(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
窓部材の周縁部を支持する支持部材と、前記窓部材に対向配置し、被処理物体を載置するステージの外周側面との間に配置された、断面中空に形成され、中空への流体の注入により断面が膨張する膨張シールを、前記窓部材と前記ステージとが対向する第一方向に対して垂直な第二方向に膨張させて前記ステージの外周側面を押圧し、前記窓部材と前記ステージとの間の空間であって、前記ステージに載置された前記被処理物体が前記窓部材を通して照射される光によって処理される処理空間を気密に封止する工程と、
前記被処理物体に前記窓部材を通して前記光を照射する工程と、を含むことを特徴とする光照射方法。
窓部材と、前記窓部材に対向配置し、被処理物体を載置するステージとの間の空間であって、前記ステージに載置された前記被処理物体が前記窓部材を通して照射される光によって処理される処理空間を、シール部材により気密に封止する工程と、
前記窓部材と前記ステージとが対向する第一方向に伸縮可能な少なくとも3個の流体圧シリンダの設定圧をそれぞれ個別に調整し、前記流体圧シリンダにより前記ステージにおける前記窓部材に対向する面とは反対側の面を支持する工程と、を含むことを特徴とする光照射方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の光照射装置では、被処理物体を載置するステージ上面の周縁部と窓部材との間にシール部材を介在させることで、窓部材とステージとの間の処理空間を気密に封止している。この処理空間は、被処理物体を搬入および搬出するたびに開放されるため、シール部材としては、ゴム部材などの弾性を有する部材が用いられる。
ところで、上記の処理空間は、窓とステージとの間にきわめて微小なギャップを精度よく形成することが求められる。しかしながら、上記従来の装置構成では、シール部材が窓部材に押し付けられた際のシール部材の反発力によって窓部材が押し上げられ、窓部材とステージ(被処理物体)とのギャップが不均一になるという問題がある。光源からの紫外線は処理空間中の処理用ガスに吸収されるため、窓部材と被処理物体とのギャップが不均一であると、被処理物体に届く紫外線の量がワークWの場所により不均一となり、その結果、処理に不均一が生じてしまう。
そこで、本発明は、窓部材とステージとのギャップを均一に形成しつつ、シール部材によって処理空間を気密に封止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る光照射装置の一態様は、窓部材を通して光を照射する光源部と、前記窓部材に対向配置し、被処理物体を載置するステージと、前記窓部材の周縁部を支持する支持部材と、前記窓部材と前記ステージとの間の空間であって、前記ステージに載置された前記被処理物体が前記光によって処理される処理空間を気密に封止するシール部材と、を備え、前記シール部材は、断面中空に形成され、中空への流体の注入により断面が膨張する膨張シールであり、前記支持部材と前記ステージの外周側面との間に配置され、前記窓部材と前記ステージとが対向する第一方向に対して垂直な第二方向に膨張されて前記ステージの外周側面を押圧し、前記処理空間を気密に封止する。
このように、シール部材を窓部材に押し当てるのではなく、ステージの側面に押し当てる構成であるため、従来装置のようなシール部材の反発力による窓部材の押し上げを防止し、窓部材とステージとのギャップが不均一となることを防止することができる。また、膨張シールにより構成されるシール部材を、窓部材とステージとが対向する方向に対して垂直な方向に膨張させるため、シール部材によってステージの外周側面を垂直に押圧することができる。そのため、シール部材がステージの外周側面に押し当てられた際に、シール部材の押圧力によりステージがチルトすることを防止することができる。したがって、被処理物体の全面に対して均一な処理を施すことができる。
【0008】
また、上記の光照射装置において、前記シール部材の膨張方向を、前記第二方向に規制する膨張方向規制部をさらに備えてもよい。この場合、シール部材を、ステージの外周側面に対して精度よく垂直に押し当てることができ、シール部材のステージへの密着時にステージがチルトすることをより適切に防止することができる。
【0009】
