(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバーを前記閉塞位置に配置した状態で前記加圧領域の圧力を前記媒体上のトナーを加圧する第1の圧力とし、前記カバーを前記開放位置に配置した状態で前記加圧領域の圧力を前記第1の圧力よりも低い第2の圧力とする圧力解除部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1等において紙面手前側を正面とし、各図に示す「L」は「左」を示し、「R」は「右」を示し、「U」は「上」を示し、「D」は「下」を示している。
【0014】
[カラープリンターの概要]
図1を参照して、画像形成装置の一例としてのカラープリンター1の全体の構成について説明する。
図1はカラープリンター1の内部構造を模式的に示す断面図である。
【0015】
カラープリンター1は、略直方体状の外観を構成する装置本体2を備えている。装置本体2の下側には、紙製のシートS(媒体)を収容する給紙カセット3が着脱可能に設けられている。装置本体2の上面には、排紙トレイ4が設けられている。なお、シートSは、紙製に限らず、樹脂製のシート等であってもよい。
【0016】
また、カラープリンター1は、給紙装置5と、作像装置6と、定着装置7と、を装置本体2の内部に備えている。給紙装置5は、給紙カセット3から排紙トレイ4まで延びる搬送路8の上流端部に設けられている。定着装置7は搬送路8の下流側に設けられ、作像装置6は搬送路8において給紙装置5と定着装置7との間に設けられている。
【0017】
作像装置6は、4つのトナーコンテナ10と、中間転写ベルト11と、4つのドラムユニット12と、光走査装置13と、を含んでいる。中間転写ベルト11は、
図1に矢印で示す方向に回転する。4つのトナーコンテナ10は、4色(イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック)のトナーを含む現像剤を貯留する。現像剤は、例えば、トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤である。各ドラムユニット12は、感光体ドラム14と、帯電装置15と、現像装置16と、一次転写ローラー17と、クリーニング装置18と、を含んでいる。各一次転写ローラー17は、感光体ドラム14との間に中間転写ベルト11を挟むように設けられている。中間転写ベルト11の右側には、二次転写ローラー19が接触して転写ニップを形成している。
【0018】
カラープリンター1は、以下のように画像形成処理を実行する。各帯電装置15は、感光体ドラム14の表面を帯電させる。各感光体ドラム14は、光走査装置13から出射された走査光を受け、静電潜像を担持する。各現像装置16は、トナーコンテナ10から供給されたトナーを用いて感光体ドラム14上の静電潜像をトナー像に現像する。各一次転写ローラー17は、感光体ドラム14上のトナー像を回転する中間転写ベルト11に一次転写する。中間転写ベルト11は、回転しながら4色のトナー像を重ねたフルカラーのトナー像を担持する。シートSは、給紙装置5によって給紙カセット3から搬送路8に送り出される。二次転写ローラー19は、転写ニップを通過するシートSに中間転写ベルト11上のトナー像を二次転写する。定着装置7はトナー像をシートSに熱定着させる。その後、シートSは排紙トレイ4に排出される。各クリーニング装置18は感光体ドラム14上に残ったトナーを除去する。
【0019】
[定着装置]
次に、
図2ないし
図6を参照して、定着装置7について説明する。
図2は定着装置7を示す斜視図である。
図3は定着装置7を模式的に示す断面図である。
図4は定着装置7の後方を示す斜視図である。
図5は定着装置7の内部を模式的に示す正面図である。
図6は定着装置7のカバー31を開いた状態を模式的に示す断面図である。なお、本明細書において、「上流」および「下流」並びにこれらに類する用語は、シートSの搬送方向の「上流」および「下流」並びにこれらに類する概念を指す。
【0020】
定着装置7は、短時間で設定温度に達するように、熱容量の小さな定着ベルト21を用いたベルト定着方式を採用している。
図2ないし
