(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ファイル本体に取り付けられるベースと、このベースに基端部を支持され先端部に第1の係合部分を有した第1のリング形成部材と、前記ベースに基端部を支持されるとともに先端部に第2の係合部分を有しその第2の係合部分が前記第1の係合部分に係合する閉じ姿勢からその係合が解除された開き姿勢までの間で回動可能な第2のリング形成部材と、この第2のリング形成部材を開き方向に付勢するばねとを具備してなり、
前記ベースが、ファイル本体に取り付けられた状態で該ファイル本体との間に空洞を形成する空洞形成部を備えたものであり、前記空洞に臨む前記空洞形成部の内側に、前記第2のリング形成部材の基端部を軸支する軸受けと、前記空洞内に配された前記ばねの一端を支持するばね受けが設けられ、
前記ベースが、前記ファイル本体に取り付けられるベース本体と、このベース本体の一側縁に一体に形成された前記空洞形成部とを備えたものであって、
前記空洞形成部が、前記ベース本体の一側縁から立ち上がる起立壁と、この起立壁の上端から外側方に向かって漸次低くなりつつ延出する天壁と、この天壁の延出端から降下する降下壁とを備えたものであるリングとじ具。
前記第1のリング形成部材と前記第2のリング形成部材とによって、用紙を綴じるためのとじリングが形成されるものであり、前記とじリングが前記ベースに1対設けられている請求項1記載のリングとじ具。
前記第2のリング形成部材が、基端部に前記空洞内に挿入される軸部分を備えたものであり、前記軸部分が前記ベースの軸受けにそれぞれ軸支されている請求項2記載のリングとじ具。
対をなす前記第2のリング形成部材が、軸部分の先端同士を対向させた姿勢で配されるとともに、前記軸部分の先端同士が、前記両軸部分に対して偏心した中間偏心部分を備えた連結部材により一体回転可能に結合されたものであり、
前記ばねが、前記ばね受けと前記連結部材の中間偏心部分との間に介設されたものである請求項3記載のリングとじ具。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態は、本発明を、いわゆるレバーアーチファイルに準じた使い勝手を実現することができるリングファイルに適用した場合のものである。このリングファイルRFは、
図1〜
図4に示すように、対をなす表紙11、12の基端11a、12a間に背表紙13を設けてなるファイル本体1と、このファイル本体1の一方の表紙11の基端11a近傍部内面に取り付けられた本発明に係るリングとじ具2とを具備してなる。
【0019】
前記ファイル本体1は、
図1及び
図2に示すように、裏表紙として機能する一方の表紙11の基端11aと、表表紙として機能する他方の表紙12の基端12aとの間に、背表紙13を設けてなるものであり、前記表紙11と前記背表紙13との境界には、主折り曲げ線部11bが設けられている。前記一方の表紙11は、基端11a近傍部に設定したとじ具取付領域111と、このとじ具取付領域111に隣接させた用紙対応領域112とを備えたもので、前記とじ具取付領域111と前記用紙対応領域112との境界には、副折り曲げ線部11cが形成されている。また、前記他方の表紙12は、基端12a近傍部に設定したとじリング保持領域121と、このとじリング保持領域121に隣接させた用紙対応領域122とを備えたものである。前記とじリング保持領域121には、後述するとじリング4F、4Bの自由端部を保持するためのスリット121aが形成されており、このとじリング保持領域121と前記用紙対応領域122との境界には、副折り曲げ線部12cが形成されている。前記背表紙13には、指掛孔13aが形成されている。
【0020】
なお、このファイルは、
図2における下側を手前にして用紙の差し替え作業を行うように想定されたものであり、以下この明細書において、
図2における下側を「手前側」、上側を「奥側」と称する。
【0021】
前記リングとじ具2は、
図5〜
図8、
図10〜
図11及び
図13〜
図14に示すように、ファイル本体1に取り付けられるベース3と、このベース3に設けられた1対のとじリング4F、4Bと、前記ベース3に内蔵されたばね5とを具備してなる。
【0022】
ここで、
図5は、前記リングとじ具2を一部破断して示した平面図であり、
図6は、前記リングとじ具2の正面図である。
図7及び
図8は、それぞれ
図5におけるB−B線及びC−C線に沿った断面図である。
