特許第6828672号(P6828672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6828672
(24)【登録日】2021年1月25日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】インクジェット記録用白色インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/326 20140101AFI20210128BHJP
【FI】
   C09D11/326
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-240743(P2017-240743)
(22)【出願日】2017年12月15日
(65)【公開番号】特開2019-108429(P2019-108429A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2019年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】日置 潤
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−158671(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105264024(CN,A)
【文献】 特開2007−270143(JP,A)
【文献】 特開2006−008891(JP,A)
【文献】 特開2012−179789(JP,A)
【文献】 特開2013−189624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と、樹脂粒子と、白色顔料粒子と、分散剤とを含むインクジェット記録用白色インクであって、
前記白色顔料粒子の密度は、3.0g/cm3以下であり、
前記分散剤は、アニオン性樹脂と、非水溶性非極性樹脂とを含み、
前記白色顔料粒子は、白色顔料粒子分散体として分散され、
前記白色顔料粒子分散体は、前記白色顔料粒子の表面が、前記非水溶性非極性樹脂で被覆されており、さらに前記アニオン性樹脂で被覆されており、
前記アニオン性樹脂の酸価が50mgKOH/g以上であり、
前記アニオン性樹脂の質量平均分子量が10,000以上である、インクジェット記録用白色インク。
【請求項2】
前記白色顔料粒子は、炭酸カルシウム、タルク、マイカ及びカオリンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のインクジェット記録用白色インク。
【請求項3】
前記アニオン性樹脂はアンモニウムイオン中和型アクリル酸系樹脂であり、前記非水溶性非極性樹脂はスチレン−アクリル酸系樹脂である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用白色インク。
【請求項4】
前記白色顔料粒子分散体の体積平均粒子径は、250nm以上800nm以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載のインクジェット記録用白色インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用白色インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用白色インクに含まれる顔料粒子としては、従来、画像の白色度及び隠蔽性を向上させる目的で、二酸化チタン粒子が使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2013−021633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、二酸化チタン粒子を使用した場合には、二酸化チタンの比重が大きいために、白色インクの保存安定性が低下することがあり、二酸化チタンの金属イオンが溶出し、インクジェットノズル近傍に金属として析出することで、インク液滴の吐出安定性が低下することがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、保存安定性と吐出安定性とに優れるインクジェット記録用白色インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット記録用白色インクは、水性媒体と、樹脂粒子と、白色顔料粒子と、分散剤とを含む。前記白色顔料粒子の密度は、3.0g/cm3以下である。前記分散剤は、アニオン性樹脂と、非水溶性非極性樹脂とを含む。前記白色顔料粒子は、白色顔料粒子分散体として、分散される。前記白色顔料粒子分散体は、前記白色顔料粒子の表面が、前記非水溶性非極性樹脂で被覆されており、さらに前記アニオン性樹脂で被覆されている。前記アニオン性樹脂の酸価が50mgKOH/g以上である。前記アニオン性樹脂の質量平均分子量が10,000以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るインクジェット記録用白色インクは、保存安定性及び吐出安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について説明する。なお、以下において、粒子の集合体(例えば、粉体中の複数の粒子又は分散液中の複数の粒子)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。
【0009】
また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
【0010】
