特許第6828633号(P6828633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6828633データ処理装置及びその制御方法、並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828633
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】データ処理装置及びその制御方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20210128BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20210128BHJP
   G06F 1/3203 20190101ALI20210128BHJP
【FI】
   H04Q9/00 311H
   H04W4/38
   G06F1/3203
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-152926(P2017-152926)
(22)【出願日】2017年8月8日
(65)【公開番号】特開2019-33369(P2019-33369A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2019年7月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 国立開発研究法人情報通信研究機構「未来を創る新たなネットワーク基盤技術に関する研究開発」副題「IoTの将来環境を創るセキュアで省電力な自己学習型ネットワーキング技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(74)【代理人】
【識別番号】100166660
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 晴人
(72)【発明者】
【氏名】沈 志舒
(72)【発明者】
【氏名】田上 敦士
【審査官】 安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−130041(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101043407(CN,A)
【文献】 特開2008−040682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
G06F 1/3203
H04W 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク内の各センサと通信可能であり、各センサからセンサデータを収集してデータ処理を行うデータ処理装置であって、
対象センサが配置されたエリアの状況の判定を、非省電力モードで動作中のセンサから収集したセンサデータに対するデータ処理により行う判定器であって、前記対象センサについての判定結果と当該判定結果の信頼度とを出力する前記判定器を、前記ネットワーク内の各センサから過去に収集されたセンサデータを用いた機械学習によって生成する生成手段と、
前記ネットワーク内の複数のセンサのうちで、センサデータを出力しない省電力モードで動作させるセンサを、前記機械学習によって決定する決定手段であって、前記機械学習において、前記判定器による判定に関連する前記対象センサの重要度が低いことを示す条件を、前記対象センサが満たした場合に、前記対象センサを、前記省電力モードで動作させるセンサとして決定する、前記決定手段と、
前記決定手段によって決定されたセンサが前記省電力モードで動作するよう、当該センサの動作モードを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記条件は、前記機械学習において、前記対象センサから出力されるセンサデータを使用する場合と、前記対象センサから出力されるセンサデータを使用せずに当該対象センサの周辺に存在するセンサから出力されるセンサデータのみを使用する場合とで、前記判定結果の信頼度として同一の信頼度が得られたことを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記条件は、前記機械学習において得られた、前記対象センサの重要度を示す指標値が、閾値より低いことを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記指標値は、前記判定器による前記データ処理において、前記対象センサから出力されるセンサデータに対して適用される重み値である
ことを特徴とする請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記条件は、過去に収集されたセンサデータに基づく前記判定器による判定結果として特定の判定結果が得られた確率が、閾値より低いことを含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記ネットワーク内の各センサから新たに収集されたセンサデータを用いた前記機械学習によって、前記生成手段によって生成された前記判定器を定期的に更新する更新手段を更に備え、
前記決定手段は、更に、前記判定器が更新されるごとに、前記省電力モードで動作させるセンサを前記機械学習によって決定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記省電力モードで動作中のセンサを、当該センサについての前記判定器による前記判定結果の信頼度が低下したことを条件として、センサデータを出力する非省電力モードに復帰させる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記省電力モードで動作中のセンサを、当該センサについての前記判定器による判定結果として特定の判定結果が得られたことを条件として、センサデータを出力する非省電力モードに復帰させる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記省電力モードで動作中の第1センサを、当該第1センサの周辺に存在する第2センサについての前記判定器の判定精度を向上させる必要があることを条件として、センサデータを出力する非省電力モードに復帰させる