図4に示すように、定着装置7は、筐体20と、定着ベルト21と、加圧ローラー22と、ハロゲンヒーター23と、圧力解除部24と、分離部材25と、を含んでいる。筐体20は、装置本体2に支持されている。定着ベルト21、加圧ローラー22、圧力解除部24および分離部材25は、筐体20の内部に設けられている。ハロゲンヒーター23は、定着ベルト21の内部に設けられている。
【0021】
<筐体>
図2および
図3に示すように、筐体20は、前後方向に長い略直方体状に形成されている。筐体20の内部には、シートSが通過する搬送路8の一部が形成されている。筐体20の下面および上面には、筐体20内の搬送路8に通じる開口が形成されている。筐体20の下面側の開口付近には、定着ベルト21と加圧ローラー22との接触部分(加圧領域N)にシートSを導くための進入ガイド30が設けられている(
図3参照)。
【0022】
(カバー)
図2ないし
図4に示すように、筐体20の上部右側には、筐体20内で詰まったシートSを除去(ジャム処理)する際に開閉されるカバー31が設けられている。カバー31は、例えば、合成樹脂製で前後方向に長い略直方体状に形成されている。詳細には、カバー31は、正面から見て左方向に傾いた略平行四辺形状に形成されている。カバー31は、加圧領域Nよりも下流側に設けられている。
【0023】
図3および
図4に示すように、カバー31の左上角部には、前後方向に延びた開閉軸31Aが固定されている。開閉軸31Aの前後両端部は、筐体20の側壁に回転可能に支持されている。カバー31は、開閉軸31Aを中心に回動するようになっている。詳細には、カバー31は、加圧領域Nを通過したシートSを搬送するための搬送路8を形成する閉塞位置P10(
図3参照)と、搬送路8を開放する開放位置P11(
図6参照)との間で移動可能(回動可能)に設けられている。カバー31が閉塞位置P10から開放位置P11に向かって上方に回動すると、筐体20内の搬送路8が露出する(
図6参照)。なお、以下の説明では、カバー31が閉塞位置P10に配置された状態を基準にして説明する。
【0024】
図3に示すように、カバー31の上流側(下部)には、筐体20の内部に固定された本体搬送面部20Aとの間に搬送路8を挟んで対向するカバー搬送面部31Bが形成されている。カバー搬送面部31Bは、下部から上部に向かってカバー31の中空内部(右方)に傾斜した状態に形成されている。カバー搬送面部31Bが凹むように形成されていることで、カバー31の搬送路8側には凹部31Cが形成されている。カバー搬送面部31B(凹部31C)よりも下流側にはカバー31の内部に通じる開口部が形成され、この開口部には加圧領域Nを通過したシートSを下流側に送り出す第1排出ローラー32Aが設けられている。なお、筐体20の上面には、第2排出ローラー32Bが設けられている(
図2も参照)。
【0025】
また、
図4に示すように、カバー31の前後方向(軸方向)両端部には、一対の直動カム部33が形成されている。直動カム部33は、カバー31の左縁部から前後方向外側に向かって突き出した状態に形成されている。直動カム部33は、下部から上部に向かって左方に傾斜した状態に形成されている。
【0026】
<定着ベルト>
図3および
図4に示すように、定着部材の一例としての定着ベルト21は、無端状のベルトであって、前後方向に長い略円筒状に形成されている。定着ベルト21は、例えば、耐熱性および弾性を有する合成樹脂等で形成されている。定着ベルト21は、軸周りに回転するように筐体20に支持されている。
【0027】
図3に示すように、定着ベルト21の内部には、加圧ローラー22からの圧力を受ける押圧構造34が設けられている。押圧構造34は、押圧支持部材35と、押圧パッド36と、ベルトガイド37と、を含んでいる。
【0028】
押圧支持部材35は、例えば、金属製で前後方向に長い略角筒状に形成されている。押圧支持部材35の左面には、ハロゲンヒーター23の光を反射する反射部材(図示せず)が固定されている。押圧パッド36は、例えば、耐熱性を有する合成樹脂製で前後方向に長い略直方体状に形成されている。押圧パッド36は、押圧支持部材35の右面に固定され、加圧ローラー22に押された定着ベルト21を受けている。押圧パッド36の表面には、定着ベルト21との摩擦を低減するための摺動シート(図示せず)が固定されている。ベルトガイド37は、例えば、金属製で前後方向に長い略半円筒状に形成されている。ベルトガイド37は、押圧支持部材35に固定され、定着ベルト21を左方に押すことで、定着ベルト21を略円筒形状に維持している。
【0029】
<加圧ローラー>