図9は、
図6における要部を拡大したX矢視図である。
図10は、後述する第2のリング形成部材7F、7Bの作動を説明するための作用説明図であり、
図11は、
図10に示した状態における
図7に対応する断面図である。
図12は、
図10における要部を拡大して示す図である。
図13は、後述する第2のリング形成部材7F、7Bを後述する開き姿勢(O)とした状態を示す正面図であり、
図14は、
図13に示した状態における
図7に対応する断面図である。
図15、
図16及び
図17は、それぞれ
図13における要部を拡大したD矢視図、E矢視図及びF矢視図である。
図18、
図19及び
図20は、それぞれ
図13における要部を拡大したG矢視図、H矢視図及びI矢視図である。
【0023】
前記とじリング4F、4Bは、
図6、
図10及び
図13に示すように、前記ベース3に基端部61F、61Bを支持され先端部62F、62Bに第1の係合部分63F、63Bを有した第1のリング形成部材6F、6Bと、前記ベース3に基端部71F、71Bを支持されるとともに先端部72F、72Bに第2の係合部分73F、73Bを有しその第2の係合部分73F、73Bが前記第1の係合部分63F、63Bに係合する
図6に示すような閉じ姿勢(C)からその係合が解除された
図13に示すような開き姿勢(O)までの間で回動可能な第2のリング形成部材7F、7Bとにより構成されている。前記第2のリング形成部材7F、7Bは、前記ばね5により開き方向に付勢されている。なお、本明細書では、手前側のとじリングに符号4Fを付しており、奥側のとじリングに符号4Bを付している。また、手前側のとじリング4Fを構成する各要素にも原則として末尾にFを加えた符号を付しており、奥側のとじリング4Bを構成する各要素にも原則として末尾にBを加えた符号を付している。そして、手前側及び奥側のとじリング4F、4Bを構成する各要素において、対応するものには同一の名称を付し、また末尾のF又はBを除いて同一の符号を付している。
【0024】
詳述すれば、各とじリング4F、4Bの一方のリング形成部材の係合部分は、少なくとも凹溝を備えたものであるとともに、他方のリング形成部材の係合部分は、少なくとも前記凹溝に係合する凸条を備えている。なお、この実施形態においては、
図9及び
図12に示すように、第1及び第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bの係合部分63F、63B、73F、73Bに、凸条631F、631B、731F、731Bと、この凸条631F、631B、731F、731Bに平行に隣接する凹溝632F、632B、732F、732Bとがそれぞれ設けられている。その上で、第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凹溝632F、632Bに第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凸条731F、731Bが係合するとともに、第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凹溝732F、732Bに第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凸条631F、631Bが係合することができるようになっている。
【0025】
前記凹溝632F、632B、732F、732B及び前記凸条631F、631B、731F、731Bは、前記リング形成部材6F、6B、7F、7Bの先端部61F、61B、71F、71Bにおける軸心L1F、L1B、L2F、L2Bに対して直角以外の角度をなすように傾斜させて設けられている。具体的には、
図12に示すように、前記第1のリンク形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bに設けられた凹溝632F、632B及び凸条631F、631Bは、当該第1のリング形成部材6F、6Bの先端部62F、62Bにおける軸心L1F、L1Bに対して例えば正面視において角度θだけ傾斜させてあり、前記第2のリンク形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bに設けられた凹溝732F、732B及び凸条731F、731Bは、当該第2のリング形成部材7F、7Bの先端部72F、72Bにおける軸心L2F、L2Bに対して例えば正面視において角度θだけ傾斜させてある。この実施形態では、前記傾斜角度θは本実施形態では45°に設定しているが、90°以外の値であれば種々選択、採用が可能である。また、前記第2のリング形成部材7F、7Bに設けられた前記凹溝732F、732B及び前記凸条731F、731Bは、