本実施形態に係るインクジェット記録用白色インク(以下、白色インクと記載することがある)は、保存安定性と吐出安定性とに優れる。その理由は、以下のように推定される。白色顔料粒子の密度は、3.0g/cm3以下であるため、白色顔料粒子は、白色インク中で沈降しにくく分散性に優れ、保存安定性に優れると考えられる。分散剤はアニオン性樹脂と、非水溶性非極性樹脂とを含み、アニオン性樹脂の酸価が50mgKOH/g以上であり、アニオン性樹脂の質量平均分子量が10,000以上である。よって、白色顔料粒子は、白色顔料粒子分散体として分散する。白色顔料粒子分散体は、白色顔料粒子の表面が非水溶性非極性樹脂で被覆され、さらに非水溶性非極性樹脂の被覆層上にアニオン性樹脂で被覆された構造(以下、被覆構造と記載することがある)を有する。白色顔料粒子は被覆構造を有するため、白色インク中で凝集しにくく分散性に優れ、保存安定性に優れると考えられる。さらに、白色顔料粒子は被覆構造を有するため、白色顔料粒子の表面が水性媒体に露出しにくい。このため、白色顔料粒子からその構成成分が金属カチオンとして溶出しにくく、インクジェットヘッドのノズル近傍に析出しにくい。よって、吐出安定性に優れると考えられる。以上から、本実施形態に係る白色インクは、保存安定性及び吐出安定性に優れる。
【0011】
本実施形態に係る白色インクは、記録媒体に記録される。本実施形態に係る白色インクは、記録媒体に白色画像を記録する目的で使用されてもよいし、白色でない記録媒体の色を消す目的で使用されてもよいし、有色画像の透過性を下げる目的で使用されてもよい。何れの場合であっても、本実施形態に係る白色インクは、インクジェット記録装置の記録ヘッドから記録媒体へ向かって吐出されることが好ましい。記録媒体としては、例えば、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、光沢紙、又はOHPシートを使用できる。記録媒体は、プラスチック製、金属製、又はガラス製であってもよい。記録媒体は、繊維を用いて加工されたもの(例えば布地)であってもよい。
【0012】
白色インクは、社会通念上「白」と呼称される色を記録媒体に記録できればよい。より具体的には、本実施形態では、下記測定方法で測定されたインクの明度(L*)が下記式(1)を満たし、且つ下記測定方法で測定されたインクの色度(a*,b*)が下記式(2)及び(3)を満たす場合、そのインクを白色インクとみなす。
70≦L*≦100・・・式(1)
−3.5≦a*≦1.0・・・式(2)
−5.0≦b*≦1.5・・・式(3)
【0013】
<明度(L*)及び色度(a*,b*)の測定方法>
記録媒体(セイコーエプソン株式会社製「エプソン純正写真用紙<光沢>」)の表面に対し、duty100%のソリッド画像を記録する。分光光度計(X−Rite社製「Spectrolino」)を用い、以下に示す測定条件で、記録媒体に記録されたインクの明度(L*)及び色度(a*,b*)を測定する。
【0014】
(測定条件)
光源:D50
観測視野:2°
濃度測定条件:DIN NBフィルター
White Base:absolute
フィルター:No
測定モード:Reflectance
【0015】
(duty)
duty(インクの付与量)は、下記式で表される。下記式において、「実記録ドット数」は、単位面積当たりの実記録ドット数を意味する。dutyが100%であるとは、画素に対する単色インクの付与量が最大であることを意味する。
duty(単位:%)={(実記録ドット数)/(画像解像度)}×100
【0016】
[白色インクの構成]
本実施形態に係る白色インクは、水性媒体と、樹脂粒子と、白色顔料粒子と、分散剤とを含む。複数の樹脂粒子及び複数の白色顔料粒子は、水性媒体に分散されている。白色インクは、必要に応じて添加剤をさらに含んでもよい。
【0017】
(水系媒体)
水性媒体は、水を含有することが好ましい。水は、純水又は超純水であることが好ましく、より好ましくは滅菌処理された純水又は超純水である。滅菌処理された純水又は超純水を使用すれば、白色インクにおいてカビ及びバクテリアが発生することを長期にわたって防止できる。純水は、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、及び蒸留水からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。滅菌処理は、例えば、紫外線照射、及び過酸化水素添加からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0018】
(樹脂粒子)
樹脂粒子は、記録媒体上で結着樹脂として機能する。詳しくは、樹脂粒子は、白色顔料粒子を記録媒体上に保持する。樹脂粒子を含まれる樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸系樹脂、アクリル酸系樹脂、ウレタン樹脂又はポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂のうち、白色インク中での樹脂粒子の分散性を向上させる観点から、酸性の官能基を有する樹脂(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂等)が好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、スチレン系モノマー由来の繰返し単位と、アクリル酸系モノマー由来の繰返し単位とを含む。
【0019】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルスチレン、ヒドロキシスチレン、又はハロゲン化スチレンが挙げられる。アルキルスチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレンが挙げられる。ヒドロキシスチレンとしては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、又はm−ヒドロキシスチレンが挙げられる。ハロゲン化スチレンとしては、例えば、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレンが挙げられる。このようなスチレン系モノマーのプレポリマーを使用することもできる。例えば、このようなスチレン系モノマーのダイマーを使用することもできる。
【0020】
アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、又は(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。このようなアクリル酸系モノマーのプレポリマーを使用することもできる。例えば、このようなアクリル酸系モノマーのダイマーを使用することもできる。
