(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828612
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】バイナリー発電システム
(51)【国際特許分類】
F01K 25/00 20060101AFI20210128BHJP
F01K 19/04 20060101ALI20210128BHJP
F02G 5/02 20060101ALI20210128BHJP
F01K 25/10 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
F01K25/00 W
F01K19/04
F02G5/02 A
F01K25/10 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-120432(P2017-120432)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-7353(P2019-7353A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三好 一雄
(72)【発明者】
【氏名】平田 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢一
(72)【発明者】
【氏名】頼 泰弘
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6097897(JP,B1)
【文献】
国際公開第2014/087864(WO,A1)
【文献】
特開平05−272308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/00
F01K 19/04
F02G 5/02
F01K 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を流すための熱媒体ラインと、
前記熱媒体ラインが設けられると共に、前記熱媒体ライン内の前記熱媒体を加熱するための熱媒体加熱装置と、
前記熱媒体ラインが設けられ前記熱媒体加熱装置よりも下流側に配置されると共に、水を貯留し前記水と前記熱媒体ライン内の前記熱媒体との熱交換により前記水を加熱するための温水タンクと、
前記熱媒体ラインが設けられ前記温水タンクよりも下流側に配置されると共に、作動媒体と前記熱媒体ライン内の前記熱媒体との熱交換により前記作動媒体を蒸発させ、蒸発した前記作動媒体により発電を行うバイナリー発電装置と、
を備え、
前記温水タンクは、前記温水タンク内の前記水の液量を調整するための液量調整機構を有し、
前記液量調整機構は、前記バイナリー発電装置が発電を行う間は、前記温水タンク内の前記液量を第1液量とするように調整し、
前記液量調整機構は、前記バイナリー発電装置が発電を停止したときに、前記温水タンク内の前記液量を前記第1液量より多い第2液量とするように調整する、バイナリー発電システム。
【請求項2】
前記バイナリー発電装置は、当該バイナリー発電装置が発電を停止したときに、前記温水タンク内の前記液量を前記第2液量とするための信号を前記液量調整機構に送信する、請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項3】
前記熱媒体ラインは、前記バイナリー発電装置よりも下流側において、前記熱媒体ラインの前記熱媒体加熱装置よりも上流側に接続されて循環流路を形成しており、
前記熱媒体は、前記熱媒体ラインを通って、前記熱媒体加熱装置、前記温水タンク、及び前記バイナリー発電装置を循環する、請求項1または2に記載のバイナリー発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイナリー発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイナリー発電システムは、熱源からの熱供給により加熱された熱媒体が作動媒体を蒸発させる蒸発器と、蒸発器で生成された作動媒体の蒸気により発電を行う発電機とを備えている。特許文献1は、バイナリー発電装置について開示しており、このバイナリー発電装置は、蒸発器へ導入される温水(熱媒体)の温度変動を抑制する熱バッファ手段を備える。