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記第2センサは、前記第1センサよりも前記重要度が高く、
前記制御手段は、前記第2センサについての前記判定器による判定結果として特定の判定結果が得られたことを条件として、前記第1センサを前記省電力モードから前記非省電力モードに復帰させる
ことを特徴とする請求項9に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記省電力モードで動作中の各センサを前記非省電力モードに復帰させるか否かを定期的に決定する
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記非省電力モードへの復帰後、所定の期間内に、当該復帰に関連した条件を満たさなくなったセンサを、再び前記省電力モードに移行させる
ことを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項13】
前記判定器は、前記データ処理により、前記対象センサが配置されたエリアの状況が正常であるか異常であるかを判定し、
前記特定の判定結果は、前記エリアの状況が異常であることを示す判定結果である
ことを特徴とする請求項5、8及び10のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項14】
ネットワーク内の各センサと通信可能であり、各センサからセンサデータを収集してデータ処理を行うデータ処理装置の制御方法であって、
対象センサが配置されたエリアの状況の判定を、非省電力モードで動作中のセンサから収集したセンサデータに対するデータ処理により行う判定器であって、前記対象センサについての判定結果と当該判定結果の信頼度とを出力する前記判定器を、前記ネットワーク内の各センサから過去に収集されたセンサデータを用いた機械学習によって生成する生成工程と、
前記ネットワーク内の複数のセンサのうちで、センサデータを出力しない省電力モードで動作させるセンサを、前記機械学習によって決定する決定工程であって、前記機械学習において、前記判定器による判定に関連する前記対象センサの重要度が低いことを示す条件を、前記対象センサが満たした場合に、前記対象センサを、前記省電力モードで動作させるセンサとして決定する、前記決定工程と、
前記決定工程において決定されたセンサが前記省電力モードで動作するよう、当該センサの動作モードを制御する制御工程と、
を含むことを特徴とするデータ処理装置の制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載のデータ処理装置の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続されたセンサから収集したデータに対してデータ処理を行うデータ処理装置、及びその制御方法、並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数のセンサがネットワークに接続されたIoT(Internet of Things)環境に不可欠なセンサ処理は、一般的に、各センサによって取得されたデータを、クラウド等のデータ処理装置に集約して当該データの処理を行うことによって実現されている(非特許文献1)。非特許文献2には、クラウドとセンサとの間に設置された、クラウド機能を有するゲートウェイ(フォグノード等)がデータ処理装置として機能する構成が記載されている。このように、クラウド又はゲートウェイ等のデータ処理装置が多数のセンサからデータを収集するIoT環境では、センサの数が多くなるほど、ネットワーク全体の消費電力が増加するとともに、データ処理装置における処理負荷が大きくなることが課題となる。
【0003】
このような課題に対して、所定の期間に一部のセンサの動作を停止させることにより、IoTネットワーク全体の消費電力を削減する研究が進められている。非特許文献3では、事前に定めた通信タイミングに合わせて、センサの動作を開始及び停止させる技術が提案されている。非特許文献4では、ある対象センサ自体の通信品質、及び対象センサ周辺の他のセンサの通信品質(予測値)に基づいて、センサが動作を開始及び停止するタイミングを、センサごとに可変に設定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A. Al-Fuqaha et al., "Internet of Things: A Survey on EnablingTechnologies, Protocols, and Applications,"in IEEE Communication Survey & Tutorials, vol. 17, no. 4, 2015.
【非特許文献2】M. Chiang et al., "Fog and IoT: An Overview of ResearchOpportunities,"in IEEE Internet of Things Journal, vol. 3, no. 6, 2016.
【非特許文献3】P. Guo et al., "Sleep scheduling for critical event monitoring in wireless sensor networks," IEEE Trans. Parallel Distrib. Syst., vol. 23, no. 2, pp. 345-352, Feb. 2012.
