(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の技術を利用してガラス基板の端面全域に加熱溶融加工を施すようにすれば、研削加工や研磨加工のようにガラス粉が発生する事態を回避できる。また、加熱溶融により端面が平滑な火造り面となるため、当該端面からのガラス粉の流出を防止することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のように、ガラス基板の端面に向けてレーザー光を照射する場合には、ガラス基板の端面だけでなく主表面にもレーザー光が照射されることを考慮する必要がある。主表面にレーザー光が照射されると、加熱溶融により主表面のうちレーザー光が照射された部分の表面性状が変化して(例えば凹部や凸部が生じて)、ガラス基板の平坦度に影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
一方、ガラス基板の主表面にレーザー光が照射される事態を避け、端面内にのみレーザー光が照射されるようその照射範囲(スポット径や照射位置など)を調整した場合、端面の一部が加熱溶融されない可能性が生じ、結果として端面品位が不安定となる問題がある。また、端面の幅方向寸法(ガラス基板の厚み寸法)とレーザー光のビーム径、及びこれらの位置を完全に一致するよう精密に調整することは、量産工程では極めて困難である。
【0010】
以上の問題は何もガラス基板など矩形状の板ガラスに限ったことではなく、例えば円形状をなす半導体ウェハ支持用板ガラスなど、矩形状以外の板ガラスの周縁部にレーザー光を照射して所定の加熱処理を施す場合にも同様に起こり得る。
【0011】
以上の事情に鑑み、本発明では、板ガラスにおける主表面の表面性状を良好な状態に維持しつつ、レーザー光の照射により周縁部に加熱処理を施すことで、周縁部からのガラス粉の発生を可及的に防止することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題の解決は、本発明に係る板ガラスの製造方法により達成される。すなわち、この製造方法は、板ガラスの周縁部にレーザー光を照射して、周縁部を軟化点以上の温度に加熱する加熱工程を備え、加熱工程において、レーザー光の光源から板ガラスの一方又は他方の主表面に至るレーザー光の光路領域内にレーザー光の減衰部材を配設し、周縁部に向けてレーザー光を照射した際、照射したレーザー光の一部が周縁部に照射され、照射したレーザー光のうち板ガラスの一方又は他方の主表面に向かう部分が減衰部材により減衰するようにした点をもって特徴付けられる。なお、ここでいうレーザー光の光路領域とは、光源から各主表面までの間でレーザー光が通過する空間を意味する。また、ここでいう減衰には、レーザー光の遮断が含まれ
ないものとする。
【0013】
このように、本発明に係る板ガラスの製造方法では、板ガラスの周縁部に向けてレーザー光を照射するに際して、レーザー光の光源から板ガラスの主表面に至るレーザー光の光路領域内にレーザー光の減衰部材を配設して、周縁部に向けて照射したレーザー光の一部が周縁部に照射され、照射したレーザー光のうち板ガラスの主表面に向かう部分が減衰部材により減衰するようにした。このようにすることで、板ガラスの周縁部にはレーザー光が直接的に照射されると共に、板ガラスの主表面に向かうレーザー光は減衰した状態で照射され、あるいは遮断される。従って、周縁部を所望の態様で加熱できつつも、主表面にレーザー光が照射されることでその表面性状が変化する事態を可及的に防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、減衰部材はスリットを備え、スリットの延在方向が板ガラスの一方又は他方の主表面に沿った向きと一致するよう、減衰部材をレーザー光の光路領域内に配置して、スリットを通過したレーザー光を周縁部に照射するようにしてもよい。
【0015】
このように、減衰部材にスリットを設けて、このスリットの延在方向が板ガラスの一方又は他方の主表面に沿った向きと一致するよう、減衰部材をレーザー光の上記光路領域内に配置して、スリットを通過したレーザー光を周縁部に照射することにより、例えばスリットよりも照射範囲の大きなレーザー光を照射した場合であっても、周縁部に対して確実にレーザー光を照射しながら、主表面に対してレーザー光が直接的に照射される事態を回避することができる。従って、非常に簡易に周縁部を所望の態様に加熱しつつも、主表面にレーザー光が照射されることでその表面
性状が変化する事態を防止することが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、スリットを通じて周縁部を見た場合に、スリットの幅方向寸法が周縁部の板厚方向寸法と同じ大きさに設定されていてもよい。
【0017】
このように、スリットの幅方向寸法を上記の大きさに設定することによって、周縁部の全域に対して確実にレーザー光を照射することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、板ガラスの一方又は他方の主表面と当接する支持面を備えた支持部材を用い、支持面から周縁部を食み出させた状態で支持面により板ガラスを支持してもよい。