図12に示すように、前記第2のリング形成部材7F、7Bにおける前記係合部分73F、73Bの前記閉じ姿勢(C)と前記開き姿勢(O)との間の回動軌跡L3F、L3B(より正確にはこの回動軌跡L3F、L3Bが前記凹溝732F、732B及び前記凸条731F、731Bと交わる箇所における接線L31F、L31B)に対して角度φをなすように設定されている。前記角度φは、本実施形態では90°に設定しているが、90°に近い値であれば種々変更可能である。
【0026】
また、
図9及び
図15〜
図17に示すように、手前側の第1のリング形成部材6Fの係合部分63Fの凹溝632Fは、奥側に向けて開放された直線状の溝であり、奥側の第1のリング形成部材6Bの係合部分63Bの凹溝632Bは、手前側に向けて開放された直線状の溝である。さらに、
図9及び
図18〜
図20に示すように、手前側の第2のリング形成部材7Fの係合部分73Fの凹溝732Fは、手前側に向けて開放された直線状の溝であり、奥側の第2のリング形成部材7Bの係合部分73Bの凹溝732Bは、奥側に向けて開放された直線状の溝である。すなわち、対をなす第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凹溝632F、632Bは互いに向かい合う方向に開放されており、対をなす第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凹溝732F、732Bは互いに離反する方向に開放されている。各凸条631F、631B、731F、731Bは、対応する各凹溝632F、632B、732F、732Bの先端側に隣接させて設けられたものであり、対をなす第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凸条631F、631Bは互いに向かい合う方向に突出しており、対をなす第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凸条731F、731Bは互いに離反する方向に突出している。
図9、
図12、
図16、
図19及び
図20に示すように、前記凸条631F、631B、731F、731Bの先端側には案内傾斜面633F、633B、733F、733Bが形成されており、第1のリング形成部材6F、6Bの先端部62F、62Bと第2のリング形成部材7F、7Bの先端部72F、72Bとを突き合わせることにより、前記両リング形成部材6F、6B、7F、7Bが一時的に径方向に弾性変位し前記各凸条631F、631B、731F、731Bが対応する各凹溝632F、632B、732F、732Bに係合するようになっている。なお、
図12において、案内傾斜面633Fはパターンを付した部分である。この係合を解除する場合には、第2のリング形成部材7F、7Bの先端側を相寄る方向につまんで当該リング形成部材7F、7Bを一時的に径方向に弾性変形させればよい。
【0027】
以上説明した前記第1のリング形成部材6F、6Bは、ベース3の一側縁部3aに固定された略直線状のものであり、前記第2のリング形成部材7F、7Bが前記ベース3の他側縁部3bに枢支され先端側が湾曲したものである。そのため、前記第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bと前記第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bとは、前記ベース3の幅方向中央から外れた位置で係合するように構成されている。詳述すれば、
図5に示すように、第1のリング形成部材6F、6Bの基端部61F、61Bは、ベース3のリング取付孔31aに嵌挿され、かしめ等により固定されている。第2のリング形成部材7F、7Bは、
図5及び