【非特許文献4】D. Ye et al., "A Self-Adaptive Sleep/Wake-Up Scheduling Approach for Wireless Sensor Networks," IEEE Trans. Cybern., 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術では、センサ及びデータ処理装置等の通信機器間の通信のタイミング又は品質を基準としてセンサの動作状態(動作モード)を制御しているが、IoTネットワークにおけるデータ処理性能の観点での検討は行われていない。このため、従来技術では、IoTネットワーク全体の消費電力を低減することは期待できても、センサから収集したデータに対して高性能・高信頼度のデータ処理を実現することが難しい。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、センサから収集したデータの処理精度を維持しながらネットワーク全体の消費電力を低減するように、データ処理装置がネットワーク内の各センサの動作モードを制御する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の係るデータ処理装置は、ネットワーク内の各センサと通信可能であり、各センサからセンサデータを収集してデータ処理を行うデータ処理装置であって、対象センサが配置されたエリアの状況の判定を、非省電力モードで動作中のセンサから収集したセンサデータに対するデータ処理により行う判定器であって、前記対象センサについての判定結果と当該判定結果の信頼度とを出力する前記判定器を、前記ネットワーク内の各センサから過去に収集されたセンサデータを用いた機械学習によって生成する生成手段と、前記ネットワーク内の複数のセンサのうちで、センサデータを出力しない省電力モードで動作させるセンサを、前記機械学習によって決定する決定手段であって、前記機械学習において、前記判定器による判定に関連する前記対象センサの重要度が低いことを示す条件を、前記対象センサが満たした場合に、前記対象センサを、前記省電力モードで動作させるセンサとして決定する、前記決定手段と、前記決定手段によって決定されたセンサが前記省電力モードで動作するよう、当該センサの動作モードを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センサから収集したデータの処理精度を維持しながらネットワーク全体の消費電力を低減するように、データ処理装置がネットワーク内の各センサの動作モードを制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るネットワーク構成例を示す図
図2】一実施形態に係るゲートウェイ装置の構成例を示すブロック図
図3】一実施形態に係るスリープ移行制御の処理手順を示すフローチャート
図4】一実施形態に係る判定器によるデータ処理の例を示す図
図5】一実施形態に係るスリープ復帰制御の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0011】
<ネットワーク構成>
図1(A)は、本実施形態に係るデータ処理装置を含むネットワーク構成例を示す図である。本実施形態では、クラウド(クラウド上のサーバ)と複数のセンサ(S1,S2,S3,...)とが設けられている。クラウドは、ネットワーク内の各センサと有線又は無線により通信可能に接続され、各センサから出力されるデータ(センサデータ)を収集することができ、収集したセンサデータに対するデータ処理を行う。なお、クラウドの配下には、任意の数のセンサを設けることが可能である。
【0012】
図1(A)のクラウドは、各センサからセンサデータを収集してデータ処理を行う、本発明のデータ処理装置の一例として機能する。本発明は、例えば、図1(B)に示すように、ゲートウェイ装置(G1,G2,G3,...)が、配下の複数のセンサとクラウド(クラウド上のサーバ)との間に設けられたネットワーク構成に対しても適用可能である。
【0013】