【0019】
このように、主表面と当接する支持面を備えた支持部材を用い、支持面から周縁部を食み出させた状態で板ガラスを支持するようにすれば、周縁部のうちレーザー光の照射により加熱溶融した部分が支持面と接触することはない。よって、上記板ガラスの溶融部が支持面と接触することにより主表面の表面性状や周縁部の歪みが変化する事態を確実に防止することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、支持部材が、支持面と、支持面の周囲に形成される溝とを有するものであってもよい。
【0021】
このように支持部材を構成することによって、板ガラスの周縁部が支持面から食み出た状態となり、かつ食み出た部分の下方に溝を配置することができる。よって、レーザー光の照射により加熱溶融した部分を溝で受けることができ、溶融部と支持面との接触をより確実に防止することができる。
【0022】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、減衰部材が、支持部材と一体に形成されていてもよい。
【0023】
減衰部材の位置は、板ガラスの主表面をレーザー光から保護する観点から非常に重要である。同様に、支持部材の位置は板ガラスの支持位置を左右することから、非常に重要である。よって、減衰部材を支持部材と一体に形成することにより、板ガラスの周縁部の位置決めと主表面に対する減衰部材の位置決めを同時にかつ自動的に行うことができる。よって、精度よく周縁部に対してレーザー光の照射による加熱処理を施すことが可能となる。
【0024】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、板ガラスと、板ガラスを支持面で支持する支持部材とを交互に積層すると共に、板ガラス各々の周縁部に対応する位置に複数のスリットを配置し、各スリットを通過したレーザー光を対応する板ガラスの周縁部に照射するようにしてもよい。
【0025】
このように複数の板ガラスを積層した状態で、それぞれの周縁部に対応する位置にスリットを配置し、各スリットを介してレーザー光を対応する周縁部に照射することによって、複数の板ガラスの周縁部に対してまとめてレーザー光を照射することができる。もちろん、光源から各板ガラスの主表面に至るレーザー光の光路領域内に配設された減衰部材により、各板ガラスの主表面に対してレーザー光が直接的に照射される事態を回避することができるので、板ガラスの加工精度を高めつつその加工効率を向上させることが可能となる。
【0026】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、レーザー光の照射範囲内に複数の板ガラスの周縁部が同時に含まれるように、レーザー光の照射範囲を調整してもよい。
【0027】
複数の板ガラスを積層した状態で各板ガラスの周縁部に加熱処理を施す場合、上述のように照射するレーザー光の照射範囲を調整することによって、一本のレーザー光でもって積層状態にある全ての板ガラスの周縁部に同時にレーザー光を照射することができる。よって、非常に効率よく板ガラスの周縁部に加熱処理を施すことが可能となる。
【0028】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、少なくとも周縁部とつながる一方又は他方の主表面の端部を減衰部材で覆った状態で、レーザー光を周縁部に向けて照射してもよい。
【0029】
このように、板ガラスの一方又は他方の主表面のうち少なくとも周縁部とつながる主表面の端部を減衰部材で覆った状態で、レーザー光を周縁部に向けて照射することによっても、板ガラスの主表面に向かうレーザー光は減衰され、あるいは遮断される。従って、板ガラスの周縁部にレーザー光を直接的に照射することで当該周縁部を所望の態様で加熱できつつも、主表面にレーザー光が照射されることでその表面性状が変化する事態を可及的に防止することができる。
【0030】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、板ガラスの一方又は他方の主表面を支持する支持部材が、減衰部材であってもよい。
【0031】
このように支持部材を減衰部材とすることによって、板ガラスの主表面をその全面で支持しつつ当該主表面をレーザー光から保護することができる。よって、レーザー光の照射による板ガラスの加熱装置を簡易に構成することが可能となる。
【0032】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、板ガラスを歪点以上でかつ軟化点未満の温度に加熱した状態で、レーザー光を照射してもよい。
【0033】
このように板ガラスを予め加熱した状態でレーザー光を照射することにより、レーザー光が照射される周縁部と、周縁部以外の部分との温度差を小さくすることができる。よって、レーザー光の照射により板ガラスが割れる事態を可及的に防止することが可能となる。