図3および
図4に示すように、加圧部材の一例としての加圧ローラー22は、前後方向に長い略円筒状に形成されている。加圧ローラー22は、金属製の芯金22Aの外周面にシリコンスポンジ等の弾性層22Bを積層して形成されている。
【0030】
図5に示すように、加圧ローラー22(芯金22A)の前後両端部は、一対の可動フレーム38(フレーム)に回転可能に支持されている。可動フレーム38の下部には、前後方向に延びた回動軸38Aが固定されている。回動軸38Aの前後両端部は、筐体20の側壁に回転可能に支持されている。可動フレーム38は、回動軸38Aを中心に回動するようになっている。なお、加圧ローラー22は、ギア列等を介して駆動モーター(図示せず)に接続されている。
【0031】
加圧ローラー22は、加圧機構40によって定着ベルト21に押し付けられている。加圧機構40は、前後一対の固定軸41と、前後一対の作動部材42と、前後一対のコイルバネ43と、を含んでいる。なお、以降、前後一対設けられた各部材で共通する説明については後方の1つの部材に着目して説明する。
【0032】
一対の固定軸41は、左右方向に延びた姿勢で一対の可動フレーム38の内側に配置されている。固定軸41の一端部(右端部)は、可動フレーム38の上部(加圧ローラー22よりも上方)に固定されている。固定軸41の他端部(左端部)には、フランジ状の固定当接部41Aが固定されている。
【0033】
作動部材42は、筐体20に左右方向に移動可能に支持されている。作動部材42は、固定軸41(固定当接部41A)を内包するように中空箱状に形成されている。作動部材42の一端面(右端面)には、固定当接部41Aに対向する可動当接部42Aが形成されている。可動当接部42Aには、固定軸41が貫通する穴(図示せず)が形成されている。
【0034】
コイルバネ43(圧縮バネ)は、固定軸41に巻き付くように設けられている。コイルバネ43の左右両端部は、固定当接部41Aと可動当接部42Aとに当接している。コイルバネ43は、固定当接部41Aと可動当接部42Aとを互いに引き離す方向に付勢する。コイルバネ43が固定当接部41A(固定軸41)を左方向に付勢するため、可動フレーム38が回動軸38Aを中心に左周りに回動し、加圧ローラー22が定着ベルト21に押し付けられる。
【0035】
以上のように、加圧ローラー22は、定着ベルト21に押し付けられ、定着ベルト21との間に加圧領域Nを形成している(
図3参照)。加圧領域Nとは、圧力が0Paである上流側の位置から最大圧力となる位置を経由して再び圧力が0Paとなる下流側の位置までの領域を指している。なお、シートS上のトナーを加圧する(シートSにトナー像を定着させる)加圧領域Nの圧力を「第1の圧力」という。また、図示は省略するが、加圧機構40は、作動部材42の他端部(左端部)に当接するカムを含む圧力変更機構を含んでいる。この圧力変更機構は、カムを回転させることで作動部材42を左右方向に移動させ、コイルバネ43の付勢力を変更(調整)する。
【0036】
<ハロゲンヒーター>
図3に示すように、ハロゲンヒーター23は、赤外域の光を放射して定着ベルト21を加熱するハロゲンランプを含んでいる。ハロゲンヒーター23は、前後方向に長い略棒状に形成され、定着ベルト21の内部を軸方向に貫通するように設けられている。ハロゲンヒーター23は、正面から見てベルトガイド37と押圧支持部材35との間に配置されている。なお、本実施形態では、熱源としてハロゲンヒーター23が採用されていたが、これに代えて、カーボンヒーター等が採用されてもよい。
【0037】
なお、筐体20の内部には、定着ベルト21の表面の温度を検出するサーモパイルやサーミスター等の温度センサー(図示せず)が設けられている。カラープリンター1の制御装置には、駆動モーター、ハロゲンヒーター23および温度センサー等が電気的に接続されている。制御装置は、各種の駆動回路を介して駆動モーター、ハロゲンヒーター23および温度センサー等を制御する。
【0038】
<圧力解除部>
図5に示すように、圧力解除部24は、前後一対の偏心カム50と、前後一対の当接面部51と、を含んでいる。圧力解除部24は、加圧領域Nの圧力を第1の圧力よりも低い第2の圧力とするための機構である。
【0039】
図4および