図1(B)の各ゲートウェイ装置は、配下にある複数のセンサからセンサデータを収集し、収集したデータに所定の処理を行い、その処理結果をクラウドへ送信する、ゲートウェイ機能を有する。ゲートウェイ装置は、配下にある各センサと有線又は無線により通信可能に接続され、各センサから出力されるセンサデータを取得できる。ゲートウェイ装置の配下には、任意の数のセンサを設けることが可能である。なお、1つのゲートウェイ装置が他のゲートウェイ装置と直接的に通信を行う又は1つ以上のゲートウェイ装置を経由して間接的に通信を行う、ゲートウェイ間通信が可能であり、ゲートウェイ装置間で互いにセンサデータの取得が可能であってもよい。図1(B)の構成では、各ゲートウェイ装置が、各センサからセンサデータを収集してデータ処理を行う、本発明のデータ処理装置の一例として機能する。
【0014】
図1(A)及び(B)に示す各センサは、動作モードとして、通常モード(非省電力モード)と、通常モードよりも消費電力が少ないスリープモード(省電力モード)とを有し、データ処理装置からの指示に従って、いずれかの動作モードで動作可能である。通常モードは、センサのセンシング及び通信機能が動作し、センサデータを出力する動作モードである。スリープモードは、センサのセンシング及び通信機能が停止し、センサデータを出力しない動作モードである。スリープモードでは、センシング及び送信機能が停止することにより、センサの消費電力が削減される。ただし、各センサは、スリープモードでの動作中にもデータ処理装置から送信される制御信号を受信できるように、所定の時間間隔で(間欠的に)通信機能を動作させる。
【0015】
<データ処理装置による処理の概要>
本実施形態のデータ処理装置(図1(A)のクラウド又は図1(B)のゲートウェイ装置)は、センサデータを収集し、事前の機械学習によって生成した計算モデル(判定器)を用いて、収集したデータに対するデータ処理を行う機能を有する。具体的には、データ処理装置は、以下の3段階の処理を行う。
【0016】
●前処理
データ処理装置はまず、過去に収集したセンサデータを用いて機械学習を行うことによって、収集したセンサデータに対するデータ処理に用いる計算モデル(判定器)を生成する。
●判定処理
次に、データ処理装置は、前処理により生成された判定器を用いて、自装置の配下にあるセンサから(及び必要に応じて周辺のゲートウェイ装置から)収集したセンサデータに対するデータ処理を行う。なお、データ処理装置がゲートウェイ装置である場合、必要に応じて処理結果をクラウドへ送信する。
●フィードバック処理
更に、データ処理装置は、判定処理においてネットワーク内の各センサから新たに収集されたセンサデータを用いた機械学習によって、判定器を定期的に更新する。これにより、判定処理に使用される判定器を、各センサから収集されるセンサデータの日々の変動に対応可能にする。
【0017】
本実施形態では、データ処理装置は、各センサから収集したセンサデータの処理精度を維持しながらネットワーク全体の消費電力を低減するように、ネットワーク内の各センサに送信する制御信号を用いて各センサの動作モードを制御する。
【0018】
具体的には、データ処理装置は、前処理において、機械学習によって生成される判定器による判定(データ処理)に関連する、各センサの重要度を基準として、ネットワーク内の複数のセンサのうちで、スリープモードで動作させるセンサを決定する。更に、データ収集処理は、判定処理の実行段階において、決定したセンサをスリープモードで動作させる制御を行う。上記の決定では、後述するように、対応する判定器による判定に関連する重要度が低いことを示す条件を満たしたセンサが、スリープモードで動作させるセンサとして選択される。これにより、スリープモードで動作中のセンサから出力されるセンサデータを、対応する判定器によるデータ処理に使用できないことに起因した、センサデータの処理精度(判定器の判定精度)の低下を防止できる。
【0019】
また、データ処理装置は、スリープモードで動作中のセンサについて、後述する所定の復帰条件が満たされた場合に、当該センサをスリープモードから通常モードに復帰させる制御を行う。この復帰条件は、センサ又は当該センサの周辺に存在するセンサに対応する判定器の判定精度を向上させる、又は判定精度の低下を防ぐ必要がある状況が生じた場合に、そのような状況に対処するために定められている。
【0020】
なお、フィードバック処理の実行段階では、データ処理装置は、判定器を更新するごとに、スリープモードで動作させるセンサを機械学習によって決定してもよい。これにより、各センサから収集されるセンサデータの日々の変動(センサが配置されたエリアの状況の変動)に適応しながら、センサデータの処理精度を維持できる。
【0021】
<データ処理装置の機能構成>
