(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の液晶配向剤は、光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(C)を含有する。また、ポリオルガノシロキサン(C)及びこれとは異なる重合体の少なくともいずれかとして、液晶性を発現する部分構造を有する重合体が含有されている。
【0010】
液晶性を発現する部分構造は、ポリオルガノシロキサン(C)が有していてもよく、ポリオルガノシロキサン(C)とは異なる重合体が有していてもよく、これら両方の重合体が有していてもよい。液晶素子の初期の電圧保持率及び耐光性の観点から、液晶性を発現する部分構造は、ポリオルガノシロキサン(C)とは異なる重合体が有していることが好ましい。すなわち、本開示の液晶配向剤は、所定の温度範囲で液晶性を示す重合体(A)と、光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(C)とを含有するものであることが好ましい。以下に、重合体(A)及びポリオルガノシロキサン(C)について詳しく説明するとともに、本開示の液晶配向剤に必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
【0011】
<重合体(A)>
重合体(A)は、所定の温度範囲で液晶性を示すものであればその構造は特に制限されないが、液晶性を発現する部分構造として剛直な部位(メソゲン構造)を有する重合体が挙げられる。重合体(A)が有するメソゲン構造としては、例えば下記式(1)で表される構造などが挙げられる。
【化1】
(式(1)中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のフェニレン基又はシクロヘキシレン基であり、X
1は単結合、−CO−、−COO−、−C=C−、−C≡C−、−N=N−又は−CONR
1−(R
1は水素原子又は1価の有機基である。)である。nは1〜3の整数である。nが2又は3のとき、Ar
2,X
1は各々独立に上記定義を有する。「*」は結合手を示す。)
【0012】
上記式(1)において、X
1は、好ましくは単結合又は−COO−である。R
1の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基、保護基などが挙げられる。保護基の具体例としては、例えばt−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−ハロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基などが挙げられる。
Ar
1及びAr
2の環部分の置換基は、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子が好ましく、メチル基又はフッ素原子がより好ましい。
上記式(1)で表される部分構造の好ましい具体例としては、例えば4−ビフェニル基、4−ビシクロへキシル基、p−ターフェニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロへキシレン基、p−ターフェニレン基及び下記式(1−1)〜式(1−4)のそれぞれで表される基、並びにこれらの基の環部分にメチル基又はフッ素原子を有する基などが挙げられる。
【化2】
(式中、「*」は結合手を示す。)
【0013】
重合体(A)は、メソゲン構造を重合体の主鎖及び側鎖のいずれに有していてもよいが、液晶素子の耐光性の改善効果が高い点で、メソゲン構造を側鎖に有する側鎖型の液晶性ポリマーであることが好ましい。ここで、本明細書において重合体の「主鎖」とは、重合体のうち最も長い原子の連鎖からなる「幹」の部分をいう。この「幹」の部分が環構造を含むことは許容される。したがって、「メソゲン構造を重合体の主鎖に有する」とは、当該構造が主鎖の一部分を構成することをいう。重合体の「側鎖」とは、重合体の「幹」から分岐した部分をいう。なお、重合体(A)はメソゲン構造を重合体の主鎖のみに有していてもよいし、側鎖のみに有していてもよいし、主鎖及び側鎖の両方に有していてもよい。
【0014】
重合体(A)の主骨格の種類は特に限定されないが、液晶との親和性や機械的強度などの観点から、好ましくは、重合性不飽和結合を有するモノマーの重合体(以下、「重合体(PAc)」ともいう。)、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルよりなり群から選ばれる少なくとも一種であり、液晶素子の電圧保持率及び耐光性をより良好にできる点で重合体(PAc)がより好ましい。
【0015】
・重合体(PAc)
重合体(PAc)の重合に用いるモノマーは、重合性不飽和結合を有していれば特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル系化合物、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。液晶素子の耐光性の改善効果が高い点で、重合体(PAc)は、(メタ)アクリル系化合物を含むモノマーを原料として用いて得られる重合体であることが好ましい。重合体(PAc)の合成に際し、(メタ)アクリル系化合物の使用割合は、合成に使用するモノマーの合計量に対して、50モル%以上とすることが好ましく、60モル%以上とすることがより好ましく、70モル以上とすることがさらに好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルを含む意味である。
【0016】
重合体(PAc)は、液晶性を発現する部分構造と共に、光に感応して架橋反応、異性化反応、光二量化反応又はフリース転位反応を起こす官能基(以下「光反応性基」という。)を有していてもよい。当該光反応性基としては、例えば(メタ)アクリル酸又はその誘導体を基本骨格とする(メタ)アクリル含有基、ビニル基を有する基(アルケニル基、スチレン基など)、エチニル基、エポキシ基(オキシラニル基、オキセタニル基)、フェニルベンゾエート又はその誘導体を基本骨格として含むフェニルベンゾエート含有基、アゾベンゼン又はその誘導体を基本骨格として含むアゾベンゼン含有基、桂皮酸又はその誘導体を基本骨格として含む桂皮酸構造含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含むカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含むベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含むクマリン含有基等が挙げられる。
【0017】
重合体(PAc)は、例えば重合性不飽和結合を有するモノマーを重合開始剤の存在下で重合することにより得ることができる。使用するモノマーは、重合性不飽和結合と液晶性を発現する部分構造とを有する化合物を含んでいることが好ましい。重合性不飽和結合と液晶性を発現する部分構造とを有するモノマーの具体例としては、例えば下記式(2−1)〜式(2−5)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、これらのモノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【化3】
