(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
旋回台に起伏及び伸縮自在の伸縮ブームが設けられ、前記伸縮ブームの先端部又は前記伸縮ブームに設けられるジブの先端部からワイヤロープによってフックが吊り下げられ、前記フックに複数の玉掛けワイヤロープによって吊り荷が吊り下げられるクレーンの制御方法であって、
玉掛け後の地切り前に、
制御装置が、前記ワイヤロープが緊張する位置まで前記ワイヤロープを繰り入れるように制御する第1処理と、前記第1処理で前記フックが移動したときの水平方向成分と同方向に前記伸縮ブームの先端部を移動させるように制御する第2処理とを繰り返すフック位置調整制御を有することを特徴とする制御方法。
前記第2処理は、前記フックが移動したときの水平方向成分が第1移動量未満である場合、前記フック位置調整制御を終了する制御を含むことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
前記第2処理は、前記ワイヤロープが緊張する位置まで前記ワイヤロープを繰り入れた後、前記ワイヤロープが弛緩する位置まで前記ワイヤロープを繰り出すように制御し、前記ワイヤロープを繰り出す制御において、前記フックの水平方向の移動量が第3移動量未満である場合、前記フック位置調整制御を終了する制御を含むことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
前記第2処理は、前記フックが移動したときの水平方向成分が第1移動量未満である場合、前記フック位置調整制御を終了する制御を含むことを特徴とする請求項6に記載のクレーン。
前記第2処理は、前記ワイヤロープが緊張する位置まで前記ワイヤロープを繰り入れた後、前記ワイヤロープが弛緩する位置まで前記ワイヤロープを繰り出すように制御し、前記ワイヤロープを繰り出す制御において、前記フックの水平方向の移動量が第3移動量未満である場合、前記フック位置調整制御を終了する制御を含むことを特徴とする請求項6に記載のクレーン。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態においては、クレーンとして移動式クレーンを例に説明する。なお、クレーンとしては、アクチュエータによって起伏及び伸縮される伸縮ブームと旋回台と1つ以上のウインチとを具備するクレーンであればよい。
【0020】
<クレーンの概要>
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、車両2、クレーン装置6を有する。
【0021】
車両2は、クレーン装置6を搬送するものである。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。アウトリガ5は、車両2の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
【0022】
クレーン装置6は、吊り荷(搬送物)Wをワイヤロープによって吊り上げるものである。クレーン装置6は、旋回台7、伸縮ブーム8、ジブ9、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏シリンダ12、メインウインチ13、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブワイヤロープ16、カメラ17、キャビン18等を具備する。
【0023】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回可能に構成するものである。旋回台7は、円環状の軸受を介して車両2のフレーム上に設けられる。円環状の軸受は、その回転中心が車両2の設置面に対して垂直になるように配置されている。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として一方向と他方向とに回転自在に構成されている。また、旋回台7は、油圧式の旋回モータ19(
図2参照)によって回転される。旋回台7には、その旋回位置を検出する旋回位置検出センサ21(
図2参照)が設けられている。
【0024】
伸縮ブーム8は、吊り荷Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持するものである。伸縮ブーム8は、複数のブーム部材であるベースブーム部材8a、セカンドブーム部材8b、サードブーム部材8c、フォースブーム部材8d、フィフスブーム部材8e、トップブーム部材8fから構成されている。各ブーム部材は、断面積の大きさの順に入れ子式に挿入されている。伸縮ブーム8は、各ブーム部材を伸縮シリンダ29(
