特許第6828325号(P6828325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828325車両開閉体の開閉装置、車両開閉体の開閉制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828325
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】車両開閉体の開閉装置、車両開閉体の開閉制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/655 20150101AFI20210128BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20210128BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20210128BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20210128BHJP
   E05F 15/75 20150101ALI20210128BHJP
   E05B 85/26 20140101ALI20210128BHJP
   E05B 81/72 20140101ALI20210128BHJP
【FI】
   E05F15/655
   B60J5/04 C
   B60J5/06 A
   E05F15/643
   E05F15/75
   E05B85/26
   E05B81/72
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-174617(P2016-174617)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-40157(P2018-40157A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浦瀬 浩司
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 和郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】錦邉 健
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0139621(KR,A)
【文献】 特開2003−184426(JP,A)
【文献】 特開2005−139791(JP,A)
【文献】 特開2011−106167(JP,A)
【文献】 米国特許第05684470(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−79
B60J 5/04
B60J 5/06
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両開閉体と車両とを繋ぐ駆動ケーブルが巻き取られることにより前記車両開閉体を開閉させる駆動部と、
前記車両開閉体及び前記車両のいずれか一方に設けられるストライカに対し、他方に設けられて前記ストライカと係合するラッチ、及び当該ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持する保持具を有する全開ラッチ装置と、
前記保持具が前記ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持したことを検出する検出部と、
前記検出部において、前記保持具が前記ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持したことの検出をトリガとして、前記駆動部における前記駆動ケーブルの巻き取りを停止させる制御部とを備える車両開閉体の開閉装置であって、
前記駆動部の一構成として、前記駆動ケーブルを巻き取るための駆動源であるモータと、
前記モータの回転パルスを検出するパルスセンサとを備え、
前記制御部は、前記パルスセンサの検出結果から前記車両開閉体が全開位置に到達しているか否かを判定するものであって、
前記制御部は、前記パルスセンサの検出結果から前記車両開閉体が全開位置に到達したことを判断する状況があらかじめ設定される複数回数に亘って連続したとき、前記検出部における不具合と判定する車両開閉体の開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両開閉体の開閉装置において、
前記制御部は、前記保持具が前記ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持したことをトリガとして、前記駆動部における前記駆動ケーブルの巻き取りを徐々に弱め、最終的に停止させる車両開閉体の開閉装置。
