特許第6828627号(P6828627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828627ガラス物品の切断方法及びガラス物品の切断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828627
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】ガラス物品の切断方法及びガラス物品の切断装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/06 20060101AFI20210128BHJP
   C03B 35/26 20060101ALI20210128BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20210128BHJP
   B28D 1/22 20060101ALI20210128BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C03B33/06
   C03B35/26
   B28D5/00 Z
   B28D1/22
   B28D7/04
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-137070(P2017-137070)
(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2019-19021(P2019-19021A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】米沢 武大
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−089593(JP,A)
【文献】 特公昭54−043005(JP,B1)
【文献】 特開2014−009105(JP,A)
【文献】 特開2007−031199(JP,A)
【文献】 特開2016−117044(JP,A)
【文献】 実開昭63−162838(JP,U)
【文献】 特開2017−081804(JP,A)
【文献】 特開2017−007894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00−33/14
B28D 1/00− 7/04
C03B 35/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管又は棒状のガラス物品の搬送部による軸直交方向への搬送過程で前記ガラス物品の軸方向端部の切断を図るガラス物品の切断方法であって、
前記ガラス物品の切断予定部位にスクライブ線を形成するスクライブ線形成工程と、
前記スクライブ線の形成部位にて前記ガラス物品を折割る折割工程とを備えており、
少なくとも前記スクライブ線形成工程の処理が行われる際、前記ガラス物品の前記搬送部との接触部位と前記切断予定部位との間の部位に当接可能な規制部を用いて前記ガラス物品の軸直交方向且つ搬送直交方向への移動を規制する規制工程を更に備え、前記ガラス物品の移動を規制しつつ前記スクライブ線の形成が行われることを特徴とするガラス物品の切断方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス物品の切断方法において、
前記規制工程は、前記折割工程において前記ガラス物品を折割る際も、前記ガラス物品の移動を規制することを特徴とするガラス物品の切断方法。
【請求項3】
請求項2に記載のガラス物品の切断方法において、
前記規制工程では、前記スクライブ線形成工程から前記折割工程まで連続して前記ガラス物品の移動規制が行われることを特徴とするガラス物品の切断方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のガラス物品の切断方法において、
前記規制工程では、前記ガラス物品を軸直交方向且つ搬送直交方向から挟持して移動を規制しつつ搬送することを特徴とするガラス物品の切断方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のガラス物品の切断方法において、
前記スクライブ線形成工程では、前記ガラス物品の軸方向両端部に同時にスクライブ線を形成し、