熱バッファ手段は、熱源の温度が急激に低下したときに作動媒体の加熱状態を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−181397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイナリー発電システムでは、バイナリー発電装置における発電が停止したとき、バイナリー発電装置での熱消費が急激に減少するので、熱源からの熱供給を停止したり、又は、熱供給量を減少させたりする必要がある。しかしながら、熱供給の停止又は熱供給量の減少には、時間を要することがある。その場合、熱媒体への熱供給が過剰となり、バイナリー発電装置に供給される熱媒体の温度が過度に上昇し、この過度の温度上昇を原因とする不具合が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、バイナリー発電装置における発電が停止したときに、バイナリー発電装置に供給される熱媒体の温度上昇を低減できるバイナリー発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るバイナリー発電システムは、熱媒体を流すための熱媒体ラインと、熱媒体ラインが設けられると共に、熱媒体ライン内の熱媒体を加熱するための熱媒体加熱装置と、熱媒体ラインが設けられ熱媒体加熱装置よりも下流側に配置されると共に、水を貯留し水と熱媒体ライン内の熱媒体との熱交換により水を加熱するための温水タンクと、熱媒体ラインが設けられ温水タンクよりも下流側に配置されると共に、作動媒体と熱媒体ライン内の熱媒体との熱交換により作動媒体を蒸発させ、蒸発した作動媒体により発電を行うバイナリー発電装置と、を備え、温水タンクは、温水タンク内の水の液量を調整するための液量調整機構を有し、液量調整機構は、バイナリー発電装置が発電を行う間は、温水タンク内の液量を第1液量とするように調整し、液量調整機構は、バイナリー発電装置が発電を停止したときに、温水タンク内の液量を第1液量より多い第2液量とするように調整する。
【0007】
このバイナリー発電システムによれば、温水タンクが水を貯留し、温水タンク内では、水と熱媒体ライン内の熱媒体との熱交換によって、水の温度は上昇し、熱媒体の温度は下降する。温水タンク内で温度下降した熱媒体は、温水タンクよりも下流側に配置されたバイナリー発電装置に供給される。温水タンクの液量調整機構は、バイナリー発電装置が発電を行う間は、温水タンク内の液量を第1液量とするように調整し、バイナリー発電装置が発電を停止したときに、温水タンク内の液量を第1液量より多い第2液量とするように調整する。温水タンク内の液量が第2液量のときは、第1液量であるときに比べて、温水タンク内の水の温度がより低下し、熱媒体から水に移動する熱量がより増大するので、バイナリー発電装置における発電が停止したときに、熱媒体の温度上昇が低減されることができる。
【0008】
本発明の一側面に係るバイナリー発電システムでは、バイナリー発電装置は、当該バイナリー発電装置が発電を停止したときに、温水タンク内の液量を第2液量とするための信号を液量調整機構に送信してもよい。
【0009】
このバイナリー発電システムによれば、熱源からの熱供給の停止又は熱供給量の減少に時間を要しても、液量調整機構は、バイナリー発電装置からの信号に基づいて、迅速に温水タンク内の水の液量を第2液量とすることができる。複雑な制御を必要とすることもない。
【0010】
本発明の一側面に係るバイナリー発電システムでは、熱媒体ラインは、バイナリー発電装置よりも下流側において、熱媒体ラインの熱媒体加熱装置よりも上流側に接続されて循環流路を形成しており、熱媒体は、熱媒体ラインを通って、熱媒体加熱装置、温水タンク、及びバイナリー発電装置を循環してもよい。
【0011】
このバイナリー発電システムによれば、熱媒体が熱媒体加熱装置、温水タンク、及びバイナリー発電装置を循環する発電システムにおいても、温水タンク内の水の液量を第2液量とすることによって、熱媒体の温度上昇が低減される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バイナリー発電装置における発電が停止したときに、バイナリー発電装置に供給される熱媒体の温度上昇を低減できるバイナリー発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るバイナリー発電システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1を参照して、一実施形態に係るバイナリー発電システム1について説明する。
