【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成を有するスコロダイトの製造方法である。
〔1〕銅ヒ素含有物をナトリウム含有溶液でアルカリ酸化浸出して銅分を除去したヒ素浸出液に、第二鉄化合物を添加して鉄ヒ素澱物を生成させて固液分離し、この澱物をpH0.5以上〜1.0以下の酸性溶液にし、
加熱処理して結晶質のスコロダイトを生成する方法において、前記酸性溶液の
ヒ素濃度を8.85以上〜69.2以下g/Lの範囲で、Fe/Asモル比を
1.04以上〜1.18以下、およびナトリウム濃度を2.5g/L以上
に調整して加熱処理し、ヒ素溶出濃度が0.15mg/L以下のスコロダイトを95%以上の転換率で生成させることを特徴とするスコロダイトの製造方法。
〔2〕ナトリウム濃度を3.0g/L以上〜4.0g/L未満にして、ヒ素溶出濃度が0.07mg/L以下のスコロダイトを98%以上の転換率で生成させる上記[1]に記載するスコロダイトの製造方法。
〔3〕銅ヒ素含有物に水酸化ナトリウム溶液を加え、加熱下でアルカリ酸化浸出を行い、酸化銅を含む残渣を分離した後に、ヒ素を含む浸出液に第二鉄化合物を添加して鉄ヒ素澱物を生成させて固液分離し、この澱物を用いる上記[1]または上記[2]に記載するスコロダイトの製造方法。
【0012】
〔具体的な説明〕
以下、本発明を実施例と共に具体的に説明する。
本発明の製造方法は、銅ヒ素含有物をナトリウム含有溶液でアルカリ酸化浸出して銅分を除去したヒ素浸出液に、第二鉄化合物を添加して鉄ヒ素澱物を生成させて固液分離し、この澱物をpH0.5以上〜1.0以下の酸性溶液にし、
加熱処理して結晶質のスコロダイトを生成する方法において、前記酸性溶液の
ヒ素濃度を8.85以上〜69.2以下g/Lの範囲で、Fe/Asモル比を
1.04以上〜1.18以下、およびナトリウム濃度を2.5g/L以上
に調整して加熱処理し、ヒ素溶出濃度が0.15mg/L以下のスコロダイトを95%以上の転換率で生成させることを特徴とするスコロダイトの製造方法である。
【0013】
本発明の製造方法は、銅ヒ素含有物をナトリウム含有溶液でアルカリ酸化処理して銅分を除去したヒ素浸出液に、第二鉄化合物を添加して生成させた鉄ヒ素澱物を用いる。銅ヒ素含有物は、例えば、ヒ化銅(Cu
3As、Cu
5As
2)を含有する脱銅電解スライムなどである。ヒ化銅を含む脱銅電解スライムから鉄ヒ素澱物を生成する工程、および該鉄ヒ素澱物からスコロダイトを生成する処理工程の一例を
図1に示す。
【0014】
図示する処理例において、ヒ化銅を含む脱銅電解スライムに、水酸化ナトリウム液を加え、酸化剤として例えば空気や酸素を吹き込み、50℃〜60℃の加熱下で酸化浸出(アルカリ溶液による酸化浸出:アルカリ酸化浸出と云う)してヒ素を溶出し、銅分を酸化銅にして残渣にし、これを固液分離してヒ素浸出液を回収する。回収したヒ素浸出液に硫酸第二鉄などの第二鉄化合物を添加することによって鉄ヒ素澱物が生成する。該鉄ヒ素澱物は水酸化鉄にヒ酸イオンが吸着した状態の澱物であり、ヒ素の一部は非結晶質なヒ酸鉄として存在することもある。
【0015】
本発明の製造方法は、前記鉄ヒ素澱物を固液分離して洗浄し、必要に応じて硫酸などを加えて溶解し、pH1.5以下、好ましくはpH0.5以上〜1.0以下の酸性溶液(鉄ヒ素澱物溶解液)にし、
加熱処理して結晶質のスコロダイトを生成する方法において、該酸性溶液の
ヒ素濃度を8.85以上〜69.2以下g/Lの範囲で、Fe/Asモル比を
1.04以上〜1.18以下、およびナトリウム濃度を2.5g/L以上
に調整して加熱処理し、ヒ素溶出濃度が0.15mg/L以下のスコロダイトを95%以上の転換率で生成させる方法である。
【0016】
前記鉄ヒ素澱物の酸性溶液のpHが1.5より高いと該澱物が溶解し難く、pH0.5未満ではスコロダイトが生成し難い
。好ましくはpH0.5以上〜1.0以下の酸性溶液