図2参照)で移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。伸縮ブーム8は、ベースブーム部材8aの基端が旋回台7上に揺動可能に設けられている。これにより、伸縮ブーム8は、車両2のフレーム上で水平回転可能かつ揺動自在に構成されている。伸縮ブーム8には、その伸縮ブーム長さを検出する伸縮ブーム長さ検出センサ22と、起伏角度を検出する起伏角度検出センサ23(
図2参照)とが設けられている。
【0025】
ジブ9は、クレーン装置6の揚程や作業半径を拡大するものである。ジブ9は、伸縮ブーム8のトップブーム部材8fに設けられたジブ支持部8gによってトップブーム部材8fに沿った姿勢で保持されている。ジブ9の基端は、トップブーム部材8fのジブ支持部8gに連結可能に構成されている。
【0026】
メインフックブロック10は、吊り荷Wを吊るものである。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、吊り荷Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11は、吊り荷Wを吊るものである。サブフックブロック11には、吊り荷Wを吊るサブフック11aが設けられている。
【0027】
起伏シリンダ12は、伸縮ブーム8を起立及び倒伏させ、伸縮ブーム8の姿勢を保持するものである。起伏シリンダ12はシリンダ部とロッド部とからなる油圧シリンダから構成されている。起伏シリンダ12は、シリンダ部の端部が旋回台7に揺動自在に連結され、ロッド部の端部が伸縮ブーム8のベースブーム部材8aに揺動自在に連結されている。起伏シリンダ12は、ロッド部がシリンダ部から押し出されるように作動油が供給されることでベースブーム部材8aを起立させ、ロッド部がシリンダ部に押し戻されるように作動油が供給されることでベースブーム部材8aを倒伏させるように構成されている。
【0028】
メインウインチ13は、メインワイヤロープ14の繰り入れ(巻き上げ)及び繰り出し(巻き下げ)を行うものである。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがメイン用油圧モータによって回転されるように構成されている。メインウインチ13は、メイン用油圧モータが一方向へ回転するように作動油が供給されることでメインドラムに巻きつけられているメインワイヤロープ14を繰り出し、メイン用油圧モータが他方向へ回転するように作動油が供給されることでメインワイヤロープ14をメインドラムに巻きつけて繰り入れるように構成されている。メインウインチ13には、メインウインチ13の回転数を検出するメインドラム回転数検出器24(
図2参照)と、メインワイヤロープ14の張力を検出するメインワイヤ張力検出器25と(
図2参照)が設けられている。
【0029】
サブウインチ15は、サブワイヤロープ16の繰り入れ及び繰り出しを行うものである。サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがサブ用油圧モータによって回転されるように構成されている。サブウインチ15は、サブ用油圧モータが一方向へ回転するように作動油が供給されることでサブドラムに巻きつけられているサブワイヤロープ16を繰り出し、サブ用油圧モータが他方向へ回転するように作動油が供給されることでサブワイヤロープ16をサブドラムに巻きつけて繰り入れるように構成されている。サブウインチ15には、サブウインチ15の回転数を検出するサブドラム回転数検出器26(
図2参照)と、サブワイヤロープ16の張力を検出するサブワイヤ張力検出器27と(
図2参照)が設けられている。
【0030】
カメラ17は、吊り荷W周辺を撮影するものである。
図1ではメインフック10aに吊り荷Wが吊り下げられているため、カメラ17は、メインワイヤロープ14、メインフック10a、玉掛けワイヤロープ100、101及び吊り荷Wを撮影する。カメラ17は、伸縮ブーム8のトップブーム部材8fの先端部又は、ジブ9の先端部に設けられている。カメラ17は、その姿勢を変更するためのアクチュエータを介してトップブーム部材8fに配置されている。カメラ17は、伸縮ブーム8の揺動軸と平行な軸を揺動中心として揺動可能に構成されている。これにより、カメラ17は、伸縮ブーム8の倒伏角度又はジブ9の倒伏角度に関わらず設置位置から鉛直下向きの画像を撮影可能に構成されている。
【0031】
キャビン18は、操縦席を覆うものである。キャビン18は、旋回台7における伸縮ブーム8の側方に設けられている。キャビン18の内部には、操縦席が設けられている。操縦席には、メインウインチ13を操作するためのメイン用操作具、サブウインチ15を操作するためのサブ用操作具、伸縮ブーム8を操作するための起伏用操作具及び伸縮用操作具、クレーン1を移動させるためのハンドル、フック位置調整制御を実行するためのフック位置調整制御スイッチ28(
