特許第6828547号(P6828547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828547
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】貫通コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/35 20060101AFI20210128BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   H01G4/35 331
   H01G4/30 201F
   H01G4/30 201C
   H01G4/30 513
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-59190(P2017-59190)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-163934(P2018-163934A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】尾上 通
(72)【発明者】
【氏名】姫田 大資
(72)【発明者】
【氏名】平林 輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐磨
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓人
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−149426(JP,A)
【文献】 特開2015−035589(JP,A)
【文献】 特開2014−183241(JP,A)
【文献】 特開2005−175165(JP,A)
【文献】 特開2011−124542(JP,A)
【文献】 特開2009−170873(JP,A)
【文献】 特開2012−156315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/35
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の端面と、前記一対の端面の間に位置する少なくとも一つの側面とを有する素体と、
前記一対の端面上に配置されている一対の信号用外部電極と、
前記一対の信号用外部電極と離間していると共に前記側面上に配置されているグラウンド用外部電極と、
前記素体内に配置されていると共に、前記一対の端面に露出している信号用内部電極と、
前記素体内に前記信号用内部電極と対向して配置されていると共に、前記側面に露出しているグラウンド用内部電極と、
前記素体内に配置されていると共に前記側面に露出しているダミー電極と、を備え、
前記信号用外部電極は、前記信号用内部電極に接続されている第一焼結電極層を含み、
前記グラウンド用外部電極は、前記グラウンド用内部電極と前記ダミー電極とに接続されている第二焼結電極層を含み、
前記第一及び第二焼結電極層は、空隙を含んでおり、
前記第一焼結電極層の空隙率は、前記第二焼結電極層の空隙率よりも大きい、貫通コンデンサ。
【請求項2】
前記信号用外部電極は、前記第一焼結電極層上に配置されているめっき層を更に含み、
前記端面上における前記第一焼結電極層の平均厚みは、15μm以上である、請求項1に記載の貫通コンデンサ。
【請求項3】
前記素体は、直方体形状を呈していると共に、互いに対向する一対の主面と、前記少なくとも一つの側面と対向する側面とを更に有し、
前記側面に直交する方向において、各前記端面に露出している前記信号用内部電極の部分の幅をW1とし、前記素体の幅をW2としたとき、
0.53≦W1/W2≦0.83
が満たされている、請求項1又は2に記載の貫通コンデンサ。
【請求項4】
前記信号用外部電極が前記素体を覆う面積は、前記グラウンド用外部電極が前記素体を覆う面積よりも大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載の貫通コンデンサ。
【請求項5】
前記信号用外部電極と前記信号用内部電極との接触面積は、前記グラウンド用外部電極と前記グラウンド用内部電極との接触面積よりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の貫通コンデンサ。