さらに、上記の光照射装置において、前記ステージにおける前記窓部材に対向する面とは反対側の面を支持し、前記第一方向に伸縮可能な少なくとも3個の流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダの設定圧をそれぞれ個別に調整可能な圧力制御機構と、を有するシリンダユニットをさらに備えてもよい。このように、ステージをシリンダユニットにより支持することで、装置の組立精度や部品精度などによりステージと窓部材との平行度にずれが生じている場合や、シール部材のステージへの密着時にステージがチルトする場合であっても、ステージと窓部材との平行度のずれを補正し、ギャップを均一に保つことができる。
【0010】
さらにまた、上記の光照射装置において、前記ステージを前記第一方向に移動可能なステージ移動機構と、前記窓部材と前記被処理物体の表面との間に挟まれて、前記窓部材と前記被処理物体の表面との距離を保つスペーサと、をさらに備え、前記圧力制御機構は、前記流体圧シリンダの設定圧を、前記ステージ移動機構により前記ステージが前記第一方向における前記窓部材に接近する方向に移動し、前記ステージに載置された前記被処理物体が前記スペーサに当接した場合に、前記流体圧シリンダが収縮する設定圧に調整してもよい。
この場合、装置の組立精度や部品精度などによりステージと窓部材との平行度にずれが生じている場合であっても、ステージを窓部材に接近させ、被処理物体をスペーサに当接させた際に、上記平行度のずれを補正することができる。したがって、窓部材とステージとのギャップを均一にすることができる。
【0011】
また、上記の光照射装置において、
前記流体圧シリンダの
先端部に形成され、少なくとも3個の前記ステージ
の側端部
に対応した箇所にそれぞれ
配置された、先
端に曲面を有する突起体と、前記ステージの前記反対側の面に形成された、前記突起体にそれぞれ係合するV溝体と、をさらに備え、前記V溝体は、それぞれの中心軸が一点で交差するように配置されていてもよい。これにより、ステージやシリンダユニットの温度変化による熱膨張(あるいは収縮)が生じた場合であっても、シリンダユニットによってステージを適切に支持することができる。
【0012】
また、本発明に係る光照射装置の一態様は、窓部材を通して光を照射する光源部と、前記窓部材に対向配置し、被処理物体を載置するステージと、前記窓部材と前記ステージとの間の空間であって、前記ステージに載置された前記被処理物体が前記光によって処理される処理空間を気密に封止するシール部材と、前記ステージにおける前記窓部材に対向する面とは反対側の面を支持するシリンダユニットと、を備え、前記シリンダユニットは、前記窓部材と前記ステージとが対向する第一方向に伸縮可能な少なくとも3個の流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダの設定圧をそれぞれ個別に調整可能な圧力制御機構と、を備える。
これにより、窓部材とステージとのギャップを均一に形成しつつ、シール部材によって処理空間を気密に封止することができる。したがって、被処理物体の全面に対して均一な処理を施すことができる。
【0013】
さらに、本発明に係る光照射方法の一態様は、窓部材の周縁部を支持する支持部材と、前記窓部材に対向配置し、被処理物体を載置するステージの外周側面との間に配置された、断面中空に形成され、中空への流体の注入により断面が膨張する膨張シールを、前記窓部材と前記ステージとが対向する第一方向に対して垂直な第二方向に膨張させて前記ステージの外周側面を押圧し、前記窓部材と前記ステージとの間の空間であって、前記ステージに載置された前記被処理物体が前記窓部材を通して照射される光によって処理される処理空間を気密に封止する工程と、前記被処理物体に前記窓部材を通して前記光を照射する工程と、を含む。
これにより、窓部材とステージとのギャップを均一に形成しつつ、シール部材によって処理空間を気密に封止することができる。したがって、被処理物体の全面に対して均一な処理を施すことができる。
【0014】
また、本発明に係る光照射方法の一態様は、窓部材と、前記窓部材に対向配置し、被処理物体を載置するステージとの間の空間であって、前記ステージに載置された前記被処理物体が前記窓部材を通して照射される光によって処理される処理空間を、シール部材により気密に封止する工程と、前記窓部材と前記ステージとが対向する第一方向に伸縮可能な少なくとも3個の流体圧シリンダの設定圧を調整し、前記流体圧シリンダにより前記ステージにおける前記窓部材に対向する面とは反対側の面を支持する工程と、を含む。