図2参照)等が設けられている。
【0032】
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏シリンダ12で伸縮ブーム8を任意の起伏角度に起立させて、伸縮ブーム8を任意の伸縮ブーム長さに延伸させたりジブ9を連結させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。
【0033】
<フック位置調整制御に関する制御系の構成>
図2は、フック位置調整制御に関する制御系の構成を示す図である。クレーン1は、キャビン18の内部等に制御装置20を備えている。制御装置20には、カメラ17と、旋回モータ19と、旋回位置検出センサ21と、伸縮シリンダ29と、伸縮ブーム長さ検出センサ22と、起伏シリンダ12と、起伏角度検出センサ23と、メインウインチ13と、メインドラム回転数検出器24と、メインワイヤ張力検出器25と、サブウインチ15と、サブドラム回転数検出器26と、サブワイヤ張力検出器27と、フック位置調整制御スイッチ28とが接続されている。制御装置20と各部との接続には無線接続又は有線接続を用いることができる。
【0034】
制御装置20は、伸縮ブーム8の旋回動作、伸縮動作、起伏動作、メインフックブロック10及びサブフックブロック11の昇降動作のほか、様々な動作を制御する。また制御装置20は、吊り荷Wの横引きや揺れの発生を抑制するために、玉掛け後の地切り前にメインフック10a又はサブフック11aを最適な位置に自動で調整するフック位置調整制御を行う。制御装置20は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよいし、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置20には、フック位置調整制御を実行するための種々のプログラムやデータが格納されている。
【0035】
制御装置20は、取得部20aと、記憶部20bと、算出部20cと、判別部20dと、出力部20eとを備えている。
【0036】
取得部20aは、制御装置20に接続された各部の情報を取得するものである。取得部20aはカメラ17で撮影された画像を取得する。本実施形態において取得部20aは常時、所定の間隔でカメラ17で撮影した画像を取得するものとする。また、取得部20aは旋回位置検出センサ21、伸縮ブーム長さ検出センサ22、起伏角度検出センサ23、メインドラム回転数検出器24、メインワイヤ張力検出器25、サブドラム回転数検出器26及びサブワイヤ張力検出器27の検出値を取得する。また、取得部20aはフック位置調整制御スイッチ28からの操作信号を取得する。
【0037】
記憶部20bは、フック位置調整制御に用いる情報を記憶するものであり、取得部20aで取得した情報、算出部20cで算出した情報、判別部20dで利用する所定の移動量及び判別部20dで判別した結果を記憶する。また、記憶部20bはフック位置調整制御を実行するためのプログラムを格納している。
【0038】
算出部20cは、取得部20aで取得した情報に基づいてフック位置調整制御で必要な計算を行うものである。例えばメインフック10aに吊り荷Wが吊り下げられている場合、算出部20cはカメラ17で撮影された画像を解析し、メインフック10aの移動方向及び移動量を算出する。また算出部20cはメインドラム回転数検出器24で検出されたメインウインチ13の回転数からメインワイヤロープ14の繰り入れ量又は繰り出し量を算出する。
【0039】
判別部20dは、取得部20aで取得した情報、記憶部20bに記憶されている所定の移動量及び算出部20cの算出結果に基づいてフック位置調整制御で必要な判別を行うものである。例えばメインフック10aに吊り荷Wが吊り下げられている場合、判別部20dは、メインワイヤロープ14を繰り入れたときにメインフック10aが移動したか否かを判別する。
【0040】
また判別部20dは、メインワイヤ張力検出器25で検出されたメインワイヤロープ14の張力からメインワイヤロープ14が緊張状態にあるか弛緩状態にあるかを判別する。また判別部20dは、伸縮ブーム8の先端部を移動させたときにメインワイヤロープ14が弛緩したか否か、つまり緊張状態から弛緩状態になったかを判別する。メインワイヤ張力検出器25で検出された張力が所定値以上の場合に緊張状態と判別し、張力が所定値未満の場合に弛緩状態と判別することができる。また判別部20dは、カメラ17で撮影された画像から玉掛けワイヤロープ100、101が撓んでいるか否かを判別する。
【0041】