【請求項6】
前記第一焼結電極層には、前記ダミー電極が接続されていない、請求項1から5のいずれか一項に記載の貫通コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
互いに対向する一対の端面と一対の端面の間に位置する少なくとも一つの側面とを有する素体と、一対の端面上に配置されている一対の信号用外部電極と、一対の信号用外部電極と離間していると共に側面上に配置されているグラウンド用外部電極と、素体内に配置されていると共に一対の端面に露出して対応する信号用外部電極に接続されている信号用内部電極と、素体内に信号用内部電極と対向して配置されていると共に側面に露出して対応するグラウンド用外部電極に接続されているグラウンド用内部電極とを備えている貫通コンデンサが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−237429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、所望の抵抗値を有すると共に、外部電極が素体から剥離し難い貫通コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、調査研究の結果、以下のような事実を新たに見出した。
【0006】
一般的に、貫通コンデンサの各外部電極は、焼結電極層、及び該焼結電極層を覆うめっき層を有している。焼結電極層は、金属粒子及び有機ビヒクルを含有する導電性ペーストを焼成することで形成される。導電性ペーストの焼成では、有機ビヒクルがガス化し、当該ガスが、貫通コンデンサの外部に放出されずに、導電性ペーストと素体との間で蓄積されるおそれがある。すなわち、上記ガスが焼成電極層と素体との間に滞留しやすい。当該ガスが焼結電極層と素体との間で滞留すると、外部電極と素体との接合面積が低下する。この場合、外部電極が素体から剥離しやすいため、歩留まりが低下する。
【0007】
素体内にダミー電極を配置し焼結電極層とダミー電極とを接続することで、上記要因による外部電極の素体からの剥離が防止され得る。しかしながら、高さ方向においてダミー電極と内部電極とが対向する場合、及び異なる外部電極に接続されている内部電極と同一層にダミー電極が配置される場合、浮遊容量等によって貫通コンデンサの性能が低下するおそれがある。したがって、焼結電極層に接続されるダミー電極が設けられる場合、ダミー電極が配置されるスペースを確保するために、信号用内部電極と信号用外部電極との接触面積が制限される。この場合、信号用内部電極と信号用外部電極との接触面積が小さいほど抵抗が増加するため、抵抗が低減された貫通コンデンサが得られ難い。
【0008】
そこで、本発明者らは、所望の抵抗値を有すると共に外部電極が素体から剥離し難い構成について鋭意研究を行った。
【0009】
導電性ペーストの焼成では、ガス化した有機ビヒクルが金属粒子間を通って外部に排出され、金属粒子同士が連結する。当該ガスの一部は、金属粒子同士が連結されなかった部分に空隙として残る。電性ペースト中の金属粒子が疎であるほど金属粒子同士が連結し難いため、金属粒子間に上記ガスからなる空隙が形成されやすい。したがって、導電性ペースト中の金属粒子が疎であるほど、空隙の割合(以下、空隙率)が大きい焼結電極層が形成される。導電性ペーストにおいて金属粒子が密であるほど金属粒子同士が連結されやすいため、空隙率が小さい焼結電極層が形成される。
【0010】
以上の点に着目し、本発明者らは、信号用外部電極が第一焼結電極層を含み、グラウンド用外部電極が第二焼結電極層を含み、ダミー電極が第二焼結電極層に接続され、第一焼結電極層の空隙率が第二焼結電極層極の空隙率より大きい、という構成を見出すに至った。この構成では、グラウンド用外部電極に含まれている第二焼結電極層にダミー電極が接続されているため、グラウンド用外部電極は素体から剥離し難い。
【0011】
上記構成では、第一焼結電極層の空隙率が第二焼結電極層の空隙率より大きいため、第一焼結電極層の形成において、第二焼結電極層の形成で用いられる導電性ペーストよりも金属粒子が疎である導電性ペーストを用いることができる。金属粒子が疎であるほど、焼成において発生するガスが金属粒子の間を通りやすいため、該ガスが第一焼結電極層と素体との間で滞留し難い。したがって、第一焼結電極層と素体との接合面積が確保され得るため、第一焼結電極層にダミー電極が接続されなくとも、信号用外部電極が素体から剥離し難い。すなわち、上記構成によれば、所望の抵抗値を有する共に各外部電極が素体から剥離し難い貫通コンデンサを提供することができる。
