(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スパイラル導体は、第1の平面スパイラル導体と、前記第1の平面スパイラル導体に積層され、前記第1の平面スパイラル導体とは逆方向に巻回された第2の平面スパイラル導体とを含み、
前記スルーホール導体は、前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続された第1のスルーホール導体と、前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続された第2のスルーホール導体と、前記第1及び第2の平面スパイラル導体の内周端に共通接続された第3のスルーホール導体とを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコイル部品。
前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端は、積層方向から見て重なっており、重なる位置にて前記積層方向に短絡されていることを特徴とする請求項8に記載のコイル部品。
前記第3のスルーホール導体は、前記積層方向から見て少なくとも一部が前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端と重なることを特徴とする請求項9に記載のコイル部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品は、巻線がワイヤまたはフォイルによって構成されていることから、製造工程が複雑であるばかりでなく、得られる特性に大きなばらつきが生じてしまう。
【0006】
一方、特許文献2に記載されたコイル部品は、巻線として平面スパイラル導体を用いていることから、特性のばらつきは小さい。しかしながら、特許文献2においては、2つの平面スパイラル導体を同心円状に巻回していることから、磁気結合率の調整が困難であるという問題がある。つまり、カップリングインダクタは、磁気結合しない漏れ磁束成分が平滑作用をもたらすため、所望の特性を得るためには磁気結合率をある程度弱め、これにより十分な漏れ磁束成分を確保する必要がある。しかしながら、特許文献2に記載されたコイル部品において磁気結合率を低下させるためには、同心円状に巻回された2つの平面スパイラル導体の導体間隔を広げる必要があり、この場合には、製品の平面サイズが大型化してしまう。しかも、外部端子を部品の側面に形成する必要があることから、高密度実装すると隣接する他の部品とのショート不良が発生しやすいという問題もあった。
【0007】
このような問題を解決すべく、本発明者らの一部は、2つの平面スパイラル導体を積層するとともに、これら平面スパイラル導体の内周端を共通接続する構造を提案した。かかる構造によれば、2つの平面スパイラル導体が積層方向に磁気結合することから、製品の平面サイズに影響を与えることなく磁気結合率を調整することができる。しかも、2つの平面スパイラル導体の内周端同士を短絡していることから、これらを回路基板上で短絡する必要もない。また、端子数が少ないことから、端子部分によって生じる渦電流損も少ない。さらに、外部端子を部品の側面に形成する必要がなく、底面にのみ形成することができることから、高密度実装した場合であっても他の部品とのショート不良が発生しにくいという利点も有している。
【0008】
しかしながら、近年、コイル部品に求められるチップサイズはますます小型化しており、これに伴って平面スパイラル導体を覆う磁性体層の体積確保が困難となってきている。つまり、バンプ状の底面電極を用いた場合、底面電極の体積分だけ磁性体層の体積が減少するため、コイル部品の小型化が進行するにつれて所望の磁気特性を得ることが困難となってしまう。磁性体層の体積を十分に確保するためには、バンプ状の底面電極の径を縮小すればよいが、この場合は底面電極の露出面積が減少するため、接続信頼性が低下するおそれが生じる。
【0009】
したがって、本発明は、底面電極の露出面積を拡大しつつ、磁性体層の体積を確保することが可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるコイル部品は、スパイラル導体と、前記スパイラル導体を覆って設けられ、前記スパイラル導体の一端を露出させるスルーホールを有する磁性体層と、前記スルーホールに埋め込まれ、前記磁性体層から露出する第1及び第2の領域を有するスルーホール導体と、前記磁性体層の上面に形成され、前記スルーホール導体の前記第2の領域を覆うことなく前記第1の領域を覆う第1の導体層と、前記第1の導体層及び前記スルーホール導体の前記第2の領域を覆う第2の導体層とを備え、前記第2の導体層は、前記第1の導体層よりも抵抗値が低いことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、磁性体層の上面に第1及び第2の導体層が設けられていることから、スルーホール導体の径を縮小しても、底面電極の露出面積を確保することができる。しかも、スルーホール導体は、第1の導体層を介することなく、より抵抗値の低い第2の導体層と接続された部分を有していることから、直流抵抗の増大も抑えられる。