前記折割工程では、前記ガラス物品の軸方向両端部を同時に折割ることを特徴とするガラス物品の切断方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のガラス物品の切断方法において、
前記ガラス物品は、直径が10mm以下で、直径/全長の比が1%以下となる細管長尺ガラスが切断対象であることを特徴とするガラス物品の切断方法。
【請求項7】
管又は棒状のガラス物品の搬送部による軸直交方向への搬送過程で前記ガラス物品の軸方向端部の切断を図るガラス物品の切断装置であって、
前記ガラス物品の切断予定部位にスクライブ線を形成、及び前記スクライブ線の形成部位にて前記ガラス物品を折割る切断部を備えており、
少なくとも前記ガラス物品へのスクライブ線の形成の際、前記ガラス物品の前記搬送部との接触部位と前記切断予定部位との間の部位に当接可能で前記ガラス物品の軸直交方向且つ搬送直交方向への移動を規制する規制部を更に備えることを特徴とするガラス物品の切断装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガラス物品の切断装置において、
前記規制部は、前記ガラス物品の折割りの際においても、前記ガラス物品の移動を規制することを特徴とするガラス物品の切断装置。
【請求項9】
請求項8に記載のガラス物品の切断装置において、
前記規制部は、前記スクライブ線の形成から前記折割りまで連続して前記ガラス物品の移動規制を行うことを特徴とするガラス物品の切断装置。
【請求項10】
請求項7〜9の何れか1項に記載のガラス物品の切断装置において、
前記規制部は、前記ガラス物品を軸直交方向且つ搬送直交方向から挟持する挟持部であり、前記ガラス物品の移動を規制しつつ搬送するように構成されることを特徴とするガラス物品の切断装置。
【請求項11】
請求項7〜10の何れか1項に記載のガラス物品の切断装置において、
前記切断部は、前記スクライブ線の形成の際、前記ガラス物品の軸方向両端部に同時にスクライブ線を形成し、前記折割りの際、前記ガラス物品の軸方向両端部を同時に折割ることを特徴とするガラス物品の切断装置。
【請求項12】
請求項7〜11の何れか1項に記載のガラス物品の切断装置において、
前記搬送部は、周回動作する環状のチェーンに複数の支持体を備えるチェーンコンベアが搬送直交方向に複数列配置され、複数列に亘って組をなす前記支持体にて前記ガラス物品を載置するように構成されることを特徴とするガラス物品の切断装置。
【請求項13】
請求項7〜12の何れか1項に記載のガラス物品の切断装置において、
前記規制部は、周回動作する環状のベルトを備える第1及び第2保持部が前記ガラス物品の軸直交方向且つ搬送直交方向に対で配置され、前記第1及び第2保持部の各ベルト周回部分の一部にて前記ガラス物品を挟持可能な挟持部にて構成されることを特徴とするガラス物品の切断装置。
【請求項14】
請求項7〜13の何れか1項に記載のガラス物品の切断装置において、
前記ガラス物品は、直径が10mm以下で、直径/全長の比が1%以下となる細管長尺ガラスが切断対象であることを特徴とするガラス物品の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管又は棒状のガラス物品の切断方法及びガラス物品の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管又は棒状の長尺のガラス物品においては、軸方向両端部を切断して全長を規定長さに揃えたり、端面の品位向上を図ることが行われている。
例えば特許文献1の開示技術では、管引き成形された連続管ガラスを所定長さの管ガラスに切断する粗切処理後、所定長さ毎の管ガラスを搬送装置上に載置して軸直交方向に搬送し、搬送過程で管ガラスの軸方向両端部の切断を図る再切処理がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−117044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した搬送態様にて管ガラスや棒ガラスの端部を安定して切断するには、直径の小さい細径長尺ガラスとなる程、より難しくなる。