これにより、窓部材とステージとのギャップを均一に形成しつつ、シール部材によって処理空間を気密に封止することができる。したがって、被処理物体の全面に対して均一な処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、窓部材とステージとのギャップを均一に形成しつつ、シール部材によって処理空間を気密に封止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の光照射装置を示す概略構成図である。本実施形態では、光照射装置の一例として、例えばデスミア処理装置への適用例について説明する。
(光照射装置の構成)
光照射装置100は、光源部10と、被処理物体の一例である基板(ワーク)Wを保持する処理部20と、を備える。光源部10は、例えば真空紫外線等の光を発する複数の紫外線光源11を内部に収納し、処理部20が保持するワークWに紫外線光源11からの光を照射する。
【0018】
光源部10は、下方に開口部を有する箱型形状のケーシング14を備える。ケーシング14の開口部には、光を透過する、例えば石英ガラス等の窓部材12が窓枠部材(支持部材)16を介して気密に設けられている。
光源部10(ケーシング14)の内部は、供給口15から例えば窒素ガス等の不活性ガスが供給されることで、不活性ガス雰囲気に保たれている。また、光源部10内の紫外線光源11の上方には、反射鏡13が設けられている。反射鏡13は、紫外線光源11から発せられた光を窓部材12側に反射する。このような構成により、反射鏡13の全幅にほぼ対応した領域Rに対して、ほぼ均等に紫外線光源11の光が照射される。
【0019】
紫外線光源11は、例えば波長220nm以下、好ましくは波長190nm以下の紫外線(真空紫外線)を出射するものであって、種々の公知のランプを利用できる。ここで、波長220nmとしたのは、デスミア処理装置においては、紫外線の波長が220nmを超える場合には、樹脂などの有機物質に起因するスミアを分解除去することが困難となるためである。
紫外線光源11としては、例えば、キセノンガスを封入したキセノンエキシマランプ(ピーク波長172nm)、低圧水銀ランプ(185nm輝線)などを用いることができる。なかでも、デスミア処理に用いるものとしては、例えばキセノンエキシマランプが好適である。
【0020】
窓枠部材16は、窓部材12の外郭となる部分を上下方向に挟持している。窓枠部材16における窓部材12の下面に対向する面には、外周溝16aが形成されており、この外周溝16aと窓部材12の下面との間にOリング16b等の弾性部材が介在している。つまり、窓枠部材16は、Oリング16bを介して窓部材12を弾性的に挟むように固定している。なお、このOリング16bは、窓部材12の外郭を挟み込んで固定し、動くものでは無いので、窓部材12の形状を反らせるものではない。また、Oリング16bは、窓部材12を固定できる機能があれば他の部材に替えることもできる。
【0021】
処理部20は、紫外線照射処理(デスミア処理)を行うワークWを表面に吸着して保持するステージ21を備える。ステージ21は、光源部10の窓部材12に対向して配置されている。ステージ21には、ワークWを吸着するために例えば吸着孔(不図示)が穿たれている。このステージ21は、平坦性を確保するため、例えばアルミニウム材で形成されている。
【0022】
窓枠部材16におけるステージ21の外周面(側面)に対向する面には、シール部材17を取り付けるための取り付け溝16cが形成されている。シール部材17は、ステージ21の側面に沿って配置された断面中空の環状の部材であり、中空への気体や液体等の流体の注入により断面がシール部材17の内周側に膨張し、上記流体の排出により断面が収縮する膨張シールである。
なお、本実施形態では、上記流体として空気を用いる場合について説明する。つまり、シール部材17は、空気の注入により膨張し、空気の排出により収縮する空気膨張シールであるものとする。
【0023】
取り付け溝16cは、開口が窓部材12とステージ21とが対向する第一方向(Z方向)に対して垂直な第二方向に形成された形状を有し、シール部材17の膨張方向がZ方向に対して垂直な方向となるよう規制している。ここで、窓枠部材16は、シール部材17が膨張した際のシール部材17の膨張圧により取り付け溝16cの形状が変形しないよう、取り付け溝16c周辺の形状(厚み)等が設定されている。つまり、この取り付け溝16cは、シール部材17の膨張方向を規制する膨張方向規制部として機能する。