【0012】
本発明に係る貫通コンデンサは、互いに対向する一対の端面と、一対の端面の間に位置する少なくとも一つの側面とを有する素体と、一対の端面上に配置されている一対の信号用外部電極と、一対の信号用外部電極と離間していると共に側面上に配置されているグラウンド用外部電極と、素体内に配置されていると共に、一対の端面に露出している信号用内部電極と、素体内に信号用内部電極と対向して配置されていると共に、側面に露出しているグラウンド用内部電極と、素体内に配置されていると共に側面に露出しているダミー電極と、を備え、信号用外部電極は、信号用内部電極に接続されている第一焼結電極層を含み、グラウンド用外部電極は、グラウンド用内部電極とダミー電極とに接続されている第二焼結電極層を含み、第一及び第二焼結電極層は、空隙を含んでおり、第一焼結電極層の空隙率は、第二焼結電極層の空隙率よりも大きい。
【0013】
本発明に係る貫通コンデンサでは、ダミー電極がグラウンド用外部電極に含まれている第二焼結電極層に接続されていると共に、信号用外部電極に含まれている第一焼結電極層の空隙率がグラウンド用外部電極に含まれている第二焼結電極層の空隙率より大きい。このため、所望の抵抗値を有すると共に各外部電極が素体から剥離し難い貫通コンデンサが提供され得る。
【0014】
信号用外部電極は、第一焼結電極層上に配置されているめっき層を更に含み、端面上における第一焼結電極層の平均厚みは、15μm以上であってもよい。めっき処理では、めっき液が、焼結電極層を浸透して各内部電極が素体から露出している部分に到達し、各内部電極と素体との間を通って素体内部に浸入するおそれがある。めっき液が素体内部に入り込んでいると、貫通コンデンサが使用された場合に素体にクラックが発生しやすい。めっき液は、空隙を通って焼結電極層を浸透するため、焼結電極層の空隙率が小さいほど、各内部電極が素体から露出している部分にめっき液が到達する経路が形成され難い。第二焼結電極層の空隙率は第一焼結電極層の空隙率よりも小さいため、めっき液は第二焼結電極層を浸透し難い。端面上における第一焼結電極層の平均厚みが、15μm以上であれば、めっき液は第一焼結電極層も浸透し難い。すなわち、上記構成によれば、素体にクラックが発生し難く、素体の信頼性が向上される。
【0015】
素体は、直方体形状を呈していると共に、互いに対向する一対の主面と、上記少なくとも一つの側面と対向する側面とを更に有し、側面に直交する方向において、各端面に露出している信号用内部電極の部分の幅をW1とし、素体の幅をW2としたとき、0.53≦W1/W2≦0.83が満たされていてもよい。この場合、信号用内部電極と信号用外部電極の第一焼結電極層との接触面積が適切であるため、素体の信頼性が確保されながら、抵抗が低減される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所望の抵抗値を有すると共に外部電極が素体から剥離し難い貫通コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る貫通コンデンサを示す概略斜視図である。
図2】貫通コンデンサの断面構成を説明するための図である。
図3】貫通コンデンサの断面構成を説明するための図である。
図4】貫通コンデンサの断面構成を説明するための図である。
図5】貫通コンデンサの断面構成を説明するための図である。
図6】貫通コンデンサの実装状態を示す図である。
図7】貫通コンデンサの実装状態を示す図である。
図8】貫通コンデンサの概略拡大図である。
図9】貫通コンデンサの概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
まず、図1図5を参照して、本実施形態に係る貫通コンデンサ1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る貫通コンデンサを示す概略斜視図である。図2図5は、貫通コンデンサの断面構成を説明するための図である。本実施形態では、電子部品として貫通コンデンサ1を例に説明する。貫通コンデンサ1は、図1図5に示されているように、素体2と、素体2の外表面に配置された互いに対向する一対の信号用外部電極3と、一対の信号用外部電極3の間において外表面に配置された一対のグラウンド用外部電極5と、素体2の内部に配置された複数の信号用内部電極7と、素体2の内部に配置されていると共に信号用内部電極7と対向する複数のグラウンド用内部電極9と、素体2の内部に配置されたダミー電極10とを備えている。