図2は、本実施形態に係るデータ処理装置20の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、データ処理装置20は、大きく分けて、前処理部21、判定処理部22、フィードバック処理部23、及びデータ記憶部24を有する。前処理部21、判定処理部22、及びフィードバック処理部23は、上述の前処理、判定処理、及びフィードバック処理をそれぞれ実現する機能ユニットである。なお、前処理部21、判定処理部22、及びフィードバック処理部23は、ハードウェア若しくはソフトウェア、又はそれらの組み合わせによって、データ処理装置20において実現されうる。ソフトウェアによって実現される場合、データ処理装置20が備える1つ以上のCPU等のプロセッサ(図示せず)が、ROM等の記憶装置(図示せず)に格納された制御プログラムを読み出して実行することによって実現されうる。
【0022】
●前処理部21
前処理部21は、ネットワーク内の各センサから過去に収集されたセンサデータを用いた機械学習によって、対象センサについての判定のためにセンサデータに対してデータ処理を行う判定器を生成する。生成された判定器は、判定処理部22によって、新たに収集したセンサデータに対するデータ処理に用いられ、対象センサについての判定結果と、当該判定結果の信頼度とを出力する。
【0023】
前処理部21は、例えば、機械学習の対象となるセンサデータについての、それぞれ異なる規模(サイズ)のデータセットを用いて機械学習を行うことによって、複数の判定器を生成しうる。その場合、前処理部21は、生成した各判定器によって得られる判定結果の精度を確認し、所定の基準を満たす判定器のいずれか(例えば、データ処理に必要となるデータ量が最も少ない判定器)を、判定処理部22による判定処理用のデフォルト判定器として決定する。前処理部21は、生成した1つ以上の判定器をデータ記憶部24に格納する。
【0024】
前処理部21は、更に、ネットワーク内の複数のセンサのうちで、スリープモードで動作させるセンサを、上述の機械学習によって決定する。前処理部21は、機械学習において、判定器による判定に関連する対象センサの重要度が低いことを示す条件を、当該対象センサが満たした場合に、当該対象センサを、スリープモードで動作させるセンサとして決定する。前処理部21は、当該決定の結果に基づいて、ネットワーク内の各センサの動作モードを示す制御情報を、データ記憶部24に格納する。
【0025】
上述のように、対象センサの重要度が低いことを示す条件が満たされる場合とは、例えば、当該対象センサから出力されたセンサデータを使用するか否かによらず、当該対象センサに対応する判定器によって同一の判定結果が得られる場合に相当する。これは、対象センサ自体のセンサデータを使用せず、当該対象センサの周辺に存在するセンサのセンサデータのみを使用して、判定器によるデータ処理を行っても、判定結果が変わらないことを意味する。このような場合、対象センサをスリープモードへ移行させても、対応する判定器の判定精度を低下させずに維持することが可能である。このため、本実施形態では、上述の条件を満たすセンサをスリープモードへ移行させることにより、対応する判定器の判定精度を維持しながらネットワーク全体の消費電力の低減を実現する。
【0026】
●判定処理部22
判定処理部22は、前処理部21によって決定されたセンサがスリープモードで動作するよう、データ記憶部24に格納されている制御情報に従って、当該センサの動作モードを制御する。判定処理部22は、スリープモードへの移行をセンサに指示するためのスリープ移行指示を含む制御信号を、センサに送信することによって、当該センサをスリープモードに移行させることが可能である。
【0027】
判定処理部22は、更に、通常モードで動作中の各センサからセンサデータを収集し、収集したセンサデータを、データ記憶部24に格納されている判定器を用いて処理する。判定器は、収集したセンサデータに対するデータ処理により、当該判定器に対応するセンサである対象センサについての所定の判定を行う。本実施形態では、判定器は、対象センサが配置されたエリアの状況が正常であるか異常であるかを判定する。例えば、各センサが、温度(気温)を測定して測定値を出力する温度センサである場合、判定器は、データ処理の結果、対応する対象センサが、周辺(近傍)のセンサから出力される温度と極端に異なる温度を出力していれば、異常を示す判定結果を出力する。
【0028】