(式(2−1)〜式(2−5)中、R
2は水素原子又はメチル基であり、R
3は、炭素数1〜12のアルカンジイル基又は当該アルカンジイル基の少なくとも1個のメチレン基を−O−で置換してなる2価の基であり、R
4は、炭素数1〜20のアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基、又はフッ素原子である。)
【0018】
なお、重合体(PAc)の合成に際しては、重合性不飽和結合を有するモノマーとして、液晶性を発現する部分構造を有さない化合物を併用してもよい。液晶性を発現する部分構造を有さない化合物の使用割合は、重合体(PAc)の合成に使用するモノマーの合計量に対して、50モル%以下とすることが好ましく、40モル%以下とすることがより好ましい。
【0019】
上記重合に使用する重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の使用割合は、反応に使用する全モノマー100質量部に対して0.01〜30質量部とすることが好ましい。上記重合は、好ましくは有機溶媒中で行われる。反応に使用する有機溶媒としては、例えばアルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素化合物などが挙げられ、具体例としては、例えばジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。反応温度は30℃〜120℃とすることが好ましく、反応時間は、1〜36時間とすることが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用するモノマーの合計量(b)が、反応溶液の全体量(a+b)に対して、0.1〜60質量%になるような量にすることが好ましい。
【0020】
重合体(PAc)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、250〜500,000であることが好ましく、500〜100,000であることがより好ましく、1,000〜50,000であることが更に好ましい。なお、重合体(PAc)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
・ポリアミック酸
重合体(A)としてのポリアミック酸(以下「ポリアミック酸(A)」ともいう。)は、液晶性を示すものであれば特に限定されないが、重合体の主鎖中にメソゲン構造を有するものを好ましく用いることができる。こうしたポリアミック酸を得るには、例えばメソゲン構造を主鎖中に有するテトラカルボン酸二無水物及びメソゲン構造を主鎖中に有するジアミン化合物の少なくともいずれかを原料に用いた重合により得ることができる。液晶性を示すポリアミック酸の一例としては、ターフェニル骨格を主鎖中に有するテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させて得られる重合体が挙げられ、具体的には下記式(3)で表される部分構造を有する重合体が挙げられる。
【化4】
(式(3)中、R
5は2価の有機基である。)
【0022】
上記式(3)において、R
5の2価の有機基は、ジアミン化合物から2つの1級アミノ基を取り除いた残りの基である。ポリアミック酸に液晶性を発現させる点で、R
5は、炭素数4〜20の直鎖状のアルカンジイル基又は当該アルカンジイル基の炭素−炭素結合間に−O−を含む2価の基であることが好ましい。
【0023】
ポリアミック酸(A)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物は、メソゲン構造を有するテトラカルボン酸二無水物のみとしてもよいが、メソゲン構造を有さないテトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。かかるテトラカルボン酸二無水物は特に限定されず、公知のテトラカルボン酸二無水物を使用することができる。液晶性を示すポリアミック酸の合成に際し、メソゲン構造を有するテトラカルボン酸二無水物の使用割合は、合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の合計量に対して、50モル%以上とすることが好ましく、70モル%以上とすることがより好ましい。
【0024】
ポリアミック酸(A)の合成に使用するジアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジアミンを好ましく使用でき、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンのアルキレンジアミンがより好ましい。ポリアミック酸(A)の合成に際し、アルキレンジアミンの使用割合は、合成に使用するジアミン化合物の合計量に対して、50モル%以上とすることが好ましく、60モル%以上とすることがより好ましい。
【0025】
ポリアミック酸(A)は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましい。分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等が挙げられる。分子量調整剤の使用割合は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
【0026】
ポリアミック酸(A)の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、反応時間は0.1〜24時間が好ましい。
反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。特に好ましい有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と、他の有機溶媒(例えばブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど)との混合物を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50質量%になる量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸(A)を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0027】
・ポリアミック酸エステル
重合体(A)としてのポリアミック酸エステルは、例えば、上記合成反応により得られたポリアミック酸(A)とエステル化剤(例えばアルコール類など)とを反応させる方法;テトラカルボン酸ジエステルとジアミン化合物とを反応させる方法;テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物とを反応させる方法、などによって得ることができる。得られるポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。なお、ポリアミック酸エステルを溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0028】
