(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路データにおいて、一般的に、車線数が変化する区間では、道路のリンクデータが正確に作成されていないことが多く、自己位置の推定、および車線番号の特定を誤るおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車線数が変化する区間を走行する場合であっても、自己位置推定精度の安定化を図ることのできる自己位置推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
本発明では、自動車に搭載される自己位置推定装置において、
自動車の周りの画像を撮影する車載カメラ(110)と、
自動車の状態量を検出する自車状態量センサ部(120)と、
衛星測位システムにより自動車の位置する緯度経度を取得する衛星測位取得部(130)と、
リンク(141)およびノード(142)を用いて道路を表現した地図を定義する地図データを記憶する地図データ記憶部(140)と、
画像、状態量、緯度経度、および地図データに基づいて、自動車の地図上における自己位置を推定する位置推定部(150)と、を備え、
位置推定部は、
車載カメラのセンシングに基づき、道路の車線数の増減区間を認識する車線数増減判定部(151)と、
車線数の増減区間が認識されると、位置推定部の前記地図データによる推定位置の重みづけを、車線数の増減区間が認識されないときよりも、小さく設定して、地図データによる推定位置を補正する位置補正部(152)とを有することを特徴としている。
【0008】
一般的に、リンク(141)およびノード(142)を用いて道路を表現した地図データにおいて、道路の車線数の増減区間では、リンクは明確に設定されていない場合が多い。本発明では、車線数の増減区間が認識されると、位置補正部(152)は、位置推定部(150)の地図データによる推定位置の重みづけを、車線数の増減区間が認識されないときよりも、小さく設定して、地図データによる推定位置を補正する。よって、車線数の増減区間における自己位置の推定精度が低下することを抑制できる。つまり、自己位置推定精度の安定化を図ることができる。
【0009】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の自己位置推定装置100について、
図1〜
図9を用いて説明する。自己位置推定装置100は、例えば、ナビゲーションシステムが設けられた車両、あるいは自動運転機能を備える車両に搭載されている。自己位置推定装置100は、自車両10が実際に走行する中で、以下で説明する各種データに基づいて、地図上のどの位置、つまりどの道路のどの車線を走行しているかを推定する装置となっている。自車両10の自己位置を推定することで、運転者に対して安全運転のための支援や、自動運転のための支援が行われるようになっている。自車両10は、本発明の自動車に対応する。
【0013】
自己位置推定装置100は、
図1〜
図3に示すように、車載カメラ110、自車状態量センサ部120、衛星測位取得部130、地図データ記憶部140、および位置推定部150等を備えている。
【0014】
車載カメラ110は、例えば、自車両10のルーフ部の前方に設けられて、自車両10の周囲(例えば、前方)の画像を撮影(センシング)するものであり、取得した画像データを位置推定部150に出力するようになっている。撮影される周囲の画像は、例えば、道路の白線画像であり、この白線画像から、位置推定部150において、道路幅、車線(レーン)幅、車線数、道路形状(直線、曲線)等の道路の特徴の推定、および道路に対する自車両10の位置の推定ができるようになっている。
【0015】
自車状態量センサ部(以下、センサ部)120は、自車両10の走行時における状態量、例えば、車速およびヨーレート等を検出するものであり、検出した状態量のデータを位置推定部150に出力するようになっている。センサ部120によって検出された状態量のデータから、位置推定部150において、自車両10は、例えば、直線路を走行しているのか、どの程度の曲率のカーブ路を走行しているのか、あるいは、車線から外れるような走行をしているのか、等が推定されるようになっている。
【0016】
衛星測位取得部130は、例えば、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムにおける受信機であり、上空にある数個の衛星からの信号を受け取るようになっている。衛星測位取得部130は、取得したGPSデータを、位置推定部150に出力するようになっている。衛星測位取得部130によって取得されたGPSデータから、位置推定部150において、自車両10の現在位置(緯度経度)が推定されるようになっている。
【0017】
地図データ記憶部140は、地図データを保有する部位である。地図データは、
図4に示すように、リンク141およびノード142を用いて道路を表現した地図を定義している。具体的には、地図データは、道路に沿う所定長さの線分として形成されたリンク141が、ノード142によって順次接続されて形成されている。道路において、車線数が増減する区間(道路の白線が明確に形成されない区間)が、無車線区間となっている。無車線区間におけるリンク141は、道路形状に沿って形成されたものの他、直線的に形成されたもの、あるいはレーン数に関係なく、代表的な一本の直線的なリンク141で形成されたもの等があり、地図データとしては、正確性が低い部位となっている。地図データ記憶部140における地図データは、位置推定部150に出力されるようになっている。
