント剤排出装置2の内圧が上限を超えたとき、シーラント剤の一部を放出して基準圧力を保つための放出管6a(図3に示す)が圧力調整弁6Vを介して接続される。
【0017】
又前記第1、第2の分岐管部7a、7bには、シーラント剤排出装置2からのシーラント剤を、第1のノズル4A又は第2のノズル4Bに、例えば交互に切り替えて供給するための第1、第2の切替え弁9a、9bが配される。即ち、本例の製造装置1では、第1、第2のノズル4A、4Bから同時にシーラント剤は吐出されず、何れか一方のノズルからのみ吐出される。これにより、シーラント剤排出装置2内の急激な圧力低下が防止される。
【0018】
そして前記第1のノズル4Aにより、第1の作業位置P1に配置されたタイヤTの内周面に、シーラント層が形成される。又第2のノズル4Bにより、第2の作業位置P2に配置されたタイヤTの内周面に、シーラント層が形成される。具体的には、第1のノズル4Aから吐出される紐状のシーラント剤を、回転するタイヤTの内周面に、螺旋状かつ密着巻き状に粘着させ、これによりシーラント層が形成される。なお第2のノズル4Bも同様である。
【0019】
シーラント剤としては、前記特許文献1、2に記載のものが好適に採用できる。
【0020】
タイヤ搬送装置3は、本例では、第1、第2のタイヤ搬送装置3A、3Bからなる。第1のタイヤ搬送装置3Aは、タイヤTを保持しうるタイヤ保持具10Aと、このタイヤ保持具10Aによって保持されたタイヤTを、タイヤ保持具10Aごと第1の作業位置P1と、第1の待機位置Q1との間で移動させうる移動手段11Aとを有する。又第2のタイヤ搬送装置3Bは、タイヤTを保持しうるタイヤ保持具10Bと、このタイヤ保持具10Bによって保持されたタイヤTを、タイヤ保持具10Bごと第2の作業位置P2と、第2の待機位置Q2との間で移動させうる移動手段11Bとを有する。
【0021】
前記タイヤ保持具10A、10Bは、実質的に同構成であり、以下にタイヤ保持具10Aを代表して説明する。図2に示すように、本例のタイヤ保持具10Aは、タイヤTを跨らせて保持する一対の保持ローラ14を有するタイヤ保持手段15と、保持されたタイヤTを前記保持ローラ14に上方から押し付ける押さえローラ16を有する押付け手段17とを含む。
【0022】
前記一対の保持ローラ14は、基台18上に、互いに平行かつ回転可能に水平に支持される。また一方の保持ローラ14には、モータ(図示)が連結され、従って、タイヤ保持手段15は、タイヤTを保持ローラ14間に跨らせて起立状態で保持でき、かつ前記モータによってタイヤTを回転駆動しうる。
【0023】
前記押付け手段17は、ローラホルダ19を介して互いに平行かつ水平に枢支される一対の押さえローラ16を具える。このローラホルダ19は、前記基台18の側壁部18Wに連設されるレールL1を介して上下動可能に案内される。また前記ローラホルダ19は、例えばシリンダ等(図示しない)のロッド端に支持される。従って、押さえローラ16は、前記シリンダの伸張動作によって、タイヤTを保持ローラ14に上方から押し付けでき、タイヤTを所定の回転速度で確実に回転させうる。
【0024】
なお図1に示すように、上面視において、タイヤ保持具10A及びタイヤ保持具10Bによって保持される各タイヤTの軸心iは、第1の分岐管部7a及び第2の分岐管部7aと略同一線上に位置しうる。これにより、第1のノズル4A及び第2のノズル4Bを、ビード孔Thを通ってタイヤ内腔内外に出し入れしうる。
【0025】
移動手段11A、11Bも、実質的に同構成であり、以下に移動手段11Aを代表して説明する。図2に示すように、前記移動手段11Aは、タイヤ軸心方向Xに移動可能な縦移動台30を具える。この縦移動台30に、前記タイヤ保持具10Aが昇降可能に支持される。具体的には、第1のノズル4Aがタイヤ内腔内に挿入可能な高さとなる下降位置(図2に示す)から、第1のノズル4Aとタイヤ内周面との間の距離が、例えば1.0〜3.0mm程度の粘着用距離となる上昇位置(図示しない)までの間を、昇降可能に支持される。本例では、基台18が、前記縦移動台30の側壁部30Wに、レールL3を介して上下に案内されるとともに、例えばボールネジ機構などを用いた周知の駆動装置によって、前記下降位置と上昇位置との間を上下に移動しうる。
【0026】
また縦移動台30は、第1のノズル4Aがタイヤ内腔内に挿入される前進位置Rfと、タイヤ内腔から外れる後退位置Rrとの間を、タイヤ軸心方向Xの前後に移動しうる。タイヤ軸心方向Xのうち、第1のノズル4Aに近づく向きを「前」、離れる向きを「後」と呼ぶ。
【0027】
縦移動台30は、例えば床面等に敷設されたレールL4を介してタイヤ軸心方向Xに案内されるとともに、例えばボールネジ機構などを用いた周知の駆動装置によって、前記前進位置Rfと後退位置Rrとの間を、前後に移動しうる。
【0028】