図8に示すように、基端部71F、71Bに軸部分711F、711Bを備えたものであり、前記軸部分711F、711Bが、前記ベース3の後述する空洞形成部32とファイル本体1との間に形成される空洞SP内にそれぞれ挿入されるとともに、前記ベース3の後述する軸受け33にそれぞれ軸支されている。なお、手前側の第2のリング形成部材7Fの軸部分711Fと奥側の第2のリング形成部材7Bの軸部分711Bとは、先端同士を対向させた姿勢で軸心を一致させてベース3にそれぞれ軸支されている。前記軸部分711F、711Bの先端同士は、前記両軸部分711F、711Bに対して偏心した中間偏心部分81を備えた連結部材8により一体回転可能に結合されている。前記両第2のリング形成部材7F、7Bと前記連結部材8とは、金属線材製の一体成形品である。
【0028】
そして、
図9及び
図15〜
図20に示すように、前記第1及び第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bの先端64F、64B、74F、74Bには、丸みをつけてある。この先端64F、64B、74F、74Bの丸みは、第1のリング形成部材6F、6Bと第2のリング形成部材7F、7Bとを相互に係合させてとじリング4F、4Bを形成した状態でそのとじリング4F、4Bに沿って綴じられた用紙Pを円滑に移動させることができるようにするためのものである。
【0029】
前記ベース3は、
図1〜
図2、
図5〜
図8、
図10〜
図11及び
図13〜
図14に示すように、前記ファイル本体1に取り付けられるベース本体31と、このベース本体31の一側縁に一体に形成された前記空洞形成部32とを備えたものである。
【0030】
前記ベース本体31は、前記ファイル本体1に接しリベットなどの止着具Sを介して当該ファイル本体1に取り付けられる取付フランジ311を周縁に有した扁平形状をなすもので、前後両端部分にリング取付孔31aを備えており、このリング取付孔31aに前記第1のリング形成部材6F、6Bの基端部61F、61Bがそれぞれ固定されている。
【0031】
前記空洞形成部32は、ファイル本体1に取り付けられた状態で該ファイル本体1との間に空洞SPを形成する。前記空洞SPに臨む前記空洞形成部32の内側には、前記第2のリング形成部材7F、7Bの基端部71F、71Bを軸支する軸受け33と、前記空洞SP内に配された前記ばね5の一端を支持するばね受け34が設けられている。
【0032】
詳述すると、前記空洞形成部32は、
図6〜
図8、
図10〜
図11及び
図13〜
図14に示すように、前記ベース本体31の一側縁から立ち上がる起立壁321と、この起立壁321の上端から外側方に向かって漸次低くなりつつ延出する天壁322と、この天壁322の延出端から降下する降下壁323とを備えたものであり、前記降下壁323の下縁両端部分に前記軸受け33が形成されているとともに、前記降下壁323の下縁中間部分に前記ばね受け34が形成されている。
【0033】
前記軸受け33は、
図8に示すように、第2のリング形成部材7F、7Bの基端部71F、71Bの軸部分711F、711Bを包持するようにカールさせた部分円筒体状のもので前記降下壁323の下縁323aに一体に設けられている。
【0034】
前記ばね受け34は、
図7、
図11及び
図14に示すように、前記両軸受け33間に位置させて前記空洞SPの底部分に配された平板状のもので、前記降下壁323の下縁323aから片持ち状態で延出されている。このばね受け34は、平面視四角形状のもので、延出端34aの近傍にばね4を位置決めするためのスリット34bを備えている。
【0035】
以上説明したベース3は、共通の板金素材にプレス加工等を施すことにより前記ベース本体31と前記空洞形成部32と前記軸受け33と前記ばね受け34とが一体に作られたものである。すなわち、このベース3は、板金製の一体成形品である。
【0036】
また、
図2及び
図5に示すように、前記ベース3の一側縁3a、具体的にはリング取付孔31aを設けた側の端縁が前記ファイル本体1の背表紙13から離れた側に位置し、前記ベース3の他側縁3b、具体的には空洞形成部32側の端縁が前記ファイル本体1の表紙11と背表紙13との境界付近に位置している。
【0037】
前記ばね5は、前記第2のリング形成部材7F、7Bを開き姿勢(O)に向かう方向に付勢するためのもので、前記ばね受け34と前記連結部材8の中間偏心部分81との間に介設されている。すなわち、このばね5は、
図7、
図11及び
図14に示すように、前記ばね受け34上に設置される静止部51と、先端部分521で前記中間偏心部分8を下側から弾性付勢する可動部52と、この可動部52と前記静止部51とを一体に連続させる湾曲連結部53とを一体に備えた板ばね状のものである。