【請求項3】
車両開閉体と車両とを繋ぐ駆動ケーブルを巻き取る駆動部への制御を通じて、前記車両開閉体の開閉を制御する車両開閉体の開閉制御装置であって、
前記車両開閉体及び前記車両のいずれか一方に設けられるストライカに対し、他方に設けられるラッチが係合し、当該係合した状態を保持具が保持したことをトリガとして、前記駆動部における前記駆動ケーブルの巻き取りを停止させるものであって、
前記駆動ケーブルを巻き取るための駆動源であり前記駆動部の一構成であるモータの回転パルスを検出するパルスセンサの検出結果から前記車両開閉体が全開位置に到達しているか否かを判定するとともに、
前記パルスセンサの検出結果から前記車両開閉体が全開位置に到達したことを判断する状況があらかじめ設定される複数回数に亘って連続したとき、前記保持具が前記ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持したことを検出する検出部における不具合と判定する車両開閉体の開閉制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両開閉体の開閉装置、及び車両開閉体の開閉制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドア開口部を開閉するスライドドアは、車体に設けられたスライドレールに支持されることにより、車両の前後方向に移動可能とされている。
特許文献1には、モータが駆動することにより回転するドラム、及びドラムに巻回されるケーブルをスライドドアに設けた電動スライドドア装置が開示されている。この電動スライドドア装置では、モータパルスを検出し、あらかじめ定められる一定時間の間、モータパルスに変化がないことを通じて、スライドドアが全開位置に到達したと判定し、モータの駆動を停止させる制御部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−314144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動スライドドア装置の場合、スライドドアが全開位置へ到達してからモータの駆動が停止されるまでの間にタイムラグが発生する。このタイムラグの間、スライドドアは変位しないにもかかわらず、モータは駆動し続けているため、ケーブルは、テンションがかかった状態となる。したがって、ケーブルは、スライドドアが全開位置に変位する度、テンションがかかる状態が繰り返される。
【0005】
なお、このような課題は、モータの駆動力をケーブルにより伝達するものに限らない。例えば、ケーブルに代えてベルトなどの機械要素を採用する電動スライドドア装置でも上記課題は生じうる。また、変位対象は、スライドドアに限らず、ルーフウインドウなどであってもよい。
【0006】
本発明の目的は、機械要素へのテンションのかかりが抑制される車両開閉体の開閉装置、車両開閉体の開閉制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、車両開閉体の開閉装置は、車両開閉体と車両とを繋ぐ駆動ケーブルが巻き取られることにより前記車両開閉体を開閉させる駆動部と、前記車両開閉体及び前記車両のいずれか一方に設けられるストライカに対し、他方に設けられて前記ストライカと係合するラッチ、及び当該ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持する保持具を有する全開ラッチ装置と、前記保持具が前記ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持したことを検出する検出部と、前記検出部において、前記保持具が前記ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持したことの検出をトリガとして、前記駆動部における前記駆動ケーブルの巻き取りを停止させる制御部とを備える車両開閉体の開閉装置であって、前記駆動部の一構成として、前記駆動ケーブルを巻き取るための駆動源であるモータと、前記モータの回転パルスを検出するパルスセンサとを備え、前記制御部は、前記パルスセンサの検出結果から前記車両開閉体が全開位置に到達しているか否かを判定するものであって、前記制御部は、前記パルスセンサの検出結果から前記車両開閉体が全開位置に到達したことを判断する状況があらかじめ設定される複数回数に亘って連続したとき、前記検出部における不具合と判定することを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、ストライカと係合したラッチが保持具により保持されたこと、すなわち、車両開閉体が全開位置の保持される状態となったことをトリガに駆動ケーブルの巻き取りが停止される。このため、車両開閉体が全開位置に保持された状態を一定時間検出したことをトリガに駆動ケーブルの巻き取りを停止する従来構成と比較して、本構成は、駆動ケーブルをはじめとする機械要素へのテンションのかかりが抑制される。