図5に示すように、一対の偏心カム50は、開閉軸31Aの前後方向(軸方向)両端部に固定されている。偏心カム50は、開閉軸31Aの軸心からカム面(周面)までの距離が一定でない所謂円板カムである。偏心カム50のカム面は、開閉軸31Aに近い位置に形成された近接カム面F1と、近接カム面F1に比べて開閉軸31Aから遠い位置に形成された離間カム面F2と、を含んでいる。
図5に示すように、一対の当接面部51は、前後一対の可動フレーム38の左端面の上部に固定されている。当接面部51は、略直方体状に形成され、偏心カム50に対向する位置に設けられている。偏心カム50は、可動フレーム38の当接面部51に接触可能に設けられている。詳細には、偏心カム50は、近接カム面F1が当接面部51に接触せず、離間カム面F2が当接面部51に接触する位置に設けられている。
【0040】
<分離部材>
図3ないし
図5に示すように、分離部材25は、前後一対のアーム部52と、分離支持部材53と、複数の分離板54と、前後一対の接触部55と、を含んでいる。分離部材25は、加圧領域Nを通過したシートSを定着ベルト21の表面から分離するための部材である。
【0041】
一対のアーム部52は、定着ベルト21の上方に配置されている。アーム部52は、例えば、金属製で、上下方向に延びたプレートの下端部を右方(加圧ローラー22側)に屈曲させた略L字状に形成されている。一対のアーム部52は、前後方向に延びた分離軸25Aの前後両端部に固定されている。分離軸25Aは、カバー31の開閉軸31Aの下方に配置されている。分離軸25Aの前後両端部は、筐体20の側壁に回転可能に支持されている。一対のアーム部52は、分離軸25Aを中心として回動するようになっている。なお、分離軸25Aの前後両端部には、一対のアーム部52を
図3で時計回りに付勢する捩りコイルバネ(図示せず)が取り付けられている。
【0042】
図3および
図5に示すように、分離支持部材53は、例えば、金属製で前後方向に延びた略棒状に形成されている。分離支持部材53は、上下方向に延びたプレートの上端部を左方に屈曲させた略L字状の断面を有している。分離支持部材53の前後両端部は、一対のアーム部52の屈曲した先端部に固定(連結)されている。つまり、分離支持部材53は、一対のアーム部52の間に架設されている。
【0043】
複数の分離板54は、前後方向に所定の間隔をおいて分離支持部材53に固定されている。分離板54は、例えば、金属製で薄い板状に形成されている。分離板54は、分離支持部材53から加圧領域Nに向かって延びた状態に設けられている。分離板54は、その先端部を定着ベルト21の表面に接触させるように配置されている。
【0044】
図4に示すように、一対の接触部55は、一対のアーム部52の屈曲した先端部に設けられている。接触部55は、ブラケット部55Aと、接触ボス55Bと、を含んでいる。ブラケット部55Aは、例えば、金属製で、アーム部52と平行に延びたプレートと、その基端部から前後方向外側に延びたプレートとによって略L字状に形成されている。接触ボス55Bは、ブラケット部55Aのアーム部52と平行に延びたプレートから前後方向内側に突出している。接触ボス55Bは、例えば、金属製で略円柱状に形成され、カバー31の直動カム部33(の右面)に接触している。
【0045】
接触ボス55Bがカバー31の直動カム部33に引っ掛かっているため、カバー31の開閉に連動して、分離部材25(アーム部52)は分離軸25Aを中心に回動する。詳細には、分離部材25(分離板54)は、カバー31を閉塞位置P10に配置した状態で定着ベルト21の表面に接触する接触位置P20(
図3参照)と、カバー31を開放位置P11に配置した状態で定着ベルト21から離れる退避位置P21(
図6参照)との間で移動可能(回動可能)に設けられている。なお、分離部材25が接触位置P20に配置された状態で、ブラケット部55Aは、筐体20に設けられた回動規制部または加圧ローラー22の軸受け(いずれも図示せず)に突き当たっている。これにより、捩りコイルバネの付勢力によるアーム部52の回動が規制され、分離部材25を接触位置P20に保持することができる。その結果、分離板54の先端部と定着ベルト21との接触圧および接触角度を略一定に維持することができる。
【0046】
[定着装置の作用]
ここで、定着装置7の作用(定着処理)について説明する。定着処理(画像形成処理)を実行する場合、カバー31は閉塞位置P10に配置されている(
図3参照)。圧力解除部24は、カバー31を閉塞位置P10に配置した状態で加圧領域Nの圧力を第1の圧力とする(