従って、本発明の目的は、管又は棒状のガラス物品の切断予定部位での切断を安定して行うことができるガラス物品の切断方法及びガラス物品の切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するガラス物品の切断方法は、管又は棒状のガラス物品の搬送部による軸直交方向への搬送過程で前記ガラス物品の軸方向端部の切断を図るガラス物品の切断方法であって、前記ガラス物品の切断予定部位にスクライブ線を形成するスクライブ線形成工程と、前記スクライブ線の形成部位にて前記ガラス物品を折割る折割工程とを備えており、少なくとも前記スクライブ線形成工程の処理が行われる際、前記ガラス物品の前記搬送部との接触部位と前記切断予定部位との間の部位に当接可能な規制部を用いて前記ガラス物品の軸直交方向且つ搬送直交方向への移動を規制する規制工程を更に備え、前記ガラス物品の移動を規制しつつ前記スクライブ線の形成が行われる。
【0006】
上記態様によれば、管又は棒状のガラス物品において、少なくとも切断予定部位へのスクライブ線の形成の際、搬送部との接触部位と切断予定部位との間の部位に当接可能で、ガラス物品の軸直交方向且つ搬送直交方向への移動が規制される。つまり、搬送部との接触部位よりも切断予定部位に近い位置でガラス物品を移動規制し、切断予定部位に対してスクライブ線が形成される。これにより、ガラス物品の安定した切断(スクライブ線形成)を行うことが可能である。
【0007】
また、上記ガラス物品の切断方法において、前記規制工程は、前記折割工程において前記ガラス物品を折割る際も、前記ガラス物品の移動を規制する。
上記態様によれば、スクライブ線の形成部位にてガラス物品を折割る際においても、ガラス物品の移動規制が行われる。これにより、ガラス物品の安定した切断(折割り)を行うことが可能である。
【0008】
また、上記ガラス物品の切断方法において、前記規制工程では、前記スクライブ線形成工程から前記折割工程まで連続して前記ガラス物品の移動規制が行われる。
上記態様によれば、スクライブ線の形成から折割りまで連続してガラス物品の移動規制が行われるため、スクライブ線の形成と折割りとで個別に行うよりも連続して行う方が、機構や制御を簡素に構成することが可能である。
【0009】
また、上記ガラス物品の切断方法において、前記規制工程では、前記ガラス物品を軸直交方向且つ搬送直交方向から挟持して移動を規制しつつ搬送する。
上記態様によれば、ガラス物品の移動規制として軸直交方向且つ搬送直交方向から挟持することが行われ、ガラス物品の移動を規制しつつ搬送が行われる。つまり、ガラス物品の搬送を妨げずに移動規制を行うことが可能である。
【0010】
また、上記ガラス物品の切断方法において、前記スクライブ線形成工程では、前記ガラス物品の軸方向両端部に同時にスクライブ線を形成し、前記折割工程では、前記ガラス物品の軸方向両端部を同時に折割る。
【0011】
上記態様によれば、ガラス物品の軸方向両端部は同時のスクライブ線の形成、同時のスクライブ線での折割りが行われるため、切断のための工程や時間の短縮が可能である。
また、上記ガラス物品の切断方法において、前記ガラス物品は、直径が10mm以下で、直径/全長の比が1%以下となる細管長尺ガラスが切断対象である。
【0012】
上記態様によれば、切断対象のガラス物品としては直径が10mm以下で、直径/全長の比が1%以下となる細管長尺ガラスであり、切断の際に不意に移動し易いため、切断の際にガラス物品の移動規制を行うことは特に有効である。
【0013】
また、上記課題を解決するガラス物品の切断装置は、管又は棒状のガラス物品の搬送部による軸直交方向への搬送過程で前記ガラス物品の軸方向端部の切断を図るガラス物品の切断装置であって、前記ガラス物品の切断予定部位にスクライブ線を形成、及び前記スクライブ線の形成部位にて前記ガラス物品を折割る切断部を備えており、少なくとも前記ガラス物品へのスクライブ線の形成の際、前記ガラス物品の前記搬送部との接触部位と前記切断予定部位との間の部位に当接可能で前記ガラス物品の軸直交方向且つ搬送直交方向への移動を規制する規制部を更に備える。
【0014】
また、上記ガラス物品の切断装置において、前記規制部は、前記ガラス物品の折割りの際においても、前記ガラス物品の移動を規制する。
また、上記ガラス物品の切断装置において、前記規制部は、前記スクライブ線の形成から前記折割りまで連続して前記ガラス物品の移動規制を行う。
【0015】