本実施形態において、緊張状態とは、見かけ上メインワイヤロープ14が直線状態にあり、かつメインワイヤロープ14が弾性によって伸びている状態を指す。一方、弛緩状態とは、見かけ上メインワイヤロープ14が撓んでいる状態と、メインワイヤロープ14が直線状態にあり、かつメインワイヤロープ14が伸びていない状態とを含んでいる。
【0042】
出力部20eは、取得部20a、算出部20c及び判別部20dからの指示に基づいて旋回モータ19、伸縮シリンダ29、起伏シリンダ12、メインウインチ13及びサブウインチ15を動作させる信号を出力するものである。
【0043】
<フック位置調整制御>
フック位置調整制御は、吊り荷Wの横引きや揺れの発生を抑制するために、玉掛け後の地切り前にメインフック10aを最適な位置に自動で調整する制御である。以下に、フック位置調整制御について4つの実施形態を例に説明する。各実施形態では、メインフック10aに玉掛けワイヤロープ100、101による2本2点吊りで吊り荷Wを吊り下げた場合を例に説明する。玉掛けワイヤロープ100、101は、メインフック10aが吊り荷Wの重心を通る鉛直線上に配置された状態において撓みが生じないように配置されている。
【0044】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態のフック位置調整制御に関するクレーン1の動作を示すフローチャートである。
【0045】
まず、ステップS10において制御装置20は、取得部20aがフック位置調整制御スイッチ28から操作信号を取得するまで待機する。オペレータによりフック位置調整制御スイッチ28が操作されると、ステップS10において取得部20aはフック位置調整制御スイッチ28から操作信号を取得する。これにより、制御装置20はフック位置調整制御の実行指示があったと判断し、ステップS11へ進んで、制御装置20はフック位置調整制御を実行する。
【0046】
なお、フック位置調整制御スイッチ28の誤操作によるフック位置調整制御の実行を防止するために、制御装置20は吊り荷Wが玉掛け後の地切り前の状態にあることを確認した後、ステップS10からステップS11へ進むようにしてもよい。例えば、取得部20aがフック位置調整制御スイッチ28から操作信号を取得した場合、判別部20dが、カメラ17で撮影された画像から、吊り荷Wが玉掛け後の地切り前の状態にあるか否かを判別する。そして、吊り荷Wが玉掛け後の地切り前の状態にあると判別した場合にステップS11へ進み、吊り荷Wが玉掛け後の地切り前の状態にないと判別した場合にステップS11へ進まず、出力部20eから図示しない表示部へフック位置調整制御スイッチ28の操作が無効である旨を出力する。
【0047】
ステップS11において、出力部20eはメインウインチ13へ繰り入れ方向に回転させるための信号を出力する。これにより、メインワイヤロープ14が繰り入れられる。続いてステップS12へ進んで、取得部20aはメインワイヤ張力検出器25から検出値を取得し、次にステップS13へ進んで、判別部20dはメインワイヤロープ14が緊張状態にあるか弛緩状態にあるかを判別する。
【0048】
ステップS13において弛緩状態である場合はステップS12に戻る。そして、ステップS13において、少なくとも一方の玉掛けワイヤロープ100、101が弛緩状態から緊張状態になることによって、メインワイヤロープ14が弛緩状態から緊張状態になった場合、ステップS13からステップS14へ進んで、出力部20eはメインウインチ13へ回転を停止させるための信号を出力する。これにより、メインウインチ13が停止する。
【0049】
ステップS11からステップS14の動作をまとめて第1処理P1とすると、制御装置20は、メインワイヤロープ14が緊張する位置までメインワイヤロープ14を繰り入れるように制御する、ともいえる。
【0050】
ステップS14からはステップS15へ進んで、算出部20cはカメラ17で撮影された画像を解析し、第1処理P1におけるメインフック10aの移動方向及び移動量V1(
図5参照)を算出する。続いてステップS16へ進んで、算出部20cはメインフック10aの移動方向及び移動量V1から水平方向成分V2(
図5参照)を算出する。
【0051】
ステップS16からはステップS17へ進んで、判別部20dは、ステップS16で算出した水平方向成分V2が第1移動量T1(
図5参照)未満であるか否かを判別する。ステップS17において第1移動量T1未満であると判別した場合、制御装置20はフック位置調整制御を終了する。
【0052】
第1移動量T1は、第1処理P1においてメインフック10aがほとんど移動しない値とすることができる。これは、全ての玉掛けワイヤロープ100、101がほぼ緊張状態となる位置にメインフック10aが位置している状態を示している。第1移動量T1を小さく設定することにより、メインフック10aをより適切な位置に近づけることができる。
【0053】