判定処理部22は、更に、スリープモードで動作中のセンサについて、後述する所定の復帰条件が満たされた場合に、当該センサをスリープモードから通常モードに復帰させる制御を行う。判定処理部22は、スリープモードから通常モードへの復帰をセンサに指示するためのスリープ復帰指示を含む制御信号を、センサに送信することによって、当該センサをスリープモードから通常モードに復帰(移行)させることが可能である。
【0029】
●フィードバック処理部23
フィードバック処理部23は、判定処理部22による判定処理に使用されたセンサデータを取得し、取得したセンサデータを用いて機械学習を行うことによって、判定処理に使用されている判定器を定期的に更新する。なお、フィードバック処理部23は、更新後の判定器をデータ記憶部24に格納することによって、当該更新後の判定器を判定処理部22による判定処理に使用可能にする。
【0030】
フィードバック処理部23は、更に、判定器を更新するごとに、前処理部21による上述の決定と同様に、スリープモードで動作させるセンサを機械学習によって決定する。フィードバック処理部23は、当該決定の結果に基づいて、データ記憶部24に格納されている、ネットワーク内の各センサの動作モードを示す制御情報を更新する。
【0031】
以下では、図3乃至図5を参照して、データ処理装置20によって実行される処理ついて、より具体的に説明する。
【0032】
<スリープ移行制御の処理手順>
図3は、データ処理装置20において実行されるスリープ移行制御の処理手順を示すフローチャートである。図4は、センサS1,S2,... が入力層であり、センサS1が対象センサである場合の、対応する判定器によるデータ処理の例を示す図であり、ニューラルネットワークを機械学習に適用した例を示している。
【0033】
ステップS301で、前処理部21は、ネットワーク内の各センサから出力された、過去に収集されたセンサデータを取得する。次にステップS302で、前処理部21は、取得したセンサデータを用いて機械学習(例えば、サポートベクトルマシン)を行うことによって、対象センサに対応する判定器を生成する。前処理部21は、生成した判定器をデータ記憶部24に保存する。
【0034】
なお、ステップS302において生成される各判定器の入力は、対象センサ及び周辺のセンサから出力されるセンサデータ列である。判定器は、入力されたセンサデータ列に対するデータ処理により、対象センサについての判定(対象センサが配置されたエリアの状況が正常であるか異常であるかの判定)を行う。判定器の出力は、判定結果、及び当該判定結果の信頼度である。本実施形態では、判定結果は、対象センサが配置されたエリアの状況が正常であるか異常であるかを示す情報である。また、信頼度は、判定結果の確からしさを示す指標である。
【0035】
その後、ステップS303で、前処理部21は、対象センサに対応する判定器による判定に関連する、当該対象センサの重要度に従って、当該対象センサをスリープモードに移行させるか否かを、機械学習によって決定する。具体的には、上述のように、前処理部21は、対象センサが、当該対象センサの重要度が低いことを示す条件(移行条件)を満たした場合には、当該対象センサをスリープモードに移行させることを、満たさなかった場合には、当該対象センサをスリープモードに移行させない(通常モードに維持する)ことを決定する。上記の移行条件(基準)には、より具体的には、下記の移行条件1〜3のいずれか、又は1つ以上の組み合わせが適用される。
【0036】
●移行条件1
移行条件1は、機械学習において、対象センサから出力されるセンサデータを使用する場合と、当該センサデータを使用せずに対象センサの周辺に存在するセンサから出力されるセンサデータのみを使用する場合とで、対応する判定器による判定結果が同一であり、判定結果の信頼度として同一の信頼度が得られたことである。移行条件1が満たされる場合、対象センサをスリープモードで動作させ、当該対象センサのセンサデータを使用しなくとも、判定器によって同一の判定結果を同一の信頼度で得ることができる。即ち、判定器の判定精度を維持しながら消費電力の低減を実現できる。
【0037】
●移行条件2
移行条件2は、機械学習において得られた、判定器に対応する対象センサの重要度を示す指標値が、所定の閾値より低いことである。当該指標値は、例えば図4に示すように、判定器によるデータ処理において、対象センサS1から出力されるセンサデータに対して適用される重み値(w1,w2,w3,w4)である。この指標は、対象センサS1自体のセンサデータが、機械学習においてどの程度重要であるかを表す指標である。