また、上記ガラス物品の切断装置において、前記規制部は、前記ガラス物品を軸直交方向且つ搬送直交方向から挟持する挟持部であり、前記ガラス物品の移動を規制しつつ搬送するように構成される。
【0016】
また、上記ガラス物品の切断装置において、前記切断部は、前記スクライブ線の形成の際、前記ガラス物品の軸方向両端部に同時にスクライブ線を形成し、前記折割りの際、前記ガラス物品の軸方向両端部を同時に折割る。
【0017】
また、上記ガラス物品の切断装置において、前記ガラス物品は、直径が10mm以下で、直径/全長の比が1%以下となる細管長尺ガラスが切断対象である。
上記ガラス物品の切断装置における各態様によれば、対応する上記ガラス物品の切断方法と同様の作用効果が得られる。
【0018】
また、上記ガラス物品の切断装置において、前記搬送部は、周回動作する環状のチェーンに複数の支持体を備えるチェーンコンベアが搬送直交方向に複数列配置され、複数列に亘って組をなす前記支持体にて前記ガラス物品を載置するように構成される。
【0019】
上記態様によれば、周回動作する環状のチェーンに複数の支持体を備えるチェーンコンベアが搬送直交方向に複数列配置されて構成される搬送部にて、ガラス物品は複数列に亘って組をなす支持体に載置されて搬送される。つまり、このようなチェーンコンベアを用いる搬送部は比較的簡素に構成できるものの、搬送直交方向外側のチェーンコンベアの支持体からガラス物品の軸方向端部の突出長さが長くなりがちで、支持体から切断部が離間する状況となり易い。そのため、切断の際にガラス物品が不意に移動し易いため、ガラス物品の移動規制を行うことは特に有効である。
【0020】
また、上記ガラス物品の切断装置において、前記規制部は、周回動作する環状のベルトを備える第1及び第2保持部が前記ガラス物品の軸直交方向且つ搬送直交方向に対で配置され、前記第1及び第2保持部の各ベルト周回部分の一部にて前記ガラス物品を挟持可能な挟持部にて構成される。
【0021】
上記態様によれば、周回動作する環状のベルトを備える第1及び第2保持部がガラス物品の軸直交方向且つ搬送直交方向に対で配置されて挟持部が構成され、ガラス物品は各保持部のベルト周回部分の一部にて挟持される。つまり、ベルトを用いた第1及び第2保持部の対向配置による比較的簡素な構成の挟持部にて、ガラス物品の搬送を妨げずに挟持(移動規制)を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガラス物品の切断方法及びガラス物品の切断装置によれば、管又は棒状のガラス物品の切断予定部位での切断を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態のガラス物品の切断装置を側方から見た概略構成図である。
図2】実施形態のガラス物品の切断装置を上方から見た概略構成図である。
図3】実施形態のガラス物品の切断装置の挟持部及び切断部を示す概略構成図であり、(a)はカッター部分を示す図、(b)は折割ローラ部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、ガラス物品の切断方法及びガラス物品の切断装置の一実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の管ガラスの切断装置10は、所定長さの管ガラスG1を軸直交方向に順次搬送する搬送部11を備え、搬送部11に対し搬送方向(X方向)上流側から下流側に向けて順に受取部12、整列部13、切断部14及び挟持部15を備える。因みに、本実施形態で想定する管ガラスG1は、例えば直径が10mm以下、全長が1000mm以上、直径/全長の比で1%以下となる細管長尺ガラスである。
【0025】
搬送部11は、搬送直交方向である幅方向(Y方向)において3列のチェーンコンベア21a,21b,21cが互いに間隔を有して配置されて構成される。各チェーンコンベア21a,21b,21cは、それぞれ駆動源(図示略)の駆動に基づき周回動作する環状のチェーン23の連設方向に複数の支持体22が等間隔に取り付けられ、且つ幅方向に並んで組をなす配置態様となっている。また、各チェーンコンベア21a,21b,21cの作動速度は、互いに等しく設定されている。つまり、搬送部11は、各チェーンコンベア21a,21b,21cにおける各支持体22を搬送方向及び幅方向(XY方向)に整列状態で搬送方向に沿って移動させるように動作する。