【0034】
また、本発明に係る板ガラスの製造方法においては、板ガラスが矩形状をなし、加熱工程は、レーザー光を照射するレーザー光照射装置を板ガラスの一つの辺縁部に沿って移動させながら、一つの辺縁部の長手方向全域にレーザー光を照射するレーザー光照射ステップと、板ガラスを一方又は他方の主表面の法線まわりに90度回転させる板ガラス回転ステップとを備え、一つの辺縁部に対してレーザー光照射ステップを実行する度に、板ガラス回転ステップを実行して、残りの三つの辺縁部にレーザー光を順次照射してもよい。
【0035】
このように、レーザー光照射装置のスライド動作と、板ガラスの軸回転を組み合わせることによって、各々最小限の動きで、必要十分なレーザー光の走査を行うことができる。よって、効率よくレーザー光の照射を行うことができ、かつ加熱装置の簡素化にもつながる。
【0036】
また、前記課題の解決は、本発明に係る板ガラスの製造装置によっても達成される。すなわち、この製造装置は、板ガラスの周縁部にレーザー光を照射して、周縁部を軟化点以上の温度に加熱するための加熱装置を備えた、板ガラスの製造装置であって、加熱装置は、レーザー光の光源を有し、光源からレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、レーザー光の光源から板ガラスの一方又は他方の主表面に至るレーザー光の光路領域内に配設されるレーザー光の減衰部材とを備え、周縁部に向けてレーザー光を照射した際、照射したレーザー光の一部が周縁部に照射され、照射されたレーザー光のうち一方又は他方の主表面に向かう部分が減衰部材により減衰するようにした点をもって特徴付けられる。
【0037】
このように、本発明に係る板ガラスの製造装置では、板ガラスの周縁部に向けてレーザー光を照射するに際して、レーザー光の光源から板ガラスの主表面に至るレーザー光の光路領域内にレーザー光の減衰部材を配設して、周縁部に向けて照射したレーザー光の一部が周縁部に照射され、照射したレーザー光のうち板ガラスの主表面に向かう部分が減衰部材により減衰するようにした。このようにすることで、本発明に係る板ガラスの製造方法と同様、板ガラスの周縁部にはレーザー光が直接的に照射されると共に、板ガラスの主表面に向かうレーザー光は減衰された状態で照射され、あるいは遮断される。従って、周縁部を所望の態様で加熱できつつも、主表面にレーザー光が照射されることでその表面性状が変化する事態を可及的に防止することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上に述べたように、本発明によれば、板ガラスにおける主表面の表面性状を良好な状態に維持しつつ、レーザー光の照射により周縁部に加熱処理を施すことで、周縁部からのガラス粉の発生を可及的に防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
≪本発明の第一実施形態≫
以下、本発明の第一実施形態を
図1〜
図8を参照して説明する。まず本実施形態に係る加熱工程に使用する加熱装置の概要について、
図1〜
図4に基づき説明する。
【0041】
図1に示すように、加熱装置10は、板ガラス1の周縁部2を板ガラス1の軟化点以上の温度に加熱するものであって、板ガラス1を支持する支持部材11と、周縁部2に対してレーザー光Lを照射するレーザー光照射装置12と、レーザー光Lを減衰させる減衰部材13とを備える。本実施形態では、加熱装置10は、加熱炉14と、板ガラス1の回転機構15とをさらに備えている。
【0042】
ここで、加熱装置10の対象となる板ガラス1は、例えば有機EL照明用ガラス基板であり、典型的な形状として
図2に示すような矩形状をなす。この場合、板ガラス1の周縁部2は、四つの辺縁部2a〜2dを有し、各辺縁部2a〜2dは、例えば割断等の公知の手段によりガラス原板から切り出された際に生成される。もちろん、本加熱工程に提供される前の段階で、各辺縁部2a〜2dに対して何らかの加工(例えば面取りのための研削加工、粗研磨加工など)を施しておいてもかまわない。
【0043】
板ガラス1の一つの辺縁部2a(2b〜2d)の長手方向寸法は、例えば10mm以上でかつ1500mm以下であり、好ましくは100mm以上でかつ1000mm以下であり、より好ましくは300mm以上でかつ600mm以下である。また、板ガラス1の厚み寸法は例えば0.03mm以上でかつ10mm以下であり、好ましくは、0.1mm以上でかつ3mm以下であり、より好ましくは0.3mm以上でかつ0.9mm以下である。
【0044】
また、上記用途の板ガラス1としての組成を考えた場合、板ガラス1は、ガラス組成として、質量%で、例えばSiO
2:70〜73%、Al
2O
3:1.0〜1.9%、Fe
2O
3:0.08〜0.14%、MgO:1.0〜4.5%、CaO:7〜12%、R
2O:13〜15%を含有する。この場合、歪点は500℃以上である。
【0045】