【0012】
本発明において、前記第1の導体層は前記第2の導体層よりも柔軟性が高いことが好ましい。これによれば、第1の導体層によって底面電極に柔軟性が与えられることから、熱衝撃や外部応力を緩和することが可能となり、信頼性が高められる。ここで、第1の導体層の材料としては、銀ペーストなどの導電性樹脂を用いることが好ましく、磁性体層は磁性体を含有する樹脂からなることが好ましい。これによれば、磁性体層と第1の導体層の密着性が高められる。
【0013】
本発明において、前記第2の導体層はニッケル(Ni)とスズ(Sn)の積層膜からなることが好ましい。これによれば、低抵抗であるとともにハンダに対する高い耐熱性と高い濡れ性を得ることが可能となる。
【0014】
本発明において、前記第2の領域は前記第1の領域よりも面積が大きくても構わない。これによれば、直流抵抗をより低減することが可能となる。また、積層方向から見て、前記第2の領域は前記第1の領域よりも前記磁性体層の端部側に位置していても構わない。これによれば、電流パスの最短経路に相当する部分に第1の導体層が介在しないことから、直流抵抗をよりいっそう低減することが可能となる。
【0015】
本発明において、前記スパイラル導体は、第1の平面スパイラル導体と、前記第1の平面スパイラル導体に積層され、前記第1の平面スパイラル導体とは逆方向に巻回された第2の平面スパイラル導体とを含み、前記スルーホール導体は、前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続された第1のスルーホール導体と、前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続された第2のスルーホール導体と、前記第1及び第2の平面スパイラル導体の内周端に共通接続された第3のスルーホール導体とを含むことが好ましい。これによれば、高性能なカップリングインダクタを得ることが可能となる。
【0016】
本発明において、前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端は、積層方向から見て重なっており、重なる位置にて前記積層方向に短絡されていることが好ましい。これによれば、内周端同士を接続するための接続導体などが不要となることから、構造を単純化することができる。
【0017】
この場合、前記第3のスルーホール導体は、前記積層方向から見て少なくとも一部が前記第1及び第2の平面スパイラル導体の前記内周端と重なることが好ましい。これによれば、平面スパイラル導体の内周端と第3のスルーホール導体とを接続するための接続導体などが不要となることから、構造を単純化することができる。しかも、第3のスルーホール導体が内周端の直上に配置されるため、高い放熱効果を得ることも可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、底面電極の露出面積を拡大しつつ、磁性体層の体積を確保することが可能なコイル部品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品10の外観を示す斜視図である。また、
図2はコイル部品10の分解斜視図であり、
図3は
図1に示すA−A線に沿った断面図であり、
図4は
図1に示すB−B線に沿った断面図である。
【0022】
本実施形態によるコイル部品10はカップリングインダクタとして用いることが可能なチップ部品であり、
図1〜
図4に示すように、第1及び第2の磁性体層11,12と、これら磁性体層11,12に挟まれた第1及び第2の平面スパイラル導体21,22とを備える。
【0023】
磁性体層11は、焼結フェライトなどの磁性材料からなる基板である。後述するように、コイル部品10の製造過程においては、磁性体層11を基板として、その上面に平面スパイラル導体21,22及び磁性体層12を順次形成する。一方、磁性体層12は、フェライト粉や金属磁性粉を含有する樹脂からなる複合部材である。金属磁性粉を用いる場合、パーマロイ系材料を用いることが好適である。また、樹脂としては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
第1の平面スパイラル導体21は、磁性体層11の上面に絶縁層31を介して形成されている。平面スパイラル導体21は、積層方向から見ると、外周端21aから内周端21bに向かって反時計回り(左回り)に巻回されている。巻回数については特に限定されないが、例えば、4.5ターンである。また、平面スパイラル導体21と同じ導体層には、接続導体23も形成されている。接続導体23は、平面スパイラル導体21とは独立して設けられている。外周端21aおよび内周端21bは、それ以外の部分よりも十分に大きい導体幅を有している。