【0020】
素体2は、互いに対向する一対の主面2aと、互いに対向する一対の端面2bと、互いに対向する一対の側面2cとを有する直方体形状を呈している。一対の主面2aは、高さ方向D1で互いに対向している。一対の端面2bは、長さ方向D2で互いに対向している。一対の側面2cは、幅方向D3で互いに対向している。長さ方向D2及び幅方向D3の長さは、高さ方向D1での長さによりも大きく、かつ、長さ方向D2の長さは幅方向D3の長さよりも大きい。すなわち、各主面2aの面積は、各端面2bの面積及び各側面2cの面積よりも大きい。各側面2cの面積は、各端面2bの面積よりも大きい。
【0021】
直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。本実施形態では、素体2の高さ方向D1の長さは600μmであり、長さ方向D2の長さは1600μmであり、幅方向D3の長さは800μmである。
【0022】
素体2では、一対の主面2aが対向している高さ方向D1に複数の誘電体層が積層されて構成されている。素体2では、複数の誘電体層の積層方向が、高さ方向D1と一致する。各誘電体層は、たとえば誘電体材料(BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、又は(Ba,Ca)TiO系などの誘電体セラミック)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各誘電体層は、各誘電体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0023】
一対の信号用外部電極3は、図1に示されているように、素体2の長さ方向D2での各端面2b上に配置されている。一対の信号用外部電極3は、互いに離間しており、長さ方向D2で対向している。各信号用外部電極3は、主面2a上に配置されている一対の導体部3aと、端面2b上に配置されている導体部3bと、側面2c上に配置されている一対の導体部3cとを有している。各信号用外部電極3において、導体部3a,3b,3cはそれぞれ互いに連結されている。
【0024】
各信号用外部電極3の導体部3bは、対応する端面2bの全体を覆っている。本実施形態では、導体部3a及び導体部3cは、図1及び図2に示されるように素体2の両端において、各端面2bから長さ方向D2で長さ0.25mmの部分の全ての領域を覆っている。
【0025】
一対のグラウンド用外部電極5は、図1に示されているように、一対の信号用外部電極3から離間し、素体2の外表面上における一対の信号用外部電極3の間に配置されている。一対のグラウンド用外部電極5は、長さ方向D2において素体2の中央部分に配置されている。一対のグラウンド用外部電極5は、互いに離間し、幅方向D3で対向している。各グラウンド用外部電極5は、主面2a上に配置されている一対の導体部5aと、側面2c上に配置されている導体部5bとを有している。各グラウンド用外部電極5において、導体部5a,5bは互いに連結されている。
【0026】
各グラウンド用外部電極5の導体部5bは、図1に示されるように、長さ方向D2における側面2cの中央部分において、長さ方向D2で所定長さの幅を有し、かつ、高さ方向D1において一対の主面2aに挟まれた領域の全体を覆っている。各導体部5aは、側面2cから幅方向D3に延在している。本実施形態では、導体部5bの長さ方向D2での長さは0.48mmであり、導体部5aの幅方向D3での長さは0.2mmである。
【0027】
グラウンド用外部電極5の表面粗さは、信号用外部電極3の表面粗さよりも大きい。本実施形態では、グラウンド用外部電極5の表面粗さは、算術平均粗さRaで1500〜4000nmであり、信号用外部電極3の表面粗さは、算術平均粗さRaで400〜2000nmである。
【0028】