【0026】
搬送部11の最上流部には、受取部12として受け台12aが設けられている。受取部12は、前工程で管引き成形された連続管ガラスの粗切処理後の所定長さ毎の管ガラスG1の搬入を受け台12aにて受け取る。受け台12aには、管ガラスG1が搬送部11の幅方向一方側から順次搬入される。ここで、各チェーンコンベア21a,21b,21cの支持体22は、搬送方向上流側(後側)に係止突部22aと搬送方向下流側(前側)に載置部22bとを有する。係止突部22aは、受け台12aに搬入された管ガラスG1を搬送方向(軸直交方向)に引っ掛けて載置部22b上に載せ替える。載置部22bは、係止突部22a側が低い傾斜形状をなし、載置された管ガラスG1を係止突部22aとの当接位置にて位置決めして支持する。つまり、受取部12(受け台12a)に順次搬入される管ガラスG1は、乱雑に配置されても各チェーンコンベア21a,21b,21cの支持体22上に載置されることで搬送方向等間隔(例えば数十mmピッチ)で且つ互いに等しい高さに支持されて、下流側に1本ずつ順次搬送されるようになっている。
【0027】
受取部12よりも搬送方向下流側には、整列部13が設けられている。整列部13は、搬送部11の幅方向両側にそれぞれ配置される。整列部13は、搬送部11の幅方向における管ガラスG1の配置位置を許容範囲内とすべく、許容範囲外に配置された場合に範囲外となった側の管ガラスG1の端部に当接して管ガラスG1を許容範囲内に案内する。つまり、整列部13を通過した管ガラスG1は、更に軸方向両端部の位置決めがなされる。
【0028】
整列部13よりも搬送方向下流側には、切断部14及び挟持部15が設けられている。切断部14及び挟持部15及びは、搬送部11の幅方向両側にそれぞれ配置される。各切断部14は、搬送部11の幅方向端側に位置する各チェーンコンベア21a,21cよりもそれぞれ外側に配置され、各挟持部15は、各切断部14と各チェーンコンベア21a,21cとの間にそれぞれ配置される。本実施形態において、管ガラスG1の軸方向両端部のチェーンコンベア21a,21cから外側への突出長さは、100〜200mm程度、若しくは全長の1/10程度に設定されている。
【0029】
各切断部14は、アンビル31a、カッター31b及び折割ローラ31cをそれぞれ備える。アンビル31aは、搬送されてくる管ガラスG1の軸方向両端部の切断予定部位の下側に対し、自身上面の刃部が接触可能で且つ搬送方向に所定距離連続して摺接可能に構成される。カッター31bは、搬送されてくる管ガラスG1の切断予定部位の上側に対し、自身下部の刃部が接触可能で且つアンビル31aの刃部と上下方向(Z方向)に対向配置される。また、カッター31bは、下方のアンビル31a側に向けて押圧動作が可能に構成される。折割ローラ31cは、管ガラスG1がアンビル31aの刃部と摺接する搬送方向範囲内でカッター31bの刃部よりも搬送方向下流側で且つアンビル31aの刃部よりも幅方向外側に配置され、搬送されてくる管ガラスG1の切断予定部位より端部側の上側に対し、自身のローラ部が接触可能に構成される。本実施形態において、管ガラスG1の軸方向両端部の切断長さは、10〜20mm程度、若しくは全長の1/100程度に設定されている。
【0030】
各挟持部15は、それぞれ上側保持部32aと下側保持部32bとを対で備える。上側及び下側保持部32a,32bは、それぞれ駆動源(図示略)の駆動に基づき環状のベルト33a,33bが周回動作するように構成される。上側保持部32aのベルト33aの周回部分の下面直線部34aと下側保持部32bのベルト33bの周回部分の上面直線部34bとは上下方向に対向し、上側保持部32aの下面直線部34aが管ガラスG1の上側を保持、下側保持部32bの上面直線部34bが管ガラスG1の下側を保持し、相互で管ガラスG1を上下方向に挟持可能に構成される。この場合、上側及び下側保持部32a,32bは、各チェーンコンベア21a,21cの支持体22と各切断部14との間で管ガラスG1の軸方向両端部を挟持、換言すれば管ガラスG1の軸方向両端部における各チェーンコンベア21a,21cの支持体22に載置される部位(搬送部11との接触部位)と各切断部14により切断される部位(切断予定部位)との間の部位を挟持する。尚、管ガラスG1を挟持する各ベルト33a,33bは、管ガラスG1の破損、損傷を生じさせない弾性材料にて作製される。