【0025】
第2の平面スパイラル導体22は、第1の平面スパイラル導体21の上面に絶縁層32を介して形成されている。平面スパイラル導体22は、積層方向から見ると、外周端22aから内周端22bに向かって時計回り(右回り)に巻回されている。つまり、平面スパイラル導体21,22の巻回方向は、互いに逆方向である。巻回数については、第1の平面スパイラル導体21と同一ターンとすることが好ましい。また、平面スパイラル導体22と同じ導体層には、接続導体24も形成されている。接続導体24は、平面スパイラル導体21の外周端21aと重なる位置に設けられており、絶縁層32に形成されたスルーホールを介して短絡されている。同様に、上述した接続導体23は、平面スパイラル導体22の外周端22aと重なる位置に設けられている。接続導体23と平面スパイラル導体22の外周端22aは、互いに接続されていても構わないし、接続されていなくても構わない。外周端22aおよび内周端22bは、それ以外の部分よりも十分に大きい導体幅を有している。
【0026】
さらに、平面スパイラル導体21の内周端21bと平面スパイラル導体22の内周端22bは、積層方向から見て同じ平面位置に配置されており、絶縁層32に形成されたスルーホールを介して短絡されている。平面スパイラル導体21,22の内周端21b,22bは、平面位置が完全に一致している必要はなく、少なくとも短絡位置において重なりを有していれば足りる。
【0027】
平面スパイラル導体21,22及び接続導体23,24は、いずれも銅(Cu)などの良導体によって構成され、電解メッキ法を用いて形成することが好ましい。
【0028】
平面スパイラル導体22の上面は、絶縁層33を介して第2の磁性体層12で覆われる。磁性体層12には3つのスルーホール12a〜12cが設けられており、これらにそれぞれ第1〜第3のスルーホール導体41〜43が埋め込まれている。スルーホール12a〜12cは、磁性体層12の外周部から離れた内部を貫通する形状を有している。つまり、スルーホール12a〜12cの内周壁は磁性体層12の外周壁を構成するものではなく、したがってスルーホール導体41〜43は磁性体層12の側面からは露出しない。
【0029】
スルーホール12aは、接続導体24の直上に位置し、接続導体24の少なくとも一部を露出させる。これにより、スルーホール12aに埋め込まれた第1のスルーホール導体41は、接続導体24を介して第1の平面スパイラル導体21の外周端21aに接続されることになる。
【0030】
スルーホール12bは、第2の平面スパイラル導体22の外周端22aの直上に位置し、外周端22aの少なくとも一部を露出させる。これにより、スルーホール12bに埋め込まれた第2のスルーホール導体42は、第2の平面スパイラル導体22の外周端22aに接続されることになる。
【0031】
スルーホール12cは、第2の平面スパイラル導体22の内周端22bの直上に位置し、内周端22bの少なくとも一部を露出させる。これにより、スルーホール12cに埋め込まれた第3のスルーホール導体43は、第1及び第2の平面スパイラル導体21,22の内周端21b,22bに共通接続されることになる。
【0032】
スルーホール導体41〜43は、平面スパイラル導体21,22と同様、銅(Cu)などの良導体によって構成される。本実施形態においてはスルーホール導体41〜43と平面スパイラル導体21,22は、互いに同じ金属材料によって構成されている。
【0033】
スルーホール導体41〜43の上面は、第2の磁性体層12の上面から露出し、且つ、第2の磁性体層12の上面とほぼ同一平面を構成している。上述の通り、スルーホール導体41〜43は磁性体層12の側面からは露出せず、第2の磁性体層12の上面のみから露出する。尚、本実施形態によるコイル部品10をプリント基板上に表面実装する際には、上下反転させ、第2の磁性体層12の上面をプリント基板側に向けて実装する。したがって、第2の磁性体層12の上面から露出するスルーホール導体41〜43は、コイル部品10の底面電極の一部を構成する。
【0034】
スルーホール導体41〜43の上面は、第1の導体層44〜46によってそれぞれ覆われ、さらに、第2の導体層47〜49によってそれぞれ覆われる。
【0035】
図5は、コイル部品10の底面のレイアウトを説明するための透視平面図であり、
図6は、
図5に示すC−C線に沿った断面図である。
【0036】
図5及び