一方、ステップS17において第1移動量T1以上であると判別した場合、ステップS18へ進んで、出力部20eはステップS16で算出した水平方向成分V2と同方向に同量だけ伸縮ブーム8の先端部を移動させるための信号を旋回モータ19、伸縮シリンダ29及び起伏シリンダ12のうち必要な部位へ出力する。
【0054】
なお、ステップS18における伸縮ブーム8の先端部の移動量は、ステップS16で算出したメインフック10aの移動量の水平方向成分V2と同量でなくてもよく、水平方向成分V2と同方向であれば短くても長くてもよい。
【0055】
ステップS15からステップS18の動作をまとめて第2処理P2とすると、制御装置20は、第1処理P1でメインフック10aが移動したときの水平方向成分V2と同方向に伸縮ブーム8の先端部を移動させるように制御する、ともいえる。
【0056】
ステップS18からはステップS11へ戻り、ステップS17においてメインフック10aが移動したときの水平方向成分が第1移動量未満になるまで第1処理P1と第2処理P2とを繰り返す。
【0057】
このように、玉掛け後の地切り前にフック位置調整制御を実行することにより、地切り時に全ての玉掛けワイヤロープ100、101がほぼ緊張状態となるようにメインフック10aの位置を自動で調整することができる。したがって、地切り時には吊り荷Wを重心位置でほぼ鉛直方向に吊り上げることができ、吊り荷Wの横引きや揺れの発生を抑制することができる。また、オペレータはメインフック10aの位置や玉掛けワイヤロープ100、101の張り具合を見ながら地切り前の調整を手動で行う必要がなく、オペレータの負荷を軽減することができる。
【0058】
次に、
図4から
図10を参照して第1実施形態の一実施例について説明する。
図4は、玉掛け後の地切り前の状態を示しており、メインフック10aに玉掛けワイヤロープ100、101によって吊り荷Wが玉掛けされている。この状態において、メインフック10aは吊り荷Wの重心位置から離れた位置にあり、玉掛けワイヤロープ100、101は弛緩状態にある。
【0059】
図4の状態においてオペレータによりフック位置調整制御スイッチ28が操作されると、クレーン1はメインウインチ13を繰り入れ方向に回転させ、メインワイヤロープ14を繰り入れる。そして、
図5に示すように、メインワイヤロープ14が緊張状態になると、メインウインチ13を停止させる。このとき、玉掛けワイヤロープ100は緊張状態であり、玉掛けワイヤロープ101は弛緩状態のままである。
【0060】
次に、クレーン1は
図4から
図5の状態に移行したときのメインフック10aの移動方向及び移動量V1を算出し、その水平方向成分V2を算出する。そして、クレーン1は、水平方向成分V2が第1移動量T1以上であると判別した後、
図6に示すように、伸縮ブーム8の先端部を水平方向成分V2と同方向に同量だけ移動させる。これにより、メインフック10aが下降し、玉掛けワイヤロープ100が弛緩し、メインワイヤロープ14が弛緩状態となる。
【0061】
以下、
図4から
図6と同様の動作を繰り返す。すなわち、
図6の状態においてクレーン1はメインウインチ13を繰り入れ方向に回転させ、メインワイヤロープ14を繰り入れる。そして、
図7に示すように、メインワイヤロープ14が緊張状態になると、メインウインチ13を停止させる。このとき、玉掛けワイヤロープ100は緊張状態であり、玉掛けワイヤロープ101は弛緩状態のままである。
【0062】
次に、クレーン1は
図6から
図7の状態に移行したときのメインフック10aの移動方向及び移動量V3を算出し、その水平方向成分V4を算出する。そして、クレーン1は、水平方向成分V4が第1移動量T1以上であると判別した後、
図8に示すように、伸縮ブーム8の先端部を水平方向成分V4と同方向に同量だけ移動させる。これにより、メインフック10aが下降し、玉掛けワイヤロープ100が弛緩し、メインワイヤロープ14が弛緩状態となる。
【0063】
次に、
図8の状態においてクレーン1はメインウインチ13を繰り入れ方向に回転させ、メインワイヤロープ14を繰り入れる。そして、
図9に示すように、メインワイヤロープ14が緊張状態になると、メインウインチ13を停止させる。このとき、玉掛けワイヤロープ100は緊張状態であり、玉掛けワイヤロープ101は緊張状態に近い弛緩状態となる。
【0064】
次に、クレーン1は
図8から
図9の状態に移行したときのメインフック10aの移動方向及び移動量V5を算出し、その水平方向成分V6を算出する。そして、クレーン1は、水平方向成分V6が第1移動量T1未満であると判別した後、フック位置調整制御を終了する。この後、地切り時には吊り荷Wを重心位置でほぼ鉛直方向に吊り上げることができ、吊り荷Wの横引きや揺れの発生を抑制することができる。