・ポリイミド
重合体(A)としてのポリイミドは、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸(A)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。反応に使用するポリイミドは、そのイミド化率が20〜99%であることが好ましく、30〜90%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。
【0029】
ポリアミック酸の脱水閉環は、例えば、ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行う。脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間である。このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0030】
重合体(A)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの溶液粘度は、濃度10質量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、当該溶液粘度(mPa・s)は、これら重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
【0031】
重合体(A)が液晶性を示す温度範囲(以下「液晶温度範囲」ともいう。)は特に制限されないが、得られる液晶配向膜の配向規制力及び配向安定性を十分に高くする観点から、液晶温度範囲が90〜380℃の範囲内にあることが好ましく、100〜350℃の範囲内にあることがより好ましい。
【0032】
<ポリオルガノシロキサン(C)>
ポリオルガノシロキサン(C)が有する光配向性基は、光照射による光異性化反応、光二量化反応又は光分解反応等によって膜に異方性を付与する官能基である。ポリオルガノシロキサン(C)は、光配向性基を主鎖及び側鎖のいずれに有していてもよいが、側鎖に有するものを好ましく用いることができる。ポリオルガノシロキサン(C)が有する光配向性基の具体例としては、例えば上記のアゾベンゼン含有基、桂皮酸構造含有基、カルコン含有基、ベンゾフェノン含有基、クマリン含有基等が挙げられる。これらのうち、光感度が高い点及び側鎖への導入が容易な点で、桂皮酸構造含有基が好ましい。ポリオルガノシロキサン(C)が有する桂皮酸構造含有基は、中でも、下記式(cn−1)で表される基及び下記式(cn−2)で表される基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが特に好ましい。
【化5】
(式(cn−1)中、R
11は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又はシアノ基である。R
12は、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基若しくはシクロヘキシレン基、又はこれらの基が有する水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基若しくはシアノ基で置換された基である。A
11は、単結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜3のアルカンジイル基、−CH=CH−、−NH−、*
1−COO−、*
1−OCO−、*
1−NH−CO−、*
1−CO−NH−、*
1−CH
2−O−又は*
1−O−CH
2−(「*
1」はR
12との結合手を示す。)である。R
13は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又はシアノ基である。aは0または1であり、bは0〜4の整数である。但し、bが2以上の場合、複数のR
13は同じでも異なっていてもよい。「*」は結合手であることを示す。)
【化6】
(式(cn−2)中、R
14は、炭素数1〜20の1価の有機基である。R
15は、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又はシアノ基である。A
12は、酸素原子、*
1−COO−、*
1−OCO−、*
1−NH−CO−又は*
1−CO−NH−(「*
1」はR
16との結合手を示す。)である。R
16は、炭素数1〜6のアルカンジイル基である。cは0又は1であり、dは0〜4の整数である。但し、dが2以上の場合、複数のR
15は同一であっても異なっていてもよい。「*」は結合手であることを示す。)
【0033】
R
14の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜3のアルキル基、−R
21−X
2−R
22、−R
22(R
21は置換又は無置換のフェニレン基又はシクロへキシレン基であり、R
22は置換又は無置換のフェニル基又はシクロヘキシル基であり、X
2は単結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜3のアルカンジイル基、−CH=CH−、−NH−、−COO−、−NH−CO−又は−CH
2−O−である。)等が挙げられる。R
21、R
22の置換基としては、例えばハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、シアノ基等が挙げられる。
【0034】
ポリオルガノシロキサン(C)を合成する方法は特に制限されない。一例としては、エポキシ基を含む加水分解性のシラン化合物と、必要に応じてその他のシラン化合物とを加水分解・縮合し、次いで、光配向性基を有するカルボン酸を反応させる方法が挙げられる。
エポキシ基を含むシラン化合物としては、例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。その他のシラン化合物としては、加水分解性の化合物であれば特に制限されないが、例えばテトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられる。なお、シラン化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