図1に示されるように、バイナリー発電システム1は、排ガスボイラといった熱源5で加熱された熱媒体を用いて、水を加熱し、更に発電を行うシステムである。バイナリー発電システム1は、熱媒体を流すための熱媒体ラインL1と、熱媒体ラインL1内の熱媒体を加熱するための熱媒体加熱装置10と、熱媒体加熱装置10の下流側に配置され、内部に貯留した水と熱媒体ラインL1内の熱媒体との熱交換により水を加熱するための温水タンク20と、温水タンク20の下流側に配置され、作動媒体と熱媒体ラインL1内の熱媒体との熱交換により作動媒体を蒸発させ、蒸発した作動媒体により発電を行うバイナリー発電装置30とを備える。熱媒体ラインL1は、熱媒体加熱装置10、温水タンク20、及びバイナリー発電装置30に設けられる。ここで、「ライン」とは、内部を流体が流れる配管を意味し、「下流」とは、熱媒体の熱が利用される順番を基準としている。
【0016】
熱媒体ラインL1を流れる熱媒体としては、例えば温水または水蒸気が用いられ得る。この場合、熱源5の排ガスボイラは、温水または水蒸気を生成する。なお、バイナリー発電システム1の熱源5は、排ガスボイラに限られず、例えば地熱であってもよい。熱媒体として、水以外の流体が用いられてもよく、その場合、温水は温熱媒体と呼び換えられ、水蒸気は熱媒体蒸気と呼び換えられる。熱媒体ラインL1を流れる熱媒体としての水の流量は、例えば毎分2000リットル程度である。
【0017】
熱媒体加熱装置10に設けられる熱媒体ラインL1は、熱媒体加熱装置10内に熱媒体加熱ラインL10を含む。熱媒体加熱ラインL10は、熱源5からの熱媒体を加熱することができる。この加熱は、例えば、熱交換といった方法によって行われる。バイナリー発電システム1は、バイナリー発電装置30が発電を停止したときは、熱媒体加熱装置10から熱媒体への熱供給を停止したり、又は、熱供給量を減少させたりするように設定することができる。
【0018】
熱媒体ラインL1は、温水タンク20内に貯留された水を加熱するための水加熱用熱媒体ラインL20を含む。水加熱用熱媒体ラインL20では、温水タンク20内の水と、水加熱用熱媒体ラインL20を流れる熱媒体との熱交換がなされる。温水タンク20は、温水タンク20内の水の液量を2段階に調整するための液量調整機構21を有する。温水タンク20内の水は、液量調整機構21によって供給される。液量調整機構21は補給水源7に接続されている。温水タンク20内の水と、熱媒体との熱交換によって、温水タンク20内の水の温度が上昇する。その一方で、熱媒体の温度が下降する。温度上昇した温水タンク20内の水は、給湯、融雪、吸収式冷凍機の熱源等といった温水利用先6に供給される。温度下降した熱媒体は、熱媒体ラインL1を流れてバイナリー発電装置30に供給される。
【0019】
熱媒体ラインL1は、バイナリー発電を行うための発電用熱媒体ラインL30を含む。発電用熱媒体ラインL30には、水加熱用熱媒体ラインL20における熱交換を行い温水タンク20内の水を加熱した後の熱媒体が通る。バイナリー発電装置30は、熱媒体を熱源として発電を行うことができるように構成されており、例えば100kW程度の出力で発電できる。バイナリー発電装置30は、例えばオーガニックランキンサイクル(Organic Rankine Cycle;ORC)が採用された装置である。
【0020】
バイナリー発電装置30は、作動媒体を流す作動媒体ラインW1を備える。また、バイナリー発電装置30は、作動媒体ラインW1内の作動媒体と発電用熱媒体ラインL30内の熱媒体との熱交換を行うための蒸発器31と、蒸発器31で蒸発した作動媒体を用いて発電を行うための発電機32と、作動媒体を凝縮させるための凝縮器33とを備える。発電機32は、たとえばタービンの回転により発電を行うことができる。循環流路である作動媒体ラインW1は、蒸発器31、発電機32のタービン及び凝縮器33を通る。作動媒体ラインW1には、作動媒体の循環ポンプが設けられてもよい。バイナリー発電装置30には、冷却塔34が接続されており、例えば、冷却塔34で冷却された冷却水が、凝縮器33において作動媒体を凝縮させる。バイナリー発電装置30に用いられる作動媒体は、たとえば不活性ガスである。
【0021】
バイナリー発電システム1では、熱媒体ラインL1は、バイナリー発電装置30よりも下流側において、熱媒体ラインL1の熱媒体加熱装置10よりも上流側に接続されており、循環流路を形成する。熱媒体は、熱媒体ラインL1を通って、熱媒体加熱装置10、温水タンク20、及びバイナリー発電装置30を循環することができる。熱媒体ラインL1は、循環流路を形成する替わりに、熱媒体を熱媒体加熱装置10、温水タンク20及びバイナリー発電装置30の順に流した後に、その熱媒体をバイナリー発電システム1の外部に供給するように形成されてもよい。