本例では、縦移動台30が前進位置Rfとなる状態において、タイヤ保持具10A、10Bによって保持されたタイヤTの位置が、それぞれ第1、第2の作業位置P1、P2となる。また縦移動台30が後退位置Rrとなる状態において、タイヤ保持具10A、10Bによって保持されたタイヤTの位置が、それぞれ第1、第2の待機位置Q1、Q2となる。本例では、第1、第2の待機位置Q1、Q2において、シーラント層が既に形成されたシーラントタイヤと、シーラント層が未形成のタイヤとの交換が行われる。
【0029】
次に、前記製造装置1を用いて、シーラントタイヤの製造方法を説明する。
図4のフローチャートで示されるように、前記製造方法は、シーラント層形成工程S1と、時間計測工程S2と、時間比較工程S3とを含むとともに、前記時間比較工程S3における比較結果に基づいて排出工程S4をさらに実行する。
【0030】
前記シーラント層形成工程S1では、図2に示すように、作業位置Pに配置されたタイヤTの内周面に、シーラント剤排出装置2から配管5をへてノズル4から吐出されるシーラント剤を粘着させ、これによってシーラント層を形成する。具体的には、前記タイヤTの上昇状態(図示しない)において、ノズル4から吐出される紐状のシーラント剤を、回転するタイヤTの内周面に、螺旋状かつ密着巻き状に粘着させ、これによりシーラント層が形成される。
【0031】
前記時間計測工程S2では、前記シーラント層形成工程S1が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t、又は後述する排出工程S4がある場合における該排出工程S4が終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間tを計測する。
【0032】
前記時間比較工程S3では、前記作業位置Pにて次のタイヤTにシーラント層形成工程S1を開始するとき、前記経過時間tを、予め設定した基準時間t0と比較する。前記基準時間t0としては、シーラント剤のタイヤとの粘着性が十分維持される時間(例えば3分)が設定される。
【0033】
そして、時間比較工程S3において、経過時間tが基準時間t0を越えたとき、シーラント層形成工程S1の開始前に、前記排出工程S4が行われる。この排出工程S4では、配管5内のシーラント剤を、前記ノズル4から廃液として排出する。
【0034】
これにより、次のタイヤに、物性変化していないシーラント剤を用いてシーラント層を形成することができる。即ち、シーラント剤の経時的な物性変化に伴う粘着不良を抑制でき、シーラントタイヤを品質良くかつ効率よく形成しうる。
【0035】
次に、図1に示す製造装置1のように、第1のノズル4A側(以下「第1形成側」という場合がある。)、及び第2のノズル4B側(以下「第2形成側」という場合がある。)から、シーラントタイヤが切り替えて形成される場合を説明する。
【0036】
この場合、図5に示すように、シーラント層形成工程S1は、第1、第2のシーラント層形成工程S1A、S1Bを含む。図5中のαは、切替え弁9a、9bの切り替えなどに要する時間ロスを意味する。
【0037】
第1のシーラント層形成工程S1Aでは、第1の作業位置P1に配置されたタイヤのT内周面に、第1のノズル4Aから吐出されるシーラント剤を粘着させてシーラント層を形成する。第2のシーラント層形成工程S1Bでは、第2の作業位置P2に配置されたタイヤのT内周面に、第2のノズル4Bから吐出されるシーラント剤を粘着させてシーラント層を形成する。
【0038】
第1のシーラント層形成工程S1Aと第2のシーラント層形成工程S1Bとは、例えば交互に実施される。第1のシーラント層形成工程S1Aの開始/終了は、第1のノズル4Aからのシーラント剤の吐出/停止によって行われるとともに、前記吐出/停止は、第1の切替え弁9aの開閉によって行われる。同様に、第2のシーラント層形成工程S1Bの開始/終了は、第2のノズル4Bからのシーラント剤の吐出/停止によって行われるとともに、前記吐出/停止は、第2の切替え弁9bの開閉によって行われる。
【0039】
前記時間計測工程S2は、第1、第2の時間計測工程S2A、S2Bを含む。
【0040】
第1の時間計測工程S2Aでは、第1のシーラント層形成工程S1Aが終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t1、又は第1の排出工程S4Aがある場合における該第1の排出工程S4Aが終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t1が計測される。同様に、第2の時間計測工程S2Bでは、第2のシーラント層形成工程S1Bが終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t2、又は第2の排出工程S4Bがある場合における該第2の排出工程S4Bが終了するときのシーラント剤の吐出停止からの経過時間t2が計測される。
【0041】