【0038】
前記静止部51は、前記ばね受け34の延出端34aに係わり合う先端屈曲部分511と、前記ばね受け34のスリット34bに係わり合う中間屈曲部分512とを備えた平板状のものである。
【0039】
前記可動部52は、先端部分521が上方に開口する部分円筒体状をなすもので、この先端部分521で前記連結部材8の中間偏心部分81を包持して付勢しうるようにしたものである。このばね5の作用により、前記第2のリング形成部材7F、7Bが前記開き姿勢(O)にまで回動するようになっている。なお、この開き姿勢(O)においては、前記連結部材8が前記空洞形成部32の天壁322に突き当たるように設定されており、この天壁322による係止作用により前記第2のリング形成部材7F、7Bが前記開き姿勢(O)に保持されるようになっている。すなわち、前記空洞SPは、前記第2のリング形成部材7F、7Bが閉じ姿勢(C)から開き姿勢(O)までの間で回動する際の前記連結部材8の作動を許容するような形状、具体的には正面視扇形をなすように形成されている。
【0040】
この実施形態のリングファイルは、例えば、A4判の用紙を綴じるためのもので、前記手前側及び奥側のとじリング4F、4Bの離間距離dは、一般的な2穴ファイルの穿孔ピッチに対応する値に設定されている。そして、第1のリング形成部材6F、6Bに綴じられた用紙Pの綴じ元側の端縁Paがベース3の空洞形成部32の起立壁321に近接するように、空洞形成部32の位置を設定している。
【0041】
続いて、第2のリング形成部材7F、7Bを開き姿勢(O)から閉じ姿勢(C)に、又はその逆方向に移動させる際の各部の挙動について説明する。
【0042】
図13及び
図14に示すような開き姿勢(O)にある第2のリング形成部材7F、7Bに、閉じ姿勢(C)に向かう方向の操作力を加えると、
図11に示すようにばね5が連結部材8の中間偏心部分81を介して前記操作力の伝達を受けることにより弾性変形し、
図10及び
図12に示すように、第2のリング形成部材7F、7Bの先端部72F、72Bが第1のリング形成部材6F、6Bの先端部62F、62Bに衝き当たる。このとき、前記両リング形成部材6F、6B、7F、7Bが、前記案内傾斜面633F、633B、733F、733Bに案内されて一時的に径方向に弾性変位する。さらに操作力を加えると、前記各凸条631F、631B、731F、731Bが対応する各凹溝632F、632B、732F、732Bにそれぞれ対向する位置に移動し、弾性復帰力により係合する。より具体的には、第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凸条631F、631Bが第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凹溝732F、732Bに対向するとともに、第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凸条731F、731Bが第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凹溝632F、632Bに対向する位置まで移動した後、弾性復帰力によりこれら第1、第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bの係合部分63F、63B、73F、73Bが径方向かつ相寄る方向に移動し、第2のリング形成部材7F、7Bが、
図5〜
図9に示すような閉じ姿勢(C)となる。
【0043】
第2のリング形成部材7F、7Bを相寄る方向につまんで操作力を加え、第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bと第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bとの係合を解除させると、前記ばね5の付勢力が前記連結部材8を介して第2のリング形成部材7F、7Bに伝達されることより第2のリング形成部材7F、7Bが開き姿勢(O)に向かって付勢される。そして、第2のリング形成部材7F、7Bが開き姿勢(O)に達すると、前記連結部材8の中間偏心部分81が前記空洞形成部32の天壁322に衝き当たり、第2のリング形成部材7F、7Bのさらなる回動が規制されるとともに、第2のリング形成部材7F、7Bが前記天壁322により開き姿勢(O)に保持される。
【0044】