シール部材17は、膨張状態において、その内周面がステージ21の側面と当接し、収縮状態において、その内周面がステージ21の側面から離間するように構成されている。
図1は、シール部材17の膨張状態を示している。このように、シール部材17は、膨張状態においてステージ21の側面に密着することで、窓部材12とステージ21との間の処理空間を気密に封止する。
すなわち、シール部材17の形状は、窓部材12とステージ21とのZ方向のギャップに関して全く関係なく、膨張して押圧する方向もZ方向に対して垂直な方向であるから、窓部材12とステージ21とのZ方向のギャップに影響を与えるような作用は無い。したがって、シール部材17は、窓部材12とステージ21とのZ方向のギャップを精度よく均一に形成しつつ、処理空間を気密にシールすることができる。
【0024】
ステージ21上には、ワークWが載置されてワークWに対して紫外線照射処理(デスミア処理)を行うことができる処理領域R1と、ワークWの載置が禁止されて処理領域R1における処理の準備を行うための準備領域R2とが形成されている。
窓部材12とステージ21との間の処理空間は、オゾンを含む処理気体の雰囲気とされており、ステージ21上の処理領域R1に載置されたワークWは、この処理気体の雰囲気中で真空紫外線に曝されて処理されるようになっている。
【0025】
ステージ21は、ステージ21を窓部材12に対し接近乖離する方向(Z方向)に移動可能なアクチュエータ51によって支持されている。アクチュエータ51の駆動は、制御部52によって制御される。このアクチュエータ51によって、
図2および
図3に示すようにステージ21が上下方向に移動される。ここで、
図2および
図3は、
図1に示す光照射装置100の窓部材12よりも下側の部分の斜視図であり、
図2はステージ21の下降時、
図3はステージ21の上昇時の状態を示している。
ステージ21を上下動させている間は、シール部材17は収縮状態を維持し、シール部材17の内周面とステージ21の側面との間には隙間が形成されているものとする。このような構成により、ステージ21が上下動する際に、シール部材17がステージ21の側面に押し当てられた状態で擦られることを防止し、シール部材17の損傷を防ぐことができる。
さらに、本実施形態では、窓部材21とステージ21との平行度をより適切に確保するために、ステージ21をシリンダユニット53により支持する構成を有する。このシリンダユニット53は、ステージ21とアクチュエータ52との間に設置されている。シリンダユニット53の構成については後述する。
【0026】
また、ステージ21の一方(
図1の右側)の側縁部には、処理用ガスを処理空間に供給するための給気路24が形成されている。給気路24には、処理用ガスを供給する供給装置41が接続されている。
また、ステージ21の他方(
図1の左側)の側縁部には、デスミア処理後の排ガスをステージ21外部に排出するための排気路25が形成されている。排気路25には、エジェクタ42が取り付けられている。エジェクタ42は流体を利用して減圧状態を作り出すものであり、例えばコンプレッサ45で生成される例えば圧縮空気の流れを利用することができる。このエジェクタ42が排気路25に取り付けられることで、処理部20内の処理用ガス(処理気体)が強制的に排出される。排気路25とエジェクタ42とを繋ぐ配管には、モータ駆動で開閉されて配管の開度を調整するコック46が設けられている。コック46の開度は、制御部52によって制御される。
【0027】
ここで、処理用ガスとしては、例えば、酸素ガス、酸素とオゾンや水蒸気の混合ガス、これらのガスに不活性ガスなどを混合したガスなどを用いることができる。処理用ガスは、基板Wに対して光源部10からの紫外線が照射されている間、給気路24を通ってステージ21上面に形成された給気口24aから処理空間に供給され、同じくステージ21上面に形成された排気口25aから排気路25を通って排ガスとしてステージ21外部に排出される。
給気口24aおよび排気口25aは、
図2に示すように、それぞれ処理用ガスが流れる方向(X方向)に直交する水平方向(Y方向)に沿って一列に形成されている。これにより、処理用ガスは、窓部材12とワークWとの間の処理空間を、
図1の右から左へと流れていくこととなる。このように、本実施形態における光照射装置100は、ワークWの表面に沿って処理用ガスを流し、処理用ガスの流路を形成する気体給排部を備える。
【0028】