【0065】
図10はフック位置調整制御の理想的な終了状態を示す図である。
図10では、全ての玉掛けワイヤロープ100、101が緊張状態となる位置にメインフック10aが位置している。第1移動量T1を小さく設定することによって、フック位置調整制御の精度を高め、
図10の状態に近づけることができる。
【0066】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態のフック位置調整制御に関するクレーン1の動作を示すフローチャートである。第2実施形態では、フック位置調整制御の終了を判断するタイミング及び条件が第1実施形態と異なり、他の動作は第1実施形態と同様である。すなわち、
図11では、
図3のステップS17をなくし、ステップS18に続いてステップS20及びステップS21を設けている。ステップS20及びステップS21は第2処理に含まれる。
【0067】
ステップS20において、算出部20cはカメラ17で撮影された画像を解析し、ステップS18におけるメインフック10aの移動量を算出する。ステップS20からはステップS21へ進んで、判別部20dは、ステップS20で算出したメインフック10aの移動量が第2移動量T2(
図6参照)未満であるか否かを判別する。ステップS21において第2移動量T2未満であると判別した場合、制御装置20はフック位置調整制御を終了する。この後、地切り時には吊り荷Wを重心位置でほぼ鉛直方向に吊り上げることができ、吊り荷Wの横引きや揺れの発生を抑制することができる。一方、ステップS21において第2移動量T2以上であると判別した場合、ステップS11へ戻る。
【0068】
第2移動量T2は、ステップS18においてメインフック10aがほとんど移動しない値とすることができる。これは、地切り時に全ての玉掛けワイヤロープ100、101がほぼ緊張状態となる位置にメインフック10aが位置している状態を示している。第2移動量T2を小さく設定することにより、メインフック10aをより適切な位置に近づけることができる。
【0069】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態のフック位置調整制御に関するクレーン1の動作を示すフローチャートである。第3実施形態では、フック位置調整制御の終了を判断するタイミング及び条件が第1実施形態と異なり、他の動作は第1実施形態と同様である。すなわち、
図12では、
図3のステップS17をなくし、ステップS18に続いてステップS30を設けている。ステップS30は第2処理に含まれる。
【0070】
ステップS30において、判別部20dはカメラ17で撮影された画像から玉掛けワイヤロープ100、101が撓んでいるか否かを判別する。ステップS30において撓んでいないと判別した場合、制御装置20はフック位置調整制御を終了する。この後、地切り時には吊り荷Wを重心位置でほぼ鉛直方向に吊り上げることができ、吊り荷Wの横引きや揺れの発生を抑制することができる。一方、ステップS30において撓んでいると判別した場合、ステップS11へ戻る。
【0071】
(第4実施形態)
図13及び
図14は、第4実施形態のフック位置調整制御に関するクレーン1の動作を示すフローチャートである。
図13及び
図14はA部分及びB部分で繋がっている。第4実施形態では、フック位置調整制御の終了を判断するタイミング及び条件が第1実施形態と異なり、他の動作は第1実施形態と同様である。すなわち、
図13では、
図3のステップS17をなくし、ステップS18に続いてステップS40からステップS50を設けている。ステップS40からステップS50は第2処理に含まれる。
【0072】
ステップS40において、出力部20eはメインウインチ13へ繰り入れ方向に回転させるための信号を出力する。これにより、メインワイヤロープ14が繰り入れられる。続いてステップS41へ進んで、取得部20aはメインワイヤ張力検出器25から検出値を取得し、次にステップS42へ進んで、判別部20dはメインワイヤロープ14が緊張状態にあるか弛緩状態にあるかを判別する。
【0073】
ステップS42において弛緩状態である場合はステップS41に戻る。そして、ステップS42においてメインワイヤロープ14が弛緩状態から緊張状態になった場合、ステップS42からステップS43へ進んで、出力部20eはメインウインチ13へ回転を停止させるための信号を出力する。これにより、メインウインチ13が停止する。
【0074】
次に、ステップS44へ進んで出力部20eはメインウインチ13へ繰り出し方向に回転させるための信号を出力する。これにより、メインワイヤロープ14が繰り出される。続いてステップS45へ進んで、取得部20aはメインワイヤ張力検出器25から検出値を取得し、次にステップS46へ進んで、判別部20dはメインワイヤロープ14が緊張状態にあるか弛緩状態にあるかを判別する。