加水分解・縮合反応は、シラン化合物の1種又は2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒及び有機溶媒の存在下で反応させることにより行う。反応に際し、水の使用割合は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは1〜30モルである。使用する触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。触媒の使用量は、触媒の種類、温度などの反応条件などにより異なるが、例えばシラン化合物の合計量に対して0.01〜3倍モルである。使用する有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどが挙げられ、非水溶性又は難水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒の使用割合は、反応に使用するシラン化合物の合計100質量部に対して、好ましくは10〜10,000質量部である。また、上記反応は、油浴などにより加熱して実施することが好ましい。その際、加熱温度は130℃以下とすることが好ましく、加熱時間は0.5〜12時間とすることが好ましい。反応終了後において、反応液から分取した有機溶媒層を、必要に応じて乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することによりエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンが得られる。
【0036】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応は、好ましくは触媒及び有機溶媒の存在下で行われる。カルボン酸の使用割合は、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基に対して、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10〜80モル%である。上記触媒としては、例えば有機塩基、エポキシ化合物の反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物などを用いることができる。触媒の使用割合は、エポキシ基含有ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは100重量部以下である。使用する有機溶媒の好ましい具体例としては、2−ブタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及び酢酸ブチル等が挙げられる。有機溶媒は、固形分濃度が5〜50重量%となる割合で使用することが好ましい。上記反応における反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、反応時間は、好ましくは0.1〜50時間である。反応終了後においては、反応液から分取した有機溶媒層を、必要に応じて乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(C)を得ることができる。
なお、ポリオルガノシロキサン(C)の合成方法は上記の加水分解・縮合反応に限らず、例えば加水分解性シラン化合物をシュウ酸及びアルコールの存在下で反応させる方法などにより行ってもよい。また、光配向性基を側鎖に有するポリオルガノシロキサンを得るには、光配向性基を有する加水分解性シラン化合物を原料に用いた重合による方法を採用してもよい。
【0037】
ポリオルガノシロキサン(C)につき、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましく、さらに1,000〜50,000であることが好ましい。なお、ポリオルガノシロキサン(C)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
本開示の液晶配向剤は、重合体成分中に、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有することが好ましい。当該重合体は、所定の温度範囲で液晶性を示す重合体(A)であってもよく、液晶性を示さない重合体であってもよい。本開示の液晶配向剤の好ましい態様は、重合体成分として、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、かつ非液晶性の重合体(以下「重合体(B)」ともいう。)をさらに含むものである。こうした重合体(B)を含有するものとすることにより、液晶素子の初期電圧保持率及び耐光性の改善効果を高くすることができる点で好適である。
【0039】
重合体(B)としてのポリアミック酸(以下「ポリアミック酸(B)」ともいう。)は、例えばテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物などを;脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
ポリアミック酸(B)の合成に使用するジアミン化合物の具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などを;芳香族ジアミンとして、例えばドデカノキシジアミノベンゼン、オクタデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、コレステリルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、2,5−ジアミノ−N,N−ジアリルアニリン、下記式(E−1)で表される化合物などの側鎖型ジアミン:
【化7】
(式(E−1)中、X
I及びX
IIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、R
Iは炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、R
IIは単結合又は炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、dは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
【0041】
p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、ビス[2−(4−アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、N,N−ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、2,6−ジアミノピリジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4−(4−アミノフェノキシカルボニル)−1−(4−アミノフェニル)ピペリジン、4,4’−[4,4’−プロパン−1,3−ジイルビス(ピペリジン−1,4−ジイル)]ジアニリン、桂皮酸構造含有ジアミンなどの主鎖型ジアミンを;ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。なお、ジアミン化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
ポリアミック酸(B)は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。当該反応において使用する分子量調整剤、重合溶媒、反応条件等についてはポリアミック酸(A)の説明を適用することができる。