処理空間における準備領域R2では、例えば酸素ガスである処理用ガスに対して光源部10からの紫外線が照射され、オゾンや酸素ラジカルなどの活性種が生成される。準備領域R2にはワークWがない(即ちスミアがない)ため、この準備領域R2において生成された活性種は、新しく供給される処理用ガスに押されて下流に流されながら、濃度が徐々に高まり安定化する。
つまり、処理用ガスは、処理空間の雰囲気である処理気体のオゾン濃度を一定(例えば3%)にするために準備領域R2に供給されるガスであり、紫外線が照射されることでオゾンを生成するガスとすることができる。準備領域R2は、処理用ガスに紫外線を照射して活性種の濃度を安定化させる役割を果たす領域であるといえる。なお、処理用ガスはオゾンそのものであってもよい。
【0029】
なお、光照射装置100は、シール部材17がオゾンに触れないように、シール部材17を、オゾンを含まないガスによりバリアするためのバリアガス供給部を備えていてもよい。バリアガス供給部は、例えば
図4に示すように、窓枠部材16に設けられたバリアガス供給路16dを備える構成とすることができる。ここで、バリアガス供給路16dは、シール部材17の近傍で、かつシール部材17の上方に、シール部材17の少なくとも一部に沿ってステージ21の側面に対向する位置に形成されたバリアガス供給口16eを備える。
この場合、バリアガス供給部は、ステージ21が、
図4の破線で示す紫外線照射処理の処理位置まで上昇した状態において、ステージ21の側面におけるワークWの載置面よりも下方で、かつ
図4の破線で示す膨張状態のシール部材17のステージ21との当接位置よりも上方に、バリアガスを噴出することができる。
【0030】
ここで、上記処理位置は、ワークW上面におけるY方向端部が窓部材12の下面に形成された微小な筋状突起12aの下面に当接する位置である。筋状突起12aのZ方向の厚さは、紫外線照射処理時における窓部材12とワークWとの設定間隔と等しく、例えば1mm以下である。筋状突起12aは、ワークWのY方向両端部にそれぞれ当接するように、少なくとも2本形成されている。ただし、筋状突起12aは、2本に限定されるものではなく、3本以上であってもよい。また、筋状突起12aのX方向における長さは、ワークWのX方向における長さと同等か、ワークWのX方向における長さよりも若干長ければよい。この筋状突起12aは、窓部材12とワークWの表面との間に挟まれて、窓部材12とワークWの表面との距離を保つスペーサである。
【0031】
以上のように、本実施形態における光照射装置100は、シール部材17として膨張シールを適用し、シール部材17をステージ21の側面に対して垂直に押し当てることで、窓部材12とステージ21との間の処理空間を気密封止する構成とした。
従来、デスミア処理装置等の光照射装置では、ワークWを載置するステージ上面の外周部分に外周溝を形成し、その外周溝と窓部材との間にOリング等のシール部材を介在させることで、窓部材とステージとの間の処理空間を気密に封止していた。しかしながら、上記の従来装置の構成では、シール部材が窓部材に押し付けられた際のシール部材の反発力によって窓部材が押し上げられ、窓部材とステージ(ワークW)とのギャップが不均一になるという問題がある。光源からの紫外線は処理空間中の処理用ガスに吸収されるため、窓部材とワークWとのギャップが不均一であると、ワークWに届く紫外線の量がワークWの場所により不均一となり、その結果、処理に不均一が生じてしまう。
【0032】
これに対して、本実施形態では、シール部材17を窓部材12に押し当てるのではなく、ステージ21の側面に押し当てる構成とした。これにより、シール部材17の反発力による窓部材12の押し上げを防止し、ワークWと窓部材12とのギャップが不均一となることを防止することができる。したがって、ギャップの不均一に起因する処理の不均一を防止することができる。
また、窓部材12は、照射する光の透過率を考慮した薄い部材であり、例えば1辺の長さに対して厚みが1/100以下である。そのため、窓枠部材16によって窓部材12の周縁部を支持しただけであると、窓部材12が下に凸に撓みやすい。そこで、本実施形態では、
図4に示すように、窓部材12の下面に筋状突起12aを設け、この筋状突起12aがワークWに当接してワークWと窓部材12との適切な距離を保てるようになっている。これにより、ワークWと窓部材12との間の距離を適切に規定することができ、ワークWに対する紫外線照射処理を適切に行うことができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、シール部材17を、窓部材12とステージ21との対向方向(Z方向)に対して垂直な方向に膨張させ、ステージ21の側面に、窓部材12とステージ21との対向方向に対して垂直に押し当てる構成とした。