もちろん、本発明を適用可能な板ガラス1は上記形態には限定されない。例えば矩形以外の形状(例えば多角形や円形)を有する板ガラスや、各寸法が上記範囲を外れるサイズの板ガラス、以上以外のガラス組成を有する板ガラスに対しても本発明を適用し得る。言い換えると、上記例示以外の用途に係る板ガラスに対しても当然に本発明を適用し得る。
【0046】
上記形態及び組成の板ガラス1は、例えばダウンドロー法で成形され、好ましくはオーバーフローダウンドロー法で成形される。この方法で成形することにより、大面積で表面精度が良好な板ガラス1を効率良く成形することができる。この場合、板ガラス1の各主表面3a,3bは共に火造り面(成形面、アズフォーム面ともいう。)となる。もちろん、上述の記載は、ダウンドロー法以外の成形手段による板ガラス1の成形を否定するものではなく、フロート法など他の公知の成形手段を採用することも可能である。
【0047】
支持部材11は、
図1に示すように板ガラス1の一方の主表面3a(ここでは下方の主表面)を支持する支持面16を有する。ここで支持面16は、レーザー光Lの照射方向に対して平行となる向き(
図1でいえばレーザー光Lと支持面16は共に水平方向、板ガラス1の厚み方向は鉛直方向)となるように配置される。
【0048】
また、支持面16の形状及び大きさは、
図1に示すように、板ガラス1を支持面16で支持した状態において板ガラス1が支持面16から食み出るように設定される。本実施形態では、板ガラス1の四つの辺縁部2a〜2dが全て支持面16から食み出るように(
図2を参照)、支持面16の形状及び大きさが設定される。なお、食み出し量pは任意であるが、レーザー光Lの照射により加熱溶融した部分が支持面16に付着する事態を防止する観点からは、少なくとも食み出し量pが板ガラス1の厚み寸法tの0.5倍以上であることが望ましい。その一方で、あまりに食み出し量pが大きすぎると、支持状態における板ガラス1の平坦度に影響を及ぼすおそれがあるため、食み出し量pは最大で2mm程度までに留めておくのがよい。
【0049】
支持部材11の材質は原則として任意であるが、レーザー光Lの照射による板ガラス1との付着、及び板ガラス1を歪点以上でかつ軟化点未満の温度に加熱した時に支持部材11の表面が板ガラス1へ転写されることを可及的に防止する観点から、例えばマシナブルセラミックス(組成の一例として、SiO
2が質量%で54%、Al
2O
3が質量%で42%含まれるものを挙げることができる)、ムライト(アルミノケイ酸塩鉱物)、結晶化ガラス(例えば日本電気硝子株式会社製のネオセラムN−0など)などが好適に使用可能である。
【0050】
レーザー光照射装置12は、支持部材11に支持された状態の板ガラス1の周縁部2に対して、図示しない光源から所定のレーザー光Lを照射可能とする。レーザー光照射装置12から照射されるレーザー光Lは、レンズで集光(フォーカス)されていない非集光レーザーである。また、ガスを媒体とする場合、CО
2レーザーが好適に使用可能である。レーザー光Lのサイズ(ビーム径D)については後述する。
【0051】
レーザー光照射装置12により、板ガラス1の周縁部2に向けてレーザー光Lを照射可能な限りにおいて、レーザー光Lの照射方向は原則として任意である。本実施形態では、
図1に示すように、照射対象となる面(ここでは第一の辺縁部2aの表面)に対して直交する向きにレーザー光Lの照射方向が設定されている。また、板ガラス1を平面視した状態においても、本実施形態では、照射対象となる面(例えば
図2に示す第一の辺縁部2aの表面)に対して直交する向きにレーザー光Lの照射方向が設定されている。
【0052】
また、レーザー光Lは、各辺縁部2a〜2dの長手方向に沿って走査可能とされている。具体的には、
図2に示すように、レーザー光照射装置12が所定の方向に直線往復動できるようにし、かつその直線移動量を、少なくとも各辺縁部2a〜2dの長手方向寸法分とすることにより、各辺縁部2a〜2dの長手方向全域にわたってレーザー光Lを照射可能としている。
【0053】
減衰部材13は、
図3に示すように、レーザー光照射装置12の側から見て周縁部2(
図3では第一の辺縁部2a)の周囲に配設されている。言い換えると、レーザー光照射装置12と周縁部2との間(
図1を参照)に減衰部材13が配設されている。また、減衰部材13はスリット17を有しており(
図1を参照)、スリット17の延長線上に板ガラス1の周縁部2が位置している(
図4を参照)。本実施形態では、減衰部材13は、板ガラス1を収容する加熱炉14と一体的に形成されており、減衰部材13に設けられたスリット17を通じて、レーザー光Lが周縁部2に照射されるようになっている。
【0054】
このスリット17の幅方向寸法wは、
図4に拡大して示すように、板ガラス1の厚み寸法tと同じ大きさに設定されている。これにより、レーザー光照射装置12の側からスリット17を見た場合、スリット17を通じて板ガラス1の周縁部2のみが視認され得る。よって、非集光レーザーとしてのレーザー光Lを周縁部2に向けて照射した場合、スリット17を通過したレーザー光Lは周縁部2のみに照射される。
【0055】
また、この際、照射対象となる周縁部2(