重合体(B)としてのポリアミック酸エステル及びポリイミドは、例えば、ポリアミック酸(A)に替えてポリアミック酸(B)を使用する以外は重合体(A)の場合と同様にして得ることができる。重合体(B)の溶液粘度、重量平均分子量及び数平均分子量については重合体(A)の説明が適用される。
【0043】
本開示の液晶配向剤における重合体成分は、下記の[1]〜[4]のいずれかの態様であることが好ましい。
[1]重合体成分として重合体(A)とポリオルガノシロキサン(C)とを含み、かつ重合体(A)が重合体(PAc)である態様。
[2]重合体成分として重合体(A)とポリオルガノシロキサン(C)とを含み、かつ重合体(A)がポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種である態様。
[3]重合体成分として重合体(A)と重合体(B)とポリオルガノシロキサン(C)とを含み、かつ重合体(A)が重合体(PAc)である態様。
[4]重合体成分として重合体(A)と重合体(B)とポリオルガノシロキサン(C)とを含み、かつ重合体(A)がポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種である態様。
これらのうち、液晶素子の初期電圧保持率及び耐光性の観点から[1]、[3]がより好ましく、[3]が特に好ましい。なお、重合体(A)及び重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン(C)に光誘起によって異方性を発現させるための露光に対して感光性を示すものであってもよく、該露光に対して非感光性のものであってもよい。液晶素子の初期電圧保持率及び耐光性の点で、好ましくは非感光性である。
【0044】
本開示の液晶配向剤において、重合体(A)及びポリオルガノシロキサン(C)の含有割合は、液晶素子の初期電圧保持率と耐光性の改善効果を十分に得る観点から、重合体(A)については、液晶配向剤に含有される重合体成分の合計100質量部に対して、1〜80質量部とすることが好ましく、3〜70質量部とすることがより好ましく、5〜60質量部とすることがさらに好ましい。ポリオルガノシロキサン(C)は、液晶配向剤に含有される重合体成分の合計100質量部に対して、1〜99質量部とすることが好ましく、5〜95質量部とすることがより好ましく、10〜90質量部とすることがさらに好ましい。また、重合体(A)とポリオルガノシロキサン(C)との比率は、質量比で、重合体(A):ポリオルガノシロキサン(C)=5:95〜70:30とすることが好ましく、10:90〜60:40とすることがより好ましい。
本開示の液晶配向剤に重合体(B)を配合させる場合、重合体(B)の含有割合は、液晶配向剤に含有される重合体成分の合計100質量部に対して、1〜95質量部とすることが好ましく、20〜90質量部とすることがより好ましく、40〜80質量部とすることがさらに好ましい。
【0045】
本開示の液晶配向剤は、重合体(A)及びポリオルガノシロキサン(C)と共に、重合体(A)及びポリオルガノシロキサン(C)以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、重合体(B)のほか、例えば、重合体(A)、重合体(B)及びポリオルガノシロキサン(C)以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物、官能性シラン化合物、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤などが挙げられる。その他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0046】
(溶剤)
本開示の液晶配向剤は、重合体成分及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,2−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10質量%の範囲である。すなわち、液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1質量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10質量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
【0048】
<液晶素子>
本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定せず、例えばTN型、STN型、垂直配向型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB(Optically Compensated Bend)型など種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1〜工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
【0049】
[工程1:塗膜の形成]
先ず基板上に液晶配向剤を塗布し、次いで必要に応じて塗布面を加熱することにより、基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO
2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In
2O
3−SnO
2)からなるITO膜などを用いることができる。TN型、STN型又は垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を用いる。IPS型又はFFS型といった横電界式の液晶素子を製造する場合には、櫛歯状にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。基板への塗布は、電極形成面上に、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行う。
【0050】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmである。
【0051】
[工程2:配向処理]
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることによって塗膜に液晶配向能を付与するラビング処理、液晶配向剤を塗布した基板面に光照射して塗膜に液晶配向能を付与する光配向処理などが挙げられる。本開示の液晶配向剤は、塗膜に対する光照射によって十分な液晶配向規制力が付与される点や、埃や静電気の発生等に起因する表示不良の発生や歩留まりの低下を抑制できる点、基板上に形成された有機薄膜に対して液晶配向能を均一に付与できる点で、光配向処理を好ましく適用することができる。垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。
【0052】