以上に述べたような本実施形態の構成によれば、前記ベース3に、ファイル本体1に取り付けられた状態で該ファイル本体1との間に空洞SPを形成する空洞形成部32を備えており、前記空洞SPに臨む前記空洞形成部32の内側に、前記第2のリング形成部材7F、7Bの基端部71F、71Bを軸支する軸受け33と、前記空洞SP内に配された前記ばね5の一端を支持するばね受け34を設けているので、格別のカバー部材を追加することなくベース3とファイル本体1との間の空洞SPに軸受け33やばね受け34といった部分を収納し、煩雑な部分を隠すことができる。さらに、前記ばね受け34に一端が支持される前記ばね5も前記空洞SP内に配されるので、ばね5とリングとじ具2を構成する他の部材との間に使用者の手指が挟まれる不具合の発生を抑制し安全性の向上を図ることもできる。
【0045】
また、本実施形態の構成によれば、レバー式アーチファイルに用いられるとじ具と比較して、背表紙13から離間した側のリング形成部材である第1のリング形成部材6F、6Bを背表紙13側に寄せることができるので、とじ具2の幅寸法を無理なく縮小することができ、ひいてはファイル本体1の幅寸法も無理なく縮小することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の構成によれば、以下に述べるような効果を得ることもできる。
【0047】
すなわち、レバー式アーチファイルに用いられるとじ具と異なり、第2のリング形成部材7F、7Bをばね5の付勢力に抗しつつ閉じ姿勢(C)にまで回動させる操作力を受け付けるための操作レバーを有していないので、ファイル本体1を開いた状態で第1及び第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bのいずれにとじられた用紙Pの取り外し動作も円滑に行うことができる。
【0048】
リング形成部材6F、6B、7F、7Bの係合部分63F、63B、73F、73Bの凹溝632F、632B、732F、732B及び凸条631F、631B、731F、731Bを、該リング形成部材6F、6B、7F、7Bの先端部62F、62B、72F、72Bにおける軸心L1F、L1B、L2F、L2Bに対して直角以外の角度θをなすように傾斜させて設けているので、第1のリング形成部材6F、6Bと第2のリング形成部材7F、7Bとが係合する部分の長さをより長くすることができる。従って、簡単な構成によりこれら第1のリング形成部材6F、6Bと第2のリング形成部材7F、7Bとの係合の強度を確保することができる。このことにより、前記係合の強度を確保しつつ、第1及び第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bの先端64F、64B、74F、74Bに丸みをつけ、とじリング4F、4Bに沿って用紙Pを移動させる際に用紙Pが引っかかりにくくすることや、前記凸条631F、631B、731F、731Bの先端側のより広い領域に案内傾斜面633F、633B、733F、733Bを設け、第1のリング形成部材6F、6Bと第2のリング形成部材7F、7Bとを係合させる操作を円滑に行えるようにすることを図ることができる。特に、この実施形態では、前記凹溝632F、632B、732F、732B及び前記凸条631F、631B、731F、731Bを、前記軸心L1F、L1B、L2F、L2Bと直角以外の角度θをなすように傾斜させて設けているので、前記第1及び第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bの先端64F、64B、74F、74Bの丸みを大きくしても、案内傾斜面633F、633B、733F、733Bや凸条631F、631B、731F、731Bが不当に小さくなることを抑制することができる。
【0049】
第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凹溝732F、732B及び凸条731F、731Bを、前記係合部分73F、73Bの回動軌跡L3F、L3Bに直交するように設けているので、これら凹溝732F、732B及び凸条731F、731Bを、それぞれ第1のリング形成部材6F、6Bの凸条631F、631B及び凹溝632F、632Bにスムーズに係合させることができる。
【0050】