【0022】
図2を参照して、温水タンク20について説明する。
図2は、温水タンク20及び液量調整機構21を示す図であり、
図1のE1部に対応する。液量調整機構21は、バイナリー発電装置30が発電を行う間は、温水タンク20内の液量を第1液量とするように調整する。バイナリー発電装置30が発電を停止したときには、液量調整機構21は、温水タンク20内の液量を第1液量より多い第2液量とするように調整する。
図2では、第1液量に対応する液位H1と、第2液量に対応する液位H2とが示されている。液位は、温水タンク20の底部から温水タンク20に供給された水の液面までの高さで規定される。
【0023】
液量調整機構21は、例えば、第1給水部22と第2給水部23とを備える。第1給水部22は、バイナリー発電装置30が発電を行う間に、温水タンク20内の液量を第1液量とするように水を温水タンク20内に供給する。第1給水部22は、例えば、ボールタップを含む第1給水口22aを有する。第1給水口22aには、第1給水ラインM22を通じて補給水源7から水が供給される。第1給水口22aを介して温水タンク20内に水が供給され、ボールタップによって、温水タンク20の液位が液位H1となるように、すなわち温水タンク20内の液量が第1液量となるように、温水タンク20の液位が制御される。第1給水口22aから温水タンク20に供給される水の流量は、例えば毎分50リットルであり、第1液量は、例えば2立方メートルである。
【0024】
第2給水部23は、例えば、ボールタップを含む第2給水口23aと、第2給水口23aの上流側に設けられる第2バルブ23bとを有する。第2給水口23aには、第2給水ラインM23を通じて補給水源7から水が供給される。第2バルブ23bは、バイナリー発電装置30が発電を行う間、例えば、バイナリー発電装置30から第2給水部23に供給される信号SGによって、第2給水ラインM23に水を通さないように閉じられた状態であることができる。バイナリー発電装置30が発電を行う間、第2バルブ23bは閉じられているので、第2給水口23aから温水タンク20には水が供給されない。その一方で、第1給水口22aから温水タンク20に水が供給されて、温水タンク20内の液量は第1液量を維持する。信号SGは、例えば、発電機32における発電に応じて供給される電流である。
【0025】
バイナリー発電装置30が発電を停止したときは、例えば、バイナリー発電装置30から第2給水部23に供給される信号SGが停止し、第2バルブ23bは、第2給水ラインM23に水を通すように開けられた状態となることができる。第2給水部23によって、温水タンク20内の液量が第2液量に達するまで、第2給水口23aから水が供給される。第2給水部23は、例えば、ボールタップによって、温水タンク20の液位が液位H2となるように、すなわち温水タンク20内の液量が第2液量となるように、温水タンク20の液位を制御する。第2給水口23aから温水タンク20に供給される水の流量は、例えば毎分100リットルであり、第2液量は、例えば2.5立方メートルである。
【0026】
バイナリー発電装置30から液量調整機構21への信号SGの送信は、バイナリー発電装置30が発電を行う間に行われ、バイナリー発電装置30が発電を停止したときに停止される。なお、これとは逆に、信号SGの送信は、バイナリー発電装置30が発電を行う間に停止され、バイナリー発電装置30が発電を停止したときに行われてもよい。その場合、第2バルブ23bの開閉形式は、上記とは逆になる。また、第1給水部22は、ボールタップを含む第1給水口22aに加えて、第1給水口22aの上流側に第1バルブ(図示せず)を有してもよい。
【0027】
バイナリー発電システム1では、温水タンク20が水を貯留し、温水タンク20内では、水と熱媒体ラインL1内の熱媒体との熱交換によって、温水タンク20内の水の温度は上昇し、熱媒体の温度は下降する。温水タンク20内で温度下降した熱媒体は、温水タンク20よりも下流側に配置されたバイナリー発電装置30に供給される。温水タンク20の液量調整機構21は、バイナリー発電装置30が発電を行う間は、温水タンク20内の液量を第1液量とするように調整し、バイナリー発電装置30が発電を停止したときに、温水タンク20内の液量を第1液量より多い第2液量とするように調整する。温水タンク20内の液量が第2液量のときは、第1液量であるときに比べて、温水タンク20内の水の温度がより低下し、熱媒体から水に移動する熱量がより増大するので、バイナリー発電装置30における発電が停止したときに、熱媒体の温度上昇が低減されることができる。温水タンク20における液量の変化が、バイナリー発電装置30の発電停止に伴う熱需要の急変を補うので、熱媒体加熱装置10からの熱供給の停止又は熱供給量の減少に時間を要した場合でも、熱媒体の温度及び圧力が過剰に上昇することが防止される。