にし、90℃以上に加熱して結晶質のスコロダイトを生成させる。
【0017】
本発明の製造方法は、前記酸性溶液の
ヒ素濃度を8.85以上〜69.2以下g/Lの範囲で、Fe/Asモル比を
1.04以上〜1.18以下の範囲に調整し、加熱処理してスコロダイトを生成させる。該Fe/Asモル比は、鉄ヒ素澱物のFe/Asモル比であるので、ヒ素浸出液などに硫酸第二鉄を添加して鉄ヒ素澱物を生成させるときに、鉄ヒ素澱物のFe/Asモル比が
1.04以上〜1.18以下の範囲になるように、ヒ素濃度
の範囲(8.85以上〜69.2以下g/L)に応じて硫酸第二鉄の添加量を調整し、前記Fe/Asモル比の鉄ヒ素澱物を生成させ、この鉄ヒ素澱物を用いればよい。
【0018】
Fe/Asモル比が1.0未満では、液中のヒ素量が過剰になり、安定なスコロダイトが生成し難く、また生成したスコロダイトからのヒ素溶出量が多くなる。一方、Fe/Asモル比が1.25を上回ると、スコロダイトへの転換率が低下し、操業効率が落ちる。
【0019】
本発明の製造方法は、前記溶液のFe/Asモル比が前記範囲において、該溶液の初期ナトリウム濃度が2.5g/L以上の範囲、好ましくは3.0g/L以上〜4.0g/L未満の範囲でスコロダイトを生成させる。該ナトリウム濃度はヒ素のアルカリ酸化浸出に由来するので、該ヒ素浸出液から回収した鉄ヒ素澱物に残留するナトリウムによって前記溶液のナトリウム濃度が前記範囲になるようにすればよい。
【0020】
ヒ化銅を含むスライムに水酸化ナトリウム液を加えアルカリ酸化浸出して得たヒ素浸出液に第二鉄化合物を添加して鉄ヒ素澱物を生成させたときに、この鉄ヒ素澱物にはヒ素浸出液に由来するナトリウムが残留している。通常は、固液分離・回収した鉄ヒ素澱物を洗浄することで、ナトリウムイオン、硫酸イオンなどの付着物の量を調整または除去することができる。
【0021】
本発明の製造方法において、前記鉄ヒ素澱物をpH1.5以下、好ましくはpH0.5以上〜1.0以下の酸性溶液にし、加熱
処理して結晶質のスコロダイトを生成するときに、該溶液の初期ナトリウム濃度がスコロダイトの安定性および転換率に大きな影響を及ぼすことが見出された。具体的には、
前記酸性溶液のヒ素濃度を8.85以上〜69.2以下g/Lの範囲で、Fe/Asモル比が
1.04以上〜1.18以下の範囲で、初期ナトリウム濃度を2.5g/L以上にしてスコロダイトを生成させることによって、ヒ素溶出量が0.15mg/L以下の結晶質スコロダイトを95%以上の転換率で製造することができる。
【0022】
さらに前記Fe/Asモル比の範囲で、初期ナトリウム濃度を3.0g/L以上〜4.0g/L未満に制御することによって、ヒ素溶出濃度が0.07mg/L以下のスコロダイトを98%以上の転換率で生成させることができる。なお、初期ナトリウム濃度が4.0g/L以上になると、スコロダイトへの転換率は約95.0%〜約97.5%であるので、スコロダイトを98%以上の高い転換率で製造するには鉄ヒ素酸性溶液の初期ナトリウム濃度は3.0g/L以上〜4.0g/L未満の範囲が好ましい。
【0023】
ヒ化銅を含むスライムに水酸化ナトリウム液を加えアルカリ酸化浸出して得たヒ素浸出液に第二鉄化合物を添加して生成させ回収した鉄ヒ素澱物を洗浄せずに溶解させると約8〜30g/Lのナトリウムが含まれている液が得られるので、鉄ヒ素澱物を洗浄しナトリウム濃度が2.5g/L以上、好ましくは3.0g/L以上、さらに好ましくは3.0g/L以上〜4.0g/L未満になるようにすればよい。
【0024】
一方、本発明の製造方法は、回収した鉄ヒ素澱物を洗浄せずに使用することもできる。この場合、溶液のナトリウム濃度は約8〜30g/L程度になる。
【0025】
本発明の製造方法によって生成したスコロダイトは結晶質である。このスコロダイトを回収し、その一部を鉄ヒ素澱物の生成工程に戻して種晶として使用することができる。