【0009】
この構成によれば、検出部に不具合が発生した場合でも、パルスセンサの検出結果に基づき、モータをオンからオフに切り替えることができる。すなわち、この構成の車両開閉体の開閉装置は、車両開閉体を閉状態から開状態へ移行させる際の、モータにおけるフェールセールが図られている。
この構成によれば、検出部における不具合が高い確率で発生している場合のみ、不具合と判定される。このため、車両の整備の担当者において、検出部やこれに関する部品を交換するなどの判断がしやすい。
上記構成において、前記制御部は、前記保持具が前記ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持したことをトリガとして、前記駆動部における前記駆動ケーブルの巻き取りを徐々に弱め、最終的に停止させることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、駆動ケーブルの巻き取りが徐々に弱まることにより、駆動ケーブルの巻き取りが停止した瞬間における車両開閉体にかかる慣性力が弱い。したがって、車両開閉体における揺り戻しも小さく、車両開閉体をはじめとする各種機械要素への負荷も抑制される。
【0015】
上記課題を解消するために、車両開閉体と車両とを繋ぐ駆動ケーブルを巻き取る駆動部への制御を通じて、前記車両開閉体の開閉を制御する車両開閉体の開閉制御装置は、前記車両開閉体及び前記車両のいずれか一方に設けられるストライカに対し、他方に設けられるラッチが係合し、当該係合した状態を保持具が保持したことをトリガとして、前記駆動部における前記駆動ケーブルの巻き取りを停止させるものであって、前記駆動ケーブルを巻き取るための駆動源であり前記駆動部の一構成であるモータの回転パルスを検出するパルスセンサの検出結果から前記車両開閉体が全開位置に到達しているか否かを判定するとともに、前記パルスセンサの検出結果から前記車両開閉体が全開位置に到達したことを判断する状況があらかじめ設定される複数回数に亘って連続したとき、前記保持具が前記ラッチを前記ストライカと係合した状態で保持したことを検出する検出部における不具合と判定することを要旨とする。
【0016】
この開閉制御装置を採用することにより、駆動ケーブルをはじめとする機械要素へのテンションのかかりが抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両開閉体の開閉装置、車両開閉体の開閉制御装置は、機械要素へのテンションのかかりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)はスライドドアが全閉状態のときの車両側面図、(b)はスライドドアが全開状態のときの車両側面図。
図2】スライドドアの機械的構成及び電気的構成の概略を示すブロック図。
図3】(a)スライドドアが開く際の駆動部を示す概略図、(b)はスライドドアが閉じる際の駆動部を示す概略図。
図4】ガイドプーリーの平面図。
図5】ガイドプーリーの側面図。
図6】(a)はストライカとラッチとが非係合状態における全開ラッチ装置の平面図、(b)はストライカとラッチとが完全係合した状態における全開ラッチ装置の平面図。
図7】(a)は図6(a)の一部拡大図、(b)は図6(b)の一部拡大図。
図8】制御装置における駆動モータの制御タイミングを示すタイムチャート。
図9】モータにかかる負荷を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両開閉体の開閉装置を電動スライドドア装置に具体化した第1の実施形態について、図面にしたがって説明する。
<第1の実施形態>
図1(a)、及び図1(b)に示すように、車両1は、車両側面に設けられるドア開口部2を開閉するスライドドア3を備える。なお、スライドドア3は車両開閉体に相当する。
【0020】
図2に示すように、スライドドア3は、車両側面に設けられて車両前後方向に延びるアッパレール4、ロアレール5、センターレール6の各スライドレールに沿って変位可能とされたローラーユニット7,8,9を備える。スライドドア3は、ローラーユニット7,8,9が、各スライドレールに沿って車両前後方向に変位することにより、ドア開口部2を開閉する(図1参照)。
【0021】
図2に示すように、車両1は、電動スライドドア装置10を有する。当該電動スライドドア装置10は、スライドドア3を全閉状態で保持する全閉ラッチ装置11と、スライドドア3を開閉させるスライドドア駆動部12と、スライドドア3を全開状態で保持する全開ラッチ装置13と、これら全閉ラッチ装置11、スライドドア駆動部12、及び全開ラッチ装置13を制御する制御装置14とを備える。