【0021】
白色インクにおける樹脂粒子の含有量は特に限定されない。しかし、樹脂粒子の含有量が少なすぎると、所望の画像濃度を有する画像が得られないことがある。そのため、所望の画像濃度を有する白色画像を記録媒体に記録できないことがある。また、白色でない記録媒体の色を効果的に消すことができないことがある。また、有色画像の透過性を効果的に下げることができないことがある。樹脂粒子の含有量が多すぎると、記録媒体に対する白色インクの浸透性を確保できないことがある。また、樹脂粒子の含有量が多すぎると、白色インクにおいて樹脂粒子の流動性を確保できないことがある。このことによっても、所望の画像濃度を有する画像が得られないことがある。例えば、白色インクにおける樹脂粒子の含有量は、4質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
【0022】
(白色顔料粒子)
白色顔料粒子は、白色顔料粒子分散体として白色インク中に分散される。白色顔料粒子の密度は、3.0g/cm3以下であり、2.7g/cm3以下であることが好ましい。白色顔料粒子の密度が3.0g/cm3以下であると、白色顔料粒子が白色インク中で沈降しにくく分散性に優れるため、白色インクは保存安定性に優れる。
【0023】
白色顔料粒子は、炭酸カルシウム、タルク、マイカ及びカオリンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0024】
白色顔料粒子分散体の体積平均粒子径は、250nm以上800nm以下であることが好ましい。白色顔料粒子分散体の体積平均粒子径が250nm以上であると、白色顔料粒子が画像において可視光を遮りやすいため、所望の隠蔽性を有する画像を形成し易い。また、白色顔料粒子分散体の体積平均粒子径が800nm以下であると、白色インクにおいて、白色顔料粒子分散体が沈降しにくいため、白色インクの保存安定性の低下を抑制できる。また、白色顔料粒子分散体の体積平均粒子径が250nm以上800nm以下であると、白色顔料粒子分散体が可視光の波長領域とほぼ同じであるため、画像における樹脂で被覆された白色顔料粒子又は白色顔料粒子において可視光が散乱しやすく、所望の白色度及び隠蔽性を有する画像を形成しやすい。
【0025】
体積平均粒子径は、散乱光強度基準による調和平均粒子径(直径)を示す。動的光散乱式粒径分布測定装置(シスメックス株式会社製「ゼータサイザー(登録商標)ナノZS」)を用いて、体積平均粒子径を求める。体積平均粒子径は、ISO 13321:1996(Particle size analysis―Photon correlation spectroscopy)に記載の方法、又はそれに準ずる方法で求められる。詳しくは、まず、イオン交換水を用いて、白色顔料粒子分散液を希釈率1000倍で希釈する。希釈した白色顔料粒子分散液を測定試料とする。次いで、動的光散乱法によって、測定試料からの散乱光強度の時間的な変化を検出する。次に、散乱光強度の時間的な変化を用いて、散乱光強度の自己相関関数を求める。続いて、散乱光強度の自己相関関数をキュムラント法で解析する。このようにして、白色顔料粒子分散体の体積平均粒子径が求まる。
【0026】
白色顔料粒子分散体の多分散指数は、0.30以上0.35以下であることが好ましい。多分散指数は、粒子径分布の広がりを示す無次元指標を示す。多分散指数が小さいほど、粒子径分布の広がりが小さい。また、多分散指数が大きいほど、粒子径分布の広がりが大きい。例えば、白色顔料粒子分散体の多分散指数が小さいほど、白色顔料粒子分散体の粒子径分布がシャープとなる。白色顔料粒子分散体の多分散指数が大きいほど、白色顔料粒子分散体の粒子径分布がブロードとなる。白色顔料粒子分散体の多分散指数は、体積平均粒子径と同様の方法で求めることができる。
【0027】
(分散剤)
分散剤は、白色インク中で白色顔料粒子とともに白色顔料粒子分散体を形成し、白色顔料粒子を分散させる。分散剤は、アニオン性樹脂と、非水溶性非極性樹脂とを含む。分散剤は、白色顔料粒子と白色顔料粒子分散体を形成することで、白色インク中で白色顔料粒子を分散させる。被覆構造は、白色顔料粒子の表面が非水溶性非極性樹脂で被覆され、さらにアニオン性樹脂で被覆される構造である。被覆構造は、後述する転相乳化法により形成することができる。
【0028】
(アニオン性樹脂)
アニオン性樹脂は、アニオン性官能基を有する樹脂である。アニオン性官能基としては、例えば、酸性の官能基(より具体的には、カルボキシル基又はスルホ基等)の金属塩(より具体的には、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等)又はアンモニウム塩が挙げられる。アニオン性樹脂としては、例えば、中和型樹脂(より具体的には、中和型のアクリル酸系樹脂等)が挙げられる。中和型のアクリル酸系樹脂としては、例えば、アンモニウムイオン中和型アクリル酸系樹脂又はアルカリ金属イオン中和型アクリル酸系樹脂(より具体的には、ナトリウムイオン中和型アクリル酸系樹脂又はカリウムイオン中和型アクリル酸系樹脂等)が挙げられる。アンモニウムイオン中和型アクリル酸系樹脂では、アクリル酸系モノマー由来の繰返し単位(より具体的には、アクリル酸由来の繰返し単位又はアクリル酸の誘導体由来の繰返し単位)がカルボキシル基のアンモニウム塩を有する。なお、中和型樹脂では、複数の酸性の官能基のうちの一部が塩となっていてもよい。
【0029】
アクリル酸系樹脂は、アクリル酸系モノマーの重合体である。アクリル酸系樹脂は、アクリル酸系モノマー由来の繰返し単位以外に、他のビニル系モノマー由来の繰返し単位を含んでもよい。アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。このようなアクリル酸系モノマーのプレポリマーを使用することもできる。例えば、このようなアクリル酸系モノマーのダイマーを使用することもできる。
【0030】
アニオン性樹脂の酸価は、50mgKOH/g以上であり、70mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。アニオン性樹脂の酸価が50mgKOH/g以上であると、非水溶性非極性樹脂とともに白色顔料粒子の被覆構造を形成しやすく、白色顔料粒子を白色インク中に良好に分散させる。