図6に示すように、スルーホール導体41〜43の上面は、それぞれ第1の領域41a〜43aと第2の領域41b〜43bを有している。そして、第2の磁性体層12の表面には、第1の領域41a〜43aを覆うように第1の導体層44〜46がそれぞれ設けられる。第1の導体層44〜46は、銀ペーストなどの導電性樹脂を用いることが好ましい。これによれば、第1の導体層44〜46の材料としてニッケル(Ni)やスズ(Sn)などの金属を用いた場合と比べ、第2の磁性体層12に対して高い密着性を得ることができるとともに、導電性樹脂の持つ高い柔軟性によって熱衝撃や外部応力を緩和することができるため、信頼性が高められる。
【0037】
ここで、第1の導体層44〜46は、スルーホール導体41〜43の第1の領域41a〜43aだけでなく、第2の磁性体層12の表面の一部を覆っていることから、底面電極の面積を拡大する役割を果たす。但し、第1の導体層44〜46は、スルーホール導体41〜43の第2の領域41b〜43bは覆っておらず、したがって、第2の領域41b〜43bは第1の導体層44〜46からは露出している。
【0038】
そして、スルーホール導体41〜43の第2の領域41b〜43b及び第1の導体層44〜46は、それぞれ第2の導体層47〜49によって覆われる。第2の導体層47〜49は底面電極の最表層を構成し、少なくとも第1の導体層44〜46よりも低抵抗である必要がある。第2の導体層47〜49の材料としては、ニッケル(Ni)とスズ(Sn)の積層膜を用いることが好ましい。ニッケル(Ni)とスズ(Sn)の積層膜は、銀ペーストなどの導電性樹脂よりも十分に低抵抗であるとともに、ハンダに対する高い耐熱性と高い濡れ性を有している。
【0039】
このように、第2の導体層47〜49は、スルーホール導体41〜43の第2の領域41b〜43bに直接接していることから、第1の導体層44〜46を経由しない電流パスが形成される。これにより、スルーホール導体41〜43の上面全体が第1の導体層44〜46によって覆われる場合と比べて、直流抵抗を低減することが可能となる。
【0040】
図2に示すように、スルーホール導体41,42は、積層方向からみてコイル部品10の互いに隣接する角部に設けられる。スルーホール導体41,42が設けられる角部に対して対角に位置する2つの角部には、第2の磁性体層12と同じ材料からなる磁性部材13,14が埋め込まれている。また、平面スパイラル導体21,22の内径部にも、第2の磁性体層12と同じ材料からなる磁性部材15が埋め込まれている。磁性部材15は、平面スパイラル導体21,22の内径部を貫通して設けられている。ここで、平面スパイラル導体21,22の内径部に設けられた内周端21b,22bは、積層方向から見て一方側(
図2においては左上側)にオフセットして配置されており、磁性部材15は、積層方向から見て他方側(
図2においては右下側)にオフセットして配置されている。これにより、スルーホール導体41,42とスルーホール導体43との距離がより離れることから、これらの間の短絡を防止することが可能となる。
【0041】
磁性部材13〜15は、絶縁層31〜33に設けられたスルーホールを介して第1の磁性体層11と第2の磁性体層12を磁気的に接続し、これによって閉磁路を形成する役割を果たす。絶縁層31〜33は、例えば樹脂からなり、少なくとも絶縁層32については非磁性材料を用いることが好ましい。また、絶縁層32の厚さは、平面スパイラル導体21,22の厚さの1/2以下とすることが好ましい。これによれば、直流抵抗の増大を抑えつつ、磁気結合の調整が可能となる。
【0042】
以上が本実施形態によるコイル部品10の構成である。かかる構成により、スルーホール導体41とスルーホール導体43は、第1の平面スパイラル導体21を介して接続されることになる。同様に、スルーホール導体42とスルーホール導体43は、第2の平面スパイラル導体22を介して接続されることになる。そして、第1及び第2の平面スパイラル導体21,22は積層方向に磁気結合していることから、一方の平面スパイラル導体に電流を流すと、起電力によって他方の平面スパイラル導体にも電流が流れる。この時、第1及び第2の平面スパイラル導体21,22は互いに逆方向に巻回されていることから、電流の流れる方向は同一方向となる。
【0043】
図7は本実施形態によるコイル部品10の等価回路図である。
【0044】
図7に示すように、本実施形態によるコイル部品10は、磁気結合する理想トランス部L1と、漏れ磁束を発生させる漏れインダクタンス成分L2を有する。理想トランス部L1は、スルーホール導体41,42を入力側とすると、互いに逆方向に磁気結合する成分である。
【0045】
コイル部品10をカップリングインダクタとして使用すると、理想トランス部L1によって電流が分割され、漏れインダクタンス成分L2によって平滑化される。したがって、所望の特性を得るためには磁気結合率がある程度弱まるよう調整することによって、漏れインダクタンス成分L2を確保する必要がある。
【0046】