【0022】
なお、制御装置14は、制御部に相当するものであって、スライドドア3に設けられるドアハンドル15への操作を検出するドアハンドルセンサ16と電気的に接続されている。また、制御装置14は、スライドドア3とドア開口部2との間における挟み込み検知するためにスライドドア3の前縁に設けられる図示しない接触センサなどの各種検出部や、異常がある旨を音により人間の感覚に訴えるスピーカなどの各種報知部と電気的にも接続されている。
【0023】
全閉ラッチ装置11は、車両に設けられるストライカと嵌合可能とされるラッチと、当該ラッチをストライカと環状状態で保持するポールとを備える周知のラッチ装置であって、スライドドア3の前後2箇所に設けられている。なお、全閉ラッチ装置11は、周知のラッチ装置であることからその詳細な説明及び図示は省略する。
【0024】
図3(a)及び図3(b)に示すように、スライドドア駆動部12は、駆動モータ21により回転するドラム22と、ドラム22と車両1との間を繋ぐオープン側駆動ケーブル23及びクローズ側駆動ケーブル24とを備える。
【0025】
図4及び図5に示すように、オープン側駆動ケーブル23は、オープン側中間プーリー25及びセンターローラーユニット9の一部を構成するオープン側ガイドプーリー26に這わせられている。
【0026】
クローズ側駆動ケーブル24は、クローズ側中間プーリー27及びセンターローラーユニット9の一部を構成するクローズ側ガイドプーリー28に這わせられている。
なお、オープン側ガイドプーリー26は、第1オープン側プーリー26aと第2オープン側プーリー26bとの総称であり、クローズ側ガイドプーリー28は、第1クローズ側プーリー28aと第2クローズ側プーリー28bとの総称である。第1オープン側プーリー26a及び第1クローズ側プーリー28aは同軸上に設けられ、第2オープン側プーリー26b及び第2クローズ側プーリー28bは同軸上に設けられている。
【0027】
図3(a)、及び図3(b)に示すように、駆動モータ21が駆動し、ドラム22が回転すると、オープン側駆動ケーブル23及びクローズ側駆動ケーブル24の一方がドラム22に巻き取られるとともに、他方がドラム22から繰り出される。これにより、センターローラーユニット9が車両前方又は後方に移動し、ローラーユニット7,8もこれに追従する。こうして、スライドドア3は、ドア開口部2を開閉する(図1(a)及び図1(b)参照)。
【0028】
なお、図3(a)、及び図3(b)に示すように、オープン側駆動ケーブル23及びクローズ側駆動ケーブル24の車両側の端部には、それぞれ周知のテンショナー機構29が設けられている。テンショナー機構29により、経年や温度差によるケーブルの長さ変化が吸収される。
【0029】
図6(a)及び図6(b)に示すように、全開ラッチ装置13は、ロアローラーユニット8を構成するロアアーム31に設けられて、車体に設けられるストライカSと嵌合可能とされるラッチ32と、ストライカSとの嵌合状態にあるラッチ32を保持するポール33とを備える。
【0030】
詳述すると、ラッチ32は、揺動軸O1を中心として揺動可能とされるものであって、図6(a)に示すように、揺動軸O1から10時の方向に設けられるU字状の第1係合部34と、揺動軸O1から3時〜5時の方向に設けられる円弧状に張り出す膨出部35とを有する。なお、膨出部35における反時計方向側の端面は、後述の係合端部37と係合可能な第2係合部36とされている。
【0031】
ラッチ32は、図6(a)に示すように、第1係合部34が揺動軸O1を中心としたとき10時の方向に位置する開放位置と、開放位置から時計方向に回転した位置であって、図6(b)に示すように、第1係合部34が揺動軸O1を中心としたとき12時の方向に位置する嵌合位置との間を回転変位する。
【0032】
なお、開放位置のラッチ32は、第1係合部34へのストライカSの進入及び第1係合部34からのストライカSの離脱を許容する。また、嵌合位置のラッチ32は、後述するポール33に保持されることにより、第1係合部34からのストライカSの離脱を規制する。
【0033】
ポール33は、揺動軸O1から6時の方向に設けられる揺動軸O2を中心として揺動可能とされ、揺動軸O2を中心として2時の方向から8時の方向に向かって延びる軸状部材である。このポール33は、図示しない付勢手段により同図中の反時計方向へ向かって常時付勢されるものであって、揺動軸O2から2時の方向に位置する端部には、第2係合部36と係合可能とされたかぎ爪状の係合端部37が形成されている。また、揺動軸O2から8時の方向側に位置する端部(図7(a)及び図7(b)参照)は、後述するポールスイッチ40と係合可能とされたL字状の押し端部38とされている。なお、揺動軸O2を中心としたときの押し端部38の外側の端面は、滑らかな円弧状とされている。