図5参照)。詳細には、偏心カム50の近接カム面F1は隙間を挟んで当接面部51に対向するため、加圧ローラー22はコイルバネ43の付勢力によって定着ベルト21に押し付けられた状態になる。この状態で、加圧領域Nの圧力は第1の圧力になる。また、分離部材25は、接触位置P20に配置され、分離板54の先端部を定着ベルト21の表面に接触させている(
図3参照)。
【0047】
まず、制御装置は、駆動モーターやハロゲンヒーター23を駆動制御する。加圧ローラー22は駆動モーターの駆動力を受けて回転し、定着ベルト21は加圧ローラー22に従動して回転する(
図3の矢印参照)。ハロゲンヒーター23は、定着ベルト21をその内側から加熱する。温度センサーは、定着ベルト21の温度を検出し、入力回路を介して検出信号を制御装置に送信する。制御装置は、温度センサーから設定温度に達したことを示す検出信号を受信すると、既に説明した画像形成処理の実行を開始する。トナー像が転写されたシートSは筐体20内に進入し、定着ベルト21は、軸周りに回転しながら加圧領域Nを通過するシートS上のトナー(トナー像)を加熱する。加圧ローラー22は、軸周りに回転しながら加圧領域Nを通過するシートS上のトナーを加圧する。すると、トナー像がシートSに定着する。分離部材25(分離板54)は、接触位置P20に配置された状態で加圧領域Nを通過したシートSを定着ベルト21の表面から分離する。そして、トナー像が定着したシートSは、筐体20の外部に送り出されて排紙トレイ4に排出される。
【0048】
[ジャム処理]
次に、
図6ないし
図8を参照して、定着装置7におけるジャム処理について説明する。
図7は定着装置7のカバー31を開いた状態を後方から示す斜視図である。
図8は定着装置7の内部であって分離部材25を退避させた状態を模式的に示す正面図である。
【0049】
カラープリンター1は、搬送路8に適宜配置された検知装置(図示せず)を用いてシートSの搬送不良(ジャム)を検知する。ジャムが発生すると、制御装置は画像形成動作を停止させ、ジャムの発生を示すメッセージ等を液晶画面等(図示せず)に表示する。例えば、定着装置7の筐体20内(加圧領域N)でジャムが発生した場合、ユーザーは、装置本体2の側面に設けられた開閉扉(図示せず)を開き、以下のようにジャム処理を実行する。
【0050】
まず、
図6ないし
図8に示すように、ユーザーは、開閉軸31Aを中心としてカバー31を上方に回動させる。カバー31の直動カム部33には分離部材25の接触ボス55Bが係合しているため(
図4参照)、カバー31の回動に伴って、分離部材25のアーム部52は分離軸25Aを中心として上方に回動する。この際、接触ボス55Bは、直動カム部33に接触しながら上方に移動する(
図7参照)。このように、カバー31が閉塞位置P10から開放位置P11に向かって上方に回動すると、分離部材25(分離板54)は、接触部55を直動カム部33に沿って移動させつつ接触位置P20から退避位置P21に向かって上方に回動する。カバー31が開放位置P11まで回動すると、分離部材25は退避位置P21に回動した状態になる。分離部材25が退避位置P21に配置されると、分離板54の先端部がカバー31の凹部31Cの内部に進入した状態になる(
図6参照)。
【0051】
また、圧力解除部24は、カバー31を開放位置P11に配置した状態で加圧領域Nの圧力を第1の圧力よりも低い第2の圧力とする。詳細には、カバー31の開閉軸31Aには偏心カム50が固定されているため、カバー31が閉塞位置P10から開放位置P11に向かって上方に回動すると、偏心カム50は開閉軸31Aと共に回動する。すると、
図8に示すように、偏心カム50の離間カム面F2が当接面部51に当接して可動フレーム38を右方に押し出すため、可動フレーム38が回動軸38Aを中心に右周りに回動する。これにより、加圧ローラー22が定着ベルト21から離れる方向に移動するため、加圧領域Nの圧力が第1の圧力から第2の圧力に変更される。
【0052】
以上のように、カバー31を開き、分離板54の先端をカバー31内に退避させ、加圧領域Nを減圧した状態にすることで、ユーザーは、筐体20内の搬送路8(加圧領域N)に詰まったシートSを容易に取り除くことができる。
【0053】