光配向処理において、塗膜に照射する光は、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200〜400nmの波長の光を含む紫外線である。照射光が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。放射線の照射量は、好ましくは200〜50,000J/m
2であり、より好ましくは400〜20,000J/m
2である。配向能付与のための光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して行ってもよく、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して行ってもよく、あるいはプレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて加熱中に塗膜に対して行ってもよい。
【0053】
[工程3:液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。具体的には、一対の基板の周辺部をシール剤によって貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法;一方の基板の液晶配向膜側の周辺部にシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、その後シール剤を硬化する方法(ODF方式)、などが挙げられる。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などが挙げられる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などが挙げられる。また、これらの液晶にコレステリック液晶、カイラル剤、強誘電性液晶などを添加して使用してもよい。
【0054】
工程3において、液晶層中に重合性モノマーを含む液晶セルを構築し、その構築した液晶セルに対して光照射することにより重合性モノマーを重合して、液晶の初期配向を付与する処理を行ってもよい。当該処理を行うことによって、IPS型又はFFS型といった横電界式に適用した場合に、初期電圧保持率が高く、かつ耐光性に優れた液晶素子が得られる点で好適である。
【0055】
重合性モノマーとしては、光による重合性が高い点で、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を好ましく用いることができる。その具体例としては、例えばビフェニル構造を有するジ(メタ)アクリレート、フェニル−シクロヘキシル構造を有するジ(メタ)アクリレート、2,2−ジフェニルプロパン構造を有するジ(メタ)アクリレート、ジフェニルメタン構造を有するジ(メタ)アクリレート、ジフェニルチオエーテル構造を有するジ−チオ(メタ)アクリレート、ナフタレン構造を有するジ(メタ)アクリレート、アントラセン構造を有するジ(メタ)アクリレート、フェナントレン構造を有するジ(メタ)アクリレート、光照射によってラジカルを生成する構造を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。重合性モノマーの配合割合は、液晶層の形成に使用される液晶組成物の全体量に対して、0.1〜1.0質量%とすることが好ましい。なお、重合性モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
液晶セルに対する光照射は、一対の電極間に電圧を印加しない状態で行ってもよく、液晶層中の液晶分子が駆動しない所定電圧(例えば0V)を印加した状態で行ってもよく、あるいは、液晶分子が駆動する所定電圧を印加した状態で行ってもよい。本開示の液晶配向剤を横電界式の液晶セルを備える液晶素子に適用する場合には、一対の電極間に電圧を印加しない状態で液晶セルに光照射することが好ましい。照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。光の照射方向は、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合、照射方向は斜め方向とする。
【0057】
照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー等を使用することができる。なお、上記の好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター回折格子などと併用する手段等により得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000〜200,000J/m
2であり、より好ましくは1,000〜100,000J/m
2である。
【0058】
重合性モノマーを液晶層中に混入する代わりに液晶配向膜中に混入しておき、液晶セルに光照射することにより、液晶に初期配向を付与してもよい。この場合、工程1では、重合性モノマーを含む液晶配向剤を用いて基板上に塗膜を形成する。液晶配向剤に含有させる重合性モノマーとしては、液晶層中に含有させる重合性モノマーの説明が適用される。重合性モノマーの含有割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体成分の合計100質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、5〜50質量部とすることがより好ましい。
【0059】
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶素子が得られる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。
【0060】
本開示の液晶素子は種々の用途に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置や、調光フィルム等に用いることができる。また、本開示の液晶配向剤を用いて形成された液晶素子は位相差フィルムに適用することもできる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
以下の例において、重合体の重量平均分子量Mw及びエポキシ当量は以下の方法により測定した。
[重合体の重量平均分子量Mw]:以下の装置を用いて、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した結果から、標準物質として単分散ポリスチレンを用いてポリスチレン換算値として求めた。
測定装置:東ソー(株)製、型式「8120−GPC」
カラム:東ソー(株)製、「TSKgelGRCXLII」
溶媒:テトラヒドロフラン
試料濃度:5重量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
カラム圧力:68kgf/cm
2
[エポキシ当量]:JIS C2105の「塩酸−メチルエチルケトン法」に準じて測定した。
【0063】
<重合体(A)の合成>
[合成例1]