【0034】
ポール33は、図6(a)に示すように、係合端部37が膨出部35の外縁と接触する非保持位置と、非保持位置から反時計方向に回転した位置であって、係合端部37が第2係合部36と係合する保持位置との間を回転変位する。
【0035】
なお、非保持位置のポール33は、ラッチ32の反時計方向への回転変位を許容し、保持位置のポール33はラッチ32の反時計方向への回転変位を規制する。
なお、ポール33は、ドアハンドル15(図1及び図2参照)とワイヤケーブルW(図2参照)を介して機械的に接続されている。ポール33は、ドアハンドル15が操作された際、これに連動して、図示しない付勢手段の付勢力に抗して時計方向に回転する。これにより、ラッチ32の保持状態と非保持状態とが切り替えられる。
【0036】
全開ラッチ装置13は、揺動軸O2から8時の方向に位置するポールスイッチ40を備える。ポールスイッチ40は、ポール33が非保持位置と保持位置との間を回転変位するときにおける押し端部38の変位軌跡上に位置する押しスイッチである。
【0037】
ポールスイッチ40は、図6(a)に示すように、ポール33が非保持位置に位置するとき押し端部38により押下された状態(オン)となり、図6(b)に示すように、ポール33が保持位置に位置するとき押し端部38による押下が解消された状態(オフ)となる。
【0038】
次に、制御装置14における制御、及び制御に伴う効果について説明する。
図2に示すように、制御装置14は、ドアハンドル15への操作を検出するドアハンドルセンサ16と電気的に接続されている。
【0039】
制御装置14は、スライドドア3が全開状態(図1(b)参照)のときドアハンドル15への操作を検出すると、駆動モータ21(図3参照)を駆動させて、スライドドア3を全開状態から全閉状態(図1(a)参照)へと変位させる。
【0040】
また、制御装置14は、スライドドア3が全閉状態(図1(a)参照)とされるときドアハンドル15への操作を検出すると、駆動モータ21(図3参照)を駆動させて、スライドドア3を全閉状態から全開状態(図1(b)参照)へと変位させる。
【0041】
制御装置14は、スライドドア3を全閉状態から全開状態へと変位させる際、次のように駆動モータ21を制御する。
すなわち、図8に示すように、制御装置14は、ポールスイッチ40がオンからオフとなったこと、すなわち、ポール33がラッチ32を保持しない非保持位置から同ラッチ32をストライカSと係合した状態に保持する保持位置へと変位したことをトリガとして、駆動モータ21をオンからオフに切り替える。
【0042】
これにより、図9に示すように、本例では、ラッチ32とストライカSとの係合が完了したとき、すぐに駆動モータ21をオンからオフに切り替える。このため、従来のように、駆動モータの回転が拘束される時間がない。駆動モータの回転が拘束される時間は、駆動ケーブルにテンションがかかり続ける時間であるから、本例の電動スライドドア装置10によれば、駆動ケーブル23,24をはじめとする機械要素へのテンションのかかりが抑制される。これにより、駆動ケーブル23,24をはじめとする機械要素における不具合の発生も抑制される。
【0043】
<第2の実施形態>
次に、電動スライドドア装置10の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態と上記第1の実施形態との主たる相違点は、ポールスイッチ40がオンからオフに切り替わったとき、制御装置14は、駆動モータ21の駆動を徐々に弱める点である。このため、第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0044】
図8に示すように、制御装置14は、ポールスイッチ40がオンからオフとなったことをトリガとして、同図8中に一点鎖線で示すように、駆動力が徐々に弱くなるように駆動モータ21を制御する。
【0045】
ここで、スライドドア3に限らず、変位したり動作したりする機械要素は、確実に目標位置に到達させるための余裕、いわゆるガタ(遊び)が設けられている。このため、駆動モータ21を瞬間的にオンからオフに切り替えた場合、スライドドア3は慣性によってガタ分移動するとともに、その反動による揺り戻しも生じる。
【0046】
その点、本例のように、駆動力が徐々に弱くなるように駆動モータ21の駆動が制御されることにより、スライドドア3のガタ分の移動が緩やかになる。したがって、反動による揺り戻しも少なく、スライドドア3を支持する各ローラーユニット7,8,9やドア開口部2周囲に設けられる各種機械要素にかかる負荷が小さくなる。
【0047】
<第3の実施形態>