例えば、シール部材17の軸がZ方向の軸に対して傾いている場合、シール部材17を内周側に膨張させた際、シール部材17はステージ21の側面に対して斜めに押し当てられることになる。すると、ステージ21は、シール部材17の軸が傾いている方向にチルトするおそれがある。ステージ21がチルトすると、窓部材12とステージ21との平行度のずれが生じ、窓部材12とステージ21との間のギャップが不均一となってしまう。
これに対して、本実施形態では、上述したように、シール部材17をステージ21の側面に対して垂直に押し当てる構成としたので、シール部材17をステージ21の側面に押し当てた際のステージ21の移動を防止することができる。その結果、ワークWと窓部材12とのギャップが不均一となることを防止することができる。
【0034】
また、シール部材17は、膨張方向規制部である取り付け溝16cに取り付けられることで、その膨張方向がZ方向に対して垂直な方向となるように規制される。具体的には、シール部材17は、取り付け溝16cに取り付けられた状態において、その上下面(Z方向に対向する面)および外周面(ステージ21の側面に対向する側とは反対側の面)が取り付け溝16cの内面に当接されている。これにより、シール部材17を、その内周側にのみ膨張可能に構成することができる。したがって、シール部材17を、ステージ21の側面に対して精度よく垂直に押し当てることができる。
【0035】
さらに、取り付け溝16cは、シール部材17の膨張圧により変形しない構成を有する。シール部材17の膨張圧により取り付け溝16cの開口が広がるなど、取り付け溝16cが変形する構成であると、シール部材17はZ方向に対して垂直な方向に膨張できず、ステージ21の側面を垂直に押圧することができない。その場合、シール部材17がステージ21の側面に密着した際にステージ21が押下げられ、窓部材21とステージ21との平行度が崩れるおそれがある。シール部材17の膨張圧により取り付け溝16cが変形しない構成とすることで、シール部材17によるステージ21の押下げを回避し、ワークWと窓部材12とのギャップが不均一となることを防止することができる。
【0036】
なお、シール部材17を取り付ける取り付け溝16cは、
図4に示すように、窓枠部材16に膨張方向規制部材16fを取り付けることにより形成することもできる。ここで、膨張方向規制部材16fは、シール部材17の外周面が当接する環状の本体部と、当該本体部の内周側に突出し、シール部材17の下面が当接する突出部とにより構成することができる。ここで、突出部のZ方向における厚さは、膨張方向規制部材16fを窓枠部材16に取り付けた際に形成される取り付け溝16cの形状が、シール部材17の膨張圧により変形しない程度の厚さに設定する。
また、膨張方向規制部16fは、窓枠部材16にネジ等により着脱可能に固定されていてもよい。膨張方向規制部16fが窓枠部材16に対して着脱可能である場合、シール部材17の交換作業が容易となる。
【0037】
(シリンダユニット53の構成)
以下、シリンダユニット53の構成について具体的に説明する。シリンダユニット53は、窓部材12とステージ21とのギャップをより均一化するために、ステージ21とアクチュエータ51との間に設けられる。
シリンダユニット53は、ステージ21を下方面から支持し、Z方向に伸縮可能な少なくとも3個の流体圧シリンダを備える。ここで、流体圧シリンダは、空気圧シリンダや油圧シリンダ等、任意の流体圧を用いたシリンダとすることができる。なお、本実施形態における光照射装置100では、流体圧シリンダは、窓部材12とステージ21との間のきわめて微小なギャップを調整する目的で使用される。そのため、油圧シリンダほど大きな力は必要ないし、クリーンルーム等のきわめて清浄な環境で使用されることが多いため、CDA(クリーンドライエアー)などが漏れても汚れない空気圧シリンダがより好適である。
【0038】
図5は、シリンダユニット53の構成を示す図である。ここで、
図5(a)は上面図、
図5(b)は長手方向側面図、
図5(c)は短手方向側面図である。
この