本実施形態においては、磁気結合率を絶縁層32の膜厚によって調整することができる。これは、第1の平面スパイラル導体21と第2の平面スパイラル導体22が積層方向に磁気結合しているからである。したがって、磁気結合率を弱めるためには、絶縁層32の膜厚を大きくすればよい。絶縁層32の膜厚は、コイル部品10の平面サイズには影響しないため、磁気結合率を調整してもコイル部品10の平面サイズが大型化することはない。
【0047】
しかも、本実施形態においては、磁性体層12の上面に第1の導体層44〜46を形成していることから、底面電極の平面サイズをスルーホール導体41〜43の径よりも拡大することができる。つまり、スルーホール導体41〜43の径が大きいと、その分、第2の磁性体層12の体積が減少し、十分な磁気特性を得ることが難しくなるが、本実施形態においてはスルーホール導体41〜43の径を縮小しつつ、底面電極の最表層である第2の導体層47〜49の面積を拡大することが可能となる。これにより、所望の磁気特性を確保しつつ、実装信頼性を高めることが可能となる。
【0048】
また、第2の導体層47〜49は、第1の導体層44〜46を介することなくスルーホール導体41〜43と接する部分を有していることから、第1の導体層44〜46の抵抗値が比較的高抵抗である場合であっても、直流抵抗の増大を抑えることが可能となる。さらに、本実施形態においては、第1の領域41a,42aよりも第2の領域41b,42bをエッジ側(積層方向からみて磁性体層12の端部側)に配置していることから、実装後に電流Iが流れる電流パスの最短経路に相当する部分に第1の導体層44,45が介在しない。これにより、第1の導体層44,45の介在しない部分に電流Iが集中しやすくなるため、第1の導体層44,45が比較的高抵抗であっても直流抵抗の増大を抑えることが可能となる。
【0049】
さらに、本実施形態によるコイル部品10は、外部端子の数が3つであることから、端子部分によって生じる渦電流損も少ない。また、本実施形態においてはスルーホール導体41,42の平面形状が略長方形であり、磁性部材15が長辺方向に位置するようレイアウトされていることから、磁性部材15が短辺方向に位置するようレイアウトした場合と比べて、スルーホール導体41,42と干渉する磁束が低減される。これにより、スルーホール導体41,42によって生じる渦電流損についても低減することができる。しかも、一般的なコイル部品のようなL字型の端子電極を用いるのではなく、磁性体層12の上面に底面電極が形成された構成を有していることから、L字型の端子電極による直流抵抗の増大も生じない。さらに、コイル部品10の側面に外部端子が露出しないことから、プリント基板上に高密度実装した場合であっても、隣接する他の部品とのショート不良が発生しにくいという利点も有する。
【0050】
次に、本実施形態によるコイル部品10の製造方法について説明する。
【0051】
図8(a)〜(g)は、本実施形態によるコイル部品10の製造工程を説明するための平面パターン図である。
【0052】
まず、所定の厚さを持った焼結フェライトなどからなる磁性体層11を用意し、その上面に絶縁層31を
図8(a)に示すパターンで形成する。具体的には、磁性体層11の上面にスピンコート法によって樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィー法によって所定のパターンを形成する。
図8(a)に示すスルーホール63〜65は、その後、磁性部材13〜15が埋め込まれる部分である。
【0053】
次に、
図8(b)に示すように、絶縁層31の上面に第1の平面スパイラル導体21及び接続導体23を形成する。これら導体の形成方法としては、スパッタリング法などの薄膜プロセスを用いて下地金属膜を形成した後、電解メッキ法を用いて所望の膜厚までメッキ成長させることが好ましい。
【0054】
次に、
図8(c)に示すように、第1の平面スパイラル導体21及び接続導体23を覆うように、絶縁層31の上面に絶縁層32を形成する。形成方法は絶縁層31と同様であり、スピンコート法によって樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィー法によって所定のパターンを形成する。
図8(c)に示すスルーホール81,82は、それぞれスパイラル導体21の外周端21a及び内周端21bを露出させる位置に形成される。一方、スルーホール83〜85は、その後、磁性部材13〜15が埋め込まれる部分である。
【0055】
次に、
図8(d)に示すように、絶縁層32の上面に第2の平面スパイラル導体22及び接続導体24を形成する。これにより、平面スパイラル導体22の内周端22bは、スルーホール82を介して平面スパイラル導体21の内周端21bに接続される。また、接続導体24は、スルーホール81を介して平面スパイラル導体21の外周端21aに接続される。これら導体の形成方法は上述の通りである。
【0056】
次に、