【0018】
尚、地図データ記憶部140は、自己位置推定装置100に設けられるものに代えて、例えば、クラウド上のサーバを活用したものとしてもよい。クラウドサーバから位置推定部150へ、地図データを送信することで、同様の機能を持たせることができる。
【0019】
位置推定部150は、上記の画像データ、状態量のデータ、GPSデータ(緯度経度データ)、および地図データ等に基づいて、自車両10の地図上における自己位置を推定する部位となっている。位置推定部150は、付加的な機能部として、車線数増減判定部151、および位置補正部152を有している。
【0020】
車線数増減判定部151は、車載カメラ110のセンシングによって得られた画像データから、道路の車線数の増減区間、つまり無車線区間を認識する部位である(詳細後述)。
【0021】
位置補正部152は、車線数増減判定部151で、車線数の増減区間が認識されると、地図データによる自車両10の推定位置の重みづけを、車線数の増減区間が認識されないときよりも、低く設定して、地図データによる推定位置を補正する部位である(詳細後述)。
【0022】
自己位置推定装置100の構成は、以上のようになっており、以下、
図4〜
図9を加えて、作動および作用効果について説明する。
【0023】
位置推定部150は、基本的に、
図5に示すように、車載カメラ110による画像データから道路の白線を認識することで、地図データ上における白線認識推定位置を算出する。また、位置推定部150は、センサ部120による状態量データから地図データ上における状態量予測位置を算出する。また、位置推定部150は、衛星測位取得部130によるGPSデータから地図データ上におけるGPS推定位置を算出する。更に、位置推定部150は、上記の各予測位置の共分散を求め、自車両10の位置(どの道路のどの車線か)を推定する。
【0024】
加えて、本実施形態では、
図4に示すように、車線数増減判定部151によって、車載カメラ110の画像データから無車線区間を認識すると、
図5に示すように、地図データ(リンク141)の活用を制限して(重みづけを小さくして)、地図データによる推定位置の補正を行うようにしている。つまり、無車線区間においては、地図データをあまり信用せずに、自車両10の推定位置の補正を行う。
【0025】
以下、その詳細な要領について、
図6、
図7を用いて説明する。
図6は、無車線区間を認識して、自己位置の補正をするための全体の制御内容を示すフローチャートである。
【0026】
まず、ステップS100において、車線数増減判定部151は、車載カメラ110の画像データから白線位置とレーン数を認識する。そして、ステップS110で、無車線区間が有るか否かを判定する。ステップS110の内容については、
図8のサブフローチャートを用いて後述する。
【0027】
ステップS110で、無車線区間が有ると判定すると、ステップS120で、地図データによる位置推定(位置補正)におけるゲイン(重みづけ)を低く設定する。つまり、無車線区間ありと判定したその信頼度が高いほど、重みづけがより小さくなるように設定する。例えば、重みづけWeの設定にあたっては、
図7に示すように、例えば、無線車区間の判定を信頼度で表現し、シグモイド関数等を用いることができる。
【0028】
そして、ステップS130で、地図データによる推定位置を補正する。尚、ステップS110で、否と判定すれば、ステップS120を実行せずに、ステップS130を実行する。
【0029】
ここで、ステップS110の判定要領は、
図8に示すように、ステップS100の後に、車線数増減判定部151は、ステップS110Aで、条件1を満たすか否かを判定する。条件1は、車載カメラ110の道路の白線認識により得られる道路幅(
図9のW1、W2等)の変化量に基づき、無車線区間(車線数の増減区間)の開始位置を認識するものとなっている。具体的には、条件1は、「車線数が増加する場合、走行先の道路幅W1、W2において、道路幅W1<道路幅W2、且つ道路幅W2>適合定数Tであるか否か」、となっている。尚、車線数が減少する場合は、条件1中の不等号の向きが逆となる。
【0030】
ステップS110Aで肯定判定すると、ステップS1102で、車線数増減判定部151は、現在位置が、無車線区間の開始地点であると判定する。尚、ステップS110Aで否定判定すると、無車線区間なしと判定して本フローを終了する。
【0031】
一般的に、リンク141およびノード142を用いて道路を表現した地図データにおいて、道路の車線数の増減区間では、リンク141は明確に設定されていない場合が多い。本実施形態では、車線数増減判定部151によって、車線数の増減区間が認識されると、位置補正部152は、位置推定部150の地図データによる推定位置の重みづけを、車線数の増減区間が認識されないときよりも、小さく設定して、地図データによる推定位置を補正する。よって、車線数の増減区間における自己位置の推定精度が低下することを抑制できる。つまり、自己位置推定精度の安定化を図ることができる。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態を