図4では第一の辺縁部2a)の板厚方向全域がレーザー光Lの照射範囲に含まれるように、レーザー光Lの照射範囲を適当な大きさに設定するのがよい。具体的には、レーザー光Lが所定のビーム径Dを有する場合、
図4に示すように、ビーム径Dを板ガラス1の厚み寸法tよりも大きく設定するのがよい。
【0056】
加熱炉14は、加熱炉14内に収容された板ガラス1全体を例えば板ガラス1の歪点以上でかつ軟化点未満の温度(例えば、板ガラス1の歪点Ps+0〜30℃)にまで加熱可能としている。
【0057】
回転機構15は、支持部材11を所定の回転軸X(
図1を参照)まわりに回転させるもので、これにより支持部材11に支持された状態の板ガラス1を回転軸Xまわりに回転可能としている。本実施形態では、板ガラス1(の一方及び他方の主表面3a,3b)の法線方向が回転軸Xと一致している。
【0058】
次に、上記構成の加熱装置10を用いた板ガラス1の周縁部2に対する加熱工程の一例を、本発明の作用効果と共に説明する。
【0059】
本実施形態に係る加熱工程は、レーザー光照射装置12を板ガラス1の任意の一つの辺縁部2a(2b、2c、2d)に沿って移動させながら、当該一つの辺縁部2a(2b、2c、2d)の長手方向全域にレーザー光Lを照射するレーザー光照射ステップS1と、板ガラス1を一方又は他方の主表面3a,3bの法線まわりに90度回転させる板ガラス回転ステップS2とを備える。
【0060】
(S1)レーザー光照射ステップ
まず加熱対象となる第一の辺縁部2aを、
図5に示すようにレーザー光照射装置12の側に向けた状態から、レーザー光照射装置12を所定の位置間(
図5中の二点鎖線で示す位置から実線で示す位置までの間)で移動させる。そして、移動させながらレーザー光Lを第一の辺縁部2aに向けて照射する。これによりレーザー光Lが第一の辺縁部2aの一端部2a1から他端部2a2に至るまでの領域(すなわち第一の辺縁部2aの長手方向全域)に照射される。また、この際、レーザー光Lのビーム径Dを板ガラス1の厚み寸法tよりも大きく設定することで(
図4を参照)、レーザー光Lが第一の辺縁部2aの板厚方向全域にわたって照射される。以上より、第一の辺縁部2aの全域にレーザー光Lが照射され、板ガラス1の軟化点以上の温度にまで加熱される。
【0061】
また、この際、レーザー光照射装置12と板ガラス1との間に減衰部材13を配設すると共に、減衰部材13にスリット17を設け、かつスリット17の延長線上に板ガラス1の周縁部2が位置するよう、減衰部材13及びスリット17を配置し、スリット17を通過したレーザー光Lを第一の辺縁部2aに照射するようにした(
図1及び
図4を参照)。この構成によれば、第一の辺縁部2aにはレーザー光Lが直接的に照射されると共に、板ガラス1の各主表面3a,3bに向かうレーザー光Lは減衰する。従って、スリット17の幅方向寸法wと同じ大きさあるいはそれより大きいビーム径Dを有するレーザー光Lを照射することにより(
図4を参照)、第一の辺縁部2aの全域に対して確実にレーザー光Lを照射しつつも、各主表面3a,3bに対してレーザー光Lが直接的に照射される事態を回避することができる。従って、非常に簡易に第一の辺縁部2aを所望の態様に加熱しつつも、各主表面3a,3bにレーザー光Lが照射されることでその表面性状が変化する事態を防止することが可能となる。また、ビーム径Dを板ガラス1の厚み寸法tと同じ大きさにして第一の辺縁部2aのみにレーザー光Lを照射した場合と比べて、レーザー光Lの強度分布の影響を受けにくくなるので、第一の辺縁部2a全域に対して均質な加熱処理を施すことができる。
【0062】
(S2)板ガラス回転ステップ
このようにして、第一の辺縁部2aに対する加熱処理が完了した後、回転機構15により支持部材11を回転軸X(
図1を参照)まわりに90度回転させ、
図6に示すように、支持部材11に支持された状態の板ガラス1を各主表面3a,3bの法線まわりに90度回転させる。
図6中の二点鎖線で示す位置が回転する前、実線で示す位置が回転した後の位置をそれぞれ示している。これにより、第一の辺縁部2aと周縁部2において隣り合う第二の辺縁部2bがレーザー光照射装置12と向かい合う位置に配設される。そして、レーザー光照射装置12を
図6の二点鎖線で示す位置まで移動させた後、レーザー光照射装置12を所定の位置間(
図6中の二点鎖線で示す位置から実線で示す位置までの間)で移動させながら、レーザー光Lを第二の辺縁部2bの一端部2b2から他端部2b1に至るまでの領域(すなわち第二の辺縁部2bの長手方向全域)に照射する。もちろん、この際も、レーザー光照射装置12と板ガラス1との間に減衰部材13が配設され、減衰部材13に設けられたスリット17の延長線上に板ガラス1の周縁部2が位置しているので、スリット17を通じて第二の辺縁部2bの全域に対して確実にレーザー光Lを照射しつつも、各主表面3a,3bに対してレーザー光Lが直接的に照射される事態を回避することができる。
【0063】