図8(e),(f)に示すように、第2の平面スパイラル導体22及び接続導体24を覆うように、絶縁層32の上面に絶縁層33及びイオンミリング用マスク34をこの順に形成する。形成方法は絶縁層31,32と同様である。
図8(e)に示すスルーホール101,102は、それぞれ平面スパイラル導体22の外周端22a及び内周端22bを露出させる位置に形成される。また、スルーホール106は、接続導体24を露出させる位置に形成される。一方、スルーホール103〜105は、その後、磁性部材13〜15が埋め込まれる部分である。
図8(f)に示すスルーホール113〜115も、その後、磁性部材13〜15が埋め込まれる位置に形成される。
【0057】
この状態で、スルーホール113〜115の範囲についてイオンミリング用マスク34を用いてイオンミリングを行うと、絶縁層31〜33の対応部分が除去され、当該位置において磁性体層11が露出する。次に、イオンミリング用マスク34を除去した後、
図8(g)に示すように、絶縁層33の上面にスルーホール導体41〜43を形成する。これにより、スルーホール導体41はスルーホール106を介して接続導体24に接続され、スルーホール導体42はスルーホール101を介して平面スパイラル導体22の外周端22aに接続され、スルーホール導体43はスルーホール102を介して平面スパイラル導体22の内周端22bに接続される。これら導体の形成方法は上述の通りである。
【0058】
次に、磁性体を含有する樹脂を全面に形成する。これにより、絶縁層31〜33の対応部分が除去されてなる凹部に磁性体含有樹脂が入り込み、磁性部材13〜15が形成されるとともに、絶縁層33の上面を覆う磁性体層12が形成される。その後、スルーホール導体41〜43の上面が露出するまで磁性体層12を研削する。
【0059】
次に、
図8(h)に示すように、磁性体層12の上面に第1の導体層44〜46を形成する。すでに説明したように、第1の導体層44〜46は、それぞれスルーホール導体41〜43の第2の領域41b〜43bを覆うことなく、第1の領域41a〜43aを覆うように形成される。第1の導体層44〜46として銀ペーストなどの導電性樹脂を用いる場合には、スクリーン印刷などの厚膜工法によって形成することができる。
【0060】
そして、基板である磁性体層11を所望の厚みになるまで研削した後、第1の導体層44〜46及びスルーホール導体41〜43の第2の領域41b〜43bを覆うよう、それぞれ第2の導体層47〜49を形成すれば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。第2の導体層47〜49は、バレルメッキ法によってニッケル(Ni)及びスズ(Sn)をこの順に成膜することによって形成することができる。
【0061】
このように、本実施形態によるコイル部品10は、薄膜プロセス及び電解メッキ法を用いて平面スパイラル導体21,22を形成していることから、巻線をワイヤまたはフォイルで形成する場合と比べて、非常に正確なパターンを形成することができる。
【0062】
しかも、スクリーン印刷とバレルメッキをこの順に行うことによって第1の導体層44〜46と第2の導体層47〜49を形成していることから、これら導体層44〜49のパターニング工程も不要である。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、本発明を3端子型のカップリングインダクタに適用した場合を例に説明したが、本発明の適用対象がこれに限定されるものではない。したがって、透視平面図である
図9に示すような、2端子型のインダクタンス素子に適用することも可能である。
図9に示すインダクタンス素子は、2つのスルーホール導体71,72と、スルーホール導体71,72の第1の領域71a,72aをそれぞれ覆う第1の導体層73,74と、スルーホール導体71,72の第2の領域71b,72b及び第1の導体層73,74をそれぞれ覆う第2の導体層75,76を備えている。
図9に示す例においても、第1の領域71a,72aよりも第2の領域71b,72bをエッジ側(積層方向からみて磁性体層12の端部側)に配置することにより、第1の導体層73,74の介在しない部分に電流Iが集中しやすくなるため、第1の導体層73,74が比較的高抵抗であっても直流抵抗の増大を抑えることが可能となる。
【0065】
直流抵抗をより低減させるためには、
図10に示すように、第1の領域71a,72aよりも第2の領域71b,72bの面積が大きくなるよう設計することも好ましい。但し、第1の領域71a,72aの面積が小さすぎると、アライメントのずれによってスルーホール導体71,72と第1の導体層73,74が分離してしまうおそれが生じる。これを防止するためには、
図11に示す例のように、各スルーホール導体の第1の領域71a(72a)に細長い枝部71cを設けることが好ましい。