図10、
図11に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、構成は同一としつつも、無車線区間の認識判定の要領を変更したものである。
【0033】
図10に示すように、ステップS100の後に、車線数増減判定部151は、ステップS110Bで、条件2を満たすか否かを判定する。条件2は、車載カメラ110の道路の白線認識により得られる車線数(
図11のL1、あるいはL1、L2)に基づき、無車線区間(車線数の増減区間)の開始位置を認識するものとなっている。具体的には、条件2は、「車線数に変化(増加あるいは減少)があるか」、となっている。
【0034】
ステップS110Bで肯定判定すると、ステップS1102で、車線数増減判定部151は、現在位置が、無車線区間の開始地点であると判定する。尚、ステップS110Bで否定判定すると、無車線区間なしと判定して本フローを終了する。
【0035】
本実施形態においても、容易に無車線区間の有無を判定でき、無車線区間があるときに、地図データによる推定位置の重みづけを小さく設定して、地図データによる推定位置を補正することで、車線数の増減区間における自己位置の推定精度が低下することを抑制できる。
【0036】
(第3実施形態)
第3実施形態を
図12、
図13に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態に対して、構成は同一としつつも、無車線区間の認識判定の要領を変更したものである。
【0037】
図12に示すように、ステップS1101で、位置推定部150は、自己位置、即ち、自車両10が地図データ上のどのリンク141上にいるのかを推定する。
【0038】
次に、車線数増減判定部151は、ステップS110Cで、条件3を満たすか否かを判定する。条件3は、位置推定部150により得られる自己位置と、地図データのリンク数(
図13の1、あるいは2)とに基づき、無車線区間(車線数の増減区間)の開始位置を認識するものとなっている。具体的には、条件3は、「前後のノード142間において、リンク141の数に変化(増加あるいは減少)があるか」、となっている。
【0039】
ステップS110Cで肯定判定すると、ステップS1103で、車線数増減判定部151は、ノード142点を無車線区間の開始地点であると判定する。尚、ステップS110Cで否定判定すると、無車線区間なしと判定して本フローを終了する。
【0040】
本実施形態においても、容易に無車線区間の有無を判定でき、無車線区間があるときに、地図データによる推定位置の重みづけを小さく設定して、地図データによる推定位置を補正することで、車線数の増減区間における自己位置の推定精度が低下することを抑制できる。
【0041】
(第4実施形態)
第4実施形態を
図14、
図15に示す。第4実施形態は、上記第1実施形態に対して、構成は同一としつつも、無車線区間の認識判定の要領を変更したものである。
【0042】
図14に示すように、ステップS100の後に、車線数増減判定部151は、ステップS110Dで、条件4を満たすか否かを判定する。条件4は、車載カメラ110の道路の白線認識により得られる自車線と、その他の車線との道路形状の差分に基づき、車線数の増減区間の開始位置を認識するものとなっている。具体的には、条件4は、「L1とL2の道路形状が一致しているか。両道路の曲率値差分<適合定数T1、ヨー角差分<適合定数T2、であるか」、となっている。
【0043】
ステップS110Dで肯定判定すると、ステップS1104で、車線数増減判定部151は、現在位置が、無車線区間の終了地点であると判定する。尚、ステップS110Dで否定判定すると、無車線区間なしと判定して本フローを終了する。
【0044】
本実施形態においても、容易に無車線区間の有無を判定でき、無車線区間があるときに、地図データによる推定位置の重みづけを小さく設定して、地図データによる推定位置を補正することで、車線数の増減区間における自己位置の推定精度が低下することを抑制できる。
【0045】
(第5実施形態)
第5実施形態を
図16、
図17に示す。第5実施形態は、上記第1実施形態に対して、構成は同一としつつも、無車線区間の認識判定の要領を変更したものである。
【0046】
図16に示すように、ステップS1101で、位置推定部150は、自己位置、即ち、自車両10が地図データ上のどのリンク141上にいるのかを推定する。
【0047】
次に、車線数増減判定部151は、ステップS110Eで、条件5を満たすか否かを判定する。条件5は、「無車線区間終了のノード142を通過したか」となっている。
【0048】
ステップS110Eで肯定判定すると、ステップS1105で、車線数増減判定部151は、ノード142点を無車線区間の終了地点であると判定する。尚、ステップS110Eで否定判定すると、無車線区間なしと判定して本フローを終了する。
【0049】
本実施形態においても、容易に無車線区間の有無を判定でき、無車線区間があるときに、地図データによる推定位置の重みづけを小さく設定して、地図データによる推定位置を補正することで、車線数の増減区間における自己位置の推定精度が低下することを抑制できる。