然る後、上述した板ガラス回転ステップS2とレーザー光照射ステップS1を繰り返し実行することにより、第二の辺縁部2bと隣り合う第三の辺縁部2c、及び第三の辺縁部2cと隣り合う第四の辺縁部2dの長手方向全域にレーザー光Lを照射する。以上より、各主表面3a,3bにレーザー光Lが照射されることで各々の表面性状が変化する事態を防止しつつも、周縁部2に含まれる全ての辺縁部2a〜2dに対しその全域にわたって所定の加熱処理を施すことが可能となる。
【0064】
図7に、上述した加工工程の前後における板ガラスの辺縁部の断面写真の一例を示す。また、
図8に、上述した加熱工程の前後における板ガラスの辺縁部の側面写真の一例を示す。
図7(a)及び(b)に示すように、加熱工程の前後で板ガラスの辺縁部は丸みを帯びた形状に成形加工されていることが分かる。また、
図8(a)及び(b)に示すように、加熱工程の前後で板ガラスの辺縁部はその表面が滑らかになっている(表面性状が改善されている)ことが分かる。一方で、
図7(a)及び(b)に示すように、加工工程の前後で主表面のうち辺縁部とつながっている部分(各写真に映り込んでいる部分)の表面性状に特に変化は見られないことが分かる。
【0065】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、もちろん本発明に係る板ガラスの製造方法及び製造装置はこの形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の形態をとることが可能である。
【0066】
≪本発明の第二実施形態≫
図9は、本発明の第二実施形態に係る加熱装置20の概略断面図である。
図9に示すように、この加熱装置20は、複数の板ガラス1,1…に対してレーザー光Lを照射するもので、これら複数の板ガラス1を積層した状態で支持するための複数の支持部材21〜24と、各支持部材21〜24に設けられた減衰部材25〜28と、板ガラス1の厚み方向で隣り合う減衰部材25〜28の間に配設されるスリット29〜31とを主に有する。なお、加熱炉14と回転機構15については第一実施形態と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0067】
本実施形態において、支持部材21〜24は、支持すべき板ガラス1の数より一つ多く加熱炉14内に設置されている。ここで、各支持部材21〜24にはそれぞれ支持面21a,22a,22b,23a,23b,24aが設けられている。各支持面21a,22a,22b,23a,23b,24aのうち互いに対向する面21a,22a(22b,23a、23b,24a)で、板ガラス1が支持されている。
【0068】
また、減衰部材25〜28は、対応する各支持部材21〜24の外周に設けられている。このうち互いに対向する減衰部材25,26(26,27、27,28)の間に、スリット29〜31が形成されている。各減衰部材25〜28は、例えば
図10に示すように、対応する板ガラス1の周縁部2の全周を囲むように配設されている。そのため、これら減衰部材25〜28の間に形成されるスリット29〜31も、対応する板ガラス1の周縁部2の全周を囲むように配設されている。
【0069】
本実施形態においても、減衰部材25〜28は、レーザー光照射装置12の側から見て周縁部2(
図9では第一の辺縁部2a)の周囲であってレーザー光照射装置12と各板ガラス1,1…との間に配設されている。本実施形態では、減衰部材25〜28は、対応する支持部材21〜24と一体的に形成されており、支持部材21〜24間に板ガラス1,1…を配置することで、向かい合う減衰部材25,26(26,27、27,28)の間に対応するスリット29〜31が形成されるようになっている。各スリット29〜31の延長線上には、それぞれに対応する板ガラス1の周縁部2が位置している(
図11を参照)。
【0070】
ここで、各スリット29〜31の幅方向寸法wは何れも、
図11に拡大して示すように、板ガラス1の厚み寸法tと同じ大きさに設定されている。これにより、非集光レーザーとしてのレーザー光Lを周縁部2に向けて照射した場合、加熱炉14に設けられた窓32、そして各スリット29〜31を通過したレーザー光Lはそれぞれ対応する板ガラス1の周縁部2のみに照射される。
【0071】
また、この際、照射対象となる三枚の板ガラス1各々の周縁部2(
図11では三つの第一の辺縁部2a)全てがレーザー光Lの照射範囲に同時に含まれるように、レーザー光Lの照射範囲が適当な大きさに設定される。具体的には、
図11において、支持部材21〜24で支持された状態の三つの板ガラス1のうち最も下位の板ガラス1の下方の主表面3aから最も上位の板ガラス1の他方の主表面3bまでの距離dよりも大きくなるよう、レーザー光Lの照射範囲を設定するのがよい。例えば、レーザー光Lの照射形状が円形である場合、そのビーム径Dを距離dよりも大きくなるよう拡径する。なお、照射形状が楕円状やライン状のレーザー光Lを用いることによって照射範囲を拡大してもよい。
【0072】