【0031】
上側及び下側保持部32a,32bは、それぞれベルト33a,33bの周回方向が逆方向に設定されており、各ベルト33a,33bの周回部分の下面及び上面直線部34a,34bが共に搬送方向下流側に向けて動作するようにしている。上側及び下側保持部32a,32bのベルト33a,33bの作動速度は、各チェーンコンベア21a,21b,21cの作動速度、即ち搬送部11の搬送速度と等しく設定されている。つまり、上側及び下側保持部32a,32bは、各チェーンコンベア21a,21b,21cと協働若しくは代替して管ガラスG1を搬送方向下流側に搬送し且つ挟持する。また、上側及び下側保持部32a,32bの下面及び上面直線部34a,34bは、各切断部14のアンビル31aの搬送方向長さよりも長く設定、即ちアンビル31aの刃部の摺接範囲L1(少なくともカッター31bと折割ローラ31cとの間の実切断範囲L2)よりも搬送方向上下流側にそれぞれ長く設定した挟持範囲L0にて管ガラスG1を挟持(折割ローラ31cの下流側では折割後の管ガラスG2を挟持)する。
【0032】
図3(a)及び図3(b)に示すように、管ガラスG1に対するカッター31bによるスクライブ線CLの形成及び折割ローラ31cによるスクライブ線CLでの折割りといった各処理は、各チェーンコンベア21a,21cの支持体22よりも各切断部14に近い位置で上側及び下側保持部32a,32bにて管ガラスG1を挟持(搬送部11との接触部位と切断予定部位との間を挟持)しつつ行われる。これにより、管ガラスG1を挟持せず搬送部11による単なる載置にて切断する一般的な手法(比較例)よりも、本実施形態の切断手法においては管ガラスG1の不意な移動が規制(全方位に移動規制)される。従って、切断不良を抑制して確実な切断が可能となり、また切断予定位置と実際の切断位置との位置ずれを小さくすることも可能である。本実施形態の管ガラスG1のように細管長尺ガラスを切断対象とする場合、特に有効である。
【0033】
このようにして、管ガラスG1の軸方向両端部は、各切断部14にてスクライブ線CLの形成、及びスクライブ線CLでの折割りを各々同時に実行されて再切処理がなされる。また、切断された端部の切断片Gxは回収部(図示略)にて回収される。そして、更に下流側に進み、上側及び下側保持部32a,32bによる挟持から解放された再切処理後の管ガラスG2は、例えば、切断後の端部の仕上げ加工である口焼き、全長が規定長さになっているか等の合否選別、出荷のための梱包等の後工程等の工程を経る。
【0034】
因みに、上側及び下側保持部32a,32bには、管ガラスG2を解放した後の各ベルト33a,33bの周回方向下流側(下面及び上面直線部34a,34bの周回方向下流側)において例えばブラシ等の除去部35a,35bがそれぞれ設けられている。各除去部35a,35bは、各ベルト33a,33bに接触し、各ベルト33a,33bに付着した異物、例えば各切断部14にて生じる管ガラスG1の破片等を除去し、周回する各ベルト33a,33bが再び上流側で管ガラスG1を挟持する際に管ガラスG1の外周表面に傷を生じさせないようにしている。
【0035】
次に、本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)管ガラスG1の切断予定部位へのスクライブ線CLの形成の際、管ガラスG1の軸方向両端部における各チェーンコンベア21a,21cの支持体22に載置される部位(搬送部11との接触部位)と各切断部14により切断される部位(切断予定部位)との間の部位が各挟持部15により挟持(移動規制)される。つまり、搬送部11との接触部位よりも切断予定部位に近い位置で挟持部15にて管ガラスG1が挟持(移動規制)され、切断部14にて切断予定部位に対してスクライブ線CLが形成される。これにより、管ガラスG1の安定した切断(スクライブ線CLの形成)を行うことができる。
【0036】
(2)スクライブ線CLの形成部位にて管ガラスG1を折割る際においても、挟持部15による管ガラスG1の挟持(移動規制)が行われる。これにより、管ガラスG1の安定した切断(折割り)を行うことができる。
【0037】
(3)スクライブ線CLの形成から折割りまで挟持部15にて連続して管ガラスG1の挟持(移動規制)が行われるため、スクライブ線CLの形成と折割りとで個別に行うよりも本実施形態のように連続して行う方が、挟持部15の機構や制御を簡素に構成することができる。