図2は、一対の側面2cに平行であり、かつ、一対の側面2cから等距離に位置している平面で貫通コンデンサ1を切断した断面図である。図3は、一対の端面2bに平行であり、かつ、一対の端面2bから等距離に位置している平面で貫通コンデンサ1を切断した断面図である。図2及び図3に示されているように、信号用内部電極7とグラウンド用内部電極9とは、素体2の高さ方向において異なる位置(層)に配置されている。すなわち、信号用内部電極7とグラウンド用内部電極9とは、素体2内において、高さ方向D1に間隔を有して対向するように交互に配置されている。
【0029】
図4は、一対の主面2aに平行であり、かつ、一対の主面2aから等距離に位置している平面で貫通コンデンサ1を切断して、複数の信号用内部電極7のうち一つが露出されている断面図である。図4に示されているように、各信号用内部電極7は、長さ方向D2が長辺方向であると共に幅方向D3が短辺方向である矩形形状を呈している。
【0030】
各信号用内部電極7は、一対の端面2bに露出し、一対の主面2a、及び、一対の側面2cからは露出していない。各信号用内部電極7は、端面2bにおいて、対応する信号用外部電極3に接続されている。本実施形態では、信号用内部電極7の幅方向D3における幅は、400μm以上である。すなわち、各信号用内部電極7のうち端面2bに露出している部分の幅方向D3における長さは、400μm以上である。幅方向D3において、信号用内部電極7が各端面2bに露出している部分の幅をW1とし、素体2の幅をW2としたとき、0.53≦W1/W2≦0.83が満たされることが好ましい。0.68≦W1/W2≦0.83が満たされるとより好ましい。
【0031】
図5は、一対の主面2aに平行であり、かつ、一対の主面2aから等距離に位置している平面で貫通コンデンサ1を切断して、複数のグラウンド用内部電極9のうち一つが露出されている断面図である。図5に示されているように、各グラウンド用内部電極9は、高さ方向D1で素体2の一部(誘電体層)を介して、信号用内部電極7と対向している。各グラウンド用内部電極9は、長さ方向D2が長辺方向であると共に幅方向D3が短辺方向である矩形形状を呈している主電極部9aと、当該主電極部の長辺から延びて側面2cに露出している一対の接続部9bとを含んでいる。主電極部9aと各接続部9bとは、一体的に形成されている。
【0032】
各グラウンド用内部電極9は、一対の側面2cに露出し、一対の主面2a、及び、一対の端面2bからは露出していない。各グラウンド用内部電極9は、側面2cにおいて、対応するグラウンド用外部電極5に接続されている。本実施形態では、グラウンド用内部電極9の長さ方向D2における最小幅は、信号用内部電極7の幅方向D3における最小幅よりも小さく、50μm以上である。接続部9bのうち側面2cに露出している部分の長さ方向D2における長さは、グラウンド用内部電極9の長さ方向D2における最小幅である。グラウンド用内部電極9(接続部9b)が側面2cに露出している部分の幅は、各信号用内部電極7が端面2bに露出している部分の幅より小さい。すなわち、信号用外部電極3と各信号用内部電極7との接触面積は、グラウンド用外部電極5と各グラウンド用内部電極9との接触面積よりも大きい。
【0033】
図5に示されているように、矩形形状を呈している複数のダミー電極10が、グラウンド用内部電極9と同一の層に配置されている。ダミー電極10は、グラウンド用内部電極9及び信号用内部電極7と離間しており、長さ方向D2において接続部9bと隣り合って、接続部9bを挟み込むように配置されている。各ダミー電極10は、側面2cに露出しており、グラウンド用外部電極5に接続されている。本実施形態において、各ダミー電極10のうち側面2cに露出している部分の長さ方向D2における長さは、50〜130μmである。
【0034】
各ダミー電極10は、高さ方向D1で、信号用内部電極7と対向していない。ダミー電極10は、全てのグラウンド用内部電極9が配置されている各層に4つずつ配置されおり、信号用内部電極7が配置されている層には配置されていない。信号用内部電極7とダミー電極10との間で形成される静電容量成分は、信号用内部電極7とグラウンド用内部電極9との間で形成される静電容量成分に比して、極めて小さく、貫通コンデンサ1で形成される静電容量成分に実質的に寄与しない。
【0035】
信号用内部電極7、グラウンド用内部電極9、及びダミー電極10は、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料(たとえば、Ni又はCuなど)からなる。信号用内部電極7及びグラウンド用内部電極9は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0036】