【0031】
アニオン性樹脂の酸価は、JIS(日本工業規格)K0070−1992に準拠した方法で測定する。アニオン性樹脂の酸価は、酸性の官能基の量により調整することができる。例えば、アニオン性樹脂が酸性の官能基を有するモノマー由来の繰返し単位を有する場合、アニオン性樹脂における酸性の官能基を有するモノマー由来の繰返し単位の割合を増加させることで、酸価を増加させることができる。
【0032】
アニオン性樹脂の質量平均分子量Mwは、10,000以上であり、10,000以上16,000以下であることが好ましい。アニオン性樹脂の質量平均分子量Mwが、10,000以上であると、非水溶性非極性樹脂とともに白色顔料粒子の被覆構造を形成しやすく、白色顔料粒子を白色インク中に良好に分散させる。
【0033】
アニオン性樹脂の質量平均分子量Mwは以下の方法で測定する。ゲルろ過クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC−8020GPC」)を用いて、下記条件で、アニオン性樹脂の質量平均分子量Mwを求める。
【0034】
(測定条件)
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
サンプル注入量:10μL
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
【0035】
なお、検量線は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレンから、F−40、F−20、F−4、F−1、A−5000、A−2500、及びA−1000の7種とn−プロピルベンゼンとを選択して作成される。
【0036】
アニオン性樹脂は、樹脂粒子を分散させてもよい。
【0037】
(非水溶性非極性樹脂)
非水溶性非極性樹脂は、極性官能基を含む繰返し単位及び親水性の繰返し単位の合計含有量が、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である樹脂群を指す。極性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基等が挙げられる。極性官能基を含む繰返し単位としては、例えば、アリルアミン、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル等の極性モノマーに由来する繰返し単位が挙げられる。親水性の繰返し単位としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ビニルピロリドン、N、N−ジメチルアクリルアミド等の親水性モノマーに由来する繰返し単位が挙げられる。例えば、非水溶性非極性樹脂は、エチレン、プロピレン、スチレン、4−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、ブタジエン、N−フェニルマレイミド等の非極性化合物を含むモノマーの重合体である。非水溶性非極性樹脂とアニオン性樹脂とは、共に白色顔料粒子の被覆構造を形成する性質を有する。非水溶性非極性樹脂は、アニオン性樹脂に比べ高い疎水性を有する。非水溶性非極性樹脂は、白色インク中において水性媒体に比べ白色顔料粒子及びアニオン性樹脂との親和性が高い。非水溶性非極性樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸系樹脂が挙げられる。スチレン−アクリル酸系樹脂は、スチレン系モノマー由来の繰返し単位と、アクリル酸系モノマー由来の繰返し単位とを含む。
【0038】
スチレン系モノマーは、例えば、スチレン、アルキルスチレン、ヒドロキシスチレン、又はハロゲン化スチレンが挙げられる。アルキルスチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレンが挙げられる。ヒドロキシスチレンとしては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、又はm−ヒドロキシスチレンが挙げられる。ハロゲン化スチレンとしては、例えば、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレンが挙げられる。このようなスチレン系モノマーのプレポリマーを使用することもできる。例えば、このようなスチレン系モノマーのダイマーを使用することもできる。
【0039】
アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、又は(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。このようなアクリル酸系モノマーのプレポリマーを使用することもできる。例えば、このようなアクリル酸系モノマーのダイマーを使用することもできる。
【0040】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、浸透剤、界面活性剤、多価アルコール、pH調整剤、又はその他の添加剤が挙げられる。
【0041】
(浸透剤)
浸透剤は、記録媒体に対する白色インクの浸透性を高めることができる。記録媒体の画像形成面に対する白色インクの濡れ性を高めることができるからである。浸透剤は、アルカンジオールとグリコールエーテル類とからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。白色インクにおける浸透剤の含有量は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
アルカンジオールは、炭素原子数が4以上8以下の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。より具体的には、アルカンジオールは、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、及び1,2−オクタンジオールからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。アルカンジオールは、炭素原子数が6以上8以下の1,2−アルカンジオールがより好ましい。