次に、電動スライドドア装置10の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態と上記第1の実施形態との主たる相違点は、駆動モータ21に設けられるパルスセンサの情報を、制御装置14が駆動モータ21の制御に用いることである。このため、第3の実施形態において、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0048】
図2に示すように、スライドドア駆動部12を構成する駆動モータ21に、当該駆動モータ21の回転を検出するパルスセンサ21aを設ける。パルスセンサ21aは、駆動モータ21のロータが所定量回転する毎にオンオフが逆転するパルスを発生させる。当該パルスセンサ21aは、制御装置14と電気的に接続されている。
【0049】
制御装置14は、パルスセンサ21aの検出結果を、ポールスイッチ40の故障判定及び駆動モータ21の制御に用いる。
例えば、図8に二点鎖線で示すように、ポールスイッチ40の検出結果がオンに維持される、いわゆるオン故障した場合について説明する。
【0050】
この場合、制御装置14は、パルスセンサ21aの検出結果を監視する。スライドドア3を支持するローラーユニット7,8,9が変位するレール4,5,6の長さには物理的な限界があるため、ローラーユニット7,8,9は、レール4,5,6の端部で車両後方への移動が規制される。スライドドア3の移動が規制される場合、駆動モータ21の駆動も規制されるため、パルスセンサ21aの検出結果であるオンオフが逆転せず、オン又はオフの状態で維持される。
【0051】
制御装置14は、パルスセンサ21aの検出結果がオン又はオフの状態で維持されることの検出をもって、図8に二点鎖線で示すように、駆動モータ21をオンからオフに切り替える。
【0052】
なお、ポールスイッチ40がオン故障した場合について説明したがオフ故障した場合でも、制御装置14は同様に制御する。
このように、本例によれば、ポールスイッチ40が故障した場合でも、駆動モータ21をオンからオフに切り替えることができる。すなわち、本例の電動スライドドア装置10によればフェールセールが図られている。
【0053】
なお、制御装置14は、スライドドア3を全閉状態から全開状態へ変位させる際に、パルスセンサ21aの検出結果によって駆動モータ21の駆動を停止させる状態が、あらかじめ設定される複数回数(例えば5回など)に亘って連続したとき、ポールスイッチ40に関する不具合と判定し、その旨示す情報を図示しない記憶装置等に記憶させる。なお、スピーカやインジケータ等の各種報知部によりポールスイッチ40の不具合を示す情報を、ユーザの感覚に訴えてもよい。
【0054】
このように構成することにより、ポールスイッチ40における不具合が高い確率で発生している場合のみ、不具合と判定し、この情報が記憶される。このため、車両の整備の担当者において、ポールスイッチ40やこれに関する部品を交換するなどの判断がしやすい。
【0055】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、全開ラッチ装置13は、ロアローラーユニット8を構成するロアアーム31に設けられたが、アッパーローラーユニット7、或いはセンターローラーユニット9に設けられてもよい。また、当該全開ラッチ装置13は、ローラーユニット7,8,9のうち複数個に設けられてもよい。
【0056】
・上記実施形態において、駆動ケーブル23,24は、ベルト状のように幅広のものであってもよい。
・上記実施形態において、ポールスイッチ40はポール33が回転することにより押下状態と開放状態とが切り替えられる押しスイッチであったが、押しスイッチに限らず、ポール33の回転位置を検出できるものであればよい。
【0057】
・上記実施形態では、スライドドアを車両開閉体として説明したが、車両開閉体はスライドドアに限らない。例えば、サンルーフ等であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
S…ストライカ、W…ワイヤケーブル、1…車両、2…ドア開口部、3…スライドドア(車両開閉体)、4,5,6…レール、7,8,9…ローラーユニット、10…電動スライドドア装置(車両開閉体の開閉装置)、11…全閉ラッチ装置、12…スライドドア駆動部、13…全開ラッチ装置、14…制御装置(制御部)、15…ドアハンドル、16…ドアハンドルセンサ、21…駆動モータ、21a…パルスセンサ、22…ドラム、23,24…駆動ケーブル、25…オープン側中間プーリー、26…オープン側ガイドプーリー、27…クローズ側中間プーリー、28…クローズ側ガイドプーリー、29…テンショナー機構、31…ロアアーム、32…ラッチ、33…ポール、34…第1係合部、35…膨出部、36…第2係合部、37…係合端部、38…押し端部、40…ポールスイッチ(検出部)。
図1
図2
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図7
図8
図9