下記式(m−1)で表される化合物をテトラヒドロフラン中に溶解し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加えて重合することにより重合体(A−1)を含む溶液を得た。得られた重合体溶液につき、系内の溶媒をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で溶媒置換し、重合体(A−1)を得た。この重合体(A−1)は116〜315℃の温度範囲で液晶性を示した。
【化8】
[合成例2]
上記式(m−1)で表される化合物に替えて下記式(m−2)で表される化合物を使用した以外は上記合成例1と同様の操作により重合体(A−2)を得た。この重合体(A−2)は108〜313℃の温度範囲で液晶性を示した。
【化9】
[合成例3]
1,8−ジアミノオクタン0.7009g(4.858mmol)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)22.5gに溶解し、下記式(m−3)で表される化合物1.7991g(4.858mmol)を室温で加えた。60℃で2時間撹拌後、室温に冷却し、重合体(A−3)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより重合体(A−3)を得た。この重合体(A−3)は100〜235℃の温度範囲で液晶性を示した。
【化10】
【0064】
<ポリオルガノシロキサン(C)の合成>
[合成例4]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、これを0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとして重合体(EPS−1)を粘調な透明液体として得た。この重合体(EPS−1)につき、
1H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。この重合体(EPS−1)の重量平均分子量は2,200、エポキシ当量は186g/モルであった。
次いで、100mLの三口フラスコに、上記で得た重合体(EPS−1)9.3g、メチルイソブチルケトン26g、下記式(m−4)で表される化合物3.0g、及び商品名「UCAT 18X」(サンアプロ社製の4級アミン塩)0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物をメタノールに投入して生成した沈殿物を回収し、これを酢酸エチルに溶解して溶液とし、該溶液を3回水洗した後、溶剤を留去することにより、ポリオルガノシロキサン(C)として重合体(C−1)を白色粉末として6.3g得た。この重合体(C−1)の重量平均分子量Mwは3,500であった。
【化11】
【0065】
<その他の成分>
[合成例5]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物100モル部及びジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100モル部をNMPに溶解し、40℃で3時間反応させることにより、ポリアミック酸として重合体(B−1)を10質量%含有する溶液を得た。
[合成例6]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物100モル部及びジアミンとして4−アミノフェニル−4’−アミノアゾベンゼン100モル部をNMPに溶解し、40℃で3時間反応させることにより、ポリアミック酸として重合体(B−2)を10質量%含有する溶液を得た。
[合成例7]
上記式(m−1)で表される化合物に替えてメタクリル酸オクチルを使用した以外は上記合成例1と同様の操作により重合体(D−1)を得た。
【0066】
[実施例1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体(A)として上記合成例1で得た重合体(A−1)20質量部、重合体(B)として上記合成例5で得た重合体(B−1)を含有する溶液を、重合体(B−1)に換算して60質量部に相当する量、及びポリオルガノシロキサン(C)として上記合成例4で得た重合体(C−1)20質量部を混合し、これにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(質量比)、固形分濃度が4.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤を調製した。
(2)液晶表示素子の製造
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板を2枚準備し、それぞれの透明電極面上に、上記(1)で調製した液晶配向剤をスピンコーターを用いて塗布した。次いで、80℃のホットプレート上で1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中で230℃で30分間加熱(ポストベーク)して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いで、それぞれの塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線500mJ/cm
2を基板法線方向から照射し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作製した。なお、この照射量は、波長313nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。続いて、一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、液晶セルを製造した。この液晶セルのさらに基板の外側両面に、2枚の偏光板の変更方向が互いに直交するように偏光板を貼り合わせ、液晶表示素子を作製した。
【0067】
(3)初期電圧保持率の評価
上記(2)で製造した直後の液晶表示素子に、60℃の温度下において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(初期電圧保持率VH
1)を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製の品名「VHR−1」を使用した。その結果、実施例1ではVH
1=99.6%であった。
(4)耐光性の評価
初期電圧保持率VH
1を測定した後の液晶表示素子に対し、カーボンアークを光源とするウェザーメータを用いて500時間の光照射を行った。光照射後の液晶表示素子につき、上記(3)と同様にして電圧保持率を測定した。この値をVH
2とし、VH
1からVH
2を差し引いて求めた電圧保持率の減少量をΔVHRとして、ΔVHRにより耐光性を評価した。その結果、実施例1ではΔVHR=0.6%であり、耐光性は良好であった。
(5)液晶配向性の評価
電極が設けられていない一対のガラス基板のそれぞれの表面に、上記(1)で調製した液晶配向剤を上記(2)と同様にして塗布及び光配向処理を行って液晶配向膜を形成するとともに、該液晶配向膜を有する一対の基板を用いて上記(2)と同様にして液晶セルを製造した。得られた液晶セルを直交ニコル下で観察したところ、配向不良のない均一な液晶配向が観察された。