また、支持部材21〜24には、各支持面21a,22a,22b,23a,23b,24aの外周に沿って、所定深さの溝21c,22c,22d,23c,23d,24cが設けられている。なお、各支持面21a,22a,22b,23a,23b,24aの面形状は、支持する板ガラス1,1…の主表面より寸法の小さな略相似形である。すなわち、本実施形態において支持面21a,22a,22b,23a,23b,24aは矩形状である。このような形状とすることで板ガラス1,1…を安定して支持可能である。溝21c,22c,22d,23c,23d,24cは、例えば
図10に代表的に示すように各支持面21a,22a,22b,23a,23b,24aの全周に沿って、各支持面を囲むように形成されており、これにより、各板ガラス1の周縁部2が支持部材21〜24と確実に非接触の状態としている。また、周縁部2の下方に所定深さの溝21c,22c,22d,23c,23d,24cを配設することで、レーザー光Lの照射により加熱溶融した部分が周囲に流出する事態を防止している。ここで、溝21c,22c,22d,23c,23d,24cの深さ寸法は例えば0.1mm以上でかつ1.0mm以下に設定される。
【0073】
なお、支持部材21〜24の材質、使用するレーザー光Lの条件については、第一実施形態と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0074】
次に、上記構成の加熱装置20を用いた板ガラス1の周縁部2に対する加熱工程の一例を、本発明の作用効果と共に説明する。
【0075】
本実施形態に係る加熱工程は、第一実施形態と同様、レーザー光照射ステップS1と、板ガラス回転ステップS2とを備える。
【0076】
このうちレーザー光照射ステップS1においては、加熱対象となる三つの板ガラス1における第一の辺縁部2a,2a,2a全てをレーザー光照射装置12の側に向けた状態から、レーザー光照射装置12を
図5に示す如く所定の位置間で移動させる。そして、移動させながらレーザー光Lを第一の辺縁部2a,2a,2aに向けて照射する。これによりレーザー光Lが第一の辺縁部2aの長手方向全域にわたって照射される。また、この際、積層状態にある三つの板ガラス1全ての辺縁部2aが一本のレーザー光Lの照射範囲に含まれるように(
図11でいえばビーム径Dが距離d以上となるように)、レーザー光Lのビーム径Dを設定することで、レーザー光Lが三つの辺縁部2a全ての板厚方向全域にわたって照射される。以上より、積層状態にある三つの辺縁部2aの全域にレーザー光Lが照射され、板ガラス1の軟化点以上の温度にまで加熱される。
【0077】
また、この際、レーザー光照射装置12と各板ガラス1との間に減衰部材25〜28を配設すると共に、これら減衰部材25〜28の間にスリット29〜31を設け、かつ各スリット29〜31の延長線上にそれぞれ対応する板ガラス1の周縁部2が位置するよう、減衰部材25〜28及びスリット29〜31を配置し、各スリット29〜31を通過したレーザー光Lをそれぞれ対応する第一の辺縁部2a,2a,2aに照射するようにした(
図9及び
図11を参照)。この構成によれば、第一の辺縁部2aにはレーザー光Lが直接的に照射されると共に、板ガラス1の各主表面3a,3bに向かうレーザー光Lは減衰する。従って、各主表面3a,3bに対してレーザー光Lが直接的に照射される事態を回避しつつ、一本のレーザー光Lでもって積層状態にある全ての板ガラス1の周縁部2(辺縁部2a)にレーザー光Lを照射することができる。よって、非常に効率よく加熱処理を施すことが可能となり、生産性が向上する。
【0078】
然る後、上述した板ガラス回転ステップS2とレーザー光照射ステップS1を繰り返し実行することにより、第一の辺縁部2aと隣り合う第二の辺縁部2b、第二の辺縁部2bと隣り合う第三の辺縁部2c、及び第三の辺縁部2cと隣り合う第四の辺縁部2dの長手方向全域にレーザー光Lを照射する。以上より、各主表面3a,3bにレーザー光Lが照射されることで各々の表面性状が変化する事態を防止しつつも、積層状態にある三つの板ガラス1について周縁部2に含まれる全ての辺縁部2a〜2dに対しその全域にわたって所定の加熱処理を施すことが可能となる。
【0079】
≪本発明の第三実施形態≫
図12は、本発明の第三実施形態に係る加熱装置40の概略断面図である。
図12に示すように、この加熱装置40は、一つの板ガラス1を一対の支持部材41,42で挟持した構造を有する。
【0080】
ここで、板ガラス1の主表面3a,3bはその全域にわたって支持部材41,42で覆われており、周縁部2(本実施形態では四つの辺縁部2a〜2d)のみが露出した状態となっている。従って、
図12に示すように辺縁部2a〜2dが略平坦な切断面又は割断面である場合、支持部材41,42の端面41a,42aはともに辺縁部2a〜2dと同一平面レベルにある。
【0081】
また、本実施形態では、支持部材41,42は減衰部材としても機能する。よって、この場合、支持部材41,42の材質は、使用するレーザー光Lを必要なレベルにまで減衰可能な特性を有するものが好適である。なお、レーザー光照射装置12、加熱炉14、及び回転機構15については第一実施形態と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0082】