図5に示すように、本実施形態におけるシリンダユニット53は、シリンダベース53aと、シリンダベース53aに支持された4個の空気圧シリンダ53bと、を備える。シリンダベース53aはアクチュエータ51に接続され、空気圧シリンダ53bはステージ21と係合している。つまり、アクチュエータ51は、シリンダユニット53を介してステージ21をZ方向に移動可能に構成されている。
空気圧シリンダ53bは、
図6に示す空気圧回路54により動作が制御される。空気圧回路54は、CDAを供給するエア供給源と各空気圧シリンダ53bとの間にそれぞれ設けられており、各空気圧シリンダ53bの設定圧を個別に制御することができる。空気圧回路54は、エア供給時における上流側から順に、レギュレータ54a、圧力計54b、ピストンの押出および引込速度を調整するスピードコントローラ54cを備える。この空気圧回路54が、空気圧シリンダ53bの設定圧を個別に調整可能な圧力制御機構に対応している。
【0039】
各空気圧シリンダ53bにおけるステージ21側の先端部には、それぞれ先端に曲面を有する突起体として鋼球体53cが設けられている。なお、上記突起体は、先端に曲面を有する部材であればよく、鋼球に限定されない。また、ステージ21の下面には、鋼球体53cとそれぞれ係合する鋼球支持部材が設けられている。ここで、鋼球支持部材のうちの1つは、円錐状(または角錐状)の溝が形成された凹溝体53dであり、残りの3つはV溝が形成されたV溝体53eである。
図7は、V溝支持方式について説明する概念図である。この
図7に示すように、3つのV溝体53dは、それぞれ溝の方向が、凹溝体53dに形成された溝の中心位置の一点で交差するように配置されている。
【0040】
デスミア処理を行う光照射装置100においては、ある一定温度(例えば、150℃)に加熱されたワークWに対し、酸素を含む雰囲気下で紫外線照射処理(デスミア処理)が行われる。そのため、ステージ21には、ワークWが載置される処理領域R1をワークWごと加熱する加熱機構(ヒータ)が組み込まれている。ここで、加熱機構としては、例えば、シースヒータやカートリッジヒータなどを用いることができる。
本実施形態では、上記のようにV溝支持方式を採用しているため、ステージ21が加熱機構による加熱によって熱膨張した場合であっても、鋼球体53cをV溝体53eにより確実に支持することができる。また、各V溝体53eは、溝の方向が凹溝体53dの中心位置の一点で交差するように配置するので、凹溝体53dの中心位置を基準としたステージ21の位置決めが可能となる。
【0041】
次に、シリンダユニット53による押圧制御について、
図8および
図9を用いて説明する。なお、
図8および
図9では、ステージ21上のワークWの図示は省略している。シリンダユニット53は、空気圧シリンダ53bごとに異なるレギュレータ54aにより設定された空気圧に相当する力で、常に一定にステージ21の荷重を支えることが可能である。
図8は、シリンダユニット53により、ステージ21を光照射装置100に組み込む段階で生じた窓部材12とステージ21との初期平行度ずれを矯正する例を示している。
図8(a)に示すように、元々の組立調整においてステージ21が窓部材12に対してチルトしている場合に、アクチュエータ51(
図8では不図示)によって
図8(b)に示すようにステージ21を上昇させたものとする。この場合、
図8(b)の破線に示すように、まず、ステージ21の一方の端部(
図8(b)では右側端部)において、ステージ21上のワークWが窓部材12の下面に形成された筋状突起12aに当接する。
この状態から、さらにアクチュエータ51によりステージ21を上昇させると、ステージ21の上記一方の側に配置された空気圧シリンダ53bが縮み、
図8(b)の実線に示すように、ワークWの傾きが窓部材12の傾きに倣うようにステージ21がチルトする。その後、さらにアクチュエータ51によりステージ21が上昇すると、すべての空気圧シリンダ53bが縮み、ワークWの全面が筋状突起12aに密着する。
【0042】
このように、4個の空気圧シリンダ53bがそれぞれZ方向に伸縮可能に構成されており、各々必要に応じて収縮するダンパー機能を有する。ここで、各空気圧シリンダ53bの設定圧は、ステージ21が窓部材12に接近する方向に移動(上昇)し、ステージ21上のワークWが筋状突起12aに当接した場合に、空気圧シリンダ53bが収縮する設定圧に調整されている。したがって、これらの空気圧シリンダ53bが下からの力を相互に吸収しあって、窓部材12を押し上げることなく、ステージ21に載置されたワークWと窓部材12とを平行に保ち、面内均一な力が窓部材12に対してかかるようにすることができる。