【0038】
(4)挟持部15の挟持により管ガラスG1は軸直交方向且つ搬送直交方向(本実施形態では上下方向)を含む全方位の移動が規制され、挟持部15の挟持態様としては搬送部11による管ガラスG1の搬送と協働若しくは代替する。つまり、管ガラスG1の搬送を妨げずに挟持(移動規制)を行うことができる。
【0039】
(5)管ガラスG1の軸方向両端部にそれぞれ切断部14と挟持部15とが設けられて両端部で同時のスクライブ線CLの形成、同時のスクライブ線CLでの折割りが行われるため、切断のための工程や時間の短縮を図ることができる。
【0040】
(6)チェーンコンベア21a,21b,21cを用いる本実施形態の搬送部11は比較的簡素に構成できるものの、外側のチェーンコンベア21a,21cの支持体22から管ガラスG1の軸方向両端部の突出長さが長くなりがちで、支持体22から切断部14が離間する状況となり易い。そのため、切断の際に管ガラスG1が不意に移動し易いため、本実施形態のように挟持部15による管ガラスG1の挟持(移動規制)を行うことは特に有効である。
【0041】
(7)管ガラスG1の軸直交方向且つ搬送直交方向(本実施形態では上下方向)に対で配置される上側及び下側保持部32a,32bにて挟持部15が構成され、管ガラスG1は各保持部32a,32bのベルト33a,33bの周回部分の一部(下面及び上面直線部34a,34b)にて挟持される。つまり、ベルト33a,33bを用いた上側及び下側保持部32a,32bの対向配置による比較的簡素な構成の挟持部15にて、管ガラスG1の搬送を妨げずに挟持(移動規制)を行うことができる。
【0042】
(8)本実施形態の切断対象の管ガラスG1としては直径が10mm以下で、直径/全長の比が1%以下となる細管長尺ガラスであり、切断の際に不意に移動し易いため、切断の際に管ガラスG1の挟持(移動規制)を行うことは特に有効である。
【0043】
尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・管ガラスG1(管状のガラス物品)でなく、棒ガラス(棒状のガラス物品)に適用してもよい。
【0044】
・管ガラスG1の搬送方向は図1において水平方向に描いているが、水平方向に対して傾斜した方向であってもよい。
・スクライブ線CLの形成時と折割り時とで連続して挟持部15により管ガラスG1を挟持したが、スクライブ線CLの形成時と折割り時とで個別に挟持する態様であってもよい。また、スクライブ線CLの形成時のみ挟持する態様であってもよい。
【0045】
・対の保持部32a,32bで管ガラスG1を挟持したが、対でなく上側保持部32aのみとし、チェーンコンベア21a,21b,21cの支持体22やアンビル31aと共同で管ガラスG1を挟持してもよい。
【0046】
・管ガラスG1を挟持したが、挟持ではなく、管ガラスG1の搬送部11との接触部位と切断予定部位との間の部位に当接可能で、少なくとも軸直交方向且つ搬送直交方向への移動規制する態様としてもよい。この場合、管ガラスG1を搬送しつつ挟持することを意識したベルト33a,33bや対で設けることが必須でなくなる。
【0047】
例えば、管ガラスG1に近接配置した規制部材にて移動規制を行う態様でもよい。規制部材は、自身が動作しない代わりに管ガラスG1の搬送の妨げにならない形状としたり、動作しなければ管ガラスG1の搬送の妨げになる形状であるものの、搬送と同期して動作させる態様としてもよい。これらの場合、規制部材は、管ガラスG1を挟むように対で設けても、一方側のみに設けてもよい。
【0048】
・スクライブ線CLの形成及び折割りによる切断としたが、例えば加熱溶断や熱衝撃を使った切断等、他の切断方法を用いたものであってもよい。
・上記変形例の他、切断装置10の各所について適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0049】
11…搬送部、14…切断部、15…挟持部(規制部)、21a,21b,21c…チェーンコンベア、22…支持体、23…チェーン、32a,32b…上側及び下側保持部(第1及び第2保持部)、33a,33b…ベルト、34a,34b…下面及び上面直線部(ベルト周回部分の一部)、G1…管ガラス(ガラス物品)、CL…スクライブ線。
図1
図2
図3