【0028】
本実施形態では、温水タンク20内の液量が第1液量(例えば2立方メートル)であるとき、温水タンク20内の水の温度は、例えば摂氏90度である。バイナリー発電装置30が発電を行っているとき、この摂氏90度の水によって冷却された熱媒体がバイナリー発電装置30に供給される。バイナリー発電装置30が発電を停止したときには、熱媒体の温度が、例えば摂氏95度から摂氏110度に上昇する。この熱媒体の温度上昇に伴い、第2給水口23aから水が供給されるので、温水タンク20内の液量は第2液量となる。温水タンク20内の液量が第2液量(例えば2.5立方メートル)であるとき、温水タンク20内の水の温度は、例えば、摂氏78度に低下する。第2給水口23aから温水タンク20に供給される水の温度は、例えば、摂氏30度である。温水タンク20内の液量が第2液量になることによって、温水タンク20内の水の温度は、例えば、摂氏90度から摂氏78度に低下するので、温水タンク20における熱媒体からの入熱が増えて、バイナリー発電装置30に供給される熱媒体の温度が摂氏110度から下降する。
【0029】
バイナリー発電システム1では、熱源5からの熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置10からの熱供給の停止又は熱供給量の減少に時間を要しても、液量調整機構21は、バイナリー発電装置30からの信号SGに基づいて、迅速に温水タンク20内の水の液量を第2液量とすることができる。発電機32から供給される信号SGを用いた場合には、複雑な制御を必要とすることもない。
【0030】
バイナリー発電装置30が発電を停止したときの熱媒体における温度上昇の低減は、熱媒体が熱媒体加熱装置10、温水タンク20、及びバイナリー発電装置30を循環する発電システムにおいて、温水タンク20内の水の液量を第2液量とすることによって、熱媒体の温度上昇が低減される。また、熱媒体ラインL1が熱媒体加熱装置10、温水タンク20及びバイナリー発電装置30の順に熱媒体を流した後に、その熱媒体をバイナリー発電システム1の外部に供給する発電システムにおいても、温水タンク20内の水の液量を第2液量とすることによって、熱媒体の温度上昇が低減される。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、液量調整機構21は、ボールタップを含む給水口の替わりに、温水タンク20内に供給された水をオーバーフローさせる構造を有していてもよい。すなわち、バイナリー発電装置30が発電を停止したときは、第2給水口23aから温水タンク20内に水を供給し、温水タンク20内の水が第2液量に対応する液位H2を示すように、温水タンク20内の水をオーバーフローさせてもよい。
【0032】
また、例えば、液量調整機構21は、液位センサと電磁弁との組み合わせを有していてもよい。すなわち、温水タンク20内に液位センサを設け、第2給水口23aに電磁弁を設けてもよい。液位センサは、温水タンク20の液位を検出する。バイナリー発電装置30が発電を停止したときは、電磁弁を開け、液位センサの検出値が第2液量に対応する液位H2を示すまで、第2給水口23aから温水タンク20内に水を供給してもよい。
【0033】
また、バイナリー発電システム1は、第1給水部22と第2給水部23に対して、水の供給・停止を制御するコントローラを備えてもよい。コントローラは、例えば、バイナリー発電装置30から第2給水部23に送信される信号SGに基づいて、第2バルブ23bの開閉を制御してもよい。
【0034】
上記の実施形態では、温水タンク20は水を貯留すると共に水が温水タンク20に供給されたが、温水タンク20が海水を貯留すると共に海水が温水タンク20に供給されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 バイナリー発電システム
10 熱媒体加熱装置
20 温水タンク
21 液量調整機構
30 バイナリー発電装置
L1 熱媒体ライン