【0043】
グリコールエーテル類は、グリコール類の片末端又は両末端の水酸基(−OH基)が低級アルキル基で置換された化合物であることが好ましい。グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、又はトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0044】
(界面活性剤)
界面活性剤は、記録媒体に対する白色インクの浸透性を高めることができる。記録媒体の印字面に対する白色インクの濡れ性を高めることができるからである。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、又は両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤のうち、ノニオン界面活性剤が好ましい。ノニオン界面活性剤は、アセチレングリコール型界面活性剤とポリシロキサン型界面活性剤とからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。白色インクにおける界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
アセチレングリコール型界面活性剤は、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、及び2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。市販のアセチレングリコール型界面活性剤としては、例えば、日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1010」、「サーフィノール(登録商標)82」、「サーフィノール(登録商標)104」、「サーフィノール(登録商標)465」及び「サーフィノール(登録商標)485」を挙げることができる。「オルフィン(登録商標)E1010」は、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物を含有する。「サーフィノール(登録商標)82」は、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールを含有する。「サーフィノール(登録商標)104」は、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを含有する。「サーフィノール(登録商標)465」及び「サーフィノール(登録商標)485」は、それぞれ、テトラメチルデシンジオールのエチレンオキシド付加物を含有する。
【0046】
ポリシロキサン型界面活性剤は、例えば、ポリエーテル変性シロキサンであることが好ましい。市販のポリシロキサン型界面活性剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製「BYK−347」及び「BYK−348」を挙げることができる。「BYK−347」及び「BYK−348」は、ポリエーテル変性シロキサンを含有する。
【0047】
(多価アルコール)
多価アルコールは、白色インクの乾燥を抑制できるため、記録ヘッドが目詰まりを起こすことを防止できる。白色インクにおける多価アルコールの含有量は、0.1質量%以上30.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びソルビトールからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0049】
(pH調整剤)
pH調整剤は、白色インクのpHを調整することができる。白色インクにおけるpH調整剤の含有量は、0.01質量%以上10.00質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。pH調整剤は、第三級アミンであることが好ましい。
【0050】
(その他の添加剤)
白色インクは、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、及び酸素吸収剤からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含有してもよい。定着剤としては、例えば、水溶性ロジンが挙げられる。防黴剤としては、例えば、安息香酸ナトリウムが挙げられる。安息香酸ナトリウムは、防腐剤としても機能し得る。酸化防止剤としては、例えば、アロハネート類が挙げられる。
【0051】
(白色インクの製造方法)
白色インクは、転相乳化法により作製することができる。まず、白色顔料粒子分散液を調製する。詳しくは、白色顔料粒子と、アニオン性樹脂と、非水溶性非極性樹脂と、有機溶媒とを混合して、混合液を調製する。有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンが挙げられる。混合液に水性溶媒を添加して、有機溶媒から水性溶媒に転相する。その結果、水性溶媒中に有機溶媒の液滴が分散した分散液を調製する。分散液を減圧条件下にして分散液から有機溶媒を除去し、白色顔料粒子分散液を得る。白色顔料粒子と、アニオン性樹脂と、非水溶性非極性樹脂と、有機溶媒とを含む有機溶媒の液滴から、徐々に有機溶媒が除去される過程で、液滴中で親和性のある物質が互いに近接することで、最終的に白色インク中で白色顔料粒子分散体が形成される。
【0052】
白色顔料粒子分散液に、樹脂粒子懸濁液を添加する。さらに必要に応じて添加剤を加えてもよい。これを攪拌機等で混合し白色インクを得る。攪拌後、必要に応じてろ過をしてもよい。
【実施例】
【0053】
本発明の実施例を説明する。表1に、実施例又は比較例に係る白色インクWA−1〜WA−5及びWB−1〜WB−5を示す。
【0054】
以下、まず、白色顔料粒子分散液A−1〜A−5及びB−1〜B−5のそれぞれの製造方法、及び物性値の測定方法を順に説明する。次に、白色インクWA−1〜WA−5及びWB−1〜WB−5の製造方法、評価方法、及び評価結果を順に説明する。なお、分散液中の複数の粒子(詳しくは、白色顔料粒子及び樹脂粒子)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。