このように、板ガラス1の双方の主表面3a,3bのうち少なくとも辺縁部2aとつながる端部3a1,3b1を減衰部材としての支持部材41,42で覆った状態で、レーザー光Lを周縁部2(辺縁部2a〜2d)に向けて照射することによって、板ガラス1の主表面3a,3bに向かうレーザー光Lは減衰する。従って、板ガラス1の辺縁部2a〜2dにレーザー光Lを直接的に照射することで辺縁部2a〜2dを所望の態様で加熱できつつも、主表面3a,3bにレーザー光Lが照射されることでその表面性状が変化する事態を可及的に防止することができる。
【0083】
また、本実施形態では、板ガラス1の主表面を支持する支持部材41,42を、ともに減衰部材とした。これによれば、板ガラス1の主表面3a,3bをその全面で支持しつつこれら主表面3a,3bをレーザー光Lから保護することができる。よって、レーザー光Lの照射による板ガラス1の加熱装置40を簡易に構成することが可能となる。
【0084】
もちろん、減衰部材13,25〜28,41,42の配置態様は上記例示の形態には限られない。レーザー光Lの光源から板ガラス1の各主表面3a,3bに至るレーザー光Lの光路領域内に減衰部材13,25〜28,41,42が配設される限りにおいて、その配置態様は任意である。
【0085】
なお、以上の説明では、周縁部2に含まれる四つの辺縁部2a〜2dのみに加熱処理を施す場合を例示したが、もちろん、周縁部2に含まれる部位である限りにおいて、辺縁部2a〜2d以外の部位に本発明を適用することも可能である。以下、その例を第四実施形態及び第五実施形態として説明する。
【0086】
≪本発明の第四実施形態≫
本実施形態に係る板ガラス1は、
図13に示すように、各辺縁部2a〜2dの間に一つ以上のコーナーカット部4を有する。この場合、コーナーカット部4に対するレーザー光Lの照射ステップS1は、レーザー光照射装置12を以下の軌跡Tに沿って移動させながら周縁部2をなす辺縁部2a(2b〜2d)及びコーナーカット部4に対してレーザー光Lを照射することで行われる。
【0087】
ここで、軌跡Tは、まず辺縁部2aの長手方向に沿って直線移動する第一軌跡T1と、第一軌跡T1の終点から連続してコーナーカット部4の長手方向に沿って移動する第二軌跡T2とを有する。この間、レーザー光Lの照射方向は常に一定(辺縁部2aの長手方向に対して直交する向き)である。これにより、レーザー光Lの照射は、レーザー光照射装置12と被照射面との距離が常に一定に保たれた状態で実施されるので、レーザー光Lを継続的に照射して辺縁部2a〜2dとコーナーカット部4を短時間で加熱処理することが可能となる。
【0088】
≪本発明の第五実施形態≫
本実施形態に係る板ガラス1についても、
図14に示すように、各辺縁部2a〜2dの間に一つ以上のコーナーカット部4を有する。この場合、コーナーカット部4に対するレーザー光Lの照射ステップS1は、レーザー光照射装置12を以下の軌跡Tに沿って移動させながら周縁部2をなす辺縁部2a(2b〜2d)及びコーナーカット部4に対してレーザー光Lを照射することで行われる。
【0089】
具体的に、この場合の軌跡Tは、まず辺縁部2aの長手方向に沿って直線移動する第一軌跡T3と、第一軌跡T3の終点から連続してコーナーカット部4の長手方向に沿って移動する第二軌跡T4とを有する。この間、レーザー光Lの照射方向は第一軌跡T3と、第二軌跡T4とで異なる。すなわち、第一軌跡T3では、辺縁部2aの長手方向に直交する向きであるのに対し、第二軌跡T4では、辺縁部2aではなくコーナーカット部4の長手方向に直交する向きとしている。これにより、レーザー光Lの照射方向は、常に被照射面(辺縁部2a、コーナーカット部4)に直交する向きとなるため、被照射面の向きに関わらず、安定した品質の加熱処理を施すことが可能となる。
【0090】
なお、上記実施形態では、板ガラス1を固定して、レーザー光照射装置12を移動させることで、レーザー光Lを走査するようにしたが、もちろん、場合によっては、レーザー光照射装置12を固定して、板ガラス1を移動させることで、レーザー光Lを走査してもよいし、板ガラス1とレーザー光照射装置12を共に移動させることで、レーザー光Lを走査してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、辺縁部2a〜2dを加熱溶融して、全体として丸みを帯びた形状に加工(いわゆるR面取り加工)を施した場合を例示したが、もちろんこの形態には限られない。例えば辺縁部2aなど周縁部2に含まれる角部を取り除いて滑らかな面形状とする場合など、レーザー光Lの照射条件によっては、R面取り以外の種類の加工を周縁部2に対して施すことも可能である。
【0092】
また、本発明の目的は周縁部2からのガラス粉の発生を防止する点にあることを鑑みれば、レーザー光Lの照射による加熱処理で周縁部2の形状を積極的に変化させなくてもよい。周縁部2表面の微小な凹凸が均されればよい。あるいは、周縁部2の表面に既に付着しているガラス粉が加熱溶融により周縁部2の表面に固着すればよい。