【0038】
指標値である図4の各重み値が低いほど、対象センサS1のセンサデータが、判定器による判定結果に与える影響が少なくなる。これは、対象センサS1のセンサデータ無しでも、同一の判定結果及び信頼度が得られる(即ち、判定器の判定精度を維持しながら消費電力の低減を実現できる)ことを意味する。このため、移行条件2によれば、指標値(各重み値)が閾値より低い場合には、対象センサのセンサデータは不要と判断し、当該対象センサをスリープモードで動作させると決定する。
【0039】
●移行条件3
移行条件3は、対象センサに対応する判定器による、過去に収集されたセンサデータに基づく判定結果として、特定の判定結果が得られた確率が、所定の閾値より低いことである。特定の判定結果は、例えば異常を示す判定結果である。このように、異常を示す判定結果が得られた確率が低い場合、当該判定器による判定の対象となるエリアについては、その状況が正常である可能性が高い。即ち、異常である状況を検出するための判定を行う必要性は低い(即ち、対象センサについて、判定器による判定に関連する重要度が低い)と考えられる。このため、判定器に対応する対象センサをスリープモードへ移行させたとしても、判定器の判定精度が低下する可能性が低く、判定精度を維持しながら消費電力を低減することが可能になりうる。
【0040】
ステップS303における決定の結果は、前処理部21によってデータ記憶部24に制御情報として格納される。ステップS303の処理の完了後、次にステップS304で、判定処理部22は、データ記憶部24に格納されている制御情報に従って、対象センサをスリープモードに移行させるか否かを判定し、移行させる場合には、ステップS305へ処理を進め、移行させない場合には、処理を終了する。ステップS305で、判定処理部22は、スリープ移行指示を含む制御信号を対象センサへ送信し、処理を終了する。当該スリープ移行指示に従って、対象センサは、スリープモードへ移行して当該スリープモードでの動作を開始する。
【0041】
<スリープ復帰制御の手順>
図5は、データ処理装置20において実行されるスリープ復帰制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS501で、判定処理部22は、ネットワーク内で通常モードで動作中の各センサから出力されたセンサデータを収集する。次にステップS502で、判定処理部22は、ネットワーク内の各センサを対象センサとして、対応する判定器を用いて、収集したセンサデータに対してデータ処理を行うことで、対象センサが配置されたエリアの状況が正常であるか異常であるかの判定を行う。
【0043】
その後、ステップS503で、判定処理部22は、対象センサがスリープモードで動作中であるか否かを判定し、通常モードで動作中である場合には、処理を終了する。一方、判定処理部22は、対象センサがスリープモードで動作中である場合には、処理をステップS504へ進める。
【0044】
ステップS504で、判定処理部22は、所定の復帰条件に従って、対象センサをスリープモードから通常モードに復帰(移行)させるか否かを定期的に決定する。この復帰条件(基準)は、センサ又は当該センサの周辺に存在するセンサに対応する判定器の判定精度を向上させる、又は判定精度の低下を防ぐ必要がある状況が生じたことを判定するための条件である。より具体的には、下記の復帰条件1〜3のいずれか、又は1つ以上の組み合わせが適用される。
【0045】
●復帰条件1
復帰条件1は、スリープモードで動作中のセンサ(対象センサ)を、当該センサについての判定器による判定結果の信頼度が(それ以前より)低下したことである。あるいは、復帰条件1は、当該判定結果の信頼度が所定の閾値より低くなったことでもよい。この場合、判定処理部22は、対象センサに対応する判定器の判定精度を向上させるために、当該対象センサを通常モードに復帰させて、当該対象センサのセンサデータを判定に使用できるようにする。
【0046】
●復帰条件2
復帰条件2は、スリープモードで動作中のセンサ(対象センサ)を、当該センサについての判定器による判定結果として特定の判定結果(本実施形態では、異常を示す判定結果)が得られたことである。この場合、判定処理部22は、より高い精度で対象センサによるセンシング対象のエリアの状況について判定器による判定を行うために、当該対象センサを通常モードに復帰させて、当該対象センサのセンサデータを判定に使用できるようにする。