また、上記(2)で得られた液晶表示素子に5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における配向欠陥(異常ドメイン)の有無を目視により観察したところ、この液晶表示素子は全面にわたって配向欠陥がなく、電圧印加による均一な液晶の配向変化が観察された。
【0068】
[実施例2〜8、比較例1〜11]
液晶配向剤の調製に使用する重合体成分の種類及び量(質量部)を下記表1に示す通り変更した以外は、上記実施例1と同じ溶剤比及び固形分濃度で液晶配向剤をそれぞれ調製した。また、使用する液晶配向剤を下記表1の通りに変更した点、及び比較例3,4,6,9〜11について光配向処理の際の露光波長を313nmから365nmに変更し、照射量を500mJ/cm
2から4,000mJ/cm
2に変更した点以外は、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造するとともに、実施例1と同じく電気特性、耐光性及び液晶配向性の評価を行った。それらの結果を下記表1に示した。なお、重合体(B−1)に対して313nmの輝線を含む偏光紫外線を500mJ/cm
2で照射する条件では、重合体(B−1)において光開裂反応は起こらない。よって、重合体(B−1)は、ポリオルガノシロキサン(C)に対しては非感光性の重合体に相当する。
【0069】
[実施例9]
(1)液晶組成物の調製
ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)に、重合性モノマーとして下記式(L−1)で表される化合物及び下記式(L−2)で表される化合物の混合物(質量混合比 (L−1):(L−2)=50:50)を、ネマチック液晶の全体量に対して0.5質量%添加して混合することにより液晶組成物LC1を得た。
【化12】
【0070】
(2)横電界式液晶表示素子の製造
櫛歯状にパターニングされたクロムからなる金属電極を片面に有するガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とを一対とし、ガラス基板の電極を有する面と対向ガラス基板の一面とに、液晶配向剤E(実施例4で使用した液晶配向剤)をスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱(ポストベーク)して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。
次いで、塗膜表面のそれぞれに、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線300J/m
2を基板法線方向から照射して(光配向処理)、液晶配向膜を有する一対の基板を得た。上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、偏光紫外線を照射した際の各基板の向きが逆になるように重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化した。
次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、上記(1)で調製した液晶組成物LC1を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。その後、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷し、更に液晶セルの外側からUV光照射(照射量:2,000mJ/cm
2(λ=365nm))を、一対の電極間に電圧を印加しない状態で実施した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の偏光紫外線の光軸の基板面への射影方向と直交するように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
【0071】
(2)評価
上記(1)で製造した液晶表示素子につき、実施例1と同様に電気特性、耐光性及び液晶配向性の評価を行った。その結果、この実施例では、VH
1=99.2%、ΔVHR=0.3%であった。また、液晶配向性についても実施例1と同じく良好であった。
【0072】
[実施例10及び比較例12,13]
使用する液晶配向剤を下記表1に示す通り変更した点、及び比較例13について光配向処理の際の露光波長を313nmから365nmに変更し、照射量を500mJ/cm
2から4,000mJ/cm
2に変更した点以外は、実施例9と同様にして液晶表示素子を製造するとともに、実施例1と同様に電気特性、耐光性及び液晶配向性の評価を行った。それらの結果を下記表1に示した。
【0073】
[実施例11]
(1)液晶配向剤の調製
重合体(A)として上記合成例2で得た重合体(A−2)20質量部、重合体(B)として上記合成例5で得た重合体(B−1)を含有する溶液を、重合体(B−1)に換算して60質量部に相当する量、及びポリオルガノシロキサン(C)として上記合成例4で得た重合体(C−1)20質量部を混合し、これにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、さらに重合性モノマーとして下記式(E−1)で表される化合物を20質量部加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(質量比)、固形分濃度が4.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤Tを調製した。
【化13】
【0074】
(2)液晶表示素子の製造及び評価
使用する液晶配向剤を上記(1)で調製した液晶配向剤Tとした点、及び液晶組成物LC1に替えてMLC−6221(メルク社製)を基板間の間隙に充填した点以外は、実施例9と同様にして液晶表示素子を製造するとともに、実施例1と同様に電気特性、耐光性及び液晶配向性の評価を行った。その結果を下記表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から明らかなように、実施例1〜11の液晶表示素子はいずれも、初期電圧保持率が98.0%以上と高かった。また、ΔVHRはいずれも0.9%以下であり、耐光性についても良好であった。また実施例1〜11では、液晶の配向性も良好であった。これに対し、比較例1〜13の液晶配向剤は、実施例1〜11のものとの対比で、初期電圧保持率及び耐光性の少なくともいずれかが劣っていた。液晶配向性については、比較例2では液晶の配向が観察されず、重合体(A)の代わりに、液晶性を示さない(メタ)アクリル系重合体を用いた例(比較例5〜9)では、電圧を印加・解除したときに配向欠陥が多数観察された。また、感光性ポリオルガノシロキサン(ポリオルガノシロキサン(C))に替えて、感光性ポリアミック酸である重合体(B−2)を用いた比較例10でも、配向欠陥が多数観察された。