前記時間比較工程S3は、第1、第2の時間比較工程S3A、S3Bを含む。
【0042】
前記第1の時間比較工程S3Aでは、第1の作業位置P1にて次のタイヤTに第1のシーラント層形成工程S1Aを開始するとき、前記第1の経過時間t1を前記基準時間t0と比較する。同様に、第2の時間比較工程S3Bでは、前記第2の作業位置P2にて次のタイヤTに第2のシーラント層形成工程S1Bを開始するとき、前記第2の経過時間t2を前記基準時間t0と比較する。
【0043】
そして、第1の経過時間t1が基準時間t0を越えない場合には、そのまま第1のシーラント層形成工程S1Aが行われる。しかし、第1の経過時間t1が基準時間t0を越えた場合には、第1のシーラント層形成工程S1Aの開始前に、第1の排出工程S4A、及びこの第1の排出工程S4Aに引き続いて第2の排出工程S4Bが順次行われる。
【0044】
同様に、第2の経過時間t2が基準時間t0を越えない場合には、そのまま第2のシーラント層形成工程S1Bが行われる。しかし、第2の経過時間t2が基準時間t0を越えた場合には、第2のシーラント層形成工程S1Bの開始前に、第2の排出工程S4B、及びこの第2の排出工程S4Bに引き続いて第1の排出工程S4Aが順次行われる。
【0045】
なお第1の排出工程S4Aでは、第1の配管5A内のシーラント剤を、第1のノズル4Aから廃液として排出する。又第2の排出工程S4Bでは、第2の配管5B内のシーラント剤を、第2のノズル4Bから廃液として排出する。第1、第2のノズル4A、4Bからの排出は、前記第1、第2の切替え弁9a、9bの開閉によって交互に行われる。
【0046】
図3に示すように、第1の排出工程S4Aでは、タイヤTを、いったん第1の作業位置P1からタイヤ軸心方向X後方側(例えば待機位置Q1)に後退させ、第1のノズル4Aをタイヤ外に取り出した後に行うのが好ましい。第2の排出工程S4Bも同様である。
【0047】
本例では、タイヤ軸心方向Xとは直交するY方向に移動可能な台車22と、この台車22に載置される上開放の収容容器20とを有する回収装置23が用いられる。回収装置23では、収容容器20が、ノズル4(第1、第2のノズル4A、4B))の真下となってノズル4(第1、第2のノズル4A、4B)から吐出されるシーラント剤を受け取りしうる回収位置と、回収装置23が作業位置P(第1、第2の作業位置P1、P2)のタイヤT及びタイヤ搬送装置3(第1、第2のタイヤ搬送装置3A、3B)と接触しない待機位置との間をY方向に移動する。
【0048】
このように、本例では、t1>t0のとき、いったんタイヤTを第1の作業位置P1から例えば待機位置Q1に後退させた後、収容容器20を収容位置に移動させる。そして第1のノズル4Aからの第1の排出工程S4Aが行われる。
なお第1の排出工程S4A前には、第2のシーラント層形成工程S1Bは終了している。そのため第1の排出工程S4A中に、第2のノズル4B側(第2形成側)でシーラント層が形成されたタイヤを、例えば待機位置Q2に後退させることができ、従って、第2の排出工程S4Bを第1の排出工程S4Aに引き続いて行うことができる。なおt2>t0のときも同様である。
【0049】
このように、本例では、第1形成側にて吐出の中断時間が長くなる(t1>t0)場合にも、第1の排出工程S4Aだけでなく、第2形成側にて第2の排出工程S4Bを行っている。
【0050】
もし、第2の排出工程S4Bを引き続いて行わない場合には、前記第1の排出工程S4A時間が、次の第2形成側における第2の経過時間t2に加算されてしまう。そのため、次の第2形成側にて吐出の中断時間が長くなる(t2>t0)恐れを招く。即ち、いったんt1>t0、又はt2>t0が起きると、中断時間超過の連鎖が発生し、排出工程S4を毎回行う必要が生じて、生産効率の低下や材料コストの無駄を招く。
【0051】
しかし、第1の排出工程S4Aに引き続いて第2の排出工程S4Bを行う(或いは第2の排出工程S4Bに引き続いて第1の排出工程S4Aを行う)ことで、中断時間超過の連鎖を止めることができ、生産効率の低下や材料コストの無駄の発生を抑制することができる。
【0052】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0053】
2 シーラント剤排出装置
4 ノズル
4A 第1のノズル
4B 第2のノズル
5 配管
5A 第1の配管
5B 第2の配管
P 作業位置
P1 第1の作業位置
P2 第2の作業位置
S1 シーラント層形成工程
S1A 第1のシーラント層形成工程
S1B 第2のシーラント層形成工程
S2 時間計測工程
S2A 第1の時間計測工程
S2B 第2の時間計測工程
S3 時間比較工程
S3A 第1の時間比較工程
S3B 第2の時間比較工程
S4 排出工程
S4A 第1の排出工程
S4B 第2の排出工程
T タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5