貫通コンデンサ1は、図6及び図7に示されているように、電子機器(たとえば、回路基板又は他の電子部品など)20にはんだ実装される。図6は、一対の側面2cに平行であり、かつ、一対の側面2cから等距離に位置している平面で、電子機器20に実装された貫通コンデンサ1を切断した断面図である。図7は、一対の端面2bに平行であり、かつ、一対の端面2bから等距離に位置している平面で、電子機器20に実装された貫通コンデンサ1を切断した断面図である。
【0037】
一対の主面2aの一方が、電子機器20に対向する実装面である。各信号用外部電極3と電子機器20のパッド電極(不図示)との間には、はんだフィレット22が形成されている。各グラウンド用外部電極5と電子機器20のパッド電極との間には、はんだフィレット23が形成されている。はんだフィレット23の高さ方向D1における長さは、はんだフィレット22の高さ方向D1における長さよりも小さい。はんだフィレット23の幅方向D3における長さは、はんだフィレット22の長さ方向D2における長さよりも小さい。
【0038】
次に、図8及び図9を参照して、信号用外部電極3及びグラウンド用外部電極5の詳細な構成について説明する。図8は、図2に示した貫通コンデンサ1において信号用外部電極3を拡大した図である。図9は、図3に示した貫通コンデンサ1においてグラウンド用外部電極5を拡大した図である。
【0039】
各信号用外部電極3は、図8に示されているように、第一焼結電極層31と、第一めっき層32と、第二めっき層33とを含んでいる。第一焼結電極層31は、信号用内部電極7が一対の端面2bに露出している部分を覆うと共に該信号用内部電極7に接続されている。本実施形態では、第一焼結電極層31は、端面2bの全体に接している。本実施形態では、第一焼結電極層31が端面2bと接している領域の縁は、信号用内部電極7が端面2bに露出している部分から30μm以上離れている。端面2b上における第一焼結電極層31の平均厚みは15〜50μmである。
【0040】
第一めっき層32は、めっき処理(たとえば、電気めっき処理など)により、第一焼結電極層31上に形成されている。すなわち、第一焼結電極層31は、その外表面の全体が第一めっき層32で覆われるようにめっき処理されている。第二めっき層33は、めっき処理により、第一めっき層32上に形成されている。すなわち、第一めっき層32は、その外表面の全体が第二めっき層33で覆われるようにめっき処理されている。導体部3a,3b,3cの各々は、第一焼結電極層31と、第一めっき層32と、第二めっき層33とを含んでいる。
【0041】
各グラウンド用外部電極5は、図9に示されているように、第二焼結電極層51と、第三めっき層52と、第四めっき層53とを含んでいる。第二焼結電極層51は、グラウンド用内部電極9(接続部9b)が一対の側面2cに露出している部分を覆うと共に該グラウンド用内部電極9(接続部9b)及びダミー電極10に接続されている。本実施形態では、第二焼結電極層51が側面2cと接している領域の縁は、グラウンド用内部電極9(接続部9b)及びダミー電極10が側面2cに露出している部分から30μm以上離れている。側面2c上における第二焼結電極層51の平均厚みは5〜20μmである。第一焼結電極層31と各信号用内部電極7との接触面積は、第二焼結電極層51と各グラウンド用内部電極9との接触面積よりも大きい。
【0042】
第三めっき層52は、めっき処理により、第二焼結電極層51上に形成されている。すなわち、第二焼結電極層51は、その外表面の全体が第三めっき層52で覆われるようにめっき処理されている。第四めっき層53は、めっき処理により、第三めっき層52上に形成されている。すなわち、第三めっき層52は、その外表面の全体が第四めっき層53で覆われるようにめっき処理されている。導体部5a,5bの各々は、第二焼結電極層51と、第三めっき層52と、第四めっき層53とを含んでいる。
【0043】
第一焼結電極層31及び第二焼結電極層51は、導電性ペーストを素体2の表面に付与された状態で焼き付けられることによって形成されている。各焼結電極層31,51は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結して形成された焼結金属層である。本実施形態では、各焼結電極層31,51は、Cuからなる焼結金属層である。各焼結電極層31,51は、Niからなる焼結金属層であってもよい。導電性ペーストには、金属(たとえば、Cu又はNi)からなる粉末に、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を混合したものが用いられている。