【0075】
ステップS46において緊張状態である場合はステップS45に戻る。そして、ステップS46においてメインワイヤロープ14が緊張状態から弛緩状態になった場合、ステップS46からステップS47へ進んで、出力部20eはメインウインチ13へ回転を停止させるための信号を出力する。これにより、メインウインチ13が停止する。
【0076】
ステップS40からステップS47の動作をまとめると、制御装置20は、メインワイヤロープ14が緊張する位置までメインワイヤロープ14を繰り入れた後、メインワイヤロープ14が弛緩する位置までメインワイヤロープ14を繰り出すように制御する、ともいえる。
【0077】
図15は、ステップS48からステップS50のクレーン1の動作の一例を示す図である。ステップS47からはステップS48へ進んで、算出部20cはカメラ17で撮影された画像を解析し、ステップS44からステップS47のメインワイヤロープ14を繰り出す制御におけるメインフック10aの移動方向及び移動量V7を算出する。続いてステップS49へ進んで、算出部20cはメインフック10aの移動方向及び移動量V7から水平方向成分V8を算出する。
【0078】
続いてステップS50へ進んで、判別部20dは、ステップS49で算出した水平方向成分V8が第3移動量T3未満であるか否かを判別する。ステップS50において第3移動量T3未満であると判別した場合、制御装置20はフック位置調整制御を終了する。この後、地切り時には吊り荷Wを重心位置でほぼ鉛直方向に吊り上げることができ、吊り荷Wの横引きや揺れの発生を抑制することができる。一方、ステップS50において第3移動量T3以上であると判別した場合、ステップS11へ戻る。
【0079】
第3移動量T3はステップS44からステップS47においてメインフック10aがほとんど移動しない値とすることができる。これは、地切り時に全ての玉掛けワイヤロープ100、101がほぼ緊張状態となる位置にメインフック10aが位置している状態を示している。第3移動量T3を小さく設定することにより、メインフック10aをより適切な位置に近づけることができる。
【0080】
<変形例>
上記の実施形態では
図3、
図11から
図13のステップS10においてフック位置調整制御スイッチが操作された場合にフック位置調整制御を実行しているが、替わりに玉掛け後の地切り前に自動的に制御装置20がフック位置調整制御を実行するようにしてもよい。この場合、例えばカメラ17で撮影した画像から玉掛け後の地切り前の状態を判別することができる。
【0081】
上記の実施形態では
図3、
図11から
図13のステップS12においてメインワイヤロープ14の張力を取得し、ステップS13においてその張力の値からメインワイヤロープ14が緊張状態か弛緩状態かを判別しているが、替わりにカメラ17で撮影した画像から玉掛けワイヤロープ100、101が弛緩状態か緊張状態かを判別するようにしてもよい。
【0082】
また、
図12のステップS30は、ステップS12及びステップS13と同様の処理であってもよい。すなわち、取得部20aがメインワイヤ張力検出器25から検出値を取得し、判別部20dがメインワイヤロープ14が緊張状態にあるか弛緩状態にあるかを判別する処理であってもよい。
【0083】
制御装置20で実行するフック位置調整制御に関するプログラムは記録媒体に格納されていてもよい。この場合、制御装置20に記録媒体読取装置を接続し、制御装置20は記録媒体からプログラムを読み出して実行することができる。また、制御装置20は記録媒体から読み出したプログラムを記憶部20bに記憶し、記憶部20bから読み出して実行するようにしてもよい。
【0084】
制御装置20で実行するフック位置調整制御に関するプログラムはサーバ装置に格納されていてもよい。この場合、制御装置20に通信部を接続し、制御装置20はサーバ装置からプログラムを受信して実行することができる。また、制御装置20はサーバ装置から受信したプログラムを記憶部20bに記憶し、記憶部20bから読み出して実行するようにしてもよい。
【0085】
上記の実施形態ではメインワイヤロープ14、メインフックブロック10、玉掛けワイヤロープ100、101及び吊り荷Wの状態を検出するためにカメラ17で撮影した画像を用いたが、カメラ17の替わりに慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)やワイヤ振れ角センサ等を用いてもよい。
【0086】
上記の実施形態ではメインフック10aに吊り下げられる吊り荷Wを例に説明したが、サブフック11aに吊り下げられる吊り荷又はジブ9を用いてサブフック11aに吊り下げられる吊り荷にも同様に適用することができる。