【0055】
[白色顔料粒子分散液の製造]
<白色顔料粒子分散液A−1の製造>
白色顔料粒子としての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製「Gerton50」)60質量部と、アニオン性樹脂としてのアンモニウムイオン中和型アクリル酸樹脂(東亜合成株式会社製「アルフォンUC−3920」、酸価240mgKOH/g、質量平均分子量Mw15,500)20質量部と、非水溶性非極性樹脂としてのスチレン−アクリル酸系樹脂(東亜合成株式会社製「レセダGP―210S」)20質量部とを有機溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK)100質量部に溶解させて、溶液を得た。次いで溶液にイオン交換水300質量部をさらに添加して転相させた。次いで、減圧条件にてMEKの脱溶媒を行った。その結果、白色顔料粒子分散液A−1を得た。白色顔料粒子分散液A−1の固形分濃度は35質量%であった。白色顔料粒子分散液A−1に含まれる白色顔料粒子分散体A−1の体積平均粒子径は300nmであり、白色顔料粒子分散体A−1の多分散指数は0.30であった。なお、白色顔料粒子分散体A−1の体積平均粒子径及び多分散指数は、実施形態で述べた方法で求めた。以下、同様である。
【0056】
<白色顔料粒子分散液A−2の製造>
白色顔料粒子としての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製「Gerton50」)の代わりにタルク(日本タルク株式会社製「ナノエースD−600」)を用いた以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液A−2を調製した。白色顔料粒子分散液A−2の固形分濃度は35質量%であった。白色顔料粒子分散液A−2に含まれる白色顔料粒子分散体A−2の体積平均粒子径は750nmであり、白色顔料粒子分散体A−2の多分散指数は0.35であった。
【0057】
<白色顔料粒子分散液A−3の製造>
白色顔料粒子としての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製「Gerton50」)の代わりにカオリン(林化成株式会社製「ASPG−90」)を用いた以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液A−3を調製した。白色顔料粒子分散液A−3の固形分濃度は36質量%であり、あった。白色顔料粒子分散液A−3に含まれる白色顔料粒子分散体A−3の体積平均粒子径は200nmであり、白色顔料粒子分散体A−3の多分散指数は0.11であった。
【0058】
<白色顔料粒子分散液A−4の製造>
アニオン性樹脂としてのアンモニウムイオン中和型アクリル酸樹脂(東亜合成株式会社製「アルフォンUC−3920」、酸価240mgKOH/g、質量平均分子量Mw15、500)の代わりにアンモニウムイオン中和型アクリル酸樹脂(東亜合成株式会社製「アルフォンU−3000」、酸価74mgKOH/g、質量平均分子量Mw10,000)を用いた以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液A−4を調製した。白色顔料粒子分散液A−4の固形分濃度は34質量%であった。白色顔料粒子分散液A−4に含まれる白色顔料粒子分散体A−4の体積平均粒子径は550nmであり、白色顔料粒子分散体A−4の多分散指数は0.32であった。
【0059】
<白色顔料粒子分散液A−5の製造>
非水溶性非極性樹脂としてのスチレン−アクリル酸系樹脂(東亜合成株式会社製「レセダGP―210S」)の代わりにアクリル酸系樹脂(東亜合成株式会社製「アロン(登録商標)NW−400」)を用いた以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液A−5を調製した。白色顔料粒子分散液A−5の固形分濃度は34質量%であった。白色顔料粒子分散液A−5に含まれる白色顔料粒子分散体A−5の体積平均粒子径は270nmであり、白色顔料粒子分散体A−5の多分散指数は0.30であった。
【0060】
<白色顔料粒子分散液B−1の製造>
白色顔料粒子としての炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製「Gerton50」)の代わりに酸化チタン(テイカ株式会社製「MT−100AQ」)を用いた以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液B−1を調製した。白色顔料粒子分散液B−1の固形分濃度は36質量%であった。白色顔料粒子分散液B−1に含まれる白色顔料粒子分散体B−1の体積平均粒子径は250nmであり、白色顔料粒子分散体B−1の多分散指数は0.28であった。
【0061】
<白色顔料粒子分散液B−2の製造>
アニオン性樹脂としてのアンモニウムイオン中和型アクリル酸樹脂(東亜合成株式会社製「アルフォンUC−3920」、酸価240mgKOH/g、質量平均分子量Mw15、500)の代わりにアクリル酸樹脂(星光PMC株式会社製「VS−1057」、酸価40mgKOH/g、質量平均分子量Mw19,000)を用いた以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液B−2を調製した。白色顔料粒子分散液B−2の固形分濃度は35質量%であった。白色顔料粒子分散液B−2に含まれる白色顔料粒子分散体B−2の体積平均粒子径は500nmであり、白色顔料粒子分散体B−2の多分散指数は0.32であった。
【0062】
<白色顔料粒子分散液B−3の製造>
アニオン性樹脂としてのアンモニウムイオン中和型アクリル酸樹脂(東亜合成株式会社製「アルフォンUC−3920」、酸価240mgKOH/g、質量平均分子量Mw15、500)の代わりにアクリル酸樹脂(東亜合成株式会社製「アルフォンU−3000」、酸価108mgKOH/g、質量平均分子量Mw4,600)を用いた以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液B−3を調製した。白色顔料粒子分散液B−3の固形分濃度は35質量%であった。白色顔料粒子分散液B−3に含まれる白色顔料粒子分散体B−3の体積平均粒子径は280nmであり、白色顔料粒子分散体B−3の多分散指数は0.29であった。