【0047】
●復帰条件3
復帰条件3は、スリープモードで動作中のセンサ(第1センサ)を、当該センサの周辺に存在するセンサ(第2センサ)についての判定器の判定精度を向上させる必要があることである。この場合、第2センサに対応する判定器による判定を、より高い精度で行うために、第1センサを通常モードに復帰させ、当該第1センサのセンサデータを判定に使用できるようにする。復帰条件3の適用例としては、判定処理部22は、第2センサが第1センサよりも上述の重要度が高く、かつ、第2センサに対応する判定器の判定結果として特定の判定結果(本実施形態では、異常を示す判定結果)が得られたことを条件として、第1センサを通常モードに復帰させる。
【0048】
ステップS504における決定の結果は、前処理部21によってデータ記憶部24に制御情報として格納される。ステップS504の処理の完了後、次にステップS505で、判定処理部22は、データ記憶部24に格納されている制御情報に従って、対象センサをスリープモードから通常モードに復帰させるか否かを判定し、復帰させる場合には、ステップS506へ処理を進め、復帰させない場合には、処理を終了する。ステップS506で、判定処理部22は、スリープ復帰指示を含む制御信号を対象センサへ送信し、処理を終了する。当該スリープ復帰指示に従って、対象センサはスリープモードから復帰して通常モードでの動作を開始する。
【0049】
なお、判定処理部22は、ステップS506において対象センサが通常モードへ復帰した後、所定の期間内に、当該復帰に関連した条件を満たさなくなったセンサを、再びスリープモードに移行させてもよい。これにより、対応する判定器の判定精度を低下させずに、再び消費電力の低減を図ることが可能である。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、データ処理装置20は、ネットワーク内の各センサと通信可能であり、各センサからセンサデータを収集してデータ処理を行う。前処理部21は、対象センサについての判定のためにセンサデータに対してデータ処理を行う判定器であって、対象センサについての判定結果と当該判定結果の信頼度とを出力する判定器を、ネットワーク内の各センサから過去に収集されたセンサデータを用いた機械学習によって生成する。判定処理部22は、ネットワーク内の複数のセンサのうちで、スリープモードで動作させるセンサを、機械学習によって決定する。その際、判定処理部22は、機械学習において、判定器による判定に関連する当該対象センサの重要度が低いことを示す条件を、当該対象センサが満たした場合に、当該対象センサを、スリープモードで動作させるセンサとして決定する。更に、判定処理部22は、決定したセンサがスリープモードで動作するよう、当該センサの動作モードを制御する。
【0051】
本実施形態によれば、センサ処理における各センサ(対象センサ)の重要度であって、対応する判定器による判定に関連する重要度を基準として、当該対象センサをスリープモードに移行させる。これにより、データ処理装置によるデータ処理の精度を一定レベルに維持しながら、ネットワーク内において通常モードで動作させるセンサの数を低減し、ネットワーク全体の消費電力を低減することが可能になる。また、通常モードで動作するセンサの数の低減により、センサとデータ収集装置間の通信量を低減することができるとともに、データ収集装置における処理負荷を低減することが可能になる。また、本実施形態によって実現される処理は、追加の装置の導入を必要とせずに、既存のシステムの一部に追加の設定を導入することによって実現できるため、実施が容易である。
【0052】
なお、本実施形態に係るゲートウェイ装置は、コンピュータをゲートウェイ装置として機能させるためのコンピュータプログラムにより実現することができる。当該コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布が可能なもの、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0053】
21:前処理部
22:判定処理部
23:フィードバック処理部
24:データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5