シートSを取り除いた後、ユーザーは、カバー31を開放位置P11から閉塞位置P10に向かって下方に回動させる。すると、分離部材25(アーム部52)は、自重および捩りコイルバネの付勢力によって退避位置P21から接触位置P20に向かって下方に回動する。カバー31が閉塞位置P10まで回動すると、分離部材25は接触位置P20に回動した状態になる(
図3参照)。また、偏心カム50は、開閉軸31Aと共に回動して、近接カム面F1を当接面部51に対向させる(
図5参照)。すると、偏心カム50による可動フレーム38の押し出しが解除され、可動フレーム38はコイルバネ43の付勢力によって元の位置に復帰する(
図5参照)。これにより、加圧領域Nの圧力が第2の圧力から第1の圧力に変更される。以上によって、ジャム処理が完了し、再び画像形成処理(定着処理)の実行が可能になる。
【0054】
以上説明した本実施形態に係る定着装置7では、カバー31を開く動作に連動して分離部材25が定着ベルト21から離れ、カバー31を閉じる動作に連動して分離部材25(分離板54の先端部)が定着ベルト21に接触する構成とした。また、カバー31を開放位置P11に配置すると、分離部材25(分離板54)の先端部がカバー31の凹部31C内に配置される構成とした。この構成によれば、分離部材25(分離板54)の先端部がカバー31に入り込むまで移動するため、ジャム処理のための空間を大きく確保することができる(
図6参照)。これにより、加圧領域Nに詰まったシートSを適切に視認することができ、そのシートSを容易に掴んで引き出すことができる。また、分離部材25(分離板54)の先端部は凹部31C内に配置されているため、ジャム処理時にユーザーの手が分離部材25の先端部に接触することを予防することができる。これにより、ジャム処理時における分離部材25の破損を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る定着装置7では、カバー31に連動して分離部材25を移動させることに加えて、カバー31を開く動作に連動して加圧領域Nの圧力を下げ、カバー31を閉じる動作に連動して加圧領域Nの圧力を上げる構成とした。この構成によれば、ジャム処理のための空間を大きく確保し、且つ加圧領域Nを減圧することができるため、加圧領域Nに詰まった(挟まった)シートSを容易に引き出すことができる。
【0056】
また、本実施形態に係る定着装置7によれば、接触部55(接触ボス55B)を直動カム部33に接触させるだけで、他の動力を用いることなく、カバー31を開く動作と分離部材25を定着ベルト21から引き離す動作とを適切に連動させることができる。また、偏心カム50が開閉軸31Aと一体となって回動するため、他の動力を用いることなく、カバー31を開く動作と、加圧ローラー22を定着ベルト21から引き離す動作とを適切に連動させることができる。これにより、カバー31、分離部材25および圧力解除部24を互いに連動させる構成を簡単にすることができる。
【0057】
なお、本実施形態に係る定着装置7では、定着部材の一例として、1つの軸周りに回転する定着ベルト21が採用されていたが、本発明はこれに限定されない。定着部材の他の例として、複数のローラーに架け渡された定着ベルト(図示せず)が採用されてもよい。また、定着部材の他の例として、芯金の外周面に弾性層を積層した定着ローラーが採用されてもよい。また、本実施形態に係る定着装置7では、加圧ローラー22が回転駆動されていたが、これに限らず、定着ベルト21が回転駆動され、加圧ローラー22が従動回転してもよい。
【0058】
また、本実施形態に係る定着装置7では、直動カム部33、偏心カム50、当接面部51、アーム部52および接触部55等が前後一対設けられていたが、これに限らず、前後方向何れか一方に設けられていてもよい。また、分離軸25Aに取り付けられた捩りコイルバネを省略し、分離部材25が自重で下方に回動するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施形態の説明では、一例として、本発明をカラープリンター1に適用した場合を示したが、これに限らず、例えば、モノクロプリンター、複写機、ファクシミリまたは複合機等に本発明を適用してもよい。
【0060】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る定着装置およびこれを備えた画像形成装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。