前記静止部51及び前記可動部52を有する板ばね状の前記ばね5を、前記ばね受け34と前記連結部材8の中間偏心部分81との間に介設しているので、圧縮コイルスプリングを設ける場合のリテーナや、ねじりコイルスプリングを設ける場合に該ねじりコイルスプリングを巻き付けるための軸部材を設けることなく、少ない設置スペース及び少ない部品点数で第2のリング形成部材7F、7Bを開き姿勢(O)側に付勢するための構成を実現することができる。
【0051】
前記空洞形成部32を前記ベース3の前記他側縁3b側すなわち前記ファイル本体1の背表紙13に近い側の領域のみに設けており、前記一側縁3a側すなわち前記ファイル本体1の背表紙13から離れた側の領域はその全域が扁平なベース本体31を構成しているので、用紙Pをとじることができる量を減らすことなく上述したような構成及び該構成に係る効果を実現することができる。
【0052】
前記空洞形成部32とファイル本体1との間に形成される空洞SPを正面視扇形に形成しており、この空洞SPの内部で前記連結部材8の作動が許容されるようになっているので、前記空洞形成部32の天壁322を、第2のリング形成部材7F、7Bが閉じ姿勢(C)から開き姿勢(O)を越えてさらに回動することを規制するストッパとして機能させることができる。従って、格別なストッパ部材を設けることなく第2のリング形成部材7F、7Bの回動範囲を設定することができる。
【0053】
以上説明した実施形態においては、図示及び説明を明瞭にするために、手前側及び奥側のとじリング4F、4Bの第2のリング形成部材7F、7Bを正面視重なり合う形状を有するものとしているが、
図21に示すように、閉じ姿勢(C)となっていない状態において、奥側のとじリング4Bの第2のリング形成部材7Bの先端部72Bが、手前側のとじリング4Fの第2のリング形成部材7Fの先端部72Fと比較して閉じ姿勢(C)側に微少角度ψだけ先行するように第2のリング形成部材7F、7Bの形状を設定している。前記微少角度ψは、手前側の第1及び第2のリング形成部材6F、7Fを閉じ姿勢(C)とする操作を加えるだけで奥側の第1及び第2のリング形成部材6B、7Bも閉じ姿勢(C)となるようにするためのもので、前記リング形成部材7F、7Bや連結部材8の曲げ剛性やねじり剛性、あるいは第1及び第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bを係合させるときにリング形成部材が受ける抗力などを考慮して適宜設定されるものである。本実施形態では、約3°に設定してあるが、適宜な値に設定することができる。
【0054】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0055】
例えば、リング形成部材の係合部分の凹溝及び凸条は、直線状のものに限らず、形成方向が特定可能なものであれば、円弧等の曲線形状や、その他の形状であってもよい。
【0056】
さらに、本発明は、ファイル本体の表紙の基端部にとじ具を設けるアーチファイル形式のファイルに限らず、ファイル本体の背表紙にとじ具を設ける態様のファイルに適用してももちろんよい。
【0057】
加えて、上述した実施形態ではとじリングを一対設けたとじ具について説明しているが、とじリングを3つ以上設けたとじ具や、とじリングを1つだけ設けたとじ具に本発明を適用してももちろんよい。
【0058】
また、複数設けた第2のリング形成部材の基端部に形成した軸部分の先端からそれぞれ該軸部分に対して偏心した中間偏心部分を延出させて設け、これら中間偏心部分のそれぞれがばねから弾性付勢力を受けるように構成してもよい。この場合、1つのばねが複数の中間偏心部分全てに弾性付勢力を付与するように構成してもよく、中間偏心部分ごとにばねを設け、各ばねがそれぞれ対応する中間偏心部分に弾性付勢力を付与するように構成してもよく、ばねを複数設け、それぞれのばねが1又は複数の中間偏心部分に弾性付勢力を付与するように構成してもよい。
【0059】
さらに、ベースの構成として、上述した実施形態のように、ファイル本体に取り付けられるベース本体と、このベース本体の一側縁に一体に形成された空洞形成部とを備えるものだけでなく、ベースの下方の領域略全体が、ファイル本体との間で空洞を形成するようなものや、扁平形状をなしファイル本体に取り付けられるベース本体と、このベース本体に取り付けられファイル本体との間で空洞を形成可能な空洞形成部材とを備えるものであってもよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。