【0044】
本実施形態では、第一及び第三めっき層32,52は、Niめっきにより形成されたNiめっき層である。第一及び第三めっき層32,52は、Snめっき層、Cuめっき層、又はAuめっき層であってもよい。第二及び第四めっき層33,53は、Snめっきにより形成されたSnめっき層である。第二及び第四めっき層33,53は、Cuめっき層又はAuめっき層であってもよい。
【0045】
信号用外部電極3の第一焼結電極層31、及び、グラウンド用外部電極5の第二焼結電極層51は、図8及び図9に示されているように、導電性ペーストに含まれていた揮発性成分のガス等からなる空隙30を含んでいる。本実施形態では、最大径が10μm以下の空間を空隙30とする。図8及び図9では、空隙30が、模式的に楕円で示されている。実際の空隙30の形状は、楕円(楕円体)に限られない。
【0046】
第一焼結電極層31の空隙率は、第二焼結電極層51の空隙率よりも大きい。本実施形態では、第一焼結電極層31の空隙率は0.2〜1.0%であり、第二焼結電極層51の空隙率は0.02〜0.18%である。第一焼結電極層31及び第二焼結電極層51の空隙率は、たとえば、以下のようにして求めることができる。
【0047】
第一焼結電極層31及び第二焼結電極層51の各々について、走査型電子顕微鏡によって断面写真を取得する。たとえば、一対の主面2aに平行であり、かつ、一対の主面2aから等距離に位置している平面で切断したときの第一焼結電極層31及び第二焼結電極層51の断面写真が用いられる。取得した断面写真上において、第一焼結電極層31及び第二焼結電極層51の各々について、各サンプル領域における空隙30の各面積を算出する。
【0048】
たとえば、第一焼結電極層31では、端面2bから長さ方向D2に+5μmで、上記断面写真における端面2bの中心線から幅方向D3で±125μmの領域をサンプル領域とする。第二焼結電極層51では、側面2cから幅方向D3に+5μmで、上記断面写真における側面2cの中心線から長さ方向D2で±125μmの領域をサンプル領域とする。
【0049】
第一焼結電極層31における空隙30の面積を、第一焼結電極層31のサンプル領域の面積で除し、得られた商を百分率で表した値を第一焼結電極層31の空隙率とする。第二焼結電極層51における空隙30の面積を、第二焼結電極層51のサンプル領域の面積で除し、得られた商を百分率で表した値を第二焼結電極層51の空隙率とする。
【0050】
以上説明したように、グラウンド用外部電極5に含まれている第二焼結電極層51にダミー電極10が接続されているため、グラウンド用外部電極5は素体2から剥離し難い。第一焼結電極層31の空隙率が第二焼結電極層51の空隙率より大きいため、第一焼結電極層31の形成において、第二焼結電極層51の形成で用いられる導電性ペーストよりも金属粒子が疎である導電性ペーストを用いることができる。金属粒子が疎であるほど、焼成において発生するガスが金属粒子の間を通りやすいため、該ガスが第一焼結電極層31と素体2との間で滞留し難い。したがって、第一焼結電極層31と素体2との接合面積が確保され得るため、第一焼結電極層31にダミー電極10が接続されなくとも、信号用外部電極3が素体2から剥離し難い。したがって、貫通コンデンサ1では、所望の抵抗値を有すると共に各外部電極3,5が素体から剥離し難い。
【0051】
めっき処理において、めっき液が、第一及び第二焼結電極層31,51を浸透して各内部電極7,9が素体2から露出している部分に到達し、各内部電極7,9と素体2との間を通って素体2の内部に浸入するおそれがある。めっき液が素体2の内部に入り込んでいると、貫通コンデンサ1が使用された場合に素体2にクラックが発生しやすい。めっき液は、空隙を通って焼結電極層を浸透するため、各焼結電極層31,51の空隙率が小さいほど、各内部電極7,9が素体2から露出している部分にめっき液が到達する経路が形成され難い。
【0052】
第二焼結電極層51の空隙率は第一焼結電極層31の空隙率よりも小さいため、めっき液は第二焼結電極層51を浸透し難い。端面2b上における第一焼結電極層31の平均厚みが15μm以上であれば、めっき液は第一焼結電極層31も浸透し難い。すなわち、上記構成によれば、素体2にクラックが発生し難く、素体2の信頼性が向上される。