【0043】
図9は、シリンダユニット53により、シール部材17の密着時に生じるステージ21のチルトを矯正する例を示している。
図9(a)の破線に示すように、ステージ21が処理位置まで上昇した状態において、窓部材12とステージ21との平行度が保たれている場合であっても、シール部材17をステージ21の側面に密着させた際、
図9(a)の実線に示すようにステージ21の一方の端部(
図9(a)では左側端部)が押下げられ、チルトする場合がある。これは、シール部材17の取付け精度等により、元々シール部材17の軸がステージ21におけるワークWの載置面に対して垂直となっていないこと等に起因する。
この場合、シール部材17の押下げによるチルト量には再現性がある。つまり、シール部材17の密着時、ステージ21は常に同じ方向に同じ量だけチルトする。そこで、
図9(b)に示すように、4個の空気圧シリンダ53bの押圧をそれぞれ個別に調整する。具体的には、シール部材17によって押下げられる側の空気圧シリンダ53bの押圧を他の空気圧シリンダ53bの押圧よりも大きく設定する(F1>F2)。このとき、各空気圧シリンダ53bの押圧は、シール部材17の押下げに起因するステージ21のチルト方向およびチルト量に応じて設定することができる。
このように、シール部材17の押下げに対して抗する力をシリンダユニット53に持たせることで、ステージ21に載置されたワークWと窓部材12とを平行に保ち、面内均一な力が窓部材12に対してかかるようにすることができる。
【0044】
以上のように、シリンダユニット53の押圧制御により、窓部材12の傾きとステージ21の傾きとを等しくし、窓部材12とステージ21とのギャップを面内均一にすることができる。
また、各空気圧シリンダ53bの押圧を、それぞれ窓部材12の許容応力以下の押圧に設定することで、ステージ21を窓部材12に押し当てに行った際に、窓部材12を損傷させてしまうリスクを低減することができる。
【0045】
以下、光照射装置100における動作手順について説明する。
(1)光源部10と処理部20とは上下に分離可能に構成されている。窓部材12は光源部10側に取り付けられている。
(2)処理部20が下降した状態で、搬送されたワークWがステージ21上に載置されて、真空吸着により固定される。
(3)制御部52がアクチュエータ51を制御し、窓部材12の下面に形成された筋状突起12aにワークWの上面の一部が当接するまで処理部20を上昇させる。ここからさらに、処理部20を上昇させ、シリンダユニット53を構成する各空気圧シリンダ53bを縮ませながら、ワークWの全面を筋状突起12aに当接させる。これにより、窓部材12とワークWとの間隔を、あらかじめ設定された例えば1mm以下といった間隔にする。
(4)空気膨張シールによって構成されるシール部材17に空気を注入し、ステージ21の外周を気密にシールする。これにより、窓部材12とステージ21との間に気密な処理空間が形成される。このとき、空気圧シリンダ53bごとにそれぞれ個別に設定された押圧により、シール部材17によるステージ21の押下げに抗して、ステージ21の平行度を確保する。
【0046】
(5)供給装置41が動作し、処理空間に処理用ガスが導入されると共に、エジェクタ42が動作し、処理空間からガスが排出される(気体給排過程)。この気体給排過程と同時または略同時に、バリアガス供給部が動作し、ステージ21外周の溝にバリアガスが供給される。
(6)紫外線光源11を点灯し、紫外線照射処理(デスミア処理)を開始する。
(7)紫外線照射処理(デスミア処理)が終了すると、紫外線光源11を消灯する。
(8)処理空間への処理用ガスの導入と、エジェクタの動作とを停止する。また、バリアガスの供給も停止する。
(9)シール部材17から空気を排出し、光源部10と処理部20とを分離する。
(10)制御部52がアクチュエータを制御し、処理部20を下降させる。これにより、光源部10と処理部20とが上下に分離する。
(11)ワークWを取り出す。
以上のような手順によって、窓部材12とステージ21(ワークW)とのギャップを均一に形成しつつ、シール部材17により処理空間を気密に封止することができる。したがって、ワークW全面に対して均一な紫外線照射処理(デスミア処理)を施すことができる。
【0047】
(変形例)
上記実施形態では、光照射装置をデスミア処理装置に適用する例について説明したが、本発明は、レジストの光アッシング処理や、レジストの除去処理や、ドライ洗浄処理などに応用されてもよい。