【0063】
<白色顔料粒子分散液B−4の製造>
アニオン性樹脂としてのアンモニウムイオン中和型アクリル酸樹脂(東亜合成株式会社製「アルフォンUC−3920」、酸価240mgKOH/g、質量平均分子量Mw15,500)を添加しなかった以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液B−4を調製した。白色顔料粒子分散液B−4では、転相時に溶媒相が分散せずに白色顔料粒子分散体B−4を得ることができなかった。このため、比較例4に係る白色インクは、調製することができず、白色度、隠蔽性、吐出安定性、及び保存安定性を評価できなかった。
【0064】
<白色顔料粒子分散液B−5の製造>
非水溶性非極性樹脂としてのスチレン−アクリル酸樹脂(東亜合成株式会社製「レセダGP―210S」)を添加しなかった以外は、白色顔料粒子分散液A−1と同様の製造方法により白色顔料粒子分散液B−5を調製した。白色顔料粒子分散液B−5の固形分濃度は34質量%であり、あった。白色顔料粒子分散液B−5に含まれる白色顔料粒子分散体B−5の体積平均粒子径は320nmであり、白色顔料粒子分散体B−5の多分散指数は0.30であった。
測定結果を表1に示す。
【0065】
[白色インクの製造]
<白色インクWA−1の製造>
白色顔料粒子分散液A−1(25質量部)に対し樹脂粒子としてのスチレンアクリル酸樹脂エマルション(東亜合成株式会社製「アロン(登録商標)NW−7060」)(10質量部)を配合し、固形分5質量%とした。次いで、プロピレングリコール(ナカライテスク株式会社製の試薬特級品)(15質量部)と、ソルビトール(ナカライテスク株式会社製の試薬特級品)(10質量部)と、適量の界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)104」)と、適量のイオン交換水とを添加して希釈した。その結果、白色インクWA−1を得た。白色インクWA−1の白色顔料の濃度は5質量%であり、25℃での粘度が4mPa・sであり、25℃での白色インク表面張力が35mN/mであった。25℃でのインクの表面張力が35mN/mとなるように、界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)104」)の配合量を調整した。より具体的には、界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)104」)の配合量を約0.05質量部とした。
【0066】
<白色インクWA−2〜WA−5、WB−1〜WB−3及びWB−5の製造>
白色顔料粒子分散液A−1の代わりに白色顔料粒子分散液A−2〜A−5、B−1〜B−3及びB−5の何れかを用いた以外は、白色インクWA−1と同様の製造方法によりそれぞれ白色インクWA−2〜WA−5、WB−1〜WB−3及びWB−5を得た。表1に白色インクの測定結果を示す。なお、白色顔料粒子欄の「体積平均粒子径」は、白色顔料粒子分散体の体積平均粒子径を示す。
【0067】
[インクの評価方法]
<白色度の評価>
まず、白色インク(より具体的には、白色インクWA−1〜WA−5及びWB−1〜WB−3及びWB−5のそれぞれ)を、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製「PX−045a」)専用のカートリッジのインク室に充填した。次に、カートリッジをインクジェットプリンターに装着した。続いて、インクジェットプリンターを用いて、duty100%のソリッド画像をOHPフィルム(スリーエムジャパン株式会社のインクジェット用OHPフィルム)に形成した。得られた印刷物を、黒色台紙(OD値:2.0)の上に配置した。その後、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて、下記測定条件で、OHPフィルムに記録されたインクの明度(L*)を測定した。
(測定条件)
光源:D50
観測視野:2°
【0068】
白色度の評価基準を以下に示す。評価結果を表2に示す。
(白色度の評価基準)
評価A(良好):白色インクの明度(L*)が70以上である。
評価B(不良):白色インクの明度(L*)が70未満である。
【0069】
<隠蔽率の評価>
上述の<白色度の評価>で得られた印刷物を用いて、隠蔽率を評価した。詳しくは、まず、印刷物を紫外可視分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「U−3010」)のサンプル室にセットした。次に、印刷物の画像形成部に可視領域の単色光(波長:400nm以上800nm、波長間隔:1nm)を入射して、それぞれの波長を有する入射光が印刷物の画像形成部を透過する割合(透過率T(単位:%))を測定した。その後、入射光の波長400nm、500nm、600nm、700nm、及び800nmにおける印刷物の画像形成部の透過率Tから、透過率の平均値を算出した。得られた平均値を隠蔽率(単位:%)とした。
【0070】
評価基準を以下に示す。評価結果を表2に示す。なお、隠蔽率が小さいことは、透過率Tが低いことを意味する。そのため、隠蔽率が小さいことは、隠蔽効果が十分に発揮されていることを意味する。隠蔽率が大きいことは、透過率Tが高いことを意味する。そのため、隠蔽率が大きいことは、隠蔽効果が十分に発揮されていないこと、又は隠蔽効果が発揮され難いことを意味する。
(隠蔽率の評価基準)
評価A(良好):隠蔽率が10%以下である。
評価B(不良):隠蔽率が10%超である。
【0071】
<吐出安定性>