【0053】
一対の側面2cに直交する方向(幅方向D3)において、信号用内部電極7が各端面2bに露出している部分の幅をW1とし、素体の幅をW2としたとき、0.53≦W1/W2≦0.83が満たされている。この場合、信号用内部電極7と第一焼結電極層31との接触面積が適切であるため、素体2の信頼性が確保されながら、抵抗が低減されている。0.68≦W1/W2≦0.83が満たされていればより好ましく、素体2の信頼性が確保されながら、更に抵抗が更に低減される。
【0054】
グラウンド用内部電極9が側面2cに露出している部分の幅は、各信号用内部電極7が端面2bに露出している部分の幅よりも小さい。内部電極が素体2から露出する部分の幅が低減されれば、めっき液が浸入する経路を狭められるため、素体2内部へのめっき液の浸入が抑制される。このため、信号用内部電極7と信号用外部電極3との接触面積が確保されることによって抵抗の増加が抑制されながら、グラウンド用内部電極9が素体2から露出する部分の幅が低減されることでめっき液の浸入によるクラックの発生が更に抑制されている。
【0055】
各主面2aの面積は、各側面2cの面積及び各端面2bの面積よりも大きく、各側面2cの面積は、各端面2bの面積よりも大きく、グラウンド用外部電極5の表面粗さは、信号用外部電極3の表面粗さよりも大きい。各側面2cの面積が各端面2bの面積よりも大きいと、当該貫通コンデンサ1が各外部電極3,5において電子機器20にはんだ実装された場合に、電子機器20とグラウンド用外部電極5との接合部分に作用する単位面積当たりの力は、電子機器20と信号用外部電極3との接合部分に作用する単位面積当たりの力よりも大きくなりやすい。
【0056】
グラウンド用外部電極5の表面粗さが信号用外部電極3の表面粗さよりも大きければ、グラウンド用外部電極5とはんだとの接合強度が信号用外部電極3とはんだとの接合強度よりも大きいため、貫通コンデンサ1が電子機器20から剥離し難い。グラウンド用外部電極5の表面粗さが信号用外部電極3の表面粗さよりも大きいため、グラウンド用外部電極5においてはんだがのぼり難い。したがって、グラウンド用外部電極5におけるはんだフィレット23の大きさが低減されるため、幅方向D3における電子機器20に対する貫通コンデンサ1の実装の密度が向上され得る。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0058】
たとえば、本実施形態では、各信号用外部電極3が一対の主面2a及び一対の側面2c上に導体部3a,3cを有しているが、各信号用外部電極3は、各端面2b上のみに導体部3bを有していてもよい。同様に、本実施形態では、各グラウンド用外部電極5が一対の主面2a上に導体部5aを有しているが、各グラウンド用外部電極5は、各側面2c上のみに導体部5bを有していてもよい。
【0059】
グラウンド用外部電極5は、一対の端面2bの間に位置する側面2c上に1又は3以上配置されていてもよい。グラウンド用外部電極5は、一対の側面2cの少なくとも一方の面上に配置されていてもよい。
【0060】
素体2の形状は、互いに対向する一対の端面と、一対の端面の間に位置する少なくとも一つの側面を有していればよく、直方体形状に限定されない。
【0061】
本実施形態では、各信号用内部電極7は、矩形形状を呈しているが、これに限定されない。たとえば、各信号用内部電極7は、矩形形状を呈している主電極部と、当該主電極部から延在していると共に各端面2bに露出している一対の接続部とを含んでいてもよい。この場合、信号用内部電極7の幅方向D3における最小幅は、400μm以上であり、接続部のうち端面2bに露出している部分の幅方向D3における長さは、信号用内部電極7の幅方向D3における最小幅である。
【符号の説明】
【0062】
1…貫通コンデンサ、2…素体、2a…主面、2b…端面、2c…側面、3…信号用外部電極、5…グラウンド用外部電極、7…信号用内部電極、9…グラウンド用内部電極、10…ダミー電極、30…空隙、31…第一焼結電極層、51…第二焼結電極層、32,33,52,53…めっき層、D1…高さ方向、D2…長さ方向、D3…幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9