白色インク(より具体的には、白色インクWA−1〜WA−5、WB−1〜WB−3及びWB−5のそれぞれ)をインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製「PX−045a」)専用のカートリッジのインク室に充填した。次に、カートリッジをインクジェットプリンターに装着した。続いて、インクジェットプリンターを用いて、duty100%のソリッド画像をOHPフィルム(スリーエムジャパン株式会社のインクジェット用OHPフィルム)に形成した。このような画像をOHPフィルム30枚に連続して形成した。次いで、ノズルチェックパターンを作成し、インクジェットヘッドの全ノズル本数のうち、インク液滴が吐出されなかった個数(ノズル抜け本数)をカウントした。得られたカウント数から、下記評価基準に基づいて、白色インクの吐出安定性を評価した。
【0072】
評価基準を以下に示す。表2に評価結果を示す。
(吐出安定性の評価基準)
評価A(良好):ノズル抜け本数が10本未満である。
評価B(不良):ノズル抜け本数が10本以上である。
【0073】
<保存安定度の評価>
まず、イオン交換水を用いて、白色インク(より具体的には、白色インクWA−1〜WA−5、WB−1〜WB−3及びWB−5のそれぞれ)を10倍に希釈した。得られた希釈液をセルに入れて、紫外可視分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「U−3010」)のサンプル室にセットした。希釈液に可視光(波長:500nm)を入射して、入射光が希釈液に吸収される割合(吸光度Abs)を測定した。測定された吸光度Absを保存前の吸光度とした。
【0074】
次に、白色インク(より具体的には、白色インクWA−1〜WA−5、WB−1〜WB−3及びWB−5のそれぞれ)のうちの50mLを密閉容器(容量:100mL)に入れ、密閉容器を温度50℃の環境下で1週間にわたって静置した。その後、密閉容器を手で振り、密閉容器内の白色インクを軽く攪拌した。イオン交換水を用いて、密閉容器内の白色インク50mLのうちの10mLを10倍に希釈し、希釈分散液を調製した。希釈分散液のうちの10mLをメスシリンダー(容量:10mL)に入れ、メスシリンダーを温度25℃且つ湿度50%RHの環境下で1週間にわたって静置した。その後、メスシリンダー内の希釈分散液から上澄み液(2mL)を採取し、採取した上澄み液を、イオン交換水を用いて、1000倍に希釈し、上澄み希釈液を得た。得られた上澄み希釈液をセルに入れて、紫外可視分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「U−3010」)のサンプル室にセットした。上澄み希釈液に可視光(波長:500nm)を入射して、入射光が上澄み希釈液に吸収される割合(吸光度Abs)を測定した。測定された吸光度Absを保存後の吸光度とした。
【0075】
得られた保存前の吸光度及び保存後の吸光度から、下記式に基づいて、保存安定度を算出した。
保存安定度(単位:%)={(保存後の吸光度)/(保存前の吸光度)}×100
【0076】
評価基準を以下に示す。評価結果を表2に示す。
(保存安定性の評価基準)
評価A(良好):保存安定度が60%以上である。
評価B(不良):保存安定度が60%未満である。
【0077】
[インクの評価結果]
表2に、白色インク(より具体的には、白色インクWA−1〜WA−5及びWB−1〜WB−5のそれぞれ)の評価結果を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
白色インクWA−1〜WA−5(実施例1〜5に係る白色インク)は、それぞれ、以下に示す基本構成を有していた。詳しくは、表1に示すように、白色インクWA−1〜WA−5は、それぞれ水性媒体と、樹脂粒子と、白色顔料と、分散剤とを含んでいた。白色顔料の密度は、3.0g/cm3以下であった。分散剤は、アニオン性樹脂と、非水溶性非極性樹脂とを含んでいた。白色顔料の表面は、非水溶性非極性樹脂で被覆されており、さらにアニオン性樹脂で被覆されていた。アニオン性樹脂は、酸価が50mgKOH/g以上であり、質量平均分子量が10,000以上であった。
【0081】
表2に示すように、白色インクWA−1〜WA−5は、吐出安定性及び保存安定性の評価結果が何れも評価A(良好)であった。
【0082】
一方、白色インクWB−1〜WB−5は、何れも、上述の基本構成のうちの少なくとも1つを有していなかった。詳しくは、白色インクWB−1(比較例1に係る白色インク)では、白色顔料の密度が4.2g/cm3であった。白色インクWB−2(比較例2に係る白色インク)では、アニオン性樹脂の酸価が40mgKOH/gであった。白色インクWB−3(比較例3に係る白色インク)では、アニオン性樹脂の質量平均分子量が4600であった。白色インクWB−4(比較例4に係る白色インク)は、アニオン性樹脂を含んでいなかった。白色インクWB−5(比較例5に係る白色インク)は、非水溶性非極性樹脂を含んでいなかった。
【0083】
表2に示すように、白色インクWB−2、WB−3及びWB−5では、吐出安定性の評価結果が評価B(不良)であった。また、白色インクWB−1、WB−2及びWB−5では、保存安定性の評価結果が評価B(不良)であった。このように、白色インクWB−1〜WB−3及びWB−5では、吐出安定性及び保存安定性の評価結果のうち少なくとも一つが評価B(不良)であった。
【0084】
表1及び表2に示すように、実施例1〜5に係る白色インクは、比較例1〜5に係る白色インクに比べ、吐出安定性及び保存安定性に優れることが明らかである。よって、本発明に係る白色インクは、保存安定性と吐出安定性とに優れる。
【0085】
なお、本発明者は、前述の<明度(L*)及び色度(a*,b*)の測定方法>で測定された白色インクWA−1〜WA−5のそれぞれの明度(L*)が上述の式(1)を満たすことを確認した。また、本発明者は、上述の<明度(L*)及び色度(a*,b*)の測定方法>で測定された白色インクWA−1〜WA−5のそれぞれの色度(a*,b*)が上述の式(2)及び(3)を満たすことを確認した。つまり、本発明者は、白色インクWA−1〜WA−5のそれぞれが白色インクであることを確認した。さらに、実施例1〜5の白色インクは、白色度及び隠蔽性の評価結果が何れも優れていた。本発明に係る白色インクは、所望の白色度及び隠蔽性を有する画像を形成することができることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る白色インクは、例えばカラープリンターにおいて画像の形成に用いることに適している。